説明

セミアクティブ式誘導装置

【課題】レーザー光の照射時間を短くし、高精度の誘導を行なうセミアクティブ式誘導装置を提供する。
【解決手段】飛しょう体に搭載される誘導装置本体は、パルス光の反射光から追跡目標を抽出するパルス同期反射光抽出部と、追跡目標に反射した可視光又は赤外線のから追跡目標を抽出する光源抽出部とを備える。追跡目標が遠距離にある場合にはパルス光に同期したパルス同期画像を基に誘導開始時に追跡目標を判定し、追跡目標が追跡目標に反射した可視光又は赤外線の撮像画像から判定するに十分な距離に近づいたとき可視光又は赤外線の撮像画像から追跡目標を判定するように選択を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばミサイルのような飛しょうを追跡目標に誘導する誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばミサイルのような移動する物体に備えられ、この移動する物体を追跡目標に誘導する誘導装置においては、近時その誘導精度をさらに上げることが必要となっている。
【0003】
追跡目標への誘導精度を上げる技術として、例えばレーザー光のような誘導照明を目標に照射し、目標が反射したレーザー光を誘導装置が検知して位置を判定する技術がある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−257724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術によっては、レーザー光を照射する時間が長いと敵にレーザー光の照射源の位置が察知され易くなること、また、レーザー光を飛しょう体の着弾又は追跡終了まで照射し続けなければならず、次の飛しょう体の発射が遅れるなどの問題点があった。
【0005】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、レーザー光の照射時間を短くし、高精度の誘導を行なうセミアクティブ式誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明は、同期信号を生成する発光装置側同期信号生成部と、同期信号に同期してパルス光を追跡目標に照射する発光装置と、を有する同期パルス照射装置と;同期信号を入力し、この入力した同期信号に同期した信号であるパルス同期信号を生成するパルス同期信号生成部と、多素子型2次元センサにより前記追跡目標を撮像する撮像装置と、撮像装置から入力した撮像信号から、パルス同期信号に同期した追跡目標からのパルス光の反射光を抽出するパルス同期反射光抽出部と、撮像装置から入力した撮像信号から、追跡目標が反射する可視光又は前記追跡目標が放射する赤外線の画像を抽出する光源抽出部と、追跡目標の位置を判定するための基礎とする信号を、パルス同期反射光抽出部から出力される画像信号であるパルス光画像信号から、光源抽出部から出力される画像信号である光源光画像信号に切替える、切替部と、を有する誘導装置本体と;を備えることを特徴とするセミアクティブ式誘導装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パルス光の照射時間を短縮できるため、敵に発見されにくくなるという効果がある。また、パルス光を次の飛しょう体の発射に早期に振り向けることができるため、次の飛しょう体の発射までの時間を短縮できるという効果がある。さらに、撮像装置が1台だけ用いたときにおいても高精度の誘導が可能であり、撮像装置が1台だけ用いた場合には製造コストを低く抑えることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明によるセミアクティブ式誘導装置の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
<実施形態の詳細>
図1は、本実施形態のセミアクティブ式誘導装置の構成を示す概要図である。図1に示すように、本実施形態のセミアクティブ式誘導装置は、同期信号を生成する発光装置側同期信号生成部22と、この生成された同期信号に同期してパルス光を追跡目標に照射する発光装置21と、を有する同期パルス照射装置20と;同期パルス照射装置20が生成した同期信号を入力し、この入力した同期信号に同期した信号であるパルス同期信号を生成するパルス同期信号生成部14と、CCDなどの多素子型2次元センサにより追跡目標を撮像する撮像装置11と、撮像装置11から入力した撮像信号から、パルス同期信号に同期した追跡目標からのパルス光の反射光を抽出するパルス同期反射光抽出部13と、撮像装置11から入力した撮像信号から、追跡目標が反射する可視光又は前記追跡目標が放射する赤外線の画像を抽出する光源抽出部12と、追跡目標の位置を判定するための基礎とする信号を、パルス同期反射光抽出部13から出力される画像信号であるパルス光画像信号から、光源抽出部12から出力される画像信号である光源光画像信号に切替える、切替部15と、を有する誘導装置本体10と;を備える。
【0010】
発光装置21は、目標方向判定装置30から目標方向情報を入力するように構成してもよい。この場合目標方向判定装置30は、追跡目標の方向を電磁波によって探知するレーダー23と、レーダー23から入力した受信信号を基に追跡目標の方向を算出する追跡目標判定部24と、を備え、この追跡目標判定部24が目標方向情報を発行装置21に出力するように構成することもできる。
【0011】
切替部15は、光源光画像信号における追跡目標の輝度及び大きさがそれぞれ予め定められた閾値を超えた場合に、追跡目標の位置を判定するための基礎とする信号を、パルス光画像信号から、前記光源光画像信号に切替える。なお、パルス光はレーザー光を用いることができる。切替部15は追跡目標の位置情報を飛しょう体の姿勢や飛しょう速度を制御する姿勢制御部16に出力する。
【0012】
次に、図2を用いて本実施形態のセミアクティブ式誘導装置の誘導動作について説明する。図2において、同期パルス照射装置20と目標方向判定装置30は飛しょう体発射基地101に設置される。
【0013】
レーダー23は、電磁波104を飛来する追跡目標102に照射する。追跡目標102からは電磁波104の反射波が反射され、この反射波をレーダー23が受信する。受信された反射波は、電気信号に変換された後追跡目標判定部24に出力される。追跡目標判定部24は、追跡目標102の方向を判定し、目標方向情報として同期パルス照射装置20に出力する。
【0014】
発射装置側同期信号生成部22は、発射の指示を入力すると同期パルスを発光装置21に、同期信号を飛しょう体に設置された誘導装置本体10のパルス同期信号生成部14に出力する。この、同期パルスと同期信号は同期している。
【0015】
発光装置21は、入力した目標方向情報に示される方向に向けてパルス光105を照射する。誘導体装置本体10のパルス同期信号生成部14は受信した同期信号に同期した信号であるパルス同期信号の生成を開始する。この後、飛しょう体発射基地101は飛しょう体103を発射する。なお、パルス同期信号の生成が開始された後は、同期信号は送信されなくてもよい。
【0016】
誘導装置本体10においては、撮像装置11が撮像を開始し、撮像された画像の信号を光源抽出部12及びパルス同期反射光抽出部13に出力する。パルス同期反射光抽出部13は、撮像装置11から入力した画像情報から、パルス同期信号生成部14から入力したパルス同期信号に同期した信号を抽出する。
【0017】
追跡目標102が遠距離のB1の位置にあるときは、可視光や赤外線などの追跡目標102における反射光の撮像装置11への入射エネルギーが少ないために光源抽出部12では目標の位置を判定できない。一方、パルス光105はその反射光106が追跡目標103の抽出に十分なエネルギーを有するレーザー光を用いる。
【0018】
このため、追跡目標102が遠距離のB1の位置にあるときは、切替部15はパルス同期反射光抽出部13から出力された画像信号を基に追跡目標102の位置を判定する。
【0019】
次いで、追跡目標102が中距離のB2の位置にあるときは、可視光や赤外線などの追跡目標102における反射光107の撮像装置11への入射エネルギーが大きくなり、光源抽出部12は追跡目標102の位置を判定できるようになる。
【0020】
このため、追跡目標102が中距離のB2の位置にあるときは、切替部15は光源抽出部12から出力された画像信号を基に追跡目標102の位置を判定する。そして、追跡目標102が近距離のB3の位置にある終末誘導においては、切替部15は引き続き光源抽出部12から出力された画像信号を基に追跡目標102の位置を判定する。
【0021】
図3は、光源抽出部12及びパルス同期反射光抽出部13における出力信号を模式的に表した図である。追跡目標102がB1の位置にあるときは、光源抽出部12からの出力信号A1dには追跡目標102が判定できるほど反射光107のエネルギーは大きくなく、追跡目標102は判定されていない。一方、パルス同期反射光抽出部13からの出力信号A1pには、パルス光105の反射光106が含まれている。よって、誘導開始時においては、切替部15はパルス同期反射光抽出部13からの出力を基に追跡目標102の位置を判定する。太枠は出力された画像信号が切替部15によって選択されていることを示す。
【0022】
追跡目標102がB2の位置にあるときは、光源抽出部12からの出力信号A2dには追跡目標102が判定するための反射光107のエネルギーは十分大きくなり、追跡目標102が判定されている。ここで、切替部15は、抽出された追跡目標の画像302の輝度及び大きさが予め定められた閾値を超えたときに、光源抽出部12からの出力を基に追跡目標102の位置を判定するように選択を切替える。そして、パルス光は次の飛しょう体の誘導に用いられることができるようになる。
【0023】
図4は、光源抽出部12とパルス同期反射光抽出部13の構成の例を示した図である。光源抽出部12は、撮像装置11から入力した画像信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、信号を処理に適した状態に整える前処理部401と、画像信号に含まれる個々の画像の輪郭を強調する輪郭強調部402と、画像信号に含まれるノイズを除去するノイズフィルタ403と、個々の画像の特徴、すなわち輝度や大きさなどを抽出・算出する特徴抽出部404と、を備える。よって、光源抽出部12からは画像信号に含まれる個々の画像が、撮像画像内の位置と特徴とともに抽出されて切替部15に出力される。
【0024】
パルス同期反射光抽出部13は、光源抽出部12と同様に前処理部411と、輪郭強調部412と、ノイズフィルタ413と、特徴抽出部414と、を備える。
【0025】
なお、パルス同期反射光抽出部13はパルス同期信号と同期した入力信号だけを処理するように動作する。パルス同期信号と同期した入力信号の抽出は、前処理部411において行なうように構成しても、前処理部の前にパルス同期信号と同期した入力信号の抽出を行なう同期信号抽出部(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
パルス同期信号と同期した入力信号の抽出は、パルス同期信号の周波数と同期した周波数の信号だけを通過させるバンドパスフィルタを用いることにより行なってもよく、また、他の方法を用いてもよい。
【0027】
パルス同期反射光抽出部13はパルス同期信号と同期した入力信号だけを処理するため、画像信号に含まれるパルス同期信号と同期した画像が、撮像画像内の位置と特徴とともに抽出されて切替部15に出力される。
【0028】
<実施形態の効果>
以上述べたように、本実施形態のセミアクティブ式誘導装置は、追跡目標が遠距離にある場合にはパルス光に同期したパルス同期画像を基に誘導開始時に追跡目標を判定し、追跡目標が追跡目標に反射した可視光又は赤外線の撮像画像から判定するに十分な距離に近づいたとき可視光又は赤外線の撮像画像から追跡目標を判定するように選択を切替える。これにより、パルス光の照射時間を短縮できるため、敵に発見されにくくなるという効果がある。また、パルス光を次の飛しょう体の発射に早期に振り向けることができるため、次の飛しょう体の発射までの時間を短縮できるという効果がある。さらに、撮像装置が1台だけ用いたときにおいても高精度の誘導が可能であり、撮像装置が1台だけ用いた場合には製造コストを低く抑えることができるという効果がある。
【0029】
<本発明の具体化における可能性>
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】セミアクティブ式誘導装置の構成を示す概要図である。
【図2】セミアクティブ式誘導装置の誘導動作を示した図である。
【図3】光源抽出部及びパルス同期反射光抽出部における出力信号を模式的に表した図である。
【図4】光源抽出部とパルス同期反射光抽出部の構成の例を示した図である。
【符号の説明】
【0031】
10:誘導装置本体、
11:撮像装置、
12:光源抽出部、
13:パルス同期反射光抽出部、
15:切替部、
20:同期パルス照射装置、
21:発光装置、
22:発光装置側同期信号生成部、
30:目標方向判定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期信号を生成する発光装置側同期信号生成部と、
前記同期信号に同期してパルス光を追跡目標に照射する発光装置と、
を有する同期パルス照射装置と;
前記同期信号を入力し、この入力した同期信号に同期した信号であるパルス同期信号を生成するパルス同期信号生成部と、
多素子型2次元センサにより前記追跡目標を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置から入力した撮像信号から、前記パルス同期信号に同期した追跡目標からの前記パルス光の反射光を抽出するパルス同期反射光抽出部と、
前記撮像装置から入力した撮像信号から、前記追跡目標が反射する可視光又は前記追跡目標が放射する赤外線の画像を抽出する光源抽出部と、
前記追跡目標の位置を判定するための基礎とする信号を、前記パルス同期反射光抽出部から出力される画像信号であるパルス光画像信号から、前記光源抽出部から出力される画像信号である光源光画像信号に切替える、切替部と、
を有する誘導装置本体と;
を備えることを特徴とするセミアクティブ式誘導装置。
【請求項2】
前記切替部が、
前記光源光画像信号における前記追跡目標の輝度及び大きさがそれぞれ予め定められた閾値を超えた場合に、
前記追跡目標の位置を判定するための基礎とする信号を、前記パルス光画像信号から、前記光源光画像信号に切替える、ことを特徴とする請求項1記載のセミアクティブ式誘導装置。
【請求項3】
前記パルス光が、レーザー光であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセミアクティブ式誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−292113(P2008−292113A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140364(P2007−140364)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】