スパッタリングのための方法及び装置
【課題】基材にさらされる面を有するスパッタターゲットと、当該ターゲットの面に対して移動する磁界を与えるマグネトロンとを有する、基材上に層を堆積させるためのスパッタリング装置を用いたスパッタリング法を提供する。
【解決手段】本発明においては、場の移動速度は、基材上の堆積の均一性が向上するように制御される。とりわけ、本方法は、均一性対速度を監視する工程;好ましい均一性を与える速度を選択する工程;及び選択された速度に場を制御する工程を含む。選択された速度はターゲットの寿命にわたって変化させることができ、ターゲットが薄くなるにつれて速度を高くすることが望ましい。
【解決手段】本発明においては、場の移動速度は、基材上の堆積の均一性が向上するように制御される。とりわけ、本方法は、均一性対速度を監視する工程;好ましい均一性を与える速度を選択する工程;及び選択された速度に場を制御する工程を含む。選択された速度はターゲットの寿命にわたって変化させることができ、ターゲットが薄くなるにつれて速度を高くすることが望ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数の基材にさらされる面を有するスパッタターゲットと、当該ターゲットの面に対して移動する磁界を与えるマグネトロンとを有する、基材上に層を堆積させるためのスパッタリング装置を用いたスパッタリング法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェハ上への膜の形成において行われる大部分の堆積プロセスでは、鍵となる製造基準の1つは、堆積される膜の厚さがウェハ全体にわたって均一であることである。とりわけ、音波共振器に関しては、膜厚が共振周波数に影響を及ぼすため、ウェハ上のすべての共振器が同じ周波数で共振するためには、膜厚が同じでなければならない。
【0003】
接近して置いたマグネトロンスパッタリングのターゲットアセンブリから基材上に十分均一な堆積を達成するための鍵となる要素の1つは、磁界を基材に対して移動させる方法である(他にとりうる方法としては、供給源と基材の距離を大きくして、しかし低スパッタリング効率という代償を払って点源に近くすることである)。
【0004】
これは、静的なマグネトロン/ターゲットアセンブリを通り過ぎて基材を移動させることによって達成することもできる。より最近では、とりわけ、基材のサイズが大きくなっているので、基材を静止させたままにして、例えば、マグネトロンの物理的な回転によって磁界を動かすことが好まれている(又は適切な電気的スイッチングによって磁界を動かし、結果として固定されたコイル配列の場をターゲット面を横切って掃引することが好まれている)。ターゲット寿命を通して材料の堆積厚さの均一性(基材から基材の反復性)を改善するために、場生成部材(例えば、回転磁石)をターゲット上を横方向に動かすこと及びターゲットとマグネトロンの間隔を変化させることもまた公知である。これらの技術及び出願人らによって開発された他の技術を用いて良好な結果が達成されたが、均一性が十分でないことが、反応性スパッタリングプロセスにおいて依然として重大な問題であるとわかった。
【0005】
それは、ターゲットに対するマグネトロンの動きではなく(ターゲットから浸食のポイントを移動させること、即ち、スパッタされる材料の供給源を移動させることによって)基材上の堆積の均一性を改善する、即ち、改善されたターゲットの消費を達成する基材に対するマグネトロンの相対的な動きであると認識することが重要である。
【0006】
(100mm〜300mmのシリコンウェハ上への金属被覆において通常行われる)単一ウェハの密着型マグネトロンスパッタリングの場合には、一般的に、ターゲットは(チャンバーサイズ及びターゲット材料の在庫を最小限に抑えるために)ウェハよりも少し大きく、(ターゲットの利用効率を最大にするために)可動型のマグネトロンと密着され、当該マグネトロンが磁界を掃引して基材上の膜堆積の均一性(及びターゲット浸食の均一性)が増す。
【発明の開示】
【0007】
1つの態様によれば、本発明は、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法にあり、当該方法は、基材上の堆積の均一性が向上するように場の移動速度を制御することを含む。
【0008】
以下に示されるように、出願人らは、驚くべきことに、場がターゲット面を横切って通過する速度が、ターゲットに対面する基材上の堆積の均一性レベルに作用することを見出した。非常により驚くべきことには、出願人らは、不均一性を最小にする速度に回転速度を制御することにより、不均一性の最小値を容易に決定できかつより優れた均一性を達成できることを見出した。言い換えれば、速度は、速度によって向上する均一性を最大にするよう選択することができる。
【0009】
本方法は、
(a)ある範囲の速度にわたって場を移動させる工程;
(b)均一性対速度を監視する工程;
(c)好ましい均一性を与える速度を選択する工程;及び
(d)選択された速度に場を制御する工程
を含むことができる。
【0010】
工程(a)〜(d)は、プロセスの間に及び/又はターゲットの寿命にわたって及び1つ又は多数の基材上で実施することができる。好ましくは、上に示されるように、選択された速度は、最良の均一性を与える速度であり、それは、不均一性の最小量又は均一性の最大量を求めることにより決定することができる。
【0011】
さらに上に示されるように、マグネトロンは物理的に固定できるが、移動場を与えることができ、その場合、選択されるのは場の移動速度である。
【0012】
回転速度は、20〜500rpm(約0.33〜8.33Hz)であることができる。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法にあり、当該方法は、ターゲット面の一部の浸食速度を決定すること、及びターゲット面のすべての部分の浸食が実質的に一定の平均速度になるように、ターゲット面を横切る磁界を走査することを含む。
【0014】
その場合には、浸食速度は(例えば、膜堆積の均一性を参照して直接的に又は間接的に)監視することもできるし、ターゲット寿命を通してスパッタプロセス又は堆積プロセスの間に又は堆積ごとにリアルタイムで制御することもできる。
【0015】
特に好ましい実施態様においては、ターゲットはアルミニウムであり、スパッタリングプロセスは反応性スパッタリングであり、堆積される層は窒化アルミニウムである。
【0016】
なお更なる態様によれば、本発明は、スパッタリング装置であって、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンと、上で規定される方法のいずれかに従って当該装置を操作するための制御手段とを有するスパッタリング装置にある。
【0017】
ターゲットはアルミニウムであることができ、堆積される層は窒化アルミニウムであることができる。
【0018】
本発明が上で規定されたが、それは上に又は以下の説明に記載される特徴を有する本発明の任意の組み合わせを含むことが理解されるであろう。
【0019】
本発明は様々な方法で実施することができ、具体的な実施態様は、添付図面を参照して次に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず図7を参照すると、周知のように、スパッタリング装置は、回転可能なマグネトロン11をその非スパッタリング側に有するターゲット10を含むことができる。当該マグネトロンは、モーター12又は他の手段、例えば、冷却水流を羽根車に衝突させることによって回転させることができる。
【0021】
本発明の装置の実施態様においては、インバータ13が、モーター12の回転速度の制御を可能とするためにモーター12と供給14の間に供給される。
【0022】
このような装置を用いて、出願人らは、以下のプロセス条件のもとでウェハを処理した。
ウェハ:200mm
ターゲット:アルミニウム
ターゲットとウェハの間隔:45mm
Arガス流量:10sccm
N2ガス流量:50sccm
プロセス圧力:2.2mtorr
プラテン温度:400℃、ウェハの固定なし
パルスDCターゲット電力:6kW、パルス周波数:100kHz、パルス幅:+4μs
プラテンバイアス電力:13.56MHzの130W
【0023】
インバータ13を用いてマグネトロンモーター12に対する供給周波数を変化させることにより、マグネトロン11の回転速度を変化させた。図1に示されるプロットは、30Hzがマグネトロンの300rpmに等しいような、マグネトロンのrpmがインバータ周波数の10倍であるマグネトロンモーターの駆動周波数に対する、いわゆる厚さ均一性(%)で構成された。厚さ「均一性」の図は、(半導体産業において「1シグマ均一性」として広く知られる)産業の標準的な表現であるが、実際には、不均一性の量が平均のパーセンテージとして示される標準偏差である。本質的には、値が低くなると、均一性が高くなる。非常に明確に示されるように、マグネトロンモーターのインバータを25〜35Hzの間で変化させたときに、厚さ均一性(%)は、速度とともに変化するだけでなく、(マグネトロンの325rpm、即ち、約5.4Hzに等しい)インバータ周波数32.5Hzで明確かつ識別可能な最小値に達した。
【0024】
これらの結果と物理的に同等なものを図2〜6で明確に示すことができ、図5は、最適な、即ち、「最小の」値を示している。
【0025】
ターゲットが消費されるにつれて最適な回転速度が変化することが見出されたので、ターゲットの浸食が生じるときには、例えば、参照テーブル又はアルゴリズムに従って、図7の装置を用いて前もって回転速度を設定するか又は時間とともに回転速度を変化させることが可能である。
【0026】
しかしながら、図8に示すように、プロセスモジュラーコントローラ15を用いてリアルタイムでこの速度を変化させて、監視パラメータ、例えば、堆積厚さに従ってこの速度を制御することもまた可能である。
【0027】
アルミニウムターゲットを用いた反応性スパッタリングプロセスにおいて窒化アルミニウムを堆積させる場合には、ターゲット寿命を通した堆積の均一性における改善は、ターゲットが消費されるにつれてマグネトロンの速度を高くすることによって達成される。この例は図11に示される。これは、使用量のキロワット時(kWH)で表される累積電力消費で表されるアルミニウムターゲットの使用量を通しての(半導体及びそれに関連する分野において通常であるように「均一性」として表される)基材上の窒化アルミニウム(AlN)の堆積の不均一性と1分当たりの回転数(r.p.m)におけるマグネトロン速度をプロットしている。
【0028】
確認できるように、ターゲットが消費されるにつれて均一性が悪くなる。次いで、マグネトロンの速度を上げると、均一性のパーセンテージが下がる(均一性が改善される)。この例では、合計厚さ(受け板を含む)が24mm、可動型マグネトロンとの間隔が1mm、ターゲット面での場の強さが300ガウスの平面ターゲットを用いた。
【0029】
ターゲット寿命を通しての堆積の均一性は、英国特許第2386128号明細書で記載されているマグネトロンオフセットにおける変化と、マグネトロンの回転速度における変化とを組み合わせることによってさらに最適化された。窒化アルミニウムの堆積に関する均一性の改善は、新しいターゲットに関して約300rpmのマグネトロン回転速度により及び250kWHで380rpm、約350kWHで約420rpm、500kWHの累積電力で約500rpmにマグネトロン速度を段々に上げることにより達成した。これらの特定の値は、ターゲットの厚さとその消費速度に依存している(材料依存)。
【0030】
最良の堆積均一性のための任意の所与のターゲット使用量/厚さにおけるマグネトロン速度は経験的に確立することができ、その結果を用いて、参照テーブル又はアルゴリズム、例えば、ターゲット寿命を通してマグネトロン速度を調節するための制御プログラムで使用できる4次多項式を確立した。
【0031】
更なる実験をモリブデンの非反応性スパッタリング(希ガス環境)について実施した。図9及び10で確認できるように、マグネトロン回転速度を50〜200rpm(0.83〜3.33Hz)で選択したときに最小に達し、175rpmで最良の均一性であった。確認できるように有意な改善が得られた。1.1%〜0.7%の変化は36%の改善である。
【0032】
マグネトロン速度を制御することによる均一性の改善は、共振器について非常に有意であり、ゲート、キャパシタ又はバリヤー層について有意であるが、絶対的なレベルにおいては非常に小さく、均一性がすでに高くない場合にはより大きな効果に隠れてしまう可能性がある。
【0033】
窒化モリブデン及び窒化アルミニウムの例が本明細書で示されたが、とりわけ、極めて優れた膜厚の均一性が、例えば、薄膜バルク音波共振器(FBAR)などの共振器に関して要求される場合に、本発明から利益を得ることができる多くのスパッタリング及び反応性スパッタリングプロセスがある。他の例の電極、シード及び共振性膜は、Au、Ti、ZnO、Cr、NiCr、In、MoC、Zn、W、WSi、Cu、Pt及びSiである。
【0034】
ターゲット面を横切る磁気掃引の周波数を変化させることにより均一性が改善される理由はまだ完全には理解されていないが、それによって経済的かつ容易に実施される均一性の改善方法が提供される。マグネトロン速度は、幹線の供給周波数、水流速度又は他の駆動機構によって一般に固定されることが思い出されるであろう。速度を変化させる手段を追加しないでこの速度を変化させることは直観的には明らかでなく、均一性を最大にする速度を選択することは不可能である。本明細書で示されたように、異なるプロセス及び/又は材料では最大の均一性のために異なる速度が要求されるので、ある範囲の材料又はプロセスに対して最良の均一性を与える1つの固定された速度はない。
【0035】
マグネトロンの走査速度は必ずしも一定でなくてよく、マグネトロンは、他よりも幾つかの場所に、物理的な関係に応じて、例えば、ガスの入口又はポンピングポートに長くとどまることができる。
【0036】
場が固定された磁気コイルの配置を選択的に切り替えることによりあちこちに移動される場合には、場はターゲット面の周りを連続的に通過する必要はなく、反応生成物の生成速度に従ってセクターごとに移動させることができる。
【0037】
スパッタターゲットを通過する可動の磁界によって幾つかのスパッタターゲットにおいて渦電流が生じる。これらの電流により、磁界の移動速度がターゲット浸食の均一性に作用する理由について1つの説明を与えることができる。このことはまた、最適な磁気掃引速度がターゲットにおけるマグネトロンの場の強さと形状の関数である可能性を示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】マグネトロンの回転モーター速度に対する堆積の不均一性を示すプロットである。
【図2】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図3】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図4】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図5】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図6】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図7】スパッタ装置に関する基本的な速度制御の概略図である。
【図8】図7のより複雑な変形態様を示す。
【図9】マグネトロン速度に対するモリブデン堆積の不均一性を示すプロットである。
【図10】マグネトロン速度に対するモリブデン堆積の不均一性を示す別のプロットである。
【図11】ターゲットの利用度に対するマグネトロンモーター速度と均一性のプロットである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数の基材にさらされる面を有するスパッタターゲットと、当該ターゲットの面に対して移動する磁界を与えるマグネトロンとを有する、基材上に層を堆積させるためのスパッタリング装置を用いたスパッタリング法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェハ上への膜の形成において行われる大部分の堆積プロセスでは、鍵となる製造基準の1つは、堆積される膜の厚さがウェハ全体にわたって均一であることである。とりわけ、音波共振器に関しては、膜厚が共振周波数に影響を及ぼすため、ウェハ上のすべての共振器が同じ周波数で共振するためには、膜厚が同じでなければならない。
【0003】
接近して置いたマグネトロンスパッタリングのターゲットアセンブリから基材上に十分均一な堆積を達成するための鍵となる要素の1つは、磁界を基材に対して移動させる方法である(他にとりうる方法としては、供給源と基材の距離を大きくして、しかし低スパッタリング効率という代償を払って点源に近くすることである)。
【0004】
これは、静的なマグネトロン/ターゲットアセンブリを通り過ぎて基材を移動させることによって達成することもできる。より最近では、とりわけ、基材のサイズが大きくなっているので、基材を静止させたままにして、例えば、マグネトロンの物理的な回転によって磁界を動かすことが好まれている(又は適切な電気的スイッチングによって磁界を動かし、結果として固定されたコイル配列の場をターゲット面を横切って掃引することが好まれている)。ターゲット寿命を通して材料の堆積厚さの均一性(基材から基材の反復性)を改善するために、場生成部材(例えば、回転磁石)をターゲット上を横方向に動かすこと及びターゲットとマグネトロンの間隔を変化させることもまた公知である。これらの技術及び出願人らによって開発された他の技術を用いて良好な結果が達成されたが、均一性が十分でないことが、反応性スパッタリングプロセスにおいて依然として重大な問題であるとわかった。
【0005】
それは、ターゲットに対するマグネトロンの動きではなく(ターゲットから浸食のポイントを移動させること、即ち、スパッタされる材料の供給源を移動させることによって)基材上の堆積の均一性を改善する、即ち、改善されたターゲットの消費を達成する基材に対するマグネトロンの相対的な動きであると認識することが重要である。
【0006】
(100mm〜300mmのシリコンウェハ上への金属被覆において通常行われる)単一ウェハの密着型マグネトロンスパッタリングの場合には、一般的に、ターゲットは(チャンバーサイズ及びターゲット材料の在庫を最小限に抑えるために)ウェハよりも少し大きく、(ターゲットの利用効率を最大にするために)可動型のマグネトロンと密着され、当該マグネトロンが磁界を掃引して基材上の膜堆積の均一性(及びターゲット浸食の均一性)が増す。
【発明の開示】
【0007】
1つの態様によれば、本発明は、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法にあり、当該方法は、基材上の堆積の均一性が向上するように場の移動速度を制御することを含む。
【0008】
以下に示されるように、出願人らは、驚くべきことに、場がターゲット面を横切って通過する速度が、ターゲットに対面する基材上の堆積の均一性レベルに作用することを見出した。非常により驚くべきことには、出願人らは、不均一性を最小にする速度に回転速度を制御することにより、不均一性の最小値を容易に決定できかつより優れた均一性を達成できることを見出した。言い換えれば、速度は、速度によって向上する均一性を最大にするよう選択することができる。
【0009】
本方法は、
(a)ある範囲の速度にわたって場を移動させる工程;
(b)均一性対速度を監視する工程;
(c)好ましい均一性を与える速度を選択する工程;及び
(d)選択された速度に場を制御する工程
を含むことができる。
【0010】
工程(a)〜(d)は、プロセスの間に及び/又はターゲットの寿命にわたって及び1つ又は多数の基材上で実施することができる。好ましくは、上に示されるように、選択された速度は、最良の均一性を与える速度であり、それは、不均一性の最小量又は均一性の最大量を求めることにより決定することができる。
【0011】
さらに上に示されるように、マグネトロンは物理的に固定できるが、移動場を与えることができ、その場合、選択されるのは場の移動速度である。
【0012】
回転速度は、20〜500rpm(約0.33〜8.33Hz)であることができる。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法にあり、当該方法は、ターゲット面の一部の浸食速度を決定すること、及びターゲット面のすべての部分の浸食が実質的に一定の平均速度になるように、ターゲット面を横切る磁界を走査することを含む。
【0014】
その場合には、浸食速度は(例えば、膜堆積の均一性を参照して直接的に又は間接的に)監視することもできるし、ターゲット寿命を通してスパッタプロセス又は堆積プロセスの間に又は堆積ごとにリアルタイムで制御することもできる。
【0015】
特に好ましい実施態様においては、ターゲットはアルミニウムであり、スパッタリングプロセスは反応性スパッタリングであり、堆積される層は窒化アルミニウムである。
【0016】
なお更なる態様によれば、本発明は、スパッタリング装置であって、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンと、上で規定される方法のいずれかに従って当該装置を操作するための制御手段とを有するスパッタリング装置にある。
【0017】
ターゲットはアルミニウムであることができ、堆積される層は窒化アルミニウムであることができる。
【0018】
本発明が上で規定されたが、それは上に又は以下の説明に記載される特徴を有する本発明の任意の組み合わせを含むことが理解されるであろう。
【0019】
本発明は様々な方法で実施することができ、具体的な実施態様は、添付図面を参照して次に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず図7を参照すると、周知のように、スパッタリング装置は、回転可能なマグネトロン11をその非スパッタリング側に有するターゲット10を含むことができる。当該マグネトロンは、モーター12又は他の手段、例えば、冷却水流を羽根車に衝突させることによって回転させることができる。
【0021】
本発明の装置の実施態様においては、インバータ13が、モーター12の回転速度の制御を可能とするためにモーター12と供給14の間に供給される。
【0022】
このような装置を用いて、出願人らは、以下のプロセス条件のもとでウェハを処理した。
ウェハ:200mm
ターゲット:アルミニウム
ターゲットとウェハの間隔:45mm
Arガス流量:10sccm
N2ガス流量:50sccm
プロセス圧力:2.2mtorr
プラテン温度:400℃、ウェハの固定なし
パルスDCターゲット電力:6kW、パルス周波数:100kHz、パルス幅:+4μs
プラテンバイアス電力:13.56MHzの130W
【0023】
インバータ13を用いてマグネトロンモーター12に対する供給周波数を変化させることにより、マグネトロン11の回転速度を変化させた。図1に示されるプロットは、30Hzがマグネトロンの300rpmに等しいような、マグネトロンのrpmがインバータ周波数の10倍であるマグネトロンモーターの駆動周波数に対する、いわゆる厚さ均一性(%)で構成された。厚さ「均一性」の図は、(半導体産業において「1シグマ均一性」として広く知られる)産業の標準的な表現であるが、実際には、不均一性の量が平均のパーセンテージとして示される標準偏差である。本質的には、値が低くなると、均一性が高くなる。非常に明確に示されるように、マグネトロンモーターのインバータを25〜35Hzの間で変化させたときに、厚さ均一性(%)は、速度とともに変化するだけでなく、(マグネトロンの325rpm、即ち、約5.4Hzに等しい)インバータ周波数32.5Hzで明確かつ識別可能な最小値に達した。
【0024】
これらの結果と物理的に同等なものを図2〜6で明確に示すことができ、図5は、最適な、即ち、「最小の」値を示している。
【0025】
ターゲットが消費されるにつれて最適な回転速度が変化することが見出されたので、ターゲットの浸食が生じるときには、例えば、参照テーブル又はアルゴリズムに従って、図7の装置を用いて前もって回転速度を設定するか又は時間とともに回転速度を変化させることが可能である。
【0026】
しかしながら、図8に示すように、プロセスモジュラーコントローラ15を用いてリアルタイムでこの速度を変化させて、監視パラメータ、例えば、堆積厚さに従ってこの速度を制御することもまた可能である。
【0027】
アルミニウムターゲットを用いた反応性スパッタリングプロセスにおいて窒化アルミニウムを堆積させる場合には、ターゲット寿命を通した堆積の均一性における改善は、ターゲットが消費されるにつれてマグネトロンの速度を高くすることによって達成される。この例は図11に示される。これは、使用量のキロワット時(kWH)で表される累積電力消費で表されるアルミニウムターゲットの使用量を通しての(半導体及びそれに関連する分野において通常であるように「均一性」として表される)基材上の窒化アルミニウム(AlN)の堆積の不均一性と1分当たりの回転数(r.p.m)におけるマグネトロン速度をプロットしている。
【0028】
確認できるように、ターゲットが消費されるにつれて均一性が悪くなる。次いで、マグネトロンの速度を上げると、均一性のパーセンテージが下がる(均一性が改善される)。この例では、合計厚さ(受け板を含む)が24mm、可動型マグネトロンとの間隔が1mm、ターゲット面での場の強さが300ガウスの平面ターゲットを用いた。
【0029】
ターゲット寿命を通しての堆積の均一性は、英国特許第2386128号明細書で記載されているマグネトロンオフセットにおける変化と、マグネトロンの回転速度における変化とを組み合わせることによってさらに最適化された。窒化アルミニウムの堆積に関する均一性の改善は、新しいターゲットに関して約300rpmのマグネトロン回転速度により及び250kWHで380rpm、約350kWHで約420rpm、500kWHの累積電力で約500rpmにマグネトロン速度を段々に上げることにより達成した。これらの特定の値は、ターゲットの厚さとその消費速度に依存している(材料依存)。
【0030】
最良の堆積均一性のための任意の所与のターゲット使用量/厚さにおけるマグネトロン速度は経験的に確立することができ、その結果を用いて、参照テーブル又はアルゴリズム、例えば、ターゲット寿命を通してマグネトロン速度を調節するための制御プログラムで使用できる4次多項式を確立した。
【0031】
更なる実験をモリブデンの非反応性スパッタリング(希ガス環境)について実施した。図9及び10で確認できるように、マグネトロン回転速度を50〜200rpm(0.83〜3.33Hz)で選択したときに最小に達し、175rpmで最良の均一性であった。確認できるように有意な改善が得られた。1.1%〜0.7%の変化は36%の改善である。
【0032】
マグネトロン速度を制御することによる均一性の改善は、共振器について非常に有意であり、ゲート、キャパシタ又はバリヤー層について有意であるが、絶対的なレベルにおいては非常に小さく、均一性がすでに高くない場合にはより大きな効果に隠れてしまう可能性がある。
【0033】
窒化モリブデン及び窒化アルミニウムの例が本明細書で示されたが、とりわけ、極めて優れた膜厚の均一性が、例えば、薄膜バルク音波共振器(FBAR)などの共振器に関して要求される場合に、本発明から利益を得ることができる多くのスパッタリング及び反応性スパッタリングプロセスがある。他の例の電極、シード及び共振性膜は、Au、Ti、ZnO、Cr、NiCr、In、MoC、Zn、W、WSi、Cu、Pt及びSiである。
【0034】
ターゲット面を横切る磁気掃引の周波数を変化させることにより均一性が改善される理由はまだ完全には理解されていないが、それによって経済的かつ容易に実施される均一性の改善方法が提供される。マグネトロン速度は、幹線の供給周波数、水流速度又は他の駆動機構によって一般に固定されることが思い出されるであろう。速度を変化させる手段を追加しないでこの速度を変化させることは直観的には明らかでなく、均一性を最大にする速度を選択することは不可能である。本明細書で示されたように、異なるプロセス及び/又は材料では最大の均一性のために異なる速度が要求されるので、ある範囲の材料又はプロセスに対して最良の均一性を与える1つの固定された速度はない。
【0035】
マグネトロンの走査速度は必ずしも一定でなくてよく、マグネトロンは、他よりも幾つかの場所に、物理的な関係に応じて、例えば、ガスの入口又はポンピングポートに長くとどまることができる。
【0036】
場が固定された磁気コイルの配置を選択的に切り替えることによりあちこちに移動される場合には、場はターゲット面の周りを連続的に通過する必要はなく、反応生成物の生成速度に従ってセクターごとに移動させることができる。
【0037】
スパッタターゲットを通過する可動の磁界によって幾つかのスパッタターゲットにおいて渦電流が生じる。これらの電流により、磁界の移動速度がターゲット浸食の均一性に作用する理由について1つの説明を与えることができる。このことはまた、最適な磁気掃引速度がターゲットにおけるマグネトロンの場の強さと形状の関数である可能性を示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】マグネトロンの回転モーター速度に対する堆積の不均一性を示すプロットである。
【図2】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図3】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図4】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図5】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図6】図1のグラフに示される種々の回転速度に関する斜視のウェハ堆積特性のプロットである。
【図7】スパッタ装置に関する基本的な速度制御の概略図である。
【図8】図7のより複雑な変形態様を示す。
【図9】マグネトロン速度に対するモリブデン堆積の不均一性を示すプロットである。
【図10】マグネトロン速度に対するモリブデン堆積の不均一性を示す別のプロットである。
【図11】ターゲットの利用度に対するマグネトロンモーター速度と均一性のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法であって、基材上の堆積の均一性が向上するように場の移動速度を制御することを含む、スパッタリング法。
【請求項2】
前記速度が均一性を最大にするよう選択される、請求項1に記載のスパッタリング法。
【請求項3】
(a)ある範囲の速度にわたって場を移動させる工程;
(b)均一性対速度を監視する工程;
(c)好ましい均一性を与える速度を選択する工程;及び
(d)選択された速度に場を制御する工程
を含む、請求項1又は2に記載のスパッタリング法。
【請求項4】
前記工程(a)〜(d)が基材を処理する間に実施される、請求項3に記載のスパッタリング法。
【請求項5】
前記工程(a)〜(d)がターゲットの寿命にわたって実施される、請求項3又は4に記載のスパッタリング法。
【請求項6】
前記選択された速度が最良の均一性を与える速度である、請求項3〜5のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項7】
前記選択された速度が、不均一性の最小量又は均一性の最大量を求めることにより決定される、請求項6に記載のスパッタリング法。
【請求項8】
前記マグネトロンが物理的に固定されるが、移動場を提供し、場の移動速度が選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項9】
前記移動速度が0.33Hz〜8.33Hzである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項10】
前記ターゲットがアルミニウムであり、堆積される膜が窒化アルミニウムである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項11】
前記ターゲットがモリブデンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項12】
前記場の移動速度が、ターゲットの運転寿命の間に増加する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項13】
前記移動速度がターゲットの累積電力に従って変化する、請求項12に記載のスパッタリング法。
【請求項14】
スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して回転する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法であって、実質的に添付図面を参照して明細書で記載された通りのスパッタリング法。
【請求項15】
スパッタリング装置であって、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンと、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法に従って当該装置を操作するための制御手段とを有するスパッタリング装置。
【請求項16】
前記ターゲットがアルミニウムであり、反応生成物が窒化アルミニウムである、請求項15に記載のスパッタリング装置。
【請求項17】
前記ターゲットがモリブデンであるか、又はAu、Ti、ZnO、Cr、NiCr、In、MoC、Zn、W、WSi、Cu、Pt、Siである、請求項15に記載のスパッタリング装置。
【請求項18】
前記マグネトロンの移動速度が、ソフトウェアにおいて選択することができる、請求項15に記載のスパッタリング装置。
【請求項1】
スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法であって、基材上の堆積の均一性が向上するように場の移動速度を制御することを含む、スパッタリング法。
【請求項2】
前記速度が均一性を最大にするよう選択される、請求項1に記載のスパッタリング法。
【請求項3】
(a)ある範囲の速度にわたって場を移動させる工程;
(b)均一性対速度を監視する工程;
(c)好ましい均一性を与える速度を選択する工程;及び
(d)選択された速度に場を制御する工程
を含む、請求項1又は2に記載のスパッタリング法。
【請求項4】
前記工程(a)〜(d)が基材を処理する間に実施される、請求項3に記載のスパッタリング法。
【請求項5】
前記工程(a)〜(d)がターゲットの寿命にわたって実施される、請求項3又は4に記載のスパッタリング法。
【請求項6】
前記選択された速度が最良の均一性を与える速度である、請求項3〜5のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項7】
前記選択された速度が、不均一性の最小量又は均一性の最大量を求めることにより決定される、請求項6に記載のスパッタリング法。
【請求項8】
前記マグネトロンが物理的に固定されるが、移動場を提供し、場の移動速度が選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項9】
前記移動速度が0.33Hz〜8.33Hzである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項10】
前記ターゲットがアルミニウムであり、堆積される膜が窒化アルミニウムである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項11】
前記ターゲットがモリブデンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項12】
前記場の移動速度が、ターゲットの運転寿命の間に増加する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のスパッタリング法。
【請求項13】
前記移動速度がターゲットの累積電力に従って変化する、請求項12に記載のスパッタリング法。
【請求項14】
スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して回転する場を与えるためのマグネトロンとを有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法であって、実質的に添付図面を参照して明細書で記載された通りのスパッタリング法。
【請求項15】
スパッタリング装置であって、スパッタターゲットと、当該ターゲットに対して移動する場を与えるためのマグネトロンと、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法に従って当該装置を操作するための制御手段とを有するスパッタリング装置。
【請求項16】
前記ターゲットがアルミニウムであり、反応生成物が窒化アルミニウムである、請求項15に記載のスパッタリング装置。
【請求項17】
前記ターゲットがモリブデンであるか、又はAu、Ti、ZnO、Cr、NiCr、In、MoC、Zn、W、WSi、Cu、Pt、Siである、請求項15に記載のスパッタリング装置。
【請求項18】
前記マグネトロンの移動速度が、ソフトウェアにおいて選択することができる、請求項15に記載のスパッタリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−138010(P2006−138010A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−299954(P2005−299954)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(500539000)トリコン テクノロジーズ リミティド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299954(P2005−299954)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(500539000)トリコン テクノロジーズ リミティド (1)
【Fターム(参考)】
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