説明

シリルカルボン酸エステル単量体の製造方法

【化1】


式(I)のヒドロカルビルシリル不飽和カルボン酸エステルの製造方法が記載されており、ここでnは0〜1000のジヒドロカルビルシロキサン単位の数を表す。この方法は式(II)の不飽和カルボン酸と式(III)のヒドロカルビルシリル化合物との反応を包含し、該反応は親珪素性触媒の存在下で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、驚異的な新規工程によるシリルカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリルカルボン酸エステルは、例えば、特許文献1に開示されたような自己研磨性抗付着塗料用の金属を含まない結合剤の製造における単量体または共単量体として有用である。抗付着塗料は船舶の船体の海面下部品上での海洋有機体の成長を防止することにより船舶の性能を改良するために広く使用されている。例えば錫の如き金属を含有する結合剤は1960年代から広く使用されてきたが、研究は有機錫であるトリブチル錫(TBT)が例えば牡蠣の形状崩れおよびエゾバエにおける雌雄変化の如き環境問題を引き起こすことを示していた。シリルカルボン酸エステル誘導結合剤がそのような錫をベースとした系の重要な代替品である。従って、シリルカルボン酸エステル単量体の経済的な製造はそのような系に対して大きな寄与をもたらすであろう。
【0003】
上記の抗付着塗料中で使用される重合体のあるものはシリル化されたカルボン酸エステル単量体をベースにする。
【0004】
数種の方法が該シリル化されたカルボン酸エステル単量体の合成用の従来技術として知られている。
【0005】
特許文献2は硫酸ヘキサアルキルジシリルおよび不飽和カルボン酸の金属塩からのトリアルキルシリル化されたカルボン酸エステル単量体の製造方法に関する。
【0006】
特許文献3はシリルエステル類を製造するための嵩張った置換基を有するクロロシランと不飽和酸の反応を開示している。
【0007】
特許文献4はメタクリル官能基を含有する有機珪素化合物を得る方法を記載している。この方法は、環式構造を有する第三級アミン化合物の存在下におけるメタクリル酸とハロゲノアルキルシラン(例えばトリアルキルシリルクロリド)との反応を含んでなる。この方法は、例えばシリルクロリドの低減した入手性および貯蔵安定性の如き欠点を有する。さらに、この反応は副生物としてハロゲン化水素(これは製造装置の腐食を刺激する)またはハライド塩(これは濾過により除去しなければならない)を生成する。
【0008】
メタクリル酸およびヘキサメチルジシラザンからのメタクリル酸トリメチルシリルの合成は非特許文献1に記載されている。
【0009】
特許文献5は銅触媒の存在下における例えばアクリル酸またはメタクリル酸の如き不飽和カルボン酸とトリアルキルシリルハイドライド化合物との反応を開示している。この方法の欠点の一つは炭素−炭素二重結合上での製造されたH2の副反応による不飽和カルボン酸の水素化の危険性である。
【0010】
珪素における親核性作用の反応機構は文献に開示されていた。非特許文献2は珪素に関するたくさんの反応機構を開示している。しかしながら、親核性反応機構はハロ置換された珪素タイプ化合物に関しておりそしてこれらはハロゲン脱離基により促進される。
【0011】
特許文献6(ダウ・コーニング・コーポレーション(Dow Corning Corporation))はアルキルカルボン酸エステルおよびジシロキサンを製造するためのアルコキシシランとカルボン酸との酸触媒反応を受ける反応を開示している。
【0012】
非特許文献3はトリメチルクロロシランの存在下におけるアルコールを用いるカルボン酸のエステル化を開示している。この反応は中間体であるアルコキシトリメチルシランを介して進行しそしてアルキルエステルを高収率でジシロキサンと一緒に製造すると言われている。酢酸メチルの収率は96〜98%である。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1127902号明細書
【特許文献2】欧州特許第1260513号明細書
【特許文献3】米国特許第6,498,264号明細書
【特許文献4】特開昭53−06290号公報
【特許文献5】特開平10−195084号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第056108号明細書
【非特許文献1】A.ChapmanおよびA.D.Jenkins,J.Polym.Sci.Polym.Chem.Edn.,vol 15,p.3075(1977)
【非特許文献2】Bassindale et al.,The Chemistry of Organic Silicon Compounds,chapter 13,J Wiley & Sons,1989
【非特許文献3】Nakao et al.,Bulletin of the Chemical Society Japan,54、1267−1268(1981)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的の一つは、シリルカルボン酸エステルの製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、シリルカルボン酸エステルのより簡便で且つ効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一面によれば、式(II)
【0016】
【化1】

【0017】
[式中、
は水素原子、またはアルキル基、または(−R11−)C(O)OR10を表し、ここでR10は水素原子、−(SiRO)−SiRを表し、ここでR、R、R、R、Rは各々独立して水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、アリール、アリールオキシル、アラルキルオキシル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiRまたはアラルキル基を表し、該基は場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノもしくはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いは独立して−O−C(O)−C(R)=CHR基であることができるか、またはアルキル基であり、ここでR11はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル基から独立して選択され、該基は場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノもしくはアミノアルキル基から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、oは0または1であり、そして
は水素原子を表すか、或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル基を独立して表し、該基は場合により上記のRに関して定義されたものと同じ基で置換されていてもよく、或いはRは−COORを表し、ここでRは水素原子、アルキル基または−(SiRO)−SiRを表し、ここでR、R、R、RおよびRは以上で定義した通りである]
の不飽和カルボン酸を式(III)
【0018】
【化2】

【0019】
[式中、R、R、R、RおよびRは以上で定義された通りであり、そしてRは水素原子、アルキル、アラルキルもしくはアリール、アルケニルもしくはアルキニル基であり、該基は場合により上記のR〜Rに関して詳記されているのと同じ置換基から選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、そして上記の各nは0〜1000のジヒドロカルビルシロキサン単位の数を独立して表す]
のヒドロカルビルシリル化合物と反応させ、該反応を親珪素性(silaphilic)触媒の存在下で行うことによる式(I)
【0020】
【化3】

【0021】
[式中、
、R、R、R、R、RおよびRは以上で定義されている通りである]
のヒドロカルビルシリル不飽和カルボン酸エステルの製造方法が提供される。
【0022】
好ましくは、R10が式II中でアルキルまたは水素を表す場合には、それは式I中で−(SiRO−)SiRを表し、ここでnおよびR〜Rは以上で定義された通りである。
【0023】
好ましくは、R、R、R、RまたはRが式III中でアリールオキシル、アルカリルオキシル、アルコキシルまたはヒドロキシルである場合には、それらは式I中で−O−C(O)−C(R)=CHRを表すことができる。
【0024】
好ましくは、Rが式(II)中でアルキル基または水素原子を表す場合には、それは式(I)中で−(SiRO−)−SiRを表すことができる。
【0025】
好ましくは、親珪素性触媒は、限定されるものではないが、弗化ナトリウム、弗化カリウム、弗化セシウムまたは弗化テトラブチルアンモニウム(BuNF)を含んでなる弗素含有無機もしくは有機塩から選択されるか、或いはN−メチルイミダゾール(NMI)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(HMPA)、4,4−ジメチルイミダゾール、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、ピリジンN−オキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、2,4−ジメチルピリジン、N−メチル−4−ピリドン、ジメチルホルミアミド(DMF)、3,5−ジメチルピリジン、N,N−ジメチルエチレンウレア(DMEU)、N,N−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、ピリジン、イミダゾール、トリメチルアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、アルキルシアニド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、1,2−ジメチルイミダゾール、LiOH、ステアリン酸Li、NaI、MeONaまたはMeOLiから選択され、上記のN−アルキルおよびN,N−ジアルキル....アミドおよびシアニド中の用語アルキルは任意の線状、環式、二環式、多環式、アルキル脂肪族または芳香族基を包含しそしてN,N−化合物の場合にはアルキルは同一もしくは相異なることができ、一例はN−ホルミルロジンアミンである。
【0026】
親珪素性触媒は珪素に対する特別な親和力を有する分子として定義されている−Brook,Silicon in Organic, Organometallic and Polymer Chemistry,section 5.5,J.Wiley & Sons 2000。好ましくは、親珪素性触媒は例えば酸素または窒素の如き電子に富んだヘテロ原子を有する。典型的には、ヘテロ原子は電子供与基で置換されている。
【0027】
本発明の方法に触媒作用を与えるためにルイス酸触媒を使用することもできる。従って、本発明の目的のためには、用語「親珪素性触媒」は、例えば、チタンブトキシドTi(OBu)の如きルイス酸触媒を包括するとみなすべきである。
【0028】
該触媒は、例えば、金属アルコキシド、有機錫化合物、例えばジラウリン酸ジブチル錫、ジオクチン酸ジブチル錫もしくは二酢酸ジブチル錫、またはホウ素化合物、例えばホウ素ブトキシドもしくはホウ酸でありうる。金属アルコキシドの代表例は、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシ−sec−ブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシアセチルアセトネート、アルミニウムジ−sec−ブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムジイソプロポキシエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−sec−ブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンジソプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンテトラ−2−エチルヘキシルオキシド、チタンジイソプロポキシビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオレート)、チタンジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムトリブトキシドモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシドトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシドモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムジブトキシドビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシドトリスエチルアセトアセテートおよびジルコニウムテトラエチルアセトアセテートを包含する。これらの化合物の他に、環式1,3,5−トリイソプロポキシシクロトリアルミノキサンなども使用することができそしてそれにより「親珪素性触媒」の定義内に包含される。
【0029】
好ましくは、式Iの化合物において、(アルク)アクリロイル基の数は4より少なく、より好ましくは3より少なく、最も好ましくは1である。
【0030】
有利なことに、先行技術はアルコキシシランとカルボン酸との反応を対応するアルキルカルボン酸エステルおよびシラノールをもたらすものである(経路A)と記載しているが、後者は脱水する傾向がありジシロキサンを生成する。親珪素性触媒(すなわち、可逆的方法で珪素原子と配位しうる触媒)の使用がカルボキシ基によるアルコキシまたはヒドロキシル基の優先的な置換を可能にすることが驚くべきことに発見された(経路B)。
【0031】
【化4】

【0032】
有利なことに、本発明の方法は無害な副生物、すなわち水およびメタノール、の放出をもたらす。
【0033】
より好ましくは、親珪素性触媒は反応の遷移状態においてペンタまたはヘキサ配位された珪素種を促進させうる触媒である。
【0034】
より好ましくは、親珪素性触媒はDMF、DMSO、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、DMAP、N−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、HMPA、DMPU、NaI、MeONa、MeOLi、Bu4NF、Ph3PO、LiOH、ステアリン酸LiおよびピリジンN−オキシドから独立して選択される。
【0035】
触媒は均一系または不均一系でありうるが、好ましくは均一系でありそして反応媒体中に遊離形態で存在する。或いは、触媒は重合体状担体に結合されていてもよい。
【0036】
特に好ましい触媒はDMF、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、BuNFから独立して選択される。
【0037】
好ましくは、触媒は反応媒体中に反応の開始時に0.001〜100モル%(モル/モル シラン)、より好ましくは0.01〜40モル%、最も好ましくは0.1〜30モル%の水準で存在する。ホルムアミドに関しては20〜30モル%のまたはBuNFに関しては0.1〜1モル%の範囲が特に好ましい。
【0038】
好ましくは、反応は重合抑制剤を包含する。適当な重合抑制剤はo−メトキシフェノールである。
【0039】
好ましくは、反応は適当な溶媒中で行われる。
【0040】
本発明の方法で使用できる適当な溶媒は非極性不活性溶媒、脂肪族炭化水素類、環式および非環式エーテル類を包含する。
【0041】
適当な溶媒はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、デカン、デカヒドロナフタレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテルまたはそれらの混合物から独立して選択できる。
【0042】
特に好ましい溶媒は、反応性蒸留を可能にする、すなわち反応物のいずれかの蒸留を引き起こさないが生成物の一種の優先的な蒸留が右側への平衡をもたらすものである。
【0043】
より特に好ましい溶媒は、蒸留されたROHとの低沸点共沸物を生成するものである。さらにより特に好ましい溶媒は、蒸留されたROHとの不均一な低沸点共沸物を生成するものである。
【0044】
最も好ましくは、溶媒はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレンから独立して選択される。
【0045】
好ましくは、反応の温度は蒸留しなければならない共沸物の沸点、反応器の形状および蒸留カラムの高さに依存する。
【0046】
典型的には、反応は0℃〜200℃の、より好ましくは60〜170℃の、最も好ましくは110〜140℃の範囲内で行われる。
【0047】
好ましくは、重合抑制剤は全反応混合物の0.001〜10重量/重量%の、より好ましくは0.001〜5重量/重量%の、そして最も好ましくは0.01〜2重量/重量%の、範囲内で存在する。
【0048】
好ましくは、シラン:酸のモル比は1:100〜50:1の間、より好ましくは10:1〜1:10の間、最も好ましくは2:1〜1:2の間である。好ましくは、シラン:酸のモル比は約1:1である。
【0049】
好ましくは、溶媒は反応の開始時に全反応混合物の少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%である。反応は大気圧で行うことができるが、それより高いおよび低い圧力も可能である。
【0050】
反応は溶媒なしに行うこともでき、従って溶媒の適する範囲は全反応混合物の0〜99重量%、より好ましくは20〜50重量%、最も好ましくは30〜40重量%である。
【0051】
好ましくは、R、R、R、RおよびRは水素、アルキル、アルキニル、アリールまたはアラルキル基を各々独立して表し、それらは場合により本発明の第一面で記載されている通りに置換されていてもよく、より好ましくは場合によりアルキル、アラルキル、アリール、シリル、ハロゲン、第三級アミノもしくはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0052】
好ましくは、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
【0053】
好ましくは、Rはアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
【0054】
好ましくは、R、R、R、R、Rはアルキル、アリール基または水素原子を各々独立して表す。
【0055】
本発明の態様によると、R、R、R、R、R、R、RおよびRはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルを含んでなる群から各々独立して選択される。好ましくは、R、R、RおよびRはメチルでありそしてRは水素である。
【0056】
好ましくは、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
【0057】
、RおよびRがアルキル基である場合には、それらは好ましくはC1〜C8アルキル基、好ましくはC3およびC4、より好ましくはイソプロピルおよびn−ブチルよりなる群から独立して選択される。該アルキル基は分枝鎖状もしくは線状であってよくそして、場合により、それらは第一面で記載されている通りにして置換されていてもよい。
【0058】
好ましくは、R〜Rのいずれか1つが−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRとして選択される場合には、選択された基の中の珪素基に結合されたR〜R基はそれら自体、すなわちO−SiRまたは−O−(SiRO)−SiR、でない。好ましくは、R〜Rのいずれか1つが−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRとして選択され且つそのような基が置換されている場合には、この置換はR〜R基のところでありそして好ましくはアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシ、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキルにより、より好ましくはアルキルまたはアリールにより、最も好ましくはアルキルによる。
【0059】
好ましくは、式I、IIまたはIII中の各nは独立して0〜50、より好ましくは0〜10、最も好ましくは0〜5である。nに関する特に好ましい値は0、1、2、3、4または5から選択される。
【0060】
ここで使用される用語「重合体」は重合反応の生成物であり、そしてホモ重合体、共重合体、三元共重合体などを包括する。
【0061】
ここで使用される用語「共重合体」は少なくとも二種の単量体の重合反応により製造される重合体をさす。
【0062】
ここで使用される用語「独立して選択される」または「独立して表す」は、そのように記載された各々の基Rが同一もしくは相異なりうることを示す。例えば、式(I)の化合物中の各Rはnの各値に関して相異なりうる。
【0063】
ここで使用される用語「アルキル」は、別の方法で定義されない限り、直鎖状、分枝鎖状、環式もしくは多環式部分またはそれらの組み合わせを有し且つ1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子、なおさらより好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する飽和炭化水素基を示す。そのような基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、オクチルなどから独立して選択されるものを包含しうる。
【0064】
ここで使用される用語「アルケニル」は、直鎖状、分枝鎖状、環式もしくは多環式部分またはそれらの組み合わせを有し且つ2〜18個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子、さらにより好ましくは2〜6個の炭素原子、なおさらより好ましくは2〜4個の炭素原子を含有する1個もしくは数個の二重結合を有する炭化水素基を示す。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、イソプレニル、ファルネシル、ゲラニル、ゲラニルゲラニルなどを包含する。
【0065】
ここで使用される用語「アルキニル」は、直鎖状、分枝鎖状、環式もしくは多環式部分またはそれらの組み合わせを有し且つ2〜18個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子、さらにより好ましくは2〜6個の炭素原子、なおさらより好ましくは2〜4個の炭素原子、を含有する1個もしくは数個の三重結合を有する炭化水素基を示す。アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、(プロパルギル)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどを包含する。
【0066】
ここで使用される用語「アリール」は芳香族炭化水素から1個の水素の除去により誘導される有機基を示し、そして各々の環内に7個までの員を有する単環式、二環式もしくは多環式の炭素環を包含し、そこでは少なくとも1個の環が芳香族性である。該基は場合によりアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシまたはアミノ基から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよい。アリールの例は、フェニル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−(tert−ブトキシ)フェニル、3−メチル−4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−ニトロフェニル、3−アミノフェニル、3−アセトアミドフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アミノフェニル、3−メチル−4−アミノフェニル、2−アミノ−3−メチルフェニル、2,4−ジメチル−3−アミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、3−アミノ−1−ナフチル、2−メチル−3−アミノ−1−ナフチル、6−アミノ−2−ナフチル、4,6−ジメトキシ−2−ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナンスリル、アンスリルまたはアセナフチルなどを包含する。
【0067】
ここで使用される用語「アラルキル」は式アルキル−アリールの基を示し、ここでアルキルおよびアリールは以上で定義されたものと同じ意味を有する。アラルキル基の例はベンジル、フェネチル、ジベンジルメチル、メチルフェニルメチル、3−(2−ナフチル)−ブチルなどを包含する。
【0068】
ここで使用される用語「シリル」は−SiRおよび−(SiRO)−SiR基を包含し、ここでR〜Rはここで定義された通りである。好ましくは、式(I)中のR、R、R、RまたはR基がそのようなシリル基により置換されている場合には、シリル基−SiRまたは−(SiRO)−SiR中のR、R、R、RおよびRの少なくとも1個もしくはそれ以上はアルキルまたはアリールであり且つアルキルまたはアリールでない該シリル基中のR、R、R、RおよびRの少なくとも1個もしくはそれ以上は−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRである。
【0069】
シリル−SiRまたは−(SiRO)−SiR中で、Rがアルキルまたはアリールであり且つRおよびRの少なくとも1個が−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRである場合には、好ましくは、そのような−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiR基中のR、R、R、RおよびRはそれら自体アルキルまたはアリールでありそして同一もしくは相異なることができ、より好ましくは、各々が独立してC−Cアルキル基でありうる。
【0070】
式(I)のエチレン系不飽和部分の例は、(メタ)アクリレート、イタコネート、メチルフマレート、メチルマレエート、n−ブチルフマレート、n−ブチルマレエート、アミルフマレート、アミルマレエートなどおよびそれらの重合体または共重合体を包含するがそれらに限定されず、ここでメタクリレートまたはアクリレートはここではまとめて「(メタ)アクリレート」と称する。
【0071】
好ましい態様では、式(I)の該エチレン系不飽和部分は(メタ)アクリレートおよびそれらの重合体または共重合体である。
【0072】
一般式(I)の有機シリル化カルボン酸エステル単量体の例は、トリ−n−ブチル1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−メチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリアミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリフェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、ノナメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ウンデカメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、トリデカメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ジシロキサン、1−エチル,3,3,3−トリメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ジシロキサン、トリス−(トリメチルシリルオキシ)−1−メタクリロイルオキシ−シランおよびそれらの重合体を包含するがそれらに限定されない。
【0073】
式Iにおいて、エチレン系不飽和部分は最も好ましくはアクリレートおよびメタクリレートから選択される。
【0074】
本発明を次に例示だけによりそして添付実施例を参照しながら記載する。
【0075】
以下の実施例では、NMRデータはCDCl中で測定されそしてTMSに対するデルタとして表示される。
【実施例1】
【0076】
20gのメトキシトリブチルシラン(CAS RN:15811−64−0)、8.12gのメタクリル酸、1.89gのN,N−ジメチルホルムアミド、0.2gのp−メトキシフェノールおよび30mlのヘプタンの混合物をメタノールが大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:59.1℃)加熱してメタクリル酸トリブチルシリルを与える(89%)。
メタクリル酸トリ−n−ブチルシリル:13C NMR:167.8、137.9、126.0、26.7、25.5、18.5、13.5、14.0;29Si NMR:23.1;IR(フィルム):2959、2927、1703、1334、1174、886、766cm−1
【実施例2】
【0077】
10gのトリブチルシラノール(CAS RN:18388−85−7)、4.26gのメタクリル酸、0.94gのN,N−ジメチルホルムアミド、0.1gのp−メトキシフェノールおよび10mlのヘプタンの混合物を水が大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:79.2℃)加熱してメタクリル酸トリブチルシリルを与える。
【比較例】
【0078】
10gのメトキシトリブチルシラン、4.26gのメタクリル酸、1.3gのアンバーリスト(Amberlyst)A15(スルホン酸樹脂)、0.1gのp−メトキシフェノールおよび10mlのヘプタンの混合物を加熱する。ヘプタンの蒸留後に、わずかな量だけのメタクリル酸トリブチルシリルが検出され、ヘキサブチルジシロキサンおよびメタクリル酸メチルが主生成物として存在する。
【実施例3】
【0079】
10gのトリブチルシラノール、4.26gのメタクリル酸、0.58gのホルムアミド、0.1gのp−メトキシフェノールおよび10mlのヘプタンの混合物を水が大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:79.2℃)加熱してメタクリル酸トリブチルシリルを与える。
【実施例4】
【0080】
10gのメトキシトリブチルシラン、4.26gのメタクリル酸、1.13gのN,N−ジメチルアセトアミド、0.1gのp−メトキシフェノールおよび10mlのヘプタンの混合物をメタノールが大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:59.1℃)加熱してメタクリル酸トリブチルシリルを与える。
【実施例5】
【0081】
10gのメトキシトリブチルシラン、4.26gのメタクリル酸、2.0gのN−ホルミルロジンアミン(WO00/55117の実施例1に記載された通りにして製造される)、0.1gのp−メトキシフェノールおよび10mlのヘプタンの混合物をメタノールが大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:59.1℃)加熱してメタクリル酸トリブチルシリルを与える。
【実施例6】
【0082】
共沸蒸留により水を除去するために0.274gのテトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物および30mlのヘプタンを110℃で加熱した。20gのメトキシトリブチルシラン、8.12gのメタクリル酸および0.2gのp−メトキシフェノールを次に加えた。混合物をメタノールが大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:59.1℃)2時間にわたり加熱した。減圧下における蒸発およびその後の真空蒸留が純粋なメタクリル酸トリブチルシリルを与えた。
【実施例7】
【0083】
共沸蒸留により水を除去するために0.179gのテトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物および20mlのヘプタンを110℃で加熱した。10gのトリイソプロピルシラノール、4.41gのアクリル酸および0.2gのp−メトキシフェノールを次に加えた。混合物を水が大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:79.2℃)2時間にわたり加熱してアクリル酸トリイソプロピルを与えた。
アクリル酸トリイソプロピル:13C NMR:132.5、130.4、175.0、12.3、17.0;29Si NMR:21.84;IR(フィルム):2948、2870、1708、1620、1465、1403、1290、1209、1046、884、818、746cm−1
【実施例8】
【0084】
共沸蒸留により水を除去するために0.132gのテトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物および20mlのヘプタンを110℃で加熱した。13.8gのノナメチル−1−メトキシ−テトラシロキサン(CAS:78824−97−2)、4.41gのメタクリル酸および0.1gのp−メトキシフェノールを次に加えた。混合物をメタノールが大気圧において全部蒸留されるまで(共沸物の沸点:59.1℃)加熱してノナメチル−1−メタクリロイルオキシ−テトラシロキサンを与えた。
ノナメチル−1−メタクリロイルオキシ−テトラシロキサン:13C NMR:166.8、126.3、137.8、18.1、1.95、1.24、1.03、−0.13;29Si NMR:7.3、−8.8、−20.1、−21.6;IR(フィルム):2963、1730、1372、1260、1083、1045、841、809cm−1
【0085】
比較例2は触媒作用を受けない反応性質を示しており、反応は非常に遅くそして出発物質およびMMAの混合物をもたらす。
【比較例2】
【0086】
20gのメトキシトリブチルシラン、8.12gのメタクリル酸、0.2gのp−メトキシフェノールおよび30mlのヘプタンの混合物を加熱する。165℃における7時間後に、0.15当量だけのメタノールが蒸留された。GCによる反応混合物の分析は、出発物質、TBSiMAおよびメタクリル酸メチルの混合物を示した。
【実施例9】
【0087】
共沸蒸留により水を除去するために0.36gの水酸化リチウム一水和物および20mlのヘプタンを110℃で加熱した。20gのメトキシトリブチルシラン、8.12gのメタクリル酸および0.2gのp−メトキシフェノールを次に加えた。混合物をメタノールが大気圧において全部蒸留されるまで(共沸物の沸点:59.1℃)加熱してメタクリル酸トリブチルシリルを与えた(88%)。
【実施例10】
【0088】
21.9gの1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−メトキシトリシロキサン(CAS RN:7671−19−4)、8.12gのメタクリル酸、1.89gのN,N−ジメチルホルムアミド、0.2gのp−メトキシフェノールおよび30mlのヘプタンの混合物をメタノールが大気圧において完全に蒸留されるまで(共沸物の沸点:59.1℃)加熱して1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ジシロキサンを与える。
1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ジシロキサン:13C NMR:166.4、137.7、126.30、18.5、1.7、−2.7;29Si NMR:10.1、−57.8;IR(フィルム):2962、1708、1453、1336、1312、1256、1184、1090、1009、953、846、800、758cm−1
【0089】
上記実施例に関する反応温度は以下の通りである:
実施例番号 T°
1 150−170℃
2 120−130℃
3 120−140℃
4 130−150℃
5 125−130℃
6 110−120℃
7 125−130℃
8 110−135℃
9 125−150℃
10 150−170℃
読者の注意はこの明細書と同時にまたはそれ以前にこの出願に関連して出願されそしてこの明細書と共に公開されている全ての論文および文書に向けられており、そしてそのような全ての論文および文書の内容は引用することにより本発明の内容となる。
【0090】
この明細書(添付された請求項、要旨および図面を包含する)に開示された特徴の全ておよび/またはそのように開示されたいずれかの方法もしくは工程の段階の全ては、そのような特徴および/または段階の少なくとも一部が互いに相容れない組み合わせを除いて、いずれかの組み合わせで組み合わせることができる。
【0091】
この明細書(添付された請求項、要旨および図面を包含する)に開示された各々の特徴が別の特徴により交換されて、特別に強調されない限り、同一の、対等のまたは同様な目的を与えることもできる。それ故、特別に強調されない限り、開示された各々の特徴は対等のまたは同様な特徴の包括的系列の中の一例である。
【0092】
本発明は前記の1つもしくは複数の態様の詳細事項に制限されない。本発明はこの明細書(添付された請求項、要旨および図面を包含する)に開示された特徴のいずれかの新規な1つもしくはいずれかの新規な組み合わせまたはこのように開示されたいずれかの方法もしくは工程の段階のいずれかの新規な1つもしくはいずれかの新規な組み合わせにも及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】

[式中、
は水素原子、またはアルキル基、または(−R11−)C(O)OR10を表し、ここでR10は水素原子、−(SiRO)−SiRを表し、ここでR、R、R、R、Rは各々独立して水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、アリール、アリールオキシル、アラルキルオキシル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiRまたはアラルキル基を表し、該基は場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノもしくはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いは独立して−O−C(O)−C(R)=CHR基であることができるか、またはアルキル基であり、ここでR11はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル基から独立して選択され、該基は場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノもしくはアミノアルキル基から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、oは0または1であり、そして
は水素原子を表すか、或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル基を独立して表し、該基は場合により上記のRに関して定義されたものと同じ基で置換されていてもよく、或いはRは−COORを表し、ここでRは水素原子、アルキル基または−(SiRO)−SiRを表し、ここでR、R、R、RおよびRは以上で定義した通りである]
の不飽和カルボン酸を式(III)
【化2】

[式中、R、R、R、RおよびRは以上で定義された通りであり、そしてRは水素原子、アルキル、アラルキルもしくはアリール、アルケニルもしくはアルキニル基であり、該基は場合により上記のR〜Rに関して詳記されているのと同じ置換基から選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、そして上記の各nは0〜1000のジヒドロカルビルシロキサン単位の数を独立して表す]
のヒドロカルビルシリル化合物と反応させ、該反応を親珪素性(silaphilic)触媒の存在下で行うことによる式(I)
【化3】

[式中、
、R、R、R、R、RおよびRは以上で定義されている通りである]
のヒドロカルビルシリル不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
、R、R、R、Rが各々独立してアルキル、アリール基または水素原子を表す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
、R、R、R、R、RおよびRが各々独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルを含んでなる群から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
、R、R、RおよびRが独立してメチルである請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
、RおよびRがn−ブチルである請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、限定されるものではないが、弗化ナトリウム、弗化カリウム、弗化セシウムまたは弗化テトラブチルアンモニウム(BuNF)を含んでなる弗素含有無機もしくは有機塩から選択されるか、或いはN−メチルイミダゾール(NMI)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(HMPA)、4,4−ジメチルイミダゾール、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、ピリジンN−オキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、2,4−ジメチルピリジン、N−メチル−4−ピリドン、ジメチルホルミアミド(DMF)、3,5−ジメチルピリジン、N,N−ジメチルエチレンウレア(DMEU)、N,N−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、ピリジン、イミダゾール、トリメチルアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、アルキルシアニド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、1,2−ジメチルイミダゾール、LiOH、ステアリン酸Li、NaI、MeONaまたはMeOLiから選択され、上記のN−アルキルおよびN,N−ジアルキル....アミドおよびシアニド中の用語アルキルは任意の線状、環式、二環式、多環式、アルキル脂肪族または芳香族基を包含しそしてN,N−化合物の場合にはアルキルは同一もしくは相異なることができ、一例はN−ホルミルロジンアミンである前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
触媒が均一系もしくは不均一系である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
触媒が珪素原子と可逆的に配位しうる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
触媒がペンタまたはヘキサ配位された珪素種を生成しうる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
、R、R、R、R、R、R、RおよびRがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、オクチルなどから独立して選択されるアルキル基である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式Iのヒドロカルビルシリルエステルが、トリ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリ−メチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリアミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、トリフェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−シラン、ノナメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ウンデカメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、トリデカメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ジシロキサン、1−エチル−3,3,3−トリメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ジシロキサン、トリス−(トリメチルシリルオキシ)−1−メタクリロイルオキシ−シランおよびそれらの重合体から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
触媒がDMF、DMSO、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、DMAP、N−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、HMPA、DMPU、NaI、MeONa、MeOLi、Bu4NF、Ph3PO、LiOH、ステアリン酸LiおよびピリジンN−オキシドから独立して選択される前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
触媒が0.001〜100モル%(モル/モル シラン)の水準で存在する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
反応が重合抑制剤を包含する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
反応を適当な溶媒中で行う前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
適当な溶媒が非極性不活性溶媒、脂肪族炭化水素類、環式および非環式エーテルを包含する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
溶媒がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、デカン、デカヒドロナフタレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテルまたはそれらの混合物から独立して選択される請求項15または16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
溶媒がいずれかの反応物の蒸留は引き起こさないが反応性蒸留を可能にする請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
溶媒が蒸留されたROHとの低沸点共沸物を生成する請求項15〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
溶媒がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレンから独立して選択される請求項15〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
反応を0℃〜200℃の範囲内で行う前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
重合抑制剤が全反応混合物の0.001〜10重量/重量%の範囲内で存在する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
シラン:酸のモル比が1:100〜50:1の間である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
溶媒が反応の開始時に全反応混合物の少なくとも10重量%である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに従う方法により製造される式Iで定義されるヒドロカルビルシリル単量体。
【請求項26】
式I中の(アルク)アクリロイル基の数が4より少ない請求項1に記載の方法。
【請求項27】
式I中の(アルク)アクリロイル基の数が1より少ない請求項1に記載の方法。
【請求項28】
10が式II中でアルキルまたは水素を表す場合には、それは式I中で−(SiRO−)SiRを表し、ここでnおよびR〜Rは前記定義の通りである請求項1に記載の方法。
【請求項29】
、R、R、RまたはRが式III中でアリールオキシル、アルカリルオキシル、アルコキシルまたはヒドロキシルである場合には、それらは式I中で−O−C(O)−C(R)=CHRを表すことができる請求項1に記載の方法。
【請求項30】
が式(II)中でアルキル基または水素原子を表す場合には、それは式(I)中で−(SiRO−)−SiRを表すことができる請求項1に記載の方法。
【請求項31】
該触媒が金属アルコキシド、有機錫化合物もしくはホウ素化合物または環式1,3,5−トリイソプロポキシシクロトリアルミノキサンなどでありうる請求項1〜6または8〜30のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2006−511611(P2006−511611A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502566(P2005−502566)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/015003
【国際公開番号】WO2004/056838
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501352505)シグマ・コーテイングス・ベー・ブイ (4)
【Fターム(参考)】