説明

スイッチ及びその熔着方法

【課題】組立時に自動的に芯合わせが行われるようにすることを可能とする。
【解決手段】ターミナル・ブロック11及びカバー13を熔着し内部に固定接点15を有したスイッチ・ハウジング3と、自動変速機のマニュアル・シャフトを嵌合させるボス部29及び固定接点15に対応した可動接点35を備えてスイッチ・ハウジング3に対し回転可能なムービング・ブロック5と、ターミナル・ブロック11及びカバー13とボス部29との内外周面間に介設された弾性体のシール・リング7,9とを備え、カバー13をレーザー透過性材料で形成しターミナル・ブロック11をレーザー非透過性材料で形成し、シール・リング7,9の弾性力によりムービング・ブロック5に対して自動的に調芯されるターミナル・ブロック11及びカバー13に、外周部側でレーザー光による熱熔着部17を周回状に形成して結合を行ない調芯を固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動速機の変速位置を電気的に検出するインヒビター・スイッチ等回転位置を検出するスイッチ及びその熔着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチとしては、例えば図5の断面図に示すようなインヒビター・スイッチがある。図5のように、インヒビター・スイッチ101は、ターミナル・ブロック103と、カバー105と、ムービング・ブロック107とを備えている。
【0003】
前記ターミナル・ブロック103には、固定接点109が複数備えられている。このターミナル・ブロック103が前記カバー105に結合され、スイッチ・ハウジング111が構成されている。このスイッチ・ハウジング111の内部に、接点収容室113が形成されている。前記ターミナル・ブロック103とカバー105とは、例えば超音波溶着等による熱溶着部115において結合されている。
【0004】
前記熱熔着部115は、シェア・ジョイントが採用され、熔着強度を確保している。シェア・ジョイントは、熔着前に熱熔着部115対応箇所においてターミナル・ブロック103側の周回状の熔着溝117にカバー105側の周回状の突条119を全周で嵌合ガイドさせ、ムービング・ブロック107の軸心回りでターミナル・ブロック103及びカバー105の芯合わせ及び軸回り回転方向の位置決めを行わせている。この位置決め状態でターミナル・ブロック103及びカバー105を挟圧しながら超音波により加振し、突条119及び熔着溝117の側面間で熱熔着させ、強固な超音波熔着を行っている。
【0005】
しかし、超音波熔着の際、ターミナル・ブロック107をカバー105に合わせるとき、熔着溝117に突条119をスイッチ・ハウジング111の全周で嵌合ガイドさせるため、熔着溝117及び突条119の位置精度、形状精度の影響、超音波振動の影響により熔着状態でターミナル・ブロック107及びカバー105がムービング・ブロック107の軸芯に対して芯ずれを起こす可能性が有り、芯ずれが生じると検出精度が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−192617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、熔着溝に突条を嵌合ガイドさせて超音波熔着を行うため、熔着溝及び突条の位置精度、形状精度の影響、超音波振動の影響により芯ずれを起こし易い点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、組立時に自動的に芯合わせが行われるようにするため、ターミナル・ブロック及びカバーを結合し内部に固定接点を有したスイッチ・ハウジングと、操作部を備えて前記スイッチ・ハウジングに対し移動可能なムービング・ブロックと、スイッチ・ハウジングとムービング・ブロックとの間で操作部の移動を検出する検出部と、前記ターミナル・ブロック及びカバーと操作部との内外周面間に介設された弾性体のシール・リングとを備え、前記ターミナル・ブロック及びカバーの一方をレーザー透過性材料で形成し他方をレーザー非透過性材料で形成し、 前記シール・リングの弾性力により前記ムービング・ブロックに対して自動的に調芯されるターミナル・ブロック及びカバーに、外周部側でレーザー光による熱熔着部を周回状に形成して前記結合を行ない前記調芯状態で固定したことをスイッチの最も主要な特徴とする。
【0009】
また、ターミナル・ブロック及びカバーを結合し内部に固定接点を有したスイッチ・ハウジングと、操作部を備えて前記スイッチ・ハウジングに対し移動可能なムービング・ブロックと、スイッチ・ハウジングとムービング・ブロックとの間で操作部の移動を検出する検出部と、前記ターミナル・ブロック及びカバーと操作部との内外周面間に介設された弾性体のシール・リングとを備え、前記ターミナル・ブロック及びカバーの一方をレーザー透過性材料で形成し他方をレーザー非透過性材料で形成したスイッチの熔着方法であって、前記シール・リングの弾性力により前記ムービング・ブロックに対し前記ターミナル・ブロック及びカバーを自動的に調芯させると共に該ターミナル・ブロック及びカバーを前記ムービング・ブロック回転方向で位置決めし、位置決めした状態でレーザー透過性材料で形成した前記ターミナル・ブロックまたはカバーの外周部側にレーザー光を照射し、前記ターミナル・ブロック及びカバーを周回状に熱溶着させて前記結合を行ったことをスイッチの溶着方法の最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスイッチは、上記構成により、シェア・ジョイントのような超音波熔着が不要となり、ターミナル・ブロック及びカバーとムービング・ブロックの嵌合部との内外周面間に弾性体のシール・リングを介設して組み合わせると、シール・リングの弾性力によりムービング・ブロックに対してターミナル・ブロック及びカバーを自動的に調芯させ(セルフ・センタリング)、外周部側の熱熔着部によりターミナル・ブロック及びカバーを結合して前記調芯状態で固定させることができる。
【0011】
従って、レーザー透過性材料で形成されたターミナル・ブロック及びカバーの一方からレーザー非透過性材料で形成された同他方へレーザー光を照射することで、精度良く芯合わせを行いながら容易に熱熔着させることができる。
【0012】
また、本発明のスイッチの溶着方法は上記により、シェア・ジョイントのような超音波溶着が不要となり、ターミナル・ブロック及びカバーとムービング・ブロックの嵌合部との内外周面間に弾性体のシール・リングを介設して組み合わせると、レーザー熔着前にシール・リングの弾性力によりムービング・ブロックに対してターミナル・ブロック及びカバーを自動的に調芯させることができる。
【0013】
従って、ターミナル・ブロック及びカバーのムービング・ブロックの回転軸芯を中心とした回転方向の位置決めをし、レーザー透過性材料で形成されたターミナル・ブロック及びカバーの一方からレーザー非透過性材料で形成された同他方へレーザー光を照射することで、回転方向の位置決め及び芯合わせを精度良く行いながら熱熔着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インヒビター・スイッチの断面図である。(実施例1)
【図2】(a)(b)は、熱熔着部対応箇所の熔着前におけるそれぞれ異なった例を示す要部拡大断面図である。(実施例1)
【図3】(a)(b)は、スイッチ・ハウジングの位置決めに係るそれぞれ異なった例を示す平面図である。(実施例1)
【図4】ガラス繊維の状態を示し、(a)はレーザー熔着、(b)は超音波熔着の説明図である。
【図5】インヒビター・スイッチの断面図である。(従来例)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
組立時に自動的に芯合わせが行われるようにするという目的を、弾性体のシール・リングと、レーザー透過性材料及びレーザー非透過性材料を用いたターミナル・ブロック及びカバーのレーザー光による熔着とで実現した。
【実施例1】
【0016】
[スイッチ装置の全体構造]
図1は本発明を適用した実施例1に係るインヒビター・スイッチ1の断面図を示し、図2(a),図2(b)は、熱溶着部対応箇所の溶着前における要部拡大断面図でそれぞれ異なった例を示し、図3(a),図3(b)は、スイッチ・ハウジングの位置決めに係る平面図でそれぞれ異なった例を示している。
【0017】
図1のように、スイッチとしてのインヒビター・スイッチ1は、スイッチ・ハウジング3とムービング・ブロック5とシール・リング7,9とを備えている。
【0018】
前記スイッチ・ハウジング3は、ターミナル・ブロック11及びカバー13を溶着しターミナル・ブロック11側の内部に検出部としての固定接点15を複数有している。
【0019】
前記ターミナル・ブロック11は、レーザー非透過性材料で形成されている。レーザー非透過性材料は、例えばナイロンなどの樹脂が用いられ、黒色の顔料等の添加剤の割合調整によりレーザー光を吸収して発熱するようにしている。
【0020】
前記カバー13は、レーザー透過性材料で形成されている。レーザー透過性材料は、例えばナイロンなどの樹脂が用いられ、紺色の顔料等の添加剤の割合調整によりレーザー光は透過するが可視光は通さないようにしている。このように、カバー13をターミナル・ブロック11の黒色と区別して紺色とすることにより、カバー13側かターミナル・ブロック11側かを明確に視認することができ、スイッチ組み立て時、着色されたカバー13を確認することで後述する薄肉部からレーザー光を確実に当てることができる。また、カバー13を可視光は通さない紺色とすることでスイッチ・ハウジング3内部において接点のオン・オフ時に発生するスパークや内部の経時的な汚れを外部から見えないようにすることができる。
【0021】
但し、カバー13をターミナル・ブロック11の黒色と同一の黒色で形成し、或いは透明、半透明にすることも可能である。
【0022】
これらターミナル・ブロック11及びカバー13それぞれの外周部は、図1,図3のようにレーザー光による熱熔着部17で周回状に熔着されている。
【0023】
前記熱熔着部17対応箇所は、熔着前において図2のように形成されている。すなわち、図2(a)では、前記ターミナル・ブロック11の外周部に平坦なターミナル・ブロック突合面19が周回状に形成され、このターミナル・ブロック突合面19に沿って突条21が周回状に形成されている。前記カバー13には、外周部にカバー側突合面23が形成され、このカバー側突合面23に熔着溝25が周回状に形成されている。
【0024】
前記熔着溝25の形成によりカバー13の肉厚を熱熔着部17において薄くすることができ、レーザー光を透過させ易くしている。熔着溝25の奥壁25aには、熔着突部27が熔着溝25に沿って周回状に形成されている。前記突条21は、前記熔着溝25に嵌合し、ムービング・ブロック5の回転軸芯に対する径方向で突条21及び熔着溝25の内外周相互間に隙間26a,26bを有している。
【0025】
図2(b)は、突条21Aの頂面21aAに熔着突部27Aが形成され、熔着溝25Aの奥壁25aAは、平坦面となっている。突条21A及び熔着溝25A間の径方向の隙間26a,26bは図2(a)と同様である。
【0026】
前記ターミナル・ブロック11は、回転軸芯と同心の円形凹部30を有し、この円形凹部30にカバー13の周回状の突部32が嵌合し、円形凹部30及び突部32間にも、ムービング・ブロック5の回転軸芯に対する径方向に相対移動を可能とする隙間28を備えている。
【0027】
なお、カバー13の突部32は接点支持盤31の押さえとカバー13の孔回りの剛性を確保するためのもので、ターミナル・ブロック11側の円形凹部30は、突部32を逃げるためのものである。
【0028】
前記ムービング・ブロック5は、ナイロンなどの樹脂で形成され、嵌合部(操作部)であるボス部29と接点支持盤31とからなっている。前記ボス部29は、前記ターミナル・ブロック11及びカバー13に回転自在に支持されている。ターミナル・ブロック11及びカバー13とボス部29との内外周面間には、前記シール・リング7,9が介設されている。シール・リング7,9は、弾性体であるOリングなどのゴム製である。前記ボス部29には、二面幅を有した嵌合穴33が設けられている。嵌合穴33には、回転体としての自動変速機のマニュアル・シャフト(図示せず)を嵌合させる。
【0029】
前記ムービング・ブロック5のボス部29とターミナル・ブロック11の嵌合孔34及び嵌合部36との間、ボス部29とカバー13の嵌合孔38及びカバーボス部32との間にも、径方向の相対動を許容する若干の隙間が形成されている。
【0030】
前記接点支持盤31は、前記スイッチ・ハウジング3内に延出している。接点支持盤31には、前記固定接点15に対応し検出部として複数の可動接点35が支持されている。
【0031】
固定接点15及び可動接点35によりスイッチ・ハウジング3とムービング・ブロック5との間で操作部であるボス部29の回転移動を検出することができる。
[組立]
前記ムービング・ブロック5にグリスを塗り、ボス部29外周にシール・リング9を取り付ける。
【0032】
このムービング・ブロック5をカバー13に組み付け、ボス部29外周にシール・リング7を取り付ける。
【0033】
このムービング・ブロック5を組み付けたカバー5に対してターミナル・ブロック11を組み付け、カバー13のカバー突合面23にターミナル・ブロック11のターミナル・ブロック突合面19を対向させる。
【0034】
この時、ターミナル・ブロック11の突条21の頂面21aがカバー13の熔着溝25内に遊嵌してその頂面21aが熔着突部27に突き当たり、ターミナル・ブロック突合面19及びカバー突合面23間に熔着代となる隙間が形成される。
【0035】
この場合、ターミナル・ブロック11及びカバー13に力を加えないフリーの状態にすると、ゴム製のシール・リング7,9が全周で径方向に均等に発生させる弾性力でムービング・ブロック5のボス部29に対しターミナル・ブロック11及びカバー13が自動的に位置決めされ、セルフ・センタリングが行われる。自動調芯の際のターミナル・ブロック11及びカバー13間等の相対動は、隙間26a,26b,28等によって許容される。
【0036】
ターミナル・ブロック11及びカバー13の回転方向の位置決めは、図3のように行われる。
【0037】
図3(a)では、治具37のピン39によりムービング・ブロック5の回転軸芯を中心としたターミナル・ブロック11及びカバー13の回転方向の位置決めを行っている。図3(b)では、ターミナル・ブロック11に突設した突部41をカバー13に形成した位置決め溝43に係合させて両者の回転方向の位置決めを行っている。
【0038】
こうしてセルフ・センタリング及び回転方向の位置決めが行われた状態で、治具37によりターミナル・ブロック11及びカバー13間に押圧力を付与しつつカバー13の外周部表面において熱熔着部17対応箇所、即ちカバー13の薄肉部にレーザー光を照射する。
【0039】
このレーザー光は、図2(a)において、カバー13を透過し、突条21の頂面21aに達し、この頂面21aに吸収される。この吸収によりレーザー光照射スポット及びその周辺が加熱され、突条21の頂面21aが溶融する。突条21の頂面21aの溶融熱は、熔着溝25の熔着突部27にも伝達され、この熔着突部27も溶融する。
【0040】
図2(b)の場合は、熔着突部27A及びその近辺が加熱により溶融すると共に、熔着突部27A側から熔着溝25Aの奥面25aAにも熱が伝達され、溶融する。
【0041】
この溶融により、ターミナル・ブロック突合面19及びカバー突合面23間の隙間が詰められ、同時にレーザー・スポットの熱熔着部17対応箇所に沿った等速移動により溶融箇所が移動し、既に溶融した箇所は温度が下がり硬化する。
【0042】
このようにして、スイッチ・ハウジング3の全周でレーザー光による熱熔着部17が形成され、前記自動調芯が固定される。
[実施例1の効果]
本発明実施例1に係るインヒビター・スイッチ1は、ターミナル・ブロック11及びカバー13を結合し内部に固定接点15を有したスイッチ・ハウジング3と、自動変速機のマニュアル・シャフトを嵌合させるボス部29及び前記固定接点15に対応した可動接点35を備えて前記スイッチ・ハウジング3に対し回転可能なムービング・ブロック5と、前記ターミナル・ブロック11及びカバー13とボス部29との内外周面間に介設された弾性体のシール・リング7,9とを備え、前記ターミナル・ブロック11及びカバー13の一方であるカバー13をレーザー透過性材料で形成し他方であるターミナル・ブロック11をレーザー非透過性材料で形成し、前記シール・リング7,9の弾性力により前記ムービング・ブロック5に対して自動的に調芯されるターミナル・ブロック11及びカバー13に、外周部側でレーザー光による熱熔着部17を周回状に形成して前記結合を行ない前記調芯を固定した。
【0043】
このため、シェア・ジョイントの様な突条と溝の当接が不要となり、ターミナル・ブロック11及びカバー13とムービング・ブロック5のボス部29との内外周面間に弾性体のシール・リング7,9を介設して組み合わせると、シール・リング7,9の弾性力によりムービング・ブロック5のボス部29に対しターミナル・ブロック11及びカバー13を自動的に調芯させ(セルフ・センタリング)、外周部側のレーザー光による熱熔着部17によりターミナル・ブロック11及びカバー13を結合して前記調芯状態で固定させることができる。また、レーザー溶着ではターミナル・ブロック11及びカバー13には振動が加わらないため、振動による位置ズレの発生も無い。
【0044】
シール・リング7,9の圧縮代が全周で均一化され、より安定したシールが可能となる。
【0045】
熱熔着部17では、図4(a)のようにターミナル・ブロック11及びカバー13の樹脂内にガラス繊維44を含んだ場合でも加振されることが無いため、このガラス繊維44が元の状態を維持し熔着面に対して平行になり難い。従って、樹脂内にガラス繊維44を含んだ場合であっても超音波熔着のように熔着固化後に隙間45ができると言った不具合もなく、全周確実な熔着を行わせることができ、ターミナル・ブロック11及びカバー13間のシールを省略することもできる。
【0046】
しかも、熔着突部27,27aの存在により溶融部分に集中的に押圧力を作用させることができ、且つ熔着代も十分に確保し、より確実な熔着を行わせることができる。
【0047】
超音波熔着とは異なり、熔着溝25及び突条21間には隙間があり、ムービング・ブロック5回転方向でのターミナル・ブロック11及びカバー13の位置決めを熔着溝25及び突条21間によっては行わないから、嵌合作業が容易となり、組み付け作業を容易に行わせることができる。
【0048】
熔着溝25及び突条21の存在により、熱熔着部17においてカバー13の肉厚を他の箇所に比較して相対的に薄く形成することができる。
【0049】
このため、カバー13の材料として紺色の顔料等の添加剤を多くし、色を濃くしながら、熱熔着部17でのレーザー透過性を確保し、レーザー光での前記同様な熔着をより確実に行わせながら、カバー13の濃い色により内部のスパークが見えないようにし、またユーザーに対し内部の経時的な汚れを隠すことができる。
【0050】
一方、本発明の溶着方法では、ターミナル・ブロック11及びカバー13を結合し内部に固定接点15を有したスイッチ・ハウジング3と、自動変速機のマニュアル・シャフトを嵌合させるボス部29及び前記固定接点15に対応した可動接点35を備えて前記スイッチ・ハウジング3に対し回転可能なムービング・ブロック5と、前記ターミナル・ブロック11及びカバー13とボス部29との内外周面間に介設された弾性体のシール・リング7,9とを備え、前記カバー13をレーザー透過性材料で形成しターミナル・ブロック11をレーザー非透過性材料で形成したインヒビター・スイッチ1の熔着方法であって、前記ターミナル・ブロック11及びカバー13を前記ムービング・ブロック5回転方向で位置決めし、上記位置決めした状態でレーザー透過性材料で形成したカバー13の外周部側にレーザー光を照射し、前記ターミナル・ブロック11及びカバー13を周回状に熱熔着させた。
【0051】
このため、シェア・ジョイントのような超音波熔着が不要となり、ターミナル・ブロック11及びカバー13とムービング・ブロック5のボス部29との内外周面間に弾性体のシール・リング7,9を介設して組み合わせると、レーザー熔着前にシール・リング7,9の弾性力によりムービング・ブロック5のボス部29に対しターミナル・ブロック11及びカバー13を自動的に調芯させることができる。
【0052】
従って、ムービング・ブロック5回転方向でのターミナル・ブロック11及びカバー13の位置決めをしつつレーザー透過性材料で形成されたカバー13側からレーザー非透過性材料で形成されたターミナル・ブロック11へレーザー光を照射することで、回転方向の位置決め及びセルフ・センタリングを精度良く行った状態で熱熔着させることができる。
【0053】
前記回転方向の位置決めは、治具に設けた位置決めピン39或いは、ターミナル・ブロック11に設けた突部41及びカバー13に設けた凹部43の嵌合により行う。
【0054】
このため、回転方向の位置決めを、従来のようなシェア・ジョイントの様な突条と溝の当接を用いず、セルフ・センタリングとは別に確実且つ容易に行わせることができる。
【0055】
尚、以上の実施例の説明はインヒビター・スイッチで行ったが、他の回転位置検出スイッチにも同様に適用可能である。インヒビター・スイッチの場合は、自動車の自動変速機の内部、或いは外部に取り付けられ、内部に取り付けられた場合は自動変速機のオイル等に晒され、また外部に取り付けられた場合は泥水等に晒されると言う過酷な環境で使用されるため、スイッチ・ハウジングのような固定部とマニュアルバルブ・シャフトの動きを伝えるムービング・ブロックとの間にシール・リングが必要となり、このシール・リングの機能を十分発揮させると共に、その特徴を有効に利用する事ができる。
[その他]
ターミナル・ブロック11側をレーザー透過性材料とし、カバー13側をレーザー非透過性材料とすることも可能である。
【0056】
レーザー透過性材料で形成するカバー13或いはターミナル・ブロック11の外周縁部は、レーザー透過が十分であれば、特に他の箇所に対して薄く形成する必要は無い。
【0057】
熔着突部27は、複数形成することができ、省略することもできる。
【0058】
また、各実施例では固定接点と可動接点からなる検出部の例を示したが、磁石と磁気センサとの組合せ、発光素子と受光素子との組合せ等からなる非接触式の検出部を備えたスイッチにも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 インヒビター・スイッチ
3 スイッチ・ハウジング
5 ムービング・ブロック
7,9 シール・リング
11 ターミナル・ブロック
13 カバー
15 固定接点(検出部)
29 ボス部(操作部)
35 可動接点(検出部)
39 位置決めピン
41 突部
43 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターミナル・ブロック及びカバーを結合したスイッチ・ハウジングと、
操作部を備えて前記スイッチ・ハウジングに対し移動可能なムービング・ブロックと、
スイッチ・ハウジングとムービング・ブロックとの間で操作部の移動を検出する検出部と、
前記ターミナル・ブロック及びカバーと操作部との内外周面間に介設された弾性体のシール・リングとを備え、
前記ターミナル・ブロック及びカバーの一方をレーザー透過性材料で形成し他方をレーザー非透過性材料で形成し、
前記シール・リングの弾性力により前記ムービング・ブロックに対して自動的に調芯されるターミナル・ブロック及びカバーに、外周部側でレーザー光による熱熔着部を周回状に形成して前記結合を行ない前記調芯を固定した、
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
請求項1のスイッチにおいて、前記スイッチが自動変速機のシフト位置を検出するインヒビター・スイッチであり、前記回転体が自動変速機のマニュアル・シャフトである
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
ターミナル・ブロック及びカバーを結合し内部に固定接点を有したスイッチ・ハウジングと、
操作部を備えて前記スイッチ・ハウジングに対し移動可能なムービング・ブロックと、
スイッチ・ハウジングとムービング・ブロックとの間で操作部の移動を検出する検出部と、
前記ターミナル・ブロック及びカバーと操作部との内外周面間に介設された弾性体のシール・リングとを備え、
前記ターミナル・ブロック及びカバーの一方をレーザー透過性材料で形成し他方をレーザー非透過性材料で形成したスイッチの熔着方法であって、
前記シール・リングの弾性力により前記ムービング・ブロックに対し前記ターミナル・ブロック及びカバーを自動的に調芯させると共に該ターミナル・ブロック及びカバーを前記ムービング・ブロック回転方向で位置決めし、
上記位置決めした状態でレーザー透過性材料で形成した前記ターミナル・ブロックまたはカバーの外周部側にレーザー光を照射し、前記ターミナル・ブロック及びカバーを周回状に熱熔着させた、
ことを特徴とするスイッチの熔着方法。
【請求項4】
請求項3記載のスイッチの熔着方法であって、
前記回転方向の位置決めは、治具に設けた位置決めピンにより行う、
ことを特徴とするスイッチの熔着方法。
【請求項5】
請求項4記載のスイッチの熔着方法であって、
前記回転方向の位置決めは、ターミナル・ブロック及びカバーの一方に設けた突部及び他方に設けた凹部の嵌合により行う、
ことを特徴とするスイッチの熔着方法。
【請求項6】
請求項3乃至5記載のスイッチの熔着方法であって、
前記スイッチが自動変速機のシフト位置を検出するインヒビター・スイッチであり、前記回転体が自動変速機のマニュアル・シャフトであることを特徴とするスイッチの熔着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−203609(P2010−203609A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293461(P2009−293461)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(509354503)ナイルス アメリカ ウインテック インク (2)
【氏名又は名称原語表記】NILES AMERICA WINTECH, INC.
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】