説明

スプレッダの衝突防止装置

【課題】2台のスプレッダを操作して、コンテナヤードに混在する40ft型コンテナと20ft型コンテナを同時に取り扱うという作業において、スプレッダによるコンテナの誤吊り上げや衝突事故を防止するとともに、作業の効率化を図る。
【解決手段】スプレッダの本体フレーム10の底面に、横行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて第1超音波センサー群20と、走行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて第2の超音波センサー群21とを配置して、第1超音波センサー群20の検出信号に応じてスプレッダの巻き下げ速度を制御し、第2超音波センサー群21の検出信号に応じてコンテナの種類を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埠頭等のコンテナヤードにおいて用いられるコンテナクレーンのスプレッダによるコンテナの誤吊り上げや、スプレッダの巻き下げ時におけるコンテナとの衝突を防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、物流の合理化のためにコンテナを用いた輸送が盛んに行われており、埠頭などに設けられたコンテナヤードにおいては、大型のクレーンを用いてのコンテナの積み替え作業が頻繁に行われている。
【0003】
このクレーンの一般的な構造を図5に示す。図5はクレーンの正面図を示したものである。
【0004】
クレーン本体1は、2本の脚部2とそれらの上部に渡されたガーダ3からなる門型(橋型)の形状を有している。ガーダ3上には、コンテナ4と結合するスプレッダ5をヘッドブロック6を介してワイヤ7により巻き上げ又は巻き下げする駆動装置8を有するトロリー9が、X方向に移動可能な状態で載置されている。
【0005】
コンテナ4は国際規格に沿って製作されており、幅は8ft(8フィート)で統一されているが、長さは40ftや20ftなど様々な種類があり、用途に応じて使い分けられている。そのため、積み替え作業の効率化を図る観点から、一般にスプレッダ5は複数の種類のコンテナ4を取り扱える構造を有している。
【0006】
例として、40ft型コンテナと20ft型コンテナの両方を取り扱うことができるスプレッダの構造を図6及び図7に示す。図6はスプレッダの側面図を、図7はスプレッダの正面図を、それぞれ示したものである。
【0007】
スプレッダ5は、直方体状の本体フレーム10と、その本体フレーム10の長手方向の両端部から相互に反対方向に伸縮する一対の伸縮ビーム11と、それぞれの伸縮ビーム11の先端に取り付けられたクロスビーム12から構成される。このクロスビーム12の両端底面には、コンテナ4を固定するためのツイストロック13が1つずつ設けられている。
【0008】
また、本体フレーム10の側面中心付近には、連動する一対の回動式又はスライド式のコラム14(ここでは回動式の例を示す。)が取り付けられており、その先端部には20ft型コンテナ用のツイストロック15が設けられている。
【0009】
スプレッダ5は、上部に4つの滑車16を備えたヘッドブロック6に固定されており、それぞれの滑車16にはトロリー9上の駆動装置8につながるワイヤ7が巻き回されている。
【0010】
このような構造を有するスプレッダ5によるコンテナ4の取り扱いは、以下のように行われる。
【0011】
まず、クレーン本体の運転手は、トロリー9を適当な位置まで移動させた後に、スプレッダ5と吊り上げ対象となるコンテナ4との相対位置を目視で確認しながら駆動装置8を操作して高速で、例えば180〜200 m/min の速度でスプレッダ5をコンテナ4に向けて巻き下げる。
【0012】
そして、スプレッダ5を適当な位置まで巻き下げた後は、巻き下げ速度を低速に、例えば50 m/min にまで落として更にコンテナ4に接近させる。
【0013】
コンテナ4に十分接近した後は微速で巻き下げてコンテナ4上に着床させ、ツイストロック13をコンテナ4の四隅の受け金具(図示せず)に挿入して回動させることによりコンテナ4とスプレッダ5を結合させ、駆動装置8によりワイヤ7を巻き上げる。
【0014】
以上の手順は40ft型コンテナ4aを吊り上げる場合であるが、縦列した2個の20ft型コンテナ4bの場合には、図8に示すように、回動式コラム14を回動させて20ft型コンテナ用ツイストロック15を使用可能な状態にし、クロスビーム12部のツイストロック13とともにコンテナ4に結合させることにより吊り上げることができる。
【0015】
しかし、上記のような作業においては、運転手が目視によりコンテナの種類を識別することが困難であるため、誤って別のコンテナ4を吊り上げたり(誤吊り上げ)、スプレッダ5の巻き下げ時にコンテナ4と衝突させたり(衝突事故)してしまうという問題があった。特に、40ft型コンテナを20ft型コンテナと誤認した場合には、スプレッダの着床時に20ft型コンテナ用ツイストロックが40ft型コンテナの本体に衝突して破損させたり、ひいては着床そのものができない場合があることが指摘されていた。
【0016】
このような問題を解決するため、特許文献1においては、スプレッダ5の底面に非接触式センサーを取り付けて、コンテナ4の間隙の有無を検出することによりコンテナの態様を識別して、運転手に警報を発する発明が開示されている。
【0017】
しかし、特許文献1の発明では、2台のスプレッダを同時に操作してコンテナヤードに混在する40ft型コンテナと20ft型コンテナを取り扱うという最近の高度な作業においては、運転手がスプレッダ5とコンテナ4間の距離を正確に把握することが極めて困難となるため、クレーン作業の更なる効率化を図ることが困難であるという問題があった。
【特許文献1】特許3219711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、2台のスプレッダを同時に操作してコンテナヤードに混在する40ft型コンテナと20ft型コンテナを取り扱う作業において、スプレッダによるコンテナの誤吊りや衝突事故を防止することができ、かつ作業の効率化を図ることができる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明は、コンテナ吊り用スプレッダの本体フレーム底面に下向きに設けられた複数の非接触式センサーからなるスプレッダの衝突防止装置であって、前記複数の非接触式センサーは、前記本体フレームの横行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて配置された第1の非接触式センサー群と、前記本体フレームの走行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて配置された第2の非接触式センサー群とからなり、前記第1の非接触式センサー群の検出信号に応じて前記スプレッダの巻き下げ速度を調整する制御手段と、前記第2の非接触式センサー群の検出信号に応じて前記コンテナの種類を識別する識別手段とを備えることを特徴とするスプレッダの衝突防止装置である。
【0020】
このような構成を有するスプレッダの衝突防止装置により、第1の非接触式センサーによりコンテナとの距離を検知して、第2の非接触式センサーにより40ft型と20ft型のコンテナを区別することができる。
【0021】
なお、上記の非接触式センサーは、超音波センサーまたは一次元レーザセンサーであることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、コンテナ吊り用スプレッダの本体フレーム底面に、本体フレームの横行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて第1の非接触式センサーを、走行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて第2の非接触式センサーを、それぞれ配置して、それらの非接触式センサーの検知信号に基づいてスプレッダの巻き下げ速度を制御し、コンテナの種類を識別するように構成した。
【0023】
このような構成により、コンテナクレーンを用いたコンテナの取り扱い作業において、スプレッダによるコンテナの誤吊り上げや衝突事故を防止することができるとともに、作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る衝突防止装置を取り付けたスプレッダを図1に示す。図1は、スプレッダの底面図であり、図7及び図7と共通する部分には同一の符号を付している。
【0025】
本発明は、従来のスプレッダの底面に、複数の超音波センサーを各中心軸上に所定の間隔をおいて下向きに配置したものである。従って、従来のスプレッダと同一の部分についての説明は省略する。
【0026】
超音波センサー20、21は、スプレッダ5の横行方向(X方向)及び走行方向(Y方向)の、それぞれ中心軸上又はその近傍に所定の間隔をおいて複数配置される。
【0027】
Y方向に配置された第1超音波センサー群20は、スプレッダー5の巻き下げ時に、下方に位置するコンテナ4との距離を検知するのに用いられるものである。
【0028】
また、X方向に配置された第2超音波センサー群21は、2台の20ft型コンテナ4bを縦列させて取り扱う際に、両者の隙間を検知するのに用いられるものである。
【0029】
それぞれの超音波センサー20、21からの検出信号は、駆動装置8の動作を制御する制御装置(図示せず)に有線又は無線により伝えられる。この制御装置は、例えば駆動装置8の近傍などに設置するのがよい。
【0030】
なお、超音波センサーの数は、図1に示すものに限定されるものではない。
このような構成を有する衝突防止装置の動作を、図2、図3及び図4に基づいて以下に説明する。図2はコンテナの取り扱い作業における正面図を、図3はコンテナの取り扱い作業における側面図を、それぞれ示したものである。また、図4は、制御装置における制御の流れを示したフローチャートである。
【0031】
まず、運転手は、図2のように、スプレッダ5とコンテナ4の位置を目視で確認しながら駆動装置8を操作して、コンテナに向けてスプレッダ5を高速(例えば、200 m/min)で巻き下げる。このとき、第1超音波センサー群20からの超音波22によりコンテナとの距離を検知して(S100)、所定の距離(例えば、20 m)以下になった場合には(S101)、駆動装置8を制御して巻き下げ速度を強制的に低速(例えば、50 m/min)に減速させるとともに、運転手に第1の警報を発する(S102)。
【0032】
なお、図2のように隣接するコンテナ4の高さが異なる場合には、最も距離が近いコンテナ4との距離に応じて駆動装置8を制御する。
【0033】
スプレッダ5が減速した後は、第2超音波センサー群21からの超音波23によりコンテナに隙間があるか否かを検知する(S104)。
【0034】
隙間が検出されない場合には、対象のコンテナ4は1個の40ft型コンテナ4aであると認識してそのまま巻き下げを継続してコンテナ4上に着床させ、図示しない着床検出器による着床の確認後に、クロスビーム12部分のツイストロック13による結合作業を行う。
【0035】
隙間が検出された場合には、対象のコンテナ4は2個の20ft型コンテナ4bであると認識して、駆動装置8により当該スプレッダ5の巻き下げを強制的に停止するとともに運転手に第2の警報を発する(S105)。
【0036】
なお、第1及び第2の警報は、それぞれのスプレッダ5について色違いのランプや音色の異なるブザー等などの容易に区別可能な方法で行うのが望ましい。
【0037】
この第2の警報を受けた運転手は、図3に示すように、回動式コラム14を操作して20ft型コンテナ用ツイストロック15を使用可能な状態にした後に、微速でスプレッダ5を巻き下げてコンテナ4b上に着床させ、図示しない着床検出器による着床の確認後に、クロスビーム12部分のツイストロック13も合わせて2個の20ftコンテナ4bとの結合作業を行う。
【0038】
以上のようにして、40ft型コンテナ4aと20ft型コンテナ4bが混在するような場合でも、コンテナの種類を識別して誤吊り上げや衝突事故を防止し、かつスプレッダの巻き下げを迅速に行って作業の一層の効率化を図ることができる。
【0039】
また、本発明に係るスプレッダの衝突防止装置の別の実施形態として、超音波センサーを一次元レーザスキャンで置き換えることができる。
【0040】
スプレッダにおける一次元レーザスキャンの設置場所及び巻き下げ速度の制御に係る動作は、前述の実施形態の場合と同一であるため説明及び図面は省略する。
【0041】
一次元レーザスキャンを用いた場合には、大気の状態による影響を少なくすることができ、スプレッダとコンテナの間の距離の測定を遠距離からより正確に求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のクレーンの衝突防止装置を備えたスプレッダの底面図である。
【図2】本発明の動作を説明するスプレッダの正面図である。
【図3】本発明の動作を説明するスプレッダの側面図である。
【図4】本発明に係る制御装置のフローチャートである。
【図5】クレーン本体の正面図である。
【図6】スプレッダが1個の40ft型コンテナを吊り上げる場合の側面図である。
【図7】スプレッダの正面図である。
【図8】スプレッダが2個の20ft型コンテナを吊り上げる場合の側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 クレーン本体
2 脚部
3 ガーダ
4 コンテナ
4a 40ft型コンテナ
4b 20ft型コンテナ
5 スプレッダ
6 ヘッドブロック
7 ワイヤ
8 駆動装置
9 トロリー
10 本体フレーム
11 伸縮ビーム
12 クロスビーム
13 ツイストロック
14 回動式コラム
15 20ft型コンテナ用ツイストロック
16 滑車
20 第1超音波センサー
21 第2超音波センサー
22 第1超音波センサーの超音波
23 第2超音波センサーの超音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ吊り用スプレッダの本体フレーム底面に下向きに設けられた複数の非接触式センサーからなるスプレッダの衝突防止装置であって、前記複数の非接触式センサーは、前記本体フレームの横行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて配置された第1の非接触式センサー群と、前記本体フレームの走行方向の中心軸上に所定の間隔をおいて配置された第2の非接触式センサー群とからなり、前記第1の非接触式センサー群の検出信号に応じて前記スプレッダの巻き下げ速度を調整する制御手段と、前記第2の非接触式センサー群の検出信号に応じて前記コンテナの種類を識別する識別手段とを備えることを特徴とするスプレッダの衝突防止装置。
【請求項2】
前記非接触式センサーは、超音波センサーであることを特徴とする請求項1に記載のスプレッダの衝突防止装置。
【請求項3】
前記非接触式センサーは、一次元レーザセンサーであることを特徴とする請求項1に記載のスプレッダの衝突防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−254087(P2007−254087A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79944(P2006−79944)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】