説明

スパッタリングターゲット及びその製造方法並びに光情報記録媒体用薄膜及びその製造方法

本発明は、A、Bは其々異なる3価以上の陽性元素であり、その価数を其々Ka、Kbとしたとき、A(KaX+KbY)/2(ZnO)、0<X<2、Y=2−X、1≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物を含有し、さらにカルコゲン化亜鉛を含む、相対密度90%以上、バルク抵抗値0.1Ωcm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲットに関する。スパッタリングによって膜を形成する際に、基板への加熱等の影響を少なくし、高速成膜ができ、また膜厚を薄く調整でき、さらにスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減させ、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができ、かつ結晶粒が微細であり高密度のスパッタリンダターゲット及びその製造方法並びに、特に保護膜としての使用に最適である光情報記録媒体用薄膜及びその製造方法を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光情報記録媒体保護層用薄膜における非晶質安定性を有し、スパッタリングによって膜を形成する際に、直流(DC)スパッタリングが可能であり、スパッタ時のアーキングが少なく、これに起因して発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減でき、且つ高密度で品質のばらつきが少なく量産性を向上させることのできる、スパッタリングターゲット及びその製造方法並びに光情報記録媒体用薄膜(特に保護膜としての使用)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
近年、磁気ヘッドを必要とせずに書き換え可能な高密度光情報記録媒体である高密度記録光ディスク技術が開発され、急速に商品化されている。特に、CD−RWは、書き換え可能なCDとして1977年に登場し現在、最も普及している相変化光ディスクである。このCD−RWの書き換え回数は1000回程度である。また、DVD用としてDVD−RWが開発され商品化されているが、このディスクの層構造は基本的にCD−RWと同じものである。この書き換え回数は1000〜10000回程度である。
この相変化型光ディスクを用いた記録原理を以下に簡単に説明する。相変化型光ディスクは、基板上の記録薄膜をレーザー光の照射によって加熱昇温させ、その記録薄膜の構造に結晶学的な相変化(アモルファス⇔結晶)を起こさせて情報の記録・再生を行うものであり、より具体的にはその相間の光学定数の変化に起因する反射率の変化を検出して情報の再生を行うものである。上記の相変化は、数百nm〜数μm程度の径に絞ったレーザー光の照射によって行なわれる。
この場合、例えば1μmのレーザービームが10m/sの線速度で通過するとき、光ディスクのある点に光が照射される時間は100nsであり、この時間内で上記相変化と反射率の検出を行う必要がある。
また、上記結晶学的な相変化すなわちアモルファスと結晶との相変化を実現する上で、記録層だけでなく周辺の誘電体保護層やアルミニウム合金の反射膜にも加熱と急冷が繰返されることになる。
このようなことからCD−RW又はDVD−RW等に使用される相変化光ディスクは、Ag−In−Sb−Te系又はGe−Sb−Te系等の記録薄膜層の両側を、硫化亜鉛−ケイ酸化物(ZnS・SiO)系の高融点誘電体の保護層で挟み、さらにアルミニウム合金反射膜を設けた四層構造となっている。また、繰返し回数を高めるために、必要に応じてメモリ層と保護層の間に界面層を加えることなどが行われている。
このなかで反射層と保護層は、記録層のアモルファス部と結晶部との反射率の差を増大させる光学的機能が要求されるほか、記録薄膜の耐湿性や熱による変形の防止機能、さらには記録の際の熱的条件制御という機能が要求される(雑誌「光学」26巻1号頁9〜15参照)。
このように、高融点誘電体の保護層は昇温と冷却による熱の繰返しストレスに対して耐性をもち、さらにこれらの熱影響が反射膜や他の箇所に影響を及ぼさないようにし、かつそれ自体も薄く、低反射率でかつ変質しない強靭さが必要である。この意味において誘電体保護層は重要な役割を有する。
上記誘電体保護層は、通常スパッタリング法によって形成されている。このスパッタリング法は正の電極と負の電極とからなる基板とターゲットを対向させ、不活性ガス雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電離した電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
従来、主として書き換え型の光情報記録媒体の保護層に一般的に使用されているZnS−SiOは、光学特性、熱特性、記録層との密着性等において、優れた特性を有するということから広く使用されている。そして、このようなZnS−SiO等のセラミックスターゲットを使用して、従来は数百〜数千Å程度の薄膜が形成されている。
しかし、これらの材料は、ターゲットのバルク抵抗値が高いため、直流スパッタリング装置により成膜することができず、通常高周波スパッタリング(RF)装置が使用されている。ところが、この高周波スパッタリング(RF)装置は、装置自体が高価であるばかりでなく、スパッタリング効率が悪く、電力消費量が大きく、制御が複雑であり、成膜速度も遅いという多くの欠点がある。
また、成膜速度を上げるため、高電力を加えた場合、基板温度が上昇し、ポリカーボネート製基板の変形を生ずるという問題がある。また、ZnS−SiOは膜厚が厚いためスループット低下やコスト増も問題となっていた。
書き換え型のDVDは、レーザー波長の短波長化に加え書き換え回数の増加、大容量化、高速記録化が強く求められているが、上記ZnS−SiO材料には、他にも問題がある。
それは、光情報記録媒体の書き換え回数等が劣化する原因の一つとして、ZnS−SiOに挟まれるように配置された記録層材が加熱、冷却を繰返すうちに、記録層と保護層の間に隙間が生ずる。そのため反射率等への特性劣化を引き起こす要因となっていた。
これらの密着性向上のため、記録層と保護層の間に、窒化物や炭化物を主成分とした中間層を設けた構成にしているが、積層数増加によるスループット低下及びコスト増加が問題となっていた。
上記の問題を解決するために、保護層材ZnS−SiOよりも、さらに安定した非晶質性を確保することで記録層との密着性を向上さることが考えられた。
ZnOベースのホモロガス化合物(技術誌「固体物理」李春飛他3名著、Vol.35、No.1、2000、23〜32頁「ホモロガス化合物RMO(ZnO)(R=In,Fe;M=In,Fe,Ga,Al;m=自然数)の変調構造の電子顕微鏡観察」参照)は複雑な層状構造をとるため、成膜時の非晶質性を安定に保つという特徴があり、また使用波長領域において透明であり、屈折率もZnS−SiOに近いという特性を持つ。
このZnOベースのホモロガス化合物をZnSへ添加することで、非晶質性を向上させ、さらに絶縁材のSiOを除外することで、スパッタリング特性が安定化し、光情報記録媒体の特性改善及び生産性向上が期待された。
一般に、ホモロガス化合物を主成分とする材料を透明導電性材料として使用する例として、例えば亜鉛−インジウム系酸化物ターゲットをレーザーアブレーションにより形成する方法(特開2000−26119号公報参照)、導電性と特に青色光透過性が良好であるとする非晶質性酸化物を含む透明導電体膜の例(特開2000−44236号公報参照)、InとZnと主成分とし、In(ZnO)m(m=2〜20)であり、InとZn(In/(In+Zn))の原子比が0.2〜0.85である耐湿性膜形成用ターゲットの例がある(特許第2695605号公報参照)。
しかし、上記の透明導電膜を形成する材料は、必ずしも光情報記録媒体用薄膜(特に保護膜としての使用)には十分とは言えなかった。
一方、ZnOをベースとするホモロガス化合物を添加したZnSとの複合ターゲットは、バルク密度が上がり難く低密度の焼結体ターゲットしか得られないという問題があった。
このような低密度のターゲットは、スパッタリングによって膜を形成する際に、アーキングを発生し易く、それが起因となってスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールが発生し、成膜の均一性及び品質が低下するだけでなく、生産性も劣るという問題があった。
【発明の開示】
本発明は、スパッタリングによって膜を形成する際に、基板への加熱等の影響を少なくし、高速成膜ができ、また膜厚を薄く調整でき、さらにスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減させ、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができ、かつ結晶粒が微細であり高密度のスパッタリングターゲット及びその製造方法並びに、特に保護膜としての使用に最適である光情報記録媒体用薄膜及びその製造方法を得ることを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、ZnS等のカルコゲン化亜鉛とZnOを主成分とする化合物を採用することにより光学特性、熱特性、記録層との密着性等における優れた特性を活かすと共に、導電性を保有させることでDCスパッタを可能とし、かつ密度を高めることにより保護膜としての特性も損なわず、さらにスパッタ時に発生するパーティクルやノジュールを低減でき、膜厚均一性も向上できるとの知見を得た。
本発明はこの知見に基づき、
1.A、Bは其々異なる3価以上の陽性元素であり、その価数を其々Ka、Kbとしたとき、A(KaX+KbY)/2(ZnO)、0<X<2、Y=2−X、1≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物とカルコゲン化亜鉛を含有することを特徴とするスパッタリングターゲット
2.A、Bは其々異なる3価以上の陽性元素であり、その価数を其々Ka、Kbとしたとき、A(KaX+KbY)/2(ZnO)、0<X<2、Y=2−X、1≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物を含有し、カルコゲン化亜鉛を含む、相対密度90%以上、バルク抵抗値0.1Ωcm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット
3.2≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物を含有することを特徴とする上記1又は2記載のスパッタリングターゲット
4.Aがインジウムであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
5.酸化亜鉛を主成分とした化合物がカルコゲン化亜鉛に対して体積比率で25%以上含むことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
6.ターゲット内における亜鉛以外の、元素のばらつきの範囲が0.5wt%以内であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
7.ターゲット内における密度のばらつきの範囲が3%以内であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
8.ターゲット内におけるバルク抵抗のばらつきが平均値に対して40%以内であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
9.ターゲット内における平均結晶粒径が10μm以下であり、酸化亜鉛を主成分とした酸化物とカルコゲン化物が均一に分散している組織を備えていることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
を提供する。
本発明はまた、
10.上記1〜9のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットを使用して形成された光情報記録媒体用薄膜
11.記録層と隣接して使用されることを特徴とする上記10記載の光情報記録媒体用薄膜
12.上記1〜9のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットを使用して直流スパッタで薄膜を形成することを特徴とする光情報記録媒体用薄膜の製造方法
13.平均粒径が5μm以下である各構成元素の酸化物粉末及びカルコゲン化物粉末を常圧焼結又は高温加圧焼結することを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法
14.焼結前に、酸化亜鉛を主成分とした酸化物粉を均一に混合した後、800〜1300°Cで仮焼することを特徴とする上記13記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法
15.仮焼した後、1μm以下に粉砕することを特徴とする上記14記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法
16.真空中又はアルゴン、窒素等の不活性雰囲気中で焼結することを特徴とする上記12〜15のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法
17.焼結前の酸化物粉末が、予め酸化亜鉛を主成分とした化合物を形成していることを特徴とする上記12〜16のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法、を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のスパッタリングターゲットは、カルコゲン化亜鉛を含み、これにさらにA、Bは其々異なる3価以上の陽性元素であり、その価数を其々Ka、Kbとしたとき、A(KaX+KbY)/2(ZnO)、0<X<2、Y=2−X、1≦m、さらには2≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物を添加したターゲットである。
特に、A、Bは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニオブ、タンタル、ゲルマニウム、錫、アンチモン等から選択した少なくとも1種類以上の元素を使用する。また、特にAはインジウムを使用するのが望ましい。
また、上記酸化亜鉛を主成分とした化合物は、カルコゲン化亜鉛に対して体積比率で25%以上含有させて使用することが望ましい。
本発明は、このように酸化亜鉛を主成分とする化合物を添加することにより、ターゲットの導電性を保有させることができ、これによって直流スパッタ(DCスパッタ)によって薄膜を形成することができる。
DCスパッタリングはRFスパッタリングに比べ、成膜速度が速く、スパッタリング効率が良いという点で優れている。
また、DCスパッタリング装置は価格が安く、制御が容易であり、電力の消費量も少なくて済むという利点がある。保護膜自体の膜厚を薄くすることも可能となるため、生産性向上、基板加熱防止効果を発揮できる。
したがって、本発明のスパッタリングターゲットを使用することにより、生産性が向上し、品質の優れた材料を得ることができ、光ディスク保護膜をもつ光記録媒体を低コストで安定して製造できるという著しい効果がある。
さらに本発明のターゲットは、ターゲット内における亜鉛以外の、元素のばらつきの範囲が0.5wt%以内であること、さらには0.3%以内であること、ターゲット内における密度のばらつきの範囲が3%以内であること、さらには1.5%以内であること、ターゲット内におけるバルク抵抗のばらつきが平均値に対して40%以内であること、さらには20%以内であること、さらにターゲット内における平均結晶粒径が10μm以下であり、酸化亜鉛を主成分とした酸化物とカルコゲン化物が均一に分散している組織を備えていることが望ましい。これによって、均一な成膜が可能であり、また特性に優れた光情報記録媒体用薄膜(保護膜)を形成することができる。
上記本発明のターゲットを使用して光情報記録媒体用薄膜(保護膜)を形成することができ、この保護膜は少なくとも記録層と隣接して使用される。
ターゲット焼結体は平均粒径が5μm以下である各構成元素の酸化物粉末及びカルコゲン化物粉末を常圧焼結又は高温加圧焼結することによって高密度のスパッタリング用ターゲットを製造することができる。
さらに、焼結前に酸化亜鉛を主成分とした酸化物粉を均一に混合した後、800〜1300°Cで仮焼することが望ましく、また仮焼した後、さらに1μm以下に粉砕することが望ましい。焼結は真空中又はアルゴン、窒素等の不活性雰囲気中で焼結するのが良い。これによって、相対密度が90%以上を有するスパッタリングターゲットを得ることができる。焼結前の酸化物粉末は酸化亜鉛を主成分とした化合物を形成していることが望ましい。それは、均一性を高め、より効果的にホモロガス化合物の利点を発揮でき非晶質性が安定するという理由による。
本発明のスパッタリングターゲットを使用することにより、生産性が向上し、品質の優れた材料を得ることができ、光ディスク保護膜をもつ光記録媒体を低コストで安定して製造できるという著しい効果がある。
本発明のスパッタリングターゲットの密度向上は、空孔を減少させ結晶粒を微細化し、ターゲットのスパッタ面を均一かつ平滑にすることができるので、スパッタリング時のパーティクルやノジュールを低減させ、さらにターゲットライフも長くすることができるという著しい効果を有し、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができる。
実施例および比較例
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【実施例1】
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で1μm以下のAl粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、In1.0Al1.0(ZnO)となるように調合して、湿式混合し、乾燥後、1100°Cで仮焼した。
仮焼後、平均粒径1μm相当まで湿式微粉砕して乾燥した。このIn1.0Al1.0(ZnO)粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:In1.0Al1.0(ZnO)=70:30vol%となるように混合する。この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度1000°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は92%であった。
これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、ガラス基板に目標膜厚1500Åで成膜した。成膜サンプルの透過率は95%(波長650nm)、屈折率は2.2(波長633nm)であった。
また、成膜サンプルのアニール処理(600°C×30min、Arフロー)前後のXRD(Cu−Kα、40kV、30mA、以下同様)測定を行った。これによると、特定の結晶ピークは見られず、安定した非晶質性を保っていた。
実施例1のターゲットの化学組成、混合比率、相対密度、DCスパッタ可能性、屈折率、非晶質性(2θ=20〜60°における未成膜ガラス基板に対する最大ピーク強度比)を表1に示す。

(実施例2−7)
(KaX+KbY)/2(ZnO)化合物の組成を変え、かつZnSとの比率を変えた場合について、他は実施例1と同一の条件でターゲットを製造し、実施例と同様にターゲットの化学組成、混合比率、相対密度、DCスパッタ可能性、屈折率、非晶質性を調べた。この結果を表1に示す。
これによると、相対密度はいずれも90%以上であり、またDCスパッタが可能、屈折率は2.1〜2.2であり、またいずれも特定の結晶ピークは見られず、安定した非晶質性を保っていた。
(比較例1)
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で1μm以下のAl粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、In0.5Al1.5(ZnO)0.8となるように調合して、湿式混合し、乾燥後、1100°Cで仮焼した。
仮焼後、平均粒径1μm相当まで湿式微粉砕して乾燥した。この乾燥In0.5Al1.5(ZnO)0.8粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:In0.5Al1.5(ZnO)0.8=70:30vol%となるように混合する。
この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度1000°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は92%であった。
これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、ガラス基板に目標膜厚1500Åで成膜した。成膜サンプルの透過率は90%(波長650nm)、屈折率は2.2(波長633nm)であった。
また、成膜サンプルのアニール処理(600°C×30min、Arフロー)前後のXRD測定を行った。これによると、本比較例ではZnOの比率が低いために結晶ピークが見られた。
この比較例1のターゲットの化学組成、混合比率、相対密度、DCスパッタ可能性、屈折率、非晶質性(2θ=20〜60°における未成膜ガラス基板に対する最大ピーク強度比)を表1に示す。
(比較例2−4)
(KaX+KbY)/2(ZnO)化合物の組成を変え、かつZnSとの比率を変え、本発明の条件外の場合について、他は比較例1と同一の条件でターゲットを製造し、比較例1と同様にターゲットの化学組成、混合比率、相対密度、DCスパッタ可能性、屈折率、非晶質性を調べた。この結果を表1に示す。
これによると、比較例2は屈折率が2.1〜2.2の範囲にあるが、A(KaX+KbY)/2(ZnO)化合物の混合比率が少ないためにDCスパッタが不能であり、また相対密度は83%と低かった。
比較例3及び比較例4はいずれも、屈折率が2.1〜2.5の範囲にあるが、ZnOの比率が低いために結晶ピークが見られ、非晶質の安定が得られなかった。
上記実施例1〜7においては、3価以上の陽性元素(A、B)として、インジウム、アルミニウム、鉄、錫、ガリウムを用いたが、他の3価以上の陽性元素であるスカンジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニオブ、タンタル、ゲルマニウム、アンチモン等から選択した少なくとも1種類以上の元素を用いて実施した場合も、実施例1〜7と同様の結果が得られた(結果が重複し、煩雑になるので割愛した)。また、以上の元素を複合させた場合も同様の結果であった。
【実施例8】
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で1μm以下のAl粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、In1.0Al1.0(ZnO)となるように調合して、湿式混合し、乾燥後、1100°Cで仮焼した。
仮焼後のXRD測定にてIn1.0Al1.0(ZnO)の結晶ピークが観察された。さらにこの仮焼粉を平均粒径1μm相当まで湿式微粉砕して乾燥した。このIn1.0Al1.0(ZnO)粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:In1.0Al1.0(ZnO)=70:30vol%となるように混合する。混合は湿式ボールミル混合又は高速攪拌混合機を用いて各粉を均一に分散させる。
次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度900°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は92%であった。ターゲット内の平均結晶粒径は4μmであった。
ターゲット内より任意に3ケ所からサンプリングして組成(ICP法)と密度(アルキメデス法)を測定した結果及び平滑加工したターゲットのスパッタリング面における任意の5ケ所におけるバルク抵抗(4端子法)を測定した結果は、表2に示すようになった。表2に示すように、組成、密度、バルク抵抗値のばらつきが極めて小さいという結果が得られた。
また、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、目標膜厚1500Åで成膜した。成膜サンプルの透過率は95%(波長650nm)、屈折率は2.2(波長633nm)であった。
そして、成膜サンプルのアニール処理(600°C×30min、Arフロー)前後のXRD(Cu−Kα、40kV、30mA、以下同様)測定を行った。これによると、特定の結晶ピークは見られず、安定した非晶質性を保っていた。

【実施例9】
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で3μm以下のGa粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、In1.0Ga1.0(ZnO)となるように調合して、湿式混合し、乾燥後、1100°Cで仮焼した。
仮焼後のXRD測定にてIn1.0Ga1.0(ZnO)の結晶ピークが観察された。さらにこの仮焼粉を平均粒径1μm相当まで湿式微粉砕して乾燥した。このIn1.0Ga1.0(ZnO)粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:In1.0Ga1.0(ZnO)=70:30vol%となるように混合する。混合は湿式ボールミル混合又は高速攪拌混合機を用いて各粉を均一に分散させる。
次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度950°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は94%であった。ターゲット内の平均結晶粒径は3.5μmであった。
ターゲット内より任意に3ケ所からサンプリングして組成(ICP法)と密度(アルキメデス法)を測定した結果及び平滑加工したターゲットのスパッタリング面における任意の5ケ所におけるバルク抵抗(4端子法)を測定した結果は、表2に示すようになった。表2に示すように、組成、密度、バルク抵抗値のばらつきが極めて小さいという結果が得られた。
また、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、目標膜厚1500Åで成膜した。成膜サンプルの透過率は98%(波長650nm)、屈折率は2.2(波長633nm)であった。
そして、成膜サンプルのアニール処理(6000°C×30min、Arフロー)前後のXRD測定を行った。これによると、特定の結晶ピークは見られず、安定した非晶質性を保っていた。
【実施例10】
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で3μm以下のSnO粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、In1.0Sn1.03.5(ZnO)となるように調合して、湿式混合し、乾燥後、1100°Cで仮焼した。
仮焼後のXRD測定にてIn1.0Sn1.03.5(ZnO)の結晶ピークが観察された。さらにこの仮焼粉を平均粒径1μm相当まで湿式微粉砕して乾燥した。このIn1.0Sn1.03.5(ZnO)粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:In1.0Sn1.03.5(ZnO)=70:30vol%となるように混合する。混合は湿式ボールミル混合又は高速攪拌混合機を用いて各粉を均一に分散させる。
次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度950°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は91%であった。ターゲット内の平均結晶粒径は3.5μmであった。
ターゲット内より任意に3ケ所からサンプリングして組成(ICP法)と密度(アルキメデス法)を測定した結果及び平滑加工したターゲットのスパッタリング面における任意の5ケ所におけるバルク抵抗(4端子法)を測定した結果は、表2に示すようになった。表2に示すように、組成、密度、バルク抵抗値のばらつきが極めて小さいという結果が得られた。
また、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、目標膜厚1500Åで成膜した。成膜サンプルの透過率は95%(波長650nm)、屈折率は2.3(波長633nm)であった。
そして、成膜サンプルのアニール処理(600°C×30min、Arフロー)前後のXRD測定を行った。これによると、特定の結晶ピークは見られず、安定した非晶質性を保っていた。
【実施例11】
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で3μm以下のCr粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、In1.8Cr0.2(ZnO)となるように調合して、湿式混合し、乾燥後、1100°Cで仮焼した。
仮焼後のXRD測定にてIn1.8Cr0.2(ZnO)の結晶ピークが観察された。さらにこの仮焼粉を平均粒径1μm相当まで湿式微粉砕して乾燥した。このIn1.8Cr0.2(ZnO)粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:In1.8Cr0.2(ZnO)=60:40vol%となるように混合する。混合は湿式ボールミル混合又は高速攪拌混合機を用いて各粉を均一に分散させる。
次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度950°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は94%であった。ターゲット内の平均結晶粒径は4.0μmであった。
ターゲット内より任意に3ケ所からサンプリングして組成(ICP法)と密度(アルキメデス法)を測定した結果及び平滑加工したターゲットのスパッタリング面における任意の5ケ所におけるバルク抵抗(4端子法)を測定した結果は、表2に示すようになった。表2に示すように、組成、密度、バルク抵抗値のばらつきが極めて小さいという結果が得られた。
また、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとし、目標膜厚1500Åで成膜した。成膜サンプルの透過率は92%(波長650nm)、屈折率は2.3(波長633nm)であった。
そして、成膜サンプルのアニール処理(600°C×30min、Arフロー)前後のXRD測定を行った。これによると、特定の結晶ピークは見られず、安定した非晶質性を保っていた。
(比較例5)
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で1μm以下のAl粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、In1.0Al1.0(ZnO)となるように調合して、さらに4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:In1.0Al1.0(ZnO)=70:30vol%となるように混合する。
次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度900°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は82%であった。ターゲット内の平均結晶粒径は13μmであった。
ターゲット内より任意に3ケ所からサンプリングして組成(ICP法)と密度(アルキメデス法)を測定した結果及び平滑加工したターゲットのスパッタリング面における任意の5ケ所におけるバルク抵抗(4端子法)を測定した結果は、表2に示すようになった。表2に示すように、組成、密度、バルク抵抗値のばらつきが大きいという結果が得られた。
また、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとしたが、このターゲットは異常放電が多く、DCスパッタ不可であった。
(比較例6)
4N相当で5μm以下のIn粉と4N相当で1μm以下のGa粉と4N相当で平均粒径5μm以下のZnO粉を用意し、InGaO(ZnO)0.となるように調合して、さらに4N相当で平均粒径5μm以下のZnS粉をZnS:InGaO(ZnO)0.7=60:40vol%となるように混合する。
次に、この混合粉をカーボン製の型に充填し、温度900°Cでホットプレスを行いターゲットとした。このターゲットの相対密度は78%であった。ターゲット内の平均結晶粒径は11μmであった。
ターゲット内より任意に3ケ所からサンプリングして組成(ICP法)と密度(アルキメデス法)を測定した結果及び平滑加工したターゲットのスパッタリング面における任意の5ケ所におけるバルク抵抗(4端子法)を測定した結果は、表2に示すようになった。表2に示すように、組成、密度、バルク抵抗値のばらつきが大きいという結果が得られた。
また、これを6インチφサイズに加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー1000W、Arガス圧0.5Paとしたが、このターゲットは異常放電が多く、DCスパッタ不可であった。
上記実施例8〜11においては、3価以上の陽性元素(A、B)として、インジウム、錫、クロム、ガリウムを用いたが、他の3価以上の陽性元素であるアルミニウム、鉄、スカンジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、マンガン、ニオブ、タンタル、ゲルマニウム、錫、アンチモン等から選択した少なくとも1種類以上の元素を用いて実施した場合も、実施例8〜11と同様の結果が得られた(結果が重複し、煩雑になるので割愛した)。また、以上の元素を複合させた場合も同様の結果であった。
【産業上の利用可能性】
本発明は、ZnS等のカルコゲン化亜鉛にZnOを主成分とする化合物(ホモロガス化合物)を添加して成分調整を行い、非晶質性の安定化を図りかつターゲットに導電性を付与し、光情報記録媒体の記録層材との密着性を向上させることで特性を向上させ、相対密度を90%以上に高密度化することによって安定したDCスパッタを可能とする。
そして、このDCスパッタリングの特徴である、スパッタの制御性を容易にし、成膜速度を上げ、スパッタリング効率を向上させることができるという著しい効果がある。
さらにこれによって、成膜の際にスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減し、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができ、光ディスク保護膜をもつ光記録媒体を低コストで安定して製造できるという著しい効果がある。
さらに、ターゲット内における亜鉛以外の、元素のばらつきの範囲、ターゲット内における密度のばらつきの範囲、ターゲット内におけるバルク抵抗のばらつきが平均値に対して小さいこと、またターゲット内における平均結晶粒径が10μm以下であり、酸化亜鉛を主成分とした酸化物とカルコゲン化物が均一に分散している組織を備えていることによって、均一な成膜が可能であり、また特性に優れた光情報記録媒体用薄膜(保護膜)を形成することができるという効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A、Bは其々異なる3価以上の陽性元素であり、その価数を其々Ka、Kbとしたとき、A(KaX+KbY)/2(ZnO)、0<X<2、Y=2−X、1≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物とカルコゲン化亜鉛を含有することを特徴とするスパッタリングターゲット
【請求項2】
A、Bは其々異なる3価以上の陽性元素であり、その価数を其々Ka、Kbとしたとき、A(KaX+KbY)/2(ZnO)、0<X<2、Y=2−X、1≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物を含有し、さらにカルコゲン化亜鉛を含む、相対密度90%以上、バルク抵抗値0.1Ωcm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項3】
2≦mを満たす酸化亜鉛を主成分とする化合物を含有することを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
Aがインジウムであることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
酸化亜鉛を主成分とした化合物がカルコゲン化亜鉛に対して体積比率で25%以上含むことを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
ターゲット内における亜鉛以外の、元素のばらつきの範囲が0.5wt%以内であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項7】
ターゲット内における密度のばらつきの範囲が3%以内であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項8】
ターゲット内におけるバルク抵抗のばらつきが平均値に対して40%以内であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項9】
ターゲット内における平均結晶粒径が10μm以下であり、酸化亜鉛を主成分とした酸化物とカルコゲン化物が均一に分散している組織を備えていることを特徴とする請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項10】
請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットを使用して形成された光情報記録媒体用薄膜。
【請求項11】
記録層と隣接して使用されることを特徴とする請求の範囲第10項記載の光情報記録媒体用薄膜。
【請求項12】
請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットを使用して直流スパッタで薄膜を形成することを特徴とする光情報記録媒体用薄膜の製造方法。
【請求項13】
平均粒径が5μm以下である各構成元素の酸化物粉末及びカルコゲン化物粉末を常圧焼結又は高温加圧焼結することを特徴とする請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項14】
焼結前に、酸化亜鉛を主成分とした酸化物粉末を800〜1300°Cで仮焼することを特徴とする請求の範囲第13項記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項15】
仮焼した後、1μm以下に粉砕することを特徴とする請求の範囲第14項記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項16】
真空中又はアルゴン、窒素等の不活性雰囲気中で焼結することを特徴とする請求の範囲第13項〜第15項のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項17】
焼結前の酸化物粉末が、予め酸化亜鉛を主成分とした化合物を形成していることを特徴とする請求の範囲第13項〜第16項のいずれかに記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/079037
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502989(P2005−502989)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001050
【国際出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【特許番号】特許第3768230号(P3768230)
【特許公報発行日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(591007860)株式会社日鉱マテリアルズ (545)
【Fターム(参考)】