説明

スクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法

【課題】本発明は、印刷材料を被印刷体に転写した後のマスクの離版性が改善されたスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法を提供することを第1の目的としている。
【解決手段】本発明は、被印刷体の印刷面に所定パターンで印刷材料を転写するスクリーン印刷装置であって、前記パターンに対応した開口部が形成された軟磁性を有する薄板状のマスクと、前記マスクが張設されるとともに前記印刷面に対し所定の間隙で位置決めされる版枠と、前記被印刷体の下方に配設され前記マスクの開口部を包含する領域を磁力で吸引可能な磁気吸引手段と、前記印刷面に位置合わせされ前記磁気吸引手段で前記印刷面に密着された前記マスクの上面に密接しつつ移動可能に配設されたスキージとを有し、前記磁気吸引手段は、前記スキージの通過した後の前記マスクの領域において磁力を解除可能に構成されていることを特徴とするスクリーン印刷装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷材料を被印刷体に印刷するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に係り、特に半導体装置のウエハ又は電子素子が実装される回路基板等の電子部品に半田ペースト、フラックス等を所定のパターンで印刷するのに好適なスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、半田ペーストやフラックス等の印刷材料を電子部品に印刷する技術に基づいて本発明の背景を説明するが、本発明は、以下の説明のみに限定されるものではない。
【0003】
例えば、LSI・コンデンサ素子・抵抗素子等の電子素子を回路基板に実装するときには、まず、回路基板に半田ペーストを印刷し、その後、半田ペーストの上に電子素子を装着し、リフロによって半田ペーストを溶融して回路基板に接合している。また、半田ボールを用いてウエハ等に半田バンプを形成する場合には、まず、ウエハにフラックスを印刷し、次いで、フラックスの上に半田ボールを装着し、リフロによって半田ボールを溶融して半田バンプを形成している。
【0004】
上記半田ペーストやフラックス等(以下半田ペースト、フラックスも含めてペーストと言う場合がある。)を回路基板等に印刷する工程では、通常、スクリーン印刷装置が使用される。スクリーン印刷装置は、開口部が形成された金属スクリーンや金属薄板(以降、マスクと称する)を回路基板上に位置合わせし、該マスクの上面に供給されたペーストをスキージの移動により開口部に充填し、マスクを回路基板Wから離間してペーストを回路基板に転写する構造であり、オフコンタクト方式とコンタクト方式の2方式が知られている。
【0005】
オフコンタクト方式は、図7(a)に示すように、マスク911の下面が回路基板Wの上面との間に所定の初期間隙G(以下スナップオフと言う場合がある。)を有するように位置合わせし、前記隙間Gを塞ぐようにスキージ92をマスク911に押付ながら移動し、開口部913を通じてペーストfを回路基板W上に供給する。マスク911はスキージ92で押付けられると、そのたわみ量相当分伸びて張力が作用するので、スキージ92通過直後のマスクは回路基板から版離れする。ここで、オフコンタクト方式においては、マスク911が版離れし初期の形状に復元するときに印刷されたペーストfに形崩れが生じたり、印刷された個々のペーストfのピッチ寸法精度が許容範囲を超えたりする等の印刷品質・精度の問題があった。
【0006】
一方で、コンタクト方式は、図7(b)に示すように、マスク911を回路基板Wと接触させて位置合わせを行うので、前述した印刷品質、精度に関する問題に対しては有利である。しかしながら、全ての開口部にペーストが充填された後に回路基板Wを下降させてマスク911を回路基板Wから版離れさせる必要があり、独立した離版工程の時間だけオフコンタクト方式に比べ印刷作業に時間がかかるという問題がある。また、本方式においては、全ての開口部913にペーストfが充填された後にマスク911を回路基板Wから版離れさせるため、マスク911を回路基板Wから同時に一様に離版させることが困難である。すなわち、通常、回路基板Wを下降させると、マスク911はまず外周部から離版し、徐々に中央部に向かい離版していく。そして、最終的に中央部が離版するときはマスク911は相当伸びており、それが元の状態に復元するときにペーストfが周囲への飛び散ったり、ペーストfの剥がれが生じることがある。
【0007】
また、いずれの方式であっても、開口部913に供給したペーストfが、密着したマスク911と回路基板Wの間隙に滲み出してマスク911を回路基板Wに粘着させてしまうため、マスク911が回路基板Wから離間し難くなる離版性の悪化という問題が生じていた。
【0008】
更に、上記マスク911の離版性の問題に加え、いずれの方式であってもマスク911の密着性の問題、すなわちスキージ92がマスク911上を摺動する時、マスク911が回路基板Wの上面にしっかりと密着していなければ、マスク911は弾性を有するため、スキージ92との摺動時の摩擦力のために水平面内においてマスク911にズレやビビリ等の変形が生ずるという問題がある。そのような変形が発生すると、ペーストfが剥がれたり、印刷されたペーストfのピッチが変動したりするという不具合が生じる。これは、マスク911が大型になるほど起こり易い。
【0009】
上記離版性の問題を解決するため種々の検討がなされており、下記特許文献1には、版離れ機構に特徴を有したコンタクト方式のスクリーン印刷装置が開示されている。このスクリーン印刷装置は、回路基板の表面に接触するようにセットされたマスクに対し、先端がマスクの上面に当接しかつマスク上面に平行なX軸の一端側から他端側へ移動してはんだをマスクの開口部に押し出すスキージがマスクの上方に設けられ、マスクの一端側を上方へ持ち上げて回路基板から順次剥離させる持ち上げ部材と、スキージの先端を中心とした回路基板に対するマスクの一端側の傾斜角度がほぼ一定になるように上記持ち上げ部材を昇降させる昇降装置とが備えられ、スキージの先端と持ち上げ部材とはそれぞれマスク上面に平行でかつX軸に直交するY軸方向にわたって延設されている。
【0010】
このスクリーン印刷装置によれば、スキージがX軸の一端側から他端側へ移動してはんだをマスクの開口部に押し出すとともに、昇降装置が持ち上げ部材を上昇させることによって、マスクの一端側が持ち上げ部材で上方へ持ち上げられて回路基板から順次剥離される。この際、マスクはたわみを生じることなくスキージの先端を起点として一端側の範囲が回路基板から斜め上方へ剥離するため、マスクの版離れ時の挙動はスキージの先端に沿い同様となり、マスクの離版性が良好となると説明されている。
【特許文献1】特開2000−85012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載のスクリーン印刷装置は、コンタクト方式で問題となっている印刷時間や離版性を解決することを目的とし、その解決策として、スキージ進行方向後方の版枠と回路基板間のマスクを持ち上げ部材で持ち上げるという手段をとっている。しかしながら、スクリーン印刷装置で使用されるマスクの厚みは数十〜数百μmと非常に薄く、可撓性がある。そのため、図7(c)に示すように、マスク911の一端部を持ち上げ部材で常に持ち上げていても、ペーストfが開口部913に充填された直後のマスク911の部分は、開口部913に供給されたペーストfの粘性により直ぐには回路基板Wから離間せず、暫くの間は回路基板Wに密着した状態が維持される。この密着している時間が比較的短時間であっても、開口部913にペーストfが充填されたマスク911が回路基板Wに密着していると、ペーストfがマスク911と回路基板Wとの間隙に滲み出すため、印刷されたペーストfの形崩れや滲み出したペーストfによるマスク911の汚染などの問題が生じる。
【0012】
また、上記マスク911の密着性の問題について特許文献1は何ら言及しておらず、開示技術の中に解決策を見出すこともできない。さらに、スキージと持ち上げ部材間におけるマスクの傾斜角を一定にするためには、持ち上げ部材と版枠との間の距離を相当な大きさとする必要があり、マスクの大判化に対応し難いという問題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の技術の問題点を鑑みてなされたものであり、印刷材料を被印刷体に転写した後のマスクの離版性が改善されたスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法を提供することを第1の目的とし、印刷材料の印刷時にマスクが被印刷体の印刷面に密着し印刷品質及び精度が高いスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法を提供することを第2の目的としている。更に、本発明は、特に大型のマスクを使用する場合に適したスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを副次的な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、被印刷体の印刷面に所定パターンで印刷材料を転写するスクリーン印刷装置であって、前記パターンに対応した開口部が形成された軟磁性を有する薄板状のマスクと、前記マスクが張設されるとともに前記印刷面に対し所定の間隙で位置決めされる版枠と、前記被印刷体の下方に配設され前記マスクの開口部を包含する領域を磁力で吸引可能な磁気吸引手段と、前記印刷面に位置合わせされ前記磁気吸引手段で前記印刷面に密着された前記マスクの上面に密接しつつ移動可能に配設されたスキージとを有し、前記磁気吸引手段は、前記スキージの通過した後の前記マスクの領域において磁力を解除可能に構成されていることを特徴とするスクリーン印刷装置である。なお、マスクを構成する軟磁性材料としては、磁性ステンレスやニッケルなどの金属材料や軟磁性粉を含む樹脂材料等を使用することができる。
【0015】
かかるスクリーン印刷装置によれば、被印刷体の印刷面に位置決めされた軟磁性を有するマスクの開口部を包含する領域は磁気吸引手段の磁力により吸引され該印刷面に密着する。ここで、マスクは、印刷面に対し所定の間隙で位置決めされた版枠に張設されているので、磁力が解除されたときには張力により元の状態に復元する状態で印刷面に密着している。そして、その状態のマスクの上面に密接しつつ移動するスキージによりマスクに供給された印刷材料を開口部に充填し、印刷面に転写する。このとき、スキージが通過した後の前記領域からは磁力が解除されるので、磁力が解除された直後にマスクは元の状態に復元する。
【0016】
上記発明の具体的態様としては、スキージの移動方向に沿い配置された複数の電磁石で構成された磁気吸引手段を採用することができる。この態様によれば、電磁石の入切によりマスクの吸引およびその解除を制御することができる。なお、電磁石は、スキージの移動方向においてマスクに相対する面の極性が交互に異なるように配設されていることが好ましい。
【0017】
上記発明の別の具体的態様としては、前記電磁石に代えて、スキージの移動方向に沿い配置された複数の永久磁石と、前記永久磁石をマスク方向に移動させる昇降手段とを有する前記磁気吸引手段を採用することができる。この態様によれば、永久磁石を昇降させることによりマスクの吸引およびその解除を制御することができる。なお、永久磁石は、スキージの移動方向においてマスクに相対する面の極性が交互に異なるように配設されていることが好ましい。
【0018】
上記発明の別の具体的態様としては、スキージの移動方向に対し該スキージの前方を含む領域に配設され、該スキージと同期して移動する磁石を有する前記磁気吸引手段を採用することができる。この態様によれば、スキージの前方の磁石によりマスクは吸引され印刷面に密着するとともに、該磁石はスキージとともに移動するのでスキージの後方のマスクからは磁力が解除される。なお、前記磁石は、スキージの移動方向に沿いマスクに相対する面の極性が交互に異なるように連結された複数の永久磁石で構成されていることが望ましい。このように磁石を構成することにより、磁極間で生じる磁束による磁力の及ぶ範囲は磁石の周囲の限定された範囲となり、スキージの後方のマスクが印刷面に長時間密着することを防止できるからである。
【0019】
本発明は、特に上記スクリーン印刷装置により好適に実施されるものであり、被印刷体の印刷面に所定パターンで印刷材料を転写するスクリーン印刷装置において、被印刷体の印刷面にマスクを磁力で密接し、マスク上に供給された印刷材料をスキージにより塗り広げマスクの開口部を通じ印刷面に印刷材料を転写するとともにスキージ通過後のマスクから磁力を解除することを特徴とするスクリーン印刷方法である。なお、スキージの移動方向に対し該スキージの前方のマスクを含む領域を被印刷体の印刷面に磁力で密着してもよい。
【発明の効果】
【0020】
上記説明のように本発明によれば、スキージが通過した後方のマスクから磁力を解除し、スキージの通過直後にマスクが印刷面から版離れするという構成としているので離版性が改善され、開口部に充填されたフラックスがマスクの裏面に沁み出すことがなく印刷品質及び精度が良好となる。また、印刷材料の印刷時において被印刷体の印刷面にマスクを磁力で密着させる構成としたので、マスクが変形することが無く良好な印刷品質及び精度を実現することができる。また、本発明は磁力吸引手段により上記効果を得ることができ、マスクのサイズに係らず適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を、その実施態様に基づき図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の実施態様で対象とする被印刷体は、図2に示すように、所定パターンで配列された平板状電極pに直径が80〜150μm程度の半田ボールBが搭載されるウエハWであり、印刷材料は、半田ボールBが搭載される前の平板状電極pに塗布されるペースト状のフラックスfである。
【0022】
[第1態様]
本発明の第1態様について図1、3、4に基づいて説明する。図1は第1態様のスクリーン印刷装置1の概略構成を説明するための図で、図1(a)は斜視図、図1(b)は平面図である。ウエハWは平板状のテーブル15上に載置される。このテーブル15にウエハWを真空吸着する真空吸着手段等を組込めば(図示せず)、載置されたウエハWはテーブル15に吸着され固定されるので好ましい。平板状のマスク111は軟磁性材からなる薄板で、端部は直接或いは該薄板材よりも弾性の低い部材を介して版枠112で支持されている。マスク111には上記ウエハWの平板状電極pの配列パターンに対応する複数の開口部113が形成されている。その複数の開口部113を包含する領域(以下印刷領域という。)114にフラックスfは塗り広げられる。マスク111の表面にはフラックスfが供給され、裏面115がウエハWに当接する。マスク111の厚みは平板状電極pの大きさや厚さ等を考慮し適宜設定されるが、20〜50μm程度である。開口部113は、例えばレーザ加工やエッチング加工、精密電気鋳造法など周知の加工方法で形成することができる。
【0023】
スキージ12は、プラスティック系やゴム系の材料から成る平角状体で、マスク111の一端から他端(X方向)に向かい水平に移動可能な水平移動手段14に設けられた上下移動手段13に所定角度をなして取付けられ、ウエハWの上面(印刷面)に密接したマスク111に下端角部を当接させながら水平移動することができる。スキージ12の長手方向(Y方向)長さは印刷領域114を包含する大きさを有しており、マスク111の上面に供給されたフラックスfを矢印C方向に押しながら印刷領域114に塗り広げ、全開口部113にフラックスfを充填する。
【0024】
テーブル15に載置されたウエハWの下方、例えばテーブル15の下面部に磁気吸引手段30が配設されている。複数の電磁石31で構成された磁気吸引手段30は、マスク111がセットされた時、印刷領域114を包含する所定範囲、例えばウエハWと対向する範囲のマスク111に磁力を作用させることができるよう構成されている。なお、電磁石31は、スキージ12の移動方向(X方向)に沿って磁力を入・切できる。図3は、第1態様の磁気吸引手段30の構成例を示した平面図である。図3(a)はY方向に長い棒状の電磁石31をX方向に並べて配置した磁気吸引手段30の例である。また、図3(b)はブロック状の電磁石31aをX方向、Y方向に配置した磁気吸引手段30aの例であるが、いずれの場合も電磁石31(31a)はX方向の長さが小さなものを密に設けるのがよい。また、図3及び図4(b)に示すように、電磁石31は、X方向においてマスク111に相対する面の極性が交互に異なるように配設されていることが好ましい。隣合う電磁石31の間には漏洩磁束が形成され電磁石31ごとに磁力が生じる。そして、その漏洩磁束は電磁石31の狭い空間に主に生じるので、磁力吸引手段30から生じる磁力が及ぶ範囲はその周囲の限定された範囲となる。したがって、該磁力がスクリーン印刷装置1の構成部材に及ぼす影響が低減され、装置構成をシンプルにすることができる。
【0025】
次に、上記構成のスクリーン印刷装置1の印刷動作について図4を参照して説明する。図4は、図1のA―A断面を示す図で、マスク111、ウエハW、テーブル15及び電磁石31の関係を模式的に示したものである。
まず、図4(a)に示すように、電磁石31が「切」状態で、テーブル15の所定位置にウエハWを載置して固定するとともに、ウエハWの平板状電極pに開口部113が対向するようにマスク111を位置合わせする。なお、ウエハWの上面とマスク111の裏面115との間には所定の間隙Gが形成されるようマスク111の上面に対し所定の位置関係で版枠112を位置決めし固定する。なお、この状態を以下「初期状態」と呼ぶ。
【0026】
次いで、図4(b)に示すように、全ての電磁石31を「入」にしてマスク111に磁力を作用させ、印刷領域114を含む所定範囲をウエハWの方向に引き下げてウエハWの上面にマスク111を密着させる。この時、ウエハWに密着していないマスク111の部分(以下非密着部という。)には、間隙Gの大きさで定まる伸びが生じマスク111には張力が作用する。なお、テーブル15に昇降機構を設け、一旦ウエハWの上面がマスク111の下面115に接するように上昇させ、次いで全ての電磁石31を「入」にしてマスク111をウエハWに密着し固定し、次いでウエハWを下降させ、図4(b)に示す状態にしてもよい。
【0027】
図4(c)に示すように、スキージ12を、ウエハWに密着しているマスク111の部分(以下密着部という。すなわち上記「印刷領域114を含む所定範囲」である。)であって印刷領域114の外に下降させ、その角部をマスク111の上面に当接させる。次に、スキージ12の前方のマスク111の上面にフラックスfを供給する。なお、フラックスfは、スキージ12をマスク111に当接させる前に供給してもよい。また、フラックスfを予めスキージ12に付着させておいてもよい。
【0028】
次いで、図4(d)に示すように、マスク111の右方から左方に向かって(矢印C)スキージ12を水平移動させる。これにより、供給されたフラックスfはスキージ12で押され、ウエハWに密着している印刷領域114に塗り広げられ、開口部113に充填される。スキージ12が通過した位置にある電磁石31は、スキージ12の移動に同期してスキージ12の通過した直後に「切」とされ、スキージ12が通過した直後のマスク111からは磁力が解除される。これにより、スキージ12が通過した後のマスク111は、その張力でウエハWの上面から版離れする。その後、図4(e)に示すように、スキージ12がマスク111の印刷領域114の全域を通過し左方の所定位置に達すると全ての電磁石31を「切」とする。その後、スキージ12を上昇させフラックスfの印刷が終了する。
【0029】
上記構成による第1態様のスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法によれば、マスク111の版離れは、フラックスfが開口部113に充填された直後に行われるので、フラックスfの滲みによるペーストfの印刷制度の低下及び離版性の低下を防止することができる。また、スキージ12が摺動する印刷領域114は磁力でウエハWに密着しているのでマスク111は水平面内において変形せず、開口部113の位置が印刷中に変化してペーストfの印刷精度が低下したり、転写されたペーストfが変形して印刷形状が低下したりすることがなく、特に、大判のマスク111であっても印刷精度は良好となる。また、磁力吸引手段30から生じる磁力は電磁石31の励磁電流を制御することで容易に調整することができ、また、個々の電磁石31を制御することも容易にできるので、適宜マスク111の場所に合わせた吸引力を設定することができる。
【0030】
[第2態様]
第2態様のスクリーン印刷装置2は、磁気吸引手段32を、上記電磁石31に代え永久磁石33と該永久磁石33を昇降させる昇降手段34とで構成とした点が異なる他は第1態様と同様であり、以下同じ部分は同一符号を用いて説明する。第2態様において永久磁石33は、前記電磁石31の配置と同様であり図5(a)に示すように、紙面に垂直な方向(Y方向)に長い棒状の永久磁石33を紙面に水平な方向(X方向)に並べて配置されている。また、夫々の永久磁石33は、テーブル15に取付けられたエアーシリンダなどの昇降手段34に個々に連結され、上昇位置にある時にはマスク111の下面115をウエハWの上面に密着させるに十分な磁力を作用させることができ、下降位置にある時にはそのような磁力がマスク111に作用しないように構成されている。なお、上記第1態様の磁気吸引手段30と同様に、永久磁石31は、X方向においてマスク111に相対する面の極性が交互に異なるように配設されていることが好ましい。(図5参照)
【0031】
以下、図5を参照しながら上記第2態様のスクリーン印刷装置の動作を説明する。図5(a)は初期状態であり、マスク111に磁力が作用しないよう、全ての永久磁石33は下降位置に位置決めされている。
【0032】
次いで、図5(b)に示すように、全ての昇降手段34を起動して全ての永久磁石33を上昇位置に移動させる。これによりマスク111に磁力を作用させ、マスク111の印刷領域114を含む所定範囲をウエハW上に引き下げて密着させる。この時、マスク111の非密着部には、第1形態の場合と同様に間隙Gの大きさで定まる伸びが生じ、マスク111には張力が作用する。
【0033】
次いで、図5(c)に示すように、マスク111の密着部で印刷領域114の外にスキージ12を下降させ、その角部をマスク111に当接させる。次いで、フラックスfをスキージ12前方のマスク111上面に供給する。
【0034】
図5(d)に示すように、マスク111の右方から左方に向かって(矢印C)スキージ12を水平移動させる。これにより、供給されたフラックスfはスキージ12で押され、ウエハWに密着している印刷領域114に塗り広げられ、開口部113に充填される。スキージ12が通過した位置にある永久磁石33は、スキージ12の移動に同期してスキージ12が通過した直後に降下し、スキージ12が通過した直後のマスク111からは磁力が解除される。これにより、スキージ12が通過した後のマスク111は、その張力でウエハWの上面から版離れする。その後の動作については、上記第1態様のスクリーン印刷装置と同様であるので説明を省略する。
【0035】
[第3態様]
第3態様のスクリーン印刷装置3は、磁気吸引手段35の構成が異なっている他は、第2態様のスクリーン印刷装置と同様である。本態様の磁気吸引手段35は、図6(a)に示すように、スキージ12の移動方向である紙面に水平な方向(X方向)に沿い配設された複数本(最小2本、図6では3本)の永久磁石36で構成されており、、X方向において所定の幅寸法Lを有している。ここで、各永久磁石36は交互に異なる極性となるよう接合されている。磁気吸引手段35は、X方向に沿いスキージ12の前方に該スキージ12と同期してX方向に移動可能なようにスキージ12が取付けられた水平駆動手段14に固定されている。磁気吸引手段35の寸法Lは適宜決定すればよいが、マスク111の上面に供給されスキージ12で移動されているフラックスfのX方向の長さより大であることが好ましい。なお、磁気吸引手段35を移動させる水平駆動手段はスキージ12の水平移動手段14を利用することもできるが、独立した水平移動手段で移動させてもよい。
【0036】
磁気吸引手段35は、フラックスfを印刷するときにのみ磁力がマスク111に作用する構成とすることが望ましい。すなわち、磁気吸引手段35とマスク111との鉛直方向又は水平方向の位置関係が相対的に調整できるように、マスク111又は磁気吸引手段35が昇降可能なよう昇降手段を設けることが好ましい。なお、印刷するとき以外には磁気吸引手段35が印刷領域114から離れた位置に待機し、印刷する時には所定位置に移動できるよう水平駆動手段を構成してもよい。
【0037】
以下、図6を参照しながら上記第3態様のスクリーン印刷装置の動作を説明する。図6(a)は初期状態であり、磁気吸引手段35の磁力がマスク111に作用しないよう磁気吸引手段35が取付けられたテーブル15は下降位置にセットされている。また、磁気吸引手段35は、X方向においてマスク111の印刷領域114の外に設定された印刷開始位置にセットされている。
【0038】
図6(b)に示すように、ウエハWの上面とマスク111の下面115との距離が間隙Gとなるようテーブル15を上昇させ、磁気吸引手段35の上方のマスク11を磁力で吸引しマスク111をウエハWに密着させる。この時、マスク111の非密着部には間隙Gの大きさで定まる伸びが生じ、マスク111には張力が作用する。
【0039】
次いで、図6(c)に示すように、マスク111の密着部で印刷領域114の外にスキージ12を下降させ、その角部をマスク111に当接させる。この時、スキージ12の角部は、X方向において磁気吸引手段35の右端部(後部)とほぼ一致するよう位置合わせされる。次いで、フラックスfをスキージ12前方のマスク111上面に供給する。
【0040】
次いで、図6(d)に示すように、スキージ12をマスク111の右方から左方に向かって水平移動手段14で移動させる。すると、磁気吸引手段35は、水平駆動手段14でスキージ12と同期して移動する。この結果、スキージ12の移動中、スキージ12の前方のマスク111には磁気吸引手段35の磁力が作用するのでマスク111はウエハWに密着する。そして、供給されたフラックスfはスキージ12で押され、ウエハWに密着している印刷領域114に塗り広げられ、開口部113に充填される。一方で、スキージ12が通過した後方のマスク111には磁力は作用せず、マスク111は張力でウエハWの上面から版離れする。その後の動作については、前述した第1及び第2態様のスクリーン印刷装置と同様であるので説明を省略する。
【0041】
なお、上記磁気吸引手段35は一個の磁石で構成してもよい。しかしながら、上記説明のようにスキージ12の移動方向に沿いマスク111に相対する面の極性が交互に異なるように連結された複数の永久磁石36で構成することにより、隣合う永久磁石36の間には漏洩磁束が生じ永久磁石36ごとに磁力が生じる。そして、その漏洩磁束は永久磁石36の間の狭い空間に主に生じるので、磁気吸引手段35から生じる磁力が及ぶ範囲は磁気吸引手段35の周囲の限定された範囲となる。したがって、スキージ12の後方のマスク111が磁気吸引手段35で印刷面に長時間密着することがなく、離版性をより高めることができる。
【0042】
また、第1態様及び第2態様のスクリーン印刷装置でも、電磁石31の入切又は昇降手段34による永久磁石33の昇降を適宜制御することにより、第3態様のスクリーン印刷装置と同様な動作をさせることができる。さらに、本発明は、図1に示すようにマスク111の4辺を版枠で支持する形態だけでなく、X方向に対向する2辺だけを版枠で支持されたマスクでも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1態様のスクリーン印刷装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のスクリーン印刷装置で対象とするウエハの斜視図である。
【図3】図1のスクリーン印刷装置に用いる電磁石の配置例を示す図である。
【図4】図1のスクリーン印刷装置の印刷動作を説明する図である。
【図5】本発明の第2態様のスクリーン印刷装置の印刷動作を説明する図である
【図6】本発明の第3態様のスクリーン印刷装置の印刷動作を説明する図である
【図7】従来のスクリーン印刷装置の動作を説明する図である
【符号の説明】
【0044】
1:第1態様のスクリーン印刷装置
111:マスク
112:版枠
113:開口部
114:印刷領域
115:マスクの裏面
12:スキージ
13:スキージ昇降手段
14:スキージ水平移動手段
15:テーブル
30:第1態様の磁気吸引手段
31:電磁石
32:第2態様の磁気吸引手段
33:永久磁石
34:永久磁石昇降手段
35:第3態様の磁気吸引手段
36:永久磁石
92:スキージ
911:マスク
913:開口部
G:スナップオフ
W:ウエハ
p:平板状電極
f:フラックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体の印刷面に所定パターンで印刷材料を転写するスクリーン印刷装置であって、前記パターンに対応した開口部が形成された軟磁性を有する薄板状のマスクと、前記マスクが張設されるとともに前記印刷面に対し所定の間隙で位置決めされる版枠と、前記被印刷体の下方に配設され前記マスクの開口部を包含する領域を磁力で吸引可能な磁気吸引手段と、前記印刷面に位置合わせされ前記磁気吸引手段で前記印刷面に密着された前記マスクの上面に密接しつつ移動可能に配設されたスキージとを有し、
前記磁気吸引手段は、前記スキージの通過した後の前記マスクの領域において磁力を解除可能に構成されていることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記磁気吸引手段は、前記スキージの移動方向に沿い配置された複数の電磁石で構成されていることを特徴とした請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記磁気吸引手段は、前記スキージの移動方向に沿い配置された複数の永久磁石と、前記永久磁石をマスク方向に移動させる昇降手段とを有することを特徴とした請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記磁気吸引手段は、前記スキージの移動方向に対し該スキージの前方を含む領域に配設され、該スキージと同期して移動する磁石を有することを特徴とした請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記磁石は、前記スキージの移動方向に沿い前記マスクに相対する面の極性が交互に異なるように連結された複数の永久磁石からなることを特徴とした請求項4記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
被印刷体の印刷面に所定パターンで印刷材料を転写するスクリーン印刷装置において、被印刷体の印刷面にマスクを磁力で密接し、マスク上に供給された印刷材料をスキージで塗り広げマスクの開口部を通じ印刷面に印刷材料を転写するとともにスキージ通過後のマスクから磁力を解除することを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項7】
スキージの移動方向に対し該スキージの前方のマスクを含む領域を被印刷体の印刷面に磁力で密着することを特徴とした請求項6記載のスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−125794(P2007−125794A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320482(P2005−320482)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】