説明

ステータブレードの角度位置を制御するためのシステム、および前記角度位置を最適化するための方法

本発明は、速度(N1,N2)のうちの1つに従ってブレードの設定角度位置(VSVCAL)を計算するための手段(20)と、設定位置(VSVCAL)を補正するためのモジュール(1)であって、ブレードの角度位置(VSV)を決定するための手段(2)、タービンエンジンの燃料流量(WFM)を測定するための手段(3)、ブレードの連続する角度位置(VSVCOU,VSVREF)が前記角度位置において測定されるタービンエンジンの燃料流量(WFMCOU,WFMREF)と組み合わせられるメモリユニット(4)、およびブレードの2つの連続する角度位置(VSVCOU,VSVREF)の間で測定される燃料流量(WFMCOU,WFMREF)の間の差に従って補正角度(VSVCORR)を決定するための手段(5)を含むモジュールとを含むステータブレードの角度位置を制御するためのシステムに関する。また、本発明は、前記共通の角度位置を最適化するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのスプールを備え、ブレードが可変ピッチブレードである1つまたは複数のステータ段を備えるガスタービンエンジンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、タービンエンジンが定常速度で作動するときに燃料消費を低減するように前記ステータブレードの角度位置を最適化することである。「定常速度」とは、エンジンによって与えられる推力が実質的に経時的に一定であるエンジン速度を意味する。
【0003】
例として、ツインスプールガスタービンエンジンの各スプールは、少なくとも1つの圧縮機と、前記圧縮機の下流に取り付けられる1つのタービンとを備えている。慣例として、本出願では、用語「上流に(upstream)」および「下流に(downstream)」は、タービンエンジンでの空気の移動の方向に対して規定される。伝統的に、圧縮機は、エンジンで上流から下流に移動する空気流を加速かつ圧縮するために、いくつかのロータ段を備える。加速後に空気流を整流するために、ステータ段は、各ロータ段の出口に直接配置される。
【0004】
ステータ段は、ステータホイールの周囲に取り付けられる半径方向ステータブレードを有する、軸方向に延在する固定ホイールの形をとっている。ロータ段の下流のステータ段によって空気流の整流を最適化するために、ステータブレードの角度配向を修正することができ、このブレードは、可変ピッチブレードと呼ばれる。したがって、タービンエンジンは、圧縮機のステータブレードの角度位置を制御するためのシステムを備える。
【0005】
従来、概略図1Aを参照して、ツインスプールタービンエンジンMのステータブレードの角度位置は、主として、高圧ロータの回転速度N2、および圧縮機の入口の温度T25の関数として決定されている。したがって、制御システムは、ロータの所与の回転速度N2について各ステータホイールのブレードの角度位置の設定値VSVCALを計算するための手段20を備える。計算された設定値VSVCALは、タービンエンジンMのステータブレードの現在の角度位置を修正するように配置される制御アクチュエータ6に伝送される。
【0006】
計算手段20は、余りにも最近の(工場出しの新しいエンジン)ものでもなく、また余りにも「使い古した」(オーバーホールに備える)ものでもない「平均的な」エンジンに適合するために、予め決定されている数学法則によってプログラムに組み込まれる。
【0007】
実際には、現実のエンジンは、数学法則が計算している「平均的な」エンジンに対応していない。現在のシステムの数学法則は、エンジンのマージン要件(経年変化に対するロバスト性についてのマージン、エンジンからエンジンまでのばらつきについてのマージン、汚損のマージン等)を考慮に入れる。この結果は、ブレードの角度位置が、実際のエンジンに対して最適化されないが、新しいエンジンにもまたは劣化したエンジンにもロバストであることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決策は、エンジン摩耗のパラメータ、およびエンジンの間のばらつきを考慮に入れられるように、数学法則を修正することであろう。しかし、この解決策は、適用するのが困難であり、パラメータは、非常に多く、モデル化するのが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの欠点を改善するために、本出願人は、それぞれが回転速度(それぞれ、N1およびN2)を有する、定常速度で作動するタービンエンジン用の少なくとも2つのスプールを備えるタービンエンジン圧縮機の可変ピッチステータブレードの角度位置を制御するためのシステムであって:
速度(N1,N2)のうちの1つの関数としてブレードの角度設定位置を計算するための手段と、
設定位置を補正するためのモジュールであり:
ブレードの角度位置を決定するための手段、
タービンエンジンの燃料流量を測定するための手段、
ブレードの連続する角度位置が前記角度位置において測定されるタービンエンジンの燃料流量と関係付けられるメモリ、および
ブレードの2つの連続する角度位置の間で測定される燃料流量の間の差の関数として補正角度を計算するように配置される、補正角度を決定するための手段
を備えるモジュールと
を備えるシステムを提案している。
【0010】
本発明によるシステムであれば、有利なことに、タービンエンジンによって燃料の消費を最適化するブレードの角度位置を決定することができる。本出願人は、タービンエンジンの燃料流量が所与の定常速度においてブレードの角度位置の関数であり、この関数が局所的に極小点を有することを決定している。換言すれば、ブレードの角度位置を局所的に変更することによって、燃料流量を制限するようにブレードの現在の角度位置をどの程度まで修正することが必要であるかを決定することができる。本発明の補正モジュールにより、所与の定常速度においてエンジンの性能を改善するために、ブレードの角度位置を制御するための従来システムを補足することができる。
【0011】
ブレードの角度位置を決定するための法則が、エンジンパラメータまたはその摩耗パラメータのばらつきを考慮に入れることなくエンジンすべてについて静的である先行技術とは異なって、本発明によるシステムであれば、エンジンの状態の関数としてブレードの角度位置を調整することができる。エンジンの摩耗やばらつきのパラメータすべてを列挙し、かつ多様な複雑な数学法則を得る代わりに、本出願人は、燃料の消費に基づく角度の変化の影響を直接測定する。
【0012】
本発明によって、「平均的な」エンジンに対応する数学モデルを基礎として計算される理論的設定位置が補正される。この種のシステムは、現存するタービンエンジンにただ組み込まれることができる。解決されるべき問題のこの新しい公式化により、ブレードの角度位置の最適値を決定することができる。
【0013】
システムは、設定角度位置に補正角度を加算することによって最適化された設定位置を計算するように配置される加算器を備えることが好ましい。したがって、これは、燃料の消費を考慮に入れるように設定値を補正する。
【0014】
また、システムは、最適化された設定位置の関数としてブレードの角度位置を制御するように配置されるアクチュエータを備えることが好ましい。したがって、現在の角度位置は、最適化された設定位置「に従う」ようにアクチュエータによって修正される。
【0015】
また、補正モジュールは、タービンエンジンの状態をチェックするための手段と、ブレードの現在の角度位置の補正を禁止するための手段とを備え、禁止手段は、タービンエンジンの状態がブレードの角度位置の補正に適切でない場合に作動されることが好ましい。
【0016】
禁止手段は、タービンエンジンの状態がブレードの角度位置の補正に適切でない場合に作動される。禁止手段により、チェック手段からの指令に基づいて、タービンエンジンを危険にさらす恐れがあり、またはその作動状態に適切でないことになるブレードの角度位置の修正を防止することができる。
【0017】
補正モジュールは、補正角度の値を制限するための手段を備え、前記手段は、リスクのない作動範囲内にとどまるために、補正角度の値を制限するように配置されることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上で説明されたような制御システムを備えるタービンエンジンに関する。
【0019】
また、本発明は、それぞれが速度(N1;N2)で回転する、定常速度で作動するタービンエンジン用の少なくとも2つのスプールを備えるタービンエンジン圧縮機のステータブレードの現在の角度位置を最適化するための方法であって:
a)タービンエンジンの基準燃料流量が、ブレードの基準角度位置において決定され、
b)タービンエンジンの現在の燃料流量が、ブレードの現在の角度位置において決定され、
c)補正角度が、燃料流量を低減するように基準燃料流量と現在の燃料流量との間の差の関数として計算され、
d)前記補正角度が、最適化された設定位置を得るように、予め計算された設定位置に加算され、
e)ブレードの現在の角度位置が、最適化された設定位置に対応するように修正される、方法に関する。
【0020】
ステップ(a)からステップ(e)は、先行する繰返しのステップ(b)の現在の角度位置をステップ(a)の基準角度位置として使用することによって繰り返されることが好ましい。
【0021】
有利なことに、これにより、「徐々に」ブレードの角度位置を最適化することができ、それにより、正確であり、過度現象の発生などの有害な副作用を有さない最適化が確実になる。
【0022】
また、補正角度は、最適化方法によって、好ましくは、ブレードの角度位置に対してタービンエンジンの燃料流量を規定する燃料関数Fの最急降下法によって計算されることが好ましい。
【0023】
燃料関数Fは、局所的な極小点を可能にし、それにより最適化方法の収束が確実になる。これは、時折凸であることができ、それにより最適角度位置の存在が確実になる。
【0024】
今までどおり、補正角度の値は、リスクのない作動範囲(過速度、サージ、温度上昇等)内にとどまるために制限されることが好ましい。
【0025】
本発明の他の実施形態によれば、エンジンの状態がチェックされ、ブレードの現在の角度位置の修正は、タービンエンジンの状態がブレードの角度位置の補正に適切でない場合には禁止される。
【0026】
本発明は、添付の図面を使ってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】先行技術によるブレードの角度位置を制御するためのシステムを示す図である。
【図1B】本発明による角度位置を補正するためのモジュールを有する、ブレードの角度位置を制御するためのシステムを示す図である。
【図2】補正角度を計算するように配置されるタービンエンジンのステータブレードの角度制御システムの第1の実施形態の概略図である。
【図3】補正禁止手段を有する制御システムの第2の実施形態の概略図である。
【図4】補正角度の値を制限するための手段を有する制御システムの第3の実施形態の概略図である。
【図5】エンジンの決定された定常速度に対して、エンジンのステータブレードの角度位置の関数としてエンジンの燃料流量の変化を示す曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によるタービンエンジンのHP圧縮機のステータブレードの角度位置を制御するためのシステムが、ツインスプールエンジン、すなわち回転速度N1を有する低圧LPスプールおよび回転速度N2を有する高圧HPスプールに対して、図1Bに示されている。スロットルの助けによって、エンジンは、所望の推力をこれに指示することによって制御され、推力は、低圧LPスプールの速度に直接結合される。したがって、推力設定は、LPスプールの回転速度設定N1DMDを強制する。明快さのために、LPスプールの回転速度に関する参照符号N1はまた、これらの2つのパラメータの間の直接結合のため、エンジン推力に対しても使用される。同様に、参照符号N1は、エンジン推力との直接結合を有する他のパラメータ、特に、当業者にはよく知られている「エンジン圧力比(Engine Pressure Ratio)」に対応するパラメータEPRに対応することができる。
【0029】
従来、タービンエンジンは、高圧本体の回転速度N2、および高圧(HP)スプールの温度T25の関数としてステータブレードの設定角度位置VSVCALを計算するための手段20を備えている。計算手段20は、HPスプールの回転速度N2の関数として設定角度位置VSVCALの計算を可能にする、当業者によく知られている数学法則によってプログラムに組み込まれる。
【0030】
また、本発明による制御システムは、エンジンMのステータブレードの設定位置VSVCALを補正するためのモジュール1を備えている。補正モジュール1により、燃料の消費を最適化する補正角度VSVCORRを決定することができる。また、制御システムは、その2つの入力パラメータ(VSVCORR,VSVCAL)の全体に対応する最適化された設定値VSVNEWを出力として伝送するために、計算された設定値VSVCALおよび補正角度VSVCORRを入力として受け取るように配置される加算器Sを備える。また、制御システムは、最適化された設定値VSVNEWの関数としてブレードの現在の角度位置VSVCOUを修正する制御アクチュエータ6を備える。
【0031】
今までどおり図1Bを参照して、制御システムは、補正ネットワークとも呼ばれる、回転速度N1を維持するために必要な燃料を評価するためのモジュール31を備え、これは、所望の回転速度、すなわち所望の推力レベルに対応する速度設定N1DMDを入力として受け取る。また、制御システムは、補正ネットワーク31によって制御され、かつ、たとえば回転速度センサによって測定される、エンジンの有効回転速度N1EFFの関数として燃料流量を修正することができる燃料制御装置30を備える。
【0032】
エンジンMに供給される燃料流量が要請される推力を実現することができない(N1EFFがN1DMDよりも小さい)場合には、補正ネットワーク31は、エンジンMに供給される燃料流量を増大させ、したがって所望の速度N1DMDと有効速度N1EFFとの間の差を補償するように燃料制御装置30に加えられるべき指令を決定する。
【0033】
図2を参照して、本発明の第1の実施形態による補正モジュール1は、それ自体が知られている、たとえば位置センサの形をとるブレードの角度位置VSVを決定するための手段2と、ブレードの所与の角度位置VSVでタービンエンジンの燃料流量WFMを決定するための手段3とを備えている。流量を決定するためのこれらの手段3は、直接的であり−これらは、タービンエンジン燃焼室のインジェクタの上流に取り付けられるたとえばセンサの形をとる−、または間接的である−タービンエンジンの燃料管の通路の部分を封鎖する要素の直線位置がたとえば測定され、この部分の寸法は知られている−ことができる。一般に、これらの決定手段2、3は、ブレードの角度位置および燃料消費を絶えず監視するために連続的に作動される。
【0034】
また、補正モジュール1は、ブレードの連続する角度位置VSVが前記角度位置VSVにおいて測定されるタービンエンジンの燃料流量WFMと関係付けられるメモリ4を備えている。経時的に、補正モジュール1のメモリ4は、前記決定手段2、3によって補足される。実際には、メモリ4は、いくつかの値の対(VSV,WFM)だけを保持し、最も古い対は、より最近の対によって置き換えられる。例として、メモリ4は、少なくとも2つの対、すなわち一対の現在値(VSVCOU,WFMCOU)、および基準値(VSVREF,WFMREF)と呼ばれる一対の以前の値を備える。
【0035】
この場合は、定常速度においてエンジンの作動に限界があり、エンジンによって供給される推力は、実質的に経時的に一定である。例として、定常運転では、回転速度N1は一定であり、またはパラメータEPRは一定である。定常速度では、有利なことに、制御システム1のメモリ4の対によって規定される、あとで燃料関数Fと呼ばれる離散関数を解析することによって、ステータブレードの角度の値VSVCOUの関数として燃料流量WFMCOUの変化を監視することができる。
【0036】
「イソN1(iso N1)」とも呼ばれる、一定の回転速度N1でのタービンエンジンの作動の場合には、本出願人は、ブレードの角度位置VSVCOUに対して燃料流量WFMCOUを規定する燃料関数Fを研究しており、かつ、この燃料関数Fは局所的に凸であり、したがって燃料の消費が最も少ないブレードの角度位置があり、この最適角度位置は、参照されるVSVOPTであることを決定した。図5は、エンジンの決定された定常速度に対して、燃料関数Fおよび最適角度位置を示している。
【0037】
角度位置VSVOPTは、2つの理由のためにエンジンの最適位置と呼ばれている。第1に、これは、エンジンの決定された定常速度に関して最適であり、最適角度位置は、所与の速度の関数として変化する。第2に、これは、したがってエンジンに関して最適であり、角度位置VSVOPTは、その摩耗の状態および製造ばらつきを当然考慮に入れることによって、エンジンに「適合する」ように規定される。換言すれば、製造マージンおよび取付けに関連する変化に従って、所与のエンジンは、同じシリーズの別のエンジンと厳密に同じ挙動を有するとは限らず、結果として、各エンジンは、これに対して特定の最適角度位置VSVOPTを有することになる。
【0038】
また、補正モジュール1は、補正角度VSVCORRを決定するための手段5を備え、前記手段は、ブレードの2つの連続する角度位置の間で測定される燃料流量の間の差の関数として補正角度VSVCORRを計算するように配置される。換言すれば、補正角度VSVCORRは、エンジンの固有パラメータの解析によってではなく、可能な最少燃料消費WFMOPTを得るように所望の結果の最適化によって計算される。
【0039】
したがって、補正角度VSVCORRを決定するための手段5は、イソN1において燃料関数Fの局所的な極小点を決定するように配置され、これは、この関数の少数の値(すぐ前の連続する角度位置)だけを知って行われる。補正角度VSVCORRを決定するための手段5は、この例では最適化関数によってプログラムに組み込まれ、その関数は、その値を制限しながら補正角度VSVCORRを決定することになる。具体的には、ブレードの現在の角度位置VSVCOUが、値が高すぎる補正角度VSVCORRによって修正される場合には、エンジンを損傷する恐れがある過度現象が、エンジンに発生する。
【0040】
最適化の原理は、現在の角度位置の修正の仕方についてそれから経験で教えられるために、有効燃料流量に基づいてこの角度変化の影響を測定する際に、ブレードの現在の角度位置を局所的に変化させることから成る。
【0041】
したがって、本発明による最適化関数により、過度現象の発生を制限することによって、安全な方法でエンジンの効率を改善することができる。最適化関数は、最急降下法について説明されることになるが、また、最小二乗法等による最適化のような他の最適化方法も適切であろう。最急降下法により、簡単な方法で角度位置を最適化することができる。
【0042】
メモリ4に格納される値の対(VSVCOU,WFMCOU;VSVREF,WFMREF)について、最急降下法は、その先行する角度位置VSVREFに対してブレードの現在の角度位置VSVCOUにおいて燃料関数Fの勾配の値を計算する。したがって、燃料関数Fの収束の方向はそこから推論される。線形最適化手法によって、補正角度VSVCORRは、現在の角度位置VSVCOUにおける勾配の値、ならびに飽和増加量SAT1および収束速度μの関数として計算され、収束速度μは、最適角度位置VSVOPTの高速な収束と、タービンエンジンの過度現象の発生に対する保護との間の妥協を生むように選択される。
【0043】
最適化関数のおかげで、最適化された設定値VSVNEWを得るために設定位置VSVCALに加算されなければならない補正角度VSVCORRの値は、それから推論される。制御アクチュエータ6により、最適化された設定位置VSVNEWに対応するためにブレードの現在の角度位置VSVCOUを修正することができる。現在の角度位置VSVCOUのかなりの修正によって圧縮機がサージする恐れがあるので、最適化された設定位置VSVNEWは、最適角度位置VSVOPTに必ずしも対応するとは限らない。最適化は、繰返しによって徐々に行われることが好ましい。
【0044】
ブレードの角度位置の最適化によって、エンジンは、より少ない燃料流量で所与の速度に調整される。図1Bを参照して、燃料制御装置30は、ブレードの現在の角度位置の修正によるHPスプールの挙動の修正にもかかわらず、同じ速度N1を保持するように補正ネットワーク31に指令する。したがって、このことは、燃料の節約を生じる。
【0045】
図4を参照して、補正モジュール1は、ブレードの現在の角度位置VSVCOUの修正時に振動の発生を防止するように、勾配飽和SAT2の閾値によって補正角度を制限するように配置される、補正角度VSVCORRの値を制限するための手段9を備えることが好ましい。また、これにより、最適化方法の収束の速度をチェックすることができる。飽和関数SAT2および飽和増加量SAT1は、一緒に、または独立して使用され得る。
【0046】
例として、最急降下最適化方法は、下記に再現される数学的関係に従うことができる。
【0047】
VSVCORR(t)=−SAT1[Gradient F(VSVCOU)xμ]+VSVCORR(t−1)
VSVCORR’(t)=signVSVCORR(t))*min(|VSVCORR(t)|,SAT2)
VSVNEW(t)=VSVCAL(t)+VSVCORR’(t)
【0048】
最適化手順を始めるために、最適化を実行しかつプロセスを始めるためにブレードの現在の角度位置を極く僅かに修正することが必要であり得る。次いで、最適化方法は、「システムの「励起(excitation)」によって始められると言われている。また、初期設定は、燃料流量WFMの減少をもたらすブレードの角度位置VSVの変化の方向を示す数学モデルから生じ得る。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、図3を参照して、補正モジュール1は、補正角度を決定するための手段5によって、計算された補正角度VSVCORRの値を相殺するように配置される禁止手段7を備えている。これにより、エンジンが定常速度で作動していないときに制御アクチュエータ6によってブレードの角度位置の補正を防止することができる。
【0050】
制限手段9および禁止手段7は、1つの同じ制御システム1に使用されることもできることは言うまでもない。
【0051】
この実施形態では、禁止手段7は、エンジンの状態、すなわち「その健康状態」を測定するための手段8に接続される「OR」論理ゲートの形をとっている。例として、エンジンの状態を測定するための手段8は、下記のものを備えている:
サージ型の事象を保存する手段。サージがタービンエンジンの寿命中に検出されている場合には、論理は、禁止手段7によって禁止される。
所定のマージンに対して、EGT「Exhaust Gas Temperatue(排気ガス温度)」マージンパラメータと呼ばれる、排気ガスの温度マージンを測定するための手段。不十分なマージンがある場合には、論理は、禁止手段7によって禁止される。
高圧圧縮機の流量および効率の係数を測定するためのセンサによってタービンエンジンの圧縮機の状態を評価するための手段。エンジンの状態を表すこれらの係数は、「健康な」エンジン、すなわち良好な状態のエンジンに対して所定の閾値の値と比較される。閾値を超えられてしまう場合には、論理は、禁止手段7によって禁止される。
たとえばLPスプールの速度(N1EFF)、HPスプールの速度(N2)、およびこれらの変化などの値を測定するように配置される、エンジンの安定性を測定するための手段。万一過度現象の場合には、論理は、禁止手段7によって禁止される。
【0052】
同様に、航空機の操縦士がスロットルを作動することによってエンジンを加速または減速するように望む場合には、補正は禁止され、ブレードの角度位置は、最適化されない。このチェックは、エンジンの過度現象を監視するための、図示していない手段によって行われる。
【0053】
また、本発明は、定常速度で作動するタービンエンジン用の、それぞれがある速度で回転する少なくとも2つのスプールを備えるタービンエンジン圧縮機のステータブレードの現在の角度位置を最適化するための方法にも関し:
a)タービンエンジンの基準燃料流量WFMREFは、ブレードの基準角度位置VSVREFにおいて決定され、
b)タービンエンジンの現在の燃料流量WFMCOUは、ブレードの現在の角度位置VSVCOUにおいて決定され、
c)補正角度VSVCORRは、燃料流量を低減するように基準燃料流量WFMREFと現在の燃料流量WFMCOUとの間の差の関数として計算され、
d)補正角度VSVCORRは、最適化された設定位置VSVNEWを計算するように、設定位置VSVCALに加算され、
e)ブレードの現在の角度位置VSVCOUは、最適化された設定位置VSVNEWに対応するように修正される。
【0054】
ステップ(a)からステップ(e)は、先行する繰返しのステップ(b)の現在の角度位置VSVCOUをステップ(a)の基準角度位置VSVREFとして使用することによって繰り返されることが好ましい。
【0055】
図5に示されるように、ブレードの角度位置VSVCOUは、燃料の消費を最小限にするように、各繰返し(I,I,I)の後に最適化される。有利なことに、これにより、ブレードの角度位置の急激な変化の場合にはエンジンを破壊する可能性が高い過度現象の発生を防止すると同時に、所与の速度において燃料の消費を最適化する最適角度位置VSVOPTに接近させることができる。
【0056】
また、エンジン速度の安定性が試験され、本発明による制御システムで説明されたように、ブレードの現在の角度位置VSVCOUの修正は、安定性試験が失敗した場合には禁止されることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが回転速度(それぞれ、N1およびN2)を有する、定常速度で作動するタービンエンジン用の少なくとも2つのスプールを備えるタービンエンジン圧縮機の可変ピッチステータブレードの角度位置を制御するためのシステムであって、
速度(N1,N2)のうちの1つの関数としてブレードの角度設定位置(VSVCAL)を計算するための手段(20)と、
設定位置(VSVCAL)を補正するためのモジュール(1)であり、
ブレードの角度位置(VSV)を決定するための手段(2)、
タービンエンジンの燃料流量(WFM)を測定するための手段(3)、
ブレードの連続する角度位置(VSVCOU,VSVREF)が前記角度位置(VSVCOU,VSVREF)において測定されるタービンエンジンの燃料流量(WFMCOU,WFMREF)と関係付けられるメモリ(4)、および
ブレードの2つの連続する角度位置(VSVCOU,VSVREF)の間で測定される燃料流量(WFMCOU,WFMREF)の間の差の関数として補正角度(VSVCORR)を計算するように配置される、補正角度(VSVCORR)を決定するための手段(5)
を備えるモジュール(1)と、
設定角度位置(VSVCALC)に補正角度(VSVCORR)を加算することによって最適化された設定位置(VSVNEW)を計算するように配置される加算器(S)と、
最適化された設定位置(VSVNEW)の関数としてブレードの角度位置を制御するように配置されるアクチュエータ(6)と
を備える、システム。
【請求項2】
補正モジュール(1)が、タービンエンジンの状態をチェックするための手段(8)と、ブレードの現在の角度位置(VSVCOU)の補正を禁止するための手段(7)とを備え、禁止手段(7)が、タービンエンジンの状態がブレードの角度位置の補正に適切でない場合に作動される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
補正モジュール(1)が、補正角度(VSVCORR)の値を制限するための手段(9)を備え、前記手段が、補正角度(VSVCORR)の値を制限するように配置される、請求項1および2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御システムを備える、タービンエンジン。
【請求項5】
それぞれが速度(N1;N2)で回転する、定常速度で作動するタービンエンジン用の少なくとも2つのスプールを備えるタービンエンジン圧縮機のステータブレードの現在の角度位置(VSVCOU)を最適化するための方法であって、
a)タービンエンジンの基準燃料流量(WFMREF)が、ブレードの基準角度位置(VSVREF)において決定され、
b)タービンエンジンの現在の燃料流量(WFMCOU)が、ブレードの現在の角度位置(VSVCOU)において決定され、
c)補正角度(VSVCORR)が、燃料流量を低減するように基準燃料流量(WFMREF)と現在の燃料流量(WFMCOU)との間の差の関数として計算され、
d)前記補正角度(VSVCORR)が、最適化された設定位置(VSVNEW)を得るように、予め計算された設定位置(VSVCAL)に加算され、
e)ブレードの現在の角度位置(VSVCOU)が、最適化された設定位置(VSVNEW)に対応するように修正される、方法。
【請求項6】
ステップ(a)からステップ(e)が、先行する繰返しのステップ(b)の現在の角度位置(VSVCOU)をステップ(a)の基準角度位置(VSVREF)として使用することによって繰り返される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
補正角度(VSVCORR)が、最適化方法によって、好ましくは、ブレードの角度位置(VSV)に対してタービンエンジンの燃料流量(WFM)を規定する燃料関数Fの最急降下法によって計算される、請求項5および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
タービンエンジンの過度現象の発生を制限するために、補正角度(VSVCORR)の値が制限される、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−506793(P2013−506793A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532645(P2012−532645)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052000
【国際公開番号】WO2011/042636
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】