説明

シートの輪郭検出装置

【課題】薄い透明プラスチックフィルムのようなシートの輪郭や重なり合ったシートの重なり状態を検出する。
【解決手段】検査対象のシート14に外周16を接して転がりながら回転するローラ20と、ローラ20をシート14の面に対してほぼ垂直方向24に可動支持する支持アーム26と、ローラ20とシート14の接点28が、シート14の面上で相対的にほぼ直線的に移動するように、ローラ20とシート14を同時に、またはローラ20もしくはシート14の一方を矢印33方向に移動させる搬送装置と、ローラ20とシート14の接点28で、ローラ20がシート14のエッジ34を通過するときに発生する振動を検出する振動センサ36と、振動センサ36の出力信号を受け入れて、振動の発生点をシート14の輪郭の一部と判別する、輪郭判別部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一枚のシートあるいは複数枚重なり合ったシートの輪郭を自動的に検出するシートの輪郭検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の形状等を非破壊検査する装置には、画像解析による方法が多用されている(特許文献1参照)。また、対象物の凹凸を検査するのに、ガスを吹き付けるような装置も開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−19762号公報
【特許文献2】特開2008−150069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
非接触式の検査は、接触式の検査に比べて、対象物に傷を付けない利点がある。しかしながら、薄い透明プラスチックフィルムを重ね合わせて、その重なり状態を検出するような場合に、その画像を撮影しても、フイルムの輪郭を明瞭に判別することが難しい。超音波等の音響センサを使用して、重なり合った部分とそれ以外の部分を識別することも考えられるが、複数の薄いプラスチックフィルムを重ね合わせて隙間無く接着したような場合には、重なり合った部分とそれ以外の部分の超音波伝搬特性の差違が小さくて、判別が容易でない。
上記の課題を解決するために、本発明は、薄い透明プラスチックフィルムのようなシートの輪郭や重なり合ったシートの重なり状態を、すみやかに確実に検出することができる、シートの輪郭検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
検査対象のシートに外周を接して転がりながら回転するローラと、前記ローラを前記シートの面に対してほぼ垂直方向に可動支持する支持アームと、前記ローラと前記シートの接点が、前記シートの面上で相対的にほぼ直線的に移動するように、前記ローラと前記シートを同時に、または前記ローラもしくは前記シートの一方を移動させる搬送装置と、前記ローラが前記シートに接して転がりながら前記シートのエッジを通過するときに発生する振動を検出する振動センサと、前記振動センサの出力信号を受け入れて、前記直線上の前記振動の発生点を、前記シートの輪郭の一部と判別する、輪郭判別部を備えたことを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載のシートの輪郭検出装置において、前記シートは、透明シートであることを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【0007】
〈構成3〉
構成1または2に記載のシートの輪郭検出装置において、前記シートは、広い面積のシート上に狭い面積のシートを密着するように貼り合わせたものであって、前記輪郭判別部は、前記広い面積のシート上の前記狭い面積のシートのエッジの位置を判別することを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【0008】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載のシートの輪郭検出装置において、シートの厚みは1mm以下で0.01mm以上であることを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【0009】
〈構成5〉
構成1乃至3のいずれかに記載のシートの輪郭検出装置において、外径が10mm以下で2mm以上の金属ローラを使用することを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【0010】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載のシートの輪郭検出装置において、互いに回転軸を同一方向にもしくは平行に向けた複数のローラが、それぞれ前記支持アームにより支持されており、前記各ローラと前記シートの接点で、前記各ローラがシートのエッジを通過するときに発生する振動を検出するように、各ローラ毎に設けられた複数の振動センサと、前記複数の振動センサの出力信号を受け入れて、前記直線上の前記振動の発生点を求め、この振動の発生点を結んで前記シートの輪郭を判別する、輪郭判別部を備えたことを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【発明の効果】
【0011】
〈構成1の効果〉
ローラがシートの表面をほぼ直線的に転がり、シートのエッジを通過するときに発生する振動を検出すれば、非常に薄いシートでも、透明のシートでも、確実にその輪郭を判別できる。
〈構成2の効果〉
透明シートは、特に輪郭検出が容易でないから、この装置の構成が有効に機能する。
〈構成3の効果〉
広い面積のシート上に狭い面積のシートが密着しており、いずれも透明か同色である場合でも、確実に輪郭を判別できる。
〈構成4の効果〉
シートの厚みが1mm以下で0.01mmというように薄い場合でも、確実に輪郭を判別できる。
〈構成5の効果〉
薄いシートのエッジの段差を検出するには、外径が10mm以下で2mm以上のローラが適する。
〈構成6の効果〉
複数のローラによりシートのエッジを検出すれば、シート全体の輪郭や向きを同時に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】シートの輪郭検出装置の主要部実施例を示す斜視図である。
【図2】輪郭検出中のローラとシートの関係を示す側面図である。
【図3】(a)は、4個のローラが通過する4本の直線とシートのエッジと振動センサの出力信号の関係を示す説明図、(b)はシートの輪郭を判別するための説明図である。
【図4】振動センサの出力信号を処理する回路の機能ブロック図である。
【図5】図4に示した回路をコンピュータにより実現した場合のハードウエアブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1はシートの輪郭検出装置10の主要部実施例を示す斜視図である。
図の装置は、シート14を矢印33方向に搬送する搬送路に据え付けられる。この実施例のシートは、厚さが0.05mmのポリエチレンフィルムを2枚重ねて、接着剤で接着したものである。下側のフィルムは台形をしている。上側のフィルムは細い帯状のものである。両者が図のとおりの状態で接着されていれば良品である。上側のフィルムが曲がって接着されていれば、不良品としてラインから排除する。フィルムが熱で溶着されているようなものにも適用できる。
【0015】
この良否の検査のために、シートの輪郭検出装置10が使用される。なお、ここでは、下側のフィルムをシート14Aと呼び、上側のフィルムをシート14Bと呼ぶことにする。この実施例の装置は、4個のローラ20を備えている。これらのローラ20は、検査対象のシート14の面22に外周を接して転がりながら回転する。各ローラ20の回転軸18は支持アーム26に固定されている。各ローラ20は、それぞれ支持アーム26により、シート14の面22に対してほぼ垂直方向(矢印24方向)に可動支持されている。即ち、支持アーム26は、矢印33に対して直交する方向に向いた支持軸27により支えられて、その自由端を揺動させるように構成されている。
【0016】
図示しないベルトコンベア等により、矢印33方向にシート14を搬送すると、ローラ20とシート14の接点28が、シート14の面上で直線的に移動する。搬送装置は、両者が相対的に直線的に移動するように駆動されればよい。ローラ20とシート14を同時に移動させてもよい。ローラ20もしくはシート14の一方を移動させてもよい。
【0017】
支持アーム26には、ローラ20を取付けた部分に隣接して、振動センサ36が固定されている。振動センサ36は、ローラ20とシート14の接点で、ローラ20がシート14のエッジを通過するときに発生する振動を検出する機能を持つ。図の例では、シート14Aにはエッジ34Aとエッジ34Dとが存在する。シート14Bにはエッジ34Bとエッジ34Cとが存在する。振動センサ36はこれらを通過するときの振動を全て検出する。振動センサ36には、支持アーム26上に形成された配線37が接続されている。この配線37を通じて図示しない輪郭判別部に振動センサ36の出力信号が送り込まれる。
【0018】
輪郭判別部は、振動センサ36の出力信号を受け入れて、直線上の振動の発生点を、シート14の輪郭の一部と判別する。その回路構成については、後で図4以下を用いて説明する。ローラ20がシート14の表面をほぼ直線的に転がり、シート14のエッジを通過するときに発生する振動を検出すれば、非常に薄いシートでも、透明のシートでも、確実にその輪郭を判別できる。
【実施例2】
【0019】
図2は、輪郭検出中のローラとシートの関係を示す側面図である。
この図を用いて、シートのエッジ検出方法の実施例を説明する。図のように、この実施例では、広い面積のシート14Aの上に狭い面積のシート14Bが密着している。両者は接着剤等で貼り合わされている。また、シートはいずれも透明シートである。従って、画像処理では輪郭を認識するのが難しい。透過型の光センサや超音波センサでも、2枚のシートの重なりを検出するのは難しい。
【0020】
しかしながら、本発明の装置によれば、これらの重なりを正確に検出できる。図のように、(a)〜(e)に向かい、ローラ20がシート14上を相対的に右側に移動している。そして、(b)のようにローラ20がシート14Bのエッジ34Bに乗り上げるときその振動が検出される。また、(d)のように、ローラ20がシート14Bのエッジ34Cで下に降りるときにその振動が検出される。なお、平坦なコンベアの上にシート14Aが乗せられているときには、シート14Aのエッジ34Aとエッジ34Dとが全く同様にして検出される。
【0021】
図3(a)は、4個のローラ20が通過する4本の直線30A、30B、30C、30Dと、シート14Aやシート14Bのエッジと、振動センサ36の出力信号の関係を示す説明図である。
図のように、例えば、図の直線30Aを通過するローラ20は、シート14Aのエッジ34Aと、シート14Bのエッジ34Bと、エッジ34Cと、シート14Aのエッジ34Dの位置をこの順番に検出して、出力信号38Aを出力する。
【0022】
図の直線30Bを通過するローラ20は、出力信号38Bを出力する。図の直線30Cを通過するローラ20は、出力信号38Cを出力する。図の直線30Dを通過するローラ20は、出力信号38Dを出力する。その結果、これらの出力信号の検出タイミングを分析することにより、シート14Aと14Bの輪郭を判別することができる。上記の例は2枚のシートを対象にしているが、3枚以上のシートが重なりあっていても同様にエッジの判別ができる。
【0023】
図3(b)はシートの輪郭を判別するための説明図である。
図2の(b)と(d)とをみてわかるように、ローラが振動するのは、シート14Bのエッジ34Bや34Cの直上ではない。従って、シートの実際のエッジ検出位置の補正が必要である。図3(b)に示すように、シートの厚みをW、ローラの外径をRとして、両者を重ね合わせたとき、図の重なり部分Gに相当する長さだけ、差し引くように補正すれば、シートのエッジの位置や正確な幅等が検出できる。
【0024】
図1で説明した実施例の装置で、シート14Bが図3(a)の実線のように正しく貼り付けられているか、同図破線のように曲がって貼り付けられているかを判断することができる。さらに、シート14Bが貼り付けられている位置も正確に検出できる。即ち、シートのエッジの曲がり判定と、正確な位置判定の、両方あるいはいずれか一方に、上記の装置が利用できる。なお、実験によれば、シートの厚みが1mm〜0.01mmというように薄い場合には、そのシートのエッジの段差を誤りなく検出するために、外径が10mm〜2mmのローラが適することがわかった。
【0025】
シートの厚みが1mmを越える場合には、比較的大径のローラでも十分に検出ができる。また、光学的なセンサでも、シートの厚みを検出できる。また、シートの厚みが0.01mmに満たない場合には、ローラの振動が微弱で、振動検出機構や回路がコスト高になる場合がある。検出用のローラの外径が10mm以下であれば、段差検出時の振動が顕著で、低コストで振動検出器や解析用の回路が入手できる。ローラの外径が2mmに満たない場合には、シートのエッジでローラが跳ね上がるおそれがある。従って、ローラの外径は10mm以下で2mm以上が適する。
【0026】
図4は、振動センサ36の出力信号を処理する回路の機能ブロック図である。
図のように、振動センサ36の出力するアナログ信号は、A/D変換部40によりディジタル信号に変換される。そして、波形分析部44において、シートのエッジを検出したタイミングを判定するために波形の分析が行なわれる。シートのエッジは、例えば、入力波形の極大値が検出されたタイミングとすればよい。波形分析部44の出力信号と搬送装置32を制御する信号とが輪郭判別部46に入力する。搬送速度とエッジ検出タイミングとの同期をとるためである。
【0027】
図1に示す実施例では、輪郭判別部46に4個の振動センサ36の、波形分析後の出力信号が入力する。これにより、シートの曲がりと、シートの貼り付け位置の判別ができる。その判別結果48がスピーカ50から出力される。スピーカ50は、例えば、シートの曲がりや位置ずれを検出したときにブザー音を発して作業者に知らせる。なお、自動的にシートを搬送路から除去する、図示しないアーム等の装置を駆動するようにしてもよい。図4に示した回路は、マイクロコンピュータや簡単なディジタル集積回路を組み合わせて実現できる。
【0028】
図5は、図4に示した回路をコンピュータにより実現した場合のハードウエアブロック図である。
コンピュータ100の内部バス110には、CPU(中央処理装置)111と、ROM(リードオンリメモリ)112と、RAM(ランダムアクセスメモリ)113と、入出力インタフェース115とが接続されている。入出力インタフェース115には、ディスプレイ117とプリンタ118とマウス119とキーボード120が接続されている。さらに、入出力インタフェース115には、4個の振動センサ36のA/D変換部32と、搬送装置32とスピーカ50が接続されている。
【0029】
波形分析部44や輪郭判別部46は、コンピュータプログラムで実現する。即ち、CPU111、ROM112、RAM113等によりその機能が実現する。判別結果48は、RAM113に記憶される。ディスプレイ117やプリンタ118は処理結果の表示出力に使用され、マウス119とキーボード120は、装置の制御に使用される。
【0030】
以上のように、互いに回転軸を同一方向にもしくは平行に向けた複数のローラ20が、それぞれ支持アーム26により支持されていれば、各ローラ20とシート14の接点で、各ローラ20がシート14のエッジを通過するときに発生する振動を検出できる。これにより、各ローラ毎に設けられた複数の振動センサ36と、複数の振動センサ36の出力信号を受け入れて、直線上の振動の発生点を求め、この振動の発生点を結んでシートの輪郭を判別することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 シートの輪郭検出装置
14(A、B) シート
16 外周
18 回転軸
20 ローラ
22 シートの面
24 垂直方向
26 支持アーム
27 支持軸
28 接点
30(A、B、C、D) 直線
32 搬送装置
33 矢印
34(A、B、C、D) エッジ
36 振動センサ
37 配線
38 出力信号
40(A、B、C、D) A/D変換部
42 輪郭データ
44 波形分析部
46 輪郭判別部
48 判別結果
50 スピーカ
100 コンピュータ
110 内部バス
111 CPU
112 ROM
113 RAM
115 入出力インタフェース
117 ディスプレイ
118 プリンタ
119 マウス
120 キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象のシートに外周を接して転がりながら回転するローラと、
前記ローラを前記シートの面に対してほぼ垂直方向に可動支持する支持アームと、
前記ローラと前記シートの接点が、前記シートの面上で相対的にほぼ直線的に移動するように、前記ローラと前記シートを同時に、または前記ローラもしくは前記シートの一方を移動させる搬送装置と、
前記ローラが前記シートに接して転がりながら前記シートのエッジを通過するときに発生する振動を検出する振動センサと、
前記振動センサの出力信号を受け入れて、前記直線上の前記振動の発生点を、前記シートの輪郭の一部と判別する、輪郭判別部を備えたことを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートの輪郭検出装置において、
前記シートは、透明シートであることを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシートの輪郭検出装置において、
前記シートは、広い面積のシート上に狭い面積のシートを密着するように貼り合わせたものであって、前記輪郭判別部は、前記広い面積のシート上の前記狭い面積のシートのエッジの位置を判別することを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のシートの輪郭検出装置において、
シートの厚みは1mm以下で0.01mm以上であることを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のシートの輪郭検出装置において、
外径が10mm以下で2mm以上の金属ローラを使用することを特徴とするシートの輪郭検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のシートの輪郭検出装置において、
互いに回転軸を同一方向にもしくは平行に向けた複数のローラが、それぞれ前記支持アームにより支持されており、
前記各ローラと前記シートの接点で、前記各ローラがシートのエッジを通過するときに発生する振動を検出するように、各ローラ毎に設けられた複数の振動センサと、
前記複数の振動センサの出力信号を受け入れて、前記直線上の前記振動の発生点を求め、この振動の発生点を結んで前記シートの輪郭を判別する、輪郭判別部を備えたことを特徴とするシートの輪郭検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−47666(P2012−47666A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191832(P2010−191832)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(510233770)エイト技工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】