説明

シリコン単結晶ウェーハ

【課題】デバイス作製時に耐圧不良やリーク不良を起こさず、低コストで低酸素濃度のウェーハを提供することを目的とする。
【解決手段】チョクラルスキー法により育成されたシリコン単結晶インゴットから切り出されたシリコン単結晶ウェーハであって、該シリコン単結晶ウェーハが、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出され、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域を含むものであることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に最先端分野で用いられている欠陥制御された低酸素濃度のシリコン単結晶ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーに関連してパワーデバイスが注目されている。これらのデバイスはメモリーなど他のデバイスと異なり、ウェーハ内に大きな電流が流れる。電流の流れる領域も、従来の様に極表層だけということは無く、表層から数十、数百μmという厚さの範囲であったり、デバイスによっては厚さ方向に流れる場合もある。
【0003】
このような電流が流れる領域に、結晶欠陥や酸素が析出したBMD(Bulk Micro Defect、以下酸素析出物ともいう)が存在すると、耐圧やリークの問題が発生する可能性がある。そこで、結晶欠陥が少なくかつ酸素を含まないウェーハ、例えば基板となるウェーハにエピタキシャル層を積んだエピタキシャルウェーハや、FZ法(Floating Zone Method:浮遊溶融帯法)によって製造されたウェーハが用いられてきた。
しかし、エピタキシャルウェーハは高価であり、FZ結晶は更なる大口径化が困難であるなど、それぞれに問題がある。そこで、比較的コストが安く、大口径化が比較的容易なCZ法(Czochralski Method:チョクラルスキー法)により育成された結晶から作製されるウェーハが用いられる。
【0004】
CZ結晶は、一般に石英ルツボ内で溶融されたシリコン原料(シリコンメルト)から育成される。この際に、石英ルツボから酸素が溶出する。溶出した酸素の大半は蒸発してしまうが、ごく一部はシリコンメルト内を通じて結晶成長界面直下まで届くので、育成されたシリコン単結晶は酸素を含有している。
シリコン単結晶に含有された酸素は、デバイス作製等に行う熱処理によって移動凝集してBMDを形成する。先に述べた様に、BMDが形成されるとリークや耐圧の問題が発生する可能性がある。BMDは、酸素濃度を低下させると発生を抑えることができるので、低酸素濃度であることも品質として要求される。結晶の低酸素濃度化技術としては、特許文献1にMCZ法(磁場印加チョクラルスキー法)で結晶回転やルツボ回転を低速化させることで、2×1017(atoms/cm)といったかなりの低酸素濃度を達成できることが開示されている。
【0005】
また、CZ結晶中には、結晶成長中に形成される結晶欠陥が存在していることが知られている。通常、シリコン単結晶には、真性の点欠陥であるVacancyとInterstitial Siとがある。この真性点欠陥の飽和濃度は温度の関数であり、結晶育成中の急激な温度低下に伴い、点欠陥の過飽和状態が発生する。過飽和となった点欠陥は、対消滅や外方拡散・坂道拡散などによって、過飽和状態を緩和する方向に進む。一般的にはこの過飽和状態を完全に解消できるわけではなく、最終的にはVacancyかInterstitial Siの一方が優勢な過飽和の点欠陥として残る。結晶成長速度が速いとVacancyが過剰な状態となりやすく、逆に結晶成長速度が遅いとInterstitial Siが過剰な状態になりやすいことが知られている。この過剰な濃度が一定以上になれば、これらの点欠陥が凝集し、結晶成長中に結晶欠陥を形成する。
【0006】
Vacancyが優勢な領域(V領域)で形成される結晶欠陥としては、OSF核やVoid欠陥が知られている。OSF核は、結晶のサンプルをウェット酸素雰囲気中で1100℃から1150℃程度の高温で熱処理すると、表面からSiが注入され、OSF核の周りで積層欠陥(SF)が成長し、選択エッチング液内でサンプルを揺動させながら選択エッチングした際に積層欠陥として観察される欠陥である。
Void欠陥は、Vacancyが集まってできた空洞状の欠陥であり、内部の壁に内壁酸化膜と呼ばれる酸化膜が形成されていることが知られている。この欠陥は、検出される方法によっていくつかの呼称が存在する。レーザー光線をウェーハ表面に照射し、その反射光・散乱光などを検出するパーティクルカウンターによって観察された場合は、COP(Crystal Originated Particle)と呼ばれる。選択エッチング液内でサンプルを揺動させないで比較的長時間放置した後に、流れ模様として観察された場合は、FPD(Flow Pattern Defect)と呼ばれる。赤外レーザー光線をウェーハの表面から入射し、その散乱光を検出する赤外散乱トモグラフ(LST: Laser Scattering Tomography)によって観察された場合には、LSTD(Laser Scattering Tomography Defect)と呼ばれる。これらは検出方法が異なっているが、全てVoid欠陥であると考えられている。
【0007】
一方、Interstitial Siが優勢な領域(I領域)では、Interstitial Siが凝集した結晶欠陥が形成される。これの正体は明確ではないが転位ループ等と考えられており、巨大なものは転位ループクラスターとしてTEM(Transmission Electron Microscopy)観察される。このInterstitial Siの2次欠陥は、FPDと同様のエッチング方法、つまり選択エッチング液内でサンプルを揺動させないで比較的長時間放置することで、大きなピットとして観察される。これはLEP(Large Etch Pit)などと呼ばれている。
【0008】
先に述べた様に、上記のような結晶欠陥が形成されるとリークや耐圧の問題が発生する可能性がある。これらの結晶欠陥が存在しない結晶を製造する技術としては、特許文献2、3などに開示されている。無欠陥結晶の製造技術では、過剰な点欠陥の濃度を限りなく低減するため、結晶成長速度Vと成長界面近傍での温度勾配Gとで表されるV/Gを、非常に限定された狭い範囲にコントロールして、所望の欠陥領域としている。
結晶成長速度Vは、基本的には結晶の半径方向で変化することは無いので、ウェーハ面内全域で無欠陥領域を得るためには、結晶半径方向のGのバラツキを低減することが重要である。これらは、予め計算機によるシミュレーションを行って求めることが多い。ただし、計算する際にはベースとなる実験データが必要である。そのベースデータは、実験によって結晶半径方向のG分布を調べることによって得られている。
【0009】
結晶半径方向のG分布を把握する実験方法としては、以下の方法がよく用いられている。
まず、成長速度を長さ方向(縦方向)で故意に変化させた結晶を育成する。育成した結晶を、成長軸と同じ縦方向に切り出して、サンプルを用意する。そのサンプルに酸素析出熱処理を施して、欠陥分布を把握する。図16に実際に無欠陥結晶を狙った条件で成長速度を変化させて育成した結晶を縦方向に切り出したサンプルを、酸素析出熱処理して、X線トポグラフで観察したものを示す。図16に示すように、酸素析出の多寡が濃淡となって結晶欠陥領域を明瞭に判別できる。この欠陥分布が、結晶中心部と周辺部とで同じ分布になるように、シミュレーションによる計算と合わせて結晶育成条件を調整する。このような方法によって、ウェーハ面内全域で無欠陥となる結晶を得ることができる。
【0010】
しかし、低酸素濃度結晶においてはそもそも酸素析出が起こらないため、上述のような方法で欠陥分布を把握することはできない。欠陥分布は、主に育成される結晶が受ける熱環境によって変化するものであるから、熱環境が同じ条件で酸素濃度のみ高くして欠陥分布を把握することは可能である。しかし、高酸素濃度で無欠陥結晶ができた状態のまま、酸素濃度のみ低酸素化して結晶を育成すると、実際には無欠陥結晶とはならない。これは欠陥分布が上記した熱環境のみでなく、メルト内の対流等に起因する結晶成長界面の変化にも敏感であるためと考えられる。低酸素濃度化するためには、特許文献1に開示されているように、磁場を印加したり、結晶回転やルツボ回転を低速化させたりする必要がある。これらの行為はメルト対流を大きく変化させるものであり、低酸素濃度化と共に欠陥分布が変化してしまうのは当然の現象と考えられる。
従って、低酸素濃度結晶の製造において、無欠陥結晶を育成する条件を見つけ出すことは、非常に困難である。
【0011】
また、無欠陥でなくても、欠陥の影響を抑制する技術として、発生する欠陥のサイズを小さく抑え込んで、欠陥の影響を抑制する技術が特許文献4に開示されている。
特許文献4に開示された技術は、結晶の急冷によって結晶欠陥を成長させないことと、さらに、無欠陥領域より成長速度が速いVacancyリッチな領域に存在するVacancy過飽和度が低い領域を用いることで、結晶欠陥サイズを非常に小さく押さえ込む技術である。しかし、当該方法で製造した結晶でも、少なくとも通常酸素濃度領域においてはFPD欠陥は検出され、デバイスを作製した場合に耐圧の劣化が発生する場合があった。
【0012】
さらに、このような欠陥を小さくする方法と低酸素濃度化をあわせた技術も特許文献5に開示されている。
特許文献5では、欠陥サイズ100nm以下で欠陥密度3×10(/cm)以下の領域が規定されている。低酸素濃度結晶においては、先に述べたような欠陥分布の把握が難しい理由から、結晶育成条件を上記領域に限定しようと試みたが、実際には非常に困難である。さらに、この技術では、結晶欠陥サイズを小さく保った上でアニール処理して、ウェーハ内部まで欠陥を消去することが主旨であり、熱処理が必要な分だけ製造コストが高くなってしまうという問題も含んでいる。
【0013】
これらの問題を解決可能な技術として、窒素をドープすることで転位クラスター及びボイド欠陥を排除した低酸素単結晶ウェーハの技術が特許文献6に開示されている。しかし、この方法でも、比較的成長速度が遅いので生産性が低く、さらに、窒素をドープしているため窒素起因のドナーが発生するという問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−155682号公報
【特許文献2】特開平11−147786号公報
【特許文献3】特開2000−1391号公報
【特許文献4】特開2001−278692号公報
【特許文献5】特開2010−202414号公報
【特許文献6】特開2001−146498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、デバイス作製時に耐圧不良やリーク不良を起こさず、低コストで低酸素濃度のウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、チョクラルスキー法により育成されたシリコン単結晶インゴットから切り出されたシリコン単結晶ウェーハであって、該シリコン単結晶ウェーハが、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出され、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域を含むものであることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハを提供する。
【0017】
このようなウェーハであれば、生産性良く製造でき、かつ、デバイスを作製しても耐圧やリークの不良が発生しない。従って、デバイス作製の歩留まりを向上させることができ、高品質で低コストのシリコン単結晶ウェーハとなる。
【0018】
このとき、前記シリコン単結晶ウェーハが、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域と、赤外散乱法によりLSTDが検出されない無欠陥領域とからなるものであることが好ましい。
このような欠陥領域であれば、デバイスに影響のある欠陥を含まないウェーハをより生産性良く製造することができ、より低コストで高品質のウェーハとなる。
【0019】
このとき、前記シリコン単結晶ウェーハが、酸素濃度5×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出されたものであることが好ましい。
このような酸素濃度であれば、本発明の欠陥領域とするためのマージンがより拡大し、さらに、熱処理において酸素ドナーの発生量が抵抗率に影響しない程度になるため、より低コストで、高品質のウェーハとなる。
【0020】
このとき、前記シリコン単結晶インゴットが、窒素濃度[N]及び酸素濃度[Oi]が[N]×[Oi]≦3.5×1067を満たすように窒素と酸素を含むものであることが好ましい。
このような濃度で窒素と酸素を含むものであれば、抵抗率に影響せず、本発明の欠陥領域とするためのマージンが拡大するため、より低コストで高品質のウェーハとなる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、欠陥起因のデバイス不良が生じず、高品質で低コストのシリコン単結晶ウェーハとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実験2で調べたFPDと酸素濃度の関係を示すグラフである。
【図2】実験2で調べたLSTDと酸素濃度の関係を示すグラフである。
【図3】実験3で得られた酸素濃度と欠陥領域の関係を模式的に表した図である。
【図4】実験4で調べたサンプル中の酸素濃度と酸素ドナー起因のキャリア発生量の関係を示すグラフである。
【図5】実験5で調べた窒素濃度の一乗と酸素濃度の三乗の積と、NOドナー起因のキャリア発生量の関係を示すグラフである。
【図6】単結晶引き上げ装置の概略図である。
【図7】実施例1におけるサンプル中の酸素濃度面内分布を示すグラフである。
【図8】実施例1におけるサンプル中のLSTD面内分布を示すグラフである。
【図9】実施例2におけるサンプル中の酸素濃度面内分布を示すグラフである。
【図10】実施例2におけるサンプル中のLSTD面内分布を示すグラフである。
【図11】比較例におけるサンプル中のFPD面内分布を示すグラフである。
【図12】比較例におけるサンプル中の酸素濃度面内分布を示すグラフである。
【図13】比較例におけるサンプル中のLSTD面内分布を示すグラフである。
【図14】実施例3におけるサンプル中の酸素濃度面内分布を示すグラフである。
【図15】実施例3におけるサンプル中のLSTD面内分布を示すグラフである。
【図16】結晶の欠陥領域を観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
デバイス不良を発生させない無欠陥のウェーハを製造するためには、生産性等の問題があったため、本発明者らは以下のような実験を行い、鋭意検討を行った。
【0024】
(実験1)
まず、Interstitial Siが優勢な領域において、図16で示される無欠陥領域より遅い成長速度で酸素濃度を振った各条件で結晶を育成し、これらの結晶からウェーハ状のサンプルを切り出してLEPを評価した。
LEP評価は、ウェーハ状サンプルを平面研削・洗浄・混酸によるミラーエッチングを行った後、フッ酸・硝酸・酢酸・水からなる選択性のあるエッチング液にサンプルを揺動せず放置し、エッチングによる取り代が両側で25±3μmになるまで放置した後、光学顕微鏡によってカウントした。その結果、観察したLEPの個数に酸素濃度依存性はみられなかった。
【0025】
(実験2)
実験2として、Vacancyが優勢な領域で育成した結晶のFPDとLSTDの観察を行った。観察した結晶の領域は、図16に示す欠陥図の成長速度が速くOSF核が結晶外周に張り付いていると思われる欠陥領域とし、酸素濃度を振った各条件で結晶を育成した。これらの結晶からウェーハ状のサンプルを切り出して、FPD評価を行った。
FPD評価は、実験1のLEP評価と同じ条件で実施した。この評価によって検出されたFPD欠陥密度を、図1に示す。図1に示すように、FPD欠陥密度は酸素濃度依存性が明確に見られ、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)を境に、酸素濃度の低下に伴ってFPD密度が急激に減少している。
【0026】
次に、上記FPD評価を行ったものと同一のサンプルをへき開し、赤外散乱トモグラフ(装置名:MO441)を用いて赤外散乱法によりLSTD密度を調査した。その結果を図2に示す。
FPD密度が酸素濃度の低下に伴って急激に低下したのに比較して、LSTD密度は酸素濃度に全く影響されていないことが判る。
【0027】
FPD欠陥もLSTD欠陥もVoidと呼ばれる空隙であることから、同種の欠陥であるが、LSTDとしては検出されるのに、FPDとしては検出されない欠陥があることを見出した。LSTDで検出できてFPDでは検出できない原因としては、欠陥サイズが小さいことや、欠陥の状態が変化することが原因と推定できる。
しかし、赤外散乱法では、散乱強度が欠陥サイズを反映することが知られており、低酸素濃度化した際にこの散乱強度が極端に低下するという傾向は見られず、欠陥サイズが小さくなったことだけが原因とは考えにくい。
【0028】
そうすると、欠陥の状態が変化したことも原因の一つと考えられる。Void欠陥の内部には内壁酸化膜が存在している。低酸素化により、この内壁酸化膜が薄膜化し、消滅する方向に進行することが推定される。酸素を含まないFZ結晶のD欠陥領域(CZのVacancyリッチ領域に相当する)でのFPDは、流れ模様は確認されるがピットは見られないといった事実を考え合わせると、FPD検出に対して内壁酸化膜が何らかの影響を及ぼしており、低酸素化によって空隙がFPDとして観察されにくくなることが推定できる。一方、LSTDは赤外光の散乱により検出されるので、誘電率差があれば散乱が起こり、従って、空隙に対して敏感に反応し、低酸素化してもLSTDが検出できると推定される。
【0029】
以上より、Vacancyリッチ領域に存在するVoid欠陥には、低酸素濃度化していくとLSTDとしては検出されるのに、FPDとしては検出されない欠陥が存在することが確認された。これは、上記したように、低酸素濃度化によってVoid欠陥内の内壁酸化膜の状況が変化することで、検出に影響を与えることが原因と推定される。このLSTDとしては検出されるのに、FPDとしては検出されない欠陥は、選択エッチングによるFPD観察と赤外散乱によるLSTD観察を組み合わせることで、容易に観察することができる。
【0030】
(実験3)
次に、図16の欠陥分布図で無欠陥領域やOSF領域よりやや速い成長速度にあたる領域において、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)と、さらに低い酸素濃度の結晶を育成し、FPD及びLSTDの評価を行った。
その結果、FPDは全く検出されず、かつ、LSTDのみが検出される領域があることを見出した。図3に各酸素濃度での結晶の欠陥領域を模式的に示す。LSTDのみが検出される領域は、図3(b)に示すように、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)の結晶から発生し始め、酸素濃度の低下に伴って広がっていた。
【0031】
この領域を含んだウェーハをデバイス評価したところ、耐圧・リークともに全く問題の無い領域であることが判明した。これは、デバイスにとっては、Voidそのものよりも内壁酸化膜の悪影響が大きいためではないかと考えられる。また、このような領域の結晶を育成するための条件は、上記したようにFPD検出とLSTD検出によって確実に見出すことができ、範囲も広いので生産性が向上する。
以上より、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下で、上記のような領域を含むウェーハであれば、低酸素濃度であってデバイス不良が生じず、生産性良く製造できるためコストを低減できることを見出して、本発明を完成させた。
【0032】
また、図3の模式図に示されているように、FPDは検出されないがLSTDのみが検出される領域は、LSTDも観察されない無欠陥領域と隣り合っている。さらに、結晶の外周部では、VacancyやInterstitial Siといった点欠陥が表面まで外方拡散して消滅するので、点欠陥の過飽和状態が発生せず、必ず無欠陥となる領域でもある。
従って、実際にウェーハを作製する際には、LSTDのみが検出される領域のみからなるウェーハよりも、ウェーハ外周部から内側に向かってある程度の無欠陥領域が存在するウェーハの方が製造が容易であり、生産性もよい。しかも、当該無欠陥領域も耐圧・リーク特性は問題なかった。
【0033】
以上より、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出されるウェーハであって、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域と、赤外散乱法によりLSTDが検出されない無欠陥領域とからなるシリコン単結晶ウェーハが現実的には有効なウェーハである。
【0034】
(実験4)
次に、結晶中の酸素濃度と熱処理時の酸素ドナー発生量の関係を調べた。
デバイスではウェーハに各種不純物を導入して抵抗率を制御し、PN接合等を形成する。この際にウェーハの抵抗率が不安定であれば、デバイス動作に問題が起こる可能性がある。酸素が入ったCZ結晶から切り出されたウェーハでは、低温の熱処理によって酸素ドナーが生成し、ウェーハの抵抗率が変化してしまう。従来、EPW(エピタキシャルウェーハ)やFZ−PW(ポリッシュドウェーハ)など、酸素を含まないウェーハを用いてきたデバイスにおいては、このような酸素ドナーが悪影響を及ぼす可能性がある。
【0035】
そこで、CZ結晶において酸素濃度を振ったサンプルを用意し、酸素ドナーに起因するキャリア発生量を求めた。まず、各サンプルにおいて酸素ドナーキラー処理を行った後に抵抗率を測定し、酸素ドナーが形成されやすい450℃の熱処理を2時間又は15時間施した。次に、熱処理後の抵抗率を測定し、熱処理前の抵抗率との差から、熱処理で発生したキャリア発生量を求めた。その結果、図4に示すような酸素濃度とキャリア発生量の関係が得られた。
【0036】
図4に示すように、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下であれば、酸素ドナー発生量は少なく、特に、酸素濃度5×1017atoms/cm(ASTM ’79)のサンプルでは、450℃15時間の熱処理により発生したキャリア量は、およそ7×1012atoms/cmである。この濃度はP型なら約1900Ωcm相当、N型であれば約600Ωcm相当であり、通常、デバイスに適用される範囲に比較して桁が1つ以上異なっており、この程度のキャリアが発生しても問題は生じない。
従って、酸素濃度が5×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下であれば発生する酸素ドナーは少なく、ほとんど抵抗率が変化しないといえる。実際のデバイス工程であれば450℃相当の熱環境が15時間かけられることはほとんどなく、2時間程度の方が現実に近いことを考えると、キャリア発生量は更に一桁小さい1.5×1012atoms/cm程度となり、全く抵抗率変化を起こさないと考えられる。
【0037】
また、低酸素濃度化すると、先に示した様にFPDは検出されないがLSTDのみが検出される領域は拡大する傾向があり、製造するためのマージンが拡大する。
以上より、先に述べた本発明の欠陥領域であって、酸素濃度が8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下、特には5×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下であるシリコン単結晶インゴットから切り出されたウェーハがより好ましいことを見出した。
【0038】
(実験5)
次に、結晶にドープする窒素濃度と酸素濃度の関係を調べた。
結晶に窒素をドープすることで、Void欠陥が小さくなる。これは、窒素とVacancyがペアリングし、実効のVacancy濃度が低下して過飽和度が下がり、また、Void欠陥形成温度が低温化するためである。FPDは検出されないがLSTDのみが検出される領域についても、窒素ドープによって拡大する傾向が見られた。ただし、窒素をドープすることで、窒素と酸素が結びついたNOドナーが発生する。NOドナーは900℃程度以上の熱処理で消滅するが、近年のデバイス工程の低温化によって消え残る可能性があり、過剰に窒素をドープすることは好ましくない。
【0039】
そこで、酸素濃度及び窒素濃度を振った結晶のサンプルを用意し、NOドナー発生量を求めた。
まず通常の酸素ドナーキラー処理を行った後に、サンプルの抵抗率を測定した。次に、NOドナーが確実に消滅するように1000℃16時間の熱処理を施した後、再度抵抗率を測定して、NOドナー起因のキャリアの発生量を求めた。その結果、NOドナー起因のキャリア発生量は酸素と窒素の両者の濃度に依存しており、フィッティングの結果、窒素濃度の一乗と酸素濃度の三乗の積に依存する図5のような関係が得られた。図5は、窒素濃度の一乗と酸素濃度の三乗の積と、NOドナー起因のキャリア発生量の関係を示すグラフである。酸素ドナーと同様に、1×1013atoms/cm以下を許容範囲として、窒素濃度[N]及び酸素濃度[Oi]が[N]×[Oi]≦3.5×1067を満たすように窒素と酸素を含むシリコン単結晶ウェーハとすることが好ましいことを見出した。
【0040】
本発明者らは、以上のような実験を基に、以下のような本発明を完成させた。
【0041】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の製造方法では、まず、例えば図6に示すシリコン単結晶引き上げ装置を用いて、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶インゴットを育成する。図6は、シリコン単結晶引き上げ装置の概略図である。
【0042】
ここで、本発明の製造方法に用いることができる単結晶引き上げ装置について説明する。
図6の単結晶引き上げ装置12は、メインチャンバー1と、メインチャンバー1中で原料融液4を収容する石英ルツボ5及び黒鉛ルツボ6と、石英ルツボ5及び黒鉛ルツボ6の周囲に配置されたヒータ7と、ヒータ7の外側周囲の断熱部材8と、メインチャンバー1の上部に取り付けられた引き上げチャンバー2とを備えて構成されている。引き上げチャンバー2には炉内を循環させるガスを導入するガス導入口10が設けられ、メインチャンバー1の底部には炉内を循環したガスを排出するガス流出口9が設けられている。
【0043】
さらに、製造条件に合わせて、図6のように環状のガス整流筒(黒鉛筒)11を設けることもできる。また、メインチャンバー1の外側に磁石(図示せず)を設置し、原料融液4に水平方向あるいは垂直方向の磁場を印加することによって、融液の対流を抑制し、単結晶の安定成長を図る、いわゆるMCZ法の装置を用いることもできる。
本発明では、これらの装置の各部は、例えば従来と同様のものを用いることができる。
【0044】
以下に、上記のような単結晶引き上げ装置12による単結晶育成方法の一例について説明する。
まず、石英ルツボ5内で、シリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420℃)以上に加熱して融解し、原料融液4とする。次に、ワイヤを巻き出すことにより、原料融液4の表面略中心部に種結晶の先端を接触または浸漬させる。その後、石英ルツボ5、黒鉛ルツボ6を適宜の方向に回転させるとともに、ワイヤを回転させながら巻き取り、種結晶を引き上げることにより、シリコン単結晶インゴット3の育成を開始する。
以後、引き上げ速度と温度を、本発明の欠陥領域となるように適切に調整し、略円柱形状のシリコン単結晶インゴット3を得る。石英ルツボ5及び黒鉛ルツボ6は結晶成長軸方向に昇降可能であり、結晶成長中に結晶化して減少した原料融液4の液面の下降分を補うように、石英ルツボ5及び黒鉛ルツボ6を上昇させる。これにより、原料融液4表面の高さはほぼ一定の所望高さに制御されている。
【0045】
このような引き上げの際に、本発明では、シリコン単結晶インゴットの酸素濃度(初期格子間酸素濃度)が8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下となり、さらに、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域を含むように引き上げ速度と温度を制御する。
【0046】
本発明の欠陥領域を含むように引き上げ速度(成長速度)を効率よく制御する方法としては、例えば、予め、本発明の欠陥領域となる条件を予備試験で求めることが好ましい。
この場合、Vacancyリッチ領域は、選択エッチングによりFPDが検出される領域とし、Interstitial Siリッチ領域は、LEPが検出される領域として求めることができる。そして、本発明の欠陥領域は、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域(LSTDのみが検出される領域)である。また、いずれの方法でも欠陥が検出されない領域は無欠陥領域である。従って、予備試験で引き上げた結晶について、赤外散乱法及び選択エッチングを用いて、図3(b)(c)に示すような欠陥分布を求めて、引き上げ条件を設定することができる。
【0047】
その後、当該求めた関係に基づいて、引き上げ速度を例えば図3(c)の範囲R内になるように制御して、結晶を引き上げ、ウェーハに加工後、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域を含むようにシリコン単結晶インゴットを育成することができる。
【0048】
この際、図3(c)の範囲Rより高速側でも低速側でも本発明の欠陥領域を含むシリコン単結晶インゴットを育成できるが、範囲R内で引き上げ速度を制御することで、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域と、無欠陥領域とからなるシリコン単結晶インゴットを育成するのが好ましい。
図3(c)の範囲Rより高速側だとFPDが切り出されるウェーハの中央部に生じ、低速側だとLEPが切り出されるウェーハの外周に生じるため、当該FPDやLEPが発生する部分でのデバイス不良が生じる可能性がある。このため、無欠陥領域と、本発明の欠陥領域とからなるシリコン単結晶インゴットを育成することで、切り出されるウェーハのいずれの部分でもデバイス不良が発生せず、歩留まりをより向上できるウェーハとなる。
【0049】
また、シリコン単結晶インゴットの酸素濃度を8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下とする方法としては、一般的な方法を用いることができ、磁場を印加したり、結晶回転、ルツボ回転、引き上げ速度を制御して上記範囲の酸素濃度とすることができる。
このような酸素濃度であれば、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域が生じて、本発明のシリコン単結晶ウェーハを製造することができる。また、このような低酸素濃度であれば酸素が析出しにくいため、BMD等の欠陥も生じず、デバイス不良が発生しないウェーハとなる。
【0050】
また、この酸素濃度を5×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下とすることが好ましい。
上記実験4でも示すように、酸素濃度が5×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下であれば、デバイス熱処理等で発生する酸素ドナーは十分に少なく、ほとんど抵抗率が変化しないため好ましい。また、低酸素濃度であるほど選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域が広がるため、製造するためのマージンが拡大してコストを低減できる。
【0051】
また、シリコン単結晶インゴットが、窒素濃度[N]及び酸素濃度[Oi]が[N]×[Oi]≦3.5×1067を満たすように窒素と酸素を含むように育成することが好ましい。
このように、窒素をドープすることで、欠陥が小さくなり、本発明の欠陥領域がより拡大するため、生産性をより向上できる。さらに、実験5、図5に示すように、窒素濃度と酸素濃度が上記関係を満たすものであれば、デバイス熱処理時のNOドナーの発生が十分に少なくなり、ウェーハの抵抗率変動をデバイスに影響が無い程度まで抑制できる。
【0052】
以上のように育成したシリコン単結晶インゴットを、スライスして切り出し、ラッピング、面取り、研磨、エッチング等を行って、シリコン単結晶ウェーハを作製する。
以上のようなシリコン単結晶ウェーハであれば、作製したデバイスの耐圧不良やリーク不良を生じさせず、パワーデバイスに好適な高品質で低コストのウェーハとなる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図6に示すような単結晶引き上げ装置を用いて、炉内に直径26インチ(66cm)のルツボを装備して、磁場印加チョクラルスキー法(MCZ法)により、シリコン単結晶インゴットを育成した。
【0054】
この際、酸素濃度[Oi]7×1017atoms/cm(ASTM ’79)を狙い、FPD及びLEPは検出されないが、LSTDは検出される図3(c)に示す領域を狙って、ウェーハでの仕上げ直径が200mmになるような太さのシリコン単結晶インゴットを育成した。
育成した結晶からウェーハ状のサンプルを切り出し、実験1,2で示したような選択エッチングを用いる方法でFPD・LEPを観察したところ、これらの欠陥は検出されなかった。また、同位置から切り出したウェーハ状サンプルを平面研削・洗浄・混酸にてミラーエッチングした後、ウェット酸化雰囲気で1150℃100分熱処理した。次に、フッ酸・硝酸・酢酸・水などからなる選択性のあるエッチング液にて揺動しながら両面7±3μmの取り代でエッチングしたサンプルを光学顕微鏡で観察し、積層欠陥(SF)が発生していないことを確認した。
【0055】
このサンプルの酸素濃度の面内分布は図7に示すように、7.2−7.4×1017atoms/cm(ASTM ’79)の範囲であった。
さらに、赤外散乱トモグラフ(MO441)で赤外線を表面から入射し、散乱光をへき開面から観察してLSTD密度を求めた。その結果、LSTD面内分布は図8に示すようにウェーハ全面に渡り1×10/cm程度の密度であった。
【0056】
以上の評価により、当該サンプルが、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出され、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域となっていることが確認された。
この評価したサンプルに隣接する部分から切り出したウェーハを、面取り・ラップ・研磨等、通常のウェーハ加工処理を行ってポリッシュドウェーハ(PW)に仕上げた。このPWを基板としてパワーデバイスを作製したところ、耐圧不良・リーク不良等が発生せず、正常なデバイス動作となった。
【0057】
(実施例2)
育成するシリコン単結晶インゴットの狙いの酸素濃度を3×1017atoms/cmに下げたことと成長速度をわずかに調整したこと以外は、実施例1と同様に結晶を育成した。
実施例1と同様の評価を行ったところ、FPD・LEP・OSFは検出されなかった。また、酸素濃度及びLSTDの面内分布は、図9、10に示すように、酸素濃度は2.8−3.2×1017atoms/cm(ASTM ’79)の範囲で、LSTD密度は最も高いところで1.2×10/cmであり、周辺部では検出されなかった。
【0058】
以上の評価により、当該ウェーハが、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出され、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域と、周辺部の無欠陥領域とからなることが確認された。
この評価したサンプルに隣接する部分からPWを作製し、その上にパワーデバイスを作製したところ、耐圧不良・リーク不良等が発生せず、またドナー起因の抵抗率シフトも無く、正常なデバイス動作を示した。
【0059】
(比較例)
実施例2と酸素濃度の狙いは同様であるが、成長速度は実施例2より十分速くして、FPDが検出される領域を狙って結晶を育成した。
実施例1と同様の評価を行ったところ、LEP・OSFは検出されなかったが、FPDは図11に示すように100−200(個/cm)検出された。酸素濃度及びLSTDの面内分布は図12,13に示すように、酸素濃度は3.2−3.5×1017atoms/cm(ASTM ’79)、LSTD密度は5−9×10/cmの範囲で面内ほぼ均一に分布していた。
【0060】
この評価したサンプルに隣接する部分からPWを作製し、その上にパワーデバイスを作製した。その結果、リークに起因すると思われる不良率が実施例2で得られたものより3〜5倍高くなり、歩留まりの低下を招いた。
【0061】
(実施例3)
ウェーハ状サンプルを切り出した位置での結晶中の窒素濃度が6×1013/cmとなるように窒素をドープしたこと以外は、比較例と全く同じ条件で結晶を育成した。
実施例1と同様の評価を行ったところ、FPD・LEP・OSFは検出されなかった。酸素濃度の面内分布は図14に示すように、2.8−3.3×1017atoms/cm(ASTM ’79)であり、酸素濃度と窒素濃度の関係は、[N]×[Oi]≦2.2×1066であった。また、LSTD密度の面内分布は、図15に示すように、7×10/cm程度とかなりの高密度を示した。
【0062】
この評価したサンプルに隣接する部分からPWを作製し、その上にパワーデバイスを作製したところ、耐圧不良・リーク不良等が発生せず、またドナー起因の抵抗率シフトも小さく、正常なデバイス動作を示した。
【0063】
なお、実施例1−3、比較例で行った評価結果は、高電圧のかかるパワーデバイスに関するものであるが、本発明の欠陥領域は、より低電圧で動作するメモリー・CPU・撮像素子など他のデバイスにおいても耐圧やリークの問題が無いのは容易に推定できるものであり、本発明はパワーデバイス用の基板に限定された技術ではない。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
1…メインチャンバー、 2…引き上げチャンバー、
3…シリコン単結晶インゴット、 4…原料融液、 5…石英ルツボ、
6…黒鉛ルツボ、 7…ヒータ、 8…断熱部材、 9…ガス流出口、
10…ガス導入口、 11…ガス整流筒、 12…単結晶引き上げ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法により育成されたシリコン単結晶インゴットから切り出されたシリコン単結晶ウェーハであって、該シリコン単結晶ウェーハが、酸素濃度8×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出され、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域を含むものであることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハ。
【請求項2】
前記シリコン単結晶ウェーハが、選択エッチングによりFPD欠陥及びLEP欠陥が検出されず、かつ、赤外散乱法によりLSTDが検出される欠陥領域と、赤外散乱法によりLSTDが検出されない無欠陥領域とからなるものであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶ウェーハ。
【請求項3】
前記シリコン単結晶ウェーハが、酸素濃度5×1017atoms/cm(ASTM ’79)以下のシリコン単結晶インゴットから切り出されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコン単結晶ウェーハ。
【請求項4】
前記シリコン単結晶インゴットが、窒素濃度[N]及び酸素濃度[Oi]が[N]×[Oi]≦3.5×1067を満たすように窒素と酸素を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶ウェーハ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−188293(P2012−188293A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50394(P2011−50394)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】