説明

スピンドル装置

【課題】軸受の交換を容易にできるようにする。
【解決手段】ハウジング2と、ハウジング2に収納され、スラストディスク3aを備えた主軸3と、主軸3のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部30A、及び、スラストディスク3aのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部30Bを一体的に備えたラジアル・スラスト軸受30と、スラスト軸受部30Bを主軸3の軸方向に貫通し、ラジアル・スラスト軸受30とハウジング2とを固定する固定ボルト50と、主軸3に設けられた回転子4a、及び、ハウジング2の内周側に回転子4aと対向して設けられた固定子4bを有するモータ4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、主軸を非接触状態で支持するスピンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジング内に収納した主軸と、主軸のラジアル方向を支持する2個の静圧空気ジャーナル軸受と、主軸の負荷側に設けたスラストディスクの径方向に設けたスペーサの両側を挟み込むように配置され、主軸のスラスト方向を支持する両面対向形の静圧空気スラスト軸受とを有する静圧空気軸受スピンドルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−132560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピンドル装置では、軸受を取り外して交換する場合があるが、上記従来技術では、軸受の交換について特に工夫等は施されていなかった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、軸受の交換を容易に行うことができるスピンドル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、ハウジングと、前記ハウジングに収納され、スラストディスクを備えた主軸と、前記主軸のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部、及び、前記スラストディスクのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部を一体的に備えた軸受と、前記スラスト軸受部を前記主軸の軸方向に貫通し、前記軸受と前記ハウジングとを固定する固定ボルトと、前記主軸に設けられた回転子、及び、前記ハウジングの内周側に前記回転子と対向して設けられた固定子を有するモータと、を有するスピンドル装置が適用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸受の交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るスピンドル装置の全体構成を表す縦断面図である。
【図2】実施形態に係るスピンドル装置の全体構成を表す他の縦断面図である。
【図3】軸受の交換手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<スピンドル装置の全体構成>
まず、図1及び図2を用いてスピンドル装置の全体構成について説明する。なお、図1及び図2は、同一のスピンドル装置についての異なる角度での縦断面図である。以下では、図1及び図2中右側を負荷側、左側を反負荷側として説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るスピンドル装置1は、筒状のハウジング2と、ハウジング2に収納され、負荷側にスラストディスク3aを備えた主軸3と、反負荷側に設けられたモータ4とを有している。モータ4は、主軸3の反負荷側に設けられた回転子4aと、ハウジング2の内周側にスリーブ5を介して回転子4aと対向するように設けられた固定子4bを有している。ハウジング2の反負荷側には、排出孔6aを備えたバックプレート6が設けられている。
【0012】
またスピンドル装置1は、反負荷側において主軸3のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受10と、負荷側において主軸3のスラストディスク3aのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受20と、主軸3の軸方向においてこれらラジアル軸受10とスラスト軸受20の間に設けられ、主軸3のラジアル方向及びスラスト方向の両方向の支持を非接触で行うラジアル・スラスト軸受30とを有している。ラジアル・スラスト軸受30は、主軸3のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部30Aと、スラストディスク3aのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部30Bを一体的に備えている。なお、ラジアル・スラスト軸受30が特許請求の範囲に記載の軸受の一例に相当し、スラスト軸受20が負荷側スラスト軸受の一例に相当する。
【0013】
軸受10,20,30は、流体を噴出して主軸3及びスラストディスク3aとの間に流体膜を形成することにより非接触で支持する流体軸受である。本実施形態では、流体として圧縮空気を用いる場合を一例として説明するが、これに限定するものではなく、高圧水や高圧オイル等、他の流体を用いてもよい。
【0014】
図1に示すように、ハウジング2には、軸受10,20,30に圧縮空気を供給するための給気通路7と、空気を排気するための排気通路8が設けられている。これら給気通路7及び排気通路8は、ハウジング2の円周方向の適宜の箇所(1箇所でも複数箇所でもよい)に設けられている。図1に示す例では、給気通路7と排気通路8とが円周方向において対向配置されている。なお、給気通路7が、特許請求の範囲に記載の第1供給路の一例に相当する。
【0015】
<ラジアル軸受の構成>
次に、ラジアル軸受10の構成について説明する。ラジアル軸受10は、ハウジング2の内周側に嵌合されている。ラジアル軸受10は、軸受本体部11と、軸受本体部11の内周側に接着等により設けられ、主軸3の表面に対向して配置されたラジアル軸受用スリーブ12とを有している。軸受本体部11は、剛性の高い材料(例えばステンレス)で構成されており、ラジアル軸受用スリーブ12は、自己潤滑性の高い材料(例えばカーボン)で構成されている。軸受本体部11には、給気通路7に連通する給気通路13a,13bが設けられており、ラジアル軸受用スリーブ12には、給気通路13a,13bにそれぞれ連通し、主軸3の表面に圧縮空気を噴出する給気ノズル14a,14bが設けられている。これら給気通路13及び給気ノズル14は、円周方向の複数箇所に設けられている。なお、図1に示す例では、軸方向の2箇所に給気通路13及び給気ノズル14を設けているが、1箇所あるいは3箇所以上としてもよい。
【0016】
ラジアル軸受10の軸受本体部11には、冷媒を循環させるための冷媒流路15が軸方向略中央位置に設けられている。冷媒流路15は、軸受本体部11の外周面に凹状の溝として形成されており、ハウジング2に設けられた冷媒流路(図示省略)に連通している。なお、図示しないハウジング2の冷媒流路が、特許請求の範囲に記載の第1冷媒流路の一例に相当する。
【0017】
ラジアル軸受10の軸受本体部11の外周面には、Oリング用の溝16が軸方向の4箇所に設けられており、これらの溝16にそれぞれOリング51が嵌め込まれている。溝16及びOリング51は、負荷側の給気通路13aのさらに負荷側、給気通路13aと冷媒流路15との間、冷媒流路15と給気通路13bとの間、反負荷側の給気通路13bのさらに反負荷側、の4箇所に位置している。これらのOリング51により、ハウジング2とラジアル軸受10との接合面における冷媒流路15の密封と、給気通路7と給気通路13a,13bとの連通部の密封が行われる。
【0018】
<ラジアル・スラスト軸受の構成等>
次に、ラジアル・スラスト軸受30の構成について説明する。ラジアル・スラスト軸受30は、ラジアル軸受部30Aがハウジング2の内周側に嵌合され、スラスト軸受部30Bがハウジング2の負荷側に固定されている。ラジアル・スラスト軸受30は、ラジアル軸受部30Aとスラスト軸受部30Bに跨って設けられた断面視略L字型の軸受本体部31と、ラジアル軸受部30Aにおいて軸受本体部31の内周側に接着等により設けられ、主軸3の表面に対向して配置されたラジアル軸受用スリーブ32と、スラスト軸受部30Bにおいて軸受本体部31の内周側に接着等により設けられ、主軸3及びスラストディスク3aの表面に対向して配置された断面視略L字型のスラスト軸受用スリーブ33とを有している。ラジアル軸受10と同様に、軸受本体部31は、剛性の高い材料(例えばステンレス)で構成されており、ラジアル軸受用スリーブ32及びスラスト軸受用スリーブ33は、自己潤滑性の高い材料(例えばカーボン)で構成されている。
【0019】
軸受本体部31のラジアル軸受部30A部分には、給気通路7に連通する給気通路34a,34bが設けられており、ラジアル軸受用スリーブ32には、給気通路34a,34bにそれぞれ連通し、主軸3の表面に圧縮空気を噴出する2つの給気ノズル35a,35bが設けられている。また、軸受本体部31のスラスト軸受部30B部分には、給気通路7に連通する給気通路34cが設けられており、スラスト軸受用スリーブ33には、給気通路34cに連通し、スラストディスク3aの表面に圧縮空気を噴出する給気ノズル35cが設けられている。これら給気通路34及び給気ノズル35は、円周方向の複数箇所に設けられている。なお、図1に示す例では、ラジアル軸受部30Aにおいて軸方向の2箇所に給気通路34及び給気ノズル35を設けているが、1箇所あるいは3箇所以上としてもよい。また、スラスト軸受部30Bにおいて半径方向の1箇所に給気ノズル35cを設けているが、2箇所以上としてもよい。なお、給気通路34cが特許請求の範囲に記載の第2供給路の一例に相当する。
【0020】
軸受本体部31のラジアル軸受部30A部分には、冷媒を循環させるための冷媒流路36が設けられている。冷媒流路36は、軸受本体部31の外周面に凹状の溝として形成されており、ハウジング2に設けられた冷媒流路(図示省略)に連通している。また、軸受本体部31のラジアル軸受部30A部分の外周面には、Oリング用の溝37が軸方向の4箇所に設けられており、これらの溝37にそれぞれOリング52が嵌め込まれている。溝37及びOリング52の位置関係は、前述のラジアル軸受10と同様である。これらのOリング52により、ハウジング2とラジアル・スラスト軸受30との接合面における冷媒流路36の密封と、給気通路7と給気通路34a,34bとの連通部の密封が行われる。なお、冷媒流路36が特許請求の範囲に記載の第2冷媒流路の一例に相当する。
【0021】
なお、軸受本体部31のスラスト軸受部30B部分には、排気通路8に連通する排気通路38が設けられている。排気通路38は、軸受本体部31の円周方向の適宜の箇所(1箇所でも複数箇所でもよい)に設けられている。図1に示す例では、給気通路34cと排気通路38とが円周方向において対向配置されている。
【0022】
ハウジング2とスラスト軸受部30Bとの接合面において給気通路7と給気通路34cとの連通部を密封するOリング53を設置するための凹部54が、ハウジング2の負荷側の表面2aに設けられている。同様に、排気通路8と排気通路38との連通部を密封するOリング55を設置するための凹部56が、ハウジング2の負荷側の表面2aに設けられている。なお、凹部54が特許請求の範囲に記載の第1凹部の一例に相当する。
【0023】
図2に示すように、スラスト軸受部30Bの円周方向の複数箇所には貫通孔39が設けられており、この貫通孔39を複数の固定ボルト50がそれぞれ主軸3の軸方向に貫通し、ハウジング2のネジ孔(図示省略)に螺合することにより、ラジアル・スラスト軸受30がハウジング2に固定されている。
【0024】
<スペーサの構成等>
次に、スペーサ40の構成について説明する。ラジアル・スラスト軸受30のスラスト軸受部30Bの負荷側には、スペーサ40が設けられている。図2に示すように、スペーサ40の円周方向の複数箇所(貫通孔39と対応する位置)には、固定ボルト50用の貫通孔41が設けられている。スペーサ40は、貫通孔41を貫通した固定ボルト50によりスラスト軸受部30Bの負荷側に固定されることで、スラストディスク3aの外周側に配置される。図1に示すように、スペーサ40は、スラスト軸受部30Bの給気通路34cに連通し、スペーサ40を軸方向に貫通する給気通路42を有している。またスペーサ40は、スラスト軸受部30Bの排気通路38に連通する排気通路43を有している。排気通路43の端部は、スラストディスク3aと対向する内周面40aに開口している。図1に示す例では、給気通路42と排気通路43とが円周方向において対向配置されている。なお、給気通路42が特許請求の範囲に記載の第3供給路の一例に相当する。
【0025】
スラスト軸受部30Bとスペーサ40との接合面において給気通路34cと給気通路42との連通部を密封するOリング57を設置するための凹部58が、スラスト軸受部30Bの負荷側の表面30bに設けられている。同様に、スラスト軸受部30Bとスペーサ40との接合面において排気通路38と排気通路43との連通部を密封するOリング59を設置するための凹部60が、スラスト軸受部30Bの負荷側の表面30bに設けられている。なお、凹部58が特許請求の範囲に記載の第2凹部の一例に相当する。
【0026】
<スラスト軸受の構成等>
次に、スラスト軸受20の構成について説明する。スペーサ40の負荷側には、スラスト軸受20が設けられている。図2に示すように、スラスト軸受20の円周方向の複数箇所(貫通孔41と対応する位置)には、固定ボルト50用の貫通孔21が設けられている。スラスト軸受20は、貫通孔21を貫通した固定ボルト50によりスペーサ40の負荷側に固定されることで、スラストディスク3aを挟んでスラスト軸受部30Bと対向配置されている。
【0027】
スラスト軸受20は、軸受本体部22と、軸受本体部22の内周側に接着等により設けられ、主軸3及びスラストディスク3aの表面に対向して配置された断面視略L字型のスラスト軸受用スリーブ23とを有している。ラジアル軸受10やラジアル・スラスト軸受30と同様に、軸受本体部22は、剛性の高い材料(例えばステンレス)で構成されており、スラスト軸受用スリーブ23は、自己潤滑性の高い材料(例えばカーボン)で構成されている。
【0028】
図1に示すように、軸受本体部22には、スペーサ40の給気通路42に連通する給気通路24が設けられており、スラスト軸受用スリーブ23には、給気通路24に連通し、スラストディスク3aの表面に圧縮空気を噴出する給気ノズル25が設けられている。これら給気通路24及び給気ノズル25は、円周方向の複数箇所に設けられている。なお、図1に示す例では、半径方向の1箇所に給気ノズル25を設けているが、2箇所以上としてもよい。なお、給気通路24が特許請求の範囲に記載の第4供給路の一例に相当する。
【0029】
スペーサ40とスラスト軸受20との接合面において給気通路42と給気通路24との連通部を密封するOリング61を設置するための凹部62が、スペーサ40の負荷側の表面40bに設けられている。なお、凹部62が特許請求の範囲に記載の第3凹部の一例に相当する。
【0030】
<スピンドル装置の動作>
次に、スピンドル装置1の動作について説明する。スピンドル装置1において、給気通路7に圧縮空気を供給すると、圧縮空気が給気ノズル14a,14bを通過し、ラジアル軸受10と主軸3の間の軸受隙間に流入して気体膜を形成する。また、圧縮空気が給気ノズル35a,35bを通過し、ラジアル・スラスト軸受30のラジアル軸受部30Aと主軸3の間の軸受隙間に流入して気体膜を形成すると共に、給気ノズル35cを通過し、スラスト軸受部30Bとスラストディスク3aの間の軸受隙間に流入して気体膜を形成する。また、圧縮空気が給気ノズル25を通過し、スラスト軸受20とスラストディスク3aの間の軸受隙間に流入して気体膜を形成する。これにより、主軸3はラジアル方向及びスラスト方向の両方向に対して非接触で支持される。このようにして、主軸3は軸受10,20,30により非接触で支持された状態で、モータ4によって駆動される。
【0031】
一方、軸受10,20,30に供給された圧縮空気の排気経路は次のようになる。図1に示すように、スラスト軸受20に供給された空気の一部は、負荷側の排気隙間71から外部へ排気される。また、ラジアル・スラスト軸受30のスラスト軸受部30Bに供給された空気の一部は、排気経路72を通って排気通路43,38,8を経由し、排気経路73へ流入すると共に、ラジアル軸受部30Aに供給された空気の一部は、排気経路74を通って排気通路8を経由し、排気経路73へ流入する。さらに、ラジアル軸受10に供給された空気の一部は直接排気経路73に流入する。このようにして排気経路73に流入した空気は、モータ4の回転子4aと固定子4bの間の磁気的空隙75を通過する際に、固定子4bで発生した熱を強制対流に伴う熱伝達により冷却し、排出孔6aを介してハウジング2の外部に放熱する。
【0032】
なお、固定子4bで発生した熱の放熱経路は、前述の磁気的空隙75を通過する空気によって奪われる経路以外に、次の2つの経路が存在する。1つは、固定子4bで発生した熱がスリーブ5を介してハウジング2へ熱伝導し、ハウジング2の外周面から空気中へ放熱される経路である。もう1つは、固定子4bで発生した熱が磁気的空隙75を介して主軸3へ輻射熱伝達し、主軸3を介して放熱される経路である。主軸3に熱伝達された熱は主軸3の全体に広がり、主軸3の軸端面から直接空気中へ放熱されるか、軸受10,20,30より主軸3及びスラストディスク3aの表面に噴出される圧縮空気に熱伝達するか、あるいは、軸受隙間を介して軸受10,20,30へ伝達し、直接若しくはハウジング2等を介して空気中へ放熱される。
【0033】
<軸受の交換手順>
次に、図3を用いて軸受の交換手順について説明する。主軸3を非接触状態で支持するスピンドル装置1では、停電などで主軸3の浮上制御が不能になった時や装置の停止時ごとに主軸3と軸受10,20,30とが接触するため、軸受10,20,30に損傷を招く可能性がある。特に、負荷側に配置されるスラスト軸受20及びラジアル・スラスト軸受30は、反負荷側のラジアル軸受10よりも接触が生じ易いため、交換頻度が多くなるのが一般的である。したがって、ここではスラスト軸受20及びラジアル・スラスト軸受30を交換する場合の手順について説明する。
【0034】
図3に示す手順は、作業し易いようにスピンドル装置1の負荷側を上側に向けた状態で軸受交換作業を行う場合の一例である。まず図3(a)に示すように、全ての固定ボルト50を緩め、スピンドル装置1より取り外す。次に図3(b)に示すように、スラスト軸受20及びスペーサ40の順に上側へ向けて取り外す。次に図3(c)に示すように、主軸3を上側へ向けて引き抜き、ハウジング2より取り外す。その後、図3(d)に示すように、ラジアル・スラスト軸受30を上側へ向けて引き抜き、ハウジング2より取り外す。ラジアル・スラスト軸受30のラジアル軸受部30Aはハウジング2の内周側に嵌合されているが、例えば、スラスト軸受部30Bの周方向複数箇所にネジ孔(図示省略)を設けておき、これに螺合させたネジ(図示省略)をハウジング2の負荷側の表面2aに当接させつつネジを締め込むことで、スラスト軸受部30Bを表面2aより離間させ、ラジアル軸受部30Aをハウジング2より引き抜くことが可能である。
【0035】
このようにして取り外したスラスト軸受20及びラジアル・スラスト軸受30について、必要に応じ、スラスト軸受用スリーブ23,33やラジアル軸受用スリーブ32の交換を行う。スリーブの交換後、上述と逆の手順により、ラジアル・スラスト軸受30、主軸3、スペーサ40、スラスト軸受20をハウジング2に取り付け、固定ボルト50を締結する。これにより、軸受の交換が終了する。
【0036】
<実施形態の効果>
以上説明した実施形態によれば、スピンドル装置1が、主軸3のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部30A、及び、スラストディスク3aのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部30Bを一体的に備えたラジアル・スラスト軸受30を有している。このように、ラジアル軸受とスラスト軸受を一体の軸受として構成することで、ラジアル軸受とスラスト軸受の着脱作業を一度に行うことができるので、軸受の交換を容易に行うことができる。特に、交換頻度の高い負荷側においてラジアル軸受とスラスト軸受を一体とするので、効果が高い。
【0037】
また本実施形態においては、スラスト軸受部30Bを主軸3の軸方向に貫通させた固定ボルト50により、ラジアル・スラスト軸受30とハウジング2とを固定する。これにより、次のような効果を得ることができる。例えば、ラジアル軸受部30Aとスラスト軸受部30Bを別体としたスピンドル装置を考えた場合、ラジアル軸受部30Aに作用するラジアル方向の荷重は、その外周側に位置するハウジング2によってのみ支持される。これに対し、本実施形態においてはラジアル軸受部30Aとスラスト軸受部30Bを一体の軸受として構成し、固定ボルト50をスラスト軸受部30Bに貫通させて固定するので、ラジアル軸受部30Aに作用するラジアル方向の荷重を、ハウジング2だけでなく固定ボルト50によっても受けることができる。これにより、ラジアル方向の耐荷重を増大させ、スピンドル装置1の耐久性、信頼性を向上することができる。
【0038】
さらに、ラジアル軸受部30Aとスラスト軸受部30Bは互いに直角となるように配置する必要があるが、これらを一体の部材とすることで同時加工することが可能となるため、別体とする場合に比べて直角の精度を出しやすい。したがって、スピンドル装置1の信頼性をさらに向上することができる。
【0039】
また、本実施形態では特に、軸受10,20,30の軸受本体部11,22,31の内周側に、主軸3及びスラストディスク3aと対向配置されるスリーブ12,23,32,33を設ける。これにより、軸受10,20,30の交換の際には、主軸3やスラストディスク3aとの接触により損傷したスリーブ部分のみを交換すれば足り、軸受全体を交換する場合に比べてコストを削減できる。特にラジアル・スラスト軸受30では、スリーブを、ラジアル軸受用スリーブ32とスラスト軸受用スリーブ33の2部材で構成する。これにより、損傷部分がラジアル軸受部30A及びスラスト軸受部30Bの一方側のみである場合に、該当するスリーブのみを交換すれば足り、スリーブ全体を交換する場合に比べてさらにコストを削減できる。このようにして、軸受の交換を容易に行うことを可能としつつ、交換に要するコストを必要最小限にすることができる。
【0040】
なお、上述のように、固定子4bで発生した熱は、ハウジング2に熱伝導すると共に、磁気的空隙75を介して主軸3に熱伝達する。さらに、ラジアル軸受10及びラジアル・スラスト軸受30と主軸3間の狭い隙間に流入した圧縮空気が主軸3の回転により発熱する。この圧縮空気で発生した熱は、軸受10,30及び主軸3それぞれに熱伝達する。そして、本実施形態では特に、ハウジング2が冷媒流路を有すると共に、ラジアル軸受10及びラジアル・スラスト軸受30がハウジング2の冷媒流路に連通する冷媒流路15,36をそれぞれ有している。これにより、固定子4bよりハウジング2に熱伝導した熱を冷媒流路を循環する冷媒によって冷却できると共に、圧縮空気より軸受10,30に熱伝達した熱や、主軸3を介して軸受10,30に熱伝達した熱を、冷媒流路15,36を循環する冷媒によって冷却することができる。また、冷媒流路15,36を流れる冷媒によりラジアル軸受10の給気ノズル14a,14bより噴出される圧縮空気及びラジアル・スラスト軸受30の給気ノズル35a,35b,35cより噴出される圧縮空気を冷却できるので、軸受10,30や主軸3を効率的に冷却できる。さらに、圧縮空気を冷却できる結果、空気の排出経路に位置する固定子4bで発生した熱を効率的に冷却できる。また、ラジアル軸受部30Aとスラスト軸受部30Bを一体の軸受として構成するので、ラジアル軸受部30Aに設けた冷媒流路36によってスラスト軸受部30Bについても熱伝導により冷却でき、別体とする場合に比べて軸受全体について効率的に冷却できる。以上のようにして、スピンドル装置1の冷却効率を向上できる。
【0041】
また、本実施形態では特に、ハウジング2とスラスト軸受部30Bとの接合面、スラスト軸受部30Bとスペーサ40との接合面、スペーサ40とスラスト軸受20との接合面において、各給気通路の連通部を密封するOリング53,57,61を設置するための凹部54,58,62がそれぞれ、ハウジング2の負荷側の表面2a、スラスト軸受部30Bの負荷側の表面30b、スペーサ40の負荷側の表面40bに設けられている。これにより、軸受の交換作業の際に各凹部54,58,62がハウジング2、スラスト軸受部30B及びスペーサ40の上面に位置することとなるので、Oリング53,57,61の着脱が容易となり、且つ、設置したOリングの脱落を防止できる。なお、各排気通路の連通部を密封するOリング55,59を設置するための凹部56,60についても同様の構成となっており、同様の効果を奏する。したがって、軸受の交換をさらに容易に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では特に、軸受10,20,30のスリーブ12,23,32,33を自己潤滑性が高いカーボン等で構成することにより、スリーブ12,23,32,33が主軸3と接触した際の焼き付き等による損傷を抑制することができる。一方、軸受10,20,30の軸受本体部11,22,31を剛性の高いステンレス等で構成することにより、軸受10,20,30の剛性を確保できる。
【0043】
<変形例>
なお、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態ではラジアル軸受が2つ(ラジアル軸受10とラジアル軸受部30A)である場合を一例として説明したが、ラジアル軸受が1つ(ラジアル軸受10を設けず、ラジアル軸受部30Aのみ)、あるいは3つ以上である構成としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、モータ4を反負荷側に配置した構成としたが、例えばモータ4をラジアル軸受10とラジアル・スラスト軸受30との間に配置する等、軸方向中央位置に配置した構成としてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、各軸受が流体軸受である場合を一例として説明したが、例えば磁力により主軸3を非接触で支持する磁気軸受としてもよい。
【0047】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 スピンドル装置
2 ハウジング
2a 表面
3 主軸
3a スラストディスク
4 モータ
4a 回転子
4b 固定子
7 給気通路(第1供給路)
24 給気通路(第4供給路)
30 ラジアル・スラスト軸受(軸受)
30A ラジアル軸受部
30B スラスト軸受部
30b 表面
31 軸受本体部
32 ラジアル軸受用スリーブ
33 スラスト軸受用スリーブ
34c 給気通路(第2供給路)
36 冷媒流路(第2冷媒流路)
40 スペーサ
40b 表面
42 給気通路(第3供給路)
50 固定ボルト
53 Oリング
54 凹部(第1凹部)
57 Oリング
58 凹部(第2凹部)
61 Oリング
62 凹部(第3凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収納され、スラストディスクを備えた主軸と、
前記主軸のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部、及び、前記スラストディスクのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部を一体的に備えた軸受と、
前記スラスト軸受部を前記主軸の軸方向に貫通し、前記軸受と前記ハウジングとを固定する固定ボルトと、
前記主軸に設けられた回転子、及び、前記ハウジングの内周側に前記回転子と対向して設けられた固定子を有するモータと、を有する
ことを特徴とするスピンドル装置。
【請求項2】
前記軸受は、
前記ラジアル軸受部と前記スラスト軸受部に跨って設けられた軸受本体部と、
前記ラジアル軸受部において前記軸受本体部の内周側に設けられ、前記主軸の表面に対向して配置されたラジアル軸受用スリーブと、
前記スラスト軸受部において前記軸受本体部の内周側に設けられ、前記スラストディスクの表面に対向して配置されたスラスト軸受用スリーブと、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のスピンドル装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、
冷媒を循環させる第1冷媒流路を有し、
前記軸受は、
前記第1冷媒流路に連通する第2冷媒流路を前記ラジアル軸受部に有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスピンドル装置。
【請求項4】
前記軸受は、
流体を噴出して前記主軸及び前記スラストディスクを支持する流体軸受であり、
前記ハウジングは、
前記軸受に前記流体を供給するための第1供給路を有し、
前記スラスト軸受部は、
前記固定ボルトにより前記ハウジングの負荷側に固定され、前記第1供給路に連通する第2供給路を有し、
前記ハウジングと前記スラスト軸受部との接合面において前記第1供給路と前記第2供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第1凹部が、前記ハウジングの負荷側の表面に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスピンドル装置。
【請求項5】
前記固定ボルトにより前記スラスト軸受部の負荷側に固定されることで前記スラストディスクの外周側に配置され、前記第2供給路に連通する第3供給路を有するスペーサと、
前記固定ボルトにより前記スペーサの負荷側に固定されることで前記スラストディスクを挟んで前記スラスト軸受部と対向配置され、前記第3供給路に連通する第4供給路を有する負荷側スラスト軸受と、をさらに有し、
前記スラスト軸受部と前記スペーサとの接合面において前記第2供給路と前記第3供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第2凹部が、前記スラスト軸受部の負荷側の表面に設けられ、
前記スペーサと前記負荷側スラスト軸受との接合面において前記第3供給路と前記第4供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第3凹部が、前記スペーサの負荷側の表面に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のスピンドル装置。
【請求項6】
前記軸受本体部は、
ステンレスで構成されており、
前記ラジアル軸受用スリーブ及び前記スラスト軸受用スリーブは、
カーボンで構成されている
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のスピンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−53689(P2013−53689A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192726(P2011−192726)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】