説明

ステップカードおよびステップカードの製造方法

電子カードおよび同電子カードを製造する方法であって、電子カードは、上面および下面を有するプリント回路板、電子カードの第一の部分に配置された回路コンポーネントが電子カードの第二の部分に配置された回路コンポーネントよりも高さが大きい、プリント回路板の上面に取り付けられた複数の回路コンポーネント、プリント回路板の下面に取り付けられた下オーバーレイ、プリント回路板の上面の上方に配置された上オーバーレイおよびプリント回路板の上面と上オーバーレイとの間に配置されたコア層で構成され、電子カードの第一の部分が電子カードの第二の部分よりも大きな厚さを有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電子装置の分野に関し、特に、埋め込まれた被給電回路を有する電子カードおよびそのような電子カードの製造方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
以下、本発明の背景の記載は、本発明の理解を支援するためだけに提供されるものであり、本発明に対して先行する技術を記載または構成することを認めたものではない。
【0003】
一般に、電子装置は、様々な材料に封入され、スマートカードまたはタグのような用途に使用することができる。スマートカード/タグは、クレジットカード、バンクカード、IDカード、テレフォンカード、セキュリティカードまたは同様な装置として使用することができる。スマートカード/タグは一般に、いくつかのプラスチックシート層をサンドイッチアレイに組み立てることによって構築される。さらには、スマートカード/タグは、スマートカードが多数の機能を実行することを可能にする、埋め込まれた電子コンポーネントを含む。
【0004】
欧州特許第0350179号(特許文献1)は、電子回路がプラスチック材料の層に封入され、その層がカードの二つの表面層の間に導入されているスマートカードを開示している。方法はさらに、高引張り強度保持部材をモールドの側面に当接させ、スマートカードの電子コンポーネントを当該側面に関して位置決めしたのち、反応成形性ポリマー材料をモールドに射出して、それが電子コンポーネントを封入するようにすることを含む。
【0005】
欧州特許出願第95400365.3号(特許文献2)は、無接点スマートカードを製造する方法を教示している。方法は、剛性フレームを使用して、上熱可塑性シートと下熱可塑性シートとの間の空間に電子モジュールを配置し、固定する。フレームを下熱可塑性シートに機械的に付着させたのち、空間を重合性樹脂材料で埋める。
【0006】
米国特許第5,399,847号(特許文献3)は、三つの層、すなわち、第一の外層、第二の外層および中間層で構成されたクレジットカードを教示している。中間層は、スマートカードの電子素子(たとえばICチップおよびアンテナ)を中間層材料中に包み込む熱可塑性結合材の射出によって成形される。結合材料は、好ましくは、コポリアミドのブレンドまたは空気に触れると硬化する二つまたはそれ以上の化学反応性成分を有する接着剤で構成されている。このスマートカードの外層は、種々のポリマー材料、たとえばポリ塩化ビニルまたはポリウレタンで構成されることができる。
【0007】
米国特許第5,417,905号(特許文献4)は、プラスチッククレジットカードを製造する方法であって、二つのシェルで構成されたモールドツールを閉じて、そのようなカードを製造するためのキャビティを画定する方法を教示している。ラベルまたはイメージ支持体を各モールドシェル中に配置する。そして、モールドシェルどうしを合わせ、熱可塑性材料をモールドに射出してカードを成形する。流れ込むプラスチックがラベルまたはイメージ支持体を各モールド面に押し当てる。
【0008】
米国特許第5,510,074号(特許文献5)は、実質的に平行な主側面を有するカードボディ、少なくとも片側にグラフィック要素を有する支持部材およびチップに固着される接触アレイを含む電子モジュールを有するスマートカードを製造する方法を教示している。製造方法は一般に、(1)カードの体積および形状を画定するモールドの中に支持部材を配置するステップ、(2)支持部材をモールドの第一の主壁に当てて保持するステップ、(3)中空空間によって画定される容積中に熱可塑性材料を射出して、その容積のうち、支持部材によって占有されない部分を埋めるステップ、および(4)射出された材料が完全に固化する機会を得る前に電子モジュールを熱可塑性材料中の適切な位置に挿入するステップを含む。
【0009】
米国特許第4,339,407号(特許文献6)は、特定のオリフィスと組み合わさったランド部、溝およびボスの特定の配置を有する壁を有するキャリヤの形態にある電子回路封入装置を開示している。モールドの壁セクションが回路アセンブリを所与の整列状態で保持する。キャリヤの壁は、スマートカード電子回路の挿入を容易にするために、わずかに可撓性の材料でできている。キャリヤは、外モールドの中に挿入することができる。これが、熱可塑性材料の射出中にコンポーネントを確実に整列状態に保持するために、キャリヤ壁を互いに向けて動かす。キャリヤの壁の外側は、キャリヤをモールド内に位置決めし、固定するためにモールドの壁上の戻り止めと嵌合するように働く突起を有する。モールドはまた、閉じ込められたガスを逃がすための穴を有する。
【0010】
米国特許第5,350,533号(特許文献7)は、射出成形機中でプラスチックカード上に装飾パターンを施し、プラスチックカード中に電子回路を配置する方法を開示している。方法は、(a)射出成形機中、開放したモールドキャビティの上にフィルム(たとえば装飾パターンを有するフィルム)を導入し、配置するステップ、(b)モールドキャビティを閉じて、フィルムがその中で定位置に固定され、締め付けられるようにするステップ、(c)電子回路チップをモールドの開口に通してモールドキャビティ中に挿入して、チップをキャビティ中に配置するステップ、(d)熱可塑性支持体組成物をモールドキャビティに射出して一体化カードを成形するステップ、および(e)その後、余剰材料を除去し、モールドキャビティを開放し、カードを取り出すステップを含む。
【0011】
米国特許第4,961,893号(特許文献8)は、その主な特徴が、集積回路チップを支持する支持要素であるスマートカードを教示している。支持要素は、チップをモールドキャビティの内側に配置するために使用される。カードボディは、チップ全体がプラスチック材料に埋め込まれるようにプラスチック材料をキャビティに射出することによって成形される。いくつかの態様においては、支持体の縁領域が各モールドの荷重担持面の間で締め付けられる。支持要素は、完成したカードから剥離されるフィルムであってもよいし、カードの一体部分として残るシートであってもよい。支持要素が剥離フィルムであるならば、その中に含まれるグラフィックス要素はカードに転写され、カード上に見えるままである。支持要素がカードの一体部分として残るならば、そのようなグラフィックス要素はその一面に形成され、したがって、カードユーザに見えるようになる。
【0012】
米国特許第5,498,388号(特許文献9)は、貫通孔を有するカードボードを含むスマートカード装置を教示している。半導体モジュールがこの開口に取り付けられる。樹脂が開口に射出されて、前記半導体モジュールの外部接続のための電極端子面だけが露出するような条件下、樹脂成形物が成形されるようになっている。カードは、貫通孔を有するカードボードを二つの対向する成形金型の下モールドに取り付け、半導体モジュールを前記カードボードの開口に取り付け、下金型に通じるゲートを有する上金型を締め付け、ゲートを介して樹脂を開口に射出することによって完成させる。
【0013】
米国特許第5,423,705号(特許文献10)は、熱可塑性射出成形材料でできたディスクボディおよびディスクボディに一体的に接合されたラミネート層を有するディスクを教示している。ラミネート層は、外側の透明なラミナおよび内側の白色で不透明なラミナを含む。これらのラミナの間にイメージング材料が挟まれている。
【0014】
米国特許第6,025,054号(特許文献11)は、スマートカードのコア層になる熱硬化性材料中に電子装置を浸漬する間に電子装置を定位置に保持するために低収縮率接着剤を使用する、スマートカードを構築する方法を開示している。米国特許第6,025,054号に開示された方法は、無視できない欠点を抱えている。第一に、開示された方法は、熱硬化性材料の硬化によって生じる反りおよび他の望ましくない物理的欠陥を生じさせる。さらに、この方法は、一つまたは二つのコンポーネントを有するカードにしか適さず、したがって、その機能性を制限する。米国特許第6,025,054号に開示された方法は、カード内の電子コンポーネントの幾何学形状が熱硬化性材料の流れを妨害して、熱硬化性材料が、スマートカードのコアから空気を押し出すことができるよりも速くコンポーネントの周囲を流れるようになるため、スマートカード内に空隙および気泡のような欠陥を作り出す。そのうえ、米国特許第6,025,054号は、カスタム装備の使用を要して、その応用の範囲およびスケーラビリティを有意に制限する。
【0015】
一般に、電子カードのような電子装置は、公知の工業規格および美的外観基準に適合するように設計されている。たとえば、すべてではないにしても大部分の電子カードは、薄くて均一に平坦な形状に設計されている。これらのカードの形状は、カードに埋め込まれる電源が小さなフットプリントを有することを要する。このような小さめの電源は限られた電力容量しか有さず、それが他方で電子カードの寿命を制限する。そのうえ、利用可能な比較的スリムなタイプの電源は数が少なく、それが、製造者にとっての設計選択をかなり減らす。したがって、上述の制限が、よりパワー集中的な用途が電子カード市場に導入されることを抑制している。前記を考慮すると、電子カードのサイズおよびその美的設計を有意に増すことなく多数の被給電電気コンポーネントを収容することができる電子カードを構築する装置および方法が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第0350179号
【特許文献2】欧州特許出願第95400365.3号
【特許文献3】米国特許第5,399,847号
【特許文献4】米国特許第5,417,905号
【特許文献5】米国特許第5,510,074号
【特許文献6】米国特許第4,339,407号
【特許文献7】米国特許第5,350,533号
【特許文献8】米国特許第4,961,893号
【特許文献9】米国特許第5,498,388号
【特許文献10】米国特許第5,423,705号
【特許文献11】米国特許第6,025,054号
【発明の概要】
【0017】
概要
一つの態様にしたがって、電子カードは、上面および下面を有するプリント回路板、電子カードの第一の部分に配置された回路コンポーネントが電子カードの第二の部分に配置された回路コンポーネントよりも高さが大きい、プリント回路板の上面に取り付けられた複数の回路コンポーネント、プリント回路板の下面に取り付けられた下オーバーレイ、プリント回路板の上面の上方に配置された上オーバーレイおよびプリント回路板の上面と上オーバーレイとの間に配置されたコア層を含み、電子カードの第一の部分が電子カードの第二の部分よりも大きな厚さを有する。
【0018】
もう一つの態様にしたがって、電子カードを製造する方法は、上面および下面を有するプリント回路板を提供するステップ、電子カードの第一の部分に配置された回路コンポーネントが電子カードの第二の部分に配置された回路コンポーネントよりも高さが大きい、複数の回路コンポーネントをプリント回路板の上面に付着させるステップ、感圧接着テープまたはスプレーオン接着剤を使用してプリント回路板の下面を下オーバーレイに付着させるステップ、プリント回路板および下オーバーレイを射出成形装置に装填するステップ、プリント回路板の上面の上方に配置された上オーバーレイを射出成形装置に装填するステップ、プリント回路板の上面、複数の回路板コンポーネントおよび上オーバーレイの間に、電子カードの第一の部分が電子カードの第二の部分よりも大きな厚さを有するように熱硬化性ポリマー材料を射出するステップを含む。
【0019】
本発明のこれらおよび他の特徴、局面および利点は、以下の詳細な説明、請求の範囲および以下に簡単に説明する図面に示す例示的態様から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一つの態様の電子カードの断面図である。
【図2】本発明の一つの態様の電子カードの上断面図である。
【図3】本発明の一つの態様の電子カードおよび射出ノズルの断面図である。
【図4】本発明の一つの態様の一つの成形シート上に形成された一連の電子カードの上断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
以下、添付図面を参照しながら本発明の態様を説明する。以下の説明は、本発明の例示的態様を説明することを意図したものであり、本発明を限定することを意図したものではないことが理解されよう。
【0022】
図1に示す本発明の一つの態様にしたがって、電子カード1は、プリント回路板10、複数の回路コンポーネント20、電源、たとえばバッテリ21、下オーバーレイ30、上オーバーレイ40およびコア層50を含む。電子カード1は、異なる厚さの少なくとも二つの部分を有する。バッテリ21は、電子カード1の、厚さBを有する第一の部分に配置されている。電子カード1の第二の部分は厚さAを有する。図1に示すように、第一の部分(バッテリを封入)は第二の部分よりも大きな厚さを有する(B>A)。電子カード1は、スマートカード、タグおよび/またはリストバンドのような用途で使用することができる。
【0023】
プリント回路板10は上面11および下面12を有する。本発明の一つの態様にしたがって、プリント回路板10は両面プリント回路板である。したがって、プリント回路板10は、複数の回路トレース14 (図2に示す)を上面11および下面12に収容するように構成されている。回路トレース14は、プリント回路板10に付着された複数の回路コンポーネント20を動作可能に接続するように構成されている。回路トレース14は、回路コンポーネントが電子カード1内で電気的機能を実行することができるように複数の回路コンポーネント20を電気的に接続する。
【0024】
回路トレース14は、数多くの方法でプリント回路板の面11、12の上に設けることができる。たとえば、回路トレース14は、導電インクによってプリント回路板10の上に形成することができる。代替方法として、回路トレース14は、プリント回路板上にエッチングすることもできる。
【0025】
プリント回路板10は、電子回路を受けるのに適した公知の従来材料で構成されている。たとえば、プリント回路板10は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂との難燃性ラミネートで構成されることができる。この材料はFR-4板とも知られている。または、プリント回路板10は、導電インクを受けるのに適したプラスチック化合物で構成されることもできる。
【0026】
図1に示し、以下に説明するように、プリント回路板10は、複数の回路コンポーネント20を受け、垂直方向に安定化させるように構成されている。複数の回路コンポーネント20は、多数の方法のいずれかによってプリント回路板10、具体的には回路トレース14に取り付けることができる。たとえば、本発明の一つの態様において、回路コンポーネント20は導電性接着剤によってプリント回路板10に接続される。好ましくは、複数の回路コンポーネントはプリント回路板10にはんだ付けされる。複数の回路コンポーネント20は、プリント回路板10上のどこにでも望みどおり配置することができる。電子カード1の目的および設計パラメータが回路トレース14の位置および回路コンポーネント20の位置を指図する。また、機能性が、どのタイプの回路コンポーネント20でプリント回路板10を埋めるのかを指図する。
【0027】
例示の目的としてのみ、複数の回路コンポーネント20は、バッテリ、ボタン、マイクロプロセッサチップまたはスピーカのいずれかであってもよい。これらの回路コンポーネントのいずれか一つまたはすべてが電子カードのいずれかの部分に沿ってプリント回路板10を埋めることができる。さらには、さらなる回路コンポーネント20として、非限定的に、LED、フレキシブルディスプレー、RFIDアンテナおよびエミュレータを挙げることができる。図2を参照すると、電子カード1の回路レイアウトが示されている。図2に示すプリント回路板10は、バッテリ21、マイクロプロセッサ22およびボタン23によって埋められている。図2に示す本発明のもう一つの態様において、電子カード1は、ボタン23に接続された回路コンポーネント20として液晶ディスプレー24を含む。液晶ディスプレー24は、情報、たとえば勘定残高をユーザに表示するために使用することができる。それに代わり、またはそれに加えて、図2に示す埋め込み電子カード1は、スピーカ(図示せず)を含むことができる。
【0028】
一般に、図1および2に示すコンポーネントは、厚さおよび長さが異なることができる。たとえば、電子カード1は、0.09インチ未満の全体厚さを有することができる。電子カードの第一の部分は、.030〜.090インチの範囲の厚さを有することができる。電子カードの第一の部分の厚さは、より大きく、高く、より強力な電源、たとえばバッテリ21を電子カード1中で使用することを可能にする。電子カードの第二の部分は、.030インチまたはそれ以下の厚さを有することができる。第一の部分と第二の部分との厚さの違いは、より強力なカードを、元々はより小さな厚さのカードのために設計されていた従来の用途で使用することを可能にする。したがって、これらの寸法は、電子カード1を従来の機器とで適合性にすることができる。例示の目的としてのみ、バッテリ21は、.016インチの厚さを有することができ、プッシュボタン23は、.020インチの厚さを有することができ、マイクロプロセッサ22は、.015インチの厚さを有することができる。加えて、図2に示す電子カード1は、.010インチの厚さを有するスピーカ(図示せず)を有することができる。
【0029】
図1に示すように、下オーバーレイ30がプリント回路板10の下面12に取り付けられている。下オーバーレイ30は、たとえば、厚さ0.001〜0.002インチであることができる。下オーバーレイ30は、任意の数の公知の方法によってプリント回路板10に取り付けることができる。好ましくは、下面12は、感圧接着テープまたはスプレーオン接着剤を使用して下オーバーレイ30に取り付けられる。下オーバーレイ30は、適当な材料で構成されることができるが、好ましくは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PETGまたは他の適当な材料で構成されている。
【0030】
本発明の一つの態様にしたがって、プリント回路板10と接触する下オーバーレイ30の表面は、プリントされた情報を有する。または、プリントされた情報は、下オーバーレイ30の外面に配置されることもできる。たとえば、下オーバーレイ30は、標準的なクレジットカードまたは識別タグと合致するプリントされた情報、たとえば氏名、有効期限および口座番号を含むことができる。本発明のもう一つの態様にしたがって、下オーバーレイ30は、透明である、または2/5透明/白プリントされていることができる。具体的には、厚さ.002インチの透明なPVC材料片が、厚さ.005インチである白色PVC層の上に積層される。
【0031】
プリント回路板10の上面に配置された上オーバーレイ40が図1に示されている。上オーバーレイ40は、適当な材料で構成されることができ、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PETGまたは他の適当な材料で構成されることができる。下オーバーレイ30と同じく、上オーバーレイ40は、たとえば、厚さ0.001〜0.002インチであることができる。
【0032】
または、上オーバーレイ40の外面は、プリントされた情報を有することができる。たとえば、上オーバーレイ40は、標準的なクレジットカードまたは識別タグと合致するプリントされた情報、たとえば氏名、有効期限および口座番号を含むことができる。本発明のもう一つの態様にしたがって、上オーバーレイ40は、透明である、または「2/5透明/白プリント」されていることができる。
【0033】
先に述べたように、電子カードの全体厚さは、上カバーシート102および下カバーシート104の厚さと同じく、異なることができる。上記例に加えて、他の例は、0.010インチまたはそれ以下および0.200インチまたはそれ以上の厚さを有する電子カード1を含むことができる。加えて、上下のカバーシートは、0.010インチ〜0.200インチの範囲の厚さを有することができる。したがって、電子カードの全体厚さおよび個々のパーツ、たとえば上カバーシート102および下カバーシート104の厚さは、電子カード1の具体的な用途および所望の寸法に依存する。
【0034】
図1に示すように、プリント回路板10の上面と上オーバーレイ40との間にはコア層50が配置されている。加えて、図1に示すように、コア層50は、プリント回路板10の下面11よりも下かつ下オーバーレイ30よりも上の区域に存在する。好ましくは、コア層50は、熱硬化性ポリマー材料で構成されている。たとえば、コア層50は、ポリウレアで構成されていることができる。
【0035】
ポリウレアとは、イソシアネート成分と樹脂ブレンド成分との反応生成物から誘導される公知のエラストマーである。What is polyurea? THE POLYUREA DEVELOPMENT ASSOCIATION、http://www.pda-online.org/pda_resources/whatispoly.asp (最終閲覧日2007年3月21日)を参照。イソシアネートは芳香族性または脂肪族性であることができる(同上)。イソシアネートは、イソシアネートのモノマー、ポリマーもしくは反応変異体、準プレポリマーまたはプレポリマーであることができる(同上)。プレポリマーまたは準プレポリマーは、末端アミン修飾ポリマー樹脂または末端ヒドロキシル修飾ポリマー樹脂でできていることができる(同上)。樹脂ブレンドは、末端アミン修飾ポリマー樹脂および/または末端アミン修飾連鎖延長剤で構成されなければならない(同上)。末端アミン修飾ポリマー樹脂は、意図的なヒドロキシル部分を有しない(同上)。ヒドロキシルがあるならば、それは、末端アミン修飾ポリマー樹脂への不完全な転換の結果である(同上)。樹脂ブレンドはまた、添加物、すなわち非主成分を含むこともできる(同上)。これらの添加物は、ヒドロキシル、たとえば、ポリオール担体中に予備分散した顔料を含むことができる(同上)。通常、樹脂ブレンドは触媒を含有しない(同上)。
【0036】
ポリウレアは、同様な用途で現在使用されている他の従来材料に対して数多くの利点を有する。ポリウレアは、UV光に対して高い耐性を有する。加えて、ポリウレアは、低い弾性および伸び特性を有する。これが、電子カード1が剛性を維持することを可能にする。さらに、ポリウレアは、高い結合性を有して、それが上下のオーバーレイ40、30を回路コンポーネント20に効果的に結合することを可能にする。回路コンポーネント20はまた、ポリウレアが低い収縮率を有するという事実により、定位置で強固に保持される。本発明の電子カード1はまた、ポリウレアの低い吸湿性および高温安定性のおかげで、望ましい環境特性を有する。
【0037】
次に、本発明の電子カードを製造する方法を説明する。
【0038】
まず、プリント回路板10を用意する。プリント回路板10は上面11および下面12を有する。プリント回路板10の上面11には回路トレース14が存在する。または、プリント回路板10は、上面11および下面12に回路トレース14を有する両面プリント回路板であってもよい。
【0039】
次に、複数の回路コンポーネント20をプリント回路板10の上に配置し、プリント回路板10の上面および/または下面の回路トレース14に電気的に接続する。好ましくは、図2に示すように、大きめおよび/または高めの回路コンポーネント20、たとえばバッテリ21を回路板10の長手に沿って同じ領域に配置する。電子カード1のこの部分は、電子カード1の、小さめの回路コンポーネント20を有する他の部分よりも大きな厚さを有する。回路コンポーネント20は、導電性両面テープの使用をはじめとするいくつかの方法のいずれか一つによって接続することができる。好ましくは、複数の回路コンポーネント20は従来のはんだ付けプロセスによって接続される。
【0040】
次に、プリント回路板10の下面12を下オーバーレイ30に付着させる。好ましくは、下面12は、感圧接着テープまたはスプレーオン接着剤を使用して下オーバーレイ30に取り付ける。
【0041】
次いで、下オーバーレイ30に取り付けられたプリント回路板10を一つの完全なシートとして射出成形装置に装填する。上オーバーレイ40を射出成形装置に入れ、上オーバーレイ40がプリント回路板10の上面11の上方に来るように位置決めする。射出成形装置は、電子カード1の設計規格に基づいて事前に構成して、上オーバーレイ40が電子カード1の様々な厚さに適合するように上オーバーレイを操作する。
【0042】
射出成形装置は、反応射出成形機(個別に「RIM」と呼ばれることが多い)であってもよい。これらの機械は、上オーバーレイ40および下オーバーレイ30を構成するポリマー材料(たとえばPVC)のシートの少なくとも一つに対して冷間低圧成形作業を実施することができる上モールドシェルおよび下モールドシェルに対応する。このような上下のモールドシェルは、ポリマー材料成形技術の当業者には周知である方法で係合する。
【0043】
次いで、射出成形装置は、熱硬化性ポリマー材料をノズル60 (図3に示す)に通して上オーバーレイ40と下オーバーレイ30との間に射出して、熱硬化性ポリマー材料からコア層50を成形する。モールドに基づいて、コア層50は、電子カード1の至る所で異なる厚さに成形される。たとえば、図1に示すように、バッテリ21を包囲する区域におけるコア層50の厚さは、より小さな回路コンポーネントを包囲する区域におけるコア層50の厚さよりも大きい。好ましくは、上述したように、熱硬化性ポリマー材料はポリウレアである。
【0044】
冷間低圧成形条件とは、一般に、熱硬化性ポリマー材料からなるコア層50の温度が上オーバーレイ40および下オーバーレイ30の加熱撓み温度未満であり、圧力が約500psi未満である成形条件をいう。好ましくは、冷間成形温度は、上オーバーレイ40および下オーバーレイ30の加熱撓み温度よりも少なくとも100度F低い。多くのポリ塩化ビニル(PVC)材料の加熱撓み温度は約230度Fである。したがって、本発明でそのようなPVCシートを冷間成形するために使用される温度は約(230度F−100度F) 130度F以下である。
【0045】
本発明の一つの態様にしたがって、より好ましい冷間低圧成形手法は、好ましくはほぼ大気圧〜約500psiの範囲の圧力下、約56度F〜約160度Fの範囲の温度での熱硬化性ポリマー材料の射出を含む。本発明のもう一つの態様において、電子カード1に射出される熱硬化性ポリマー材料の温度は、好ましくは約80〜120psiの範囲の射出圧力下、約100度F〜約120度Fである。本発明の一つの態様においては、液状または半液状の熱硬化性ポリマー材料を、これらの好ましい温度および圧力条件下、毎秒約0.1〜約70グラムの範囲の流量で射出する。毎秒30〜50グラムの流量がさらに好ましい。
【0046】
そのような比較的冷温で低圧の成形条件の使用は、所与のゲート(すなわち、ランナを個々の装置成形キャビティと接続する通路)が、従来技術の熱間高圧作業で使用されるゲートよりも大きいものであることを要するかもしれないことが留意されよう。好ましくは、ゲートは、冷間低圧成形条件下で射出される熱硬化性ポリマー材料を速やかに通すことができるよう、従来技術のゲートよりも比較的大きい。同様に、ランナ(すなわち、熱硬化性材料の供給を個々のゲートに送る、モールドシステム中の主熱硬化性ポリマー材料供給路)は、通常、マルチゲートまたはマニホルドアレイにあり、したがって、プロセスで使用される比較的低温(たとえば56度F〜160度F)および比較的低圧(たとえば大気圧〜500psi)条件でマニホルドシステム中の多数のゲート/装置成形キャビティ(たとえば4〜8個のキャビティ)に同時に供給することができるべきである。低温低圧条件下でのポリマー熱硬化性材料の流量は、装置成形キャビティ1個あたり約10秒またはそれ未満(より好ましくは約3秒未満)で所与の装置成形キャビティを完全に充填することができる。好ましくは、1秒未満の装置成形キャビティ充填時間がさらに好ましい。これらの条件を考慮して、プロセスは、成形される装置の前縁(すなわち、ゲートに接続される装置縁)の長さの大きな割合を占める幅を有するゲートを使用することができる。好ましくは、所与のゲートの幅は、前縁、すなわち、成形される埋め込み電子の「ゲートで制止される」縁の幅の約20%〜約200%である(または、複数のゲートを使用して同じ装置成形キャビティを充填することもできる)。
【0047】
好ましくは、比較的幅広い流入区域から成形される装置の前縁またはその近くで終端する比較的狭いコア領域まで先細りするゲートが使用される。もっとも好ましくは、これらのゲートは、熱硬化性材料供給ランナと流動的に接続する比較的太い直径(たとえば約5〜約10mm)の射出口から、ゲートが、最終的には完成した電子カード1の中心またはコアになる空間に熱硬化性材料を送り込む比較的細い直径(約0.10mm)のゲート/装置縁まで狭まる。約7.0mmの初期直径から約0.13mmの最小直径まで先細りするゲートが、好ましい冷間低圧射出条件下で特に良好な結果をもたらす。
【0048】
使用することができるもう一つの任意の特徴は、空気または他のガス(たとえば、大部分のポリマー熱硬化材料を調合するために使用される成分が混合されたとき生じる発熱性化学反応によって形成されるガス)を上層40と下層30との間の空間から消去するために前記空間に故意に射出することができる「余剰」ポリマー材料を受けるための一つまたは複数の受け器を有するモールドシェルの使用である。これらの熱硬化成分は、好ましくは、空間への射出の直前(たとえば0.何秒か前)に混合される。
【0049】
熱硬化性ポリマー材料の射出ののち、成形された構造物を射出成形装置から取り出す。本発明の一つの態様にしたがって、一つの成形シートからいくつかの電子カード1が切り出される。図4は、一つのシートの上に形成されたいくつかの電子カード1を示す。本発明のもう一つの態様にしたがって、射出されたシートが電子カード1に対応する。電子カード1の剛性は、電子カード1の個々のコンポーネントそれぞれの組成に使用される材料に依存する。
【0050】
次いで、完成した電子カード1は、余剰ポリマー材料から取り出され(たとえば、前駆体装置ボディからトリミングすることにより)、電子カード1の機能性および設計パラメータに依存する規定のサイズ(たとえば、ISO規格7810に準じる85.6mm×53.98mm)に切断される。トリミングプロセスはまた、1回の切断/トリミング作業で余剰材料を除去することができる。また、このような装置を工業生産作業で製造するために使用される成形装置が、もっとも好ましくは、そのような装置いくつかを同時に製造するために多数の(たとえば、2、4、6、8などの)キャビティを有するモールドシェルを有するということが当業者によって十分に理解されよう。
【0051】
本発明は、一つまたは複数の電子カードを製造する費用効果的なやり方をはじめとするいくつかの利点を有する。電子カードは、電子カードの全体サイズを有意に増すことなく、より多様な大きめおよび高めの回路コンポーネント、たとえば大きな電源を使用するように設計されている。電子カードの一部分は、電子カードが大部分の標準的用途とで適合性であることを可能にする物理的寸法を有する。加えて、電子カードの異なる厚さを使用して、ロゴ、商標または他の望ましいマーケティング特徴を強調し、表示することができる。
【0052】
さらには、電子カード中のモジュールの大部分は、製造コストを下げる従来のやり方で構築することができる。加えて、ポリウレアの使用により、方法は、撓みまたは反りを生じさせるおそれのある内部応力点を受けにくい、より剛性のカードまたはタグを製造する。そのうえ、本発明の方法は、多数の電子カードを一度に製造するように容易に適合させることができる。
【0053】
本発明の好ましい態様の前記記載は、例示および説明のために提示したものである。すべてを網羅するものとして意図したものでもなく、本発明を開示どおりの形態に限定することを意図したものでもなく、改変および変形が、上記教示を考慮して可能であり、本発明の実施から得ることができる。態様は、本発明の原理を説明するために、当業者が本発明を様々な態様で考慮される具体的な用途に適した様々な改変を加えながら利用することを可能にするための実際の用途として選択され、記載されたものである。本発明の範囲は請求の範囲およびその等価物によって画定されるものと解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有するプリント回路板;
該プリント回路板の該上面に取り付けられた複数の回路コンポーネント;
該プリント回路板の該下面に取り付けられた下オーバーレイ;
該プリント回路板の該上面の上方に配置された上オーバーレイ;および
該プリント回路板の該上面と該上オーバーレイとの間に配置されたコア層
を含む電子カードであって
電子カードの第一の部分が電子カードの第二の部分よりも大きな厚さを有する、電子カード。
【請求項2】
プリント回路板が、複数の回路コンポーネントに動作可能に接続するように構成された複数の回路トレースを上面に有し、プリント回路板の下面の複数の回路コンポーネントに動作可能に接続するように構成された複数の回路トレースを下面に有することができる、請求項1記載の電子カード。
【請求項3】
電子カードの第一の部分が電子カードの第二の部分の少なくとも2倍の厚さである、請求項1記載の電子カード。
【請求項4】
電子カードの第一の部分に配置された回路コンポーネントが、電子カードの第二の部分に配置された回路コンポーネントよりも高さが大きい、請求項1記載の電子カード。
【請求項5】
電子カードの第一の部分にバッテリが配置されている、請求項1記載の電子カード。
【請求項6】
電子カードの第一の部分が.030〜.090インチの範囲の厚さを有する、請求項1記載の電子カード。
【請求項7】
電子カードの第二の部分が.030インチまたはそれ以下の厚さを有する、請求項1記載の電子カード。
【請求項8】
プリント回路板が、ガラス繊維強化エポキシ樹脂(FR-4)との難燃性ラミネートで構成されている、請求項1記載の電子カード。
【請求項9】
上下のオーバーレイがいずれもポリ塩化ビニルで構成されている、請求項1記載の電子カード。
【請求項10】
コア層が熱硬化性ポリウレアで構成されている、請求項1記載の電子カード。
【請求項11】
複数の回路コンポーネントの一つが少なくとも一つの押しボタンを含む、請求項1記載の電子カード。
【請求項12】
複数の回路コンポーネントの一つが少なくとも一つの液晶ディスプレーを含む、請求項1記載の電子カード。
【請求項13】
複数の回路コンポーネントの一つが少なくとも一つのマイクロプロセッサチップを含む、請求項1記載の電子カード。
【請求項14】
複数の回路コンポーネントの一つが少なくとも一つのスピーカを含む、請求項1記載の電子カード。
【請求項15】
電子カードを製造する方法であって、
上面および下面を有するプリント回路板を提供するステップ;
複数の回路コンポーネントを該プリント回路板の該上面に付着させるステップ;
感圧接着テープまたはスプレーオン接着剤を使用して該プリント回路板の該下面を下オーバーレイに付着させるステップ;
該プリント回路板および下オーバーレイを射出成形装置に装填するステップ;
該プリント回路板の上面の上方に配置された上オーバーレイを該射出成形装置に装填するステップ;
該プリント回路板の該上面、該複数の回路板コンポーネント、および該上オーバーレイの間に、電子カードの第一の部分が電子カードの第二の部分よりも大きな厚さを有するように熱硬化性ポリマー材料を射出するステップ;
を含む方法。
【請求項16】
電子カードの第一の部分に配置された回路コンポーネントが、電子カードの第二の部分に配置された回路コンポーネントよりも高さが大きい、請求項15記載の方法。
【請求項17】
バッテリが電子カードの第一の部分に配置される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
複数の電子カードが一つのプリント回路板上に成形される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
射出された上下のオーバーレイをモールドから取り出すステップ;および
複数の電子カードを切り出すステップ
をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
プリント回路板中にトレースをエッチングすることによって回路トレースが形成される、請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−522396(P2010−522396A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500938(P2010−500938)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/003727
【国際公開番号】WO2008/118352
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507332239)イノベイティア インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】