説明

シリカ系被膜形成用組成物および該組成物から得られたシリカ系被膜

【課題】半導体配線形成に用いられる低誘電性被膜を形成するに好適なシリカ系被膜形成用組成物と、該組成物を用いて得た低誘電性に優れたシリカ系被膜を提供する。
【解決手段】シロキサンポリマー(A)と、溶剤(B)と、ポロージェン(C)とを少なくとも含有してなる組成物を、低誘電性被膜を形成するためのシリカ系被膜形成用組成物として、用いる。前記ポロージェン(C)としては、低分子量のアゾ化合物を好適に使用する。このアゾ化合物としては、具体的には、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)または2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)が使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンポリマーを含んでなるシリカ系被膜形成用組成物、および該組成物から得られたシリカ系被膜に関する。さらに詳しくは、本発明は、半導体の多層配線形成におけるエッチングストッパ層や層間絶縁層を形成するに好適に用いることのできる低誘電性シリカ系被膜形成用組成物、および該組成物から得られた低誘電性シリカ系被膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、半導体集積回路における基本的配線構造は、半導体基板上に直接または間接的に形成された下層配線層と、この下層配線層上に層間絶縁層を介して形成された上層配線層とが、前記層間絶縁層を貫通するように形成されたビア配線によって接続されている構造である。この配線構造を複数化、多層化することによって、半導体集積回路の多層配線構造が形成される。
【0003】
従来、この配線構造は、半導体基板上に積層する導体層や層間絶縁層などの各層の形成とそれらのエッチングによるパターン化の繰り返しによって、実現していた。このような積層とエッチングを繰り返して多層配線を形成する逐次形成方法は、ステップ数が多く、製造コストを低減することが困難であったため、現在では、ダマシン法と一般に呼称されている象眼法が採用されている。このダマシン法とは、ビア配線や上層配線層を形成するためのビアホールやトレンチと呼ばれる配線溝を層間絶縁層に形成しておき、その空間に導体材料を埋め込むという配線形成方法である。
【0004】
このダマシン法において、ビア配線と上層配線層を同時に形成する場合は、特にデュアルダマシンプロセスと呼称されている。このダマシン法を採用することによって、従来は導体材料として用いることができなかった銅を用いることができるようになった。銅は、微細配線用の導体材料として、アルミニウムに比べてエレクトロマイグレーション耐性が優れているため好適な材料であり、また、このデュアルダマシンプロセスは、ビア配線とトレンチ配線を同時に形成でき、半導体装置の製造コストを低減できるため、一般に普及しつつある。
【0005】
そして現在、半導体装置のさらなる微細化に向けて、配線材料のみならず、配線層を囲む層間絶縁層においても、より高い特性の材料の開発が進められている。前記層間絶縁層には、確実な絶縁性を確保するために、できるだけ低誘電率であることが必要であり、かつ機械的強度にも優れていることが必要であり、そのような特性を持った材料の検討がなされている。例えば、層間絶縁層に要求される低誘電性、耐熱性、クラック耐性などの物理的特性を改善するための組成物が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−77908号公報
【特許文献2】特開2003−297820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の半導体配線形成においては、層間絶縁層以外にも様々な局面において被膜層が用いられており、その被膜層によって半導体の配線形成における効率化と、得られる配線の微細化、高品質化を図っている。このような被膜層としては、配線層であるトレンチ配線やビア配線を内部に形成させる前記層間絶縁層や、トレンチやビアなどの配線形成空間をエッチングにより形成する場合に下層の層間絶縁層とその上層の層間絶縁層との間に設けられるエッチングストッパ層や、形成された配線層を保護するためのカバー膜、さらにはパターン配線層などの非平坦層の上に形成することによって積層平面を平坦化する平坦化層などが挙げられる。
【0008】
前記層間絶縁層を始めとする各被膜層には、各配線層との間を絶縁する役目が必要なことから、できるだけ誘電率が低いことと、機械的強度に優れていることが要求されている。
【0009】
前記特許文献1,2を代表とする従来技術では、層間絶縁層に必要な低誘電率特性の改善については考慮されているが、実現される誘電率は4.0台にとどまっており、しかも誘電率の低減化と、一定以上の機械的強度の維持とを両立し得ないでいる。前述のように、最近の半導体素子では、配線層のさらなる微細化の要求や、素子のダウンサイジングの要求などにより、誘電率のより一層の低減と機械的強度の向上が望まれている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、より微細化可能な半導体配線形成に用いて一定以上の機械的強度を維持しつつ誘電率を低減化したシリカ系被膜を形成することのできる低誘電性被膜形成用組成物と、該組成物を用いて得た低誘電性被膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、機械的強度を犠牲にすることなく、誘電率をさらに低減可能な被膜形成用組成物ついて鋭意研究を進めたところ、ラジカル発生剤を含むシラン系被膜形成用組成物が前記要求を満たすことを見出すに至った。
【0012】
つまり、本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物は、シロキサンポリマー(A)と、溶剤(B)と、ポロージェン(C)とを少なくとも含有してなり、前記ポロージェンがラジカル発生剤であることを特徴とする。
【0013】
前記ポロージェン(C)としてのラジカル発生剤の添加により焼成後の被膜中に多数の微細な空孔が形成されると推定され、それによって被膜の誘電率が低減される。この場合、重要なことに、被膜の機械的強度も良好に維持される。
【0014】
また、本発明に係る被膜は、前記被膜形成用組成物から形成された塗膜を硬化して得られた被膜である。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるシリカ系被膜形成用組成物は、被膜化した場合に、誘電率が低く、機械的強度にも優れる。したがって、本発明のシリカ系被膜形成用組成物は、微細な半導体配線を形成する場合に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
前述のように、本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物は、シロキサンポリマー(A)と、溶剤(B)と、ポロージェン(C)とを少なくとも含有してなる組成物である。
【0017】
前記シロキサンポリマー(A)としては、好ましくは下記一般式(I)で表されるシラン化合物から選択される少なくとも1種を加水分解反応させて得られる反応生成物が用いられる。
4-nSi(OR’)n …(I)
【0018】
一般式(I)において、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基を表し、R’はアルキル基またはフェニル基を表し、nは2〜4の整数を表す。Siに複数のRが結合している場合、該複数のRは同じであっても異なっていてもよい。またSiに結合している複数の(OR’)基は同じであっても異なっていてもよい。
【0019】
Rとしてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。
【0020】
R’としてのアルキル基は好ましくは炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基である。R’としてのアルキル基は、特に加水分解速度の点から炭素数1または2が好ましい。
【0021】
上記一般式(I)におけるnが4の場合のシラン化合物(i)は下記一般式(II)で表される。
Si(OR1a(OR2b(OR3c(OR4d …(II)
式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基またはフェニル基を表す。
a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、かつa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。
【0022】
一般式(I)におけるnが3の場合のシラン化合物(ii)は下記一般式(III)で表される。
5Si(OR6e(OR7f(OR8g …(III)
式中、R5は水素原子、上記Rと同じアルキル基、またはフェニル基を表す。R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基またはフェニル基を表す。
e、f、及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、かつe+f+g=3の条件を満たす整数である。
【0023】
一般式(I)におけるnが2の場合のシラン化合物(iii)は下記一般式(IV)で表される。
910Si(OR11h(OR12i …(IV)
式中、R9及びR10は水素原子、上記Rと同じアルキル基、またはフェニル基を表す。R11、及びR12は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基またはフェニル基を表す。
h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、かつh+i=2の条件を満たす整数である。
【0024】
シラン化合物(i)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシランなどのテトラアルコキシシランが挙げられ、中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0025】
シラン化合物(ii)の具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメトキシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシルモノメトキシシラン、ジペンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニルオキシルモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシモノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシシラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチルオキシジエトキシシラン、モノフェニルオキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、プロピルトリフェニルオキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジブロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、メチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、エチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、プロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシランなどが挙げられ、中でもトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランが好ましい
【0026】
シラン化合物(iii)の具体例としては、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシシラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニルオキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、エトキシフェニルオキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルメチルジペンチルオキシシラン、ブチルメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルメトキシペンチルオキシシラン、ジブチルメトキシフェニルオキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシランなどが挙げられ、中でもジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましい。
【0027】
前記シラン化合物の中では、メチルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの組み合わせが好ましい。メチルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの配合モル比は、30:70〜90:10が好ましい。かかる配合比にてシロキサンポリマーを構成することにより、誘電率をより一層低下させることができるという利点が得られる。
【0028】
また、前記シロキサンポリマー(A)は、重量平均分子量が1000〜10000の範囲のものが好適である。それは、主に、成膜性、膜の平坦性を確保することが容易となるからであり、エッチングレート耐性にも優れるからである。特に分子量が低すぎると、シロキサンポリマー(A)が揮発してしまい、成膜できない可能性がある。
【0029】
前記溶剤(B)としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロアルキルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル(PGDM)、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類などが挙げられる。これらの中でも、シクロアルキルケトンまたはアルキレングリコールジアルキルエーテルがより好適である。さらに、アルキレングリコールジメチルエーテルとしては、PGDM(プロピレングリコールジメチルエーテル)が好適である。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その配合量は、70〜99質量%の範囲が適当である。
【0030】
前記ポロージェン(C)とは、シリカ系被膜形成用組成物からなる塗膜の焼成時に分解され、最終的に形成されるシリカ系被膜に空孔を形成させる材料である。本発明において必須成分であるポロージェンとしては、ラジカル発生剤が挙げられる。このラジカル発生剤とは、熱によりラジカルを発生するものである。ラジカル発生剤としては、比較的低分子量のアゾ化合物が好適である。このアゾ化合物としては、具体的には、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)または2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)を好適に用いることができる。
【0031】
前記ポロージェン(C)の添加量は、前記シロキサンポリマー(A)の固形分量に対して1質量%〜1000質量%であることが好ましく、25〜100質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。この範囲内の配合量であれば、硬化被膜の全体に多数の微細空孔を形成すると推定され、それによって被膜の誘電率を大幅に低減することができる。しかも、被膜の機械的強度を良好に維持することも可能になる。
【0032】
上記シリカ系被膜形成用組成物から形成される被膜の膜厚は、従来の被膜と同様であり、用途によって一律に限定することはできないが、10nm以上〜1000nm以下、好ましくは100nm以上、500nm以下、より好ましくは300nm以下である。
【0033】
本発明のシリカ系被膜形成用組成物には、前記シロキサンポリマー(A)以外のポリマーとして、従来慣用のポリアリーレンエーテルなどの低誘電性ポリマーを混合して用いることができる。
【0034】
本発明のシリカ系被膜形成用組成物は、溶媒により塗布液となっており、目的に応じて所定の層または基板の上に塗布し、その後加熱し、乾燥、焼成することによって被膜を形成する。塗布は、例えば、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法など、任意の方法を用いることができる。
【0035】
本発明の被膜形成用組成物により、例えば、層間絶縁層、エッチングストッパ層などの各種被膜を形成することができる。膜形成における乾燥温度等の条件を適宜調整することによって、各種被膜に最適化する。
【0036】
本発明の被膜形成用組成物から層間絶縁膜を形成する場合を例として挙げると、80〜300℃程度のホットプレート上で1〜6分程度加熱する。好ましくは3段階以上、段階的に昇温することが好ましい。具体的には、大気中または窒素などの不活性ガス雰囲気中、70〜120℃程度のホットプレート上で30秒〜2分程度第1回目の乾燥処理を行なった後、130〜220℃程度で30秒〜2分程度第2回目の乾燥処理を行い、さらに150〜300℃程度で30秒〜2分程度第3回目の乾燥処理を行なう。このようにして3段階以上、好ましくは3〜6段階程度の段階的な乾燥処理を行なうことによって、塗膜の表面を均一とすることができる。
【0037】
前記乾燥処理された塗膜は、次に焼成処理が施される。焼成は、300〜400℃程度の温度で、窒素雰囲気中で行なわれる。この焼成温度が、300℃以上にすることにより、被膜がエッチングストッパ層である場合はエッチング耐性を向上させることができる。一方、400℃以下にすることにより、低誘電率を維持する必要のある各種被膜の誘電率を低く保つことができる。
【0038】
このような被膜を形成する方法によれば、誘電率が3.0以下の低誘電率特性を有し、エッチング特性にも優れ、さらに短波長光に対する反射防止能にも優れる各種被膜を形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0040】
(実施例1)
メチルトリメトキシシラン36.7g(0.27モル)、テトラメトキシシラン41.1g(0.27モル)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル138.2gを混合し、撹拌した。この混合物に純水34.0g、60%硝酸5.9μLを加え、さらに3時間撹拌した。その後、室温(26℃)で4日間反応させた(13重量%反応)。前記反応物に、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)32.5g(シロキサンポリマーの固形分に対して100重量%)と、プロピレングリコールモノプロピルエーテル217.5gを混合し、シリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0041】
得られたシリカ系被膜形成用組成物をスピンコートによりシリコンウエハ上に塗布し、80℃、150℃、および200℃の各ホットプレート上で各1分間ずつ加熱した。さらに、窒素雰囲気中で、400℃、30分間、焼成し、膜厚が約2500Åのシリカ系被膜を形成した。
【0042】
得られたシリカ系被膜の誘電率を水銀プローブ式CV測定装置(SSM495、日本SSM株式会社製)により測定したところ、2.47であった。硬度および弾性率を、MTS社製Nano Indentor XP−SA2にて測定したところ、それぞれ0.9GPaおよび7.7GPaであった。
【0043】
(実施例2)
ポロージェン(C)として、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)の替わりに2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)を同量用いたこと以外、実施例1と同様にして、シリカ系被膜を形成した。
得られたシリカ系被膜の誘電率は2.11であり、硬度が1.0GPa、弾性率が7.1GPaであった。
【0044】
(比較例1)
メチルトリメトキシシラン36.7g(0.27モル)、テトラメトキシシラン41.1g(0.27モル)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル138.2gを混合し、撹拌した。この混合物に純水34.0g、60%硝酸5.9μLを加え、さらに3時間撹拌した。その後、室温(26℃)で4日間反応させた(13重量%反応)。前記反応物に、オクチルトリメチルアンンモニウムアセテート9.75g(シロキサンポリマーの固形分に対して30重量%)と、プロピレングリコールモノプロピルエーテル240.25gを混合し、シリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0045】
得られたシリカ系被膜形成用組成物をスピンコートによりシリコンウエハ上に塗布し、80℃、150℃、および200℃の各ホットプレート上で各1分間ずつ加熱した。さらに、窒素雰囲気中で、400℃、30分間、焼成し、膜厚が約2500Åのシリカ系被膜を形成した。
【0046】
得られたシリカ系被膜の誘電率を水銀プローブ式CV測定装置(SSM495、日本SSM株式会社製)により測定したところ、2.45と低いものであったが、硬度および弾性率を、MTS社製Nano Indentor XP−SA2にて測定したところ、それぞれ0.5GPaおよび4.4GPaと機械的強度としては不充分な値であった。
【0047】
(比較例2)
オクチルトリメチルアンンモニウムアセテート9.75gの替わりに、重量平均分子量200のポリエチレングリコールの両末端メチル化物を32.5g用いたこと以外、比較例1と同様にして、シリカ系被膜を形成した。
得られたシリカ系被膜は、硬度が1.2GPa、弾性率が11.8GPaと高かったが、誘電率は4.3とかなり高くなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明にかかるシリカ系被膜形成用組成物は、シロキサンポリマー(A)と、溶剤(B)と、ポロージェン(C)とを少なくとも含有してなることを特徴とする。本発明のシリカ系被膜形成用組成物によれば、ポロージェン(C)の添加により、被膜の誘電率が低減され、しかも、被膜の機械的強度も高められる。したがって、本発明のシリカ系被膜形成用組成物は、微細な半導体配線を形成する場合に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサンポリマー(A)と、溶剤(B)と、ポロージェン(C)とを少なくとも含有してなるシリカ系被膜形成用組成物であって、
前記ポロージェン(C)は、ラジカル発生剤を含むことを特徴とするシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項2】
前記ポロージェン(C)が2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)または2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項3】
前記シロキサンポリマーは、下記一般式(I)
4-nSi(OR’)n …(I)
(式中、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基を表し、R’はアルキル基またはフェニル基を表し、nは2〜4の整数を表す。)
で表されるシラン化合物から選択される少なくとも1種を加水分解反応させて得られる反応生成物であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ系皮膜形成用組成物を用いて形成されたことを特徴とするシリカ系被膜。
【請求項5】
層間絶縁膜であることを特徴とする請求項4に記載のシリカ系被膜。

【公開番号】特開2007−123633(P2007−123633A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315281(P2005−315281)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】