説明

ステアリング装置

【課題】軸と軸継手との間の溶接結合が不十分な場合にも、ステアリングシャフトの回転トルクを確実に伝達することが可能なステアリング装置を提供する。
【解決手段】エクステンションシャフト4を結合筒部51の他端512から挿入し、エクステンションシャフト4に形成された雄セレーション41を、雌セレーション52にセレーション係合させるとともに、エクステンションシャフト4の軸部42を嵌合孔53に密に嵌合させる。次に、結合筒部51の他端512とエクステンションシャフト4の軸部42の外周を溶接して結合し、溶接結合部56を形成する。続いて、エクステンションシャフト4と一体的に結合した軸継手5に、雄中間シャフト16Aを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング装置、特に、ステアリング装置のステアリングシャフトの回転を伝達する軸同士を連結する軸継手を有するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前輪を操舵するステアリング装置では、ステアリングホイールの操作で回転するステアリングシャフトの動きを、自在継手を介してステアリングギヤの入力軸に伝達している。
【0003】
このようなステアリング装置で、車体のレイアウトの関係から、自在継手に連結される中間シャフトやピニオンシャフト等の軸が自在継手から離れている場合に、自在継手と中間シャフトとの間、または、自在継手とピニオンシャフトとの間を、エクステンションシャフトと軸継手で連結している。
【0004】
従来の軸継手は、板材を略円筒状に折り曲げて結合筒部が成形されている。この結合筒部にエクステンションシャフトを圧入した後、結合筒部にエクステンションシャフトを溶接する。次に、結合筒部の雌セレーションに、中間シャフトの雄セレーションをセレーション係合した後、結合筒部にボルトを締め付けて雌セレーションを縮径し、結合筒部と中間シャフトを連結している。
【0005】
このような従来の軸継手では、結合筒部の内周面にエクステンションシャフトを圧入すると、板材を折り曲げて成形した結合筒部のスリットが開いて、結合筒部が拡径する。従って、結合筒部とエクステンションシャフトとの間の溶接が不十分な場合には、結合筒部とエクステンションシャフトとの間の結合剛性が低下して、ステアリングシャフトの回転トルクを伝達することが困難であった。
【0006】
板材を略円筒状に折り曲げて結合筒部が成形された軸継手として、特許文献1に開示された軸継手がある。特許文献1の軸継手は、一方の軸の雄セレーションは軸継手内周面の雌セレーションにセレーション係合し、他方の自在継手の円筒形端部は、軸継手の外周面に圧入している。
【0007】
従って、軸継手の外周面に自在継手の円筒形端部を圧入しても、板材を折り曲げて成形した結合筒部は縮径するだけなので、結合筒部と自在継手の円筒形端部との間の結合剛性は低下せず、ステアリングシャフトの回転トルクの伝達に問題は生じない。しかし、特許文献1に開示された軸継手は、結合筒部の内周面の両端に軸が連結される軸継手には適用できない。
【0008】
【特許文献1】特開2005−180698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、結合筒部の内周面の両端に軸が連結される軸継手を有するステアリング装置において、軸と軸継手との間の溶接結合が不十分な場合にも、ステアリングシャフトの回転トルクを確実に伝達することが可能なステアリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、板材を折り曲げて成形した軸継手、上記軸継手の一端側に形成され、U字形の平行部分を構成するフランジ部とこのフランジ部の下端を連結する円弧状の連結部とを備えた断面形状がU字形の結合筒部、上記軸継手の他端側に形成され、内側に連通するスリットを備えた円筒状の結合筒部、上記U字形の平行部分の一方に貫通して形成されたボルト孔、上記U字形の平行部分の他方に貫通し、上記ボルト孔と同心に形成された雌ねじ、上記ボルト孔に挿入され上記雌ねじにねじ込まれることにより、上記U字形の結合筒部のU字形の内周面を縮めるボルト、上記ボルトによって縮径された上記U字形の結合筒部の内周面に係合し、ステアリングシャフトの回転トルクを伝達する平行面と円弧面で構成された外周面を有する第1の軸、上記円筒状の結合筒部の軸方向の他端側から挿入され、上記U字形の平行部の内周面に係合してステアリングシャフトの回転トルクを伝達する平行面の部分を有する外周面と上記円筒状の結合筒部に密に嵌合する円形の軸部を有する第2の軸、上記第2の軸の円形の軸部と上記円筒状の結合筒部とが溶接された溶接結合部を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【0011】
第2番目の発明は、第1番目又は第2番目のいずれかの発明のステアリング装置において、上記第1の軸が中間シャフトであり、上記第2の軸がエクステンションシャフトであることを特徴とするステアリング装置である。
【0012】
第6番目の発明は、第1番目又は第2番目のいずれかの発明のステアリング装置において、上記第1の軸がピニオンシャフトであり、上記第2の軸がエクステンションシャフトであることを特徴とするステアリング装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のステアリング装置では、軸継手の結合筒部に結合筒部の軸方向の一端から他端近傍にわたって非円形の内周面を形成し、縮径された結合筒部の非円形の内周面に係合して回転トルクを伝達する非円形の外周面を有する第1の軸を、結合筒部の軸方向の一端から挿入し、結合筒部の非円形の内周面に係合して回転トルクを伝達する非円形の外周面を有する第2の軸を、結合筒部の軸方向の他端から挿入し、第2の軸と結合筒部とを溶接結合部で結合している。
【0014】
従って、第2の軸は、第2の軸の非円形の外周面と結合筒部の非円形の内周面との係合と溶接結合部の両方によって、結合筒部に結合されるため、溶接結合が不十分であったとしても、回転トルクを確実に伝達することが可能となるため、ステアリング装置の安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施例1から実施例2を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1の軸継手を備えたステアリング装置の全体正面図である。図1に示すように、本発明の実施例1の軸継手を備えたステアリング装置は、車体後方側(図1の右側)にステアリングホイール11を装着可能なステアリングシャフト12と、このステアリングシャフト12を挿通したステアリングコラム13と、このステアリングシャフト12に補助トルクを付与する為のアシスト装置(操舵補助部)20と、このステアリングシャフト12の車体前方側(図1の左側)に、図示しないラック/ピニオン機構を介して連結されたステアリングギヤ30とを備える。
【0017】
ステアリングシャフト12は、雌ステアリングシャフト12Aと雄ステアリングシャフト12Bとを、回転トルクを伝達可能に、かつ軸方向に関して相対移動可能にスプライン嵌合している。従って、上記雌ステアリングシャフト12Aと雄ステアリングシャフト12Bとは、衝突時に、このスプライン嵌合部が相対移動して、全長を縮めることができる。
【0018】
また、上記ステアリングシャフト12を挿通した筒状のステアリングコラム13は、アウターコラム13Aとインナーコラム13Bとをテレスコピック移動可能に組み合わせており、衝突時に軸方向の衝撃が加わった場合に、この衝撃によるエネルギを吸収しつつ全長が縮まる、所謂コラプシブル構造としている。
【0019】
そして、上記インナーコラム13Bの車体前方側端部を、ギヤハウジング21の車体後方側端部に圧入嵌合して固定している。また、上記雄ステアリングシャフト12Bの車体前方側端部を、このギヤハウジング21の内側に通し、アシスト装置20の図示しない入力軸の車体後方側端部に連結している。
【0020】
ステアリングコラム13は、その中間部を支持ブラケット14により、ダッシュボードの下面等、車体18の一部に支承している。また、この支持ブラケット14と車体18との間に、図示しない係止部を設けて、この支持ブラケット14に車体前方側に向かう方向の衝撃が加わった場合に、この支持ブラケット14が上記係止部から外れ、車体前方側に移動するようにしている。
【0021】
また、上記ギヤハウジング21の上端部も、上記車体18の一部に支承している。また、本実施例の場合には、チルト機構及びテレスコピック機構を設けることにより、上記ステアリングホイール11の車体前後方向位置、及び、高さ位置の調節を自在としている。このようなチルト機構及びテレスコピック機構は、従来から周知であり、本発明の特徴部分でもない為、詳しい説明は省略する。
【0022】
上記ギヤハウジング21の車体前方側端面から突出した出力軸23は、自在継手(上側自在継手)15、自在継手15に結合されたエクステンションシャフト4、エクステンションシャフト4に結合された軸継手5を介して、中間シャフト16の後端部に連結している。
【0023】
また、この中間シャフト16の前端部に、別の自在継手(下側自在継手)17を介して、ステアリングギヤ30のピニオンシャフト(以下軸と呼ぶ)31を連結している。中間シャフト16は、雄中間シャフト(雄シャフト)16Aの車体前方側に、雌中間シャフト(雌シャフト)16Bの車体後方側が外嵌し、回転トルクを伝達可能に、かつ、軸方向に関して相対移動可能に嵌合している。
【0024】
図示しないピニオンが、ピニオンシャフト31の下端(車体前方側端部)に形成されている。また、図示しないラックが、このピニオンに噛み合っており、ステアリングホイール11の回転が、タイロッド32を移動させて、図示しない車輪を操舵する。
【0025】
アシスト装置20のギヤハウジング21には、電動モータ26のケース261が固定され、この電動モータ26の図示しない回転軸にウォームが結合されている。出力軸23には図示しないウォームホイールが取り付けられ、このウォームホイールに電動モータ26の回転軸のウォームが噛合っている。
【0026】
また、出力軸23の中間部の周囲には、図示しないトルクセンサが設けられている。上記ステアリングホイール11からステアリングシャフト12に加えられるトルクの方向と大きさを、トルクセンサで検出し、この検出値に応じて、電動モータ26を駆動し、ウォームとウォームホイールから成る減速機構を介して、出力軸23に、所定の方向に所定の大きさで補助トルクを発生させる。補助トルクを発生させるアシスト装置は、電動式に限定されるものではなく、油圧式のアシスト装置でもよい。
【0027】
図2から図3は、本発明の実施例1の軸継手を示し、図2は本発明の実施例1の軸継手を示す部品図であり、図2(1)は図2(2)のA−A断面図、図2(2)は軸継手の一部を断面した正面図、図2(3)は図2(2)のB−B断面図である。
【0028】
図3は本発明の実施例1の軸継手と軸の結合状態を示し、図3(1)は軸継手に結合するエクステンションシャフトの部品図、図3(2)は軸継手にエクステンションシャフトを結合した状態を示す一部を断面した正面図、図3(3)は軸継手にエクステンションシャフトと中間シャフトを結合した状態を示す断面図である。
【0029】
本発明の実施例1の軸継手は、図1のエクステンションシャフト(第2の軸)4と雄中間シャフト(第1の軸)16Aとの結合部に適用した例を示す。
【0030】
図2に示すように、本発明の実施例1の軸継手5には、板材を略円筒状に折り曲げて成形した結合筒部51が形成され、この結合筒部51の内周面には、非円形の内周面としての雌セレーション52が形成されている。雌セレーション52は、結合筒部51の軸方向の一端(図2(2)の左端)511から、軸方向の他端(図2(2)の右端)512の近傍まで形成されている。
【0031】
結合筒部51の軸方向の他端512の内周面には、上記雌セレーション52と同心に、雌セレーション52よりも大径の嵌合孔53が形成されている。結合筒部51には、結合筒部51から接線方向(図2(1)の下方)に延びた後、内側に折り返された左右一対のフランジ部54A、54Bが形成されている。
【0032】
フランジ部54A、54Bは、結合筒部51の一端511から、結合筒部51の軸方向の長さの略半分の長さまで形成されている。フランジ部54A、54Bの間には、雌セレーション52に連通するスリット55が形成されている。スリット55は、結合筒部51の他端512まで延びて形成((図2(3)参照)されている。
【0033】
また、フランジ部54Aには、図2(1)の左右方向(結合筒部51の軸心に直交する方向)にボルト孔541Aが貫通して形成されている。また、フランジ部54Bには、ボルト孔541Aと同心に、雌ねじ541Bが貫通して形成されている。図示しないボルトを図2(1)の左側からボルト孔541Aに挿入し、雌ねじ541Bにねじ込むと、フランジ部54A、54Bが弾性変形してスリット55の幅が狭まり、雌セレーション52が縮径する。
【0034】
図3(1)に示すように、エクステンションシャフト(第2の軸)4の左端外周面には、上記雌セレーション52にセレーション係合可能な雄セレーション41が形成されている。また、エクステンションシャフト4には、雄セレーション41の右端から、雄セレーション41よりも大径で、上記嵌合孔53に密に嵌合する直径を有し、断面が円形の軸部42が形成されている。
【0035】
図3(2)に示すように、エクステンションシャフト4を結合筒部51の他端512から挿入し、エクステンションシャフト4に形成された雄セレーション41を、雌セレーション52にセレーション係合させるとともに、エクステンションシャフト4の軸部42を嵌合孔53に密に嵌合させる。
【0036】
次に、結合筒部51の他端512とエクステンションシャフト4の軸部42の外周を溶接して結合し、溶接結合部56を形成する。続いて、エクステンションシャフト4と一体的に結合した軸継手5に、雄中間シャフト16A(第1の軸)を連結する。
【0037】
図3(3)に示すように、雄中間シャフト16Aの右端外周面には、上記雌セレーション52にセレーション係合可能な雄セレーション61が形成されている。また、雄中間シャフト16Aには、雄セレーション61の軸方向の長さの中間位置に、半円形の環状溝62が形成されている。
【0038】
雄中間シャフト16Aを結合筒部51の一端511から挿入し、雄中間シャフト16Aに形成された雄セレーション61を、雌セレーション52にセレーション係合させる。その後、ボルト81を軸継手5のボルト孔541Aに挿入し、雌ねじ541Bにねじ込むと、フランジ部54A、54Bが弾性変形してスリット55の幅が狭まり、雌セレーション52が縮径する。
【0039】
雌セレーション52が縮径すると、雄中間シャフト16Aの雄セレーション61が雌セレーション52に強く締め付けられる。また、軸継手5にねじ込まれたボルト81の外周が、雄中間シャフト16Aの半円形の環状溝62に係合する。従って、雄中間シャフト16Aを軸継手5から引き抜く方向(図3(3)の左方向)に力が加わっても、環状溝62がボルト81の外周に当接するため、雄中間シャフト16Aは軸継手5に対して、所定の軸方向の組み付け位置に保持されると共に、雄中間シャフト16Aは軸継手5から抜け出さない。
【0040】
上記実施例1では、エクステンションシャフト4は、結合筒部51に、セレーション係合と溶接結合部56の両方によって結合されるため、溶接結合が不十分であったとしても、ステアリングシャフト12の回転トルクを、セレーション係合を介して確実に伝達することが可能となるため、ステアリング装置の安全性が向上する。
【実施例2】
【0041】
次に本発明の実施例2について説明する。図4は本発明の実施例2の軸継手を示す部品図であり、(1)は(2)の左側面図、(2)は軸継手の正面図である。図5は実施例2の軸継手に結合するエクステンションシャフトの部品図であり、(1)は(2)の左側面図、(2)はエクステンションシャフトの正面図である。
【0042】
図6は本発明の実施例2の軸継手と軸の結合状態を示し、(1)は軸継手にエクステンションシャフトを結合した状態を示す正面図、(2)は(1)のC−C断面図、(3)は(1)のD−D断面図である。図7は本発明の実施例2の軸継手にエクステンションシャフトと中間シャフトを結合した状態を示す正面図である。以下の説明では、上記実施例1と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0043】
実施例1は、結合筒部の内周面に、非円形の内周面として雌セレーションを形成したが、実施例2は、非円形の内周面として略平行な一対の平坦面を形成した例である。
【0044】
図4に示すように、本発明の実施例2の軸継手7は、板材を折り曲げて成形され、図4(2)の左側に、断面形状がU字形の結合筒部71が形成され、U字形の結合筒部71の右側には、円筒状の結合筒部72が一体的に形成されている。
【0045】
U字形の結合筒部71は、U字形の略平行部分を構成するフランジ部73A、73Bと、フランジ部73A、73Bの下端を連結する円弧状の連結部74とで構成されている。フランジ部73A、73Bは、連結部74の反対側(図4の上方側)に開口部75を形成している。
【0046】
互いに略平行に離隔して配置されたフランジ部73A、73Bは、図4(1)に示すように、それぞれの内周面に、非円形の内周面としての互いに平行な平坦面731A、731Bが形成されている。そして、フランジ部73A、73Bには、図4(1)の左右方向(結合筒部71、72の軸心に直交する方向)に、円形のボルト孔732A、732Bが、同心上に、各々貫通して形成されている。
【0047】
結合筒部72の内周面には、結合筒部72と同心に、円形の嵌合孔(図6(3)参照)721が形成されている。結合筒部72には、上記開口部75に連通するとともに、嵌合孔721に連通するスリット722が形成されている。スリット722は、結合筒部72の右端723まで延びて形成されている。
【0048】
図示しないボルトを図4(1)の左側からボルト孔732Aに挿入し、図4(1)の右側からナットをボルトにねじ込むと、フランジ部73A、73Bが弾性変形して、平坦面731A、731Bの幅が狭まる。
【0049】
図5に示すように、エクステンションシャフト(第2の軸)4の左端外周面には、上記嵌合孔721に密に嵌合する直径寸法で、断面が円形の軸部42が形成されている。また、軸部42の左端外周面は、略小判型形状を有し、上記平坦面731A、731Bに係合可能な、一対の平行な平坦面43A、43Bが形成されている。
【0050】
図6(1)に示すように、エクステンションシャフト4を結合筒部72の右端723から挿入し、エクステンションシャフト4に形成された平坦面43A、43Bを、平坦面731A、731Bに係合させるとともに、エクステンションシャフト4の軸部42を嵌合孔721に密に嵌合する。
【0051】
次に、結合筒部72の右端723とエクステンションシャフト4の軸部42の外周を溶接して結合し、溶接結合部76を形成する。続いて、エクステンションシャフト4と一体的に結合した軸継手7に、雄中間シャフト(第1の軸)16Aを連結する。
【0052】
図7に示すように、雄中間シャフト16Aの右端外周面には、上記平坦面731A、731Bに係合可能な一対の平行な平坦面63A、63B(図7では、一方の平坦面63Bのみが図示されている)が形成されている。また、雄中間シャフト16Aの外周面の上方には、平坦面63A、63Bの軸方向の長さの略中間位置に、半円形の溝64が形成されている。
【0053】
雄中間シャフト16Aを結合筒部71の左端711から挿入し、雄中間シャフト16Aに形成された一対の平坦面63A、63Bを、平坦面731A、731Bに係合させる。その後、ボルト82を軸継手7のボルト孔732A、732Bに挿入し、ボルト82に図示しないナットをねじ込むと、フランジ部73A、73Bが弾性変形して、平坦面731A、731Bの幅が狭まる。
【0054】
平坦面731A、731Bの幅が狭まると、雄中間シャフト16Aの平坦面63A、63Bが、平坦面731A、731Bに強く締め付けられる。また、軸継手7に挿入されたボルト82の偏心した外周が、雄中間シャフト16Aの半円形の溝64に係合する。従って、雄中間シャフト16Aを軸継手7から引き抜く方向(図7の左方向)に力が加わっても、溝64がボルト82の外周に当接するため、雄中間シャフト16Aは軸継手7に対して、所定の軸方向の組み付け位置に保持されると共に、雄中間シャフト16Aは軸継手7から抜け出さない。
【0055】
上記実施例2では、エクステンションシャフト4は、結合筒部72に、平坦面43A、43Bと平坦面731A、731Bとの係合と、溶接結合部76の両方によって結合される。従って、溶接結合が不十分であったとしても、ステアリングシャフト12の回転トルクを、平坦面43A、43Bと平坦面731A、731Bとの係合を介して確実に伝達することが可能となるため、ステアリング装置の安全性が向上する。
【0056】
上記実施例では、非円形の内周面が雌セレーションと雄セレーションのセレーション係合、及び、互いに略平行な一対の平坦面の場合について説明したが、スプライン係合や任意の非円形断面によって回転トルクを伝達してもよい。
【0057】
また、上記実施例では、エクステンションシャフト4と中間シャフト16との結合部に適用した例を示したが、エクステンションシャフトとピニオンシャフト31との結合部等、ステアリング装置の任意の軸の結合部に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1の軸継手を備えたステアリング装置の全体正面図である。
【図2】本発明の実施例1の軸継手を示す部品図であり、(1)は(2)のA−A断面図、(2)は軸継手の一部を断面した正面図、(3)は(2)のB−B断面図である。
【図3】本発明の実施例1の軸継手と軸の結合状態を示し、(1)は軸継手に結合するエクステンションシャフトの部品図、(2)は軸継手にエクステンションシャフトを結合した状態を示す一部を断面した正面図、(3)は軸継手にエクステンションシャフトと中間シャフトを結合した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例2の軸継手を示す部品図であり、(1)は(2)の左側面図、(2)は軸継手の正面図である。
【図5】実施例2の軸継手に結合するエクステンションシャフトの部品図であり、(1)は(2)の左側面図、(2)はエクステンションシャフトの正面図である。
【図6】本発明の実施例2の軸継手と軸の結合状態を示し、(1)は軸継手にエクステンションシャフトを結合した状態を示す正面図、(2)は(1)のC−C断面図、(3)は(1)のD−D断面図である。
【図7】本発明の実施例2の軸継手にエクステンションシャフトと中間シャフトを結合した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0059】
11 ステアリングホイール
12 ステアリングシャフト
12A 雌ステアリングシャフト
12B 雄ステアリングシャフト
13 ステアリングコラム
13A アウターコラム
13B インナーコラム
14 支持ブラケット
15 自在継手(上側自在継手)
16 中間シャフト
16A 雄中間シャフト
16B 雌中間シャフト
17 自在継手(下側自在継手)
18 車体
20 アシスト装置
21 ギヤハウジング
23 出力軸
26 電動モータ
261 ケース
30 ステアリングギヤ
31 ピニオンシャフト
32 タイロッド
4 エクステンションシャフト
41 雄セレーション
42 軸部
43A、43B 平坦面
5 軸継手
51 結合筒部
511 一端
512 他端
52 雌セレーション
53 嵌合孔
54A、54B フランジ部
541A ボルト孔
541B 雌ねじ
55 スリット
56 溶接結合部
61 雄セレーション
62 環状溝
63A、63B 平坦面
64 溝
7 軸継手
71 U字形の結合筒部
711 左端
72 円筒状の結合筒部
721 嵌合孔
722 スリット
723 右端
73A、73B フランジ部
731A、731B 平坦面
732A、732B ボルト孔
74 連結部
75 開口部
76 溶接結合部
81 ボルト
82 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を折り曲げて成形した軸継手、
上記軸継手の一端側に形成され、U字形の平行部分を構成するフランジ部とこのフランジ部の下端を連結する円弧状の連結部とを備えた断面形状がU字形の結合筒部、
上記軸継手の他端側に形成され、内側に連通するスリットを備えた円筒状の結合筒部、
上記U字形の平行部分の一方に貫通して形成されたボルト孔、
上記U字形の平行部分の他方に貫通し、上記ボルト孔と同心に形成された雌ねじ、
上記ボルト孔に挿入され上記雌ねじにねじ込まれることにより、上記U字形の結合筒部のU字形の内周面を縮めるボルト、
上記ボルトによって縮径された上記U字形の結合筒部の内周面に係合し、ステアリングシャフトの回転トルクを伝達する平行面と円弧面で構成された外周面を有する第1の軸、
上記円筒状の結合筒部の軸方向の他端側から挿入され、上記U字形の平行部の内周面に係合してステアリングシャフトの回転トルクを伝達する平行面の部分を有する外周面と上記円筒状の結合筒部に密に嵌合する円形の軸部を有する第2の軸、
上記第2の軸の円形の軸部と上記円筒状の結合筒部とが溶接された溶接結合部
を備えたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載されたステアリング装置において、
上記第1の軸が中間シャフトであり、
上記第2の軸がエクステンションシャフトであること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載されたステアリング装置において、
上記第1の軸がピニオンシャフトであり、
上記第2の軸がエクステンションシャフトであること
を特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−47100(P2013−47100A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248090(P2012−248090)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2007−66033(P2007−66033)の分割
【原出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】