説明

スイッチ基板及びこのスイッチ基板を用いたスイッチ

【課題】接点パターンの比抵抗を低くでき、接点パターンの境界線部分をファイン化できてきれいな矩形状のオンオフ波形が得られるスイッチ基板及びこのスイッチ基板を用いたスイッチを提供する。
【解決手段】フレキシブル基板10上に可動接点部材(摺動子)30が当接する接点パターン14,18を形成してなるスイッチ基板1である。スイッチ基板1はケース40内にインサート成形される。接点パターン14,18は、導電粉を樹脂バインダーに分散してなる樹脂含有導電ペーストによって形成される樹脂含有型回路パターンの上に、金属又は金属化合物を含有するペーストを140℃〜250℃の加熱温度で加熱することで前記ペースト中に存在する金属の微粒子若しくは前記金属化合物から析出する金属の微粒子を互いに融着させてなる融着型回路パターンを積層して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型,スライド型,押釦型等の各種スイッチに用いられるスイッチ基板及びこのスイッチ基板を用いたスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来スイッチ基板の中には、特許文献1に示すように、金属板からなるスイッチ接点板を、合成樹脂製のケース内に、スイッチ接点板の表面がケースの表面に露出するようにインサート成形してなる構造のものがある。このスイッチ基板においてはスイッチ接点板の表面とその周囲を埋めるケースの表面とを同一面とすることで、スイッチ接点板上を摺接する摺動子の動作を滑らかにするようにしている。
【0003】
しかしながら上記金属板製のスイッチ接点板を用いたスイッチ基板の場合、以下のような問題があった。即ちスイッチ接点板をプレス加工によって製造した場合、その外周辺の一方の面側にバリが生じ、他方の面側に円弧状のダレが生じる場合がある。そして図10(a)に示すように、スイッチ接点板310のダレ部分(湾曲部分)311の側がケース330表面に露出する場合は、スイッチ接点板310のダレ部分311の上面側に薄くケース330を構成する成形樹脂が入り込み、これによってオンオフの境界部分での波形に乱れが生じたり、ノイズが発生したりする恐れがあった。一方図10(b)に示すように、スイッチ接点板310のバリ部分313の側がケース330表面に露出する場合は、スイッチ接点板310のバリ部分313がケース330の表面から突出し、その上を摺動する摺動子がバウンジングを起こしてチャタリング等のノイズを生じたり、摺動子を傷付けたりする恐れがあった。
【0004】
上記問題を解決するには、基板(硬質基板又はフレキシブル基板)の表面に、直接導電ペーストをスクリーン印刷等によって塗布した後、これを加熱することで溶剤を揮発させてスイッチオンオフ用の接点パターンを形成すれば良い。このように導電ペーストを用いて接点パターンを形成すれば、上記金属板製のスイッチ接点板310のダレやバリの問題は解決できる。
【0005】
しかしながら上記導電ペーストを用いた接点パターンには、以下のような問題があった。
(1)従来の導電ペースト(銀ペースト)は、鱗片状の銀粒子(平均粒径1〜50μm程度)に、バインダーや有機溶剤等を添加することで構成されている。そして接点パターンの形成は、この導電ペーストを基板の表面に印刷し、一般的には160℃程度で加熱・乾燥することで行われる。しかしながらこのようにして得られた接点パターンの比抵抗(体積抵抗率)は、1×10-4〜4×10-5〔Ω・cm〕程度であり、銀そのものの比抵抗1.6×10-6〔Ω・cm〕に比べてかなり高い値となっていた。このように従来の導電ペーストからなる接点パターンの比抵抗が高い原因は、樹脂バインダーが銀粒子間に介在するため銀粒子同士の接触箇所が少ないためであり、更には銀粒子同士の電気的導通は物理的接触のみであるため各接触箇所において接触抵抗が発生してしまうためである。そして上述のように接点パターンの比抵抗値が銀自体の比抵抗値に比べて数十倍も大きいと、この接点パターン上を摺動子が摺動してオンオフ波形を出力する場合に、その抵抗により、図11に実線で示すように、オンオフ波形がオンオフの切り替わる部分において、垂直な立ち上がりに比べて少し斜めにだれてしまい、点線で示すような正確な形状の矩形波にならないという問題があった。
【0006】
(2)上記導電ペーストを構成する銀粒子は、前述のようにその粒径が1〜50μmの鱗片状で大きいため、少なくとも接点パターンの外周辺(オンオフの境界線部分)にはこの銀粒子の粒径分の凹凸が生じ、その凹凸寸法以下にはこの境界線部分をファイン化することができなかった。そして境界線部分に凹凸があると、摺動子が前記凹凸に当接した際にオンオフが断続して生じて細かなノイズになり、きれいな矩形波が得られなくなる恐れがあった。
【0007】
(3)また前述のようにこの導電ペーストは比抵抗値が高いので、抵抗値を低くしようとすると接点パターンの厚みを厚くしなければならない。しかしながら接点パターンの厚みを厚くすると、さらに前記境界線部分のファイン化が阻害されるばかりか、接点パターンの可撓性も阻害され、これをフレキシブル基板に印刷形成した場合は、このフレキシブル基板を屈曲した際にパターンの屈曲部分が劣化してしまう恐れがあった。
【特許文献1】特開2001−351459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、接点パターンの比抵抗を低くでき、また接点パターンの境界線部分をファイン化でき、これらのことからきれいな矩形状のオンオフ波形が得られ、また接点パターンの厚みの薄型化が図れて十分な可撓性も得られるスイッチ基板及びこのスイッチ基板を用いたスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、基板上に可動接点部材が当接する接点パターンを形成してなるスイッチ基板において、前記接点パターンは少なくとも、導電粉を樹脂バインダーに分散してなる樹脂含有導電ペーストによって形成される樹脂含有型回路パターンの上に、金属又は金属化合物を含有するペーストを140℃〜250℃の加熱温度で加熱することで前記ペースト中に存在する金属の微粒子若しくは前記金属化合物から析出する金属の微粒子を互いに融着させてなる融着型回路パターンを積層して形成されていることを特徴とするスイッチ基板にある。
【0010】
本願請求項2に記載の発明は、前記樹脂含有型回路パターンを構成する樹脂バインダーはフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ基板にある。
【0011】
本願請求項3に記載の発明は、前記樹脂含有型回路パターンを構成する導電粉は銀粉であることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ基板にある。
【0012】
本願請求項4に記載の発明は、前記融着型回路パターンを構成する金属は銀であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のスイッチ基板にある。
【0013】
本願請求項5に記載の発明は、前記基板は合成樹脂フイルムからなるフレキシブル基板であり、さらに前記スイッチ基板は前記接点パターンを露出するように成形樹脂製のケースに取り付けられ、前記ケースに収納される可動接点部材によって前記接点パターンがオンオフされることを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載のスイッチ基板を用いたスイッチにある。
【発明の効果】
【0014】
本願請求項1に記載の発明によれば、接点パターンを、樹脂含有型回路パターンの上に融着型回路パターンを積層して形成したので、融着型回路パターンによって接点パターンは低い比抵抗を有するものとなる。従ってこの接点パターン上を可動接点部材が摺動することでオンオフ波形が出力される場合は、オンオフ波形のオンオフの切り替わり部分が垂直な立ち上がりとなり、正確な矩形波が得られる。また金属の微粒子を互いに融着させてなる融着型回路パターンを用いているので、接点パターンの外周辺の境界線部分の凹凸が小さく、極めてファインな境界線に形成することができ、この点からも正確な矩形波が得られる。また前述のように接点パターンの導電性が高いので、その膜厚を薄くすることができ、従ってこの点からも境界線部分のファイン化が図れるばかりか、接点パターンの可撓性を増すことができ、その屈曲性が増す。また融着型回路パターンは低い加熱温度で金属微粒子が融着するので、耐熱性の低い基板を用いたスイッチ基板にも適用できる。
【0015】
本願請求項2,3に記載の発明によれば、接点パターンの寿命を向上することができる。
【0016】
本願請求項4に記載の発明によれば、融着型回路パターンを構成する金属として銀を用いたので、接点パターンの比抵抗を十分低い値にすることができる。
【0017】
本願請求項5に記載の発明によれば、上記効果を有するスイッチ基板を用いたスイッチを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は本発明の第一実施形態にかかる回転型スイッチ用のケース付きスイッチ基板100を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は側断面図(図1(a)のD−D断面図)である。同図に示すようにケース付きスイッチ基板100は、成形樹脂製のケース40と、ケース40の収納部41の底にロータリーエンコーダ用の接点パターン(接点パターン14及び接点パターン18等)を露出した状態のスイッチ基板1と、スイッチ基板1の各端子接続パターン15,19,23に接続された状態の端子板50とを具備し、これらスイッチ基板1と端子板50とをケース40内にインサート成形して構成されている。
【0019】
図2は本実施形態にかかるスイッチ基板1を示す平面図である。スイッチ基板1は、可撓性のある合成樹脂フイルム(例えばポリフェニレンスルフイド(PPS)フイルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フイルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルム、ポリエーテルイミドフイルム等)製の基板(以下この実施形態では「フレキシブル基板」という)10を用意し、フレキシブル基板10の中央に中心孔25を、その両側に取付孔26,27を設け、さらにその表面の中心孔25の周囲のリング状の下記する摺動子30が当接するコモン接点パターン21と、コモン接点パターン21の周囲を囲む一対のオンオフ用の下記する摺動子30が当接する接点パターン(コードパターン)14,18とを形成することで構成されている。なお接点パターン14−14間,18−18間及び14−18間にはパターンが形成されていないフイルム露出部Aが設けられている。コモン接点パターン21の外周からは端子接続パターン23が引き出されており、また接点パターン14,18の一端からはそれぞれ端子接続パターン15,19が引き出されている。各端子接続パターン15,19,23は並列に設置されている。
【0020】
ここで図3は、図2のa−a断面図である。但しフレキシブル基板10及び接点パターン18とコモン接点パターン21の厚みは説明の都合上、実際よりもかなり厚く示している。なお他の各種パターン14,15,19,23の構造は、これら接点パターン18及びコモン接点パターン21の構造と同じであるので、他の各種パターン14,15,19,23についてはその断面構造を図示しない。即ち前記各種パターン14,15,18,19,21,23は少なくとも、導電粉を樹脂バインダーに分散してなる樹脂含有導電ペーストによって形成される樹脂含有型回路パターンp1の上に、金属又は金属化合物を含有するペーストを140℃〜250℃の加熱温度で加熱することで前記ペースト中に存在する金属の微粒子若しくは前記金属化合物から析出する金属の微粒子を互いに融着させてなる融着型回路パターンp2を積層して形成されている。
【0021】
即ち各種パターン14,15,18,19,21,23を形成するには、まず基板10の表面に、これら各種パターン14,15,18,19,21,23の形状に、導電粉を樹脂バインダーに分散してなる樹脂含有導電ペーストを塗布することによって樹脂含有型導電性被膜からなる樹脂含有型回路パターンp1を形成する。樹脂含有型回路パターンp1の具体的形成方法の一例を示すと、鱗片状の導電粉(この実施形態では平均粒径1〜50μm程度の銀粒子)を、樹脂バインダー及び有機溶剤に分散して構成される一般の樹脂含有導電ペーストである銀ペーストを用意する。ここで樹脂バインダーとしては例えば熱硬化性のフェノール樹脂や架橋型ウレタン樹脂等を用いる。そして基板10上にこの樹脂含有導電ペーストを、前記各種パターン14,15,18,19,21,23の形状にスクリーン印刷によって塗布する。但し塗布方法としては、スクリーン印刷の他に、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、スプレー印刷等がある。次に160℃程度(加熱時間5分間程度)で加熱・硬化させることで樹脂含有型回路パターンp1を形成する。この樹脂含有型回路パターンp1は、その比抵抗が、1×10-4〜4×10-5〔Ω・cm〕程度で比較的大きな抵抗値となる。またこの樹脂含有型回路パターンp1の厚みは6μm程度とする。
【0022】
次に前記各種パターン14,15,18,19,21,23の形状に形成した樹脂含有型回路パターンp1の表面に、各種パターン14,15,18,19,21,23の形状に、融着型回路パターンp2を積層して形成する。融着型回路パターンp2の具体的形成方法の一例を示すと、まず銀化合物を含有したペーストを用意する。この種のペーストには種々の構成のものがあるが、ここでは、酸化銀微粒子(銀化合物の微粒子)と有機銀化合物と有機溶剤からなるペーストを用いている。酸化銀微粒子は例えば160℃程度の熱で加熱されると酸素を離して銀に戻る。すなわち酸化銀は空気中で熱せられることで自己還元し(2Ag2O→4Ag+O2)、酸素が分離して金属銀微粒子が形成されると同時にこれらは融着する。一方所定の化学構造の有機銀化合物に熱を加えることで熱分解すれば、その有機分は揮散し、金属銀微粒子が析出する。このとき析出する銀微粒子は活性である(R−Ag→Ag+R1↑+R2↑+…)。また有機溶剤は加熱によって揮発する。そこでこの実施形態に用いるペーストとして、140〜200℃以下で分解する特定の分子構造の有機銀化合物を用い、この有機銀化合物と前記酸化銀微粒子とを併用して配合したものを用いた。そしてこのペーストを基板10に形成した前記樹脂含有型回路パターンp1上にスクリーン印刷によって塗布する。但し、塗布方法としては、スクリーン印刷の他に、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、スプレー印刷等がある。そして140〜200℃程度(好ましくは180℃以上)で加熱(加熱時間は10秒〜120分程度)すれば、酸化銀微粒子から酸素が分離して金属銀微粒子が発生し、次に隣接している前記金属銀微粒子同士の隙間に、有機銀化合物から分解して析出する前記金属銀微粒子よりさらに小さな粒子形状を有する活性な析出銀微粒子が入り込んで金属銀微粒子と析出銀微粒子とが融着されることにより、最終的に緻密な導電性の高い連続した金属微粒子融着型導電性被膜からなる融着型回路パターンp2が形成できる。ここで140〜200℃で分解する有機銀化合物としては、例えば三級脂肪酸銀塩が好適である。なおこのようなペーストとしては、例えば特開2003−203522号公報や特開2003−309375号公報等に記載のペーストがある。
【0023】
前記酸化銀微粒子の平均粒径は500nm以下が好ましいが、還元剤等を添加することでこれよりも大きな粒径とすることも可能である。三級脂肪酸銀塩とは総炭素数が5〜30の三級脂肪酸の銀塩であり、滑剤的な役割を果たし、酸化銀微粒子と三級脂肪酸銀塩とを混練してペースト状にする際に酸化銀微粒子を粉砕して微粒子化を促進するとともに、酸化銀微粒子の周囲に存在して酸化銀微粒子の再凝集を抑制し、分散性を向上させるものであり、同時に加熱時には平均粒径数10nmの金属銀微粒子を析出させ、酸化銀微粒子から還元して生成する銀微粒子に融着させるものである。このような三級脂肪酸銀塩の具体例としては、ピバリン酸銀、ネオヘプタン酸銀、ネオノナン酸銀、ネオデカン酸銀等がある。
【0024】
この実施形態では粒子状銀化合物として酸化銀(酸化第1銀、酸化第2銀)の微粒子を用いたが、その代りに炭酸銀、酢酸銀等、又はこれらの混合物の微粒子を用いても良い。またこの粒子状銀化合物に還元剤を添加すれば、平均粒径が500nm以上の比較的大きな微粒子であっても還元がスムーズに行えるようになり、その利用が容易に行えるようになる。また有機溶剤としては、イソホロン、テルピネオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテートなどがある。
【0025】
以上のようにして形成される融着型回路パターンp2は、前述のように、金属微粒子融着型導電性被膜によって形成されるが、この金属微粒子融着型導電性被膜は、金属銀微粒子が互いに融着して連続している金属銀の塗膜なので、その比抵抗は3〜8×10-6〔Ω・cm〕程度と小さく、金属銀自体の比抵抗と同じオーダーになる。なお前記加熱時間を長くすればするほど、また加熱温度を高くすればするほど比抵抗は小さくなり、また密着性もより良好になる。従来の鱗片状の銀粒子(平均粒径1〜50μm程度)を樹脂バインダーに分散してなる樹脂含有導電ペーストを用いて形成した樹脂含有型導電性被膜の場合は、前述のようにその比抵抗が、1×10-4〜4×10-5〔Ω・cm〕程度なのに対して、非常に小さい比抵抗となる。なおこの融着型回路パターンp2の厚みは3μm程度となる。
【0026】
以上のようにして、樹脂含有型回路パターンp1と融着型回路パターンp2とを積層してなる各種パターン14,15,18,19,21,23が形成される。そしてこの各種パターン14,15,18,19,21,23は金属銀に近い比抵抗を有する。またこの実施形態は、樹脂含有型回路パターンp1と融着型回路パターンp2の全てをスクリーン印刷を用いて形成したので、何れのパターンや被膜も同一の工程によって製造できて製造工程の簡素化が図れ、また同一の製造装置を使用でき、これらのことからスイッチ基板1の製造の容易化、製造コストの低減化が図れる。
【0027】
またこの実施形態のようにフレキシブル基板10の上面に樹脂含有型回路パターンp1を形成し、その上に融着型回路パターンp2を積層して形成することによって各種パターン14,15,18,19,21,23を構成したのは以下の理由による。即ちフレキシブル基板10上に融着型回路パターンp2を直接塗布して形成した場合の両者間の密着性は、両者の相性によっては、フレキシブル基板10上に樹脂含有型回路パターンp1を直接塗布して形成した場合の両者間の密着性に比べて、あまり良くなく、また薄いので、その上を摺動子が摺動することで容易に剥がれる場合がある。そこでフレキシブル基板10と融着型回路パターンp2の間に樹脂含有型回路パターンp1を介在したのである。樹脂含有型回路パターンp1の表面は粗くて微細な凹凸が多数あるので、融着型回路パターンp2との密着性が良い。また融着型回路パターンp2は樹脂含有型回路パターンp1に比べて薄くて硬いので、フレキシブル基板10を屈曲させたときにクラックが入り易いが、クラックの入り難い柔軟性のある樹脂含有型回路パターンp1を積層することで融着型回路パターンp2を補強し、これによってフレキシブル基板10の屈曲に対して十分対応できるようにしたのである。なお樹脂含有型回路パターンp1や融着型回路パターンp2の印刷回数を複数回(ここで言う一回の印刷回数とは、ペーストを一回塗布して硬化させるまでの一工程をいう)とすることにより、これらパターンの厚みを厚くし、細いパターン幅で更に低抵抗のパターンを得ることができる。
【0028】
ここで図4は以上のように樹脂含有型回路パターンと融着型回路パターンとを積層して形成されるパターンにおいて、その樹脂含有型回路パターン中の樹脂バインダーの種類のみを各種材質に変えて測定した寿命試験の結果を示す図である。同図において試験に用いた試料の樹脂含有型回路パターン中の導電粉としてはこの第一実施形態の具体例で用いた銀粒子を用い、また融着型回路パターンを形成するペーストもこの第一実施形態の具体例で用いた酸化銀微粒子と有機銀化合物と有機溶剤からなるペーストを用いている。そしてフレキシブル基板10(この試験ではPPSフイルム)上に、前記樹脂バインダーの種類のみを各種材質に変更した樹脂含有導電ペーストによって形成される樹脂含有型回路パターンを形成してその上に同じ材料からなる融着型回路パターンを積層形成することで複数の接点パターン(図2の一つの接点パターン14に相当するパターン)を形成し、これら複数の接点パターンの表面に摺動子を摺動させてその摺接回数に応じて各接点パターンがどの程度まで劣化しないで使用できるかを試験した。劣化したか否かの判定は、接点パターン上を摺動する摺動子によるオンオフ波形を検出し、その立上りと立下り部分の波形が、従来の金属板からなるスイッチ接点板を合成樹脂製のケース内にスイッチ接点板の表面がケースの表面に露出するようにインサート成形した場合のスイッチ接点板のオンオフ波形と同等以上であるか否かを測定し、その結果、同等以上の場合を○、同等未満の場合を×とした。図4に示すように、何れの樹脂も樹脂バインダーとして用いることができる。即ち樹脂含有型回路パターンの上に融着型回路パターンを積層すると融着型回路パターンが剥がれ難くなり、接点パターンとして利用できるようになる。そして特に寿命性能の優れている樹脂は、フェノール樹脂であることが分かった。
【0029】
そして以上のように樹脂含有型回路パターンと融着型回路パターンとを積層して形成されるパターンは銀自体と同等の比抵抗を有するので、その厚みを薄くすることができる。また金属の微粒子を互いに融着させてなる融着型回路パターンは、その外周辺の境界線に生じる銀微粒子による凹凸も微細になるので(言い換えればスクリーン印刷時のスクリーンのメッシュを銀微粒子の粒径に合わせて微細にできるので)、極めてファインな境界線が形成される。また140℃〜250℃程度の低い温度による加熱で済むので、熱に弱い材質(例えばPET)からなるフレキシブル基板10を使用することができる。
【0030】
以上のようにして形成されたスイッチ基板1に図1に示すケース40を成形するには、まず前記図2に示すスイッチ基板1の各端子接続パターン15,19,23上にそれぞれ端子板50の一端を載置し、その状態のままこのスイッチ基板1を図5に示すように第一金型200と第二金型250の間に挟持する。即ち図5はスイッチ基板1を第一,第二金型200,250で挟持したときの図1(b)に相当する部分の断面図である。但し図5では各種パターンの記載を省略している。
【0031】
第一金型200にはスイッチ基板1の接点パターン14,18等を形成した面を当接する当接面201が設けられ、この当接面201の周囲にはこれを囲む凹部203(この凹部203はケース40の一部を形成する)が設けられている。
【0032】
第二金型250にはケース40の一部を形成する凹部253が設けられている。また第二金型250には、スイッチ基板1の中心孔25の部分に挿入されてその先端面が第一金型200に当接する突出部251と、前記スイッチ基板1と端子板50の端部の重なっている部分を第一金型200に押し付ける押圧部255とが設けられている。
【0033】
そして第二金型250側に設けた樹脂注入口Pから溶融した高温高圧の溶融成形樹脂を圧入すれば、凹部253と凹部203の部分に溶融成形樹脂が満たされ、その後成形樹脂が冷却・固化した後に第一,第二金型200,250を取り外せば、図1に示すような、各接点パターン14,18及びコモン接点パターン21を露出する収納部41を設けた状態でスイッチ基板1の下面と外周側面を覆うように成形樹脂製のケース40を取り付けた構造のケース付きスイッチ基板100が完成する。このとき各端子接続パターン15,19,23に接続した端子板50はその上下を前記ケース40を構成する成形樹脂によって挟持されることで接続・固定されている。
【0034】
次に図6はこのケース付きスイッチ基板100に使用される可動接点部材(以下この実施形態では「摺動子」という)30を示す平面図、図7はスイッチ基板1に対する摺動子30の配置位置を示す図である。なお実際は摺動子30はケース40の収納部41内に回転自在に収納される摺動型物(図示せず)に取り付けられている。摺動子30は両図に示すように3組の摺動接点31,33を等間隔(120°間隔)に設け、3組の内側の摺動接点33が常にコモン接点パターン21に摺接し、外側の摺動接点31が接点パターン14,18とフイルム露出部Aにオンオフすることで位相のずれたコード出力が出力できるようにしており、これによってスイッチを構成している。
【0035】
即ち接点パターン14と接点パターン18とは120°の間隔よりも少しずれる位置に設けられており、従って摺動子30の摺動接点31が何れかの接点パターン14にオンするタイミングと、これに対応する接点パターン18に摺動接点31がオンするタイミングの位相は少しずれ、これによって接点パターン14と接点パターン18から出力されるオンオフ信号の位相が少しずれるようにしている。これによって例えば摺動子30が右回りしているか、左回りしているかを検出できる。即ちこのスイッチは、基板としてフレキシブル基板10を用いてスイッチ基板1を構成し、このスイッチ基板1は接点パターン14,18,21を露出するように形成樹脂製のケース40に取り付けられ、ケース40に収納される摺動子30によって接点パターン14,18,21がオンオフするように構成されている。
【0036】
そして前述のように接点パターン14,18はその比抵抗が小さくて導電性が高く、また接点パターン14,18の外周の端辺12,16(図7参照、摺動接点31が通過する端辺)は極めてファインなので、接点パターン14,18上を摺動子30が摺動することでオンオフ波形が出力される際に、オンオフ波形のオンオフの切り替わり部分が垂直な立ち上がりとなり、同時にノイズのない、正確な矩形波が得られる。
【0037】
〔第一実施形態の変形例〕
上記第一実施形態では、各種パターン14,15,18,19,21,23を、樹脂含有型回路パターン上に融着型回路パターンを積層して形成したが、さらにこれら各種パターン14,15,18,19,21,23(特に接点パターン14,18,21)の上にカーボンペースト又は銀カーボンペーストをオーバーコートして構成しても良い。このように構成すれば、比抵抗が小さくて接点パターン14,18上を摺動子30が摺動することで出力されるオンオフ波形のオンオフの切り替わり部分が垂直な立ち上がりとなって正確な矩形波が得られるばかりか、さらに耐環境性及び耐摺動性に強くなる。即ち融着型回路パターンは金属銀であるため、これをパターンの表面に露出していると、必ずしもその耐環境性(耐酸化性,耐硫化性等)に強いとは言えず、且つその上を通過する摺動子30の摺動接点31,33の摺接に対してもその耐久性が強いとは言えない。そこでこれら耐環境性及び耐摺動性に強いカーボンペースト又は銀カーボンペーストをその上にオーバーコートすることで、前記融着型回路パターンによってその抵抗値を格段に低下した上で、さらにその耐環境性及び耐摺動性に強い各種パターン14,15,18,19,21,23を構成することができる。なおカーボンペースト又は銀カーボンペーストの厚みは、5〜6μm程度が好ましく、またカーボンペーストや銀カーボンペーストはスクリーン印刷等の印刷手段によって形成することが好ましい。
【0038】
ここでカーボンペースト及び銀カーボンペーストの構成材料について説明すると、カーボンペーストとは粉体状のカーボンと樹脂バインダーとを混合したものであり、また銀カーボンペーストとは、粉体状のカーボン及び銀と樹脂バインダーとを混合したものである。さらに粉体状のカーボンとは、球状等の立体形状のカーボンブラック、又は層状のグラファイトであってその粒径が20nm〜10μm程度の粉体をいい、何れも、各々の粒子が樹脂バインダー中で物理的に接触することで導電性を有するものである。また粉体状の銀とは、平均粒径1〜50μm程度の鱗片状の銀の粉体であり、各々の粒子が樹脂バインダー中で物理的に接触することで導電性を有するものである。
【0039】
〔第二実施形態〕
図8(a)は本発明の第二実施形態にかかるスライド型スイッチに用いるケース210と、ケース210内にインサート成形されるスイッチ基板230と、ケース210の収納部211内にスライド自在に収納される摺動部材(以下「摺動型物」という)260とを示す斜視図である。また図8(b)はケース210内に取り付ける前の状態のスイッチ基板230の斜視図である。
【0040】
同図に示すようにスイッチ基板230は、可撓性を有する略矩形状の合成樹脂(例えばPETやPPSやPIやPENやポリエーテルイミド)製フイルムからなる基板(以下この実施形態では「フレキシブル基板」という)232の表面の長手方向に向かって、一本の直線状の下記する摺動子が当接するコモン接点パターン231と、二本のオンオフ用の下記する摺動子が当接する接点パターン233,235とを並列に形成し、一方フレキシブル基板232の上辺からは三本の舌片状に突出する端子形成部237,239,241を突出し、これら各端子形成部237,239,241上に第一端子パターン243,第二端子パターン245,第二端子パターン247を形成することによりこれらを外部露出部244,246,248とし、さらに前記接点パターン231,233,235と端子パターン243,245,247とはそれぞれ連結パターン249,251,253によって連結して構成されている。なお接点パターン233−235間にはパターンが形成されていないフイルム露出部Bが設けられている。
【0041】
ここで前記接点パターン231,233,235と端子パターン243,245,247と連結パターン249,251,253とは、前記第一実施形態の接点パターン14,18等と同様に、少なくとも樹脂含有型回路パターンの上に融着型回路パターンを積層して構成されている(この実施形態においては第一実施形態の図3に相当する図面を省略しているが、樹脂含有型回路パターンp1と融着型回路パターンp2は同様の断面構成である)。従ってこれらパターンの比抵抗(体積抵抗率)も、3〜8×10-6〔Ω・cm〕程度であり、銀自体の比抵抗1.6×10-6〔Ω・cm〕に近い非常に小さい値となっており、またこれらパターンの膜厚も薄く形成することができる。これらパターンの材質や形成方法は前記第一実施形態と同様なので、その説明は省略する。
【0042】
そして図8(a)において、摺動型物260のケース210側の面に図示しない可動接点部材(以下この実施形態では「摺動子」という)を取り付け、この摺動型物260をケース210の収納部211内に収納し、その上を図示しないカバーで塞げば、このスライド型のスイッチが完成する。そして摺動型物260に設けたつまみ263をスライド移動すれば、図示しない摺動子の摺動接点が接点パターン233,235及びフイルム露出部B上とコモン接点パターン231上とを移動し、端子パターン243,245,247間のオンオフ出力が変化する。そのとき接点パターン233,235の比抵抗は小さく、また接点パターン233,235の外周端辺(特に摺動接点が通過する端辺)のオンオフ境界線部分は第一実施形態と同様に極めてファインなので、その上を摺動接点が通過する際、即ちオンオフが切り替わる際は、オンオフの切り替わり部分が垂直な立ち上がりとなり、同時にノイズのない、きれいな矩形波が得られる。即ちこのスイッチは、基板としてフレキシブル基板232を用いてスイッチ基板230を構成し、スイッチ基板230は接点パターン231,233,235を露出するように成形樹脂製のケース210に取り付けられ、ケース210に収納される摺動子によって接点パターン231,233,235がオンオフするように構成されている。
【0043】
またこの実施形態の場合も、各種パターンを構成する導電性被膜の厚みを薄く形成できるので、導電性被膜に十分な可撓性を持たせることができ、従って端子パターン243,245,247の部分をケース210にインサート成形する際に屈曲しても、その屈曲部分が劣化することはない。
【0044】
〔第二実施形態の変形例〕
上記第二実施形態では、各種パターン231,233,235,243,245,247,249,251,253を、樹脂含有型回路パターン上に融着型回路パターンを積層して形成したが、さらにこれら各種パターン231,233,235,243,245,247,249,251,253(特に接点パターン231,233,235)の上にカーボンペースト又は銀カーボンペーストをオーバーコートして構成しても良い。このように構成すれば、比抵抗が小さくて接点パターン233,235上を摺動子が摺動することで出力されるオンオフ波形のオンオフの切り替わり部分が垂直な立ち上がりとなって正確な矩形波が得られるばかりか、さらに耐環境性及び耐摺動性に強くなる。即ち融着型回路パターンは金属銀であるため、これをパターンの表面に露出していると、必ずしもその耐環境性(耐酸化性,耐硫化性等)に強いとは言えず、且つその上を通過する摺動子の摺接に対してもその耐久性が強いとは言えないので、これら耐環境性及び耐摺動性に強いカーボンペースト又は銀カーボンペーストをその上にオーバーコートすることで、前記融着型回路パターンによってその抵抗値を格段に低下した上で、さらにその耐環境性及び耐摺動性に強い各種パターン231,233,235,243,245,247,249,251,253を構成することができる。なおカーボンペースト又は銀カーボンペーストの厚みは、5〜6μm程度が好ましく、スクリーン印刷等の印刷手段によって形成するのが好ましい。なお前記カーボンペースト及び銀カーボンペーストの構成材料は前記第一実施形態の変形例の場合と同様である。
【0045】
〔第三実施形態〕
次に図9は本発明の第三実施形態にかかる押釦型のスイッチ501の概略断面図である。同図に示すようにこの押釦型のスイッチ501は、成形樹脂製のケース510と、ケース510内にインサート成形され合成樹脂フイルム製の基板(以下この実施形態では「フレキシブル基板」という)532の表面に小円形状の下記する反転板520が当接する第一接点パターン531及び第一接点パターン531の周囲を囲む下記する反転板520が当接する第二接点パターン533を形成したスイッチ基板530と、該スイッチ基板530の第二接点パターン533上に載置される弾性金属板製の可動接点部材(以下この実施形態では「反転板」という)520と、可撓性を有する板部材561でケース510の上面に連結された押圧部材(以下この実施形態では「キートップ」という)560とを具備して構成されている。
【0046】
ここで前記接点パターン531,533等のスイッチ基板530上に形成されるパターンは、前記第一実施形態の接点パターン14,18等と同様に、少なくとも樹脂含有型回路パターンの上に融着型回路パターンを積層して構成されている(この実施形態においては第一実施形態の図3に相当する図面を省略しているが、樹脂含有型回路パターンp1と融着型回路パターンp2は同様の断面構成である)。従ってこれらパターンの比抵抗(体積抵抗率)も、3〜8×10-6〔Ω・cm〕程度であり、銀自体の比抵抗1.6×10-6〔Ω・cm〕に近い非常に小さい値となっており、またこれらパターンの膜厚も薄く形成することができる。これらパターンの材質や形成方法は前記第一実施形態と同様なので、その説明は省略する。
【0047】
そして、キートップ560を押圧すれば、板部材561が撓んでキートップ560が下降し、それによりキートップ560の押圧部563が反転板520の中央部を押圧して反転板520を反転させ、クリック感覚が生じると同時に、該中央部が接点パターン531と接触することで接点パターン531,533間が導通してスイッチはオンする。キートップ560への押圧を解除すれば反転板520及び板部材561は元の形状に自動復帰し、スイッチはオフとなる。即ちこのスイッチ501は、基板としてフレキシブル基板532を用いてスイッチ基板530を構成し、スイッチ基板530は接点パターン531,533を露出するように成形樹脂製のケース510に取り付けられ、ケース510に収納される反転板520によって接点パターン531,533がオンオフするように構成されている。
【0048】
この実施形態の場合、接点パターン531,533上を可動接点部材520が摺動するわけではないので、その外周端辺のファイン性は問題とならないが、導電性が良く、屈曲による不都合も生じない等の他の効果は他の実施形態と同様に生じる。
【0049】
〔第三実施形態の変形例〕
上記第三実施形態では、接点パターン531,533を、樹脂含有型回路パターン上に融着型回路パターンを積層して形成したが、さらにこれら接点パターン531,533の上にカーボンペースト又は銀カーボンペーストをオーバーコートして構成しても良い。このように構成すれば、比抵抗を小さくできるばかりか、さらに耐環境性及び耐押圧性に強くなる。即ち融着型回路パターンは金属銀であるため、これをパターンの表面に露出していると、必ずしもその耐環境性(耐酸化性,耐硫化性等)に強いとは言えず、且つその上に当接する反転板520の押圧に対してもその耐久性が強いとは言えないので、これら耐環境性及び耐押圧性に強いカーボンペースト又は銀カーボンペーストをその上にオーバーコートすることで、前記融着型回路パターンによってその抵抗値を格段に低下した上で、さらにその耐環境性及び耐押圧性に強い接点パターン531,533を構成することができる。なおカーボンペースト又は銀カーボンペーストの厚みは、5〜6μm程度が好ましく、スクリーン印刷等の印刷手段によって形成するのが好ましい。なおカーボンペースト及び銀カーボンペーストの構成材料は前記第一実施形態の変形例の場合と同様である。
【0050】
以上本明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では融着型回路パターンを構成する金属微粒子融着型導電性被膜を、粒子状の銀化合物(酸化銀微粒子等)と有機銀化合物と有機溶剤からなるペーストを絶縁基板に塗布して加熱することで構成しているが、本発明に用いることができるペーストはこの例に限定されず、種々の変更が可能である。例えば溶融させる金属は銀に限られず、銅やその他の金属(例えば金、亜鉛、カドミウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、白金、鉄、コバルト、ニッケル、インジウム、錫、アンチモン、鉛、ビスマス)及びこれらの混合物を用いても良い。
【0051】
また前記ペーストは、例えば酸化銀微粒子を混合していない、有機銀化合物又はその他の有機金属化合物と有機溶剤又は水性溶液からなるペーストでもよい。つまり140℃〜250℃で加熱することにより、これらの有機金属化合物から金属微粒子が析出して互いに融着するものであれば良い。また金属銀又はその他の金属の微粒子を分散したものでも良い。即ち例えばペーストとして、特開2002−299833号公報で記載されているように、平均粒径が1〜100nmである金属微粒子が、その表面を、当該金属微粒子に含まれる金属元素と配位可能な有機化合物で被覆されて、液体中に安定に分散した250℃以下の温度で燒結するペースト組成物(ペースト)を用い、このペーストを絶縁基板上に塗布して140℃〜250℃で加熱して前記金属微粒子を互いに融着することで金属微粒子融着型導電性被膜を形成しても良い。即ちこの例では、酸化金属微粒子を還元するのではなく、金属微粒子自体を分散したペーストを用いている。平均粒径が1〜100nmの銀及び/又はその他の金属の微細な金属微粒子(ナノ粒子)は、上記実施形態と同様に、低い加熱温度により容易に溶融し、互いに融着して連続した金属の薄い金属微粒子融着型導電性被膜を形成する。加熱時間は10秒〜120分程度とする。このようにして形成された金属微粒子融着型導電性被膜も、その比抵抗は7×10-6〔Ω・cm〕程度(金属銀微粒子の場合)と、金属銀と同じレベルで小さい。またこの例以外にも各種のペーストが提案されており、本発明はその何れのペーストを用いても良い。即ち要は、金属又は金属化合物を含有するペーストを基板に塗布して140℃〜250℃の加熱温度で加熱することで前記ペースト中に存在する金属の微粒子若しくは前記金属化合物から析出する金属の微粒子を互いに融着させてなる融着型回路パターンであれば、どのような組成からなる融着型回路パターンであってもよい。
【0052】
上記各実施形態では、基板として可撓性を有する絶縁性の合成樹脂フイルム製のフレキシブル基板を用い、このフレキシブル基板の表面に接点パターン等のパターンを設けてスイッチ基板を構成したが、本発明はフレキシブル基板を用いたスイッチ基板に限らず、セラミック,ガラス等の絶縁硬質基板の表面に接点パターン等のパターンを設けてなるスイッチ基板であっても良く、また導電性の金属基板の表面又は絶縁基板の表面に薄い層からなる絶縁層を印刷手法又はスパッタリング手法等によって被覆して構成される絶縁基板の該絶縁層表面に接点パターン等のパターンを設けてなるスイッチ基板であっても良い。
【0053】
また本発明を他の各種形状・構造のスイッチ基板やスイッチに適用しても良いことは言うまでもない。
【0054】
また基板上への接点パターンの形成は、基板上に直接接点パターンを形成する方法の他に、転写方式を用いても良い。すなわち基板とは別の転写部材に樹脂含有型回路パターン及び/又は融着型回路パターンを形成し、このパターンを基板上に転写することで、本発明に係るスイッチ基板を構成しても良い。例えば表面を転写面とした転写部材と、基板とを用意し、基板表面に樹脂含有型回路パターンを形成し、転写部材の転写面に融着型回路パターンを形成し、基板と転写部材を積層して前記樹脂含有型回路パターンと融着型回路パターンとを、直接又は他の導電接着被膜を介して積層し、前記積層した基板と転写部材から転写部材を離すことで融着型回路パターンを基板側に転写し、これによって基板上に樹脂含有型回路パターンと融着型回路パターンとを積層する転写方式等である。もちろん転写方式としてさらに他の各種方法を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるケース付きスイッチ基板100を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は側断面図(図1(a)のD−D断面図)である。
【図2】スイッチ基板1の平面図である。
【図3】図2のa−a断面図である。
【図4】樹脂含有型回路パターン中の樹脂バインダーの種類のみを変えて測定したパターンの寿命試験の結果を示す図である。
【図5】スイッチ基板1へのケース40の成形方法を示す図である。
【図6】摺動子30を示す平面図である。
【図7】スイッチ基板1に対する摺動子30の配置位置を示す図である。
【図8】図8(a)はスライド型スイッチに用いるケース210とスイッチ基板230と摺動部材260とを示す斜視図、図8(b)はスイッチ基板230の斜視図である。
【図9】押釦型のスイッチ501の概略断面図である。
【図10】従来のスイッチ接点板を用いたスイッチ基板の問題点説明図である。
【図11】従来のスイッチ接点板を用いた場合のオンオフ波形を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 スイッチ基板
10 フレキシブル基板(基板)
14 接点パターン
18 接点パターン
21 コモン接点パターン
30 摺動子(可動接点部材)
40 ケース
41 収納部
100 ケース付きスイッチ基板
210 ケース
230 スイッチ基板
231 コモン接点パターン
232 基板(フレキシブル基板)
233,235 接点パターン
260 摺動型物(摺動部材)
501 押釦型のスイッチ
510 ケース
520 反転板(可動接点部材)
530 スイッチ基板
531 第一接点パターン
532 基板(フレキシブル基板)
533 第二接点パターン
560 キートップ(押圧部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に可動接点部材が当接する接点パターンを形成してなるスイッチ基板において、
前記接点パターンは少なくとも、導電粉を樹脂バインダーに分散してなる樹脂含有導電ペーストによって形成される樹脂含有型回路パターンの上に、金属又は金属化合物を含有するペーストを140℃〜250℃の加熱温度で加熱することで前記ペースト中に存在する金属の微粒子若しくは前記金属化合物から析出する金属の微粒子を互いに融着させてなる融着型回路パターンを積層して形成されていることを特徴とするスイッチ基板。
【請求項2】
前記樹脂含有型回路パターンを構成する樹脂バインダーはフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ基板。
【請求項3】
前記樹脂含有型回路パターンを構成する導電粉は銀粉であることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ基板。
【請求項4】
前記融着型回路パターンを構成する金属は銀であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のスイッチ基板。
【請求項5】
前記基板は合成樹脂フイルムからなるフレキシブル基板であり、
さらに前記スイッチ基板は前記接点パターンを露出するように成形樹脂製のケースに取り付けられ、前記ケースに収納される可動接点部材によって前記接点パターンがオンオフされることを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載のスイッチ基板を用いたスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−310191(P2006−310191A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133393(P2005−133393)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】