説明

セラミックス膜およびその製造方法ならびに半導体装置、圧電素子およびアクチュエータ

【課題】セラミックス膜の表面モフォロジを改善することができる、セラミックス膜の製造方法を提供する。このセラミックス膜の製造方法により得られたセラミックス膜を提供する。このセラミックス膜が適用された半導体装置および圧電素子を提供する。
【解決手段】セラミックス膜の製造方法は、原材料体20を結晶化することにより、セラミックス膜30を形成する工程を含み、原材料体20は、種類が異なる原料を混在した状態で含み、種類が異なる原料同士は、原料の結晶化における結晶成長条件および結晶成長機構の少なくとも一方が相互に異なる関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス膜およびその製造方法ならびに半導体装置および圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置(たとえば強誘電体メモリ(FeRAM))に適用される強誘電体膜として、層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体膜(たとえばBiLaTiO系,BiTiO系,SrBiTaO系)が提案されている。この層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体膜は、一般に、アモルファス状態から結晶成長を行うことにより形成される。
【0003】
ところで、この形成方法により層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体膜を形成した場合、強誘電体膜は、結晶構造に起因して、c軸方向の結晶成長速度がa,b軸方向の結晶成長速度よりも遅くなる。つまり、a,b軸方向に結晶成長し易い。このため、上記の形成方法によると、層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体膜は、荒れた表面モフォロジとなる。すなわち、得られる強誘電体膜の結晶間において、間隙(たとえば孔や溝)が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、セラミックス膜の表面モフォロジを改善することができる、セラミックス膜の製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、本発明のセラミックス膜の製造方法により得られたセラミックス膜を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、本発明のセラミックス膜が適用された、半導体装置および圧電素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(セラミックス膜の製造方法)
(A)本発明の第1のセラミックス膜の製造方法は、
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体は、種類が異なる原料を混在した状態で含み、
種類が異なる原料同士は、原料の結晶化における結晶成長条件および結晶成長機構の少なくとも一方が相互に異なる関係にある。
【0008】
ここで、原料の種類が異なるとは、結晶成長条件および結晶成長機構の少なくとも一方が相互に異なるような原料同士の関係をいう。つまり、原料の種類が異なるかどうかは、結晶成長条件および結晶成長機構の少なくとも一方が異なるかどうかの観点から判断される。
【0009】
原料の結晶化における結晶成長条件および結晶成長機構には、たとえば、結晶化温度、結晶核の形成温度、結晶成長温度、結晶成長速度、結晶核の形成速度、結晶核の大きさ、結晶化方法が含まれる。
【0010】
本発明においては、原材料体は、種類が異なる原料を含む。すなわち、原材料体は、2種類以上の原料を含む。そして、種類が異なる原料同士は、原料の結晶化における結晶成長条件および結晶成長機構の少なくとも一方が相互に異なる関係にある。このため、種々の条件を制御することにより、例えば一の原料を他の原料より先行させて結晶化させ、一の原料に起因する結晶間の間隙において、他の原料を結晶化させることができる。すなわち、一の原料に起因する結晶間において生じた間隙を、他の原料に起因する結晶によって埋めることができる。したがって、セラミックス膜の表面モフォロジを改善することができる。
【0011】
また、種々の条件を制御することにより、一の原料と他の原料とを同時に結晶化させることもできる。たとえば、原料の金属元素の一部を他の元素に置換することにより、結晶化温度を調整することができる。結晶化温度を調整することができることにより、種類の異なる原料の結晶化温度同士をほぼ近い温度にすることができる。種類の異なる原料の結晶化温度同士をほぼ近い温度にすることができると、種類の異なる原料同士を同時に結晶化することができる。
【0012】
(B)本発明の第2のセラミックス膜の製造方法は、
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体は、種類が異なる原料を混在した状態で含み、
種類が異なる原料同士は、原料から得られる結晶の結晶構造が相互に異なる関係にある。
【0013】
ここで、原料の種類が異なるとは、原料から得られる結晶の結晶構造が相互に異なるような原料同士の関係をいう。つまり、原料の種類が異なるかどうかは、原料によって得られた結晶の結晶構造が異なるかどうかの観点から判断される。
【0014】
原料から得られる結晶の結晶構造の違いには、たとえば、原料から得られる結晶を(Bi222+(Am-1m3m+12-と表したときのmの違いが含まれる。
【0015】
本発明においては、種類が異なる原料同士は、原料に起因する結晶の結晶構造が異なるような関係にある。原料から得られる結晶の結晶構造が異なれば、原料の結晶成長条件および結晶成長機構が異なることなりなる。したがって、本発明の第1のセラミックス膜の製造方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0016】
(C)本発明の第3のセラミックス膜の製造方法は、
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体は、種類が異なる原料を混在した状態で含み、
種類が異なる原料同士は、少なくとも結晶化初期段階において相互に独立に結晶化される。
【0017】
ここで、原料の種類が異なるとは、少なくとも結晶化初期段階において相互に独立に結晶化される原料同士の関係をいう。
【0018】
本発明の第3のセラミックス膜の製造方法は、種類が異なる原料同士は、少なくとも結晶化初期段階において相互に独立に結晶化される。このため、一の原料の結晶間の間隙において、他の原料の結晶を成長させることができる。その結果、結晶間において間隙が発生するのを抑えることができ、表面モフォロジが向上する。
【0019】
本発明の第1〜第3のセラミックス膜の製造方法は、少なくとも次のいずれかの態様をとることができる。
【0020】
(a)前記セラミックス膜は、強誘電体である態様である。
【0021】
(b)前記セラミックス膜は、常誘電体である態様である。
【0022】
(c)前記セラミックス膜は、強誘電体と常誘電体とが混在してなる態様である。
【0023】
(d)種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶化温度が相互に異なる態様である。
【0024】
(e)種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶核の形成温度が相互に異なる態様である。
【0025】
(f)種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶成長温度が相互に異なる態様である。
【0026】
(g)種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶成長速度が相互に異なる態様である。
【0027】
(h)種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶核の形成速度が相互に異なる態様である。
【0028】
(i)種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶核の大きさが相互に異なる態様である。
【0029】
(j)種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶化方法が相互に異なる態様である。
【0030】
(k)種類が異なる原料同士は、時間的にずれて、結晶化される態様である。
【0031】
(l)種類が異なる原料同士は、原料の結晶化における結晶核が時間的にずれて形成される態様である。
【0032】
(m)種類が異なる原料同士は、同時に結晶化される態様である。
【0033】
また、種類の異なる原料同士を同時に結晶化すると、互いに他の原料に起因する結晶成長を遮断し合うことになる。その結果、得られる結晶を微結晶化させることができる。結晶が微結晶化されると、結晶間の間隙が狭くなり、表面モフォロジが改善される。
【0034】
なお、種類の異なる原料同士を同時に結晶化する場合には、得られるセラミックスの結晶構造が異なる原料を用いることが好ましい。結晶構造を異ならせることで、原料の結晶化における結晶成長条件および結晶成長機構を同時に変えることができる。
【0035】
(n)種類が異なる原料同士は、原料から得られるセラミックスを(Bi222+(Am-1m3m+12-と表したとき、相互にmの値が異なる態様である。
【0036】
(o)前記原材料体は、LSMCD法により、基体の上に形成される態様である。
【0037】
LSMCD法により原材料体を基体の上に形成すると、超音波によって原材料体がミスト状で基体の上に導入される。このため、種類の異なる原料の混合状態が良くなる。したがって、この態様によれば、微細な結晶を有するセラミックス膜を得ることができる。
【0038】
前記原材料体は、種類が異なる原料を別々に供給し、基体の上に形成されることができる。
【0039】
または、前記原材料体は、種類が異なる原料を同時に供給し、基体の上に形成されることもできる。
【0040】
(p)前記原材料体は、スピンコート法またはディッピング法により、基体の上に形成される態様である。
【0041】
(q)前記原料は、ゾルゲル原料およびMOD原料の少なくとも一方である態様である。
【0042】
(r)前記原材料体は、ゾルゲル原料およびMOD原料を含む態様である。
【0043】
また、態様(p)および(q)において、前記ゾルゲル原料は、加水分解により重縮合されている態様であることができる。
【0044】
また、前記ゾルゲル原料は、該原料が結晶化された場合における結晶の結晶構造に同一又は類似の結晶構造を有する態様である。この態様によれば、ゾルゲル原料の結晶化を容易にすることができる。
【0045】
前記MOD原料は、多核錯体原料である態様であることができる。
【0046】
(s)前記原材料体は、種類の異なるゾルゲル原料を有し、
種類の異なるゾルゲル原料同士は、相互に重縮合の度合いまたは金属元素の組成が異なる態様である。
【0047】
(t)前記原材料体は、種類の異なるゾルゲル原料を有し、
種類の異なる原料同士は、原子レベルで混合されていない態様である。
【0048】
ここで、原子レベルで混合されるとは、たとえば、原料を構成する原子が相互に混合されることを意味する。すなわち、原料は、単独の分子または集合体が維持された状態で混合されることが好ましい。原料が原子レベルで混合されていないと、本発明の効果を確実に奏することができ、また、セラミックス膜の特性をより向上させることができる。
【0049】
(D)本発明の第4のセラミックス膜の製造方法は、
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体の結晶化は、複数の相が形成されるように行われる。
【0050】
前記セラミックス膜は、次のいずれかの態様をとることができる。
【0051】
(a)前記セラミックス膜は、強誘電体である態様である。
【0052】
(b)前記セラミックス膜は、常誘電体である態様である。
【0053】
(c)前記セラミックス膜は、強誘電体と常誘電体とが混在してなる態様である。
【0054】
(E)本発明の第5のセラミックス膜の製造方法は、
第1の原料液と、第2の原料液とを含むセラミックスの原料液を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第1の原料液と前記第2の原料液とは、種類が異なる関係にあり、
前記第1の原料液は、Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体を生成するための原料液であり、
前記第2の原料液は、AサイトがBiであるABO系酸化物を生成するための原料液である。
【0055】
本発明のセラミックスの原料液によってセラミックス膜を形成することにより、たとえば、低温で所定の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。また、本発明のセラミックスの原料液によって得られたセラミックス膜は、表面モフォロジに関して、優れている。
【0056】
前記第1の原料液に基づいて生成される強誘電体と、前記第2の原料液に基づいて生成されるABO系酸化物とのモル比は、100:20〜100:100であることが好ましい。これにより、より確実に低温で所定の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。
【0057】
前記第1の原料液は、前記強誘電体の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であり、前記第2の原料液は、前記ABO系酸化物の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であることができる。
【0058】
(F)本発明の第6のセラミックス膜の製造方法は、
第3の原料液と、第4の原料液とを含むセラミックスの原料液を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第3の原料液と前記第4の原料液とは、種類が異なる関係にあり、
前記第3の原料液は、PZT系の強誘電体を生成するための原料液であり、
前記第4の原料液は、AサイトがPbであるABO系酸化物を生成するための原料液である。
【0059】
本発明のセラミックスの原料液によってセラミックス膜を形成することにより、たとえば、本発明の第5のセラミックス膜の製造方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
前記第3の原料液に基づいて生成される強誘電体と、前記第4の原料液に基づいて生成されるABO系酸化物とのモル比は、100:20〜100:100であることが好ましい。これにより、これにより、より確実に低温で所定の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。
【0061】
前記第3の原料液は、前記強誘電体の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であり、前記第4の原料液は、前記ABO系酸化物の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であることができる。
【0062】
(G)本発明の第7のセラミックス膜の製造方法は、
第5の原料液と、第6の原料液とを含むセラミックスの原料液を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第5の原料液は、Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体またはPZT系の強誘電体を生成するための原料液であり、
前記第6の原料液は、BサイトがGeであるABO系酸化物を生成するための原料液である。
【0063】
本発明のセラミックスの原料液によってセラミックス膜を形成することにより、たとえば、本発明の第5のセラミックス膜の製造方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0064】
前記第5の原料液に基づいて生成される強誘電体と、前記第6の原料液に基づいて生成されるABO系酸化物とのモル比は、100:20〜100:100であることが好ましい。これにより、これにより、より確実に低温で所定の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。
【0065】
前記第5の原料液は、前記強誘電体の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であり、前記第6の原料液は、前記ABO系酸化物の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であることができる。
【0066】
(H)本発明の第8のセラミックス膜の製造方法は、
複数の原料層が積層された原料体層を形成する工程、および
前記原料体層を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原料体層における最上層の原料層は、該最上層の原料層と接触する下層の原料層に比べて結晶化温度が低く、かつ、得られる結晶が層状構造を有さない。
【0067】
本発明によれば、最上層の原料層によって生成された結晶が、その下層の原料層の結晶化におけるシード層として機能することとなる。また、最上層の原料層は、得られる結晶が層状構造を有さないため、セラミックス膜の表面モフォロジの向上を図ることができる。
【0068】
前記最上層の原料層と接触する下層の原料層は、基体の上に、第1の原料層を介して設けられ、前記第1の原料層は、前記最上層の原料層と接触する下層の原料層に比べて結晶化温度が低い態様であることができる。これにより、第1の原料層に基づいて生成された結晶が、最上層の原料層と接触する下層の原料層の結晶化においてシード層として機能することとなる。
【0069】
(I)本発明の第9のセラミックス膜の製造方法は、
第1の原料層、第2の原料層および第3の原料層の順で積層された原料積層体を含む、原料体層を形成する工程、および
前記原料体層を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第2の原料層は、前記第1の原料層および前記第3の原料層に比べて、結晶化温度が低い。
【0070】
本発明によれば、第2の原料層に基づいて生成された結晶が、第1の原料層および第3の原料層の結晶の結晶成長を止めるストッパーとしての役割を果たす。このため、第1の原料層および第3の原料層に基づいて生成された結晶のグレインサイズを小さくすることができる。
【0071】
前記第3の原料層の上に、さらに第4の原料層が積層され、前記第4の原料層は、前記第3の原料層に比べて結晶化温度が低い態様であることができる。この態様の場合、第4の原料層に基づいて生成された結晶が、第3の原料層の結晶化においてシード層として機能することとなる。
【0072】
(J)本発明の第10のセラミックス膜の製造方法は、
複数の原料層が積層された原料体層を形成する工程、および
前記原料体層を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原料体層における最上層の原料層は、該最上層の原料層と接触する下層の原料層に比べて、結晶化温度が高い。
【0073】
本発明によれば、最上層の原料層に基づいて生成された結晶を、その下層の原料層に基づいて生成された結晶を覆うように形成することができる。
【0074】
前記原料体層における最上層の原料層は、得られる結晶が層状構造を有さないことが好ましい。これにより、セラミックス膜の表面モフォロジを向上させることができる。
【0075】
本発明の第1〜第10のセラミックス膜の製造方法において、原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程が複数回実施されることができる。
【0076】
(セラミックス膜)
本発明のセラミックス膜は、本発明のセラミックス膜の製造方法により得られる。
【0077】
(セラミックス膜の適用例)
本発明の半導体装置は、本発明のセラミックス膜を含むキャパシタを有する。
【0078】
本発明の圧電素子は、本発明のセラミックス膜を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0080】
[第1の実施の形態]
(セラミックス膜の製造方法)
以下、実施の形態に係るセラミックス膜の製造方法を説明する。図1は、実施の形態に係るセラミックス膜の製造工程を模式的に示す断面図である。特に、図1(B)は、結晶化のメカニズムの概念を示す概念図である。
【0081】
(1)図1(A)に示すように、基体10の上に、原材料体20を形成する。原材料体20を基体10の上に形成する方法としては、たとえば、塗布方法、LSMCD法を挙げることができる。塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法を挙げることができる。原材料体20は、ゾルゲル原料とMOD原料とを含む。このゾルゲル原料は、MOD原料に比べて、結晶化温度が低く、結晶核の形成速度および結晶成長速度が速い原料が選択される。
【0082】
ゾルゲル原料は、具体的には次のようにして調製することができる。まず、炭素数が4以下よりなる金属アルコキシドを混合し、加水分解および重縮合を行う。この加水分解および重縮合によって、M−O−M−O…の強固な結合ができる。このとき得られるM−O−Mの結合構造は、セラミックスの結晶構造(ペロブスカイト構造)に近い構造を有する。ここで、Mは金属元素(たとえばBi,Ti,La,Pb)であり、Oは酸素を示す。金属元素および金属元素の比率は、得たいセラミックスに合わせて選択されて決定される。BiLaTiO系(以下「BLT」という)のセラミックスを例に挙げると、Bi3.25La0.75Ti3Xの比率となる。なお、Oは、最終的に得る値ではないため、Xとしている。次に、加水分解および重縮合を行うことにより得られた生成物に溶媒を加え、原料を得る。こうして、ゾルゲル原料を調製することができる。
【0083】
MOD原料としては、たとえばセラミックスの構成元素同士が直接または間接的に連続して接続された多核金属錯体原料を挙げることができる。MOD原料は、具体的にはカルボン酸の金属塩を挙げることができる。カルボン酸としては、酢酸、2−エチルヘキサン酸などを挙げることができる。金属としては、たとえばBi,Ti,La,Pbである。MOD原料(多核金属錯体原料)においても、ゾルゲル原料と同様に、M−Oの結合を有する。しかし、M−O結合は、重縮合を行って得られるゾルゲル原料のように連続した結合には成っておらず、また、結合構造もリニア構造に近くペロブスカイト構造とはかけ離れている。
【0084】
次に、必要に応じて、原材料体20を乾燥させる。
【0085】
(2)次に、図1(C)に示すように、原材料体20を熱処理することにより、原材料体20を結晶化させてセラミックス膜30を形成する。この原材料体20の結晶化は、ゾルゲル原料およびMOD原料が、少なくとも結晶成長の初期過程において相互に独立に結晶化される条件化で行い、ゾルゲル原料に起因する第1の結晶42と、MOD原料に起因する第2の結晶52とを形成する。
【0086】
具体的な、ゾルゲル原料およびMOD原料の結晶化のメカニズムの一例を説明する。ゾルゲル原料は、MOD原料に比べて、結晶化温度が低い。また、ゾルゲル原料は、MOD原料に比べて、結晶核の形成速度および結晶成長速度が速い。したがって、温度などを制御することにより、ゾルゲル原料の結晶化を、MOD原料の結晶化より先行して進ませることができる。ゾルゲル原料の結晶化がMOD原料の結晶化より先行して進むことにより、図1(B)に示すようにゾルゲル原料に起因する第1の結晶42間の間隙においてMOD原料が残ることになる。このため、ゾルゲル原料に起因する第1の結晶42間の間隙においてMOD原料に起因する第2の結晶52が成長する。こうして、第1の結晶42および第2の結晶52がそれぞれ独立に結晶成長していく。つまり、第1の結晶42間の間隙を埋めるようにして、第2の結晶52が結晶成長していく。また、ゾルゲル原料とMOD原料とでは、結晶の配向し易い方向が異なる。したがって、互いに成長を遮断し合い、微結晶化し易い。結晶が微結晶化されると、結晶間の間隙を小さくする効果がある。その結果、表面モフォロジが改善したセラミックス膜30を形成することができる。
【0087】
以下、具体的な原材料体の結晶化の条件を説明する。
【0088】
熱処理の方法としては、たとえば、RTAおよびFA(ファーネス)により酸素雰囲気中でアニールする方法を挙げることができる。
【0089】
より具体的な原材料体の結晶化の条件は、まず、RTAを用いて500〜650℃の温度で、5〜30秒と短時間のアニールを行い微結晶核を生成させる。このとき、先にゾルゲル原料よりなる結晶核が生成する。ゾルゲル原料よりなる結晶が成長していく過程で、その周囲においてMOD原料よりなる結晶核が成長する。次に、FAを用いて600〜650℃で10〜30分間、結晶化を促進させることによって、セラミックス膜30が得られる。
【0090】
(変形例)
上記実施の形態に係るセラミックス膜の製造方法は、たとえば、次の変形が可能である。
【0091】
(1)原料の組み合わせは、上記の実施の形態に限定されず、たとえば次の組み合わせが可能である。
【0092】
1)重縮合の度合いの異なる複数のゾルゲル原料同士を用いることができる。同じ組成であっても重縮合の度合が異なると、結晶成長し易い方向は、一般的に異なる。このため、重縮合の度合いの異なる原料同士を混合させると、結晶成長し易い方位が異なるため、互いに結晶成長を遮断することになり、微結晶化を図ることができる。
【0093】
2)結晶構造の異なる組成の原料同士を用いることができる。たとえば、次の関係を有する原料同士を用いることができる。
【0094】
原料から得られるセラミックスを(Bi222+(Am-1m3m+12-と表したときのmが、相互に異なる原料を用いることができる。m=1の例としてはBi2WO6、m=2の例としてはBi3TiNbO9、m=3の例としてはBi4Ti312が挙げられる。これらはいずれも強誘電体であるが、結晶構造が異なる。すなわち、それぞれa,b長の差は少ないが、c軸は、m=1が16.4Å(1.64nm)であり、m=2が25.0Å(2.50nm)であり、m=3が32.8Å(3.28nm)である。これらは、結晶構造が異なるため、これらの結晶を生成する各原料同士は、結晶成長条件および結晶成長機構が異なることになる。
【0095】
なお、結晶構造の異なる組成原料を用いる場合は、以下の理由で、Bサイト元素は、異なる原料同士において共通にした方が好ましい。すなわち、結晶成長条件および結晶成長機構を異ならせて、異なる原料同士を互いに独立に結晶化させたとしても、その後の長時間のアニール工程で結晶粒界近傍において少なからず相互拡散が発生する。この場合において、Bサイト元素が置換されると、セラミックスの特性が劣化する傾向があるからである。
【0096】
3)得られる結晶の結晶構造がBi4Ti39の原料(以下「BTO原料」という)と、得られる結晶の結晶構造がPbTiO3の原料(以下「PTO原料」という)との組み合わせを挙げることができる。PbTiO3はテトラゴナル構造のペロブスカイトである。しかし、PTOはa軸とc軸との差が少なく、結晶構造に起因する結晶成長の異方性は少ない。また、PTO原料における結晶核の形成は、比較的低温で、かつ、容易に生成される。したがって、BTO原料にPTO原料を少なめ例えば10:1程度の割合で混合して結晶成長させると、それぞれが他の結晶成長を遮断する。このため、得られる結晶が微結晶化される効果が奏される。この効果は、同じ層状ペロブスカイト構造を有する結晶同士よりも顕著である。
【0097】
4)強誘電体の結晶を生じる原料と、常誘電体の結晶を生じる原料とを組み合わせてもよい。混合量は、所望とするセラミックス膜の特性に応じて決定される。
【0098】
5)ゾルゲル原料とMOD原料との組み合わせであって、それぞれの原料によって生成される結晶の結晶構造が相互に異なるような原料同士の組み合わせであってもよい。
【0099】
6)重縮合の度合いが相互に異なるゾルゲル原料同士の組み合わせであって、それぞれの原料によって生成される結晶の結晶構造が相互に異なるような原料同士の組み合わせであってもよい。
【0100】
(2)本発明のセラミックス膜の製造方法を複数回実施して、セラミックス膜を形成することができる。また、本発明のセラミックス膜の製造方法と、公知のセラミックス膜の製造方法とを組み合わせてセラミックス膜を形成することができる。
【0101】
(3)LSMCD法により、基体の上に原材料体を形成する方法は、たとえば次の方法を挙げることができる。図3は、LSMCD法により原材料体を基体の上に形成するための装置200を模式的に示す断面図である。
【0102】
第1の原料210は、噴霧器230によりメッシュ240に送られる。メッシュ240を通過した第1の原料210は、ミスト250となり、基体10の上に供給される。また、第2の原料220も噴霧器232によりメッシュ240に送られ、メッシュ240を通過した第2の原料220は、ミスト250となり、基体10の上に供給される。こうして、ミスト250が基体10の上に積み重なっていくことにより、原材料体が形成される。ミスト250の粒径は、たとえば10〜200nmである。
【0103】
第1の原料210および第2の原料220は、同時に基体10の上に供給されることができる。または、第1の原料210および第2の原料220は、交互に供給されることもできる。
【0104】
第1の原料210および第2の原料220を同時に基体10の上に供給した場合には、原材料体は、たとえば、図4(A)に示すように、第1の原料210に起因する第1のミスト210aと、第2の原料220に起因する第2のミスト220aとが入りまじった態様をとる。
【0105】
第1の原料210および第2の原料220を交互に供給する場合には、原材料体は、たとえば、図4(B)に示すように、第1の原料210に起因する第1のミスト210aと、第2の原料220に起因する第2のミスト220aとが、それぞれ一つの層を構成している。すなわち、同一の層は、同一の原料に起因するミストから構成されている。
【0106】
[第2の実施の形態]
(第1のセラミックスの原料液)
第1のセラミックスの原料液は、第1の原料液と第2の原料液とを混合して使用される原料液である。第1のセラミックスの原料液は、熱分解することによりセラミックス膜が得られるような原料液であることができる。第1の原料液と、第2の原料液とは、生成する材質の種類が異なる関係にある。第1および第2の原料液は、たとえば、1)金属有機化合物(たとえば金属アルコキシド、金属カルボン酸)や金属無機化合物(たとえば金属硝酸塩、金属塩化物)を溶媒(たとえば水、アルコール、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、または、これらの混合物)に溶解させた液、2)溶媒中で金属化合物を加水分解反応、縮合反応などをさせた液、3)金属アルコキシドの加水分解により得られるゾル・ゲル液であることができる。
【0107】
以下、第1の原料液と第2の原料液とを具体的に説明する。
【0108】
第1の原料液は、Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体を生成するための原料液である。Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体としては、SrBiTaO系の強誘電体(たとえばSrBi2Ta29)、BiLaTiO系の強誘電体(たとえばBi3.25La0.75Ti312)、BiTiO系の強誘電体(たとえばBi4Ti312)を挙げることができる。第1の原料液には、強誘電体を構成する金属元素が含まれている。この第1の原料液に含まれる強誘電体の構成金属元素の量は、所望とする強誘電体の量、および、所望とする強誘電体中の構成金属元素の原子数の比を考慮して決定される。
【0109】
第1の原料液の具体例としては、SrBiTaO系の強誘電体の場合、2−メトキシエタノール中に、ストロンチウムのアルコキシド、ビスマスのアルコキシド、タンタルのアルコキシドのそれぞれの溶液を混合した液を挙げることができる。なお、第1の原料液中において、ストロンチウムのアルコキシド、ビスマスのアルコキシド、タンタルのアルコキシドの濃度は、それぞれ、たとえば、0.05mol/l、0.1mol/l、1.0mol/lであることができる。すなわち、第1の原料液1リットル当たり、0.05molのSrBi2Ta29の強誘電体が生成されるように各濃度を設定することができる。
【0110】
第2の原料液は、AサイトがBiであるABO系酸化物を生成するための原料液である。AサイトがBiでないと、Bi系層状ペロブスカイト構造のBiが収まるべきサイトに、Bi以外の元素が収まる場合が生じ、強誘電体膜の特性に悪影響を及ぼすことがある。AサイトがBiであるABO系酸化物としては、BiGeO系の酸化物(たとえばBi4Ge312)、BiMoO系の酸化物(Bi2MoO6)、BiVO系の酸化物(Bi2VO6)、BiCrO系の酸化物(Bi2CrO6)、BiSiO系の酸化物(Bi4Si312)、BiWO系の酸化物(Bi4312)を挙げることができる。なお、ABO系酸化物のBサイトの元素を変えることにより、第2の原料液に基づく結晶の結晶化温度を変えることができる。また、ABO系酸化物は、強誘電体であっても、常誘電体であってもよい。
【0111】
第2の原料液には、ABO系酸化物を構成する金属元素が含まれている。この第2の原料液に含まれるABO系酸化物の構成金属元素の量は、所望とするABO系の酸化物の量、および、所望とするABO系酸化物中の構成金属元素の原子数の比を考慮して決定される。
【0112】
第2の原料液の具体例としては、BiGeO系の酸化物の場合、2−メトキシエタノール中に、ビスマスのアルコキシド、ゲルマニウムのアルコキシドのそれぞれの溶液を混合した液を挙げることができる。なお、第2の原料液中において、ビスマスのアルコキシド、ゲルマニウムのアルコキシドの濃度は、それぞれ、たとえば、0.20mol/l、0.15mol/lであることができる。すなわち、第2の原料液1リットル当たり、0.05molのBi4Ge312の酸化物が生成されるように、ビスマスのアルコキシド、ゲルマニウムのアルコキシドの各濃度を設定することができる。
【0113】
第1の原料液と第2の原料液とは、第1の原料液に基づいて得られる強誘電体と、第2の原料液に基づいて得られるABO系酸化物とのモル比が、100:20〜100:100となるように混合されることが好ましい。この理由は、実施例の項で説明する。
【0114】
(セラミックス膜の製造例)
本実施の形態に係るセラミックスの原料液を利用して、たとえば、次のようにしてセラミックス膜を製造することができる。なお、セラミックス膜の製造工程を模式的に示す断面模式図として、第1の実施の形態と同様に図1を用いて、セラミックス膜の製造プロセスを説明する。
【0115】
(a)まず、基体10を熱処理をする。この熱処理は、基体10の表面の水分を除去するために行われる。熱処理の温度は、たとえば180℃である。
【0116】
(b)次に、セラミックスの原料液を基体10の上に塗布し、セラミックス原料体層20を形成する。この形成方法としては、スピンコート法、ディッピング法、LSMCD法を挙げることができる。
【0117】
(c)次に、乾燥熱処理して、セラミックス原料体層20における溶媒を蒸発させる。この溶媒の蒸発は、窒素雰囲気下で行うことができる。乾燥熱処理の温度は、たとえば160℃である。
【0118】
(d)次に、セラミックス原料体層20を、脱脂熱処理する。この熱処理によって、セラミックス原料体層20における有機物を分解させることができる。この有機物の分解は、窒素雰囲気下で行うことができる。この熱処理の温度は、たとえば260℃である。
【0119】
(e)次に、セラミックス原料体層20を仮焼結させる。この仮焼結において、結晶核が形成される。仮焼結は、たとえば酸素雰囲気下で、RTAにより行われることができる。
【0120】
(f)次に、セラミックス原料体層20を焼結させる。この焼結は、たとえば、酸素雰囲気下で、FA(ファーネス)により行うことができる。
【0121】
なお、工程(a)〜(e)を一つのサイクルとして、このサイクルを複数回行ってもよい。
【0122】
(作用効果)
以下、第2の実施の形態に係るセラミックスの原料液を用いて、セラミックス膜を成膜した場合の作用効果について、説明する。
【0123】
(1)第1の原料液のみからなるセラミックスの原料液を焼成して、強誘電体(SBT)膜を形成する場合には、一般に、700℃程度の焼成温度でなければ、強誘電体膜に必要な所望の特性(たとえば残留分極)が得られない。
【0124】
しかし、第1の原料液と第2の原料液とを混合させた状態で、第1のセラミックスの原料液を焼成し、セラミックス膜を形成する場合には、後述するように、500℃程度の焼成温度でも強誘電体膜に必要な所望の特性を得ることができる。つまり、本実施の形態によれば、より低温度で、所望の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。
【0125】
(2)第1の原料液に基づいて生成される材質と、第2の原料液に基づいて生成される材質とは、異なる。このため、たとえば、第1の原料液が結晶化する結晶化温度と、第2の原料液が結晶化する結晶化温度とが異なることとなる。その結果、一方の原料液の結晶化を、他方の原料液の結晶化に対して先行させることができる。したがって、図1(B)に示すように、一方の原料液に基づく結晶42間に、他方の原料液に基づく結晶52を成長させることができる。つまり、一方の原料液に基づく結晶42と、他方の原料に基づく結晶52とが独立して成長していき、一方の原料液に基づく結晶42間を埋めるように、他方の原料に基づく結晶52が成長していくこととなる。その結果、表面モフォロジが向上したセラミックス膜を形成することができる。
【0126】
(3)また、第2の原料液に基づく結晶の配向し易い方向を、第1の原料液に基づく結晶の配向し易い方向と異ならせることにより、一方の原料液に基づく結晶の結晶成長が、他方の結晶の結晶成長に遮られることとなる。このため、この場合には、得られるセラミックス膜の結晶を微結晶化させることができる。その結果、より表面モフォロジが改善したセラミックス膜を形成することができる。
【0127】
(変形例)
上記の第2の実施の形態は、次の変形が可能である。
【0128】
(1)上記のセラミックス膜の製造工程を複数回実施して、セラミックス膜を形成することができる。また、上記のセラミックス膜の製造工程と、公知のセラミックスの原料によりセラミックス膜を製造する工程とを組み合わせてセラミックス膜を形成することができる。
【0129】
(2)LSMCD法により、基体の上に原材料体を形成する方法は、たとえば次の方法を挙げることができる。図3は、LSMCD法により原材料体を基体の上に形成するための装置200を模式的に示す断面図である。
【0130】
第1の原料液210は、噴霧器230によりメッシュ240に送られる。メッシュ240を通過した第1の原料液210は、ミスト250となり、基体10の上に供給される。また、第2の原料液220も噴霧器232によりメッシュ240に送られ、メッシュ240を通過した第2の原料液220は、ミスト250となり、基体10の上に供給される。こうして、ミスト250が基体10の上に積み重なっていくことにより、原材料体が形成される。ミスト250の粒径は、たとえば10〜200nmである。
【0131】
第1の原料液210および第2の原料液220は、同時に基体10の上に供給されることができる。または、第1の原料液210および第2の原料液220は、交互に供給されることもできる。
【0132】
第1の原料液210および第2の原料液220を同時に基体10の上に供給した場合には、原材料体は、たとえば、図4(A)に示すように、第1の原料液210に起因する第1のミスト210aと、第2の原料液220に起因する第2のミスト220aとが入りまじった態様をとる。
【0133】
第1の原料液210および第2の原料液220を交互に供給する場合には、原材料体は、たとえば、図4(B)に示すように、第1の原料液210に起因する第1のミスト210aと、第2の原料液220に起因する第2のミスト220aとが、それぞれ一つの層を構成している。すなわち、同一の層は、同一の原料に起因するミストから構成されている。
【0134】
[第3の実施の形態]
(第2のセラミックスの原料液)
第2のセラミックスの原料液は、第3の原料液と第4の原料液とを混合して使用される溶液である。第2のセラミックスの原料液は、熱分解することによりセラミックス膜が得られるような原料液であることができる。第3の原料液と、第4の原料液とは、生成する材質の種類が異なる関係にある。第3および第4の原料液は、たとえば、1)金属有機化合物(たとえば金属アルコキシド、金属カルボン酸)や金属無機化合物(たとえば金属硝酸塩、金属塩化物)を溶媒(たとえば水、アルコール、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、または、これらの混合物)に溶解させた液、2)溶媒中で金属化合物を加水分解反応、縮合反応などをさせた液、3)金属アルコキシドの加水分解により得られるゾル・ゲル液であることができる。
【0135】
以下、第3の原料液と第4の原料液とを具体的に説明する。
【0136】
第3の原料液は、PZT系の強誘電体を生成するための原料液である。PZT系の強誘電体としては、PbZrTiO系の強誘電体(たとえばPbZryTi1-y3)、PbLaZrTiO系の強誘電体(たとえばPb1-xLaxZryTi1-y3)を挙げることができる。第3の原料液には、強誘電体を構成する金属元素が含まれている。この第3の原料液に含まれる強誘電体の構成金属元素の量は、所望とする強誘電体の量、および、所望とする強誘電体中の構成金属元素の原子数の比を考慮して決定される。
【0137】
第3の原料液の具体例としては、PbZrTiO系の強誘電体を例にとると、酢酸鉛三水和物、ジルコニウムブトキシド、チタンイソプロポキシドが1−メトキシ−2−プロパノール中に含まれる液を挙げることができる。酢酸鉛三水和物、ジルコニウムブトキシド、チタンイソプロポキシドの使用量は、所望とする強誘電体中の構成金属元素の原子数の比や、所望とする強誘電体の量を考慮して、決定される。
【0138】
第4の原料液は、AサイトがPbであるABO系酸化物を生成するための原料液である。AサイトがPbでないと、PZT系酸化物のPbが収まるべきサイトに、Pb以外の元素が収まる場合が生じ、強誘電体膜の特性に悪影響を及ぼすことがある。AサイトがPbであるABO系酸化物としては、PbGeO系の酸化物(Pb5Ge311)、PbMoO系の酸化物(Pb2MoO5)、PbVO系の酸化物(Pb2VO5)、PbCrO系の酸化物(Pb2CrO5)、PbSiO系の酸化物(Pb5Si311)、PbWO系の酸化物(Pb2WO5)、PbSnO系の酸化物(PbSnO3)、PbGeSiO系の酸化物(Pb5Ge2SiO11)を挙げることができる。なお、ABO系酸化物のBサイトの元素を変えることにより、第2の原料液に基づく結晶の結晶化温度を変えることができる。また、ABO系酸化物は、強誘電体であっても、常誘電体であってもよい。
【0139】
第4の原料液の具体例としては、PbGeO系の酸化物を例にとると、1−メトキシ−2−プロパノール中に、ゲルマニウムエトキシドおよび鉛ブトキシドを溶解した液を挙げることができる。ゲルマニウムエトキシドおよび鉛ブトキシドの使用量は、所望とする酸化物の構成金属元素の原子数の比や、所望とする酸化物の量を考慮して、決定される。
【0140】
第3の原料液と第4の原料液とは、第3の原料液に基づいて得られる強誘電体と、第4の原料液に基づいて得られるABO系酸化物とのモル比が、100:20〜100:100となるように混合されることが好ましい。
【0141】
(第2のセラミックス膜の製造例)
第2のセラミックスの原料液の成膜方法は、第2の実施の形態で示した方法であることができる。
【0142】
(作用効果)
以下、第3の実施の形態に係るセラミックスの原料液を用いて、セラミックス膜を成膜した場合の作用効果について説明する。
【0143】
(1)本実施の形態に係るセラミックスの原料液によれば、第3の原料液のみを焼成して強誘電体膜を形成する場合において、所定の特性をだすために必要な焼成温度よりも低い焼成温度で、所定の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。つまり、本実施の形態によれば、より低温度で、所望の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。
【0144】
(2)第3の原料液に基づいて生成される材質と、第4の原料液に基づいて生成される材質とは、異なる。このため、たとえば、第3の原料液が結晶化する結晶化温度と、第4の原料液が結晶化する結晶化温度とが異なることとなる。その結果、第2の実施の形態と同様に、表面モフォロジが向上したセラミックス膜を形成することができる。
【0145】
第3の実施の形態は、第2の実施の形態で示した変形例をとることができる。
【0146】
[第4の実施の形態]
(第3のセラミックスの原料液)
第3のセラミックスの原料液は、第5の原料液と第6の原料液とを混合して使用される原料液である。第3のセラミックスの原料液は、熱分解することによりセラミックス膜が得られるような原料液であることができる。第5の原料液と、第6の原料液とは、生成する材質の種類が異なる関係にある。第5および第6の原料液は、たとえば、1)金属有機化合物(たとえば金属アルコキシド、金属カルボン酸)や金属無機化合物(たとえば金属硝酸塩、金属塩化物)を溶媒(たとえば水、アルコール、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、または、これらの混合物)に溶解させた液、2)溶媒中で金属化合物を加水分解反応、縮合反応などをさせた液、3)金属アルコキシドの加水分解により得られるゾル・ゲル液であることができる。
【0147】
以下、第5の原料液と第6の原料液とを具体的に説明する。
【0148】
第5の原料液は、Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体またはPZT系の強誘電体を生成するための原料液である。Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体としては、第1のセラミックスの原料液で示したものを適用できる。PZT系の強誘電体としては、第1のセラミックスの原料液で示したものを適用できる。第5の原料液の具体例としては、Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体の場合には第1の原料液(第2の実施の形態)の具体例を適用でき、PZT系の強誘電体の場合には第3の原料液(第3の実施の形態)の具体例を適用できる。
【0149】
第6の原料液は、AGeO系の酸化物を生成するための原料液である。BサイトがGeである酸化物は、融点が700℃近傍と低いため、プロセスの低温化を図ることができる。AGeO系の酸化物におけるAサイトとしては、たとえば、アルカリ土類金属、希土類元素(特にCe)、Zr、Sr、Biを挙げることができる。ZrGeO系の酸化物としてはたとえばZrGeO4を挙げることができ、SrGeO系の酸化物としてはたとえばSr5Ge311を挙げることができる。第6の原料液の具体例としては、BiGeO系の酸化物の場合には、第2の原料液(第2の実施の形態)の具体例を適用できる。AGeO系の酸化物は、常誘電体であってもよいし、強誘電体であってもよい。
【0150】
第5の原料液と第6の原料液とは、第5の原料液に基づいて得られる強誘電体と、第6の原料液に基づいて得られるABO系酸化物とのモル比が、100:20〜100:100となるように混合されることが好ましい。
【0151】
(第3のセラミックス膜の製造例)
第3のセラミックスの原料液の成膜方法は、第1のセラミックスの原料液の成膜方法で示した方法であることができる。
【0152】
(作用効果)
以下、第4の実施の形態に係るセラミックスの原料液を用いて、セラミックス膜を成膜した場合の作用効果について説明する。
【0153】
(1)本実施の形態に係るセラミックスの原料液によれば、第5の原料液のみを焼成して強誘電体膜を形成する場合において、所定の特性をだすために必要な焼成温度よりも低い焼成温度で、所定の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。つまり、本実施の形態によれば、より低温度で、所望の特性を有する強誘電体膜を形成することができる。
【0154】
(2)第5の原料液に基づいて生成される材質と、第6の原料液に基づいて生成される材質とは、異なる。このため、たとえば、第5の原料液が結晶化する結晶化温度と、第6の原料液が結晶化する結晶化温度とが異なることとなる。その結果、第2の実施の形態と同様に、表面モフォロジが向上したセラミックス膜を形成することができる。
【0155】
(3)また、第6の原料液に基づく結晶の配向し易い方向を、第5の原料液に基づく結晶の配向し易い方向と異ならせることにより、一方の原料液に基づく結晶の結晶成長が、他方の結晶の結晶成長に遮られることとなる。このため、この場合には、得られるセラミックス膜の結晶を微結晶化させることができる。その結果、より表面モフォロジが改善したセラミックス膜を形成することができる。
【0156】
第4の実施の形態は、第2の実施の形態で示した変形例をとることができる。
【0157】
[第5の実施の形態]
以下、第5の実施の形態に係る多層セラミックス膜の製造例を説明する。
【0158】
(第1の多層セラミックス膜の製造例)
以下、第1の多層セラミックス膜の製造例を説明する。図5は、第1の多層セラミックス膜の製造プロセスを模式的に示す断面図である。
【0159】
まず、図5(A)に示すように、基体10の上に、塗布法により、強誘電体を生成するための主液層312を形成する。主液層312の材料としては、第2の実施の形態における第1の原料液、第3の実施の形態における第3の原料液を挙げることができる。
【0160】
次に、主液層312の上に、強誘電体または常誘電体を生成するための副液層322を形成する。なお、副液層322の材料は、主液層312の材料よりも結晶化温度が低いものが選択される。また、副液層322の材料としては、結晶化した後、層状構造を有さない酸化物が生じるような材料が選択される。副液層322の材料としては、主液層312の材料によって異なるが、主液層312を結晶化させるとSBT系の強誘電体が生成される場合には、副液層322の材料は、たとえばBiGeO系、BiSiO系、SrGeO系である。
【0161】
次に、熱処理をすることにより、図5(C)に示すように、主液層312および副液相322を結晶化させて、主結晶層310と副結晶層320とからなるセラミックス膜300を形成する。
【0162】
第1の多層セラミックス膜の製造例によれば、次の作用効果が奏される。
【0163】
副液層322は、主液層312に比べて結晶化温度が低い材料が選択されている。このため、結晶化の初期段階において、図5(B)に示すように、副液層322は、主液層312に対して優先的に結晶化が進行していく。その結果、副液層322において生じた結晶は、主液層312の結晶化においてシードとして機能する。したがって、主液層312の結晶化は、副液層322側と、基体10側とから進行していくことになる。このため、主液層312における結晶のグレインサイズを小さくすることができる。
【0164】
また、副液層322の材料として、結晶化した後、層状構造を有さないような酸化物が生じる材料を用いられている。このため、副液層322において、結晶が等方的に結晶成長していく。その結果、表面が平坦な副結晶層320が形成され、セラミックス膜300の表面モフォロジを向上させることができる。
【0165】
なお、図6(A)に示すように、副液層332を、基体10と主液層312との間に介在させて、主結晶層310と副結晶層320,330とからなるセラミックス膜300を形成することもできる。
【0166】
(第2の多層セラミックス膜の製造例)
以下、第2の多層セラミックス膜の製造例について説明する。図7は、第2の多層セラミックス膜の製造プロセスを模式的に示す断面図である。
【0167】
第2の多層セラミックス膜の製造例は、主液層412,432間に、副液層422を介在させている点で、第1の多層セラミックス膜の製造例と異なる。
【0168】
すなわち、基体10の上に、主液層412、副液層422、主液層432および副液層442を順次積層させる。そして、これらの層を結晶化させることにより、主結晶層410,430および副結晶層420,440とからなるセラミックス膜400を形成する。
【0169】
なお、副液層422,442は、第1の多層セラミックス膜の製造例と同様に、主液層412,442と比べて結晶化温度が低い材料から選択される。
【0170】
このように主液層412,432間に副液層422を介在させることにより、副液層422において生成した結晶が、主液層412,432における結晶の結晶成長を止めるストッパーとしての役割を果たす。このため、副結晶層420の両サイドにある主結晶層410,430の結晶のグレインサイズを小さくすることができる。
【0171】
(第3の多層セラミックス膜の製造例)
以下、第2の多層セラミックス膜の製造例について説明する。図8は、第3の多層セラミックス膜の製造プロセスを模式的に示す断面図である。
【0172】
第3の多層セラミックス膜の製造例は、主液層512の材料が副液層522の材料より結晶化温度の低い材料である点で、第1の多層セラミックス膜の製造例と異なる。
【0173】
この場合において、主液層512の材料としては、第2の実施の形態における第1の原料液、および、第3の実施の形態における第3の原料液を挙げることができる。主液層512の材料がPZT系の強誘電体を生成するものである場合には、副液層522の材料は、PbWO系、PbMoO系であることができる。
【0174】
この主液層512および副液層522を結晶化させることにより、表面モフォロジが向上したセラミックス膜を形成することができる。この理由は、次のとおりである。主液層512の材料は副液層522の材料より結晶化温度の低い材料からなる。このため、副液層522の結晶化は、主液層512に対して遅れて進行し、主液層512に基づいて形成された主結晶層510を覆うように、副液層522に基づいて結晶が生成することとなる。そして、この副液層522に基づいて生成した結晶は、層状構造を有していないため、副液層522に基づく結晶は等方的に成長していく。このため、表面が平坦化された副結晶層520が形成される。その結果、セラミックス膜500の表面において凹凸が少なくなるこになり、セラミックス膜500の表面モフォロジを向上させることができる。
【0175】
上記の第1〜第3の多層セラミックス膜の製造例において、主液層に基づく結晶粒と、副液層に基づく結晶粒とが、相互に異なる結晶層に拡散している場合がある。また、主液層における構成金属元素が副液層に拡散したり、また、副液層における構成金属元素が主液層に拡散したりする場合がある。このため、主液層に基づいて形成された主結晶層と、副液層に基づいて形成された副結晶層との界面は、明確となっていない場合がある。
【0176】
[第6の実施の形態]
(半導体装置)
以下、本発明のセラミックス膜の製造方法により得られたセラミックス膜が適用された半導体装置について説明する。本実施の形態においては、半導体装置として、強誘電体メモリ装置の例を示す。図2は、強誘電体メモリ装置を模式的に示す断面図である。
【0177】
強誘電体メモリ装置5000は、CMOS領域R1と、このCMOS領域R1上に形成されたキャパシタ領域R2と、を有する。すなわち、CMOS領域R1は、半導体基板1と、この半導体基板1上に形成された素子分離領域2およびMOSトランジスタ3と、層間絶縁層4とを有する。キャパシタ領域R2は、下部電極5、強誘電体膜6および上部電極7から構成されるキャパシタC100と、下部電極5と接続された配線層8aと、上部電極7と接続された配線層8bと、絶縁層9とを有する。キャパシタC100における強誘電体膜6は、本発明のセラミックス膜の製造方法により形成されている。MOSトランジスタ3の不純物拡散層3aと、キャパシタ5を構成する下部電極5とは、ポリシリコンまたはタングステンからなるコンタクト層11によって接続されている。
【0178】
以下、強誘電体装置の作用効果を説明する。
【0179】
(1)強誘電体膜を形成する場合には、溝や孔が生じることを考慮して、上部電極と下部電極との短絡を防ぐ必要から、強誘電体膜の厚さを厚くする必要がある。この上部電極と下部電極との短絡は、上部電極がイリジウム系の材質(Ir,IrO2)からなるときに著しく生じる。しかし、本実施の形態においては、強誘電体装置5000の強誘電体膜6は、本発明のセラミックス膜の製造方法により形成されている。このため、強誘電体膜6において表面モフォロジが改善されている。その結果、強誘電体膜6において表面モフォロジが改善された分だけ、強誘電体膜6の厚さを薄くすることができる。したがって、この強誘電体装置5000によれば、高集積化を図ることができる。
【0180】
また、本実施の形態によれば、上部電極7の材質としてイリジウム系の材質を適用できる、強誘電体膜6の膜厚の範囲を広げることができる。つまり、上部電極7の材質としてイリジウム系の材質を適用できる、強誘電体膜6の最も薄い厚さの限界を下げることができる。
【0181】
なお、イリジウム系の材質は、白金(Pt)に比べて、水素バリア性およびファティーグ特性に優れているという利点がある。
【0182】
(2)強誘電体膜の表面において凹凸が生じた状態で強誘電体膜をエッチングすると、強誘電体膜の下地である下部電極の表面に、強誘電体膜の表面の凹凸形状が転写されて、下部電極の表面モフォロジは劣化する。下部電極の表面モフォロジが劣化すると、下部電極に接続したい配線層と、下部電極との間において、コンタクト不良が発生する場合がある。
【0183】
しかし、本実施の形態においては、強誘電体膜6の表面モフォロジが改善されている。このため、強誘電体膜6をエッチングした後に、下部電極5の表面モフォロジの劣化を抑えることができる。その結果、確実に、配線層8aを下部電極9に電気的に接続することができる。
【0184】
(変形例)
本発明のセラミックス膜の製造方法により得られたセラミックス膜を適用することができる半導体装置は、強誘電体メモリに限定されず、各種半導体装置、たとえばDRAMに適用することができる。具体的には、本発明のセラミックス膜は、DRAMのキャパシタにおける誘電体膜に適用することができる。この場合、誘電体膜は、キャパシタの大容量化を図る観点から、BSTのような高誘電率の常誘電体からなることができる。
【0185】
また、本発明の製造方法により得られたセラミックス膜は、半導体装置への適用のみではなく、他の用途、たとえば、アクチュエータに用いる圧電素子の圧電体に適用することができる。
【実施例】
【0186】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0187】
(実施例1)
主液は、次のようにして得た。2−エチルヘキサン酸ビスマスの濃度が0.1mol/lのトルエン溶液1100ml、2−エチルヘキサン酸ストロンチウムの濃度が0.1mol/lのトルエン溶液400ml、タンタルエトキシドの濃度が0.1mol/lのトルエン溶液1000ml、2−エチルヘキサン酸100gを混合し、混合液を調製した。この混合液を、窒素雰囲気下、120℃で1時間加熱還流し、溶媒を常圧留去した。これに、Sr0.8Bi2.2Ta2X(SBT)としての酸化物濃度が0.1mol/lになるようにトルエンを加え、主液を得た。
【0188】
一方、副液は、次のようにして得た。2−エチルヘキサン酸ビスマスの濃度が0.1mol/lのトルエン溶液2000mlに、ゲルマニウムエトキシドの濃度が0.1mol/lのトルエン溶液1500ml、および、2−エチルヘキサン酸100gを混合した。この溶液を、窒素雰囲気下、120℃で1時間加熱還流した後、溶媒を常圧留去した。これに、Bi4Ge312としての酸化物濃度が0.1mol/lになるようにトルエンを加え、副液を得た。
【0189】
得られた主液と副液とを混合して、混合体積比が異なる7種類の混合液を得た。混合液の主液と副液との混合体積比は、100:1、100:10、100:20、100:50、100:100、100:150、100:200とした。
【0190】
これら7種類の混合液および主液のみの溶液のそれぞれから、強誘電体膜を形成した。
【0191】
なお、成膜方法は、図9に示す方法により行った。前処理加熱工程、溶液塗布工程、乾燥熱処理工程、脱脂熱処理工程および仮焼結工程の一連の工程を2回行った。そして、最後に焼結させて、成膜した。なお、具体的な条件を下記する。前処理加熱工程は、180℃で30秒間行った。混合液の塗布は、スピンコーター(2100rpm)で、30秒間行った。乾燥熱処理は、窒素雰囲気下、160℃で1分間行われた。脱脂熱処理工程は、窒素雰囲気下、260℃で4分間行った。仮焼結は、酸素雰囲気下、30秒間行った。なお、仮焼結の温度は、表1に示す焼成温度で行った。焼結は、酸素雰囲気下、60分間行った。なお、焼結の温度は、表1に示す焼成温度で行った。また、成膜された膜の厚さは、50nmであった。
【0192】
それぞれの強誘電体膜のPr(残留分極値)を測定した。Prの測定結果を表1に示す。なお、Prの単位は、μC/cm2である。
【0193】
【表1】

【0194】
SBTが強誘電体である強誘電体メモリ装置を製造する場合、焼成温度が600℃以下でないと、ある程度の集積度を有する強誘電体メモリ装置を製造することが難しい。また、強誘電体メモリ装置において、強誘電体キャパシタのPrは、7以上有することが好ましい。表1において、焼成温度が600℃以下において、Prが7以上のデータを有する混合体積比(主液:副液)は、100:20〜100:100である。このため、主液と副液との混合体積比は、100:20〜100:100の範囲内にあることが好ましい。
【0195】
なお、主液は、Sr0.8Bi2.2Ta2Xが主液1リットル当たり0.1mol生成するように調製されている。また、副液も、Bi4Ge312が副液1リットル当たり0.1mol生成するように調製されている。このため、主液と副液との混合体積比は、同時に、主液に基づいて生成されるSr0.8Bi2.2Ta2Xと、副液に基づいて生成されるBi4Ge312とのモル比を示すこととなる。したがって、主液と副液とは、主液に基づいて生成されるSr0.8Bi2.2Ta2Xと、副液に基づいて生成されるBi4Ge312とのモル比が、100:20〜100:100となるように混合されることが好ましい。
【0196】
また、主液のみからなる場合には、焼成温度が700℃以上でないと、Prに関して所定の特性がでていない。一方、主液に副液を混合することにより、焼成温度が500℃程度でも、Prに関して所定の特性がでている。これにより、主液に副液を混合して成膜すると、低温化を図ることができることがわかる。
【0197】
(実施例2)
主液は、次のようにして得た。2−メトキシエタノール1000ml中に、チタンイソプロポキシド85.3gおよびビスマスブトキシド139.2gを添加した。この2−メトキシエタノールを、窒素雰囲気下、125℃で1時間加熱還流した後、室温に戻した。これに、ランタンイソプロポキシド23.7gを加えて室温で2時間攪拌した。さらに、水1.3gを加えて室温で1時間攪拌した後、2−メトキシエタノールを加えてBi3.25La0.75Ti312としての酸化物濃度が0.07mol/lになるように調製し、主液を得た。
【0198】
一方、副液は、次のようにして得た。2−メトキシエタノール1000ml中に、ゲルマニウムエトキシド75.9gとビスマスブトキシド171.3gを添加した。この2−メトキシエタノールを、窒素雰囲気下、125度で1時間加熱還流した後、室温に戻した。これに水1.3gを加えて室温で1時間攪拌した後、2−メトキシエタノールを加えてBi4Ge312としての酸化物濃度が0.07mol/lになるように調製し、副液を得た。
【0199】
得られた主液と副液とを混合して、混合比が異なる7種類の混合液を得た。混合液の主液と副液との混合比は、100:1、100:10、100:20、100:50、100:100、100:150、100:200とした。
【0200】
これら7種類の混合液および主液のみの溶液のそれぞれから、強誘電体膜を形成した。なお、成膜方法は、実施例1と同様である。
【0201】
実施例2においても、Prに関して、実施例1と同様の傾向があった。
【0202】
(実施例3)
主液は、次のようにして得た。キシレン100ml中に、タンタルエトキシド81.2gおよび2−エチルヘキサン酸170gを加え、これにストロンチウムイソプロポキシド20.6gを加えて120℃で2時間攪拌し、キシレン、生成したアルコール、余剰な2−エチルヘキサン酸を180℃で常圧留去した。これに2−エチルヘキサン酸ビスマスの濃度が1.0mol/lのキシレン溶液200mlを加えた。その後、SrBi2Ta2Xとしての酸化物濃度が0.2mol/lになるように、キシレンを加えて調製した。さらに、酢酸ブチルを加えてSrBi2Ta2Xとしての酸化物濃度が0.1mol/lになるように調製し、主液を得た。
【0203】
副液は、次のようにして得た。2−エチルヘキサン酸ビスマスの濃度が0.1mol/lのキシレン溶液1000mlに、タングステンエトキシドの濃度が0.1mol/lのキシレン溶液500ml、2−エチルヘキサン酸100gを混合した。その混合液を、窒素雰囲気下、120℃で1時間加熱還流した後、溶媒を常圧蒸留した。これにキシレンを加えて、Bi2WO6としての酸化物濃度が0.1mol/lになるように調製し、副液を得た。
【0204】
得られた主液と副液とを混合して、混合体積比が異なる7種類の混合液を得た。混合液の主液と副液との混合体積比は、100:1、100:10、100:20、100:50、100:100、100:150、100:200とした。
【0205】
これら7種類の混合液および主液のみの溶液のそれぞれから、強誘電体膜を形成した。なお、成膜方法は、実施例1と同様である。
【0206】
実施例3においても、Prに関して、実施例1と同様の傾向があった。
【0207】
(実施例4)
主液は、次のようにして得た。1−メトキシ−2−プロパノール100ml中に、酢酸鉛三水和物37.93g、ジルコニウムブトキシド19.95g、チタンイソプロポキシド13.64gを添加し、窒素雰囲気下、120℃で1時間加熱還流した。その後、アセチルアセトン4.5gおよび水1.1gを加えて、溶媒を常圧留去した。これに1−メトキシ−2−プロパノールを加えて、Pb(Zr0.52Ti0.48)O3としての酸化物濃度が0.3mol/lとなるように調製し、主液を得た。
【0208】
一方、副液は、次のようにして得た。ゲルマニウムエトキシドの濃度が0.5mol/lの1−メトキシ−2−プロパノール溶液200mlと、鉛ブトキシドの濃度が0.5mol/lの1−メトキシ−2−プロパノール溶液250mlを混合した。この混合液を、窒素雰囲気下、120℃で1時間加熱還流した後、室温に戻した。その後、アセチルアセトン4.1gと水1.0gとを加えて溶媒を常圧留去した。これに、1−メトキシ−2−プロパノールを加えて、Pb5Ge311としての酸化物濃度が0.15mol/lになるように調製し、副液を得た。
【0209】
得られた主液と副液とを混合して、混合体積比が異なる7種類の混合液を得た。混合液の主液と副液との混合体積比は、100:1、100:10、100:20、100:50、100:100、100:150、100:200とした。
【0210】
これら7種類の混合液および主液のみの溶液のそれぞれから、強誘電体膜を形成した。なお、成膜方法は、実施例1と同様である。
【0211】
実施例4においても、Prに関して、実施例1と同様の傾向があった。
【0212】
(表面モフォロジに関する実験例)
次に、表面モフォロジに関する実験結果を説明する。
【0213】
図10は、実施例1に係る主液と副液との混合液から得た強誘電体膜の顕微鏡写真図である。図11は、比較例に係る強誘電体膜の顕微鏡写真図である。
【0214】
なお、図10における実施例1に係る強誘電体膜は、主液と副液との混合体積比が、100:100の強誘電体膜である。比較例に係る強誘電体膜は、実施例1の成膜方法により、実施例1で示した主液のみの溶液を成膜することにより得た。なお、実施例および比較例ともに、強誘電体膜の厚さは50nmとした。
【0215】
図10および図11に示すように、実施例に係る強誘電体膜は、比較例に係る強誘電体膜より、表面モフォロジが格段に向上していることがわかる。
【0216】
本発明は、上記の実施の形態を超えない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】実施の形態に係るセラミックスの原料液を用いたセラミックス膜の製造工程を模式的に示す断面図である。
【図2】強誘電体メモリ装置を模式的に示す断面図である。
【図3】LSMCD法により原材料体を基体の上に形成するための装置を模式的に示す断面図である。
【図4】図3における装置により得られた原材料体の構成を模式的に示す概念図である。
【図5】第1の多層セラミックス膜の製造工程を模式的に示す概念図である。
【図6】第2の多層セラミックス膜の製造工程を模式的に示す概念図である。
【図7】第3の多層セラミックス膜の製造工程を模式的に示す概念図である。
【図8】第4の多層セラミックス膜の製造工程を模式的に示す概念図である。
【図9】成膜プロセスのフロチャートである。
【図10】実施例1に係る主液と副液との混合液から得た強誘電体膜の顕微鏡写真図である。
【図11】比較例に係る強誘電体膜の顕微鏡写真図である。
【符号の説明】
【0218】
10 基体、20 原材料体、30 セラミックス膜、42 第1の結晶、52 第2の結晶、200 LSMCD法を実施するための装置、210 主液、210a 第1のミスト、220 副液、220a 第2のミスト、230,232 噴霧器、240 メッシュ、250 ミスト、300,400,500 セラミックス膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体は、種類が異なる原料を混在した状態で含み、
種類が異なる原料同士は、原料の結晶化における結晶成長条件および結晶成長機構の少なくとも一方が相互に異なる関係にある、セラミックス膜の製造方法。
【請求項2】
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体は、種類が異なる原料を混在した状態で含み、
種類が異なる原料同士は、原料から得られる結晶の結晶構造が相互に異なる関係にある、セラミックス膜の製造方法。
【請求項3】
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体は、種類が異なる原料を混在した状態で含み、
種類が異なる原料同士は、少なくとも結晶化初期段階において相互に独立に結晶化される、セラミックス膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記セラミックス膜は、強誘電体である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記セラミックス膜は、強誘電体と常誘電体とが混在してなる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶化温度が相互に異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶核の形成温度が相互に異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶成長温度が相互に異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶成長速度が相互に異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶核の形成速度が相互に異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶核の大きさが相互に異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士の関係のうち、少なくとも1つの二者関係において、
原料の結晶化における結晶化方法が相互に異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士は、時間的にずれて、結晶化される、セラミックス膜の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士は、原料の結晶化における結晶核が時間的にずれて形成される、セラミックス膜の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士は、同時に結晶化される、セラミックス膜の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかにおいて、
種類が異なる原料同士は、原料から得られるセラミックスを(Bi222+(Am-1m3m+12-と表したとき、相互にmの値が異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかにおいて、
前記原材料体は、LSMCD法により、基体の上に形成され、
前記原材料体は、種類が異なる原料を別々に供給し、基体の上に形成される、セラミックス膜の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかにおいて、
前記原材料体は、ゾルゲル原料およびMOD原料を含む、セラミックス膜の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかにおいて、
前記原材料体は、種類の異なるゾルゲル原料を有し、
種類の異なるゾルゲル原料同士は、相互に重縮合の度合いまたは金属元素の組成が異なる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかにおいて、
前記原材料体は、種類の異なるゾルゲル原料を有し、
種類の異なる原料同士は、原子レベルで混合されていない、セラミックス膜の製造方法。
【請求項21】
原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原材料体の結晶化は、複数の相が形成されるように行われる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記セラミックス膜は、強誘電体である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項23】
請求項21において、
前記セラミックス膜は、強誘電体と常誘電体とが混在してなる、セラミックス膜の製造方法。
【請求項24】
第1の原料液と、第2の原料液とを含むセラミックスの原料液を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第1の原料液と前記第2の原料液とは、種類が異なる関係にあり、
前記第1の原料液は、Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体を生成するための原料液であり、
前記第2の原料液は、AサイトがBiであるABO系酸化物を生成するための原料液である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項25】
請求項24において、
前記第1の原料液に基づいて生成される強誘電体と、前記第2の原料液に基づいて生成されるABO系酸化物とのモル比は、100:20〜100:100である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項26】
請求項24または25において、
前記第1の原料液は、前記強誘電体の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であり、
前記第2の原料液は、前記ABO系酸化物の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項27】
第3の原料液と、第4の原料液とを含むセラミックスの原料液を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第3の原料液と前記第4の原料液とは、種類が異なる関係にあり、
前記第3の原料液は、PZT系の強誘電体を生成するための原料液であり、
前記第4の原料液は、AサイトがPbであるABO系酸化物を生成するための原料液である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項28】
請求項27において、
前記第3の原料液に基づいて生成される強誘電体と、前記第4の原料液に基づいて生成されるABO系酸化物とのモル比は、100:20〜100:100である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項29】
請求項27または28において、
前記第3の原料液は、前記強誘電体の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であり、
前記第4の原料液は、前記ABO系酸化物の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項30】
第5の原料液と、第6の原料液とを含むセラミックスの原料液を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第5の原料液は、Bi系層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体またはPZT系の強誘電体を生成するための原料液であり、
前記第6の原料液は、BサイトがGeであるABO系酸化物を生成するための原料液である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項31】
請求項30において、
前記第5の原料液に基づいて生成される強誘電体と、前記第6の原料液に基づいて生成されるABO系酸化物とのモル比は、100:20〜100:100である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項32】
請求項30または31において、
前記第5の原料液は、前記強誘電体の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液であり、
前記第6の原料液は、前記ABO系酸化物の構成金属元素の、金属化合物または金属無機化合物を溶媒に溶解した溶液である、セラミックス膜の製造方法。
【請求項33】
複数の原料層が積層された原料体層を形成する工程、および
前記原料体層を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原料体層における最上層の原料層は、該最上層の原料層と接触する下層の原料層に比べて結晶化温度が低く、かつ、得られる結晶が層状構造を有さない、セラミックス膜の製造方法。
【請求項34】
請求項33において、
前記最上層の原料層と接触する下層の原料層は、基体の上に、第1の原料層を介して設けられ、
前記第1の原料層は、前記最上層の原料層と接触する下層の原料層に比べて結晶化温度が低い、セラミックス膜の製造方法。
【請求項35】
第1の原料層、第2の原料層および第3の原料層の順で積層された原料積層体を含む、原料体層を形成する工程、および
前記原料体層を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記第2の原料層は、前記第1の原料層および前記第3の原料層に比べて、結晶化温度が低い、セラミックス膜の製造方法。
【請求項36】
請求項35において、
前記第3の原料層の上に、さらに第4の原料層が積層され、
前記第4の原料層は、前記第3の原料層に比べて結晶化温度が低い、セラミックス膜の製造方法。
【請求項37】
複数の原料層が積層された原料体層を形成する工程、および
前記原料体層を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程を含み、
前記原料体層における最上層の原料層は、該最上層の原料層と接触する下層の原料層に比べて、結晶化温度が高い、セラミックス膜の製造方法。
【請求項38】
請求項37において、
前記原料体層における最上層の原料層は、得られる結晶が層状構造を有さない、セラミックス膜の製造方法。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれかにおいて、
前記原材料体を結晶化することにより、セラミックス膜を形成する工程が複数回実施される、セラミックス膜の製造方法。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれかに記載のセラミックス膜の製造方法により得られたセラミックス膜。
【請求項41】
請求項40に記載のセラミックス膜を含むキャパシタを有する、半導体装置。
【請求項42】
請求項40に記載のセラミックス膜を含む圧電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−107923(P2009−107923A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315883(P2008−315883)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【分割の表示】特願2001−178839(P2001−178839)の分割
【原出願日】平成13年6月13日(2001.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】