説明

ステアリング装置

【課題】構造が簡単で軽量であり、二次衝突時の衝撃エネルギーの吸収を円滑に行うとともに、二次衝突後のステアリングホイールの操作を可能にする。
【解決手段】上部車体取付けブラケット21がコラプス移動距離L1だけ移動して、車体前方側のコラプス移動端に達するまで、車体前方側延長部243、243に沿って、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが案内される。そのため、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aは、カプセル24、24から脱落することなく、コラプス移動端までコラプス移動することができる。従って、軽量で、構造が簡単なため、製造コストの上昇が抑えられ、衝突時の衝撃エネルギーを円滑に吸収し、二次衝突後においても、ステアリングホイール101の操作が可能となるため、車を操縦して、安全な場所に退避する等の運転操作を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング装置、特に、二次衝突時に、コラムがステアリングシャフトと共に、車体から車体前方側にコラプス移動して衝撃荷重を吸収するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のステアリング装置では、カプセルと車体取付けブラケットのフランジ部が、合成樹脂の剪断ピンで連結され、衝突時の衝撃で剪断ピンが剪断して、コラムが車体取付けブラケットのフランジ部と共に車体前方側に移動してカプセルから離脱し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収して、運転者の安全を確保するようにしている。
【0003】
このようなカプセルを備えたステアリング装置では、二次衝突時にコラムが車体取付けブラケットのフランジ部と共に車体前方側に移動すると、カプセルは車体側に残り、フランジ部がカプセルから離脱する。その結果、コラム及びステアリングホイールが車体から離れて車体下方側に脱落する。そのため、カプセルから離脱後のコラムの円滑なコラプス移動が損なわれて、衝突時の衝撃エネルギーの吸収が不十分になる恐れがある。また、ステアリングホイールが車体下方側に脱落するため、二次衝突後のステアリングホイールの操作が出来なくなる。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されたステアリング装置は、二次衝突時に、車体に固定された固定ブラケットに案内されて、コラプス移動ストロークの全長にわたって、コラムが車体前方側にコラプス移動するようにしている。従って、コラムが車体下方側に脱落することなく、円滑にコラプス移動し、衝突時の衝撃エネルギーを円滑に吸収して、運転者の安全を確保するようにしている。しかし、特許文献1及び特許文献2に開示されたステアリング装置は、コラムをコラプス移動ストロークの全長にわたって案内する固定ブラケットが大型化して構造が複雑になるため、固定ブラケットの重量が大きくなり、製造コストが上昇してしまう。
【0005】
特許文献3に開示されたステアリング装置は、スライディングプレートにボルトで固定された板状のエネルギー吸収体が車体前方側に延びて形成され、二次衝突時に、コラムが車体前方側にコラプス移動する時に、エネルギー吸収体を塑性変形させて、衝撃エネルギーを吸収している。しかし、特許文献3に開示されたステアリング装置のエネルギー吸収体は、スライディングプレートから離脱後のコラムの円滑なコラプス移動を案内する機能は無く、衝突時の衝撃エネルギーの吸収が不十分になる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−280654号公報
【特許文献2】特表2007−504985号公報
【特許文献3】特許第3254640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、構造が簡単で軽量であり、二次衝突時の衝撃エネルギーの吸収を円滑に行うとともに、二次衝突後のステアリングホイールの操作を可能にしたステアリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、車体後方側にステアリングホイールを装着可能なステアリングシャフト、上記ステアリングシャフトを回転可能に軸支するコラムに取付けられた車体取付けブラケット、上記車体取付けブラケットのフランジ部を挟持する上下一対の上側挟持板と下側挟持板を有し、車体に固定可能な左右一対のカプセル、上記上側挟持板と下側挟持板を連結し、上側挟持板と下側挟持板の車幅方向の寸法よりも車幅方向の寸法が小さい側面を有する連結部、車体前方側への所定の衝撃力で上記カプセルから離脱可能に、上記フランジ部をカプセルに連結する連結手段、上記カプセルの上側挟持板と下側挟持板との両方に形成され、上記フランジ部の車体前方側端面よりも車体前方側に、コラプス移動距離よりも長く延びた車体前方側延長部であって、上記フランジ部を上面と下面でコラプス移動端まで案内するそれぞれの車体前方側延長部、および、上記車体前方側延長部の両方を車体前方側端面において固定し、車体前方側延長部の剛性を大きくするエンドブラケットを備えたステアリング装置であって、上記下側挟持板の車体前方側延長部の上面または上側挟持板の車体前方側延長部の下面には凹凸部が形成され、上記フランジ部が車体前方側にコラプス移動する時に、この凹凸部が上記フランジ部に接触して塑性変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収することを特徴とするステアリング装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のステアリング装置は、車体取付けブラケットのフランジ部を挟持する上下一対の上側挟持板と下側挟持板を有するカプセルに、フランジ部の車体前方側端面よりも車体前方側に、コラプス移動距離よりも長く延びる車体前方側延長部を備え、この車体前方側延長部が、フランジ部をコラプス移動端まで案内する。
【0010】
従って、構造が簡単で軽量かつ安価であり、車体取付けブラケットはカプセルから脱落することなく、コラプス移動距離だけ、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができ、衝突時の衝撃エネルギーを円滑に吸収し、運転者の安全を確実に確保することができる。また、車体取付けブラケットがカプセルから脱落しないため、二次衝突後においても、ステアリングホイールの操作が可能となるため、車を操縦して、安全な場所に退避する等の運転操作を行うことができる。
【0011】
また、カプセルの下側挟持板と上側挟持板の両方を車体前方側に延長して車体前方側延長部を形成すれば、車体前方側延長部の剛性が大きくなり、車体取付けブラケットはコラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができるため、衝突時の衝撃エネルギーの吸収がより円滑になる。
【0012】
また、車体前方側延長部に凹凸部を形成すれば、この凹凸部がフランジ部に接触して塑性変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。従って、車体前方側延長部が衝撃エネルギー吸収機構を兼用することができ、衝撃エネルギー吸収機構の設置スペースを節約することができる。
【0013】
また、下側挟持板の車体前方側延長部の上面または上側挟持板の車体前方側延長部の下面に、上面と下面との間の間隔が、フランジ部の車体前方側端面から車体前方側に向かって狭くなるように傾斜した傾斜面を形成すれば、この傾斜面がフランジ部に接触して塑性変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。従って、車体前方側延長部が衝撃エネルギー吸収機構を兼用することができ、衝撃エネルギー吸収機構の設置スペースを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1のステアリング装置の全体斜視図である。
【図2】(1)は本発明の実施例1のステアリング装置の要部を車体上方側から見た斜視図、(2)はカプセル単体の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1のステアリング装置の要部の正面図である。
【図4】図3のP矢視図である。
【図5】図3のQ矢視図である。
【図6】図3のA−A断面図である。
【図7】二次衝突してコラムが車体前方側のコラプス移動端までコラプス移動した状態を示す図5相当図である。
【図8】本発明の実施例2のステアリング装置の要部を示す図2(1)相当図である。
【図9】本発明の実施例2のステアリング装置の上部車体取付けブラケット近傍を示す正面図である。
【図10】本発明の実施例3のステアリング装置の要部を示す図2(1)相当図である。
【図11】本発明の実施例3のステアリング装置の上部車体取付けブラケット近傍を示す正面図である。
【図12】本発明の実施例4のステアリング装置の要部を示す図2(1)相当図である。
【図13】本発明の実施例4のステアリング装置の上部車体取付けブラケット近傍を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施例では、ステアリングホイールのチルト位置とテレスコピック位置の両方の調整を行うチルト・テレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用した例について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1のステアリング装置の全体斜視図であり、コラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置である。図1に示すコラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置は、ステアリングホイール101の操作力を軽減するために、コラム105に取付けた電動アシスト機構102の操舵補助力をステアリングシャフトに付与し、中間シャフト106を介して、ラックピニオン式のステアリングギヤ103のラックを往復移動させ、タイロッド104を介して舵輪を操舵する方式のパワーステアリング装置である。
【0017】
図2(1)は本発明の実施例1のステアリング装置の要部を車体上方側から見た斜視図、図2(2)はカプセル単体の斜視図である。図3は本発明の実施例1のステアリング装置の要部の正面図である。図4は図3のP矢視図である。図5は図3のQ矢視図である。図6は図3のA−A断面図である。図7は二次衝突してコラムが車体前方側のコラプス移動端までコラプス移動した状態を示す図5相当図である。
【0018】
図2から図7に示すように、コラム105は、アウターコラム42と、アウターコラム42の車体前方側(図3の左側)のインナーコラム46で構成され、車体後方側にステアリングホイール101が装着されたステアリングシャフト41が、円筒状のアウターコラム42に回転可能に軸支されている。アウターコラム42は、上部車体取付けブラケット(車体取付けブラケット)21のチルト調整用長溝26、26に案内されて、チルト調整可能である。チルト調整用長溝26、26は、上部車体取付けブラケット21の側板21b、21bに形成されている。
【0019】
アウターコラム42の車体前方側(図3の左側)には、インナーコラム46が軸方向にテレスコピック移動可能に内嵌し、インナーコラム46の車体前方側には、電動アシスト機構(電動パワーステアリング)102が取付けられている。この電動アシスト機構102は、車体11に固定された下部車体取付けブラケット44に、チルト中心軸45を中心としてチルト可能に軸支されている。
【0020】
また、アウターコラム42の下面には、アウターコラム42の内周面(図6参照)421に貫通するスリット422が形成されている。さらに、アウターコラム42は、長軸方向がアウターコラム42の軸心に平行(図6の紙面に直交する方向)に延在するように形成されたテレスコピック調整用長溝423、423を備えている。
【0021】
チルト調整用長溝26、26、及び、テレスコピック調整用長溝423、423には、、図6の左側から締付けロッド51が挿通されている。この締付けロッド51の左側(図6の左側)の外周には、固定カム52、可動カム53、操作レバー54がこの順で外嵌されている。この締付けロッド51の右端(図6の右側)には、調整ナット55が外嵌され、調整ナット55の内径部に形成された雌ねじが、締付けロッド51の右端に形成された雄ねじ56にねじ込まれて、調整ナット55の左端面が右側の側板21bの外側面に当接している。
【0022】
可動カム53の左端面に操作レバー54が固定され、この操作レバー54によって一体的に操作される可動カム53と固定カム52によって、カムロック機構が構成されている。
【0023】
操作レバー54の揺動操作で、上部車体取付けブラケット21の側板21b、21bで、アウターコラム42の側面を締付ける。この締付け操作によって、アウターコラム42を上部車体取付けブラケット21にクランプ/アンクランプし、アンクランプ時にアウターコラム42のチルト位置の調整を行う。また、この締付け操作によって、アウターコラム42の内周面421が縮径して、アウターコラム42をインナーコラム46の外周面にクランプ/アンクランプし、アンクランプ時にアウターコラム42のテレスコピック位置の調整を行う。
【0024】
電動アシスト機構102の車体前方側の出力軸(図3参照)43は、中間シャフト106を介して、ステアリングギヤ103のラック軸に噛み合うピニオンに連結されて、ステアリングホイール101の回転操作を操舵装置に伝達している。
【0025】
上部車体取付けブラケット21は車体11に固定される。車体11と上部車体取付けブラケット21との取付け構造は、上部車体取付けブラケット21の上部のフランジ部21a、フランジ部21aに形成された左右一対の二個の切欠き溝(図7参照)23、23、切欠き溝23、23の左右両側縁部に嵌め込まれたカプセル24、24から構成され、アウターコラム42の軸心に対して、車幅方向(図4、図5の上下方向)に対称な構造を有している。フランジ部21aの車体前方側端面211には、車幅方向の全幅にわたって、車体下方側にL字形に折り曲げた折り曲げ部21cが形成されて、上部車体取付けブラケット21の剛性を大きくしている。
【0026】
上部車体取付けブラケット21及びアウターコラム42は、金属等の導電性材料で構成されており、切欠き溝23、23は、フランジ部21aの車体後方側に開口している。切欠き溝23、23には、金属(アルミニウム、亜鉛合金ダイカスト等の軽合金)等の導電性材料で構成されたカプセル24、24が嵌め込まれ、カプセル24、24は、各々4本の剪断ピン(連結手段)24cによって、フランジ部21aに結合されている。また、カプセル24、24は、カプセル24に形成された長溝状のボルト孔24dに挿通したボルト25、及び、ナット(図6参照)27によって、車体11に固定されている。
【0027】
二次衝突時の衝撃で運転者がステアリングホイール101に衝突し、車体前方側に強い衝撃力が加わると、剪断ピン24cが剪断し、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aがカプセル24から離脱して、車体前方側(図3、4、5の左側)にコラプス移動する。すると、アウターコラム42がインナーコラム46に沿って車体前方側にコラプス移動し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。図3に示すコラプス移動距離L1だけアウターコラム42がコラプス移動すると、アウターコラム42の車体前方側端面424が、電動アシスト機構102の車体後方側端面102aに当接して、コラプス移動が終了する。
【0028】
図2(2)及び図6に示すように、カプセル24には、上側挟持板24aと下側挟持板24bが形成され、上側挟持板24aと下側挟持板24bとの間にフランジ部21aが挿入されて、切欠き溝23、23の左右両側縁部を、上側挟持板24aと下側挟持板24bが挟持する。
【0029】
カプセル24には、上側挟持板24aと下側挟持板24bとを連結する連結部24eが形成されている。連結部24eの車幅方向の両側面が、切欠き溝23の車幅方向の両側面に挟み込まれている。上側挟持板24aと下側挟持板24bの車幅方向の寸法よりも、連結部24eの車幅方向の寸法は小さく形成されている。連結部24eの車幅方向の外側面241は、車体後方側(図5の右方)がアウターコラム42の軸心に平行で、車体前方側(図5の左方)がアウターコラム42の軸心に接近する方向に傾斜した傾斜面に形成されている。
【0030】
また、連結部24eの車幅方向の内側面242は、車体後方側(図5の右方)がアウターコラム42の軸心に平行で、車体前方側(図5の左方)がアウターコラム42の軸心から離反する方向に傾斜した傾斜面に形成されている。すなわち、連結部24eの車幅方向の寸法は、車体前方側(図5の左方)の幅が最も狭く、車体後方側(図5の右方)に向かって幅が徐々に広くなり、その後、一定の幅に形成されている。
【0031】
フランジ部21aには、連結部24e、24eの車幅方向の外側面241、241の形状に沿って、切欠き溝23、23の車幅方向の外側面231、231が形成されている。
また、フランジ部21aには、連結部24e、24eの車幅方向の内側面242、242の形状に沿って、切欠き溝23、23の車幅方向の内側面232、232が形成されている。
【0032】
そのため、上部車体取付けブラケット21のコラプス移動時には、切欠き溝23、23の車幅方向の外側面231、231、車幅方向の内側面232、232は、連結部24e、24eの車幅方向の外側面241、241、車幅方向の内側面242、242から離脱して、車体前方側に移動する。
【0033】
図2から図5に示すように、カプセル24、24には、下側挟持板24bに、フランジ部21aの車体前方側端面211よりも車体前方側に長く伸びる車体前方側延長部243、243が形成されている。車体前方側延長部243は、アウターコラム42の軸心に平行で、フランジ部21aの車体前方側端面211よりも車体前方側に、長さL2だけ突出して形成されている。車体前方側延長部243の長さL2は、図3のコラプス移動距離L1よりも若干長く形成されている。
【0034】
図6に示すように、フランジ部21aの車体前方側端面211の折り曲げ部21cには、車体前方側延長部243が挿通可能な矩形の切欠き孔21dが形成され、この欠き孔21dを通して、車体前方側端面211から車体前方側延長部243が車体前方側に突出している。
【0035】
従って、上部車体取付けブラケット21がコラプス移動距離L1だけ移動して、車体前方側のコラプス移動端に達するまで、車体前方側延長部243、243に沿って、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが案内される。そのため、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aは、カプセル24、24から脱落することなく、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができる。
【0036】
二次衝突時の衝撃で運転者がステアリングホイール101に衝突し、車体前方側に強い衝撃力が加わると、上部車体取付けブラケット21が車体前方側にコラプス移動して、剪断ピン24cが剪断する。剪断ピン24cが剪断すると、カプセル24は車体11側に残り、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが車体前方側にコラプス移動する。
【0037】
すると、図7に示すように、フランジ部21aの車幅方向の外側面231、231及び車幅方向の内側面232、232は、連結部24e、24eの車幅方向の外側面241、241及び車幅方向の内側面242、242から離脱する。しかし、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aは、車体前方側延長部243、243に沿って、車体前方側のコラプス移動端に達するまで案内される。車体前方側延長部243、243は、構造が簡単で軽量なため、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0038】
そのため、上部車体取付けブラケット21はカプセル24、24から脱落することなく、コラプス移動距離L1だけ、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができる。従って、図示しない衝撃エネルギー吸収部材が塑性変形して、衝突時の衝撃エネルギーを円滑に吸収し、運転者の安全を確実に確保することができる。また、上部車体取付けブラケット21がカプセル24、24から脱落しないため、二次衝突後においても、ステアリングホイール101の操作が可能となるため、車を操縦して、安全な場所に退避する等の運転操作を行うことができる。
【実施例2】
【0039】
次に本発明の実施例2について説明する。図8は本発明の実施例2のステアリング装置の要部を示す図2(1)相当図である。図9は本発明の実施例2のステアリング装置の上部車体取付けブラケット近傍を示す正面図である。以下の説明では、上記実施例1と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0040】
実施例2は、上側挟持板24aと下側挟持板24bの両方に、車体前方側に長く伸びる車体前方側延長部を形成して、車体前方側延長部の剛性を大きくした例である。
【0041】
すなわち、図8、図9に示すように、実施例2では、実施例1と同様に、カプセル24には、下側挟持板24bに、フランジ部21aの車体前方側端面211よりも車体前方側に長く伸びる車体前方側延長部243が形成されている。同様に、上側挟持板24aにも、フランジ部21aの車体前方側端面211よりも車体前方側に長く伸びる車体前方側延長部244が形成されている。
【0042】
車体前方側延長部243、244は、アウターコラム42の軸心に平行で、フランジ部21aの車体前方側端面211よりも車体前方側に、同一長さL2だけ突出して形成されている。車体前方側延長部243、244の長さL2は、図9のコラプス移動距離L1よりも若干長く形成されている。
【0043】
図9に示すように、フランジ部21aの車体前方側端面211の折り曲げ部21cには、実施例1と同様に、下側挟持板24bの車体前方側延長部243が挿通可能な矩形の切欠き孔21dが形成され、この欠き孔21dを通して、車体前方側端面211から車体前方側延長部243が車体前方側に突出している。このようにして、カプセル24をフランジ部21aに組み付けた後、車体前方側延長部243、244の車体前方側端面に、エンドブラケット245を固定し、車体前方側延長部243、244の剛性を大きくしている。車体前方側延長部243、244は、構造が簡単で軽量なため、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0044】
従って、上部車体取付けブラケット21がコラプス移動距離L1だけ移動して、車体前方側のコラプス移動端に達するまで、車体前方側延長部243、244に挟持されて、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが案内される。そのため、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aは、カプセル24、24から脱落することなく、コラプス移動端までコラプス移動することができる。
【0045】
実施例2では、剛性の大きな車体前方側延長部243、244が、フランジ部21aの上面と下面の両方を案内して、フランジ部21aが車体前方側にコラプス移動する。従って、アウターコラム42の軸心に対して傾斜した衝撃荷重が作用しても、上部車体取付けブラケット21はカプセル24、24から脱落しにくくなり、コラプス移動距離L1だけ、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができる。従って、上部車体取付けブラケット21がカプセル24、24から脱落せず、二次衝突後においても、ステアリングホイール101の操作が可能となるため、車を操縦して、安全な場所に退避する等の運転操作を行うことができる。
【実施例3】
【0046】
次に本発明の実施例3について説明する。図10は本発明の実施例3のステアリング装置の要部を示す図2(1)相当図である。図11は本発明の実施例3のステアリング装置の上部車体取付けブラケット近傍を示す正面図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0047】
実施例3は、車体前方側延長部に凹凸部を形成し、この凹凸部によって、衝突時の衝撃エネルギーを吸収するようにした例である。すなわち、図10、図11に示すように、実施例3では、実施例2と同様に、アウターコラム42の軸心に平行で、フランジ部21aの車体前方側端面211より車体前方側に長く伸びる車体前方側延長部243、244が形成されている。車体前方側延長部243、244の長さL2は、実施例2と同様に、コラプス移動距離L1よりも若干長く形成されている。また、車体前方側延長部243、244の車体前方側端面には、エンドブラケット245を固定し、車体前方側延長部243、244の剛性を大きくしている。
【0048】
車体前方側延長部243、243の上面には、車体前方側延長部243、243の車体前方端まで、凹凸部243a、243aが形成されている。従って、上部車体取付けブラケット21がコラプス移動距離L1だけ移動して、車体前方側のコラプス移動端に達するまで、車体前方側延長部243、244に挟持されて、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが案内される。
【0049】
実施例3では、実施例2と同様に、剛性の大きな車体前方側延長部243、244が、フランジ部21aの上面と下面の両方を案内して、フランジ部21aが車体前方側にコラプス移動する。従って、アウターコラム42の軸心に対して傾斜した衝撃荷重が作用しても、上部車体取付けブラケット21はカプセル24、24から脱落しにくくなり、コラプス移動距離L1だけ、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができる。
【0050】
また、凹凸部243a、243aが、フランジ部21aの下面との接触によって塑性変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。従って、車体前方側延長部243、243が衝撃エネルギー吸収機構を兼用することができるため、衝撃エネルギー吸収機構の設置スペースを節約することができる。
【0051】
実施例3では、車体前方側延長部243、243の上面に凹凸部243a、243aを形成しているが、車体前方側延長部244、244の下面に凹凸部を形成してもよい。
【実施例4】
【0052】
次に本発明の実施例4について説明する。図12は本発明の実施例4のステアリング装置の要部を示す図2(1)相当図である。図13は本発明の実施例4のステアリング装置の上部車体取付けブラケット近傍を示す正面図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0053】
実施例4は、車体前方側延長部に傾斜面を形成し、この傾斜面によって、衝突時の衝撃エネルギーを吸収するようにした例である。すなわち、図12、図13に示すように、実施例4では、実施例2と同様に、アウターコラム42の軸心に平行で、フランジ部21aの車体前方側端面211より車体前方側に長く伸びる車体前方側延長部243、244が形成されている。車体前方側延長部243、244の長さL2は、実施例2と同様に、コラプス移動距離L1よりも若干長く形成されている。また、車体前方側延長部243、244の車体前方側端面には、エンドブラケット245を固定し、車体前方側延長部243、244の剛性を大きくしている。
【0054】
車体前方側延長部243、243の上面には、車体前方側延長部243、243の車体前方端まで、傾斜面243b、243bが形成されている。傾斜面243b、243bは、車体前方側延長部243、243の上面と車体前方側延長部244、244の下面との間の間隔が、フランジ部21aの車体前方側端面211から車体前方側に向かって狭くなるように傾斜して形成されている。従って、上部車体取付けブラケット21がコラプス移動距離L1だけ移動して、車体前方側のコラプス移動端に達するまで、車体前方側延長部243、244に挟持されて、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが案内される。
【0055】
実施例4では、実施例2と同様に、剛性の大きな車体前方側延長部243、244が、フランジ部21aの上面と下面の両方を案内して、フランジ部21aが車体前方側にコラプス移動する。従って、アウターコラム42の軸心に対して傾斜した衝撃荷重が作用しても、上部車体取付けブラケット21はカプセル24、24から脱落しにくくなり、コラプス移動距離L1だけ、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができる。また、傾斜面243b、243bが、フランジ部21aの下面との接触によって塑性変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。従って、車体前方側延長部243、243が衝撃エネルギー吸収機構を兼用することができるため、衝撃エネルギー吸収機構の設置スペースを節約することができる。
【0056】
実施例4では、車体前方側延長部243、243の上面に傾斜面243b、243bを形成しているが、車体前方側延長部244、244の下面に傾斜面を形成してもよい。
【0057】
上記実施例では、車体前方側への所定の衝撃力でカプセルから離脱可能に、フランジ部をカプセルに連結する連結手段として剪断ピンを使用しているが、剪断ピンの代わりに、カプセルとフランジ部を圧入によって結合し、フランジ部がこの圧入部でカプセルから離脱し、車体前方側にコラプス移動するようにしてもよい。また、上記実施例では、チルト/テレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用した例について説明したが、テレスコピック位置だけの調整が可能なテレスコピック式のステアリング装置、チルト位置もテレスコピック位置も調整できないステアリング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
101 ステアリングホイール
102 電動アシスト機構
102a 車体後方側端面
103 ステアリングギヤ
104 タイロッド
105 コラム
106 中間シャフト
11 車体
21 上部車体取付けブラケット(車体取付けブラケット)
211 車体前方側端面
21a フランジ部
21b 側板
21c 折り曲げ部
21d 切欠き孔
23 切欠き溝
231 車幅方向の外側面
232 車幅方向の内側面
24 カプセル
24a 上側挟持板
24b 下側挟持板
24c 剪断ピン
24d ボルト孔
24e 連結部
241 車幅方向の外側面
242 車幅方向の内側面
243 車体前方側延長部
243a 凹凸部
243b 傾斜面
244 車体前方側延長部
245 エンドブラケット
25 ボルト
26 チルト調整用長溝
27 ナット
41 ステアリングシャフト
42 アウターコラム
421 内周面
422 スリット
423 テレスコピック調整用長溝
424 車体前方側端面
43 出力軸
44 下部車体取付けブラケット
45 チルト中心軸
46 インナーコラム
51 締付けロッド
52 固定カム
53 可動カム
54 操作レバー
55 調整ナット
56 雄ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後方側にステアリングホイールを装着可能なステアリングシャフト、
上記ステアリングシャフトを回転可能に軸支するコラムに取付けられた車体取付けブラケット、
上記車体取付けブラケットのフランジ部を挟持する上下一対の上側挟持板と下側挟持板を有し、車体に固定可能な左右一対のカプセル、
上記上側挟持板と下側挟持板を連結し、上側挟持板と下側挟持板の車幅方向の寸法よりも車幅方向の寸法が小さい側面を有する連結部、
車体前方側への所定の衝撃力で上記カプセルから離脱可能に、上記フランジ部をカプセルに連結する連結手段、
上記カプセルの上側挟持板と下側挟持板との両方に形成され、上記フランジ部の車体前方側端面よりも車体前方側に、コラプス移動距離よりも長く延びた車体前方側延長部であって、上記フランジ部を上面と下面でコラプス移動端まで案内するそれぞれの車体前方側延長部、および、
上記車体前方側延長部の両方を車体前方側端面において固定し、車体前方側延長部の剛性を大きくするエンドブラケット
を備えたステアリング装置であって、
上記下側挟持板の車体前方側延長部の上面または上側挟持板の車体前方側延長部の下面には凹凸部が形成され、
上記フランジ部が車体前方側にコラプス移動する時に、この凹凸部が上記フランジ部に接触して塑性変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収すること
を特徴とするステアリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−100103(P2013−100103A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16129(P2013−16129)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2009−192747(P2009−192747)の分割
【原出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】