説明

ジペプチジルペプチダーゼIVのヒドロキシアダマンチル阻害剤

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV活性の新規なヒドロキシアダマンチル阻害剤、その薬学的組成物、およびその使用方法に関する。


化学式(I)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年11月19日出願の米国仮出願第61/115,951号の優先権の利益を主張し、この開示は、あたかもその全体が本明細書に書かれているかのように参照により本明細書により組み込まれる。
【0002】
新規なヒドロキシアダマンチル化合物が開示され、その作製された薬学的組成物、および対象においてジペプチジルペプチダーゼIV活性を阻害するための方法もまた、II型糖尿病、代謝性障害、空腹時血漿グルコース異常の障害、グルコース耐性異常の障害、高血糖症、高脂血症、高インスリン血症、食欲調節、肥満、女性不妊、自己免疫障害、胃腸障害、皮膚科的障害、および関節リウマチ(rhematoid arthritis)などの障害の治療のために提供される。
【背景技術】
【0003】
サクサグリプチン(オングリザ、サクサグリプチン水和物、BMS 477118、BMS 477118−11、BMS−767778、およびCAS番号361442−04−8)、(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アセチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリルは、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤である。サクサグリプチンは、II型糖尿病の治療のために研究中である(Drug Report for Saxagliptin,Thomson Investigational Drug Database(Sep.15,2008))。サクサグリプチンはまた、代謝性障害、空腹時血漿グルコース異常の障害、グルコース耐性異常の障害、高血糖症、高脂血症、高インスリン血症、食欲調節、肥満、女性不妊、自己免疫障害、胃腸障害、皮膚科的障害、および関節リウマチ(rhematoid arthritis)を治療する際にも有望であることが示されている(Augeri et al.,J. Med. Chem.,2005,48(15),5025−5037;Rosenstock et al.,Diabetes Obesity Metab.2008,10, 376−386;およびMiller et al.,Formulary 2008,43,122−34)。
【化1】

サクサグリプチン
【0004】
サクサグリプトン投与に付随する副作用には、上気道および尿道の感染、低血糖症、鼻咽頭炎、関節痛、頭痛、および目眩が含まれる。
【0005】
重水素による速度論的同位体効果
治療剤などの外来性物質を除去するために、動物の身体は、これらの外来性物質と反応し、これらの物質を腎排出のためにより極性の中間体または代謝物に変換するためのシトクロムP450酵素(CYP)、エステラーゼ、プロテアーゼ、還元酵素、デヒドロゲナーゼ、およびモノアミンオキシダーゼなどの種々の酵素を発現する。このような代謝反応には、頻繁には、炭素−酸素(C−O)結合または炭素−炭素(C−C)π結合のいずれかへの炭素−水素(C−H)結合の酸化が含まれる。得られた代謝物は生理学的条件下では安定であるかまたは不安定であり得、親化合物とは大幅に異なる薬物動態学的特性、薬力学的特性、ならびに急性および長期的な毒性特性を有することができる。ほとんどの薬物については、このような酸化は一般的に迅速であり、究極的には複数用量または高い1日の用量の投与に導く。
【0006】
活性化エネルギーと反応速度の間の関係は、アレニウスの式k=Ae−Eact/RTによって定量され得る。アレニウスの式は、所定の温度において、化学反応の速度は、活性化エネルギー(Eact)に対して指数関数的に依存することを述べている。
【0007】
反応における遷移状態は、もともとの結合がそれらの限界まで伸びている、反応経路に沿った寿命の短い状態である。定義上、反応のための活性化エネルギーEactは、その反応の遷移状態に到達するために必要とされるエネルギーである。一旦、遷移状態に到達すると、分子はもともとの反応物に戻るか、または反応生成物を生じる新たな結合を形成するかのいずれかが可能である。触媒は、遷移状態に導く活性化エネルギーを低下させることによって、反応プロセスを容易にする。酵素は生体触媒の例である。
【0008】
炭素−水素結合の強さは、結合の基底状態振動エネルギーの絶対値に直接的に比例する。この振動エネルギーは、結合を形成する原子の質量に依存し、結合を作る原子の一方または両方の質量が増加するにつれて増加する。重水素(D)はプロチウム(H)の2倍の質量を有するので、C−D結合は対応するC−H結合よりも強い。C−H結合が化学反応中の律速段階(すなわち、最高の遷移状態エネルギーを伴う段階)の間に切断されるなら、そのプロチウムの代わりに重水素を用いることは、反応速度の減少を生じる。この現象は、重水素による速度論的同位体効果(DKIE)として公知である。DKIEの規模は、C−H結合が切断される所定の反応の速度と、重水素がプロチウムの代わりに用いられる同じ反応の速度の間の比率として表現できる。DKIEは約1(同位体効果なし)から、50以上などの非常に大きな数までの範囲であり得る。水素の代わりにトリチウムを用いることは、重水素よりもさらに強い結合を生じ、数値的にさらに大きな同位体効果を与える。
【0009】
重水素(HまたはD)は、最も一般的な水素の同位体であるプロチウム(H)の約2倍の質量を有する水素の安定かつ非放射性の同位体である。酸化重水素(DOまたは「重水」)はHOのような外観および味であるが、異なる物理的特性を有する。
【0010】
純粋なDOが齧歯動物に与えられると、これは容易に吸収される。毒性を誘導するために必要な重水素の量は極度に高い。体内の水分の約0〜15%がDOによって置き換えられた場合、動物は健常であるが、対照(未処置)群と同程度に速く体重増加することができない。体内の水分の約15〜20%がDOで置き換えられた場合、動物は興奮状態になる。体内の水の約20〜25%がDOで置き換えられた場合、動物はあまりにも興奮状態になり、刺激されたときには頻繁に痙攣する。皮膚損傷、足および鼻口部の潰瘍、ならびに尾の壊死が現れる。動物はまた、非常に攻撃的になる。体内の水の約30%がDOで置き換えられたとき、動物は食べることを拒否し、昏睡状態になる。これらの体重は急激に低下し、これらの代謝の速度は正常のはるかに下まで低下し、DOによる約30〜約35%の置き換えに際しては死亡が起こる。これらの効果は、DOに起因して以前の体重の30%より多くが失われない限り、可逆的である。研究によって、DOの使用が癌細胞の増殖を遅延させ、特定の抗新生物薬の細胞傷害性を増強することができることもまた示されている。
【0011】
薬物動態学(PK)、薬力学(PD)、および毒性の特性を改善するための医薬の重水素化は、あるクラスの薬物で以前に示されている。例えば、DKIEは、おそらく、トリフルオロアセチルクロリドなどの反応種の産生を制限することによって、ハロタンの肝毒性を減少するために使用された。しかし、この方法は、すべての薬物のクラスに適用可能ではないかもしれない。例えば、重水素の組み込みは代謝切り替えに導き得る。代謝切り替えは、フェーズI酵素によって封鎖された異物が、化学反応(例えば、酸化)の前に、様々なコンホメーションで一時的に結合し、および再結合するときに起こる。代謝切り替えは、多くのフェーズI酵素中の結合ポケットの比較的大きなサイズおよび多くの代謝反応の無差別的な性質によって可能である。代謝切り替えは、様々な割合の既知の代謝物、ならびに新たな代謝物全体に導くことができる。この新たな代謝特性は、多かれ少なかれ、毒性を付与する可能性がある。このような落とし穴は明白ではなく、いかなる薬物のクラスにおいても先験的に予測可能なものではない。
【0012】
サクサグリプチンはジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤である。サクサグリプチンの炭素−水素結合は水素同位体、すなわち、Hまたはプロチウム(約99.9844%)、Hまたは重水素(約0.0156%)、および(1018プロチウム原子あたり約0.5から67の間のトリチウム原子の範囲における)Hまたはトリチウムの天然に存在する分布を含有する。重水素取り込みのレベルの増加は、天然に存在するレベルの重水素を有するサクサグリプチンと比較して、サクサグリプチンの薬物動態学、薬力学、および/または毒性の特性をもたらし得る、検出可能な重水素による速度論的同位体効果(DKIE)を生じるかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らの研究室において行われた発見に基づいて、ならびに文献を考慮して、サクサグリプチンは、ヒトにおいて、種々のC−H結合で代謝される可能性がある。現在のアプローチは、これらの部位における代謝を防止するための潜在能力を有する。分子上の他の部位もまた、いまだ未知の薬理学および/または毒物学的特性を有する代謝物に導く変換を受けるかもしれない。これらの代謝物の生成の制限は、このような薬物の投与の危険性を減少させる潜在能力を有し、用量の増加および/または効力の増加を可能にさえするかもしれない。これらのすべての変換は、多型発現される酵素を通じて起こり得、患者間の変動性を悪化させる。さらに、ある障害は、対象が、一日中または長時間、薬物治療されるときに最良に治療される。前述のすべての理由のため、より長い半減期を有する医薬が、より大きな効力およびコストの節約を生じ得る。種々の重水素パターンが、(a)望ましくない代謝物を減少または除去するため、(b)親の薬物の半減期を増大させるため、(c)所望の効果を達成するために必要とされる用量の数を減少させるため、(d)所望の効果を達成するために必要とされる用量の量を減少させるため、(e)もし形成された場合に、活性代謝物の形成を増加させるため、(f)特定の組織における有害な代謝物の産生を減少させるため、ならびに/または(g)多剤投与が意図されるか否かに関わらず、多剤投与のためにより有効な薬物および/もしくはより安全な薬物を作製するために使用できる。重水素化アプローチは、サクサグリプチンの代謝を遅くし、そして患者間の変動性を弱める強い潜在能力を有する。
【0014】
その特定のものがジペプチジルペプチダーゼIV活性を阻害することが見出されている新規な化合物および薬学的組成物が、その化合物を合成および使用する方法と一緒に発見され、その方法には、本明細書に開示されるような化合物を投与することによる、患者におけるジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害の治療のための方法が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の特定の実施形態において、化合物は構造式I:
【化2】

(I)
またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを有し、ここで:
〜R25は、独立して、水素および重水素からなる群より選択され、ならびに
〜R25の少なくとも1つが重水素である。
【0016】
本明細書に開示される特定の化合物は、有用なジペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有し得、ジペプチジルペプチダーゼIVが活性のある役割を果たす障害の治療または予防において使用されてもよい。従って、特定の実施形態はまた、1種以上の本明細書に開示される化合物を、薬学的に許容可能な担体とともに含む薬学的組成物、ならびにこれらの化合物および組成物の作製方法および使用方法を提供する。特定の実施形態は、ジペプチジルペプチダーゼIV活性を阻害するための方法を提供する。他の実施形態は、本発明に従う化合物または組成物の治療有効量を上記患者に投与することを含む、ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害の治療を、そのような治療が必要である患者において行うための方法を提供する。ジペプチジルペプチダーゼIV活性の阻害によって寛解する障害の予防または治療のための医薬の製造における使用のための本明細書に開示される特定の化合物の使用もまた提供される。
【0017】
本明細書に開示されるような化合物は、炭素についての13Cまたは14C、硫黄についての33S、34S、または36S、窒素についての15N、および酸素についての17Oまたは18Oが挙げられるがこれらに限定されない、他の元素についてのあまり優勢でない同位体もまた含んでもよい。
【0018】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるような化合物中のC−D結合のすべてが代謝され、かつDOまたはDHOとして放出されると仮定すると、本明細書に開示される化合物は、最大で約0.000005% DOまたは約0.00001% DHOに患者を曝露させ得る。特定の実施形態において、動物において毒性を引き起こすことが示されているDOのレベルは、本明細書に開示されるような重水素富化化合物の投与によって引き起こされる曝露の最大限界さえよりも、はるかに高い。従って、特定の実施形態において、本明細書に開示される重水素富化化合物は、薬物代謝の際のDOまたはDHOの形成に起因する、いかなるさらなる毒性も引き起こさないはずである。
【0019】
特定の実施形態において、本明細書に開示される重水素化化合物は、最大耐量を実質的に増加させ、毒性を減少させ、半減期(T1/2)を増加させ、最小有効用量(MED)の最大血漿濃度(Cmax)を低下させ、有効用量を低下させ、従って、非機序関連毒性を減少させ、および/または薬物−薬物相互作用の可能性を減少させながら、対応する同位体なしで富化された分子の有益な側面を維持する。
【0020】
本明細書で引用されるすべての刊行物および参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。しかし、組み込まれた刊行物または参考文献と、この文書に明示的に示されるかまたは定義されたものの両方の中で、任意の類似のまたは同一の用語が見出される場合には、この文書において明示的に示されるそれらの用語の定義または意味がすべての局面において優先する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される場合、以下の用語は示された意味を有する。
【0022】
単数形「1つの」、「ある」、および「その」(「a」、「an」、「the」)は、具体的に別様に示されない限り、複数形の冠詞を指し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それが修飾する数値を形容することを意図し、このような数値を、誤差範囲内にある変数として示す。データのチャートまたは表に与えられた平均値に対して標準偏差などの特定の誤差範囲が列挙されないとき、「約」という用語は、列挙された値を包含する範囲、および、有効数字を考慮して、その数値の切り上げまたは切り捨てによって含まれる範囲を意味するものと理解されるべきである。
【0024】
値の範囲が開示され、「nから...nまで」または「n〜n」という標記が使用され、ここで、nおよびnが数字であるとき、他に特定されない限り、この表記は、数字自体、およびそれらの間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、末端の値の間の、および末端の値を含む整数または連続する数であり得る。
【0025】
「重水素富化」という用語は、分子中の所定の位置における、水素の代わりの重水素の組み込みのパーセンテージを指す。例えば、所定の位置における1%の重水素富化とは、所定のサンプルにおける1%の分子が特定の位置において重水素を含むことを意味する。天然に存在する重水素の分布は約0.0156%であるので、富化されていない出発材料を使用して合成された化合物中の任意の位置における重水素富化は約0.0156%である。重水素富化は当業者に公知である従来の分析方法を使用して決定でき、これには、質量分析および核磁気共鳴分光法が含まれる。
【0026】
〜R25または記号「D」などの分子中の所定の位置を説明するために使用されるとき、分子構造の図における所定の位置を表すために使用されるときの「重水素である」という用語は、その特定の位置が、天然に存在する重水素の分布より上回る重水素で富化されていることを意味する。1つの実施形態において、重水素富化は、特定の位置において、約1%以上の、別の実施形態においては5%以上の、別の実施形態においては10%以上の、別の実施形態においては20%以上の、別の実施形態においては50%以上の、別の実施形態においては70%以上の、別の実施形態においては80%以上の、別の実施形態においては90%以上の、または別の実施形態においては98%以上の、重水素である。
【0027】
「同位体富化」という用語は、分子中の所定の位置における元素のより優勢な同位体の代わりに、その元素のあまり優勢でない同位体の組み込みのパーセンテージを指す。
【0028】
「同位体富化されていない」という用語は、種々の同位体のパーセンテージが、天然に存在するパーセンテージと実質的に同じである分子を指す。
【0029】
不斉中心は、本明細書に開示される化合物に存在する。これらの中心は、キラル炭素原子の周辺の置換基の配置に依存して、記号「R」または「S」によって指定される。本発明は、ジアステレオマー型、エナンチオマー型、およびエピマー型、ならびにD型異性体、L型異性体、およびこれらの混合物を含むすべての立体化学的異性体を包含することが理解されるべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販の出発材料から、またはエナンチオマー生成物の混合物の調製、続いてジアステレオマーの混合物への変換などの分離、続いて分離もしくは再結晶化、クロマトグラフィー技術、キラルクロマトグラフィーカラム上でのエナンチオマーの直接分離、もしくは当該分野で公知の任意の他の適切な方法によって、合成的に調製できる。特定の立体化学の出発化合物は、市販されているか、または当該分野で公知の技術によって作製および分離できる。加えて、本明細書に開示される化合物は幾何異性体として存在してもよい。本発明は、シス、トランス、シン、アンチ、対向(E)、および結合(Z)異性体のすべて、ならびにその適切な混合物を含む。加えて、化合物は互変体として存在してもよい;すべての互変異性体が本発明によって提供される。加えて、本明細書に開示される化合物は、非溶媒和型として、ならびに、水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒との溶媒和型として存在することができる。一般的に、溶媒和型は、非溶媒和型と等価であると見なされる。
【0030】
「結合」という用語は、結合によって連結された原子が、より大きなサブ構造の一部であると見なされるときに、2つの原子間、または2つの部分間での共有結合を指す。結合は、他に特定されない限り、単結合、二重結合、または三重結合であってもよい。分子の作図における2つの原子間の波線は、その位置において、さらなる結合が存在してもよく、存在しなくてもよいことを示す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「障害」という用語は、すべての用語が、正常な機能を損なうヒトまたは動物の身体またはその部分のうちの1つの異常な状態を反映しているという点で、「疾患」、「症候群」、および(医学的容態にあるような)「容態」という用語と一般的に同義語であり、これらと交換可能に使用されるよう意図され、典型的には、際立った徴候および症状によって現れる。
【0032】
「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、障害もしくは障害に関連する1つ以上の症状を軽減もしくは無効にし;または障害自体の原因を軽減もしくは撲滅することを含むことを意味する。本明細書で使用される場合、障害の「治療」に対する引用は、予防を含むことが意図される。「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、障害および/もしくはその付随する症状の発症を遅延もしくは排除する方法、対象が障害を獲得することを妨害する方法、または対象が障害を獲得するリスクを減少させる方法を指す。
【0033】
「治療有効量」という用語は、投与されたときに、治療される障害の症状の1つ以上の発症を予防するか、またはその徴候をある程度まで軽減するために十分な化合物の量を指す。「治療有効量」という用語はまた、研究者、獣医、医師、または臨床医によって追究されている、細胞、組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するために十分である化合物の量も指す。
【0034】
「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、齧歯動物(例えば、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、フェレットなど)、ウサギ、ブタ(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ、イヌ、ネコなどを含むがこれらに限定されない動物を指す。「対象」および「患者」は、例えば、ヒト患者などの哺乳動物対象に対する引用において、本明細書では交換可能に使用される。
【0035】
「組み合わせ治療」とは、本開示において記載される治療される障害を治療するための2種以上の治療剤の投与を意味する。このような投与は、混合比率の活性成分を有する単一のカプセル中、または各活性成分についての複数の別々のカプセル中などでの、実質的に同時様式であるこれらの治療剤の同時投与を包含する。加えて、このような投与は、逐次様式での各種類の治療剤の使用もまた包含する。いずれの場合においても、治療計画は、本明細書に記載される障害を治療する際の薬物の組み合わせの有益な効果を提供する。
【0036】
「ジペプチジルペプチダーゼIV」という用語は、L−プロリンまたはL−アラニンを有するポリペプチドからN末端ジペプチドを切断する、高度に特異的なセリンプロテアーゼを指す。ジペプチジルペプチダーゼIVの主要な役割は、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)の不活性化である。ジペプチジルペプチダーゼIVの阻害は、活性型のGLP−1のレベルの増加を生じる。GLP−1は、腸における最も豊富な内分泌細胞であるL細胞から腸によって食物に応答して分泌されるホルモンである。インスリン産生を刺激することに加えて、GLP−1分泌は、胃内容排出を遅くし、グルカゴン分泌を阻害し、そして食欲を減少させると考えられている。GLP−1分泌は、糖尿病ではないヒトと比較して、糖尿病患者では食事の摂取に応答して有意に減少する。2型糖尿病の患者におけるより低いGLP−1レベルは、この疾患の結果であって原因ではないと考えられている。ジペプチジルペプチダーゼIV阻害および結果としての活性GLP−1レベルの保存は、インスリン遺伝子発現および生合成を刺激すること、ベータ細胞のグルコース感知機序の発現を増加させること、およびベータ細胞の分化に関与する遺伝子を促進することによって、II型糖尿病の進行を遅延または予防さえする潜在能力を有する。
【0037】
「ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害」という用語は、異常なジペプチジルペプチダーゼIV活性、異常なグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)活性、または異常な血中グルコースホメオスタシスによって特徴付けられる障害を指す。ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害は、ジペプチジルペプチダーゼIV活性を調節することによって、完全にまたは部分的に媒介され得る。特に、ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害は、ジペプチジルペプチダーゼIV活性の阻害が、根底にある障害に対して何らかの効果を生じるものであり、例えば、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の投与は、治療される患者の少なくとも何個体かにおいて、ある程度の改善を生じる。
【0038】
「ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤」という用語は、本明細書に開示される化合物がジペプチジルペプチダーゼIVの機能を変化させる能力を指す。ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、阻害剤とジペプチジルペプチダーゼIVの間で共有結合を可逆的もしくは不可逆的に形成することによって、または非共有結合複合体の形成を通じて、ジペプチジルペプチダーゼIVの活性を遮断または減少し得る。このような阻害は、特定の細胞種においてのみ現れ得、または特定の生物学的事象に対して偶発的であり得る。「ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤」という用語はまた、ジペプチジルペプチダーゼIVと天然の基質との間で複合体が形成する確率を減少させることによって、ジペプチジルペプチダーゼIVの機能を変化させることも指す。ある実施形態において、ジペプチジルペプチダーゼIVの阻害は、Miller et al.,Formulary 2008,43,122−34;およびAugeri et al.,J.Med.Chem.,2005,48(15),5025−5037において記載される方法を使用して評価されてもよい。
【0039】
「ジペプチジルペプチダーゼIV活性の阻害」または「ジペプチジルペプチダーゼIV活性を阻害する」という用語は、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を投与することによって、ジペプチジルペプチダーゼIVの活性を変化させることを指す。
【0040】
「治療的に許容可能な」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性を伴わない患者の組織との接触における使用のために適切であり、合理的な損益比と釣り合っており、かつそれらの意図する用途のために有効である、化合物(または塩、プロドラッグ、互変体、双性イオン形態など)を指す。
【0041】
「薬学的に許容可能な担体」、「薬学的に許容可能な賦形剤」、「生理学的に許容可能な担体」、または「生理学的に許容可能な賦形剤」という用語は、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料などの薬学的に許容可能な材料、組成物、またはビヒクルを指す。各成分は、薬学的製剤の他の成分と適合するという意味において、「薬学的に許容可能」でなければならない。これはまた、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織または器官との接触における使用のために適切であり、合理的な損益比と釣り合っていなければならない。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition;Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Edition;Rowe et al.,Eds.,The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2005;およびHandbook of Pharmaceutical Additives,3rd Edition;Ash and Ash Eds.,Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,Gibson Ed.,CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2004)を参照のこと。
【0042】
「活性成分」、「活性化合物」、および「活性物質」という用語は、障害の1つ以上の症状を治療、予防、または寛解させるために、単独でまたは1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体と組み合わせて、対象に投与される化合物を指す。
【0043】
「薬物」、「治療剤」、および「化学療法剤」という用語は、障害の1つ以上の症状を治療、予防、または寛解させるために対象に投与される、化合物またはその薬学的に許容可能な組成物を指す。
【0044】
「放出制御賦形剤」とは、その主たる機能が、従来的な即時放出剤形と比較した場合に、剤形からの活性物質の放出の持続時間またはその場所を改変することである賦形剤を指す。
【0045】
「非放出制御賦形剤」とは、その主たる機能には、従来的な即時放出剤形と比較した場合に、剤形からの活性物質の放出の持続時間またはその場所を改変することが含まれない賦形剤を指す。
【0046】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書に開示されるような化合物の化合物機能的誘導体をいい、インビボで親化合物に容易に変換可能である。ある状況において、プロドラッグは親化合物よりも投与することが容易であり得るため、プロドラッグはしばしば有用である。これらは、例えば、経口投与によって生物的に利用でき得るのに対して、親化合物はそうではない。プロドラッグはまた、親化合物よりも高い薬学的組成物中での溶解度を有し得る。プロドラッグは、酵素プロセスおよび代謝的加水分解を含む種々の機序によって、親の薬物に変換され得る。Harper,Progress in Drug Research 1962,4,221−294;Morozowich et al.in“Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,”Roche Ed.,APHA Acad.Pharm.Sci.1977;“Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,”Roche Ed.,APHA Acad.Pharm.Sci.1987;“Design of Prodrugs,”Bundgaard,Elsevier,1985;Wang et al.,Curr.Pharm.Design 1999,5,265−287;Pauletti et al.,Adv.Drug.Delivery Rev.1997,27,235−256;Mizen et al.,Pharm.Biotech.1998,11,345−365;Gaignault et al.,Pract.Med.Chem.1996,671−696;Asgharnejad in“Transport Processes in Pharmaceutical Systems,”Amidon et al.,Ed.,Marcell Dekker,185−218,2000;Balant et al.,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.1990,15,143−53;Balimane and Sinko,Adv.Drug Delivery Rev.1999,39,183−209;Browne,Clin.Neuropharmacol.1997,20,1−12;Bundgaard,Arch.Pharm.Chem.1979,86,1−39;Bundgaard,Controlled Drug Delivery 1987,17,179−96;Bundgaard,Adv.Drug Delivery Rev.1992,8,1−38;Fleisher et al.,Adv.Drug Delivery Rev.1996,19,115−130;Fleisher et al.,Methods Enzymol.1985,112,360−381;Farquhar et al.,J.Pharm.Sci.1983,72,324−325;Freeman et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1991,875−877;Friis and Bundgaard,Eur.J.Pharm.Sci.1996,4,49−59;Gangwar et al.,Des.Biopharm.Prop.Prodrugs Analogs,1977,409−421;Nathwani and Wood,Drugs 1993,45,866−94;Sinhababu and Thakker,Adv.Drug Delivery Rev.1996,19,241−273;Stella et al.,Drugs 1985,29,455−73;Tan et al.,Adv.Drug Delivery Rev.1999,39,117−151;Taylor,Adv.Drug Delivery Rev.1996,19,131−148;Valentino and Borchardt,Drug Discovery Today 1997,2,148−155;Wiebe and Knaus,Adv.Drug Delivery Rev.1999,39,63−80;Waller et al.,Br.J.Clin.Pharmac.1989,28,497−507を参照のこと。
【0047】
本明細書に開示される化合物は、治療的に許容可能な塩として存在することができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」とは、本明細書に定義されるように治療的に許容可能である、本明細書に開示される化合物の塩または双性イオン型を表す。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製の間に、または適切な酸もしくは塩基と適切な化合物を反応させることによって別に調製することができる。治療的に許容可能な塩には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。塩の調製および選択のより完全な考察については、“Handbook of Pharmaceutical Salts,Properties,and Use,”Stah and Wermuth,Ed.,(Wiley−VCH and VHCA,Zurich,2002)およびBerge et al.,J.Pharm.Sci.1977,66,1−19を参照のこと。
【0048】
薬学的に許容可能な塩の調製における使用のために適切な酸には、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ホウ酸、(+)−ショウノウ酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、スルファミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、D−グルクロン酸、L−グルタミン酸、α−オキソ−グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、過塩素酸、リン酸、L−ピログルタミン酸、糖酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、および吉草酸が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
薬学的に許容可能な塩の調製における使用のために適切な塩基には、無機塩基、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化亜鉛、または水酸化ナトリウム;ならびに有機塩基、例えば、L−アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エタノールアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、イソプロピルアミン、N−メチル−グルカミン、ヒドラバミン、1H−イミダゾール、L−リシン、モルホリン、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、メチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、プロピルアミン、ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリジン、ピリジン、キヌクリジン、キノリン、イソキノリン、第二級アミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチル−D−グルカミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、およびトロメタミンを含む、第一級、第二級、第三級、および第四級の脂肪族および芳香族アミンが含まれるがこれらに限定されない。
【0050】
本発明の化合物が未処理の化学物質として投与されることは可能であり得るが、これらを薬学的組成物として呈することもまた可能である。従って、本明細書に開示される1種以上の特定の化合物、またはその1種以上の薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、もしくは溶媒を、その1種以上の薬学的に許容可能な担体、および任意に1種以上の他の治療成分とともに含む、薬学的組成物が本明細書に提供される。適切な製剤は、選択された投与の経路に依存する。任意の周知の技術、担体、および賦形剤が、適切なようにかつ当該分野において;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて理解されるように使用されてもよい。本明細書に開示される薬学的組成物は、当該分野において公知である任意の様式で、例えば、従来的な混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入、または圧縮のプロセスによって製造されてもよい。薬学的組成物はまた、遅延放出、拡張放出、延長放出、持続放出、パルス状放出、制御放出、加速放出および迅速放出、標的化放出、プログラム化放出、および胃貯留の剤形を含む、改変放出剤形として製剤化されてもよい。これらの剤形は、当業者に公知である従来的な方法および技術に従って調製することができる(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、前出;Modified−Release Drug Deliver Technology,Rathbone et al.,Eds.,Drugs and the Pharmaceutical Science,Marcel Dekker,Inc.:New York,NY,2002;Vol.126を参照のこと)。
【0051】
これらの組成物は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、および髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、および局所的(真皮、頬側、舌下、および眼内を含む)投与のために適切なものを含むが、最も適切な経路は、例えば、レシピエントの容態および障害に依存し得る。これらの組成物は、単位剤形で便利に呈されてもよく、製薬学の分野において周知である方法のいずれかによって調製されてもよい。典型的には、これらの方法は、本発明の化合物またはその薬学的な塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物(「活性成分」)を、1種以上の補助成分を構成する担体と一緒にする工程を含む。一般的には、これらの組成物は、活性成分を、液体担体または微細に分割された固体担体または両方を均一かつ密接に一緒にすること、次いで、必要な場合、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
【0052】
経口投与のために適切な本明細書に開示される化合物の製剤は、各々が所定量の活性成分を含むカプセル剤、サシェ剤、もしくは錠剤などの別個の単位として;散剤もしくは顆粒剤として;水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油液体エマルションもしくは油中水液体エマルションとして呈されてもよい。活性成分は、巨丸剤、舐剤、またはペースト剤として呈されてもよい。
【0053】
経口的に使用できる薬学的調製物には、錠剤、ゼラチン製押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤でできた軟質密封カプセル剤が含まれる。錠剤は、圧縮または成型によって、任意に1種以上の補助成分とともに製造されてもよい。圧縮錠剤は、任意に結合剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤、または分散剤と混合された、散剤または顆粒剤などの自由流動型の活性成分を、適切な機械の中で圧縮することによって調製されてもよい。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械の中で成型することによって製造されてもよい。錠剤は任意にコートされまたは刻み目をつけられて(scored)もよく、その中の活性成分の遅延放出または制御放出を提供するように製剤化されてもよい。経口投与のためのすべての製剤は、このような投与のために適切な剤形であるべきである。押し込み型カプセル剤は、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および任意に、安定剤と混合して含むことができる。軟質カプセル中では、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解または懸濁されてもよい。加えて、安定剤が加えられてもよい。糖衣錠コアは適切なコーティングとともに提供される。この目的のために、濃縮糖溶液が使用されてもよく、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合液を含んでもよい。染料または色素が、識別のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられてもよい。
【0054】
これらの化合物は、注射による、例えば、急速注射または連続注入による非経口投与のために製剤化されてもよい。注射のための製剤は、単位剤形で、例えば、保存料が加えられたアンプルまたは複数用量容器で呈されてもよい。これらの組成物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性ビヒクル中でのエマルションのような形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの処方剤を含んでもよい。製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルの中で呈されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水または滅菌した発熱物質非含有水の添加のみを必要とする粉末型またはフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存されてもよい。即席の注射溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の、滅菌した散剤、顆粒剤、および錠剤から調製されてもよい。
【0055】
非経口投与のための製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、およびその製剤と意図するレシピエントの血液とを等張性にする溶質を含んでもよい、活性化合物の水性または非水性(油性)滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでもよい、水性および非水性懸濁液が挙げられる。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでもよい。任意に、この懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、適切な安定剤または化合物の溶解度を増加させる薬剤もまた含んでもよい。
【0056】
以前に記載された製剤に加えて、これらの化合物はまた、デポー調製物として製剤化されてもよい。このような長時間作用する製剤は、(例えば、皮下または筋肉内)移植によってまたは筋肉内注射によって投与されてもよい。従って、例えば、これらの化合物は、適切なポリマー性または疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルションとして)もしくはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化されてもよい。
【0057】
頬側投与または舌下投与のために、これらの組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤、ロゼンジ剤、パルテル剤、またはゲル剤の形を取ってもよい。このような組成物は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの調味系の基剤中に活性成分を含んでもよい。
【0058】
これらの化合物は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、または他のグリセリドなどの従来的な坐剤基剤を含む、坐剤または保持浣腸剤などの直腸組成物中で製剤化されてもよい。
【0059】
本明細書に開示される特定の化合物は局所的に投与されてもよく、これは、非全身性投与による。これには、表皮または頬腔への外面的な本明細書に開示される化合物の適用、ならびに耳、眼、および鼻へのこのような化合物の滴下が含まれ、その結果、化合物は有意に血流に入らない。対照的に、全身投与は、経口、静脈内、腹腔内、および筋肉内の投与を指す。
【0060】
局所投与のために適切な製剤には、ゲル、塗布薬、ローション、クリーム、軟膏、またはペーストなどの炎症の部位に皮膚を通して浸透させるのに適切な液体または半液体調製物、および眼、耳、または鼻への投与のために適切な滴下薬が含まれる。
【0061】
吸入による投与のために、化合物は、吸入器、噴霧器、加圧パック、またはエアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から送達されてもよい。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適切な気体などの適切な推進剤を含んでもよい。加圧エアロゾルの場合において、投薬量単位は、計量された量を送達するためにバルブを提供することによって決定されてもよい。あるいは、吸入またはガス注入による投与のために、本発明に従う化合物は、乾燥粉末組成物、例えば、その化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物の形を取ってもよい。粉末組成物は、粉末が吸入器またはガス注入器を用いて投与されてもよい、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン、またはブリスター中の単位剤形中で呈されてよい。
【0062】
好ましい単位用量製剤は、本明細書で以下に列挙されるように、活性成分の有効用量、またはその適切な何分の1かを含むものである。
【0063】
化合物は、1日あたり0.1〜500mg/kgの用量で経口的にまたは注射を介して投与されてもよい。成人ヒトのための用量範囲は、一般的には、5mg〜2g/日である。別々の単位で提供される提示の錠剤または他の剤形は、このような投薬量でまたは複数のこのような投薬量として有効である1種以上の化合物の量を便利に含んでもよく、例えば、5mg〜500mg、通常、およそ10mg〜200mgを含む単位である。
【0064】
単一剤形を生じるために担体材料と組み合わせてもよい活性成分の量は、治療される宿主および投与の特定の様式に依存して変動する。
【0065】
化合物は、種々の様式で、例えば、経口的、局所的、または注射によって投与できる。患者に投与される正確な量は担当医の責任である。任意の特定の患者のための具体的な用量レベルは、採用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、摂食、投与の時間、投与の経路、排出の速度、薬物の組み合わせ、治療される正確な障害、および治療される障害の重篤度を含む、種々の因子に依存する。また、投与の経路は、障害およびその重篤度に依存して変動し得る。
【0066】
患者の容態が改善されない場合において、患者の障害の症状を寛解、またはさもなくば、制御もしくは制限するために、医師の裁量に従って、化合物の投与は長期的に、すなわち、患者の寿命の全体の期間を含む長い時間、投与されてもよい。
【0067】
患者の状態が改善される場合において、医師の裁量に従って、化合物の投与は、継続してまたは特定の長さの時間、一時停止してもよい(すなわち、「休薬期間」)。
【0068】
一旦、患者の容態の改善が行われると、必要な場合、維持用量が投与される。引き続いて、投薬量または投与の頻度、またはその両方は、症状の関数として、改善された障害が保持されるレベルまで減少できる。しかし、患者は、任意の症状の再発に基づき、長期的体制で断続的治療を必要とする。
【0069】
ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害を治療する方法が本明細書に開示され、その方法は、このような障害を有するか、またはこのような障害を有することが疑われる対象に、本明細書に開示されるような治療有効量の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを投与することを含む。
【0070】
ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害には、代謝性障害、II型糖尿病、空腹時血漿グルコース異常の障害、グルコース耐性異常の障害、高血糖症、高脂血症、高インスリン血症、高脂質血症、食欲調節、肥満、代謝性アシドーシス、ケトーシス、女性不妊、胃腸障害、皮膚科的障害、自己免疫障害、関節リウマチ(rhematoid arthritis)、および/またはジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を投与することによって減少、軽減、または予防できる任意の障害が含まれるがこれらに限定されない。
【0071】
特定の実施形態において、ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害を治療する方法は、(1)化合物またはその代謝物の血漿レベルの個体間での変動の減少;(2)化合物の平均血漿レベルの増加、または用量単位あたりの化合物の少なくとも1種の代謝物の平均血漿レベルの減少;(3)対象中のシトクロムP450もしくはモノアミンオキシダーゼアイソフォームの少なくとも1種の阻害、および/もしくはそれによる代謝の減少;(4)対象における少なくとも1種の多型発現されたシトクロムP450アイソフォームを介した代謝の減少;(5)少なくとも1つの統計学的に有意な障害の制御および/もしくは障害の根絶評価項目の改善;(6)障害の治療の間の臨床効果の改善、(7)一次的な臨床的利益としての異常な食餌性パラメータもしくは肝臓パラメータの再発の予防、または減少もしくは出現の遅延、または(8)対応する非同位体富化されている化合物と比較して、任意の診断的な肝胆道機能の評価項目の有害な変化の減少もしくは根絶に影響を与えるように、本明細書に開示されるような化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、またはプロドラッグの治療有効量を対象に投与することを包含する。
【0072】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるような化合物またはその代謝物の血漿レベルの個体間での変動が減少し;本明細書に開示されるような化合物の平均血漿レベルが増加し;本明細書に開示されるような化合物の代謝物の平均血漿レベルが減少し;本明細書に開示されるような化合物によるシトクロムP450アイソフォームもしくはモノアミンオキシダーゼアイソフォームの阻害が減少し;または多型発現した少なくとも1種のシトクロムP450アイソフォームによる本明細書に開示されるような化合物の代謝が減少し;これは、同位体富化されていない化合物と比較した場合に、約5%より多く、約10%より多く、約20%より多く、約30%より多く、約40%より多く、または約50%より多い。
【0073】
本明細書に開示される化合物、またはその代謝物の血漿レベルは、Li et al.Rapid Communications in Mass Spectrometry 2005,19,1943−1950; Herman et al.,Clinical Pharmacology & Therapeutics 2005,78(6),675−688;Fura et al.,Drug Metabolism and Disposition 2009,37(6),1164−1171およびそこに引用される参考文献によって記載された方法、およびそれになされる任意の変法を使用して測定されてもよい。
【0074】
哺乳動物対象におけるシトクロムP450アイソフォームの例には、CYP1A1、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2A13、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C18、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP2G1、CYP2J2、CYP2R1、CYP2S1、CYP3A4、CYP3A5、CYP3A5P1、CYP3A5P2、CYP3A7、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4F11、CYP4F12、CYP4X1、CYP4Z1、CYP5A1、CYP7A1、CYP7B1、CYP8A1、CYP8B1、CYP11A1、CYP11B1、CYP11B2、CYP17、CYP19、CYP21、CYP24、CYP26A1、CYP26B1、CYP27A1、CYP27B1、CYP39、CYP46、およびCYP51が含まれるがこれらに限定されない。
【0075】
哺乳動物対象におけるモノアミンオキシダーゼアイソフォームの例には、MAOおよびMAOが含まれるがこれらに限定されない。
【0076】
シトクロムP450アイソフォームの阻害は、Ko et al.,British Journal of Clinical Pharmacology 2000,49,343−351の方法によって測定される。MAOアイソフォームの阻害は、Weyler et al.,J.Biol Chem.1985,260,13199−13207の方法によって測定される。MAOアイソフォームの阻害は、Uebelhack et al.,Pharmacopsychiatry 1998, 31,187−192の方法によって測定される。
【0077】
哺乳動物対象において多型発現されるシトクロムP450アイソフォームの例には、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、およびCYP2D6が含まれるがこれらに限定されない。
【0078】
肝ミクロソーム、シトクロムP450アイソフォーム、およびモノアミンオキシダーゼの代謝活性は、本明細書に記載される方法によって測定される。
【0079】
障害制御および/もしくは障害根絶の改善または臨床効果の改善の評価項目の例には、胃内容排出の速度の減少、血漿トリグリセリドレベルの減少、空腹時血漿グルコースの減少、血漿活性GLP−1レベルの増加、血糖制御の改善、およびベータ細胞機能の改善が含まれるがこれらに限定されない(Drug Report for Saxagliptin,Thomson Investigational Drug Database(Sep.15,2008);Rosenstock et al.,Diabetes Obesity Metabol.2008,10,376−386;およびMiller et al.,Formulary 2008,43,122−34)。
【0080】
診断的な肝胆機能の評価項目の例には、アラニンアミノトランスフェラーゼ(「ALT」)、血清グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(「SGPT」)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(「AST」または「SGOT」)、ALT/AST比率、血清アルドラーゼ、アルカリホスファターゼ(「ALP」)、アンモニアレベル、ビリルビン、ガンマ−グルタミルトランスペプチダーゼ(「GGTP」、「γ−GTP」、または「GGT」)、ロイシンアミノペプチダーゼ(「LAP」)、肝生検、肝超音波検査、肝核スキャン、5’−ヌクレオチダーゼ、および血液タンパク質が含まれるがこれらに限定されない。肝胆機能の評価項目は、「Diagnostic and Laboratory Test Reference」第4版、Mosby,1999において与えられるような言及される正常レベルと比較される。これらのアッセイは、認定された研究室によって、標準的なプロトコールに従って実行される。
【0081】
ヒト治療のために有用であること以外に、本明細書に開示される特定の化合物および製剤はまた、哺乳動物、齧歯動物などを含む、コンパニオンアニマル、外来動物、および家畜の獣医的治療のために有用でもあり得る。より好ましい動物には、ウマ、イヌ、およびネコが含まれる。
【0082】
組み合わせ治療
本明細書に開示される化合物はまた、ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害の治療において有用である他の薬剤と組み合わせてもよいか、またはそれとの組み合わせで使用してもよい。または、単なる例示として、本明細書に記載される1つの化合物の治療有効性は、アジュバントの投与によって増強され得る(すなわち、それ自体で、アジュバントは最小限の治療的有益性を有するのみであるかもしれないが、別の治療剤との組み合わせでは、患者に対する全体の治療的利益は増強される)。
【0083】
このような他の薬剤、アジュバント、または薬物は、そのために一般的に使用される経路および量で、本明細書に開示されるような化合物と同時にまたは逐次的に投与されてもよい。本明細書に開示されるような化合物が1種以上の他の薬物とともに同時期に使用されるとき、本明細書に開示される化合物に加えてこのような他の薬物を含む薬学的組成物が利用されてもよいが、必要とされるわけではない。
【0084】
特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物は、1種以上のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、抗糖尿病薬、脂質低下薬、抗肥満薬または食欲調節剤、および血圧降下薬とともに組み合わせることができる。
【0085】
特定の実施形態において、上記1種以上のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、ビルダグリプチン、リナグリプチン、シタグリプチン、およびアログリプチンからなる群より選択される。
【0086】
抗糖尿病薬の例には、インスリン、インスリン誘導体およびインスリン模倣物;インスリン分泌促進剤、例えば、スルホニルウレア(グリピジド、グリブリド、もしくはアマリール);インスリン分泌促進性スルホニルウレア受容体リガンド、例えば、メグリチニド(例えば、ナテグリニドもしくはレパグリニド);インスリン増感剤、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤(例えば、PTP−112);G8K3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3)阻害剤、例えば、8B−517955、8B4195052、8B−216763、NN−57−05441、もしくはNN−57−05445;RXRリガンド、例えば、GW−0791もしくはAGN−194204;ナトリウム依存性グルコースコトランスポーター阻害剤、例えば、T−1095;グリコーゲンホスホリラーゼA阻害剤、例えば、BAY R3401;ビグアニド、例えば、メトホルミン;アルファーグリコシダーゼ阻害剤、例えば、アカルボース;GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)GLP−1アナログおよび模倣物、例えば、エキセンジン−4;AGEブレーカー;およびチアゾリドン誘導体、例えば、グリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、もしくは(R)−1−{4−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−オキサゾール−4−イルメトキシ]−ベンゼンスルホニル}−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸(WO 03/043985の実施例19の化合物4)、または非グリタゾン型PPARアゴニスト(例えば、GI−262570)が含まれる。
【0087】
脂質低下薬の例には、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルコエンザイムA(HMGCoA)還元酵素阻害剤、例えば、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、もしくはリバスタチン;スクアレンシンターゼ阻害剤;FXR(ファルネソイドX受容体)リガンド;LXR(肝臓X受容体)リガンド;コレスチラミン;フィブレート;ニコチン酸;およびアスピリンが含まれる。
【0088】
抗肥満薬/食欲調節剤の例には、フェンテルミン、レプチン、ブロモクリプチン、デキサムフェタミン、アンフェタミン、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、シブトラミン、オーリスタット、デクスフェンフルラミン、マジンドール、フェンテルミン、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フルオキセチン、ブプロピオン、トピラメート、ジエチルプロピオン、ベンズフェタミン、フェニルプロパノールアミンまたはエコピパム、エフェドリン、プソイドエフェドリン;およびカンナビノイド受容体アンタゴニスト、例えば、リモナバントが含まれる。
【0089】
血圧降下薬の例には、ループ利尿薬、例えば、エタクリン酸、フロセミド、もしくはトルセミド;利尿薬、例えば、チアジド誘導体、クロリチアジド、ヒドロクロロチアジド、もしくはアミロリド;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル(Iisinopril)、モエキシプリル、ペリノドプリル、キナプリル、ラミプリル、もしくはトランドプリル;Na−K−ATPase膜ポンプ阻害剤、例えば、ジゴキシン;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤、例えば、チオルファン、テルテオ(terteo)−チオルファン、もしくはSQ29072;ECE阻害剤、例えば、SLV306;二重ACE/NEP阻害剤、例えば、オマパトリラット、サムパトリラット、もしくはファシドトロリル;アンジオテンシンIIアンタゴニスト、例えば、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、もしくはバルサルタン;レニン阻害剤、例えば、アリスキレン、テルラキレン、ジテキレン、RO−66−1132、もしくはRO−66−1168;b−アドレナリン作動性受容体ブロッカー、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、もしくはチモロール;変力薬、例えば、ジゴキシン、ドブタミン、もしくはミルリノン;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、もしくはベラパミル;アルドステロン受容体アンタゴニスト;およびアルドステロンシンターゼ阻害剤が含まれる。
【0090】
本明細書に開示される化合物はまた、他のクラスの化合物と組み合わせて投与でき、この他のクラスの化合物には以下が含まれるがそれらに限定されない:抗レトロウイルス剤;CYP3A阻害剤;CYP3A誘導剤;プロテアーゼ阻害剤;抗コリン作動性剤;肥満細胞安定剤;キサンチン;ロイコトリエンアンタゴニスト;グルココルチコイド処理;局所的もしくは一般的な麻酔;非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えば、ナプロキセン;抗菌剤、例えば、アモキシシリン;コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、例えば、アナセトラピブ;抗真菌剤、例えば、イソコナゾール;敗血症治療、例えば、ドロトレコジン−α;ステロイド薬、例えば、ヒドロコルチゾン;局所的もしくは一般的な麻酔薬、例えば、ケタミン;ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、例えば、アトモキセチン;ドーパミン再取り込み阻害剤(DARI)、例えば、メチルフェニデート;セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、例えば、ミルナシプラン;鎮痛剤、例えば、ジアゼパム(diazepham);ノルエピネフリン−ドーパミン再取り込み阻害剤(NDRI)、例えば、ブプロピオン;セロトニン−ノルエピネフリン−ドーパミン再取り込み阻害剤(SNDRI)、例えば、ベンラファクシン;モノアミンオキシダーゼ阻害剤、例えば、セレギリン;視床下部リン脂質;オピオイド、例えば、トラマドール;トロンボキサン受容体アンタゴニスト、例えば、イフェトロバン;カリウムチャネル開口薬;トロンビン阻害剤、例えば、ヒルジン;視床下部リン脂質;増殖因子阻害剤、例えば、PDGF活性の調節因子;血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト;抗血小板薬、例えば、GPIIb/IIIa遮断薬(例えば、アブドキシマブ、エプチフィバチド、およびチロフィバン)、P2Y(AC)アンタゴニスト(例えば、クロピドグレル、チクロピジン、およびCS−747);抗凝血剤、例えば、ワーファリン;低分子量ヘパリン、例えば、エノキサパリン;第VIIa因子阻害剤および第Xa因子阻害剤;レニン阻害剤;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;バソペプシダーゼ阻害剤(二重NEP−ACE阻害剤)、例えば、オマパトリラットおよびゲモパトリラット;胆汁酸封鎖剤、例えば、クエストラン;ナイアシン;抗アテローム性疾患薬、例えば、ACAT阻害剤;MTP阻害剤;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ベシル酸アムロジピン;カリウムチャネル活性化因子;アルファ−ムスカリン様作用薬;ベータ−ムスカリン様作用薬、例えば、カルベジロールおよびメトプロロール;不整脈治療剤;利尿薬、例えば、クロロチアジド(chlorothlazide)、ヒドロクロロチアジド(hydrochiorothiazide)、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロロチアジド、トリクロロメチアジド(trichioromethiazide)、ポリチアジド、ベンゾトラジド、エタクリン酸、トリクリナフェン、クロルタリドン、フロセニルド、ムコリミン、ブメタニド、トリアムテレン、アミロリド、およびスピロラクトン;血栓溶解剤、例えば、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、組換えtPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、およびアニソール化プラスミノゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC);抗糖尿病薬、例えば、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)、インスリン、メグリチニド(例えば、レパグリド)、スルホニルウレア(例えば、グリメピリド、グリブリド、およびグリピジド)、チオゾリジンジオン(例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン、およびピオグリタゾン)、およびPPAR−ガンマアゴニスト;鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、例えば、スピロノラクトンおよびエプレレノン;成長ホルモン分泌促進剤;aP2阻害剤;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、PDE III阻害剤(例えば、シロスタゾール)およびPDE V阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;抗炎症剤;抗増殖剤、例えば、メトトレキサート;FK506(タクロリムス、Prograf)、ミコフェノール酸モフェチル;化学療法剤;免疫抑制剤;抗癌剤および細胞毒性剤(例えば、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、エチレンイミン、およびトリアゼン);代謝拮抗剤、例えば、葉酸アンタゴニスト、プリンアナログ、およびピリジンアナログ;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、およびプリカマイシン;酵素、例えば、L−アスパラギナーゼ;ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ホルモン剤、例えば、糖質コルチコイド(例えば、コルチゾン)、エストロゲン/アンチエストロゲン、アンドロゲン/アンチアンドロゲン、プロゲスチン、および黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、およびオクトレチドアセテート;微小管破壊剤、例えば、エクチナサイジン;微小管安定剤、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、およびエポチロンA−F;植物由来産物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、およびタキサン;およびトポイソメラーゼ阻害剤;プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;およびシクロスポリン;ステロイド、例えば、プレドニゾンおよびデキサメタゾン;細胞毒性剤、例えば、アザチプリンおよびシクロホスファミド;TNFアルファ阻害剤、例えば、テニダップ;抗TNF抗体または可溶性TNF受容体、例えば、エタネルセプト、ラパマイシン、およびレフルノミド(leflunimide);およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、例えば、セレコニブおよびロフェコニブ;およびその他の薬剤、例えば、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、金化合物、白金配位錯体、例えば、シスプラチン、サトラプラチン、およびカルボプラチン。
【0091】
従って、別の態様において、特定の実施形態は、ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害を治療する必要のあるヒトまたは動物対象におけるジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害を治療するための方法を提供し、この方法は、対象における上記障害を減少または予防するために有効な量の本明細書に開示された化合物を、上記障害の治療のための少なくとも1種のさらなる薬剤と組み合わせて、上記対象に投与することを含む。関連する態様において、特定の実施形態は、ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害の治療のための1種以上のさらなる薬剤と組み合わせた、本明細書に開示された少なくとも1種の化合物を含む治療組成物を提供する。
【0092】
化合物を調製するための一般的な合成方法
同位体水素は、重水素試薬を利用する合成技術によって本明細書に開示されるような化合物に導入でき、それによって、組み込み率はあらかじめ決定され;および/または交換技術によって導入でき、この場合は、組み込み率は平衡状態によって決定され、反応条件に依存して高度に変動性であり得る。トリチウムまたは重水素が、既知の同位体含量のトリチウム化または重水素化試薬によって、直接的かつ特異的に挿入される合成技術は、多量のトリチウムまたは重水素を生じ得るが、必要とされる化学反応によって制限され得る。他方では、交換技術が、より低いトリチウムまたは重水素の組み込みを生じ得、しばしば、分子上の多くの部位にわたって同位体が分布している。
【0093】
本明細書に開示されるような化合物は、当業者に公知の方法およびその慣例的な変法によって、ならびに/または本明細書に記載される手順と類似の手順およびその慣例的な変法に従って、ならびに/または、これらの全体が本明細書により組み込まれるAugeri et al.,J.Med.Chem.2005,48(15),5025−37,US 20050090539、およびそこに引用される参考文献、およびその慣例的な変法において見出される手順に従って調製することができる。本明細書に開示される化合物はまた、以下のスキーム及びその慣例的な変法のいずれかにおいて示されるとおり調製することもできる。
【0094】
以下のスキームは本発明を実施するために使用できる。水素として示される任意の位置が重水素で任意に置き換えられてもよい。
スキームI
【化3】

【0095】
化合物1は、テトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で、水素化アルミニウムリチウムなどの適切な還元剤と反応させて、化合物2を得る。化合物2は、トリエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中で、塩化オキサリルおよびジメチルスルホキシドの組み合わせなどの適切な酸化剤で処理して、化合物3を得る。化合物3は、亜硫酸水素ナトリウムの存在下で、水およびメタノールの混合液などの適切な溶媒中で、シアン化カリウムなどの適切なシアン化物塩と、および化合物4と反応させ、化合物5を得る。化合物5は、酢酸などの適切な溶媒中で、濃塩酸などの適切な酸で処理して、化合物6を得る。化合物6は、水およびメタノールの混合液などの適切な溶媒中で、水素ガスと炭素上の水酸化パラジウムなどの適切な触媒の組み合わせなどの適切な還元剤と反応させ、化合物7を得る。化合物7は、N,N−ジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中で、炭酸カリウムなどの適切な塩基の存在下で、ジ−tert−ブチルジカルボネートなどの適切な保護剤と反応させ、化合物8を得る。化合物8は、水などの適切な溶媒中で、水酸化カリウムなどの適切な塩基の存在下で、過マンガン酸カリウムなどの適切な酸化剤と反応させ、化合物9を得る。化合物9は、N,N−ジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中で、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよび塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの混合物などの適切なカップリング剤の存在下で、トリエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で、化合物10と反応させ、化合物11を得る。化合物11は、テトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で、ピリジンなどの適切な塩基の存在下で、無水トリフルオロ酢酸などの適切な脱水剤と反応させ、化合物12を得る。化合物12は、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中で、トリフルオロ酢酸などの適切な酸で脱保護し、化学式Iの化合物13を得る。
【0096】
重水素は、適切な重水素中間体を使用することによって、スキームIに示されるような合成手順に従って合成的に組み込むことができる。例えば、R〜R14の1つ以上の位置に重水素を導入するために、対応する重水素置換を有する化合物1が使用できる。R17において重水素を導入するために、重水素アルミニウムリチウムが使用できる。R18〜R24の1つ以上の位置において重水素を導入するために、対応する重水素置換を有する化合物10が使用できる。
【0097】
重水素は、プロトン−重水素平衡交換を介して、アミンN−HおよびヒドロキシルO−Hなどの交換可能なプロトンを有する種々の位置に組み込むことができる。例えば、R15〜R16およびR25において重水素を導入するために、これらのプロトンは、当該分野において公知であるプロトン−重水素交換法を通して、選択的または非選択的に重水素で置き換えられてもよい。
スキームII
【化4】

【0098】
化合物14は、エタノールなどの適切なアルコール溶媒中で、塩化チオニルなどの適切な脱水剤と反応させ、化合物15を得る。化合物15は、トルエンなどの適切な溶媒中で、4−ジメチルアミノピリジンなどの適切な触媒の存在下で、ジ−tert−ブチルジカーボネートなどの適切な保護剤で処理し、化合物16を得る。化合物16は、トルエンなどの適切な溶媒中で、リチウムトリエチルボロハイドライドなどの適切な還元剤と反応させ、化合物17を得る。化合物17は、4−ジメチルアミノピリジンなどの適切な触媒、およびジイソプロピルエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で、無水トリフルオロ酢酸などの適切な脱水剤で処理し、化合物18を得る。化合物18は、水、メタノール、およびテトラヒドロフランの混合液などの適切な溶媒中で、水酸化リチウムなどの適切な塩基と反応させ、化合物19を得る。化合物19は、テトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で、トリエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で、メタンスルホニルクロライドなどの適切な活性化剤と反応させ、次いで、アンモニアと反応させ、化合物20を得る。化合物20は、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中で、化合物21および金属亜鉛の組み合わせなどの適切なシクロプロパン化(cyclopraopanating)剤と反応させ、化合物22を得る。化合物22は、酢酸エチルおよびテトラヒドロフランの混合液などの適切な溶媒中で、塩酸などの適切な酸で脱保護し、化合物10を得る。
【0099】
重水素は、適切な重水素中間体を使用することによって、スキームIIに示されるような合成手順に従って合成的に組み込める。例えば、R18〜R21の1つ以上の位置に重水素を導入するために、対応する重水素置換を有する化合物14が使用できる。R22において重水素を導入するために、リチウムトリエチルボロデューテライドが使用できる。R23〜R24の1つ以上の位置において重水素を導入するために、対応する重水素置換を有する化合物21が使用できる。
【0100】
以下の化合物は、一般的に、上記の方法を使用して製造することができる。製造されたときに、これらの化合物は、上記の実施例に記載されるのと同様の活性を有することが予測される。
【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】

【0101】
それらの同位体で富化されていないアナログと比較した場合の本明細書に開示される化合物の代謝特性の変化は、以下のアッセイを使用して示すことができる。まだ製造および/または試験されていない上記に列挙した化合物は、これらのアッセイの1つ以上によって示されるように、同様に代謝特性を変化させたことが予測される。
【0102】
生物活性アッセイ
インビトロ肝ミクロソーム安定性アッセイ
肝ミクロソーム安定性アッセイは、2%炭酸水素ナトリウム中のNADPH生成系(2.2mM NADPH、25.6mM グルコース6−リン酸、6単位/mL グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ、および3.3mM 塩化マグネシウム)を用いて、肝ミクロソームタンパク質mLあたり1mgで行う。試験化合物は、20%アセトニトリル−水中の溶液として調製し、アッセイ混液に加え(最終アッセイ濃度5μg/mL)、そして37℃でインキュベートする。アッセイ中のアセトニトリルの最終濃度は1%未満であるべきである。一定分量(50μL)を0、15、30、45、および60分の時点で取り出し、氷冷アセトニトリル(200μL)で希釈して、反応を停止させる。サンプルを12,000 RPMで10分間遠心分離して、タンパク質を沈殿させる。上清を微量遠心管に移し、試験化合物の分解半減期のLC/MS/MS分析のために保存する。
【0103】
ヒトシトクロムP450酵素を使用するインビトロ代謝
シトクロムP450酵素は、バキュロウイルス発現系(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して、対応するヒトcDNAから発現させる。100ミリモル濃度リン酸カリウム(pH 7.4)中のミリリットルあたり0.8ミリグラムタンパク質、1.3ミリモル濃度NADP、3.3ミリモル濃度グルコース−6−リン酸、0.4U/mL グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ、3.3ミリモル濃度塩化マグネシウム、および0.2ミリモル濃度の化学式Iの化合物、対応する同位体で富化されていない化合物または標準物質もしくは対照を含む0.25ミリリットル反応混液を、37℃で20分間インキュベートする。インキュベーション後、反応は適切な溶媒(例えば、アセトニトリル、20% トリクロロ酢酸、94% アセトニトリル/6% 氷酢酸、70% 過塩素酸、94% アセトニトリル/6% 氷酢酸)の添加によって停止し、3分間遠心分離する(10,000g)。上清をHPLC/MS/MSによって分析する。
【表1】

【0104】
モノアミンオキシダーゼA阻害および酸化的ターンオーバー
この手順は、その全体が参照により本明細書により組み込まれるWeyler et al.,Journal of Biological Chemistry 1985,260,13199−13207によって記載された方法を使用して実行される。モノアミンオキシダーゼA活性は、4−ヒドロキシキノリンの形成に伴うキヌラミンの酸化に際しての314nmの吸光度の増加をモニターすることによって分光光度法的に測定される。測定は、0.2% Triton X−100(モノアミンオキシダーゼアッセイ緩衝液)プラス1mM キヌラミン、および所望の量の酵素を含む50mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.2、総量1mL中で、30℃にて実行される。
【0105】
モノアミンオキシダーゼB阻害および酸化的ターンオーバー
この手順は、その全体が参照により本明細書により組み込まれるUebelhack et al.,Pharmacopsychiatry 1998,31(5),187−192に記載されるように実行される。
【0106】
ラット、イヌ、およびサルにおけるサクサグリプチンの薬物動態の測定
この手順は、その全体が参照により本明細書により組み込まれるFura et al.,Drug Metabolism and Disposition 2009,37(6),1164−1171に記載されるように実行される。
【0107】
ヒトにおけるシタグリプチンの薬物動態および薬力学の測定
この手順は、その全体が参照により本明細書により組み込まれるHerman et al.,Clinical Pharmacology & Therapeutics 2005,78(6),675−688に記載されるように実行される。
【0108】
Zucker fa/faラットにおける経口グルコース耐性
この手順は、その全体が参照により本明細書により組み込まれるAugeri et al.,J.Med.Chem.2005,48(15),5025−5037に記載されるように実行される。
【0109】
ob/obマウスにおける経口グルコース耐性
この手順は、その全体が参照により本明細書により組み込まれるAugeri et al.,J.Med.Chem.2005,48(15),5025−5037に記載されるように実行される。
【0110】
前述の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認でき、そして本発明の技術思想およびその範囲から逸脱することなく、種々の利用および条件に本発明を適合させるように、本発明の種々の変更および改変を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

(I)
の化合物、またはその塩であって、ここで:
〜R25が、独立して、水素および重水素からなる群より選択され、ならびに
〜R25の少なくとも1つが重水素である、
化合物またはその塩。
【請求項2】
〜R25の少なくとも1つが、独立して、約10%以上重水素富化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
〜R25の少なくとも1つが、独立して、約50%以上重水素富化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
〜R25の少なくとも1つが、独立して、約90%以上重水素富化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
〜R25の少なくとも1つが、独立して、約98%以上重水素富化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物が以下からなる群より選択される構造式を有する化合物:
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】

【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物が以下からなる群より選択される構造式を有する化合物:
【化7】


【請求項8】
Dとして表される各位置が約10%以上重水素富化されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Dとして表される各位置が約50%以上重水素富化されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
Dとして表される各位置が約90%以上重水素富化されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
Dとして表される各位置が約98%以上重水素富化されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化8】


【請求項13】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化9】


【請求項14】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化10】


【請求項15】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化11】


【請求項16】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化12】


【請求項17】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化13】


【請求項18】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化14】


【請求項19】
請求項7に記載の化合物であって、前記化合物が以下の構造式を有する化合物:
【化15】


【請求項20】
請求項1に記載の化合物を、薬学的に許容可能な担体とともに含む薬学的組成物。
【請求項21】
ジペプチジルペプチダーゼIV媒介性障害の治療の方法であって、その必要がある患者への請求項1に記載の化合物の治療有効量の投与を含む方法。
【請求項22】
前記障害が、II型糖尿病、代謝性障害、空腹時血漿グルコース異常の障害、グルコース耐性異常の障害、高血糖症、高脂血症、高インスリン血症、食欲調節、肥満、女性不妊、自己免疫障害、胃腸障害、皮膚科的障害、および関節リウマチ(rhematoid arthritis)
からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらなる治療剤の投与をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記さらなる治療剤が、インスリン、インスリン誘導体、インスリン模倣物、グリピジド、グリブリド、アマリール、ナテグリニド、レパグリニド、PTP−112、8B−517955、8B4195052、8B−216763、NN−57−05441、NN−57−05445、GW−0791、AGN−194204、T−1095、BAY R3401、メトホルミン、アカルボース、GLP−1、エキセンジン−4、DPP728、MK−0431、G8K23A、グリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、(R)−1−{4−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−オキサゾール−4−イルメトキシ]−ベンゼンスルホニル}−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸、およびGI−262570からなる群より選択される抗糖尿病薬である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記さらなる治療剤が、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、抗糖尿病薬、脂質低下薬、抗肥満薬または食欲調節剤、および血圧降下薬からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤が、ビルダグリプチン、リナグリプチン、シタグリプチン、およびアログリプチンからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記脂質低下薬が、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、リバスタチン、コレスチラミン、フィブレート、ニコチン酸、およびアスピリンからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記抗肥満薬または食欲調節剤が、フェンテルミン、レプチン、ブロモクリプチン、デキサムフェタミン、アンフェタミン、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、シブトラミン、オーリスタット、デクスフェンフルラミン、マジンドール、フェンテルミン、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フルオキセチン、ブプロピオン、トピラメート、ジエチルプロピオン、ベンズフェタミン、フェニルプロパノールアミン、エコピパム、エフェドリン、およびプソイドエフェドリンからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記血圧降下薬が、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、クロリチアジド、ヒドロクロロチアジド、アミロリド、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル(Iisinopril)、モエキシプリル、ペリノドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル、ジゴキシン、チオルファン、テルテオ(terteo)−チオルファン、SQ29072、SLV306、オマパトリラット、サムパトリラット、ファシドトリル、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アリスキレン、テルラキレン、ジテキレン、RO−66−1132、RO−66−1168、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、ジゴキシン、ドブタミン、ミルリノン、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、およびベラパミルからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
請求項21に記載の方法であって、以下からなる群より選択される少なくとも1つの効果をさらに生じる方法:
a.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物またはその代謝物の血漿レベルの個体間での変動の減少;
b.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりのその化合物の平均血漿レベルの増加;
c.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりのその化合物の少なくとも1つの代謝物の平均血漿レベルの減少;
d.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりのその化合物の少なくとも1つの代謝物の平均血漿レベルの増加;および
e.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりの前記対象における治療期間中の臨床効果の改善。
【請求項31】
請求項21に記載の方法であって、以下からなる群より選択される少なくとも2つの効果をさらに生じる方法:
a.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物またはその代謝物の血漿レベルの個体間での変動の減少;
b.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりのその化合物の平均血漿レベルの増加;
c.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりのその化合物の少なくとも1つの代謝物の平均血漿レベルの減少;
d.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりのその化合物の少なくとも1つの代謝物の平均血漿レベルの増加;および
e.同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりの前記対象における治療期間中の臨床効果の改善。
【請求項32】
請求項21に記載の方法であって、対応する同位体富化されていない化合物と比較して、対象における少なくとも1つの多型発現されるシトクロムP450アイソフォームによる、前記化合物の用量単位あたりのその化合物の代謝の減少をもたらす方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記シトクロムP450アイソフォームが、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、およびCYP2D6からなる群より選択される、方法。
【請求項34】
請求項21に記載の方法であって、前記化合物が、同位体富化されていない化合物と比較して、前記化合物の用量単位あたりの前記対象におけるシトクロムP450またはモノアミンオキシダーゼのアイソフォームの少なくとも1つの阻害の減少によって特徴付けられる、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記シトクロムP450またはモノアミンオキシダーゼのアイソフォームが、CYP1A1、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2A13、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C18、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP2G1、CYP2J2、CYP2R1、CYP2S1、CYP3A4、CYP3A5、CYP3A5P1、CYP3A5P2、CYP3A7、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4F11、CYP4F12、CYP4X1、CYP4Z1、CYP5A1、CYP7A1、CYP7B1、CYP8A1、CYP8B1、CYP11A1、CYP11B1、CYP11B2、CYP17、CYP19、CYP21、CYP24、CYP26A1、CYP26B1、CYP27A1、CYP27B1、CYP39、CYP46、CYP51、MAO、およびMAOからなる群より選択される、方法。
【請求項36】
対応する同位体富化されていない化合物と比較して、診断的な肝胆機能評価項目の有害な変化を減少する、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記診断的な肝胆機能評価項目が、アラニンアミノトランスフェラーゼ(「ALT」)、血清グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(「SGPT」)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(「AST」、「SGOT」)、ALT/AST比率、血清アルドラーゼ、アルカリホスファターゼ(「ALP」)、アンモニアレベル、ビリルビン、ガンマ−グルタミルトランスペプチダーゼ(「GGTP」「γ−GTP」「GGT」)、ロイシンアミノペプチダーゼ(「LAP」)、肝生検、肝超音波検査、肝核スキャン、5’−ヌクレオチダーゼ、および血液タンパク質からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
医薬としての使用のための請求項1に記載の化合物。
【請求項39】
ジペプチジルペプチダーゼIV活性の阻害によって寛解する障害の予防または治療のための医薬の製造における使用のための請求項1に記載の化合物。

【公表番号】特表2012−509277(P2012−509277A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536601(P2011−536601)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064832
【国際公開番号】WO2010/059639
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(508105728)オースペックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】AUSPEX PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】