説明

スイッチング素子、書き換え可能な論理集積回路およびメモリ素子

【課題】高集積化可能で、電源を切ってもオン状態およびオフ状態のうちいずれか一方の状態を保持し、オン状態での抵抗値が低く、さらに上記いずれか一方の状態に再プログラムが可能なスイッチング素子を提供する。
【解決手段】電気化学反応に用いられる金属イオンが伝導するためのイオン伝導体14と、イオン伝導体14に接して、所定の距離だけ離れて設けられたソース電極11およびドレイン電極12と、オン状態に遷移させる電圧が印加されるとソース電極11およびドレイン電極12の間に金属イオンによる金属を析出させてソース電極11およびドレイン電極12を電気的に接続し、オフ状態に遷移させる電圧が印加されると析出した金属を溶解させてソース電極11およびドレイン電極12の電気的接続を切るための、イオン伝導体14に接して設けられたゲート電極13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応を利用したスイッチング素子、ならびにそれを用いたFPL(フィールド・プログラマブル・ロジック:書き換え可能な論理集積回路)およびメモリ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリ集積回路のうち、電源を切った状態でもオンまたはオフの状態を保持可能な不揮発性機能を備えたスイッチング素子として、第1の従来例のアンチフューズ素子と、第2の従来例のEEPROM(エレクトリカル・イレーザブル・アンド・プログラマブル・リード・オンリ・メモリ)とがある。
【0003】
また、電気化学反応を利用して不揮発性機能を発揮するスイッチング素子として、第3の従来例のタイマー(または、電気化学的時間スイッチング装置)と、第4の従来例のPCRAM(プログラマブル・コンダクタ・ランダム・アクセス・メモリ)とがある。
【0004】
上記第1の従来例のアンチフューズ素子は、電気的にオン状態とオフ状態の2つの状態を持ち、電気的または物理的方法を用いてオフ状態からオン状態へ非可逆的に遷移可能なスイッチング素子である。第1の従来例のアンチフューズ素子については、米国特許第5070384号明細書および米国特許第5387812号明細書に開示されている。アンチフューズ素子は、通常2つの配線間に形成され、それらの配線間に選択的に高電圧を印加することによりアンチフューズ素子にプログラムし(オフ状態からオン状態に遷移させ)、配線間を電気的に接続する。そして、電源遮断後もこのオン状態は保たれる。
【0005】
第2の従来例のEEPROMとして、浮遊ゲート電極がトランジスタの制御ゲート電極とチャネル層の間に配置されている構成が米国特許第4203158号明細書に開示されている。浮遊ゲート電極に電荷が蓄えられ(充電)、または浮遊ゲート電極から電荷が放出すること(放電)によって、トランジスタのしきい電圧が変化する。この充電または放電は、酸化膜を介したトンネル電流によって電子を浮遊ゲートに注入し、または浮遊ゲート電極から電子を放出させて行う。浮遊ゲート電極は、周囲を絶縁膜で囲まれているため、蓄えられた電荷は電源遮断後も失われることがなく不揮発性が実現される。
【0006】
アンチフューズ素子およびEEPROMが、近年、アプリケーションごとにハードウエア構成を変更可能な集積回路であるFPLに使用されている。その一例が特開平8−78532号公報に開示されている。この特許文献に開示されたFPLは、複数の論理回路ブロックと、論理回路ブロック同士を接続するための配線と、配線の接続を切り替えるためのアンチフューズ素子とを有する構成である。アンチフューズ素子はプログラム用素子として用いられている。上記構成においてユーザにより選択されたアンチフューズ素子が配線を結線する。そのため、結線位置の設定毎にハードウエア構成が異なる。このFPLは、ASIC(アプリケーション・スペシファイド・インテグレーティッド・サーキット)に比べると汎用性があるため安価に製造され、かつ製造のTAT(ターン・アラウンド・タイム)が短縮できるなど利点が多く、急速に市場規模が拡大している。
【0007】
第3の従来例のタイマーは、直流電源と負荷と第1および第2の内部電極とで閉ループを構成し、内部電極の一部を電解液中に浸して電気メッキを行い、内部電極の一部を切断することにより時間を設定している。第3の従来例のタイマーについては、実開平2−91133号公報に開示されている。
【0008】
第4の従来例の電子素子として、イオンを伝導するための材料として銀イオン導電性イオン導電体(イオン導電体は本願明細書等に記載のイオン伝導体と同義語である)であるゲルマ−セレン化銀を利用したPCRAMが、米国特許第6348365号明細書に開示されている。
【0009】
図1は米国特許第6348365号明細書に開示されたPCRAMの構造を示す断面概略図である。図1に示すように半導体基板87上に、絶縁材料81、導電材料82、誘電材料83が配置され、誘電材料83の一部にリセス構造(溝構造)が設けられている。リセス構造中にイオン導電材料86と金属材料84が配置され、電極85が金属材料84と誘電材料83の上に配置されている。電極85と導電材料82の間に電圧を加えると、デンドライトと呼ばれる電流路がイオン導電材料86の表面に形成され、電極85と導電材料82が電気的に接続される。逆の電圧を加えると、デンドライトはなくなり、電極85と導電材料82が電気的に絶縁される。
【特許文献1】米国特許第5070384号明細書
【特許文献2】米国特許第5387812号明細書
【特許文献3】米国特許第4203158号明細書
【特許文献4】特開平8−78532号公報
【特許文献5】実開平2−91133号公報
【特許文献6】米国特許第6348365号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
第1の従来例のアンチフューズ素子は、FPLで主に用いられているスイッチング素子であり、オン状態のときの素子の抵抗であるオン抵抗が小さい(50Ω程度)ため、信号遅延時間が小さいことが特徴であるが、再プログラムができないという課題がある。したがって、FPLをプログラムする際に、デバッグや、動作中にプログラムを切り替えたいなどの要請に応えることができない。
【0011】
第2の従来例のEEPROMは再プログラムが可能であるものの、現在のところ集積度はまだ小さく、また、オン抵抗はMOSトランジスタの抵抗で制限されるために数kΩと大きい。不揮発性メモリとして広く用いられているが、集積度は絶縁膜の厚さで制限され、集積化がますます難しくなっている。また、FPLに用いた場合には大きなオン抵抗のために信号遅延が発生するという問題がある。
【0012】
第3の従来例のタイマーは、電気化学反応である電気メッキにより電極が溶解するまでの時間を計測する装置であり、スイッチング素子としてオン状態とオフ状態を制御して切り替えることはできない。
【0013】
第4の従来例の電子素子では、電気化学反応を利用した2端子スイッチを基本としている。オン状態とオフ状態間の遷移は2端子間に印加する電圧で制御する。状態間を遷移する場合にはスイッチに電流が流れるため、消費電力が大きい。また、遷移に必要な電流に耐える太い配線や駆動力の大きいトランジスタが必要である。スイッチが集積化可能であるとしても、配線や周辺回路を集積化することが困難である。
【0014】
本発明の目的は、高集積化可能で、電源を切ってもオン状態およびオフ状態のうちいずれか一方の状態を保持し、オン状態での抵抗値が低く、さらに上記いずれか一方の状態に再プログラムが可能なスイッチング素子、ならびにスイッチング素子を用いたFPLおよびメモリ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のスイッチング素子は、電気化学反応を利用したスイッチング素子であって、電気化学反応に用いられる金属イオンが伝導するためのイオン伝導体と、イオン伝導体に接して、所定の距離だけ離れて設けられた第1の電極および第2の電極と、スイッチング素子をオン状態に遷移させる電圧が印加されると第1の電極および第2の電極の間に金属イオンによる金属を析出させて第1の電極および第2の電極を電気的に接続し、スイッチング素子をオフ状態に遷移させる電圧が印加されると析出した金属を溶解させて第1の電極および第2の電極の電気的接続を切るための、イオン伝導体に接して設けられた第3の電極とを有する構成である。
【0016】
本発明では、スイッチング素子をオン状態にするための電圧を第3の電極に印加すると、電気化学反応によりイオン伝導体中を金属イオンが第1の電極および第2の電極に引き寄せられてこれらの電極表面に金属が析出され、第1の電極と第2の電極との間に析出した金属が両電極を電気的に接続する。また、スイッチング素子をオフ状態にするための電圧を第3の電極に印加すると、第1の電極と第2の電極の間に析出した金属が金属イオンとなってイオン伝導体中に溶解され、第1の電極と第2の電極との電気的接続が切れる。さらに、オン状態では、第1の電極と第2の電極とが金属で接続されるため、第1の電極および第2の電極間の抵抗値がより小さくなる。
【0017】
また、上記本発明のスイッチング素子において、スイッチング素子がオン状態またはオフ状態になった後、第3の電極への電圧の印加が停止されても、その状態を保持することとしてもよい。
【0018】
本発明では、スイッチング素子をオン状態にした後、第3の電極に電圧を印加しなくても、析出した金属により第1の電極と第2の電極とが電気的に接続された状態が維持される。また、スイッチング素子をオフ状態にした後、第3の電極に電圧を印加しなくても、第1の電極と第2の電極との電気的接続の切れた状態が維持される。そのため、オン状態またはオフ状態の情報を保持した不揮発性を有することになる。
【0019】
また、本発明のスイッチング素子は、電気化学反応を利用したスイッチング素子であって、電気化学反応に用いられる金属イオンが伝導するためのイオン伝導体と、イオン伝導体に接して設けられた第1の電極と、スイッチング素子をオン状態に遷移させる電圧が印加されると金属イオンによる金属を析出させて第1の電極と電気的に接続され、スイッチング素子をオフ状態に遷移させる電圧が印加されると析出した金属を溶解させて第1の電極との電気的接続が切られる、イオン伝導体に接して第1の電極と所定の距離だけ離れて設けられた第2の電極と、第1の電極に対して正の電圧が印加されると第1の電極および第2の電極間の電流を増加させ、第1の電極に対して負の電圧が印加されると電流を減少させるための、イオン伝導体に接して設けられた第3の電極とを有する構成である。
【0020】
本発明では、スイッチング素子をオン状態にするための電圧を第2の電極に印加すると、電気化学反応によりイオン伝導体中を金属イオンが第1の電極に引き寄せられて電極表面に金属が析出され、第1の電極と第2の電極の間に析出した金属が両電極を電気的に接続する。そして、第1の電極に対して正の電圧を第3の電極に印加することで、第1の電極と第2の電極の間に析出する金属の量が増え、電流が増加する。また、スイッチング素子がオン状態になった後、第1の電極に対して負の電圧を第3の電極に印加することで、第1の電極と第2の電極の間に析出した金属の量が減り、電流が減少する。そして、スイッチング素子をオフ状態にするための電圧を第2の電極に印加すると、第1の電極と第2の電極の間に析出した金属が金属イオンとなってイオン伝導体中に溶解され、第1の電極と第2の電極との電気的接続が切れる。そのため、第2の電極に電圧を印加することでオン状態およびオフ状態を制御できるだけでなく、第3の電極に電圧を印加することで電流の大きさを制御できる。
【0021】
また、本発明のスイッチング素子は、電気化学反応を利用したスイッチング素子であって、電気化学反応に用いられる金属イオンが伝導するためのイオン伝導体と、イオン伝導体に接して設けられた第1の電極と、所定の電圧が所定の時間印加されると金属イオンによる金属が析出される、イオン伝導体に接して第1の電極と所定の距離だけ離れて設けられた第2の電極と、第2の電極に所定の電圧が所定の時間印加された後、スイッチング素子をオン状態に遷移させる電圧が印加されると金属イオンよる金属を析出させて第1の電極と第2の電極とを電気的に接続するための、イオン伝導体に接して設けられた第3の電極とを有する構成である。
【0022】
本発明では、第1の電極と第2の電極とが電気化学反応により析出される金属で接続される前まで第2の電極に電圧を印加した後、スイッチング素子をオン状態にするための電圧を第3の電極に印加することで、第1の電極と第2の電極とを電気的に接続している。そのため、第1の電極と第2の電極が電気的に接続するときに電流が過剰に流れることを防ぎ、消費電力が抑制される。
【0023】
また、上記本発明のスイッチング素子において、第3の電極はイオン伝導体に金属イオンを供給するための材料を含み、第1の電極および第2の電極がイオン伝導体と接する部位はイオン伝導体と反応しない材料であることとしてもよい。
【0024】
本発明では、電気化学反応により第3の電極から金属イオンがイオン伝導体に供給されるため、イオン伝導度が大きくなり、状態間の遷移速度がより大きくなる。
【0025】
また、上記本発明のスイッチング素子において、第3の電極および第2の電極はイオン伝導体に金属イオンを供給するための材料を含み、第1の電極がイオン伝導体と接する部位はイオン伝導体と反応しない材料であることとしてもよい。
【0026】
本発明では、電気化学反応により第3の電極および第2の電極から金属イオンがイオン伝導体に供給されるため、イオン伝導度が大きくなり、状態間の遷移速度がより大きくなる。
【0027】
また、上記本発明のスイッチング素子において、第1の電極および第2の電極が第3の電極の平面パターンに対して平行な同一平面内に形成され、第1の電極および第2の電極のうち少なくともいずれか一方の平面パターンに尖鋭部を有し、第1の電極と第2の電極との最短距離が一方の電極の尖鋭部から他方の電極までの距離で表わされることとしてもよい。
【0028】
本発明では、2つの電極間の最短距離が一方の電極における尖鋭部から他方の電極までの距離になるため、その尖鋭部を有する方の電極では少なくとも尖鋭部付近に銅が析出されることで他方の電極と電気的に接続可能となり、余分な銅の析出を必要とせず、オフ状態からオン状態への遷移速度がより大きくなる。また、スイッチング素子をオフ状態にする場合、上記尖鋭部付近の金属が溶解すればよいため、オン状態からオフ状態への遷移速度も大きくなる。
【0029】
一方、上記目的を達成するための本発明の書き換え可能な論理集積回路は、上記本発明のスイッチング素子のうちいずれかをプログラム用素子に用いた構成である。本発明では、プログラム用素子として用いたスイッチング素子をオン状態またはオフ状態に遷移させることで、論理回路を自由に設定できる。
【0030】
また、上記目的を達成するための本発明のメモリ素子は、上記本発明のスイッチング素子のうちいずれかと、スイッチング素子がオン状態およびオフ状態のいずれの状態であるかを読み出すためのトランジスタとを有する構成である。本発明では、電気化学反応を利用してスイッチング素子をオン状態またはオフ状態にした後、第3の電極および第2の電極に電圧を印加しなくてもその状態が保持されるため、不揮発性メモリとして利用できる。前記本発明のスイッチング素子は、前記第1および第2の電極の少なくとも1つの電極に対して、前記第3の電極に正の電圧が印加されることにより、該第1の電極と該第2の電極の間が電気的に接続された状態(以下、オン状態と呼ぶ)が形成され、前記第1および第2の電極の少なくとも1つの電極に対して、前記第3の電極に負の電圧が印加されることにより、該第1の電極と該第2の電極の間が絶縁された状態(以下、オフ状態と呼ぶ)が形成される構成とすることができる。
【0031】
前記本発明のスイッチング素子は、前記第2の電極が電気化学反応により該イオン伝導体中に溶解する金属を含む構成としてもよい。その場合、前記第1の電極に対して前記第2の電極に正の電圧が印加される、または前記第1および第2の電極の少なくとも1つの電極に対して前記第3の電極に正の電圧が印加されることにより、該第1の電極と該第2の電極の間が電気的に接続されたオン状態が形成され、前記第1の電極に対して前記第2の電極に負の電圧が印加される、または前記第1および第2の電極の少なくとも1つの電極に対して前記第3の電極に負の電圧が印加されることにより、該第1の電極と該第2の電極の間が絶縁されたオフ状態が形成される構成とすることができる。
【0032】
前記本発明のスイッチング素子において、前記イオン伝導体が、元素の周期律表における6B族を含むカルコゲナイド材料、金属イオン性ガラス、または金属イオン性非晶質半導体である構成とすることができる。
【0033】
前記本発明のスイッチング素子において、前記イオン伝導体と前記第3の電極の組み合わせが硫化銅と銅、または硫化銀と銀であり、前記第1および第2の電極における前記イオン伝導体と接する部分が、白金、アルミニウム、金、チタン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、もしくはモリブデン、これらの金属の窒化物、またはこれらの金属のシリサイド、或いはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0034】
前記本発明のスイッチング素子の駆動においては、前記第3の電極に印加する電圧および/または電圧印加時間によって、前記電気特性を制御することができる。
【0035】
また、前記本発明のスイッチング素子の駆動においては、前記オン状態とオフ状態とを前記第3の電極に印加する電圧の極性により切り替え、第3の電極への電圧を停止することにより当該オン状態あるいはオフ状態を保持することもできる。オン状態とオフ状態間を遷移させる際、前記第1および第2の電極間の伝導度を測定し、当該伝導度の変化量によって第3の電極に印加する電圧を制御してもよい。
【0036】
さらに、前記本発明のスイッチング素子を用いると、書き換え可能な論理集積回路を構成することができる。
【0037】
また、前記本発明のスイッチング素子とMOS(メタル・オキサイド・セミコンダクタ)トランジスタまたはダイオードの各々1つずつを備えたメモリセルを基本単位とするメモリ素子を構成することもできる。当該メモリ素子においては、前記スイッチング素子の前記第2の電極がMOSトランジスタのドレインに、前記第1の電極がビット線に接続され、MOSトランジスタのソースがビット線、MOSトランジスタのゲートおよび前記スイッチング素子の第3の電極がおのおの別のワード線に接続された構成としてもよい。
【発明の効果】
【0038】
したがって、本発明によれば、第3の電極および第2の電極のうち少なくともいずれか一方に所定の電圧を印加することでオン状態またはオフ状態に任意に設定可能で、不揮発性で、かつオン状態の抵抗値がより小さいスイッチング素子を提供できる。また、本発明のスイッチング素子は構造が簡便で微細であるため、従来よりもはるかに微細化が可能である。
【0039】
また、本発明のスイッチング素子をFPLに使用すれば、再プログラム可能で、かつ動作速度の大きいFPLを提供し得る。
【0040】
また、本発明のスイッチング素子をメモリ素子の情報記憶手段に使用すれば、書き込み・読み出し速度の速い不揮発性メモリ素子を提供できる。そして、本発明のスイッチング素子は構造が簡便で微細であるため、高集積で高速なメモリ集積回路を提供できる。
【0041】
さらに、本発明の製造方法によれば、従来の半導体集積回路の製造技術を適用して精度よく、再現性よく製造できる。したがって、スイッチング素子、およびそれを用いたFPLやメモリ素子等の集積回路を低コストで提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明のスイッチング素子は、第3の電極に印加する電圧を制御して第1の電極と第2の電極との間に金属を析出させることで、第1の電極と第2の電極の間が電気的に接続された状態、すなわちオン状態にし、第1の電極と第2の電極の間に析出した金属を溶解させることで第1の電極と第2の電極の間が電気的に接続されていない状態、すなわちオフ状態にすることを特徴とする。また、各状態は第3の電極に電圧を印加するのを止めても保持される。
【0043】
本発明の構成について説明する。
【0044】
以下の説明、ならびに図2、図3A、図3B、図5、図6A、図6B、図8A、図8B、図8C、図9、図10、図12および図13において、前記第1の電極がソース電極に、前記第2の電極がドレイン電極に、前記第3の電極がゲート電極にそれぞれ対応する。
【0045】
図2は本発明のスイッチング素子の一構成例を示す断面図である。
【0046】
図2に示すように、本発明のスイッチング素子は、絶縁膜としてシリコン酸化膜がシリコン基板に被覆された基板5上に所定の距離を設けて形成されたソース電極1およびドレイン電極2と、ソース電極1およびドレイン電極2に接して設けられ、電気化学反応のための金属イオンを含んだイオン伝導体4と、イオン伝導体4上に形成されたゲート電極3とを有する。ゲート電極3は、印加される電圧の大きさにより、ソース電極1およびドレイン電極2の間の伝導度を制御するためのものである。ソース電極1、ドレイン電極2およびゲート電極3は相互に電気的に絶縁された状態で配置されている。
【0047】
ゲート電極3は電気化学反応によってイオン伝導体4に金属イオンを供給するための材料を含んでいる。ソース電極1およびドレイン電極2のイオン伝導体4と接する部位には電気化学反応によってイオン伝導体4と反応しない材料が用いられているため、ソース電極1およびドレイン電極2は金属イオンを供給しない。
【0048】
上記構成のスイッチング素子の動作について説明する。
【0049】
ソース電極1およびドレイン電極2に対してゲート電極3に正の電圧を印加すると、近接するソース電極1およびドレイン電極2上に金属イオンの還元反応によって金属が析出する。そして、ソース電極1およびドレイン電極2間に設けた所定の距離である電極間のギャップ6に析出した金属のためにソース電極1およびドレイン電極2が電気的に接続されて、スイッチはオン状態に遷移する。一方、ソース電極1およびドレイン電極2に対してゲート電極3に負の電圧を印加すると、電極間のギャップ6において析出した金属が酸化されて金属イオンとなりイオン伝導体4中に溶解し、電極間のギャップ6の金属が取り除かれてオフ状態に遷移する。なお、この電極間のギャップ6はソース電極1およびドレイン電極2間の距離の最短部となる。
【0050】
これらのオン状態およびオフ状態は、ゲート電極3に電圧を印加するのを止めてもそれぞれの状態が保持される。また、オン状態の後、ゲート電極3に印加する電圧の印加時間および印加電圧にしたがって金属が析出または溶解し、ゲート電極3に印加する電圧によりソース電極1およびドレイン電極2間の伝導度を制御可能となる。次に、図2に示したスイッチング素子の電気特性について説明する。
【0051】
図3Aおよび図3Bはスイッチング素子の電気特性を示すグラフである。図3Aおよび図3Bに示すグラフの横軸は図2のスイッチング素子のゲート電極3に印加される電圧であるゲート電圧を示し、横軸はソース電極1およびドレイン電極2の間に流れる電流であるドレイン電流を示す。
【0052】
図3Aの実測に用いたスイッチング素子は、イオン伝導体4が硫化銅水溶液であり、ソース電極1およびドレイン電極2はイオン伝導体4に溶解しない白金(Pt)で形成され、ゲート電極3はイオン伝導体4と電気化学反応を示す銅(Cu)で形成されている。
【0053】
図3Aに示すように、ドレイン電極2とソース電極1との間の電圧を一定として、ゲート電極3とソース電極1との間の電位差を所定の範囲で繰返し増減させると、ドレイン電極2とソース電極1との間の伝導度がヒステリシスを示すことがわかる。以下に、そのことを詳細に説明する。
【0054】
電圧を印加しない初期状態ではドレイン電流がほとんど流れないオフ状態である。このオフ状態からゲート電極3に印加するゲート電圧を0Vから正の方向に+0.3Vまで変化させると、ドレイン電流が約1.2mA流れてスイッチング素子がオン状態に遷移する。続いて、オン状態からゲート電圧を負の方向に−0.16Vまで変化させると、ドレイン電流がほとんど流れなくなり、スイッチング素子がオフ状態に遷移する。このように、ゲート電圧が−0.16Vと+0.3Vの間では遷移は起こらず、オン状態またはオフ状態が安定に存在する。また、ゲート電圧を繰返し増減させることにより、スイッチング素子をオン状態とオフ状態の間で何度でも遷移させることが可能である。
【0055】
次に、上述の図3Aにおいてオン状態とオフ状態の遷移が生じる理由を説明する。
【0056】
図4は電気化学反応による銅の析出および溶解を説明するための模式図である。
【0057】
図4に示すように、硫酸銅と硫酸との混合溶液のイオン伝導体に金電極と銅電極とを浸漬し、銅電極側を正極、金電極側を負極にして電圧源により電圧を印加する。上記混合溶液は銅メッキ液であるため、正極の銅電極では銅が銅イオンとなってイオン伝導体に溶解し、負極の金電極では銅が析出する。このような電気化学反応によって銅の析出および溶解が起こる。
【0058】
図4に示した電気化学反応を利用したのが、本発明のスイッチング素子である。図4に示した銅電極が図2に示したゲート電極3に相当する。また、図4に示した金電極が図2に示したソース電極1およびドレイン電極2に相当する。
【0059】
次に、図4で示した電気化学反応を図2のスイッチング素子で説明する。
【0060】
上述した電気化学反応によりソース電極1およびドレイン電極2の表面に銅を析出させると、電極間のギャップ6が銅で埋まり、ソース電極1とドレイン電極2が電気的に接続され、スイッチング素子がオン状態に遷移する。スイッチング素子を図3Aに示したオン状態に遷移させた後、印加するゲート電圧を+0.3Vよりも大きくすると、ゲート電圧の値に伴ってドレイン電流が増加する。このことは、析出した銅の量が増えることで、ソース電極1とドレイン電極2との間の伝導度が増加することを示している。
【0061】
一方、電極間のギャップ6に析出した銅を上述した電気化学反応によりイオン伝導体4に溶解させると、電極間のギャップ6を埋めた銅が取り除かれ、ソース電極1とドレイン電極2の電気的な接続が切れ、スイッチング素子がオフ状態に遷移する。
【0062】
次に、オン状態とオフ状態との間の遷移の速度について説明する。
【0063】
上述したように、ゲート電極3から溶解した銅イオンがソース電極1またはドレイン電極2の表面まで伝導して電子と結合することで銅が析出するため、ソース電極1とドレイン電極2が電気的に接続される。また、ソース電極1とドレイン電極2との間のギャップを埋めた銅が溶解することで、ソース電極1とドレイン電極2の電気的な接続が切れる。このことから、オン状態とオフ状態との間の遷移の速度は金属イオンがイオン伝導体中を伝導する速度と電気化学反応の速度によって決定される。そして、金属イオンが伝導する速度はイオン伝導度とゲート電圧に依存する。
【0064】
図3Bの実測に用いたスイッチング素子は、イオン伝導体4が硫化銅水溶液であり、ソース電極1は白金(Pt)で形成され、ゲート電極3およびドレイン電極2はイオン伝導体4と電気化学反応を示す銅(Cu)で形成されている。
【0065】
図3Bに示すように、ドレイン電極2とソース電極1との間の電圧を一定として、ゲート電極3とソース電極1との間の電位差を所定の範囲で繰返し増減させると、ドレイン電極2とソース電極1との間の伝導度がヒステリシスを示すことがわかる。以下に、そのことを詳細に説明する。
【0066】
電圧を印加しない初期状態ではドレイン電流がほとんど流れないオフ状態である。このオフ状態からゲート電極3に印加するゲート電圧を0Vから正の方向に+0.75Vまで変化させると、ドレイン電流が約2mA流れてスイッチング素子がオン状態に遷移する。続いて、オン状態からゲート電圧を負の方向に−0.4Vまで変化させると、ドレイン電流がほとんど流れなくなり、スイッチング素子がオフ状態に遷移する。このように、ゲート電圧が−0.4Vと+0.75Vの間では遷移は起こらず、オン状態またはオフ状態が安定に存在する。また、ゲート電圧を繰返し増減させることにより、スイッチング素子をオン状態とオフ状態の間で何度でも遷移させることが可能となる。
【0067】
さらに、本構成においては、ドレイン電極がイオン伝導体と電気化学反応を示す銅から成っていることから、前記に述べたように、ドレイン電極とソース電極間に電圧を印加することによってもスイッチをオン状態あるいはオフ状態へ遷移させることができる。
【0068】
なお、ここではイオン伝導体4として硫酸銅と硫酸との混合水溶液の電解液を用いたが、他のイオン伝導体においても同様の効果が発現する。イオン伝導体は、液体と固体との2種類に大きく分類される。液体には上記電解液があり、固体には溶液中のように金属イオンが自由に移動できる物質である固体電解質がある。集積回路中にスイッチング素子を用いる場合にはイオン伝導体は固体が適している。中でも、銀イオンと銅イオンは適切な固体電解質、例えば、硫化銀や硫化銅の中でイオン伝導性を示す。発明者らは、上記硫酸銅と硫酸の混合水溶液中の銅イオンと同様に、硫化銀中の銀イオンおよび硫化銅中の銅イオンのいずれにおいても、オン状態とオフ状態の間を遷移するスイッチング現象を示すことを見出している。銀イオンおよび銅イオンがイオン伝導する材料としては、周期律表において6B族の元素を含むカルコゲナイドの他に、金属イオン性ガラスおよび金属イオン性非晶質半導体などが知られている。
【0069】
このような動作原理に基づく素子は、従来全く知られていなかったことであり、発明者らが初めて原理を考案し、実証に成功したものである。
【実施例1】
【0070】
本発明のスイッチング素子のうち、イオン伝導体に固体電解質を用いたスイッチング素子の構成について説明する。
【0071】
図5はスイッチング素子の一構成例を示す断面図である。図5に示すように、スイッチング素子10は、絶縁膜としてシリコン酸化膜が被覆された基板15上に形成されたゲート電極13と、ゲート電極13上に形成されたイオン伝導体14と、イオン伝導体14上に形成されたソース電極11およびドレイン電極12とを有する。ソース電極11とドレイン電極12は同一平面内に形成され、この2つの電極間には100nm以下のギャップが設けられている。ソース電極11、ドレイン電極12およびゲート電極13は相互に電気的に絶縁された状態で配置されている。
【0072】
ゲート電極13は電気化学反応によってイオン伝導体14に金属イオンを供給するための材料を含んでいる。イオン伝導体14は固体電解質であって電子伝導ができるだけ小さいものが好ましい。電子伝導が大きいほどスイッチング素子のオフ状態におけるリーク電流が大きくなるからである。ソース電極11およびドレイン電極12においてイオン伝導体14と接する部位は、電気化学反応によってイオン伝導体4と反応しない材料が用いられ、イオン伝導体4と接触しても金属イオンを供給しない。
【0073】
イオン伝導体4と反応しない材料として、例えば、白金、アルミニウム、金、チタン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、およびモリブデンなどの金属がある。また、化学反応しにくく、イオンになりにくい材質として、これらの金属の窒化物やシリコン化合物(シリ化物)であってもよい。そして、ソース電極11およびドレイン電極12のイオン伝導体14と接触する各部位は、共通の材料である必要はなく、これらの金属や化合物の中の材料のうちいずれかであればよい。
【0074】
次に、ソース電極11およびドレイン電極12の平面パターンについて説明する。
【0075】
図6Aおよび図6Bはソース電極11およびドレイン電極12の平面パターンの一例を示す平面模式図である。
【0076】
図6Aに示すように、ソース電極11とドレイン電極12の平面パターンが四角形であると、これら2つの電極のギャップは平行する2つの辺で形成される。
【0077】
一方、図6Bに示す場合では、ソース電極11およびドレイン電極12の平面パターンは多角形であり、両パターンの頂点同士で2つの電極の最短距離となるギャップが形成されている。この場合には、ソース電極11とドレイン電極12との銅の析出による接続は、上記頂点間の銅の析出で可能となるため、余分な銅の析出を必要とせず、図6Aの場合と比較してオン状態に遷移する速度がより大きくなる。また、析出した銅が溶解して2つの電極が切り離されてオフ状態に遷移する速度もより大きくなる。なお、図6Bではソース電極11とドレイン電極12とのギャップが頂点間で形成されているが、どちらか一方が辺であってもよい。この場合でも、図6Aの場合よりもスイッチング現象における遷移速度が大きくなると考えられるからである。また、上記2つの電極が多角形である必要はなく、少なくともどちらか一方の電極に上記頂点のような尖鋭部を有していればよい。
【0078】
次に、上記構成のスイッチング素子の動作について説明する。
【0079】
ソース電極11を接地し、ドレイン電極12に+0.1V印加してゲート電極13に正の電圧を印加すると、ソース電極11とドレイン電極12との間に流れるドレイン電流が観測され、スイッチング素子がオン状態に遷移した。スイッチング素子がオン状態に遷移した後、ゲート電極13に印加するゲート電圧をさらに大きくすると、ドレイン電流が増大した。一方、ゲート電極13に負の電圧を印加するとドレイン電流が小さくなりスイッチング素子がオフ状態に遷移した。
【0080】
なお、オン状態とオフ状態との間を遷移させる際に、ソース電極11およびドレイン電極12の2つの電極間の抵抗値について所望の値である目標抵抗値になるようにゲート電圧の印加時間または印加電圧を、以下に示すようにしてフィードバック制御してもよい。
【0081】
図7はゲート電圧をフィードバック制御するためのフローチャートである。なお、実験ではパーソナルコンピュータ(以下、PCと称する)で制御を行った。PCには、プログラムにしたがって所定の処理を実行するCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)と、プログラムを格納するための記憶部とを有する。
【0082】
図7に示すように、PCは、所定の電圧をゲート電極13に印加すると(ステップS101)、ドレイン電流となる出力電流を読み出し(ステップS102)、印加した電圧の値と読み出した出力電流の値から上記2つの電極間の抵抗値を求め、予め設定された目標抵抗値と比較する(ステップS103)。また、ゲート電極13に印加した電圧の値および印加時間と、求めた抵抗値とをデータとして記憶部に格納する。
【0083】
ステップS103で比較した結果、求めた抵抗値が目標抵抗値と所定の範囲内で一致すれば、電圧の印加を終了させる(ステップS104)。一方、ステップS103で求めた抵抗値が目標抵抗値の所定の範囲に入らなければ、ステップS101に戻り、続けて電圧を印加する。
【0084】
なお、図7に示したフローチャートにしたがって1回の処理に要する時間は100ms程度であるが、専用の電気回路を用いれば1回の処理に要する時間を100ns以下にすることも可能となる。
【0085】
このようにして、ゲート電極に印加した電圧の値をフィードバックすることで、オン状態とオフ状態間を確実に遷移させることができるだけでなく、オン抵抗、およびオフ状態のときの素子の抵抗であるオフ抵抗をより正確に決めることができる。
【0086】
次に、上記構成のスイッチング素子の製造方法について説明する。
【0087】
半導体基板上にシリコン酸化膜を膜厚300nm形成した後、真空蒸着法により銅膜を膜厚150nm形成する。続いて、リソグラフィ工程で所定のパターンのレジストを形成した後、レジストで被覆されていない部位の銅膜をイオンミリング法で除去してゲート電極14を形成する。その後、陽極分極法を用いてイオン伝導体14として硫化銅を膜厚100nm形成する。
【0088】
ここで、陽極分極法について詳細に説明する。0.025モル/Lの硫化ナトリウム水溶液中で、硫化される側の金属である銅を含んだゲート電極14を陽極にし、金を陰極にして電圧を印加する。これにより、水溶液中の硫黄イオンが陽極に引き寄せられ、電気化学反応によってゲート電極14の表面から銅が硫化銅に変化する。イオン電流を計測することで硫化の進み具合をモニタし、所望の膜厚のイオン伝導体14を形成する。
【0089】
上記イオン伝導体14を形成した後、スパッタリング法によりチタン膜を膜厚10nm形成し、真空蒸着法により金膜を膜厚100nm形成する。続いて、リソグラフィ工程で所定のパターンのレジストを形成した後、ドライエッチングを行うことでソース電極11およびドレイン電極12を形成し、その後、レジストを除去する。ここで、ソース電極11およびドレイン電極12の2つの電極を形成する際、電極間のギャップの大きさを100nm以下にしている。
【0090】
なお、チタン膜の形成にスパッタリング法を用いたが、真空蒸着法であってもよい。また、ソース電極11およびドレイン電極12を形成する際、ドライエッチングの代わりにリフトオフ法を用いてもよい。
【0091】
また、硫化銅を形成する際に陽極分極法を用いたが他の方法を用いてもよい。例えば、銅を気相中、200度C以上の温度で硫黄と反応させて硫化銅を形成する方法や、硫化銅をレーザーアブレーション法により成膜する方法であってもよい。
【0092】
本実施例ではシリコン酸化膜が被覆された基板15上にスイッチング素子を形成したが、基板表面に予め形成されたMOSトランジスタや配線などを被覆する絶縁膜上に本実施例のスイッチング素子を形成してもよい。スイッチング素子の製造工程における熱処理の温度が400度C以下であるため、上記絶縁膜上にスイッチング素子を形成しても、MOSトランジスタや配線の特性に対してほとんど影響を及ぼさないからである。また、スイッチング素子の上に形成した絶縁膜を介して、さらにスイッチング素子を形成することも可能である。そのため、本発明のスイッチング素子を適用すれば、集積回路の高集積化が容易となる。
【0093】
なお、本発明のスイッチング素子について図5に示した構成は1つの例示であって、本発明の範囲を逸脱しないような別の構成が可能である。本発明の他の構成例を図8Aから図8Cに示す。
【0094】
図8Aでは、図5で示したスイッチング素子におけるイオン伝導体とゲート電極が絶縁層26中に埋め込まれたリセス構造となっている。シリコン酸化膜が被覆された基板25の上に所定の開孔を有し、その開孔にはゲート電極23とイオン伝導体24とが順に形成されている。イオン伝導体24の上にはソース電極21とドレイン電極22とが形成されている。なお、ソース電極21とドレイン電極22との間のギャップの距離は図5と同様である。このようにリセス構造とすることで、スイッチング素子を複数形成した場合、隣接する素子同士を電気的に絶縁する絶縁層26の上面が平坦となり、絶縁層26上に形成するソース電極21およびドレイン電極22に接続される配線を平坦化することができ、配線の断線がより起こりにくくなる。
【0095】
図8Bでは、図8Aで示したスイッチング素子におけるゲート電極とソース電極およびドレイン電極を上下反転させた構造となっている。この場合には、イオン伝導体34がソース電極31とドレイン電極32との間のギャップ中にも形成されていることが特徴となる。
【0096】
図8Cでは、ソース電極41とゲート電極43が同じ配線層に設けられ、ドレイン電極42がイオン伝導体44を挟んで異なる配線層に設けられているのが特徴である。この場合、ドレイン電極42とソース電極41との間のギャップの大きさをイオン伝導体44の膜厚で設定できる。
【0097】
図12に第1の実施例の、陽極分極法により硫化銅を形成した場合のスイッチング素子の電気特性を示す。ソース電極11を接地、ドレイン電極を+0.1V、さらにゲート電極13に正の電圧を印加するとソース電極とドレイン電極に電流が観測されオン状態へ遷移した。一方、負のゲート電圧を印加すると電流が小さくなりオフ状態へと遷移した。次に、オン状態の後、正のゲート電圧を印加すると、ソース電極とドレイン電極に流れる電流が増大した。
【0098】
図13に第1の実施例の、レーザーアブレーション法により硫化銅を形成した場合のスイッチング素子の電気特性を示す。ソース電極11を接地、ドレイン電極を+0.01V、さらにゲート電極13に正の電圧を印加するとソース電極とドレイン電極に電流が観測されオン状態へ遷移した。一方、負のゲート電圧を印加すると電流が小さくなりオフ状態へと遷移した。次に、オン状態の後、正のゲート電圧を印加すると、ソース電極とドレイン電極に流れる電流が増大した。
【実施例2】
【0099】
本実施例は、実施例1におけるドレイン電極をゲート電極と同じ材料で形成したことを特徴とする。
【0100】
本実施例のスイッチング素子の構成について説明する。
【0101】
図9は本実施例によるスイッチング素子の構成を示す断面図である。
【0102】
図9に示すように、スイッチング素子50は、絶縁膜が被覆された基板55上に形成されたゲート電極53と、ゲート電極53の上に形成されたイオン伝導体54と、イオン伝導体54の上に形成されたソース電極51およびドレイン電極52とを有する。ソース電極51、ドレイン電極52およびゲート電極53は相互に電気的に絶縁された状態で配置されている。
【0103】
ソース電極51とドレイン電極52は同一平面内に形成されている。ゲート電極53およびドレイン電極52は電気化学反応によってイオン伝導体54に金属イオンを供給するための材料を含むものである。ソース電極51およびイオン伝導体54のそれぞれは実施例1の場合と同様な材料であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0104】
次に、上記構成のスイッチング素子におけるソース電極51およびドレイン電極52による2電極スイッチング素子の動作について説明する。
【0105】
ソース電極51を接地し、ドレイン電極52に正の電圧を印加することで、ソース電極51とドレイン電極52との間に銅の析出物による金属フィラメントが成長し、ソース電極51とドレイン電極52が電気的に接続され、スイッチング素子がオン状態になる。一方、スイッチング素子がオン状態になった後、ドレイン電極52に負の電圧を印加することで、ソース電極51とドレイン電極52との間の金属フィラメントがイオン伝導体54に溶解し、ソース電極51とドレイン電極52との接続が切れ、スイッチング素子がオフ状態になる。
【0106】
なお、上記2電極スイッチング素子と同様な構成による動作については開示されている(アプライド・フィジックス・レター誌、82巻、18号、p.3032〜3034)。本実施例では、以下に説明するように、ゲート電極53によってドレイン電流の大きさを制御する点に特徴がある。
【0107】
次に、上記構成のスイッチング素子の動作について説明する。
【0108】
上述のようにしてドレイン電極52に電圧を印加することで、ソース電極51とドレイン電極52が金属フィラメントによって接続されてオン状態になった後、ゲート電極53に正の電圧を印加することで、オン抵抗が小さくなるだけでなく、ドレイン電流が増大する。その理由は次の通りである。オン状態になってソース電極51とドレイン電極52とが接続されると、オン抵抗の値が小さくなるためドレイン電極52に電圧がかかりにくくなり、銅の析出量を増やすことができなくなる。これに対して、ゲート電極53に正の電圧を印加すれば、ソース電極51およびドレイン電極52の間に銅をさらに析出させることになり、オン抵抗の値を小さくできる。
【0109】
一方、オン状態になった後、ゲート電極53に負の電圧を印加することで、ドレイン電流を減少させ、金属フィラメントを取り除いてオン抵抗を大きくし、さらにはオフ状態にすることが可能である。
【0110】
具体的な例として、オン抵抗の値を10Ω、ドレイン電圧を0.1Vとすると、ドレイン電流は10mAになる。10mAという電流は配線幅が微細な半導体の集積回路では非常に大きな値であり、配線を太くしないと配線が焼き切れたり、配線中の原子が移動する現象(エレクトロマイグレーション)により断線したりといった問題が発生する。そこで、オン状態でゲート電極53に電圧を印加することで、オン抵抗の値を制御し、過剰なドレイン電流を流さないようにすることが可能となる。
【0111】
また、ドレイン電極52に所定の正の電圧を所定の時間印加してソース電極51とドレイン電極52との間で金属フィラメントが接続される直前に、ゲート電極53に電圧を印加することでスイッチング素子をオン状態にする。この場合、ゲート電極53に印加する電圧は小さくてすみ、上記2電極スイッチング素子の欠点であった、スイッチング素子がオンするときにドレイン電流が流れすぎる問題を解消できる。なお、ソース電極51とドレイン電極52との間で金属フィラメントが接続される直前の状態にするための、ドレイン電極52に印加する上記所定の電圧および時間を予め調べ、ゲート電極53に電圧を印加するタイミングを設定する必要がある。
【0112】
本実施例では、ソース電極51とドレイン電極52とを電気的に接続させるのに、上述したようにして、ソース電極51とドレイン電極52との間に電圧を印加してもよく、ゲート電極53に電圧を印加してもよい。
【0113】
次に、本実施例のスイッチング素子の製造方法について説明する。なお、実施例1と同様な工程についてはその詳細な説明を省略する。
【0114】
実施例1と同様にしてゲート電極53とイオン伝導体54を形成した後、スパッタリング法によりチタン膜を膜厚10nm形成し、真空蒸着法により金膜を膜厚100nm形成する。続いて、リソグラフィ工程で所定のパターンのレジストを形成した後、ドライエッチングを行うことでソース電極51を形成し、レジストを除去する。その後、真空蒸着法により銅膜を膜厚100nm形成する。続いて、リソグラフィ工程で所定のパターンのレジストを形成した後、レジストで被覆されていない部位の銅膜をイオンミリング法で除去してドレイン電極52を形成し、レジストを除去する。ソース電極51とドレイン電極52との間のギャップの大きさが100nm以下になるようにしている。
【0115】
なお、チタン膜の形成にスパッタリング法を用いたが、真空蒸着法であってもよい。また、ソース電極51およびドレイン電極52を形成する際、ドライエッチングの代わりにリフトオフ法を用いてもよい。さらに、硫化銅を形成する際に陽極分極法を用いたが、実施例1と同様に他の方法を用いてもよい。
【0116】
本実施例のスイッチング素子は1つの例示であって、本発明の範囲を逸脱しないような別の構成が可能である。また、ドレイン電極をゲート電極と同じ材料で形成する点を除けば、実施例1に述べた構成、配置、および製造方法を本実施例に当てはめることができる。
【実施例3】
【0117】
本発明のスイッチング素子を用いたFPLの構成について説明する。
【0118】
FPLは、背景技術で述べたように、複数の論理回路ブロックと、論理回路ブロック同士を接続するための配線と、配線の接続を切り替えるためのアンチフューズ素子とを有する構成である。本実施例では、プログラム用素子としてアンチフューズ素子の代わりに本発明のスイッチング素子を適用した。
【0119】
図10はFPLに適用した本発明のスイッチング素子の構成を示す断面図である。
【0120】
図10に示す構成は、実施例1の図8Aのソース電極21を配線A61にして、ドレイン電極22を配線B62にしたものである。
【0121】
図10に示したスイッチング素子の動作について説明する。
【0122】
配線A61および配線B62を接地してゲート電極63に正の電圧を印加するか、または、配線A61および配線B62に負の電圧を印加してゲート電極63を接地することで、配線A61と配線B62との間に銅を析出させて配線A61と配線B62とを電気的に接続させる。一方、配線A61および配線B62を接地してゲート電極63に負の電圧を印加するか、または、配線A61および配線B62に正の電圧を印加してゲート電極63を接地することで、析出した銅を溶解させ配線A61と配線B62とを電気的に切り離す。
【0123】
なお、FPLに用いるスイッチング素子は、実施例1の構成について図8Aに示した構成以外でもよく、実施例2で示した構成であってもよい。
【0124】
次に、図10に示したスイッチング素子の製造方法について説明する。なお、実施例1および実施例2と同様な工程についてはその詳細な説明を省略する。
【0125】
論理回路ブロックおよび周辺回路を形成した基板上に絶縁層65を形成する。続いて、所定の開孔を有する絶縁層64を形成し、開孔にゲート電極63およびイオン伝導体24を順に形成する。その後、図8Aで示したソース電極21およびドレイン電極22の代わりに、配線A61および配線B62を形成する。
【0126】
本発明のスイッチング素子を用いたFPLは、実験の結果、数百万回以上の書き換えが可能であった。また、オン抵抗が小さいため信号遅延が小さくなる。さらに、書き換えができる点で従来技術のアンチフューズ素子より優れ、信号遅延が少ない点でEEPROMを用いたFPLより優れている。
【実施例4】
【0127】
本発明のスイッチング素子を情報記憶手段に用いたメモリ素子の構成について説明する。
【0128】
図11は本発明のスイッチング素子を用いたメモリ素子の回路模式図である。
【0129】
図11に示すように、メモリアレイ70は、アレイ状のメモリセルと、ビット線73a〜73zと、ワード線74a〜74yと、ワード線75a〜75yとを有する。メモリセル76は、セル選択用のMOSトランジスタ71と、スイッチング素子72とを有する構成である。ビット線およびワード線のそれぞれは図に示さないデコーダ回路およびドライバ回路のそれぞれに接続されている。ビット線は隣接するメモリセルと共通になっている。なお、メモリアレイ70、および図に示さないデコーダ回路およびドライバ回路等の周辺回路を含めてメモリ集積回路が構成されている。
【0130】
メモリセル76において、MOSトランジスタは、ソース電極がビット線73aに接続され、ゲート電極がワード線74aに接続されている。スイッチング素子72は、ソース電極がビット線73bに接続され、ゲート電極がワード線75aに接続されている。そして、スイッチング素子72のドレイン電極はMOSトランジスタ71のドレイン電極に接続されている。
【0131】
次に、上記構成のメモリ素子の動作について説明する。なお、記憶情報"1"と"0"のうち、スイッチング素子のオン状態を"1"とし、オフ状態を"0"とする。また、スイッチング素子のオン状態とオフ状態とを遷移させるのに必要な電圧(ゲート電圧とソース電極に印加される電圧との差)をVtとし、MOSトランジスタ71の動作電圧をVRとする。
【0132】
メモリセル76に"1"を書き込む場合には、メモリセル76のスイッチング素子72のゲート電極に接続されたワード線75aに電圧Vtを印加し、ソース電極に接続されたビット線73bの電圧を0Vにする。そして、ワード線75b〜75y、ならびにビット線73aおよび73c〜73zに電圧(Vt/2)を印加する。スイッチング素子72は、実施例1および実施例2で説明したようにオン状態になり、スイッチング素子72には記憶情報"1"が書き込まれる。このとき、スイッチング素子72以外の他のスイッチング素子は記憶情報が書き込まれず、電圧が印加される前の状態を保持する。
【0133】
メモリセル76に"0"を書き込む場合には、メモリセル76のスイッチング素子72のゲート電極に接続されたワード線75aの電圧を0Vにして、ソース電極に接続されたビット線73bに電圧Vtを印加する。そして、ワード線75b〜75y、ならびにビット線73aおよび73c〜73zに電圧(Vt/2)を印加する。スイッチング素子72は、実施例1および実施例2で説明したようにオフ状態になり、スイッチング素子72には記憶情報"0"が書き込まれる。スイッチング素子72以外の他のスイッチング素子は電圧が印加される前の状態を保持する。
【0134】
メモリセル76の情報を読み出すには、ワード線74aに電圧VRを印加してMOSトランジスタ71をオンさせ、他のワード線の電圧を0Vにして、ビット線73aとビット線73bとの間の抵抗値を求める。この抵抗値はMOSトランジスタ71のオン抵抗とスイッチング素子72との合成抵抗値であり、この合成抵抗値が測定できないほど大きい場合にはスイッチング素子72がオフ状態と判定でき、メモリセル76の記憶情報が"0"であることがわかる。一方、上記合成抵抗値が所定の値より小さい場合にはスイッチング素子72がオン状態と判定でき、メモリセル76の記憶情報が"1"であることがわかる。
【0135】
本発明は上記実施例に限定されることなく、発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】第4の従来例の電子素子の構成を示す断面概略図である。
【図2】本発明のスイッチング素子の一構成例を示す断面図である。
【図3A】本発明のスイッチング素子の電気特性を示すグラフである。
【図3B】本発明のスイッチング素子の電気特性を示すグラフである。
【図4】本発明のスイッチング素子の電気化学反応を説明するための図である。
【図5】本発明のスイッチング素子の一構成例を示す断面図である。
【図6A】ソース電極およびドレイン電極の平面パターンの一例を示す平面模式図である。
【図6B】ソース電極およびドレイン電極の平面パターンの一例を示す平面模式図である。
【図7】ゲート電圧をフィードバック制御するためのフローチャートである。
【図8A】実施例1のスイッチング素子の他の構造を示す断面図である。
【図8B】実施例1のスイッチング素子の他の構造を示す断面図である。
【図8C】実施例1のスイッチング素子の他の構造を示す断面図である。
【図9】実施例2のスイッチング素子の構成を示す断面図である。
【図10】FPLに適用した本発明のスイッチング素子の一構成例を示す断面図である。
【図11】本発明のスイッチング素子とMOSトランジスタを用いたメモリ素子を示す回路図である。
【図12】イオン伝導体に陽極分極法により作製した硫化銅を用いた実施例1のスイッチング素子の電気特性を示すグラフである。
【図13】イオン伝導体にレーザーアブレーション法により作製した硫化銅を用いた実施例1のスイッチング素子の電気特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0137】
10、20、30、40、50、60、72 スイッチング素子
1、11、21、31、41、51 ソース電極
2、12、22、32、42、52 ドレイン電極
3、13、23、33、43、53、63 ゲート電極
4、14、14、34、44、54 イオン伝導体
5、15、25、35、45、55 基板
61 配線A
62 配線B
26、36、46、64 絶縁層
70 メモリアレイ
71 MOSトランジスタ
73a〜73z ビット線
74a〜74y、75a〜75y ワード線
76 メモリセル
81 絶縁材料
82 導電材料
83 誘電材料
84 金属材料
85 電極
86 イオン導電材料
87 半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応を利用したスイッチング素子であって、
前記電気化学反応に用いられる金属イオンが伝導するためのイオン伝導体と、
前記イオン伝導体に接して、所定の距離だけ離れて設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記スイッチング素子をオン状態に遷移させる電圧が印加されると前記ソース電極およびドレイン電極の間に前記金属イオンによる金属を析出させて前記ソース電極およびドレイン電極を電気的に接続し、前記スイッチング素子をオフ状態に遷移させる電圧が印加されると前記析出した金属を溶解させて該ソース電極およびドレイン電極の電気的接続を切るための、前記イオン伝導体に接して設けられたゲート電極と、
を有するスイッチング素子。
【請求項2】
前記スイッチング素子がオン状態またはオフ状態になった後、前記ゲート電極への電圧の印加が停止されても、該状態を保持する請求項1記載のスイッチング素子。
【請求項3】
電気化学反応を利用したスイッチング素子であって、
前記電気化学反応に用いられる金属イオンが伝導するためのイオン伝導体と、
前記イオン伝導体に接して設けられたソース電極と、
前記スイッチング素子をオン状態に遷移させる電圧が印加されると前記金属イオンによる金属を析出させて該ソース電極と電気的に接続され、前記スイッチング素子をオフ状態に遷移させる電圧が印加されると前記析出した金属を溶解させて該ソース電極との電気的接続が切られる、前記イオン伝導体に接して該ソース電極と所定の距離だけ離れて設けられたドレイン電極と、
前記ソース電極に対して正の電圧が印加されると前記ソース電極およびドレイン電極間に流れる電流であるドレイン電流を増加させ、該ソース電極に対して負の電圧が印加されると該ドレイン電流を減少させるための、前記イオン伝導体に接して設けられたゲート電極と、
を有するスイッチング素子。
【請求項4】
電気化学反応を利用したスイッチング素子であって、
前記電気化学反応に用いられる金属イオンが伝導するためのイオン伝導体と、
前記イオン伝導体に接して設けられたソース電極と、
所定の電圧が所定の時間印加されると前記金属イオンによる金属が析出される、前記イオン伝導体に接して該ソース電極と所定の距離だけ離れて設けられたドレイン電極と、
前記ドレイン電極に所定の電圧が所定の時間印加された後、前記スイッチング素子をオン状態に遷移させる電圧が印加されると前記金属イオンよる金属を析出させて前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続するための、前記イオン伝導体に接して設けられたゲート電極と、
を有するスイッチング素子。
【請求項5】
前記スイッチング素子がオン状態またはオフ状態になった後、前記ゲート電極および前記ドレイン電極への電圧の印加が停止されても、該状態を保持する請求項3または4記載のスイッチング素子。
【請求項6】
前記ゲート電極は前記イオン伝導体に前記金属イオンを供給するための材料を含み、
前記ソース電極およびドレイン電極が前記イオン伝導体と接する部位は前記イオン伝導体と反応しない材料である請求項1または2記載のスイッチング素子。
【請求項7】
前記ゲート電極およびドレイン電極は前記イオン伝導体に前記金属イオンを供給するための材料を含み、
前記ソース電極が前記イオン伝導体と接する部位は前記イオン伝導体と反応しない材料である請求項3乃至5のいずれか1項記載のスイッチング素子。
【請求項8】
前記イオン伝導体と前記金属イオンを供給するための材料のそれぞれが、硫化銅と銅、または硫化銀と銀であって、
前記イオン伝導体と反応しない材料が、白金、アルミニウム、金、チタン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、およびモリブデンの金属、ならびにこれらの金属の窒化物、およびこれらの金属のシリ化物のうち少なくともいずれか1つを含む請求項6または7記載のスイッチング素子。
【請求項9】
前記ソース電極およびドレイン電極が前記ゲート電極の平面パターンに対して平行な同一平面内に形成され、該ソース電極およびドレイン電極のうち少なくともいずれか一方の平面パターンに尖鋭部を有し、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との最短距離が前記一方の電極の尖鋭部から他方の電極までの距離で表わされる請求項1乃至8のいずれか1項記載のスイッチング素子。
【請求項10】
前記イオン伝導体が、元素の周期律表における6B族の元素を含んだカルコゲナイト材料と、金属イオン性非晶質半導体と、金属イオン性ガラスとのうち少なくともいずれか一つを含む請求項1乃至9のいずれか1項記載のスイッチング素子。
【請求項11】
前記イオン伝導体が電解液である請求項1乃至10のいずれか1項記載のスイッチング素子。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項記載のスイッチング素子をプログラム用素子に用いた書き換え可能な論理集積回路。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項記載のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子がオン状態およびオフ状態のいずれの状態であるかを読み出すためのトランジスタと、
を有するメモリ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−339667(P2006−339667A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204971(P2006−204971)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【分割の表示】特願2005−511860(P2005−511860)の分割
【原出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】