説明

スパッタリング装置および液晶装置の製造装置

【課題】ターゲット交換などのメンテナンス作業を効率化できるスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】基板Wを保持する基板ホルダー6を有し基板ホルダー6が搬送可能に設けられた成膜室2と、成膜室2に連通し筐体10内に一対のターゲット11,12が対向して配置されたスパッタリング粒子放出部3と、を備える対向ターゲット方式のスパッタリング装置1であって、第2ターゲット12が配置された筐体10の一面の一部が第2ターゲット12を含んで取り外し可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置および液晶装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶装置などに用いられる配向膜において、信頼性の向上のために無機物の配向膜が検討されている。
無機物の配向膜(無機配向膜)の製作において、基板が収容される成膜室と、ターゲットが対向配置されるスパッタリング粒子放出部とを有した対向ターゲット式のスパッタリング装置が用いられている(特許文献1参照)。
対向ターゲット式のスパッタリング装置は、真空槽内に所定の間隔を設けて一対のターゲットを対向配置して対向空間内にプラズマを生成し、この対向空間の側方に配置した基板に薄膜を形成する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−286401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスパッタリング装置において、ターゲットの交換などのメンテナンス作業をする際には、成膜室を開放して成膜室側から、ターゲットが配置されたスパッタリング粒子放出部にアクセスして作業が行われる。このため、ねじの着脱作業は作業者の視線において横からの作業となり、作業がしづらい。特に、スパッタリング粒子放出部内のスペースが小さい場合やスパッタリング粒子放出部が成膜室に対して傾いている場合などには、ねじの着脱作業などが困難で作業に時間がかかり、スパッタリング装置の稼動を著しく低下させている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるスパッタリング装置は、基板を保持する基板ホルダーを有し該基板ホルダーが搬送可能に設けられた成膜室と、前記成膜室に連通し筐体内に一対のターゲットが対向して配置されるスパッタリング粒子放出部と、を備える対向ターゲット方式のスパッタリング装置であって、前記一対のターゲットのうちのどちらか一方に配置される前記筐体の一面の一部が前記ターゲットを含んで前記筐体外側より取り外し可能に形成され、他方の前記ターゲットが前記筐体内側より取り外し可能に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、スパッタリング粒子放出部における一対のターゲットのうち、片側のターゲットを配置する一面の一部が取り外し可能に形成されている。
例えばターゲット交換を行う場合、片側のターゲットを配置する筐体の一面の一部を取り外し、この開放された穴を通して、もう一方のターゲットなどを固定するねじを着脱してターゲットを交換ができる。また、取り外した筐体の一面は別の場所でターゲット交換ができる。このように、作業者の視線の正面側からねじの着脱作業が行え、ターゲット交換作業が容易で、短時間にかつ確実に行うことができる。
このようにターゲット交換に限らず、スパッタリング粒子放出部におけるメンテナンス作業を容易とし、メンテナンス作業に時間がかからずスパッタリング装置の稼働率を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるスパッタリング装置において、前記スパッタリング粒子放出部の前記一対のターゲットが前記基板ホルダーの搬送経路に対して斜めに傾いた状態で配置されることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、基板ホルダーに保持される基板に、斜め方向からスパッタリング粒子を供給することができる。例えば、無機配向膜などの基板に対して結晶が斜め方向に成長した柱状構造の薄膜を容易に得ることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるスパッタリング装置において、前記基板ホルダーの搬送の終点方向側に一対の前記ターゲットが傾き、前記基板ホルダーの搬送の終点に近い側に位置する前記ターゲットが備えられる前記筐体の一面の一部が取り外し可能に形成されていることが望ましい。
【0011】
基板ホルダーの搬送の終点方向側に一対のターゲットが傾いていることから、スパッタリング粒子放出部と成膜室との間のスペースは、基板ホルダーの搬送の始点側のスペースに比べて終点側のスペースが大きい。このため、基板ホルダーの搬送の終点に近い側に位置するターゲットが備えられた筐体の一面の一部が取り外し可能に形成することで、メンテナンス作業のスペースを確保できる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる液晶装置の製造装置は、対向する一対の基板間に挟持された液晶層を備え、少なくとも一方の前記基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、上記適用例1乃至3のいずれかに記載のスパッタリング装置を備え、該スパッタリング装置によって前記無機配向膜を形成することを特徴とする。
【0013】
本適用例の液晶装置の製造装置によれば、メンテナンス性に優れたスパッタリング装置を備えているので、生産性よく無機配向膜を備えた液晶装置を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態のスパッタリング装置の一例を示す概略構成図。
【図2】第1の実施形態のスパッタリング粒子放出部のターゲット組み付け板をZa方向から見た概略側面図。
【図3】第2の実施形態のスパッタリング装置の一例を示す概略構成図。
【図4】液晶装置を構成するTFTアレイ基板の平面図。
【図5】液晶装置を説明する液晶装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
(第1の実施形態)
【0016】
図1は本実施形態のスパッタリング装置の一例を示す概略構成図である。図2は、図1のスパッタリング粒子放出部のターゲット組み付け板をZa方向から見た概略側面図である。スパッタリング装置は、液晶装置の製造装置を構成し、液晶装置の構成部材となる基板上に無機配向膜を成膜するものである。
図1に示すように、スパッタリング装置1は、基板Wを収容する成膜室2と、プラズマを生成してターゲットからスパッタリング粒子を放出するスパッタリング粒子放出部3とを備えている。成膜室2およびスパッタリング粒子放出部3は内部が気密になるように形成され、それぞれの内部を減圧雰囲気で使用される。なお、スパッタリング粒子とは、スパッタリング現象により飛び出してくるターゲットの構成原子をいう。
【0017】
成膜室2には、その室内圧力を制御し、所望の真空度を得るためのロータリーポンプおよびクライオポンプなどから構成される排気制御装置30が接続されている。
そして、成膜室2の室内に収容された基板W上に飛来するスパッタリング粒子と反応して無機配向膜を形成する、反応ガスとして酸素ガスを供給する反応ガス供給手段4を備えている。
反応ガス供給手段4は、排気制御装置30の反対側に接続されており、反応ガス供給手段4から供給される酸素ガスは、成膜室2の−X側から+X側に流動し、後述するスパッタ粒子放出部の上方を経由して排気制御装置30側へ流れるようになっている。
【0018】
成膜室2は、基板Wの被処理面(成膜面)がXY面に平行(水平)になるようにして保持する基板ホルダー6を有している。この基板ホルダー6には、基板ホルダー6を搬送する移動手段7が接続されている。移動手段7による基板Wの搬送は、図1においてX軸方向に平行に一定速度で搬送可能であり、スパッタリング粒子放出部3から放出されるスパッタリング粒子により基板W上に良質な無機配向膜を形成できるようになっている。
【0019】
また、基板ホルダー6には、保持した基板Wを加熱するためのヒータ(図示せず)が設けられており、さらに、保持した基板Wを冷却するための冷却手段8cが設けられている。ヒータは所望の温度に基板ホルダー6を加熱できるように構成されている。一方、冷却手段8cは、冷媒を循環させることにより基板ホルダー6を所望の温度に冷却するように構成されている。
【0020】
さらに、図示しないが、成膜室2の真空度を保持した状態での基板Wの搬入および搬出を可能とするロードロックチャンバーが、成膜室2のX軸方向の片側または両側に備えられている。ロードロックチャンバーにも、これを独立して真空雰囲気に調整する排気制御装置が接続され、ロードロックチャンバーと成膜室2とは、チャンバー間を気密に閉塞するゲートバルブを介して接続されている。このようにして、基板Wの成膜室2の搬入および搬出の際に、成膜室2を大気に解放せずに効率よく基板Wの出し入れを行えるように構成されている。
【0021】
スパッタリング粒子放出部3は、対向配置される第1ターゲット11および第2ターゲット12を有し、対向ターゲット型のスパッタリング装置1を構成している。このスパッタリング粒子放出部3は、成膜室2との接続面のみ開放された直方体箱型の筐体10を有し、接続部25により成膜室2とスパッタリング粒子放出部3とが連通するように取り付けられている。
【0022】
スパッタリング粒子放出部3の筐体10の内部には、第1ターゲット11と第2ターゲット12とがほぼ平行に対向して設けられている。
そして、スパッタリング粒子放出部3は、成膜室2内部に収容される基板Wの成膜面法線方向(Z方向)に対し、スパッタリング粒子放出部3内に保持される第1ターゲット11および第2ターゲット12の面方向(Xa方向)が所定の角度θとなるように形成されている。換言すれば、スパッタリング粒子放出部3内に保持される第1ターゲット11および第2ターゲット12の面方向(Xa方向)と基板ホルダー6の搬送方向(X方向)とのなす角度が所定の角度をなすように形成されている。
【0023】
より具体的には、第1ターゲット11、第2ターゲット12は、所定角度θとして、基板Wの法線方向に対して10°〜60°傾けられた状態に保持されるのが好ましい。基板Wに対する第1ターゲット11、第2ターゲット12の傾斜角度を上記範囲内に設定することにより所望の無機配向膜を形成可能となっている。
【0024】
本実施形態では、成膜時に基板ホルダー6の搬送方向は始点が−Xから終点が+X方向に搬送され、一対のターゲット11,12が基板ホルダー6の搬送の終点側に傾いて配置されている。そして、基板ホルダー6の搬送の始点に近い方に第1ターゲット11が設けられ、基板ホルダー6の搬送の終点に近い方に第2ターゲット12が設けられている。
なお、第1ターゲット11、第2ターゲット12は、基板W上に形成する無機配向膜の構成物質を含む材料、例えばシリコンからなるものとされる。また、第1ターゲット11、第2ターゲット12は、Y方向に延びる細長い板状のものが用いられている。
【0025】
第1ターゲット11は一面が平板状のバッキングプレート13に装着されている。バッキングプレート13は筐体10の一面に形成された穴を介して筐体10の内側から外側に貫通しプレート背面部13aが筐体10の外周に突出している。
また、筐体10とバッキングプレート13の間には絶縁板15が配置され、さらに筐体10内の気密を保つためにOリング17が備えられている。そして、第1ターゲット11が装着されたバッキングプレート13は取り付けねじ19により筐体10の一面に内部から締結されている。
【0026】
図1および図2に示すように、第2ターゲット12は一面が平板状のバッキングプレート14に装着されている。バッキングプレート14は筐体10の一面に取り付けられたターゲット組み付け板20に形成された穴を介して筐体10の内側から外側に貫通しプレート背面部14aが筐体10の外周に突出している。
また、ターゲット組み付け板20とバッキングプレート14の間には絶縁板16が配置され、さらに筐体10内の気密を保つためにOリング18が備えられている。そして、第2ターゲット12が装着されたバッキングプレート14は取り付けねじ19によりターゲット組み付け板20に締結されている。
さらに、ターゲット組み付け板20は筐体10に形成された穴を塞ぐように筐体10の一面に取り付けねじ22により筐体10の外側から締結されている。このターゲット組み付け板20と筐体10の一面の間にはOリング21が配置され、筐体10内の気密が保たれる。
【0027】
また、スパッタリング粒子放出部3の成膜室2との接続部25とは反対側には、放電用のアルゴンガスを流入させるスパッタリングガス供給手段5を備えている。これにより、スパッタリングガスは、筐体10の底面部から一対の対向するターゲット11,12を経て成膜室2に流れるように構成されている。
【0028】
また、バッキングプレート13,14は電極の役目をなし、これらには直流電源又は高周波電源からなる電源が接続されている。スパッタリングガスが供給された状態で、各電源から供給される電力により一対のターゲット11,12が向き合う空間(プラズマ生成領域)にプラズマPzを発生させる。
【0029】
プレート背面部13a,14aには配管23,24が設けられ、第1ターゲット11,第2ターゲット12を冷却するための冷却手段8a,8bが接続されている。この冷却手段8a,8bは、冷媒を循環させることにより第1ターゲット11、第2ターゲット12を冷却している。
【0030】
また、図示しないが、第1ターゲット11、第2ターゲット12を取り囲むように裏面側から永久磁石、電磁石、またはこれらを組み合わせた磁石等からなる磁界発生手段が配設されている。
磁界発生手段とは、第1ターゲット11、第2ターゲット12を取り囲むZa方向の磁界をスパッタリング粒子放出部3内に発生させ、この磁界によってプラズマPzに含まれる電子をプラズマ生成領域内に拘束する電子拘束手段を構成している。
【0031】
以上の構成のスパッタリング装置1を用いて基板W上に無機配向膜を形成するには、まず、スパッタリングガス供給手段5からアルゴンガスを導入しつつ、バッキングプレート13,14に直流または交流の高電圧をかけることで、第1ターゲット11、第2ターゲット12に挟まれる空間にプラズマPzを発生させる。プラズマ雰囲気中のアルゴンイオンを第1ターゲット11、第2ターゲット12に衝突させることで、第1ターゲット11、第2ターゲット12から配向膜材料(シリコン)をスパッタリング粒子としてたたき出す。さらにプラズマPzに含まれるスパッタリング粒子のうち、プラズマPzから開口部へ飛行するスパッタリング粒子のみを成膜室2側へ放出する。
【0032】
そして、基板Wの面上に斜め方向から飛来したスパッタリング粒子と、成膜室2を流通する酸素ガスとを基板W上で反応させることで、シリコン酸化物からなる配向膜を基板W上に形成する。
このように、スパッタリング装置1によれば、スパッタリング粒子を基板Wに供給して反応ガスと反応させて一方向に配向した柱状構造を有する無機配向膜を基板W上に形成することができる。
【0033】
このようなスパッタリング装置1において、装置を使用するに従いターゲットが消耗するため、ターゲット交換が定期的に行われる。ここではメンテナンス作業としてターゲット交換を行う場合について説明する。
まず、筐体10に取り付けられているターゲット組み付け板20を、取り付けねじ22を外すことで取り外す。そして、ターゲット組み付け板20には第2ターゲット12が装着されており、別の場所でこの第2ターゲット12の交換が行われる。
筐体10からターゲット組み付け板20を取り外すことで、筐体10の一面には穴部が現れ、この穴部を通して第1ターゲット11が作業者の正面に目視可能となる。
【0034】
この穴部を通して第1ターゲット11の交換が行われる。この交換の際には取り付けねじが作業者の正面から認識できるため、ねじの着脱が容易である。
そして、別の場所で第2ターゲット12の交換が行われたターゲット組み付け板20を筐体10に取り付けてターゲット交換が終了する。
【0035】
このように、本実施形態のスパッタリング装置1は、メンテナンス作業でターゲット交換を行う場合、ターゲット組み付け板20を取り外し、開放された穴部を通して、もう一方の第1ターゲット11などを固定するねじを着脱してターゲットを交換ができる。また、取り外したターゲット組み付け板20は別の場所で第2ターゲット12の交換ができる。このように、作業者の視線の正面側からねじの着脱作業が行え、ターゲット交換作業が容易で短時間にかつ確実に行うことができる。なお、本実施形態のスパッタリング装置1は、ターゲット交換に限らず、防着板の交換または筐体10内部の清掃など様々なメンテナンス作業に対応でき、メンテナンス作業に時間がかからずスパッタリング装置1の稼働率を向上させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、スパッタリング粒子としてのシリコンを、酸素ガスと反応させることでシリコン酸化物を基板W上に成膜する場合について説明しているが、ターゲットとして例えばシリコン酸化物(SiOx)やアルミニウム酸化物(AlOy等)などを用い、シリコン酸化物やアルミニウム酸化物からなる無機配向膜を基板W上に形成することができる。
(第2の実施形態)
【0037】
次に第2の実施形態のスパッタリング装置について説明する。本実施形態は第1の実施形態と成膜室に接続されるスパッタリング粒子放出部の取り付け角度のみが異なる。このためスパッタリング装置の構成について簡単に説明する。
図3は本実施形態のスパッタリング装置の一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、スパッタリング装置51は、基板Wを収容する成膜室52と、プラズマを生成してターゲットからスパッタリング粒子を放出するスパッタリング粒子放出部53とを備えている。
【0038】
成膜室52には、その内部圧力を制御する排気制御装置80が接続され、成膜室52の内部に収容された基板W上に飛来するスパッタリング粒子と反応して無機配向膜を形成する反応ガスとして酸素ガスを供給する反応ガス供給手段54を備えている。
成膜室52は、基板Wの被処理面(成膜面)がXY面に平行(水平)になるようにして保持する基板ホルダー56を有している。この基板ホルダー56には、基板ホルダー56を搬送する移動手段57が接続されている。
また、基板ホルダー56には、保持した基板Wを加熱するためのヒータ(図示せず)が設けられており、さらに、保持した基板Wを冷却するための冷却手段58cが設けられている。
【0039】
スパッタリング粒子放出部53は、対向配置される第1ターゲット61および第2ターゲット62を有し、対向ターゲット型のスパッタリング装置51を構成している。このスパッタリング粒子放出部53は、成膜室52との接続面のみ開放された直方体箱型の筐体60を有し、成膜室52とスパッタリング粒子放出部53とが連通するように取り付けられている。
スパッタリング粒子放出部53は、成膜室52内部に収容される基板Wの成膜面法線方向(Z方向)に対し、スパッタリング粒子放出部53内に保持される第1ターゲット61および第2ターゲット62の面方向が約90°となるように形成されている。
【0040】
本実施形態では、成膜時に基板ホルダー56の搬送方向は始点が−Xから終点が+X方向に搬送され、基板ホルダー56の搬送の始点に近い方に第1ターゲット61が設けられ、基板ホルダー56の搬送の終点に近い方に第2ターゲット62が設けられている。
なお第1ターゲット61、第2ターゲット62は、Y方向に延びる細長い板状のものが用いられている。
【0041】
第1ターゲット61は一面が平板状のバッキングプレート63に装着されている。バッキングプレート63は筐体60の一面に形成された穴を介して筐体60の内側から外側に貫通しプレート背面部63aが筐体60の外周に突出している。
また、筐体60とバッキングプレート63の間には絶縁板65が配置され、さらに筐体60内の気密を保つためにOリング67が備えられている。そして、第1ターゲット61が装着されたバッキングプレート63は取り付けねじ69により筐体60の一面に内部から締結されている。
【0042】
第2ターゲット62は一面が平板状のバッキングプレート64に装着されている。バッキングプレート64は筐体60の一面に取り付けられたターゲット組み付け板70に形成された穴を介して筐体60の内側から外側に貫通しプレート背面部64aが筐体60の外周に突出している。
また、ターゲット組み付け板70とバッキングプレート64の間には絶縁板66が配置され、さらに筐体60内の気密を保つためにOリング68が備えられている。そして、第2ターゲット62が装着されたバッキングプレート64は取り付けねじ69によりターゲット組み付け板70に締結されている。
さらに、ターゲット組み付け板70は筐体60に形成された穴を塞ぐように筐体60の一面に取り付けねじ72により筐体60の外側から締結されている。このターゲット組み付け板70と筐体60の一面の間にはOリング71が配置され、筐体60内の気密が保たれる。
【0043】
また、スパッタリング粒子放出部53の成膜室52との反対側には、放電用のアルゴンガスを流入させるスパッタリングガス供給手段55を備えている。
また、バッキングプレート63,64は電極の役目をなし、これらには直流電源又は高周波電源からなる電源が接続されている。
プレート背面部63a,64aには配管73,74が設けられ、第1ターゲット61、第2ターゲット62を冷却するための冷却手段58a,58bが接続されている。
また、図示しないが、第1ターゲット61、第2ターゲット62を取り囲むように裏面側から永久磁石、電磁石、またはこれらを組み合わせた磁石等からなる磁界発生手段が配設されている。
【0044】
このようなスパッタリング装置51において、装置を使用するに従いターゲットが消耗するため、ターゲット交換が定期的に行われる。ここではメンテナンス作業としてターゲット交換を行う場合について説明する。
まず、筐体60に取り付けられているターゲット組み付け板70を、取り付けねじ72を外すことで取り外す。そして、ターゲット組み付け板70には第2ターゲット62が装着されており、別の場所でこの第2ターゲット62の交換が行われる。
筐体60からターゲット組み付け板70を取り外すことで、筐体60の一面には穴部が現れ、この穴部を通して第1ターゲット61が作業者の正面に目視可能となる。
【0045】
この穴部を通して第1ターゲット61の交換が行われる。この交換の際には取り付けねじが作業者の正面から認識できるため、ねじの着脱が容易である。
そして、別の場所で第2ターゲット62の交換が行われたターゲット組み付け板70を筐体60に取り付けてターゲット交換が終了する。
【0046】
このように、本実施形態のスパッタリング装置51は、メンテナンス作業でターゲット交換を行う場合、ターゲット組み付け板70を取り外し、開放された穴部を通して、もう一方の第1ターゲット61などを固定するねじを着脱してターゲットを交換ができる。また、取り外したターゲット組み付け板70は別の場所で第2ターゲット62の交換ができる。このように、作業者の視線の正面側からねじの着脱作業が行え、ターゲット交換作業が短時間で容易にかつ確実に行うことができる。なお、本実施形態のスパッタリング装置51は、ターゲット交換に限らず、防着板の交換または筐体60内部の清掃など様々なメンテナンス作業に対応でき、メンテナンス作業に時間がかからずスパッタリング装置51の稼働率を向上させることができる。
(液晶装置)
【0047】
以下、上記で説明したスパッタリング装置1,51を用いて製造することができる液晶装置の一例について図面を参照して説明する。
本実施形態の液晶装置は、対向配置されたTFTアレイ基板と、対向基板との間に液晶層を挟持した構成を備えたTFTアクティブマトリクス方式の透過型液晶装置である。
図4は本実施形態の液晶装置を構成するTFTアレイ基板の平面図である。図5は液晶装置の模式断面図である。
【0048】
図4に示すように、TFTアレイ基板110は、中央に画像表示領域101が形成されている。画像表示領域101の周縁部にシール材102が配設され、このシール材102によりTFTアレイ基板110と対向基板120とを貼り合わせて、両基板110,120とシール材102とに囲まれる領域内に液晶層(図示せず)が封止される。
シール材102の外側には、走査線に走査信号を供給する走査線駆動回路103と、データ線に画像信号を供給するデータ線駆動回路104とが実装されている。TFTアレイ基板110の端部には外部回路に接続する複数の接続端子106が設けられており、接続端子106には駆動回路103,104から延びる配線が接続されている。また、シール材102の四隅にはTFTアレイ基板110と対向基板120とを電気的に接続する基板間導通部105が設けられており、配線を介して接続端子106と電気的に接続されている。
【0049】
図5に示すように、本実施形態の液晶装置100は、TFTアレイ基板110と、これに対向配置された対向基板120と、これらの間に挟持された液晶層130とを備えて構成されている。
TFTアレイ基板110は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体111、及びその内側(液晶層130側)に形成されたTFT(Thin Film Transistor)118、画素電極112、さらにこれを覆う配向下地膜113、無機配向膜114などを備えている。
対向基板120は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体121、およびその内側(液晶層130側)に形成された透明導電材料からなる共通電極122、さらにこれを覆う配向下地膜123、無機配向膜124などを備えている。
無機配向膜114,124は、シリコン酸化物(SiO2)により構成されるが、シリコン酸化物に限らず、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物、マグネシウム酸化物、インジウム錫酸化物、あるいはシリコン窒化物、チタン窒化物などにより形成してもよい。
なお、基板本体111、121のそれぞれの外側(液晶層130と反対側)には、偏光板115,125が互いの透過軸を直交させた状態(クロスニコル)で配置されている。
【0050】
以上説明した液晶装置100にあっては、特に無機配向膜114,124として、前述したメンテナンス性に優れたスパッタリング装置を備えているので、生産性よく無機配向膜を備えた液晶装置100を製造できる。
また、この液晶装置100を光変調手段として備えたプロジェクターなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…スパッタリング装置、2…成膜室、3…スパッタリング粒子放出部、4…反応ガス供給手段、5…スパッタリングガス供給手段、6…基板ホルダー、7…移動手段、8a,8b,8c…冷却手段、10…筐体、11…第1ターゲット、12…第2ターゲット、13,14…バッキングプレート、13a,14a…プレート背面部、15,16…絶縁板、17,18…Oリング、19…取り付けねじ、20…ターゲット組み付け板、21…Oリング、22…取り付けねじ、23,24…配管、25…接続部、30…排気制御装置、100…液晶装置、101…画像表示領域、102…シール材、103…走査線駆動回路、104…データ線駆動回路、105…基板間導通部、106…接続端子、110…TFTアレイ基板、111…基板本体、112…画素電極、113…配向下地膜、114…無機配向膜、115…偏光板、118…TFT、120…対向基板、121…基板本体、122…共通電極、123…配向下地膜、124…無機配向膜、125…偏光板、130…液晶層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダーを有し該基板ホルダーが搬送可能に設けられた成膜室と、
前記成膜室に連通し筐体内に一対のターゲットが対向して配置されるスパッタリング粒子放出部と、を備える対向ターゲット方式のスパッタリング装置であって、
前記一対のターゲットのうちのどちらか一方に配置される前記筐体の一面の一部が前記ターゲットを含んで前記筐体外側より取り外し可能に形成され、他方の前記ターゲットが前記筐体内側より取り外し可能に形成されていることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスパッタリング装置において、
前記スパッタリング粒子放出部の前記一対のターゲットが前記基板ホルダーの搬送経路に対して斜めに傾いた状態で配置されることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスパッタリング装置において、
前記基板ホルダーの搬送の終点方向側に一対の前記ターゲットが傾き、
前記基板ホルダーの搬送の終点に近い側に位置する前記ターゲットが備えられる前記筐体の一面の一部が取り外し可能に形成されていることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項4】
対向する一対の基板間に挟持された液晶層を備え、少なくとも一方の前記基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスパッタリング装置を備え、該スパッタリング装置によって前記無機配向膜を形成することを特徴とする液晶装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−17035(P2011−17035A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160498(P2009−160498)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】