説明

スプレーコーティングガンで用いるためのノズル

【課題】アクセスし難い表面上に粒子をコールドスプレーするための角度付きノズルを提供すること。
【解決手段】基材にコーティング材料を施工するためスプレーコーティングガンと共に使用するノズル。ノズルは、コーティング材料を放出するよう動作可能な吐出部分を含む。ノズルはまた、原材料を受け取るように動作可能な材料受入部分を含む。吐出部分が前記材料受入部分から角度がつけられ、コーティング材料が吐出部分から吐出されて基材の領域と衝突し結合するようになる。吐出部分は、コーティング材料を任意の位置で施工するように吐出部分を位置付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スプレーコーティングガンで用いるためのノズルに関し、詳細には、アクセスし難い表面上に粒子をコールドスプレーするための角度付きノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
コールドスプレーコーティングシステム及び方法は、対象物の表面又は基材に様々なタイプのコーティングを施工するのに使用される。例えば、スチール製機械部品は、機械部品の腐食を防ぐための材料の保護層でコーティングすることができる。
【0003】
コールドスプレー法は、例えばヘリウム、窒素、及び空気などの高圧ガスと、例えば金属、高融点金属、合金、及び複合材料のような粉体形態のコーティング材料とを受け取るスプレーガンを用いる。粉粒体がスプレーガン内のガス流内に加圧下で導入されて、ノズルから吐出される。ガス流速度は、ノズル内で及び/又はノズルから吐出された後に超音速になることができる。粒子は、超音速に達することができるガス流内で高速に加速される。
【0004】
粉体は高速で基材に衝突する。粉体の運動エネルギーにより、粉粒体が基材との衝突で変形及び平坦化されるようになる。平坦化は、基材との金属結合、機械的結合、又は金属と機械的結合の組み合わせを強化し、基材上の保護コーティングを生じさせる。コールドスプレー法の利点には、飛行中の相変化及び粒子の酸化が無視できるほどゼロであること、及び結合粒子の接着強度が高いことが含まれる。
【0005】
プロセスガスを超音速まで加速するのに用いられる縮小拡大ノズルを備えたスプレーガンは、一般に扱い難く、円柱軸又は矩形軸に沿って3〜10インチである。これらの標準的な直線状ノズルスプレーガンは、多くの用途での使用には適しているが、例えばガスタービンの移行部品又は内燃エンジンのシリンダなど、アクセスし難い内部区域及び閉鎖スペースにおいて対象物の表面上に粒子を堆積させるためにノズルを適切に位置決めすることができないので、これらの区域では用いることができないことが多い。
【0006】
最適なスプレー状態は、通常、高速粒子ができる限り直角近くで基材と衝突するときに得られる。これは、ノズルの長さにより直角でのスプレーが可能にはならないので、閉鎖した小区域においては依然として問題がある。例えば長さ8インチのノズルでは、直角でスプレーするためには10インチのクリアランスが必要となる。小部品ではこのようなクリアランスは利用できないことが多い。基材に対してほぼ90度の角度以外の角度でスプレーが実施された場合、粒子が部品又は基材にあまり効果的には結合されず、影響を受ける領域に堆積される材料が少なくなるので、プロセス効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,302,414号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、アクセスし難い場所、すなわち従来のノズルではアクセスできない閉鎖区域内の場所にスプレーする能力を有するノズルを備えたスプレーガンを提供することが有利となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な実施形態は、基材にコーティング材料を施工するためのノズルを含む。ノズルは、コーティング材料を放出するよう動作可能な吐出部分を含む。ノズルはまた、原材料を受け取るように動作可能な材料受入部分を含む。吐出部分は、材料受入部分から角度がつけられ、コーティング材料が吐出部分から吐出されて基材の領域と衝突し結合するようになる。吐出部分は、コーティング材料を任意の位置に施工するように位置付けることができる。
【0010】
例示的な実施形態は、基材にコーティング材料を施工するためのキネティックスプレーコーティングガンを含む。キネティックスプレーコーティングガンは、材料受入部分とノズル吐出部分とを有するノズルを含む。ノズル吐出部分は、コーティング材料を放出するよう動作可能である。ノズル吐出部分の長手方向軸線は、材料受入部分の長手方向軸線に対して角度がつけられ、コーティング材料を基材の領域と衝突させて接合するようにする。ノズル吐出開口は、任意の位置にコーティング材料を施工するよう位置付けることができる。
【0011】
キネティックプロセスによって基材にコーティング材料を施工する方法は、ノズルの材料受入部分に原材料を供給する段階と、原材料を混合してコーティング材料を形成する段階と、コーティング材料を加速する段階と、コーティング材料を材料受入部分の長手方向軸線に対してある角度でノズルの吐出部分から吐出する段階と、を含む。ノズルの吐出部分は、任意の位置で基材にコーティング材料を施工するよう位置付けることができる。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、例証として本発明の原理を示す添付図面を参照しながら、以下の好ましい実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】キネティックスプレーシステムの例示的な実施形態の概略図。
【図2】角度付きノズルの第1の例示的な実施形態を備えたスプレーガン組立体の例示的な実施形態の概略部分切り欠き側面図。
【図3】角度付きノズルの第2の例示的な実施形態を備えたスプレーガン組立体の例示的な実施形態の概略部分切り欠き側面図。
【図4】角度付きノズルの第3の例示的な実施形態を備えたスプレーガン組立体の例示的な実施形態の概略部分切り欠き側面図。
【図5】角度付きノズルの第4の例示的な実施形態を備えたスプレーガン組立体の例示的な実施形態の概略部分切り欠き側面図。
【図6】コールドスプレーガン組立体に対して移動可能な角度付きノズルの第5の例示的な実施形態を備えた、スプレーガン組立体の例示的な実施形態の概略部分切り欠き側面図。
【図7】約90度でない角度でコーティング材料を堆積させる従来のスプレーシステム(破線で示す)と比べて、基材に対して約90度でコーティング材料を堆積させるキネティックスプレー(実線で示す)の例示的な実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明において、様々な実施形態を十分に理解するために、多数の具体的な詳細事項が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしに実施することができ、図示の実施形態に限定されず、多様な代替の実施形態で実施することができる点は、当業者であれば理解するであろう。場合によっては、公知の方法、手順、及び部品は詳細に説明していない。
【0015】
更に、種々の工程は、実施形態の理解に役立つような様態で実施される複数の別個のステップとして説明することができる。更に、表現「1つの実施形態では」又は「ある実施形態では」の繰り返しの使用は、必ずしも同じ実施形態について言及している訳ではないが、同じ実施形態を指すことも可能である。最後に、本明細書で使用される用語「備える」、「含む」、及び同様のものは、別途指定されない限り、同義語であることを意味する。
【0016】
本開示は、閉鎖区域及び従来のコールドスプレーノズルがアクセスできない内径を有する区域に対してコールドスプレー技法を適用する物品及びプロセスに関する。
【0017】
一般に、限定ではないが、金属、合金、サーメット、又は複合材料などの粉体材料を表面又は基材上に堆積するコールドスプレーなどのキネティックスプレープロセスは、衝突時に粒子が塑性的に変形して表面又はその前に堆積させた層上に結合されるように、粒子を十分高速に加速させるのに必要十分なエネルギーを提供する点で有利である。本プロセスは、比較的高密度のコーティング又は構造的堆積の蓄積を可能にする。
【0018】
キネティックシステムは、キネティックスプレーガンを用いて対象物(基材)の表面にコーティングを施工する。図1は、キネティックシステムの1つのタイプであるコールドスプレーシステム100の例示的な実施形態を示す。システム100は、スプレーガン102、粉体送給機104、及び制御ユニット106を含む。例えば、レーザ及び加熱素子のような熱源108を設けてもよいが、必須ではない。システム100はまた、ガスヒータ112を含むことができる。スプレーガン102は、粉体管路114を介して粉体送給機104に接続され、更に、ガス管路116を介してガスヒータ112に接続される。センサライン118は、スプレーガン102内の温度及び圧力センサ(図示せず)を制御ユニット106に通信可能に接続することができる。制御ライン120は、制御ユニット106をガスヒータ112、粉体送給機104、熱源108、及びスプレーガン102内のセンサに通信可能に接続することができる。
【0019】
作動時には、スプレーガン102は、ガスヒータ112を介してガス源から加圧ガスを受け取る。ガスヒータ112は、最大で1000℃の温度まで、通常は600℃未満の温度までガスを加熱する。代替の実施形態において、ガスヒータ112は、バイパスを設けて、加熱されない加圧ガスを提供することができる。限定ではないが、コーティング材料又は粉体化コーティング材料などの原材料は、加圧下で粉体管路114を介してスプレーガン102に供給される。コーティング材料は、スプレーガン102において内部でガス流に導入される。コーティング材料は、スプレーガン102の縮小又は拡大領域に送給することができる。膨張ガス及びコーティング材料の流れは、スプレーガン102内のノズルの拡大領域から流出する。コーティング材料が対象物(基材)122に衝突すると、コーティング材料の粒体が平坦化及び変形し、基材22上にコーティングを形成する。制御ユニット106は、例えばガスヒータ112及び粉体送給機104を含むプロセスを制御し、スプレーガンセンサからの圧力及び温度測定値を受け取る。
【0020】
任意選択の熱源108は、1以上のレーザ又は、例えば加熱素子のような他のタイプの熱源を含むことができる。例証の目的で、実施形態は、熱源108としてレーザユニットを含む。レーザは、レーザビーム(図示せず)を放出する。レーザビームを用いて、コーティング材料の施工前に基材122のある領域を予熱することができる。コーティング材料の施工前に基材122のある領域を予熱することは、施工されるコーティングの性能及び特性を改善するのに望ましいとすることができる。予熱はまた、コーティング材料の追加コーティングの施工前に基材のコート領域を加熱するのに用いることができる。レーザはまた、堆積物、基材、及び/又はこれらの組み合わせをアニールするのに用いることができる。
【0021】
図2は、ノズル202を有するスプレーガン組立体200の例示的な実施形態の部分切り欠き側面図を示す。ノズル202は、材料受入部分又は延長部分204と、吐出部分又は縮小拡大部分206とを有する。図2に示す実施形態において、延長部分204は、組立体200の主本体部分208のプリチャンバ203から延びて、該延長部分204がプロセス入口210を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口212を介してコーティング材料を受け取るようになる。図2に示すように、送給管205は、粉体入口212から直接縮小拡大部分206の縮小部に延びている。或いは、送給管205は、拡大部に延びることができる。縮小拡大部分206は、延長部分204に取り付けられる角度部分又は曲げ部214から延びて、縮小拡大部分206の長手方向軸線が延長部分204の長手方向軸線に対して角度がつけられるようになる。
【0022】
角度又は曲げ部214により、ノズル202を用いて内部区域及び閉鎖スペース(例えば、ガスタービンの移行部品、ICエンジンのシリンダ、その他)にコールドスプレーを施工することが可能になる。図2に示す実施形態は、90度の角度又は曲げ部を有するが、角度又は曲げ部214は、延長部分204の長手方向軸線に対して、約0度から約180度、より具体的には約30度から約150度、更に具体的には約60度から約120度、また更に具体的には約75度から約105度の範囲にわたることができる。従って、ノズル202は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。延長部分204に対して縮小拡大部分206に角度をつけることによって、縮小拡大部分206は、図7において実線で示すガン102により図示されるようにコーティング材料がほぼ90度で基材に衝突するように位置付けることができる。これは、ノズル202の長さが基材内の開口により設けられたクリアランスを超える可能性がある閉鎖した小区域に含まれる、基材上の様々な場所において有用である。このような閉鎖した又は密閉区域において、曲げ部がない場合には、ノズルの端部には、基材に対してほぼ90度の角度以外の角度で提供されることになり(図7において破線出示すガン102により図示されるように)、これにより、コーティング材料が基材に効果的には結合されず、影響を受ける領域に堆積される材料が少なくなるので、スプレーガンの効率が低下することになる。
【0023】
延長部分204は、縮小拡大部分206及び角度又は曲げ部214と一体化され、単体構造の単一部品ノズル202を形成することができ、ここでノズルはスプレー側に向かって曲げられる。或いは、延長部分204及び/又は曲げ部214及び/又は縮小拡大部分206は、別個の部品として形成されて何らかの公知の方法で共に接合することができる。加えて、角度又は曲げ部214は、必要とされる角度を形成する単一部品又は複数部品とすることができる。ノズル202は、円筒形又は矩形の何れかであり、或いは、コーティング材料が適切に加速される限りは他のあらゆる断面形状を有することができる。
【0024】
作動中、スプレーガン組立体200は、プロセス入口210を介してプロセスガスを受け取り、粒体又は粉体入口212を介してコーティング材料を受け取る。コーティング材料は、ノズル202の延長部分204においてプロセスガスに導入される。或いは、コーティング材料はまた、ノズル202の縮小拡大部分206に導入してもよく、これにより拡大部の背圧が上流側で主としてある圧力よりも小さいときに、低圧の粉体送給装置を使用することが可能になる。ガス流と粒体又は粒子、或いはコーティング材料とプロセスガスとの混合物は、縮小拡大部分206を通って移動する。コーティング材料とプロセスガスは、加速速度で縮小拡大部分206及びノズル202から流出し、粒体は、基材又は物品の表面上に堆積される。ノズル202は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。
【0025】
図3は、ノズル302を有するスプレーガン組立体300の代替の例示的な実施形態の部分切り欠き側面図を示す。ノズル302は、材料受入部分又は縮小拡大部分306と、吐出部分又は延長部分304とを有する。図3に示す実施形態において、縮小拡大部分306は、組立体300の主本体部分308のプリチャンバ303から延びて、該縮小拡大部分306がプロセス入口310を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口312を介してコーティング材料を受け取るようになる。図3に示すように、送給管305は、粉体入口312から直接縮小拡大部分306の縮小部に延びている。或いは、送給管305は、拡大部に延びることができる。延長部分304は、縮小拡大部分306に取り付けられる角度部分又は曲げ部314から延びて、延長部分304の長手方向軸線が縮小拡大部分306の長手方向軸線に対して角度がつけられるようになる。
【0026】
角度又は曲げ部314により、ノズル302を用いて内部区域及び閉鎖スペース(例えば、ガスタービンの移行部品、ICエンジンのシリンダ、その他)にコールドスプレーを施工することが可能になる。図3に示す実施形態は、90度の角度又は曲げ部を有するが、角度又は曲げ部314は、縮小拡大部分306の長手方向軸線に対して、約0度から約180度、より具体的には約30度から約150度、更に具体的には約60度から約120度、また更に具体的には約75度から約105度の範囲にわたることができる。従って、ノズル302は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。縮小拡大部分306に対して延長部分304に角度をつけることによって、延長部分304は、コーティング材料がほぼ90度で基材に衝突するように位置付けることができる。これは、ノズル302の長さが基材内の開口により設けられたクリアランスを超える可能性がある閉鎖した小区域に含まれる、基材上の様々な場所において有用である。このような閉鎖した又は密閉区域において、曲げ部がない場合には、ノズルの端部には、基材に対してほぼ90度の角度以外の角度で提供されなければならず、これにより、コーティング材料が基材に効果的には結合されず、影響を受ける領域に堆積される材料が少なくなるので、スプレーガン300の効率が低下する。
【0027】
縮小拡大部分306は、延長部分304及び角度又は曲げ部314と一体化され、単体構造の単一部品ノズル302を形成することができ、ここでノズルはスプレー側に向かって曲げられる。或いは、縮小拡大部分306及び/又は曲げ部314及び/又は延長部分304は、別個の部品として形成されて何らかの公知の方法で共に接合することができる。加えて、角度又は曲げ部314は、必要とされる角度を形成する単一部品又は複数部品とすることができる。ノズル302は、円筒形又は矩形の何れかであり、或いは、コーティング材料が適切に加速される限りは他のあらゆる断面形状を有することができる。
【0028】
作動中、スプレーガン組立体300は、プロセス入口310を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口312を介してコーティング材料を受け取る。コーティング材料は、ノズル302の縮小拡大部分306においてプロセスガスに導入されて加速される。コーティング材料の粒体とプロセスガスとの混合物は、延長部分304を通って移動する。コーティング材料とプロセスガスは、延長部分304及びノズル302から流出し、粒体は、基材又は物品の表面上に堆積される。ノズル302は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。
【0029】
図4は、ノズル402を有するスプレーガン組立体400の別の例示的な実施形態の部分切り欠き側面図を示す。ノズル402は、材料受入部分又は延長部分404と、吐出部分又は縮小拡大部分406とを有する。図4に示す実施形態において、延長部分404は、組立体400の主本体部分408のプリチャンバ403から延びて、該延長部分404がプロセス入口410を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口412を介してコーティング材料を受け取るようになる。図4に示すように、送給管405は、粉体入口412から直接縮小拡大部分406の縮小部に延びている。或いは、送給管405は、拡大部に延びることができる。縮小拡大部分406は、延長部分404に取り付けられる角度部分又は曲げ部414から延びて、縮小拡大部分406の長手方向軸線が延長部分404の長手方向軸線に対して角度がつけられるようになる。
【0030】
この実施形態において、インラインガスヒータ420が延長部分404に設けられ、プロセスガスを加熱することができる。空気入口422が縮小拡大部分406及び延長部分404の周囲付近に設けられ、空気入口422は、コーティングが基材に施工されるときに空気を基材及びコーティング材料に提供する。
【0031】
角度又は曲げ部414により、ノズル402を用いて内部区域及び閉鎖スペース(例えば、ガスタービンの移行部品、ICエンジンのシリンダ、その他)にコールドスプレーを施工することが可能になる。図4に示す実施形態は、約45度の角度又は曲げ部を有するが、角度又は曲げ部414は、延長部分404の長手方向軸線に対して、約0度から約180度、より具体的には約30度から約150度、更に具体的には約60度から約120度、また更に具体的には約75度から約105度の範囲にわたることができる。従って、ノズル402は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。延長部分404に対して縮小拡大部分406に角度をつけることによって、縮小拡大部分406は、コーティング材料がほぼ90度で基材に衝突するように位置付けることができる。これは、ノズル402の長さが基材内の開口により設けられたクリアランスを超える可能性がある閉鎖した小区域に含まれる、基材上の様々な場所において有用である。このような閉鎖した又は密閉区域において、曲げ部がない場合には、ノズルの端部には、基材に対してほぼ90度の角度以外の角度で提供されることになり、これにより、コーティング材料が基材に効果的には結合されず、影響を受ける領域に堆積される材料が少なくなるので、スプレーガンの効率が低下することになる。
【0032】
ノズルは、プロセス入口410及び粉体入口412を含めるように単一部品で形成することができる。或いは、ノズル402は、シース内に囲むことができ、又は、ノズル402は、長さ全体にわたってプロセスガス及び粉体送給チャンネルを形成する管状セクションを含むことができる。ノズル402は、円筒形又は矩形の何れかであり、或いは、コーティング材料が適切に加速される限りは他のあらゆる断面形状を有することができる。
【0033】
作動中、スプレーガン組立体400は、プロセス入口410を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口412を介してコーティング材料を受け取る。コーティング材料は、ノズル402の延長部分404においてプロセスガスに導入され、ヒータ420により加熱される。コーティング材料とプロセスガスとの混合物は、縮小拡大部分406を通って移動する。コーティング材料とプロセスガスは、加速速度で縮小拡大部分406及びノズル402から流出し、コーティング材料の粒体が基材又は物品の表面上に堆積される。空気がノズル402の空気入口422を通って供給され、基材及びコーティング材料を冷却する。ノズル402は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。
【0034】
図5は、ノズル502を有するスプレーガン組立体500の別の例示的な実施形態の部分切り欠き側面図を示す。ノズル502は、材料受入部分又は第1の延長部分504、縮小拡大部分506、及び吐出部分又は第2の延長部分507を有する。図5に示す実施形態において、第1の延長部分504は、組立体500の主本体部分508のプリチャンバ503から延びて、該第1の延長部分504がプロセス入口510を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口512を介してコーティング材料を受け取るようになる。図5に示すように、送給管505は、粉体入口512から直接縮小拡大部分506の縮小部に延びている。或いは、送給管505は、拡大部に延びることができる。縮小拡大部分506は、第1の延長部分504から延びる。第1の延長部分504の長手方向軸線及び縮小拡大部分506は、基本的に整列されている。第2の延長部分507は、縮小拡大部分506に取り付けられる角度部分又は曲げ部514から延びて、第2の延長部分507の長手方向軸線が縮小拡大部分506の長手方向軸線に対して角度がつけられるようになる。
【0035】
この実施形態において、プロセスガスを加熱するために、インラインガスヒータ520が第1の延長部分504に設けられる。空気入口522が、第1の延長部分504、縮小拡大部分506及び第2の延長部分504の周囲付近に設けられ、該空気入口522は、コーティングが基材に施工されるときに空気を基材及びコーティング材料に提供する。プロセスガスが加熱され且つプロセス要件により基材/コーティング温度を低く抑えなければならない一部の状況では、基材/コーティングの冷却が必要となる場合がある。
【0036】
角度又は曲げ部514により、ノズル502を用いて内部区域及び閉鎖スペース(例えば、ガスタービンの移行部品、ICエンジンのシリンダ、その他)にコールドスプレーを施工することが可能になる。図5に示す実施形態は、約45度の角度又は曲げ部を有するが、角度又は曲げ部514は、延長部分504の長手方向軸線に対して、約0度から約180度、より具体的には約30度から約150度、更に具体的には約60度から約120度、また更に具体的には約75度から約105度の範囲にわたることができる。従って、ノズル502は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。縮小拡大部分506に対して第2の延長部分507に角度をつけることによって、第2の延長部分507は、コーティング材料がほぼ90度で基材に衝突するように位置付けることができる。これは、ノズル502の長さが基材内の開口により設けられたクリアランスを超える可能性がある閉鎖した小区域に含まれる、基材上の様々な場所において有用である。このような閉鎖した又は密閉区域において、曲げ部がない場合には、ノズルの端部には、基材に対してほぼ90度の角度以外の角度で提供され、これにより、コーティング材料が基材に効果的には結合されず、影響を受ける領域に堆積される材料が少なくなるので、スプレーガンの効率が低下する。
【0037】
ノズルは、プロセス入口510及び粉体入口512を含めるように単一部品で形成することができる。或いは、ノズル502は、シース内に囲むことができ、又は、ノズル502は、長さ全体にわたってプロセスガス及び粉体送給チャンネルを形成する管状セクションを含むことができる。ノズル502は、円筒形又は矩形の何れかであり、或いは、コーティング材料が適切に加速される限りは他のあらゆる断面形状を有することができる。
【0038】
作動中、スプレーガン組立体500は、プロセス入口510を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口512を介してコーティング材料を受け取る。コーティング材料は、ノズル502の延長部分504においてプロセスガスに導入され、ヒータ520により加熱される。コーティング材料は、ノズル502の縮小拡大部分506においてプロセスガスに導入されて加速される。コーティング材料とプロセスガスとの混合物は、延長部分504を通って移動する。コーティング材料とプロセスガスは、第2の延長部分507及びノズル502から流出し、コーティング材料の粒体が基材又は物品の表面上に堆積される。空気がノズル502の空気入口522を通って供給され、基材及びコーティング材料を冷却する。ノズル502は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。
【0039】
図6は、ノズル602を有するスプレーガン組立体600の別の例示的な実施形態の部分切り欠き側面図を示す。ノズル602は、材料受入部分又は延長部分604、回転部分605、及び吐出部分又は縮小拡大部分606を有する。図6に示す実施形態において、延長部分604は、組立体600の主本体部分608のプリチャンバ603から延びて、該延長部分604がプロセス入口610を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口612を介してコーティング材料を受け取るようになる。或いは、プロセス入口及び粉体入口を延長部分604に直接提供し、延長部分604をプリチャンバとして機能させるようにすることができる。回転部分又はカラー605は延長部分604から延びる。縮小拡大部分606は回転部分605から延びる。縮小拡大部分606は、延長部分604に対して傾斜して又は湾曲して延びる。回転部分605は、スプーリ/カラー構成又は他の公知の構成を用いて、延長部分604に対して(矢印Aで示すように)完全な円回転すなわち360度で、より具体的には180度で、更により具体的には60度で、また更に具体的には約30度で独立して回転することができるように延長部分604に装着される。縮小拡大部分606は、回転部分605に固定して装着することができ、或いは、回転部分605に枢動可能に装着され、縮小拡大部分606が回転部分605に対して枢動できるようにする。図示の実施形態において、第2の延長部分607が縮小拡大部分606から延びている。第2の延長部分607は、縮小拡大部分606に固定して装着することができ、或いは、縮小拡大部分606に枢動可能に装着され、第2の延長部分607が小拡大部分606に対して枢動できるようにする(矢印Bで示す)。
【0040】
ノズル602の部品の相対移動によって、ノズル602を用いて内部区域及び閉鎖スペース(例えば、ガスタービンの移行部品、ICエンジンのシリンダ、その他)にコールドスプレーを施工することが可能になる。図6に示す実施形態は、延長部分604に対して90度の角度の縮小拡大部分606を示しているが、該角度は、延長部分604の長手方向軸線に対して、約0度から約180度、より具体的には約30度から約150度、更に具体的には約60度から約120度、また更に具体的には約75度から約105度の範囲にわたることができる。従って、ノズル602は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。ノズル602は、円筒形又は矩形の何れかであり、或いは、コーティング材料が適切に加速される限りは他のあらゆる断面形状を有することができる。縮小拡大部分606を移動可能にすることによって、縮小拡大部分は、コーティング材料がほぼ90度で基材に衝突するように位置付けることができる。これは、ノズル602の長さが基材内の開口により設けられたクリアランスを超える可能性がある閉鎖した小区域に含まれる、基材上の様々な場所において有用である。このような閉鎖した又は密閉区域において、曲げ部がない場合には、ノズルの端部には、基材に対してほぼ90度の角度以外の角度で提供されることになり、これにより、コーティング材料が基材に効果的には結合されず、影響を受ける領域に堆積される材料が少なくなるので、スプレーガンの効率が低下することになる。
【0041】
作動中、スプレーガン組立体600は、プロセス入口610を介してプロセスガスを受け取り、粉体入口612を介してコーティング材料を受け取る。コーティング材料は、ノズル602の延長部分604においてプロセスガスに導入される。プロセスガスは、回転部分605及び縮小拡大部分606を通って移動される。コーティング材料は、縮小拡大部分の縮小部において送給管605を介してガス流に注入される。コーティング材料とプロセスガスは、加速速度で縮小拡大部分606及びノズル602から流出し、コーティング材料の粒体が基材又は物品の表面上に堆積される。ノズル602は、スプレー側に角度を持たない従来の直線状ノズルがアクセスできない閉鎖区域とすることができる場所にスプレーするよう位置付けることができる。
【0042】
図6は、縮小拡大部分が回転部分の後に位置付けられるノズルを示しているが、縮小拡大部分は、回転部分の前を含む、他の場所に位置付けることができる。加えて、図6に示すノズルは、インラインヒータ、空気入口、及び他の特徴要素を含むことができる。
【0043】
実施形態の何れかにおいて、ノズルは、温度及び圧力センサライン、及びこのようなセンサ接続部のためのケーブルを保持する管体を含むことができる。センサは、センサ接続部に取り付けることができ、適切な温度及び圧力測定を可能にするようなノズル内の様々な位置に配置することができる。
【0044】
ノズルの端部に延長アタッチメントを設けることができる。アタッチメントは、長さが2メートル、より具体的には1メートル、更に具体的には0.5メートルなど、部品が必要としている長さで作ることができる。これは、長い管状部品のコーティングを可能にすることになる。アタッチメントを通るコーティング材料の流れが、層流作用を流れにもたらすであろう。1つの実施形態において、延長アタッチメントは、吐出端部の半径方向軸線に沿って回転されて、所望の通りコーティング材料を堆積できるように、吐出端部に取り付けることができる。
【0045】
本明細書で説明され請求項に記載されるキネティックスプレーで用いるためのノズル及び方法は、閉鎖区域、部品の内部区域、及び公知のノズルを用いて到達するのが難しい他の区域の表面にコーティング材料を施工できるようにする。これにより、コールドスプレー技法を用いて表面及び基材を均一にコーティングすることが可能になる。このようなコーティングの利点には、限定ではないが、部品の寿命の改善、タービン内の高温の使用を可能にすることが含まれる。加えて、低品質燃料を使用することによって生じる腐食及び浸食問題を軽減するために好適なコーティングを施工できる場合には、低品質燃料(及び高水分燃料)を用いることができる。
【0046】
本明細書は好ましい実施形態を参照したが、請求項によって定義された特許保護される範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正を行うことができ、また、その要素を均等物で置き換えることができる点は、当業者であれば理解されるであろう。従って、特許保護される範囲は、本開示を実施するよう企図される最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ、他の実施形態は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本請求項の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0047】
100 コールドスプレーシステム
102 スプレーガン
104 粉体送給機
106 制御ユニット
108 熱源
112 ガスヒータ
114 粉体管路
116 ガス管路
118 センサライン
120 制御ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材にコーティング材料を施工するためのノズルであって、
コーティング材料を放出するよう動作可能な吐出部分と、
原材料を受け取るように動作可能な材料受入部分と
を備えており、前記吐出部分が前記材料受入部分から角度がつけられ、前記コーティング材料が前記吐出部分から吐出されて前記基材の領域に衝突し且つ結合されていて、コーティング材料を任意の位置で施工するように吐出部分を位置付けることができる、ノズル。
【請求項2】
前記ノズルが、前記材料受入部分と、角度部分と、吐出部分とを有する、請求項1記載のノズル。
【請求項3】
前記材料受入部分が、前記コーティング材料を加速させる縮小拡大部分を有する、請求項2記載のノズル。
【請求項4】
前記吐出部分が、前記コーティング材料を加速させる縮小拡大部分を有する、請求項2記載のノズル。
【請求項5】
前記吐出部分の長手方向軸線が、前記材料受入部分の長手方向軸線に対して約0度から約180度角度がつけられている、請求項2記載のノズル。
【請求項6】
前記ノズルが、貫通して移動するガスを加熱するために設けられたインラインヒータを有する、請求項2記載のノズル。
【請求項7】
前記ノズルには空気入口が設けられており、これにより該空気入口が空気を提供して、コーティング材料が施工される表面を冷却する、請求項2記載のノズル。
【請求項8】
前記吐出部分上にアタッチメントが設けられ、該アタッチメントを通る前記コーティング材料の流れが層流作用をもたらす、請求項2記載のノズル。
【請求項9】
前記ノズルが、前記材料受入部分と、回転部分と、前記吐出部分とを有する、請求項1記載のノズル。
【請求項10】
前記回転部分及び前記吐出部分が、前記材料受入部分の長手方向軸線に対して約0度から360度の間で回転可能である、請求項9記載のノズル。
【請求項11】
前記吐出部分が、前記回転部分に枢動可能に取り付けられ、これにより前記ノズルの吐出部分が前記基材の閉鎖区域内に位置付けることができる、請求項9記載のノズル。
【請求項12】
前記吐出部分に延長アタッチメントが取り付けられ、該延長アタッチメントが、前記吐出部分の半径方向軸線に沿って回転することができ、これにより前記コーティング材料を所望の通り堆積できる、請求項1記載のノズル。
【請求項13】
前記ノズルには1以上のセンサ接続部が設けられる、請求項1記載のノズル。
【請求項14】
キネティックプロセスによって基材にコーティング材料を施工する方法であって、
ノズルの材料受入部分に原材料を供給する段階と、
前記原材料を混合してコーティング材料を形成する段階と、
前記コーティング材料を加速する段階と、
前記コーティング材料を前記材料受入部分の長手方向軸線に対してある角度で前記ノズルの吐出部分から吐出する段階と
を含んでいて、前記基材の任意の位置で前記コーティング材料を施工するよう前記ノズルの吐出部分を位置付けることができる、方法。
【請求項15】
前記ノズルの曲げ部の前で前記コーティング材料を加速する段階を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ノズルの曲げ部の後で前記コーティング材料を加速する段階を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記ノズルにおいて前記ガス流を加熱する段階を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記材料受入部分に対して前記ノズルの吐出部分を回転させ、これにより前記ノズルの吐出部分を前記基材の閉鎖区域内に位置付けることができる段階を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記ノズルの吐出部分にアタッチメントを取り付ける段階と、
前記ノズルの吐出部に対して前記アタッチメントを回転させる段階と
を更に含み、これにより前記アタッチメントを前記基材の閉鎖区域内に位置付けることができる、請求項14記載の方法。
【請求項20】
基材にコーティング材料を施工するためのキネティックスプレーコーティングガンであって、材料受入部分とノズル吐出部分とを有するノズルを備え、前記ノズル吐出部分が前記コーティング材料を放出するよう動作可能であり、前記ノズル吐出部分の長手方向軸線が、前記材料受入部分の長手方向軸線に対して角度がつけられて、前記コーティング材料を前記基材の領域と衝突させて接合するようにし、これにより前記基材の任意の位置に前記コーティング材料を施工するよう前記吐出部分を位置付けることができる、キネティックスプレーコーティングガン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−140707(P2012−140707A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282561(P2011−282561)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】