説明

ステアリングホイール

【課題】金型装置に手を加えずに、バリ切り部及びスポーク部芯金間の構成部品の断線を抑制する。
【解決手段】リム部芯金17及びスポーク部芯金19の連結部の周りに配置されたカバー部材30と、カバー部材30上のヒータエレメント40とを構成部材とするステアリング中間体13Aを形成し、カバー部材30とヒータエレメント40の面状の発熱体とを、金型装置60のキャビティ63内に配置し、固定型61及び可動型62の各バリ切り部64,65をスポーク部芯金19に圧接させた状態でキャビティ63内に成形材料を供給して、カバー部材30及び発熱体の周りに第1被覆部を形成する。ヒータエレメント40は、第1被覆部の形成に際し、バリ切り部64,65よりも金型装置60の外側に位置する端子47,48と、バリ切り部65及びスポーク部芯金19間を経由して発熱体及び端子47,48を繋ぐ面状の接続部51,52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電により発熱する発熱体をリム部に組込んだステアリングホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が冬季の厳寒下で駐車されると、車内の温度が低くなり、これに伴いステアリングホイールのリム部(ハンドル部、リング部とも呼ばれる)の温度が低くなる。このような状態で運転者が車両に乗って運転を開始する際、冷たいリム部を握ることになり、操舵がしづらい。
【0003】
そこで、通電により発熱する発熱体をリム部に組込んだタイプのステアリングホイールが従来から種々提案されている。図15は、このタイプのステアリングホイール70における発熱体の近傍部分の断面構造を示している。このステアリングホイール70では、リム部71の骨格をなすリム部芯金72が、発泡ポリウレタン等の軟質(弾性)材料からなる被覆部73によって被覆されている。この被覆部73上には、例えば、特許文献1に記載されているような、不織布等の支持体に線状ヒータ(電熱線)を縫着してなる面状発熱体74が配置され、さらに、その面状発熱体74の周りに表皮75が巻付けられている。
【0004】
ところが、前記従来の面状発熱体74を用いたステアリングホイール70では、表皮75において線状ヒータ(電熱線)を覆う箇所が押し出されて、線状ヒータ(電熱線)のパターンが浮き出て見え、外観品質が損なわれる問題がある。
【0005】
これに対しては、図16に示す構造を有するステアリングホイール80が考えられる。このステアリングホイール80は、芯金81、カバー部材82及び面状発熱体83を少なくとも構成部材とするステアリング中間体84を備える(図17参照)。芯金81は、リム部芯金85と、これに連結部86を通じて連結されたスポーク部芯金87とを有する。カバー部材82は、芯金81のうち、少なくとも連結部86の周りに配置される。面状発熱体83はカバー部材82上に配置され、この面状発熱体83が、上述した表皮75(図15参照)に代えて樹脂製の被覆部88によって覆われる。このステアリングホイール80では、面状発熱体74の周りに表皮75を巻付ける場合(図15参照)とは異なり、被覆部88の外表面(リム部89の意匠面)に面状発熱体83の外表面の形状が浮き出にくく、面状発熱体83に起因する外観品質低下が生じにくい。
【0006】
上記被覆部88の形成には、例えば図17に示す金型装置90が用いられる。ステアリング中間体84の少なくともカバー部材82及び面状発熱体83が、金型装置90の固定型91と可動型92との間に形成されるキャビティ93内にインサート部材として配置される。この際、面状発熱体83に対し、被覆部88の外側から電力供給や信号通信を行うための電線(導線を軟質樹脂等の絶縁材によって被覆したもの)96が、固定型91及び可動型92にそれぞれ設けられたバリ切り部94,95間を経由して金型装置90の外部へ引き出される。又は、図示しないが、上記電線96に代えて、面状発熱体83の一部が延長され、バリ切り部94,95間を経由して金型装置90の外部へ引き出される。そして、金型装置90の型締めに伴い、バリ切り部94,95が弾性変形しながらスポーク部芯金87と電線96とに、又はスポーク部芯金87と延長された面状発熱体83とにそれぞれ圧接させられた状態で、キャビティ93内に成形材料が供給される。バリ切り部94,95により、成形材料の漏出が規制されつつ、少なくともカバー部材82及び面状発熱体83の周りに、図16に示す被覆部88が形成される。なお、上記特許文献1には、面状発熱体83をボス部内まで延長する旨の記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−58864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前述した後者のステアリングホイール80では、金型装置90による被覆部88の形成に際し、次の問題が生ずるおそれがある。それは、一般に、バリ切り部94,95はインサート部材と固定型91との間、又はインサート部材と可動型92との間を通じて成形材料が漏出しないように必要最小限の厚みに形成されていて、弾性変形量がわずかである。そのため、電線96又は延長された面状発熱体83を両バリ切り部94,95間に配置した場合、その電線96の太さ又は面状発熱体83の厚みがバリ切り部94,95の弾性変形代を越えることがある。この場合には、成形材料の漏出を規制するために、バリ切り部94,95が強い力で電線96又は延長された面状発熱体83に押付けられる。
【0009】
また、図18に示すように、電線96はバリ切り部95に対し線接触し、同バリ切り部95の荷重を狭い面で受ける。そのため、金型装置90の型締めに伴うバリ切り部95の荷重が電線96に集中して作用する。この現象は、電線96に代えて面状発熱体83を延長した場合にも同様に起り得る。その結果、電線96又は延長された面状発熱体83はバリ切り部95から過大な荷重を受け、潰されて断線に至るおそれがある。なお、図18中の電線96についての二点鎖線は、同電線96がバリ切り部95から荷重を受ける前の状態を示し、実線は荷重を受けて潰された状態を示している。
【0010】
これに対しては、電線96等をバリ切り部94,95から保護するための別部材を設けたり、バリ切り部94,95の構造を、電線96等に過大な荷重が加わらないような構造に変更したりしなければならない。いずれにしても、金型装置90の構造が複雑となり、製造コストの上昇を招く。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、金型装置に手を加えずに、バリ切り部及びスポーク部芯金間の構成部品の断線を抑制することのできるステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、連結部を通じて相互に連結されたリム部芯金及びスポーク部芯金を有する芯金と、前記芯金のうち、少なくとも前記連結部の周りに配置されたカバー部材と、前記カバー部材上に配置され、かつ通電により発熱する面状の発熱体を有するヒータエレメントとを少なくとも構成部材とするステアリング中間体を形成し、前記ステアリング中間体の少なくとも前記カバー部材及び前記発熱体を、金型装置の固定型と可動型との間に形成されるキャビティ内に配置し、前記固定型及び前記可動型にそれぞれ設けたバリ切り部を前記スポーク部芯金に圧接させた状態で、同キャビティ内に成形材料を供給することにより、同成形材料の漏出を前記バリ切り部で規制しつつ、前記カバー部材及び前記発熱体の周りに樹脂の被覆部を形成してなるステアリングホイールであって、前記ヒータエレメントは、外部からの電流の出入り口を構成し、かつ前記被覆部の形成に際し、前記バリ切り部よりも前記金型装置の外側に位置する端子と、前記バリ切り部及び前記スポーク部芯金間を経由して前記発熱体及び前記端子を繋ぐ面状の接続部とをさらに備えることを要旨とする。
【0013】
ここで、被覆部を構成する樹脂としては、軟質樹脂だけでなく硬質樹脂も挙げられる。また、軟質樹脂には、発泡材を添加した原料樹脂を射出成形することにより形成されて弾性を有するものも含まれる。
【0014】
上記の構成を有するステアリングホイールでは、発熱体への電力供給や信号通信を行う機能を接続部が担う。この発熱体から発せられた熱は、カバー部材及び発熱体の周りの被覆部に伝達される。そのため、例えば車両等の運転開始前にリム部の温度が低くても、上記熱伝達によりリム部を早期に運転者の握りやすい適温にすることが可能である。
【0015】
ところで、上記被覆部の形成に際しては、ステアリング中間体の少なくともカバー部材及び面状の発熱体が、金型装置の固定型と可動型との間のキャビティ内に配置される。この際、接続部が、固定型及び可動型にそれぞれ設けられたバリ切り部間を経由して金型装置の外部へ引き出される。そして、金型装置の型締めに伴い、バリ切り部が弾性変形しながらスポーク部芯金及び接続部に圧接させられた状態で、キャビティ内に成形材料が供給される。バリ切り部により、スポーク部芯金と固定型との間、及びスポーク部芯金と可動型との間を通って成形材料が漏出する現象が規制される。
【0016】
ここで、上記接続部は面状をなしており、不織布等の支持体に線状ヒータ(電熱線)を縫着してなる面状発熱体や、導線を軟質樹脂等の絶縁材によって被覆してなる電線よりも厚みが薄く、接続部の太さ(厚み)がバリ切り部の弾性変形代を越えにくい。バリ切り部が強い力で接続部に押付けられなくても、成形材料の漏出が規制される。また、接続部はバリ切り部に対し面接触する。そのため、接続部がバリ切り部に対し線接触する場合に比べ、同接続部は広い面でバリ切り部の荷重を受けることとなる。従って、バリ切り部による過大な荷重が接続部に加わりにくく、同接続部が断線しにくい。その結果、接続部をバリ切り部から保護するための別部材を設けたり、バリ切り部の構造を、接続部に過大な荷重が加わらないような構造に変更したりしなくてすむ。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ヒータエレメントは、絶縁シートと、それぞれが主電極部、及び同主電極部から櫛歯状に突出された多数の副電極部からなり、かつ互いの前記副電極部が交互に位置するように前記絶縁シート上に形成された一対の電極と、前記両電極の隣り合う前記副電極部に跨った状態で前記絶縁シート上に形成され、かつ前記発熱体を構成する抵抗体層とを備え、前記接続部は、前記主電極部及び前記端子を接続する引出し電極部を備えることを要旨とする。
【0018】
上記の構成によれば、端子を通じてヒータエレメントに通電されると、引出し電極部、主電極部及び副電極部の順に電流が流れるとともに、隣り合う副電極部に跨った抵抗体層に電流が流れる。それに伴い、抵抗体層が発熱体として機能する。面方向に広い箇所から熱が発せられ、ヒータエレメントを接触状態で覆う被覆部に熱が伝達されて、同被覆部がどの箇所でも略均一に昇温させられる。そのため、ヒータエレメントを覆う被覆部が局部的に加熱されて収縮する現象が起こりにくい。長年の使用によっても皺が入りにくく、外観品質の低下が抑制される。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記発熱体は面状のヒータ本体の一部を構成するものであり、前記接続部は前記ヒータ本体に一体形成されていることを要旨とする。
【0020】
上記の構成によれば、接続部がヒータ本体と一体となっているため、発熱体と端子とを繋ぐものを別途用意する必要がないし、また、接続部を発熱体に結線する作業も不要となる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記ヒータエレメントの前記接続部は、自身の最内層に粘着層を有しており、前記金型装置による前記被覆部の成形に先立ち、同粘着層において少なくとも前記スポーク部芯金に貼着されるものであることを要旨とする。
【0022】
上記の構成によれば、金型装置による被覆部の成形に先立ち、ヒータエレメントの接続部が、自身の最内層の粘着層において少なくともスポーク部芯金に粘着される。一旦貼着された接続部は、余程大きな力が加わらない限り、スポーク部芯金から剥がれたりずれたりすることがなく、当初の位置に保持される。そのため、被覆部の成形に際し、接続部の位置決め作業を別途行わなくてもすむ。金型装置に成形材料を供給する前の準備作業(主として、ステアリング中間体の金型装置へのセット)が容易となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のステアリングホイールによれば、金型装置に手を加えずに、バリ切り部及びスポーク部芯金間の構成部品の断線を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるステアリングホイールを示す正面図。
【図2】図1のステアリングホイールにおける芯金を示す正面図。
【図3】図1のステアリングホイールを左側方から見た状態を示す概略側面図。
【図4】図1におけるX部を拡大して示すステアリングホイールの部分正面図。
【図5】図4におけるA−A線に沿ったリム部の断面構造を示す断面図。
【図6】図4におけるB−B線に沿ったステアリングホイールの断面構造を示す断面図。
【図7】図4におけるC−C線に沿ったリム部の断面構造を示す断面図。
【図8】図7におけるリム部芯金、支持部材及びカバー部材を分解して示す断面図。
【図9】絶縁シートが割愛された状態のヒータエレメントを示す正面図。
【図10】ヒータエレメントの部分拡大断面図。
【図11】ステアリング中間体を金型装置にセットする前の状態を示す断面図。
【図12】金型装置が型締めされた状態を示す断面図。
【図13】ステアリング中間体を金型装置にセットした状態を示す断面図。
【図14】図13におけるD−D線に沿った断面構造を拡大して示す断面図。
【図15】従来のステアリングホイールにおけるリム部の断面構造を示す断面図。
【図16】図15のステアリングホイールの問題を解消すべく考えられる技術を説明するための図であり、リム部芯金及びスポーク部芯金の連結部と、その周辺部分との断面構造を示す断面図。
【図17】ステアリング中間体を金型装置にセットした状態を示す断面図。
【図18】図17におけるE−E線に沿った断面構造を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を車両用ステアリングホイールに具体化した一実施形態について、図1〜図14を参照して説明する。
図1及び図3の少なくとも一方に示すように、車両の運転席よりも前方(図3の左方)には、操舵軸(ステアリングシャフト)11が運転席側(図3の右側)ほど高くなるように傾斜した状態で回転可能に設けられ、その周りにはステアリングコラムカバー12が設けられている。ステアリングシャフト11の後端部には、本実施形態のステアリングホイール13が一体回転可能に取付けられている。ステアリングホイール13は、リム部(ハンドル部、リング部と呼ばれることもある)14、パッド部15及びスポーク部16を備えている。リム部14は、上記ステアリングシャフト11を中心とした円環状をなしている(図1参照)。ステアリングシャフト11が上記のように傾斜していることから、ステアリングホイール13もまた下側ほど運転席に近づくように傾斜している(図3参照)。
【0026】
パッド部15は、リム部14によって囲まれた空間に配置されている。スポーク部16は、リム部14及びパッド部15を連結するものであり、複数本(ここでは3本)設けられている。
【0027】
なお、リム部14における周方向の位置を特定するために、本実施形態では、車両が直進しているときの状態(中立状態)を基準に、「上」、「下」、「左」、「右」を規定するものとする。
【0028】
図1及び図2の少なくとも一方に示すように、ステアリングホイール13の上記構成部材(リム部14、パッド部15、スポーク部16)の各内部には、鉄、アルミニウム、マグネシウム、又はこれらの合金等によって形成された芯金が配設されている。この芯金のうち、リム部14内に位置するものは、同リム部14の骨格部分をなすものであって、乗員(運転者)側から見て略円環状をなしており、リム部芯金17と呼ばれる。リム部芯金17は、紙面に直交し、かつステアリングシャフト11の軸線を含む面におけるリム部14の断面について、その略中心部分に配置されている(図5等参照)。
【0029】
芯金は、上記リム部芯金17のほかに、そのリム部芯金17により囲まれた空間のやや前方に位置するボス部芯金18を備えるとともに、スポーク部16毎の複数本(3本)のスポーク部芯金19を備えている。ボス部芯金18は、ステアリングシャフト11に一体回転可能に取付けられている。各スポーク部芯金19は、その一方の端部においてボス部芯金18に連結され、他方の端部においてリム部芯金17に連結されている。ここで、左右に位置するスポーク部芯金19の各々とリム部芯金17との連結部分をそれぞれ連結部というものとする。各連結部は、スポーク部芯金19のリム部芯金17に対する連結部分であるスポーク部側連結部19Aと、リム部芯金17のスポーク部芯金19に対する連結部分であるリム部側連結部17Aとからなる。各リム部側連結部17Aは正面略円弧状をなし、各スポーク部側連結部19Aは、スポーク部16の長さ方向に互いに離れた複数箇所において、前後方向に屈曲した形状をなしている(図6参照)。
【0030】
両リム部側連結部17Aを含むリム部芯金17の全体と、左右のスポーク部芯金19における両スポーク部側連結部19Aとは、発泡ポリウレタン等の軟質(弾性)材料によって形成された軟質被覆部20によって直接的に又は間接的に被覆されている。
【0031】
軟質被覆部20によって直接的に被覆されているのは、リム部芯金17のうちリム部側連結部17Aを除く箇所である。軟質被覆部20によって間接的に被覆されているのは、リム部芯金17のうちのリム部側連結部17Aと、スポーク部芯金19毎のスポーク部側連結部19Aである。軟質被覆部20について、芯金を直接的に被覆している箇所と、間接的に被覆している箇所とを区別するために、本実施形態では、後者を第1被覆部21といい、前者を第2被覆部22というものとする。
【0032】
図4は、図1のX部を拡大して示している。図5は図4のA−A線に沿った断面構造を示し、図6は同図4のB−B線に沿った断面構造を示し、図7は同図4のC−C線に沿った断面構造を示している。図5〜図7において、上側は概ね車両後側(運転席側)を示し、下側は概ね車両前側を示している。これらの図5〜図7は、リム部14の左側部分の断面構造を示しているが、右側部分の断面構造についても同様である。そのため、本実施形態では、左側部分の断面構造を例に説明し、右側部分の断面構造については説明を省略する。
【0033】
図4及び図5の少なくとも一方に示すように、第2被覆部22は、リム部側連結部17A(図2参照)からリム部14の周方向(図4の上下方向)へ離れた箇所において、リム部芯金17に接触した状態でそのリム部芯金17を直接被覆している。この第2被覆部22は第1被覆部21よりも厚く形成されている。
【0034】
次に、連結部(リム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19A)に対する第1被覆部21の被覆態様について説明する。この第1被覆部21は、特許請求の範囲における「被覆部」に該当する。
【0035】
図4、図7及び図8の少なくとも1つに示すように、リム部14の周方向についてのリム部側連結部17Aの両端部には、それぞれ支持部材25が配置されている(図4参照)。各支持部材25は、2つの部材に分割されている。これらの部材を区別するために、各支持部材25について、後側に位置するものを支持分割体26といい、前側に位置するものを支持分割体27というものとする。両支持分割体26,27は、いずれもゴム、シリコーン等によって形成されている。そして、リム部14の周方向についてのリム部側連結部17Aの両端部に対し、支持分割体26が後方から嵌合されるとともに、支持分割体27が前方から嵌合され、支持分割体27の分割面と、支持分割体26の分割面とが互いに接触させられている。この接触状態では、支持分割体26,27はいずれも、リム部14の周方向についての上記リム部側連結部17Aの両端部に密着している(図7参照)。
【0036】
図6〜図8の少なくとも1つに示すように、リム部芯金17及びスポーク部芯金19には、硬質樹脂によって中空状に形成された硬質のカバー部材(ベゼルとも呼ばれる)30が、リム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aを覆った状態で装着されている。このように、カバー部材30は、リム部芯金17の一部及びスポーク部芯金19の一部を覆う構成を採っている。従って、カバー部材30は、リム部芯金17において、リム部側連結部17Aとそれ以外の箇所との境界に対応する箇所、すなわちリム部14の周方向についての両端部に開口30Aを有している(図4及び図7参照)。また、カバー部材30は、スポーク部芯金19において、スポーク部側連結部19Aとそれ以外の箇所との境界に対応する箇所、すなわちボス部芯金18側(図6の右側)の端部に開口30Bを有している。
【0037】
カバー部材30は、2つの部材に分割されている。これらの部材を区別するために、カバー部材30について、後側に位置するものをカバー分割体31といい、前側に位置するものをカバー分割体32というものとする。カバー分割体31の内表面31I、及びカバー分割体32の内表面32Iは、カバー部材30の内表面を構成している。また、カバー分割体31の外表面31O、及びカバー分割体32の外表面32Oは、カバー部材30の外表面を構成している。
【0038】
カバー分割体31の分割面には係合部31Aが形成され、カバー分割体32の分割面には、上記係合部31Aに係合し得る被係合部32Aが形成されている。そして、支持分割体27に対しカバー分割体32が前方から被せられ、支持分割体26に対しカバー分割体31が後方から被せられている。さらに、カバー分割体32の被係合部32Aに対し、カバー分割体31の係合部31Aが係合されている。リム部14の周方向についてのカバー分割体32の両端部では、内表面32Iが支持分割体27の外表面27Oに密着し、カバー分割体31の内表面31Iが支持分割体26の外表面26Oに密着している。このように密着した支持分割体26,27により、カバー部材30の両開口30Aが塞がれている。また、カバー部材30のボス部芯金18側の開口30Bでは、カバー分割体31の端面31Eと、カバー分割体32の端面32Eとがスポーク部芯金19に密着している(図6参照)。リム部側連結部17A、スポーク部側連結部19A、カバー部材30及び両支持部材25によって囲まれた箇所は中空部35となっている(図6参照)。
【0039】
カバー部材30上及びスポーク部芯金19上には、面状のヒータエレメント40が配置されている。図9は、このヒータエレメント40を後方から見た状態を示し、図10は同ヒータエレメント40の断面構造を拡大して示している。ただし、図9は、後述する絶縁シート41が割愛された状態でヒータエレメント40が図示されている。
【0040】
図9及び図10の少なくとも一方に示すように、ヒータエレメント40は、通電により発熱する面状の発熱体を有する可撓性シート体を主要部としている。ただし、このヒータエレメント40は、不織布等の支持体に線状ヒータ(電熱線)を縫着してなる従来の面状発熱体74(図15参照)よりも若干高い剛性を有している。また、本実施形態のヒータエレメント40は、力を加えると撓み(しなり)、その力を抜くと元の形状に戻る。こうしたヒータエレメント40の全体の厚みT1は、0.2mm〜0.3mmとなっている。
【0041】
ヒータエレメント40は、面状のヒータ本体39、一対の端子47,48及び一対の面状の接続部51,52を備えている(図9参照)。ヒータ本体39は、カバー部材30上であって上記中空部35に対応する箇所において、同カバー部材30の外表面31O,32Oに沿って配置されている。ヒータ本体39は、絶縁基板としての絶縁シート41、一対の電極42,43、抵抗体層44、絶縁層45及び粘着層46を備えている。
【0042】
絶縁シート41は、ヒータ本体39の最外層を構成する部材である。絶縁シート41は、ポリエステルフィルム等の絶縁フィルムによって形成されており、全体が可撓性を有している。絶縁シート41の外表面41Oは、ヒータ本体39の外表面を構成している。
【0043】
一方の電極42はプラス電極として機能するものであって、絶縁シート41上においてリム部14の周方向(図9の上下方向)に延びる幅の広い主電極部42Aを備えている。また、他方の電極43はマイナス電極として機能するものであって、上記絶縁シート41上の上記主電極部42Aとは異なる箇所においてリム部14の周方向に延びる幅の広い主電極部43Aを備えている。電極42,43の主電極部42A,43Aからは、他方の電極43,42の主電極部43A,42Aに向けて、同主電極部42A,43Aよりも幅の狭い多数本の副電極部42B,43Bが、リム部14の周方向について互いに一定の距離を隔てた状態で櫛歯状に突出している。そして、各電極42,43は、互いの副電極部42B,43Bがリム部14の周方向に交互に位置するように配置されている。隣り合う副電極部42B,43Bは、対向電極として機能する。
【0044】
上記両電極42,43は、絶縁シート41上に、銀、銅等を含む導電性インクを印刷塗布する印刷法によって形成されている。また、両電極42,43は、そのほかにも、絶縁シート41上に予め貼り合わせた金属箔をエッチングする方法によっても形成可能である。なお、金属箔としては、アルミニウム箔や銅箔が使用される。
【0045】
抵抗体層44は、発熱体を構成するものであって、両電極42,43の隣り合う副電極部42B,43Bに跨った状態で絶縁シート41上の略全面にわたって形成されている。抵抗体層44は、例えば、次のインクを印刷し、高温焼成することにより形成されている。インクは、カーボン粒子等の導電粒子を絶縁性有機ポリマーに対し溶媒を用いて分散させたものである。抵抗体層44は、温度上昇により抵抗値が上昇するPTCと呼ばれる特性を有するものであってもよいし、同PTC特性を有しないものであってもよい。抵抗体層44がPTC特性を有する場合、通電当初は温度が低く抵抗体層44の抵抗値が小さい。このことから、抵抗体層44では大電流が流れて多くの熱が発生される。この抵抗体層44は、上記両電極42,43と同様、高い熱伝導性を有している。
【0046】
絶縁層45は、ポリエステルフィルム等の絶縁フィルムによって形成されており、可撓性を有している。この絶縁層45は、抵抗体層44を被覆することで同抵抗体層44を保護している。
【0047】
粘着層46は、ヒータ本体39の最内層を構成する部材であり、絶縁層45上に例えば略全面にわたって設けられている。粘着層46は絶縁性を有する粘着材によって形成されている。この粘着層46によって、ヒータ本体39が、カバー部材30の外表面31O,32Oに貼着されている(図6参照)。
【0048】
両端子47,48は、第1被覆部21の外部から発熱体(抵抗体層44)への電流の出入り口を構成するものであって、一方の端子47がプラス端子として機能し、他方の端子48がマイナス端子として機能する。これらの端子47,48は、スポーク部芯金19上であって、カバー部材30よりもボス部芯金18側へ離れた箇所に配置されている(図6参照)。この配置箇所は、第1被覆部21の形成に際し、後述する金型装置60のバリ切り部64,65よりも外側である(図13参照)。端子47,48は、パッド部15内に配置され、かつヒータエレメント40に供給される電力を制御する電子制御装置(図示略)に接続されている。
【0049】
各接続部51,52は、発熱体(抵抗体層44)と上記端子47,48とを繋ぐものであり、前記ヒータ本体39に一体形成されている。これらの接続部51,52は、上述したヒータ本体39と同様の積層構造を有している。すなわち、接続部51,52は、絶縁シート41、一対の電極42,43、抵抗体層44、絶縁層45及び粘着層46を備えている。ここでの電極は、上記ヒータ本体39における主電極部42A,43Aからボス部芯金18側(図9の右側)へ引き出された引出し電極部42C,43Cによって構成されている。一方の引出し電極部42Cは、主電極部42A及び端子47に接続されている。他方の引出し電極部43Cは、主電極部43A及び端子48に接続されている。なお、端子47,48の接続部51,52に対する固定は、例えばハトメによって行われる。このハトメを介して、端子47,48は、引出し電極部42C,43Cに対し、電気的に接続されている。
【0050】
接続部51,52は、その粘着層46において、カバー部材30(カバー分割体31)及びスポーク部芯金19に跨って貼着されている。
図6に示すように、リム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aでは、カバー部材30の全体、及びヒータエレメント40の多く(ヒータ本体39の全体及び接続部51,52の一部)が、第1被覆部21によって接触状態で被覆されている。第1被覆部21は、発泡ポリウレタン等の軟質(弾性)材料によって形成されている。この第1被覆部21により、リム部芯金17のうちのリム部側連結部17Aと、スポーク部芯金19のうちのスポーク部側連結部19Aとが間接的に被覆されている。第1被覆部21の外表面21Oは、目視できるような凹凸がなく滑らかな面によって構成されている。
【0051】
第1被覆部21は、3mm〜4mmの厚みとなるように形成されることが望ましい。これは、次の理由による。厚みが3mmよりも小さいと、運転者が少し強く握っただけで第1被覆部21の弾性変形代が無くなった状態(底付き状態)となり、触感が低下するおそれがある。これに加え、後述する成形材料が、金型装置60のキャビティ63において第1被覆部21を形成する箇所に充分供給されず、成形不良を起こすおそれもある。また、厚みが4mmよりも大きいと、ヒータエレメント40に通電を開始してから第1被覆部21が所定の温度まで昇温するのに時間がかかる。
【0052】
上記構成を有するステアリングホイール13の製造に際しては、図7及び図8の少なくとも一方に示すように、最初に、リム部14の周方向についてのリム部側連結部17Aの両端部に対し、支持分割体27を前方から嵌合するとともに、支持分割体26を後方から嵌合する。支持分割体27の分割面と、支持分割体26の分割面とを相互に接触させる。この接触により、リム部14の周方向についてのリム部側連結部17Aの両端部に、環状の支持部材25がそれぞれ形成される。
【0053】
続いて、各支持分割体27に対しカバー分割体32を前方から被せるとともに、各支持分割体26に対しカバー分割体31を後方から被せる。そして、カバー分割体32の被係合部32Aにカバー分割体31の係合部31Aを係合させる。この係合により、リム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aに対し、一対の支持部材25を介してカバー部材30が装着される。この際、一対の支持部材25は、リム部芯金17とカバー部材30との間に中空部35(図6参照)を形成する機能と、同カバー部材30をリム部芯金17に位置決めした状態で支持する機能とを発揮する。このため、両支持部材25を用いることで、カバー部材30が芯金のリム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aに対し、それらとの間に中空部35を形成する位置に位置決めされた状態で取付けられる。また、一対の支持部材25にカバー部材30が装着されると、その装着と同時に、芯金のリム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aとカバー部材30との間であって、両支持部材25によって挟まれた箇所に中空部35が形成される。
【0054】
さらに、図11に示すように、ヒータ本体39をカバー分割体31,32に沿うよう撓ませながら、その最内層の粘着層46(図10参照)においてカバー部材30の外表面31O,32Oに貼着する。また、これと略同時に、両接続部51,52をカバー分割体31及びスポーク部芯金19に沿うよう撓ませながら、その最内層の粘着層46において、カバー分割体31及びスポーク部芯金19に跨って貼着する。本実施形態のヒータ本体39及び両接続部51,52はいずれも可撓性を有するが、不織布等の支持体に線状ヒータ(電熱線)を縫着してなる面状発熱体(図15参照)74に比べ撓みにくい。そのため、上記面状発熱体74に比べ、皺が入らないように、ヒータ本体39及び両接続部51,52をカバー部材30やスポーク部芯金19の所定の箇所に貼着する作業が容易かつ的確に行える。そして、一旦貼着されたヒータ本体39及び両接続部51,52は、余程大きな力が加わらない限り、カバー部材30やスポーク部芯金19から剥がれたりずれたりすることがなく、当初の位置に保持される。
【0055】
なお、この段階でのステアリングホイール13を、ステアリング中間体13Aというものとする。
次に、上記ステアリング中間体13Aを、反応射出成形(RIM)用の金型装置60にセットする。この金型装置60は、図11及び図12の少なくとも一方に示すように、成形凹部61Aを有する固定型61と、成形凹部62Aを有し、かつ固定型61に対し接近及び離間する可動型62とを備えている。これらの成形凹部61A,62Aは、可動型62が固定型61に圧接させられた状態である型締め状態では、ステアリング中間体13A、より正確には、リム部芯金17の周りや、カバー部材30及びヒータエレメント40の周りに、軟質被覆部20(図6参照)を形成するための空間であるキャビティ63を構成する。
【0056】
固定型61及び可動型62のそれぞれには、金型装置60が型締めされた状態で、スポーク部芯金19及び同スポーク部芯金19上の接続部51,52に接触する箇所がある。スポーク部芯金19の該当する箇所は、平滑面となっている。固定型61の該当する箇所には、シリコーン等の弾性変形可能な軟質材料からなるバリ切り部64が取付けられている。可動型62の上記箇所にも、バリ切り部64と同様の材料からなるバリ切り部65が取付けられている。両バリ切り部64,65は、成形材料が、固定型61とスポーク部芯金19との隙間を通って、あるいは可動型62とスポーク部芯金19との隙間を通って、さらには可動型62と両接続部51,52との隙間を通って、金型装置60の外部へ漏出するのを規制するためのものである。金型装置60が型締めされた状態では、両バリ切り部64,65の間隔D(図12参照)は、スポーク部芯金19とその上の接続部51,52との厚みT2(図13参照)よりも若干(0.2mm程度)小さな値に設定されている。
【0057】
上記セットに際しては、金型装置60を型開きした状態(可動型62を固定型61から離間させた状態)で、固定型61の成形凹部61Aにステアリング中間体13Aをインサート部材として配置する。この配置により、スポーク部芯金19の前側の面がバリ切り部64に接触する。
【0058】
次に、図13及び図14の少なくとも一方に示すように、可動型62を固定型61に接近させる。このときには、バリ切り部65が可動型62と一体となって固定型61に接近する。金型装置60が型締めされた状態では、可動型62の一部が固定型61に圧接する。また、バリ切り部64が弾性変形しながらスポーク部芯金19の前側の面に圧接するとともに、バリ切り部65が弾性変形しながらスポーク部芯金19の後側の面と、ヒータエレメント40の両接続部51,52とにそれぞれ圧接する。この際、バリ切り部65の一部が両接続部51,52間の空間に入り込む。このようにバリ切り部65が弾性変形することで、接続部51,52の傷付きが抑制される。両接続部51,52は、厚みT1が非常に小さい(0.2mm〜0.3mm)ため、バリ切り部64,65との干渉度合いが、電線(導線を軟質樹脂等の絶縁材によって被覆したもの)96を用いた場合(図18参照)の干渉度合いよりも小さい。
【0059】
上記型締めにより、両成形凹部61A,62A間に、軟質被覆部20形成用の成形空間(キャビティ63)が形成される。この際、ヒータ本体39は、上述したようにカバー部材30の所定箇所に対し、貼着により保持されている。また、両接続部51,52は、カバー部材30及びスポーク部芯金19に対し、貼着により保持されている。従って、上記型締めの際に、ヒータ本体39や両接続部51,52がずれにくい。
【0060】
上記型締めがなされた状態では、端子47,48が両バリ切り部64,65よりも金型装置60の外側に位置する。また、両接続部51,52は、バリ切り部65及びスポーク部芯金19間を経由して発熱体(抵抗体層44)及び端子47,48を繋ぐ。
【0061】
続いて、キャビティ63に対し、所定の材料を混合注入してなる液状の成形材料を供給する。この際、バリ切り部64,65により、インサート部材(ステアリング中間体13A)と固定型61及び可動型62との接触部分を通じて成形材料が漏出する現象が規制される。
【0062】
ここで、接続部51,52は面状をなしており、図16及び図17に示す電線(導線を軟質樹脂等の絶縁材によって被覆したもの)96よりも厚みが薄く、接続部51,52の太さ(厚み)がバリ切り部64,65の弾性変形代を越えることはない。バリ切り部64,65が強い力で接続部51,52に押付けられなくても、成形材料の漏出が規制される。また、接続部51,52は、図14に示すように、バリ切り部65に対し面接触する。そのため、電線96がバリ切り部95に対し線接触する場合(図18参照)に比べ、同接続部51,52は広い面でバリ切り部65の荷重を受けることとなる。従って、接続部51,52に過大な荷重が加わりにくく、同接続部51,52が潰されて断線することが起こりにくい。
【0063】
そして、上記のように、キャビティ63に供給された成形材料が反応(発泡)することで、上記ステアリング中間体13Aのうち、主としてリム部芯金17に対応する箇所の周りに、図5及び図6に示す軟質被覆部20が成形される。より詳しくは、リム部芯金17についてリム部側連結部17Aからリム部14の周方向に離れた部分では、そのリム部芯金17に接触した状態で第2被覆部22が成形される(図5参照)。また、芯金のリム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aでは、カバー部材30の全体、ヒータ本体39の全体、及び各接続部51,52の一部に接触した状態で第1被覆部21が成形される(図6参照)。第1被覆部21は、カバー部材30によって覆われたリム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aに対しては、これに接触した状態では成形されない。
【0064】
ここで、一対のカバー分割体31,32を相互に係合させてなるカバー部材30では、リム部14の周方向についての両端部に開口30Aを有している(図4参照)。これらの開口30Aが、仮に何ら塞がれていないとすると、上記液体状態又はゲル状態の成形材料がこれらの開口30Aを通ってカバー部材30内に流入するおそれがある。
【0065】
しかし、本実施形態では、リム部14の周方向について、リム部側連結部17Aの両端部と、カバー部材30の両端部との間に支持部材25が介在されていて、上記開口30Aが塞がれている(図7参照)。しかも、支持部材25はゴム、シリコーン等によって形成されていて、リム部側連結部17Aの外表面にも、カバー部材30の内表面31I,32Iにも密着している。また、各カバー分割体31,32の端面31E,32Eがスポーク部芯金19に密着していて、カバー部材30のボス部芯金18側の開口30Bがスポーク部芯金19によって塞がれている(図6参照)。そのため、上記成形材料が、開口30A,30Bを通ってカバー部材30内に流入することが、両支持部材25等によって遮断される。この遮断により、リム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aとカバー部材30の内表面31I,32Iとの間に中空部35が確実に形成される。
【0066】
また、粘着層46においてカバー部材30の外表面31O,32Oに貼着されているヒータ本体39及び接続部51,52では、カバー部材30とヒータ本体39との間、カバー部材30と接続部51,52との間に成形材料が進入しにくい。その成形材料の進入が原因で、ヒータ本体39及び接続部51,52がカバー部材30から剥がれたり、ずれたりすることが起こりにくい。
【0067】
ヒータエレメント40の周りに軟質被覆部20を設けてなる本実施形態のステアリングホイール13の製造コストは、面状発熱体74の周りに表皮75を巻付けてなる従来のステアリングホイール70(図15参照)の製造コストよりも低くなる。軟質被覆部20の射出成形は、表皮75を巻付ける作業に比べ、コストがかからないからである。
【0068】
上記のように軟質被覆部20が形成された後に、型開きされた金型装置60から取り出されたステアリングホイール13では、接続部51,52が、電力供給や信号通信を行う機能を担う。そのため、冬期等において外気温が低い状況下で車両の運転が開始された場合に、ヒータエレメント40の端子47,48及び接続部51,52を通じて発熱体(抵抗体層44)に電流が流されると、その発熱体(抵抗体層44)が発熱する。
【0069】
すなわち、図9及び図10の少なくとも一方に示すように、端子47,48を通じて一対の電極42,43に通電されると、隣り合う副電極部42B,43Bに跨った状態で絶縁シート41上に形成されている抵抗体層44において、図10の矢印で示すように、副電極部42Bから副電極部43Bに向けて電流が流れる。これに伴い、両副電極部42B,43B間の抵抗体層44が発熱する。抵抗体層44も副電極部42B,43Bも熱伝導性がよいため、面方向に広い箇所が昇温する。
【0070】
抵抗体層44から発せられた熱は、カバー部材30及びヒータエレメント40を接触状態で覆う第1被覆部21に伝達される。この伝達により第1被覆部21が、ヒータ本体39とのどの接触箇所でも略均一に昇温させられ、リム部14が早期に運転者の握りやすい適温になる。
【0071】
また、本実施形態では、カバー部材30とリム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aとの間の中空部35が断熱層として機能する。そのため、ヒータエレメント40の発熱体(抵抗体層44)の発した熱は、カバー部材30を通じて、熱伝導率の高いリム部芯金17に伝わりにくい。その結果、発熱体(抵抗体層44)の発した熱のより多くが第1被覆部21に伝えられ、同第1被覆部21が効率よく昇温される。
【0072】
ところで、図6に示すように、ヒータエレメント40を接触状態で覆う第1被覆部21の外表面21Oは、リム部14ひいてはステアリングホイール13の意匠面の一部を構成する。この意匠面に仮にヒータエレメント40の外表面41O(図10参照)の形状が浮き出ていると、外観品質を損なう。しかし、本実施形態では、第1被覆部21は、ヒータエレメント40の周りに反応射出成形により所望形状に形成されている。そのため、面状発熱体74の周りに表皮75を巻付ける従来技術(図15参照)とは異なり、第1被覆部21の外表面21Oにヒータエレメント40の外表面41Oの形状が浮き出にくく、ヒータエレメント40に起因する外観品質の低下が抑制される。
【0073】
また、第1被覆部21が軟質材料である発泡ポリウレタンによって形成されていることや、ヒータエレメント40が可撓性シート体からなることも、第1被覆部21の外表面21Oにヒータエレメント40の外表面41Oの形状を浮き出にくくさせている。すなわち、第1被覆部21は、仮にヒータエレメント40の外表面41Oに目立つ凹凸があったとしても、自身の内表面側部分のみがヒータエレメント40の外表面41Oの形状に沿って形成されることで、上記凹凸を吸収し、同外表面41Oの形状を自身の外表面21Oに浮き出にくくさせる。また、そもそもヒータエレメント40の絶縁シート41の外表面41O(図10参照)が平滑であることから、第1被覆部21の外表面21Oには、ヒータエレメント40が原因となる目立つ凹凸が生じにくい。
【0074】
また、面状発熱体74の周りに表皮75が巻き付けられた従来のステアリングホイール(図15参照)70では、表皮75のうち、線状ヒータ(電熱線)を覆う箇所が局所的に加熱されて収縮する。この収縮が、長年の使用により繰り返されることで皺となって目立つようになり、外観品質が低下する。
【0075】
しかし、本実施形態では、上述したように、熱伝導率の良好な抵抗体層44が面方向に広い箇所で発熱するため、ヒータエレメント40を覆う第1被覆部21が局部的に加熱されて収縮する現象が起こりにくい。
【0076】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)ヒータエレメント40として、外部からの電流の出入り口を構成し、かつ第1被覆部21の形成に際し、バリ切り部64,65の外側に位置する端子47,48と、バリ切り部65及びスポーク部芯金19間を経由して発熱体(抵抗体層44)及び端子47,48を繋ぐ面状の接続部51,52とを備えるものを採用している(図13)。そのため、金型装置60に手を加えずに、バリ切り部65及びスポーク部芯金19間の構成部品である接続部51,52の断線を抑制することができる。
【0077】
(2)ヒータエレメント40として、絶縁シート41と、主電極部42A,43A及び副電極部42B,43Bからなる一対の電極42,43と、抵抗体層44とを積層したものを用いている(図6及び図10)。そのため、ヒータエレメント40を覆う第1被覆部21が局部的に加熱されて収縮して外観品質が低下するのを抑制することができる。
【0078】
(3)ヒータエレメント40として、接続部51,52がヒータ本体39に一体形成されているものを用いている(図9)。そのため、発熱体(抵抗体層44)と端子47,48とを繋ぐものを別途用意しなくてもよいし、また、接続部51,52を発熱体(抵抗体層44)に結線する作業をしなくてもすむ。
【0079】
(4)ヒータエレメント40におけるヒータ本体39及び両接続部51,52の最内層を粘着層46によって構成している。第1被覆部21の反応射出成形に先立ち、ヒータ本体39を、粘着層46においてカバー部材30の外表面31O,32Oに貼着している。また、第1被覆部21の反応射出成形に先立ち、両接続部51,52を、粘着層46においてカバー部材30の外表面31O及びスポーク部芯金19に跨った状態で貼着している(図10、図11)。そのため、反応射出成形に際し、ステアリング中間体13Aを金型装置60に配置することで、ヒータ本体39及び接続部51,52をキャビティ63の所定箇所に位置決めした状態でセットすることができる。金型装置60にステアリング中間体13Aをセットするときに、ヒータ本体39及び接続部51,52の位置決め作業を別途行わなくてもすむ。金型装置60に成形材料を供給する前の準備作業(主として、ステアリング中間体13Aの金型装置60へのセット)が容易となる。
【0080】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・カバー部材30においてヒータエレメント40のヒータ本体39に対応する箇所を、急激に変化することがなくなだらかに変化する形状に変更してもよい。この変更により、ヒータ本体39をカバー部材30に沿わせて撓ませ、貼着する作業がしやすくなる。
【0081】
・バリ切り部64,65よりも金型装置60の外側に位置することを条件に、端子47,48を前記実施形態とは異なる箇所、例えば、前記実施形態よりもボス部芯金18寄りの箇所に設けたり、ボス部芯金18の近傍に設けたりしてもよい。
【0082】
・カバー部材30は、リム部14の周方向についてのリム部芯金17の少なくとも一部の周りに設けられればよい。従って、カバー部材30は、前記実施形態よりもリム部14の周方向に長いものであってもよいし、短いものであってもよい。
【0083】
・軟質被覆部20の少なくとも第1被覆部21は、前記実施形態とは異なる軟質樹脂を用いて射出成形されたものであってもよいし、PP(ポリプロピレン)等の硬質樹脂を用いて射出成形されたものであってもよい。
【0084】
・中空部35は、芯金のリム部側連結部17A及びスポーク部側連結部19Aのうち、発熱体(抵抗体層44)によって囲まれた箇所であるリム部側連結部17Aの周りにのみに設けられてもよい。
【0085】
・金型装置60に手を加えることなく、バリ切り部64,65によって接続部51,52に過大な荷重が加わるのを抑制しつつ、第1被覆部21を形成するといった目的を達成する観点からは中空部35は必須ではなく、従って、この中空部35を適宜割愛することも可能である。
【0086】
・前記実施形態では、リム部芯金17とカバー部材30とを別々に形成し、その後にカバー部材30をリム部芯金17に取付ける構成としたが、リム部芯金17をインサート部材とし、そのリム部芯金17上にカバー部材30を成形してもよい。ただし、この場合には、中空部35の形成が困難である。そのため、上記の変更は、中空部35を割愛するような場合に適用される。
【0087】
・ヒータエレメント40における粘着層46を割愛し、他の手段、例えば接着剤を用いた接着、ねじを用いた締結等によってヒータエレメント40をカバー部材30に取付けるようにしてもよい。カバー部材30に係止部を設け、ここにヒータエレメント40の周縁部を係入することによっても、カバー部材30に対するヒータエレメント40の取付けは可能である。
【0088】
・支持部材25を用いることなくカバー部材30をリム部芯金17に固定してもよい。その場合の固定手段としては、例えば、ねじを用いた締結が挙げられる。
・本発明は、車両に限らず、航空機、船舶等の他の乗り物における操舵装置のステアリングホイールに適用することもできる。この場合、車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
【符号の説明】
【0089】
13…ステアリングホイール、13A…ステアリング中間体、17…リム部芯金、17A…リム部側連結部(連結部)、19…スポーク部芯金、19A…スポーク部側連結部(連結部)、21…第1被覆部(被覆部)、30…カバー部材、31O,32O…カバー分割体の外表面(カバー部材の外表面)、39…ヒータ本体、40…ヒータエレメント、41…絶縁シート、42,43…電極、42A,43A…主電極部、42B,43B…副電極部、42C,43C…引出し電極部、44…抵抗体層(発熱体)、46…粘着層、47,48…端子、51,52…接続部、60…金型装置、61…固定型、62…可動型、63…キャビティ、64,65…バリ切り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部を通じて相互に連結されたリム部芯金及びスポーク部芯金を有する芯金と、前記芯金のうち、少なくとも前記連結部の周りに配置されたカバー部材と、前記カバー部材上に配置され、かつ通電により発熱する面状の発熱体を有するヒータエレメントとを少なくとも構成部材とするステアリング中間体を形成し、前記ステアリング中間体の少なくとも前記カバー部材及び前記発熱体を、金型装置の固定型と可動型との間に形成されるキャビティ内に配置し、前記固定型及び前記可動型にそれぞれ設けたバリ切り部を前記スポーク部芯金に圧接させた状態で、同キャビティ内に成形材料を供給することにより、同成形材料の漏出を前記バリ切り部で規制しつつ、前記カバー部材及び前記発熱体の周りに樹脂の被覆部を形成してなるステアリングホイールであって、
前記ヒータエレメントは、外部からの電流の出入り口を構成し、かつ前記被覆部の形成に際し、前記バリ切り部よりも前記金型装置の外側に位置する端子と、前記バリ切り部及び前記スポーク部芯金間を経由して前記発熱体及び前記端子を繋ぐ面状の接続部とをさらに備えることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記ヒータエレメントは、絶縁シートと、それぞれが主電極部、及び同主電極部から櫛歯状に突出された多数の副電極部からなり、かつ互いの前記副電極部が交互に位置するように前記絶縁シート上に形成された一対の電極と、前記両電極の隣り合う前記副電極部に跨った状態で前記絶縁シート上に形成され、かつ前記発熱体を構成する抵抗体層とを備え、
前記接続部は、前記主電極部及び前記端子を接続する引出し電極部を備える請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記発熱体は面状のヒータ本体の一部を構成するものであり、前記接続部は前記ヒータ本体に一体形成されている請求項1又は2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記ヒータエレメントの前記接続部は、自身の最内層に粘着層を有しており、前記金型装置による前記被覆部の成形に先立ち、同粘着層において少なくとも前記スポーク部芯金に貼着されるものである請求項1〜3のいずれか1つに記載のステアリングホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−73546(P2011−73546A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226280(P2009−226280)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】