説明

シンナーのリサイクル供給装置

【課題】 液塗布処理プロセスから回収された使用済シンナーを精製し、シンナー中の不純物の濃度を適正範囲内に調節して液塗布処理プロセスに再び供給する装置であって、不純物濃度を高精度に検出でき、十分に濃度管理されたシンナーを供給し得ると共に、シンナーの回収率を高めることが出来るシンナーのリサイクル供給装置を提供する。
【解決手段】 シンナーのリサイクル供給装置は、供給すべきシンナーを貯留する供給貯槽(1)、使用済シンナーを精製して供給貯槽(1)に送液する回収液精製機構(2)、シンナー原液を供給貯槽(1)に送液する原液供給機構(3)、精製シンナー中の不純物濃度を超音波伝播速度、電磁導電率または吸光度の少なくとも1つによって検出する濃度計(5)とを備えている。そして、濃度計(5)による検出濃度に基づき、精製シンナー及びシンナー原液の各送液を制御可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンナーのリサイクル供給装置に関するものであり、詳しくは、液晶基板やプリント基板の製造におけるフォトレジスト等の塗布処理プロセスから回収された使用済のシンナーを精製し、シンナー中の顔料や樹脂などの不純物の濃度を一定濃度に調節して塗布処理プロセスに再びシンナーを供給するシンナーのリサイクル供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶基板やプリント基板の製造におけるフォトレジストの塗布処理プロセスでは、基板の端部やスピンコータ内部に付着した不要なフォトレジストを除去するにあたり、各種のシンナー、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA),プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等の溶剤が洗浄液として使用される。上記のシンナーは、昨今、基板サイズの大型化やプロセスの進歩によって使用量が増加する傾向にあり、使用済みのシンナーについては、コスト低減や環境問題の観点から、塗布処理プロセスに対してリサイクルするのが望ましい。
【0003】
上記の様なシンナーのリサイクル手段としては、蒸留法、気化分離法などが挙げられるが、例えば、フォトレジストの塗布処理プロセス等で発生したフォトレジストと有機溶剤(シンナー)の混合液から有機溶剤を回収する有機溶剤回収装置であって、ヒータで加熱された熱媒を循環させる加熱用配管が本体周囲に設けられることにより、フォトレジストと有機溶剤との混合液から有機溶剤を気化分離する気化容器と、冷凍機で冷却された冷媒を循環させる冷却用配管が本体周囲に設けられることにより、前記気化容器で分離された気体の有機溶剤を液化する液化容器とを備えた「有機溶剤回収装置」が提案されている。
【特許文献1】特開2002−23388公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液晶基板やプリント基板の塗布処理プロセス等においては、製品の歩留りを向上させるため、一層高品位のシンナーが望まれているが、斯かる観点からすると、上記の様な気化分離を利用したシンナーのリサイクル手段は、不純物の少ないシンナーを回収して供給することが出来る。しかしながら、気化分離によるリサイクル手段は、回収量に比べて廃棄処理されるシンナーの量が比較的多いため、コスト低減や環境問題の解決に十分に寄与し得るとは言い難い。
【0005】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液晶基板やプリント基板の製造におけるフォトレジスト等の塗布処理プロセスから回収された使用済のシンナーを精製し、シンナー中の顔料や樹脂などの不純物の濃度を一定濃度に調節して前記のプロセスに再びシンナーを供給するシンナーのリサイクル供給装置であって、シンナー中の不純物濃度をより高精度に検出でき、十分に濃度管理されたシンナーをプロセスへ供給し得ると共に、シンナーの回収率を高め、プロセスにおけるコストをより低減できるシンナーのリサイクル供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、シンナーの回収率を高めるため、回収されたシンナーから顔料や樹脂などの不純物を分離膜によって分離除去することによりシンナーを精製する。そして、精製されたシンナーを塗布処理プロセスに供給するにあたり、シンナー中の不純物濃度を管理するため、温度および成分濃度によって一義的に決まり且つ濃度変動による測定精度の変動のない超音波伝播速度、電磁導電率、吸光度の少なくとも1つ以上の物性値を測定する方式の濃度計を使用することにより、不純物濃度をより高精度に検出する。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、不純物が含まれるシンナーを塗布処理プロセスから回収して精製すると共にこれを前記塗布処理プロセスに再び供給するシンナーのリサイクル供給装置であって、前記塗布処理プロセスに供給すべきシンナーを貯留する供給貯槽と、回収されたシンナーを精製し且つ一定温度に調節して前記供給貯槽に送液する回収液精製機構と、新たなシンナー原液を前記供給貯槽に送液する原液供給機構と、前記回収液精製機構によって送液される一定温度のシンナー中の不純物濃度を検出する濃度計とが備えられ、かつ、前記回収液精製機構は、回収されたシンナーから不純物を分離除去する分離膜含み、前記濃度計は、シンナーにおける超音波伝播速度、シンナーの電磁導電率または吸光度の少なくとも1つ以上の物性値を計測し、予め作成された所定温度および所定濃度における前記物性値との関係に基づき、シンナー中の不純物濃度を検出する濃度計であり、そして、前記濃度計による検出濃度に基づき、前記回収液精製機構による精製シンナーの送液ならびに前記原液供給機構によるシンナー原液の送液を制御可能になされていることを特徴とするシンナーのリサイクル供給装置に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るシンナーのリサイクル供給装置によれば、回収液精製機構の分離膜によって不純物を除去してシンナーを循環させるため、シンナーの回収率を高めることが出来、製造処理におけるコストをより低減することが出来る。しかも、特定の濃度計を使用し、超音波伝播速度,電磁導電率,吸光度の少なくとも1つ以上の物性値を測定することによりシンナー中の不純物成分の濃度を高精度に検出できるため、不純物成分の濃度の十分に管理されたシンナーを塗布処理プロセスへ供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るシンナーのリサイクル供給装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るシンナーのリサイクル供給装置の主な構成要素を示すフロー図である。以下、実施形態の説明においては、シンナーのリサイクル供給装置を「リサイクル供給装置」と略記する。
【0010】
本発明のリサイクル供給装置は、液晶基板やプリント基板の製造におけるフォトレジストの塗布処理プロセス、あるいは、塗工機などで各種の塗膜を形成する塗布処理プロセスに対し、シンナーを供給する装置であり、顔料や樹脂などの不純物が含まれるシンナーを前記の様な塗布処理プロセスから回収して精製すると共に、精製されたシンナーを塗布処理プロセスに再び供給する機能を有する。
【0011】
本発明において、シンナーとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ノルマルブチルアルコール(NBA),ベンゼン,トルエン,酢酸エチル等の単独または混合物からなる溶液などが挙げられる。
【0012】
本発明のリサイクル供給装置は、図1に示す様に、塗布処理プロセス(9)へ供給すべきシンナーを貯留する供給貯槽(1)と、回収されたシンナーを精製し且つ一定温度に調節して供給貯槽(1)に送液する回収液精製機構(2)と、新たなシンナー原液を供給貯槽(1)に送液する原液供給機構(3)と、回収液精製機構(2)によって供給貯槽(1)へ送液される一定温度のシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度を検出する濃度計(5)(以下、「第1の濃度計」と言う。)とから主として構成される。
【0013】
供給貯槽(1)は、シンナー中の不純物濃度を適正範囲内に調節すると共に、濃度調節されたシンナーを必要に応じて塗布処理プロセス(9)へ供給するバッファタンクであり、例えば、5〜5000リットル程度の内容積の耐腐食性を備えた容器によって構成される。供給貯槽(1)には、貯留するシンナーを均一な濃度に調節し且つ維持するため、ポンプ(71)及び循環流路(96)から成るシンナーの撹拌手段が設けられる。上記の様な循環による撹拌手段は、槽内に設置するスクリュー等の撹拌装置に比べ、パーティクルの発生が少なく、シンナーの汚染を低減することが出来る。そして、供給貯槽(1)に貯留されたシンナーは、ポンプ(12)及び流路(97)を通じて塗布処理プロセス(9)に供給する様になされている。
【0014】
回収液精製機構(2)は、シンナーの回収率を高めるために顔料や樹脂などの不純物を分離除去する精製機能と、第1の濃度計(5)による不純物濃度の正確な測定を行うためにシンナーを一定温度に調節する機能とを有する。具体的には、回収液精製機構(2)は、回収された使用済のシンナーを一旦貯留する回収液貯槽(21)、回収されたシンナーから不純物を分離除去する分離膜(23)、当該分離膜によって濾過精製されたシンナーを一旦貯留する精製液貯槽(24)、精製されたシンナーの温度を一定に調節する温度調節手段などから構成される。
【0015】
回収液貯槽(21)は、例えば、50〜5000リットル程度の内容積の耐腐食性を備えた容器によって構成される。上記の塗布処理プロセス(9)と回収液貯槽(21)とは回収流路(90)で接続されており、回収液貯槽(21)は、塗布処理プロセス(9)から排出される使用済のシンナーを直接受け入れる様になされている。そして、回収液貯槽(21)の使用済シンナーは、ポンプ(22)によって分離膜(23)に供給される様になされている。
【0016】
分離膜(23)としては、通常、UF膜(限外濾過膜)又はNF膜(ナノ濾過膜)が使用される。これらの分離膜は一般的な有機膜でもよいが、セラミック膜が特に好ましい。セラミック膜は、SiO、Al、CaO、MgO、ZrO、Si等を主成分とするセラミックス製の膜であり、通常はチューブ構造またはモノリス構造を備えている。セラミック膜の膜孔径は焼成条件などにより種々の設計できる。セラミック膜は、耐溶剤性に優れ且つ高温処理にも耐え得る膜であり、薬品洗浄を施し、更に必要に応じて焼成処理することにより再生して繰り返し使用することが出来るので有機膜に比べて有利である。
【0017】
本発明のリサイクル供給装置においては、設備費用や運転コストとシンナーの回収率との実用上のコストバランスを考慮し、回収した使用済シンナー中に含まれる顔料や樹脂などの不純物の一部を分離膜(23)によって除去する様になされている。シンナーを分離精製する場合に顔料や樹脂などの不純物成分を全て除去しない理由は次の通りである。すなわち、樹脂成分の分離性能(除去率)を高めると、シンナーの膜透過流量が小さくなるため、必要な循環量を確保するのに分離膜が大型化する。他方、顔料や樹脂などの不純物成分の分離性能(除去率)を低くすると、シンナーの膜透過流量は大きくなる反面、循環するシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度が高くなるため、系外に排出する使用済シンナーが増加し、シンナーの回収率(リサイクル率)が低下する。
【0018】
本発明において、分離膜(23)による顔料や樹脂などの不純物の除去率は、使用済シンナー(精製するシンナー)の不純物濃度が50〜5000ppmの場合で10〜95%程度に設定される。そして、上記の範囲の除去率を満足するため、セラミック膜としては、分画分子量1000〜50000の膜が使用できるが、通常、UF膜の場合で分画分子量5000〜50000程度の膜が使用され、NF膜の場合で分画分子量500〜5000程度の膜が使用される。
【0019】
上記の分離膜(23)の透過側には、精製液貯槽(24)へ至る流路(98)が設けられ、分離膜(23)によって分離精製されたシンナーが流路(98)を通じて精製液貯槽(24)に供給される様になされている。また、分離膜(23)の非透過側には、回収液貯槽(21)へ至る流路(99)が設けられ、分離膜(23)を透過しなかった顔料や樹脂などの不純物濃度の高いシンナーが流路(99)を通じて回収液貯槽(21)へ還流される様になされている。
【0020】
精製液貯槽(24)は、上記の回収液貯槽(21)と同様に、例えば、50〜5000リットル程度の内容積の耐腐食性を備えた容器によって構成される。精製液貯槽(24)には、受け入れた使用済のシンナーの濃度を均一化するため、ポンプ(25)及び循環流路(92)から成る撹拌手段が設けられる。上記の様な循環による撹拌手段は、供給貯槽(1)におけるのと同様に、パーティクルの発生が少なく、シンナーの汚染を低減することが出来る。
【0021】
回収液精製機構(2)の温度調節手段は、後述する第1の濃度計(5)によって正確にシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度を測定するために設けられており、精製液貯槽(24)の後段に配置された例えば恒温槽(27)によって構成される。すなわち、回収精製された精製液貯槽(24)のシンナーは、ポンプ(26)によって恒温槽(27)に供給され、恒温槽(27)において一定温度(例えば25℃)に調節される様になされている。そして、温度調節されたシンナーは、流路(91)を通じて供給貯槽(1)側へ送液可能になされている。流路(91)は、例えば、後述の原液供給機構(3)の原液貯槽(31)から供給貯槽(1)側へ至る流路(93)に接続される。
【0022】
本発明のリサイクル供給装置においては、塗布処理プロセス(9)から回収され且つ精製されたシンナーを塗布処理プロセス(9)に再供給するにあたり、シンナー中の不純物の濃度を一定濃度以下に維持するため、原液供給機構(3)により、分離精製されたシンナーに対して新たなシンナー原液を必要に応じて添加可能に構成される。
【0023】
原液供給機構(3)は、シンナー原液を貯留する原液貯槽(31)、貯留したシンナー原液を供給貯槽(1)側へ供給するポンプ(32)及び流路(93)から主に構成される。原液貯槽(31)は、上記の精製液貯槽(24)と同様に、例えば、50〜5000リットル程度の内容積の耐腐食性を備えた容器によって構成される。原液貯槽(31)のシンナー原液は、ポンプ(32)、流路(93)、混合器(4)及び流路(94)を介して供給貯槽(1)に供給される様になされている。混合器(4)は、流路(91)によって送液される再生シンナーに新たなシンナー原液を混合するためのものであり、固定スクリューを内蔵した撹拌器である。
【0024】
なお、上記の供給貯槽(1)、回収液貯槽(21)、精製液貯槽(24)、恒温槽(27)、原液貯槽(31)及び後述の恒温槽(72)は、シンナーやシンナー原液の空気との接触を防止するため、窒素などの不活性ガスによってシールする様になされている。また、本発明のリサイクル供給装置においては、系内の液量を一定に保つため、シンナー原液を供給した際に顔料や樹脂などの不純物濃度の高い余剰のシンナーを系外に排出する機構が適宜の箇所に設けられる。例えば、分離膜(23)の非透過側から回収液貯槽(21)へ至る流路(99)には、制御弁(図示省略)を含むパージ用の流路(99b)が分岐して設けられる。
【0025】
上記の第1の濃度計(5)は、供給貯槽(1)へ送液される一定温度の精製シンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度を検出するため、例えば、恒温槽(27)の後段側の流路(91)に配置される。本発明のリサイクル供給装置においては、シンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度の変動に影響を受けることなく高精度に不純物濃度を検出するために特定の濃度計が使用される。具体的には、上記の第1の濃度計(5)としては、シンナーにおける超音波伝播速度、電磁導電率または吸光度の少なくとも1つ以上の物性値を計測し、予め作成された所定温度および所定濃度(不純物濃度)における前記の物性値との関係(マトリックス)に基づき、顔料や樹脂などの不純物濃度を検出する濃度計が使用される。
【0026】
上記の濃度計は、一定温度の溶液中の超音波伝播速度、電磁導電率、吸光度の少なくとも1つ以上を測定することにより、単成分またはの濃度を同時にリアルタイムで測定可能な濃度計である。すなわち、濃度計は、溶液の温度が一定ならば、各成分の濃度に応じて液中の超音波伝播速度、電磁導電率および吸光度が一義的に特定されると言う原理に基づくものであり、主に、超音波変換器、超音波発信器、電磁導電率変換器、電磁導電率発信器および所定の演算を行うマイクロプロセッサーから成る。
【0027】
上記の濃度計においては、上記の様なシンナー中の不純物の濃度測定に適用する場合、シンナーの温度と不純物濃度の各種組み合わせ毎に予め計測された超音波伝播速度、電磁導電率または吸光度との関係をマトリックスとして予め準備されることにより、すなわち、マイクロプロセッサーに書き込まれることにより、前記のマトリックスに基づき、測定値から顔料や樹脂などの不純物濃度を正確に推定演算できる。上記の濃度計としては、例えば、富士工業社製の商品名「FUD−1 Model−51]として知られる液体用の濃度計が使用できる。
【0028】
本発明のリサイクル供給装置は、上記の第1の濃度計(5)による検出濃度に基づき、顔料や樹脂などの不純物濃度が適正範囲内の値となる様に、回収液精製機構(2)による精製シンナーの送液ならびに原液供給機構(3)によるシンナー原液の送液を制御可能になされている。精製シンナー及びシンナー原液の送液は、後述する制御装置(図示省略)によって制御される。これにより、シンナーのリサイクルによる顔料や樹脂などの不純物濃度の上昇を補完し、供給貯槽(1)に貯留するシンナーの不純物濃度を常時適正範囲に管理できる。
【0029】
ところで、塗布処理プロセス(9)に供給するシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度をより高精度に管理するには、供給貯槽(1)におけるシンナーの濃度を直接検出するのが好ましい。また、回収液精製機構(2)によって送液される精製シンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度が許容値を越えている場合にも、顔料や樹脂などの不純物濃度が適正範囲となる様に、原液供給機構(3)によってシンナー原液を供給するが、シンナー原液の供給量によっては、供給貯槽(1)におけるシンナー中の不純物濃度が目標値を越えることがある。
【0030】
そこで、本発明のリサイクル供給装置においては、希釈用シンナーを供給貯槽(1)に供給する希釈用シンナー供給機構が備えられている。しかも、供給貯槽(1)においてシンナー中の不純物濃度を最終的に微調節するため、供給貯槽(1)のシンナーの温度を一定に調節する第2の温度調節手段と、供給貯槽(1)の一定温度のシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度を検出する第2の濃度計(8)とが備えられている。そして、本発明の供給装置においては、第2の濃度計(8)による検出濃度に基づき、原液供給機構(3)によるシンナー原液の送液ならびに上記の希釈用シンナー供給機構による希釈用シンナーの送液を後述の制御装置によって制御可能になされている。
【0031】
上記の希釈用シンナー供給機構としては、通常、希釈用シンナー槽(6)が使用され、供給貯槽(1)には、希釈用シンナー槽(6)から流路(95)を通じて希釈用シンナーが供給可能になされている。上記の第2の温度調節手段は、一層正確にシンナー中の不純物濃度を測定するために設けられており、例えば、シンナーの撹拌手段としての循環流路(96)の途中に配置された恒温槽(72)によって構成される。すなわち、供給貯槽(1)においては、循環途中のシンナーを一時的に恒温槽(72)に滞留させることにより、シンナーの温度を一定に保持する様になされている。また、第2の濃度計(8)としては、第1の濃度計(5)と同様の濃度計が使用される。
【0032】
シンナー原液および希釈用シンナーの供給制御は、上記の第2の濃度計(8)による検出濃度に基づき、原液供給機構(3)からのシンナー原液の供給量および希釈用シンナー供給機構(希釈用シンナー槽(6))からの希釈用シンナーの供給量をカスケード制御することにより行われる。斯かる制御においては、例えば、特開平10−180076号公報に記載の「酸またはアルカリ原液の希釈方法および希釈装置」にて開示されたいわゆる漸近法が利用できる。
【0033】
具体的には、上記の漸近法を利用した供給貯槽(1)における不純物濃度の調節では、不純物濃度が高くなった供給貯槽(1)内のシンナーにシンナー原液(又は希釈用シンナー)を添加して所定濃度内に調節するにあたり、第2の濃度計(8)によってシンナー中の不純物濃度を測定する濃度測定工程と、濃度測定工程で測定された濃度値と目標濃度値の差に基づいてシンナー原液の不足量(又は希釈用シンナーの添加量)を演算し、算出された不足量(又は添加量)の85〜99%、好ましくは92〜98%に相当する量を供給する調製工程とを実行すると共に、測定される濃度値が予め設定された目標濃度の域値内の値となるまで前記の濃度測定工程および調製工程を繰り返す。これにより、供給貯槽(1)におけるシンナー中の不純物濃度を更に高い精度で管理することが出来る。
【0034】
更に、本発明のより好ましい態様においては、供給貯槽(1)にてシンナー中の不純物濃度を一層高精度に管理するため、第2の温度調節手段としての恒温槽(72)には、シンナーの温度を検出する温度センサー(図示省略)が備えられている。そして、第2の濃度計(8)には、供給貯槽(1)における顔料や樹脂などの不純物濃度を検出するにあたり、上記の温度センサーによって検出されたシンナーの温度に基づいて補正演算する機能が備えられている。
【0035】
すなわち、上記の様な濃度計においては、顔料や樹脂などの不純物濃度の各種組み合わせ毎に且つ複数の温度条件下で予め測定して得られた超音波伝播速度、電磁導電率、吸光度の少なくとも1つ以上の物性置の関係をマトリックスとして予め準備することにより、斯かるマトリックス及び検出された実際のシンナーの温度に基づき、供給貯槽(1)のシンナー中の不純物濃を一層正確に推定演算できる。
【0036】
本発明のリサイクル供給装置においては、装置全体の稼働制御の他、上記の様な第1の濃度計(5)の測定に基づくシンナー原液の送液を制御し、第2の濃度計(8)の測定に基づくシンナー原液の送液および希釈用シンナーの送液を制御するための演算機能を有する制御装置(図示省略)が設けられる。斯かる制御装置は、各計測機器の信号をデジタル変換する入力装置と、プログラムコントローラやコンピュータ等の演算処理装置と、演算処理装置からの制御信号をアナログ変換する出力装置とを含む。
【0037】
本発明のリサイクル供給装置においては、塗布処理プロセス(9)から排出された使用済のシンナーを回収液貯槽(21)に流路(90)を通じて回収する。次いで、回収された回収液貯槽(21)のシンナーをポンプ(22)によって分離膜(23)に送液し、分離膜(23)によってシンナー中の顔料や樹脂などの不純物成分を一定量除去する。そして、分離膜(23)によって精製したシンナーは流路(98)を通じて精製液貯槽(24)に供給し、分離膜(23)を透過しなかった不純物濃度の高いシンナーは流路(99)を通じて回収液貯槽(21)に還流する。
【0038】
回収液精製機構(2)の精製液貯槽(24)に貯留した精製シンナーは、恒温槽(27)で一定温度にした後、流路(91)、流路(94)を通じて供給貯槽(1)に送液する。その際、流路(91)に設けられた第1の濃度計(5)により、精製したシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度を測定する。その結果、第1の濃度計(5)で測定された不純物濃度が適正範囲よりも増加している場合、または、不純物濃度が限界値を越えている場合には、流路(93)、流路(94)を通じ、原液貯槽(31)に貯留したのシンナー原液を供給貯槽(1)へ送液する。
【0039】
供給貯槽(1)へシンナー原液を供給する場合、流路(91)及び流路(93)の後段に設けられた混合器(4)によって精製シンナーとシンナー原液とを混合する。そして、供給貯槽(1)においては、貯留されたシンナーをポンプ(71)及び循環流路(96)から成る撹拌手段によって一層均一な濃度となる様に混合する。なお、シンナー原液の供給によって系内におけるシンナーの循環量が許容量を越える場合には、精製液貯槽(24)からの送液、すなわち、恒温槽(27)からの送液を停止すると共に、流路(99)から分岐する流路(99b)を通じて排出する。
【0040】
上記の様に、本発明のリサイクル供給装置においては、回収液精製機構(2)の分離膜(23)によって回収シンナーから樹脂成分を除去し、精製したシンナーを循環させるため、シンナーの回収率(リサイクル率)を高めることが出来、塗布処理プロセス(9)におけるコストをより低減することが出来る。また、シンナーの回収率高めることにより、環境に対する影響も軽減できる。更に、回収液精製機構(2)の分離膜(23)としてセラミックス膜を使用した場合には、耐久性に優れ、かつ、洗浄処理により繰り返して使用することが出来るため、ランニングコストをより低減することが出来る。
【0041】
しかも、本発明のリサイクル供給装置においては、精製したシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度を第1の濃度計(5)によって測定する際、液温を一定温度に設定し、そして、第1の濃度計(5)として、測定した超音波伝播速度、電磁導電率または吸光度の少なくとも1つ以上の物性値と、予め作成された特定の関係(マトリックス)とに基づいて不純物濃度を同時に検出する濃度計を使用するため、精製シンナーの不純物濃度を一層正確に検出することが出来、これにより、供給貯槽(1)内のシンナー中の不純物濃度を適正範囲内に確実に管理できる。
【0042】
更に、本発明のリサイクル供給装置においては、一旦濃度調節された供給貯槽(1)のシンナーの液温を一定温度に設定し、そして、第1の濃度計(5)と同様の濃度計である第2の濃度計(8)によって再び顔料や樹脂などの不純物濃度を高精度に測定し、シンナー中の不純物濃度を微調整する。しかも、その際、特定の演算機能を有する制御装置により、目標濃度に漸次近づける上記の漸近法に基づいてシンナー原液または希釈用シンナーの供給量を制御する。従って、供給貯槽(1)内のシンナー中の顔料や樹脂などの不純物濃度を適正範囲内に一層確実に管理でき、不純物濃度をより一層高精度に調節できる。その結果、本発明の供給装置によれば、一層高い精度で十分に濃度管理されたシンナーを塗布処理プロセス(9)へ供給することが出来る。
【0043】
なお、本発明のリサイクル供給装置においては、供給貯槽(1)に希釈用シンナーを供給する希釈用シンナー供給機構に代え、塗布処理プロセス(9)から回収され且つ分離膜(23)で精製されて一定の不純物濃度に調節されたシンナー、すなわち、予め供給すべきシンナー濃度に調製されたシンナーを一旦貯留して供給貯槽(1)に供給する調製シンナー供給機構を設け、そして、第2の濃度計(8)による検出濃度に基づき、調製シンナー供給機構による調製シンナーの送液を制御可能になされていてもよい。また、本発明のリサイクル装置において、供給貯槽(1)又は撹拌手段を含む供給貯槽(1)、ならびに、ポンプ(12)及び流路(97)は、塗布処理プロセス(9)側のユニットとして設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るシンナーのリサイクル供給装置の主な構成要素を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1 :供給貯槽
12 :ポンプ
2 :回収液精製機構
21 :精製液貯槽
22 :ポンプ
23 :分離膜
24 :精製液貯槽
25 :ポンプ
26 :ポンプ
27 :恒温槽(温度調節手段)
3 :シンナー原液供給機構
31 :シンナー原液貯槽
32 :ポンプ
4 :混合器
5 :濃度計(第1の濃度計)
6 :希釈用シンナー槽(希釈用シンナー供給機構)
71 :ポンプ
72 :恒温槽(第2の温度調節手段)
8 :第2の濃度計
9 :塗布処理プロセス
90 :流路
91 :流路
92 :循環流路
93 :流路
94 :流路
95 :流路
96 :循環流路
97 :流路
98 :流路
99 :流路
99b:流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物が含まれるシンナーを塗布処理プロセスから回収して精製すると共にこれを前記塗布処理プロセスに再び供給するシンナーのリサイクル供給装置であって、前記塗布処理プロセスに供給すべきシンナーを貯留する供給貯槽と、回収されたシンナーを精製し且つ一定温度に調節して前記供給貯槽に送液する回収液精製機構と、新たなシンナー原液を前記供給貯槽に送液する原液供給機構と、前記回収液精製機構によって送液される一定温度のシンナー中の不純物濃度を検出する濃度計とが備えられ、かつ、前記回収液精製機構は、回収されたシンナーから不純物を分離除去する分離膜含み、前記濃度計は、シンナーにおける超音波伝播速度、シンナーの電磁導電率または吸光度の少なくとも1つ以上の物性値を計測し、予め作成された所定温度および所定濃度における前記物性値との関係に基づき、シンナー中の不純物濃度を検出する濃度計であり、そして、前記濃度計による検出濃度に基づき、前記回収液精製機構による精製シンナーの送液ならびに前記原液供給機構によるシンナー原液の送液を制御可能になされていることを特徴とするシンナーのリサイクル供給装置。
【請求項2】
供給貯槽に希釈用シンナーを供給する希釈供給機構または一定濃度に調節された調製シンナーを前記供給貯槽に供給する調製シンナー供給機構と、前記供給貯槽のシンナーの温度を一定に調節する第2の温度調節手段と、前記供給貯槽のシンナー中の不純物濃度を検出する第2の濃度計とが備えられ、前記第2の濃度計は、上記の濃度計と同様の濃度計であり、そして、前記第2の濃度計による検出濃度に基づき、原液供給機構によるシンナー原液の送液、ならびに、前記希釈供給機構による希釈用シンナーの送液または前記調製シンナー供給機構による調製シンナーの送液を制御可能になされている請求項1に記載のシンナーのリサイクル供給装置。
【請求項3】
第2の温度調節手段には、シンナーの温度を検出する温度センサーが備えられ、かつ、第2の濃度計には、供給貯槽におけるシンナー中の不純物濃度を検出するにあたり、前記第2の温度調節手段の温度センサーによって検出されたシンナーの温度に基づいて補正演算する機能が備えられている請求項2に記載のシンナーのリサイクル供給装置。
【請求項4】
回収液精製機構の分離膜がセラミックス膜である請求項1〜3の何れかに記載のシンナーのリサイクル供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−210751(P2006−210751A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22586(P2005−22586)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】