説明

セラミックヒータ、加熱装置、画像形成装置

【課題】電力供給時には立ち上がりを速くし、定着時には非通紙部での温度上昇を抑えるセラミックヒータを実現する。
【解決手段】長尺板状のセラミック基板11の長手方向が幅で短手方向が長さの発熱抵抗体20と電力供給用の電極12,13を形成する。発熱抵抗体20の両端には、セラミック基板11上に形成された配線パターン14,15を接続する。電極12と配線パターン14の中央部分とはセラミック基板11の裏面側に形成された接続パターン16とをスルーホール181,182を介して接続する。電極13と配線パターン15の中央部分とはセラミック基板11の裏面側に形成された接続パターン17とをスルーホール191,192を介して接続する。配線パターン14,15には抵抗温度係数が3000ppm/℃以上のものを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報機器、家電製品や製造設備などの小型機器類に装着されて用いられる薄型のセラミックヒータおよびこのセラミックヒータを実装したプリンタ、複写機、ファクシミリやリライタブルカードリーダライタなどの加熱装置ならびにこの加熱装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の長尺平板状のセラミック基板上に、短手方向が長さで、長手方向が幅の発熱抵抗体が形成されたセラミックヒータは、給電位置より離れるに従い、抵抗体長を短くすることで、給電用電極形成側と非給電用電極形成側の導電経路による抵抗値の違いを少なくすることで、セラミック基板長手方向における温度分布の均一化が図られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−157456公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、ヒータ長程度の被定着物を通紙させたときは、均一な温度分布を得ることができる。しかしながら、ヒータ長に対して短い被定着物を通紙させた場合に、例えばヒータ中央部が200℃、端部が240℃となった場合、配線パターンの抵抗値が数Ωとなることから、セラミック基板両端で数%の抵抗値差が生じ、給電用電極形成側の発熱量が大きくなり、被定着物の走行速度を速くすると定着ムラが生じる、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、電力供給時には立ち上がりを速くし、定着時には非通紙部での温度上昇を抑えるこのとできるセラミックヒータ、このヒータが実装された加熱装置、この加熱装置が搭載された画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明のセラミックヒータは長尺平板状の耐熱性で絶縁性のセラミック基板と、前記セラミック基板上の短手方向が長さで長手方向が幅の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体の長手方向両端に沿って形成し、前記発熱抵抗体の両端と接続した第1および第2の配線パターンと、前記セラミック基板上に形成し電力供給用の、前記第1の配線パターンの前記セラミック基板の長手方向の中央部分と接続した第1の電極および前記第2の配線パターンの前記セラミック基板の長手方向の中央部分と接続した第2の電極と、前記発熱抵抗体を保護する絶縁性のオーバーコート層と、を具備し、前記第1および第1の配線パターンは、高い値の抵抗温度係数を有するものであることを特徴する。
【0007】
この発明の加熱装置は、請求項1〜9の何れかに記載のセラミックヒータと、前記セラミック基板に対向配置し、該セラミック基板を圧接するように回転可能に支持された加圧ローラと、前記セラミック基板と前記加圧ローラとの間を設けられ、前記加圧ローラの回転に伴い前記セラミック基板上を摺動する定着フィルムとを具備したことを特徴とする。
【0008】
この発明の画像形成装置は、媒体に形成された静電潜像にトナーを付着させてこのトナーを用紙に転写して所定の画像を形成する形成手段と、画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記ヒータに圧接しながら通過させることによって、トナーを定着するようにした請求項10記載の加熱装置と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、電力供給時には立ち上がりを速く、定着時には非通紙部の温度上昇を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明のセラミックヒータに関する第1の実施形態について説明するためのもので、(a)は正面図、(b)は背面図。
【図2】図1のIa−Ib線断面図。
【図3】図1のIc−Id線断面図。
【図4】図1のIe−If線断面図。
【図5】図1の動作について説明するための等価回路。
【図6】この発明のセラミックヒータに関する第2の実施形態について説明するための構成図。
【図7】図6の動作について説明するための等価回路。
【図8】この発明のセラミックヒータに関する第3の実施形態について説明するための(a)は正面図、(b)は背面図。
【図9】図8のIIa−IIb線の断面図。
【図10】図8のIIc−IId線の断面図。
【図11】図8のIIe−IIf線の断面図。
【図12】この発明のセラミックヒータに関する第4の実施形態について説明するための構成図。
【図13】この発明のセラミックヒータに関する第5の実施形態について説明するための構成図。
【図14】この発明のセラミックヒータに関する第6の実施形態について説明するための構成図。
【図15】この発明のセラミックヒータに関する第7の実施形態について説明するための構成図。
【図16】この発明のセラミックヒータに関する第8の実施形態について説明するための(a)は正面図、(b)は背面図。
【図17】図16のIIIa−IIIb線の断面図。
【図18】図16のIIIc−IIId線の断面図。
【図19】図16要部の等価回路。
【図20】この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【図21】この発明の画像形成装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1〜図4は、この発明のセラミックヒータに関する第1の実施形態について説明するためのもので、図1(a)は正面図、図1(b)は背面図、図2は図1のIa−Ib線の断面図、図3は図1のIc−Id線の断面図、図4は図1のIe−If線の断面図である。
【0013】
以下の各実施形態において、この実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。また、発熱抵抗体の図中右側について説明するが、左側について考え方は同じであり、その説明は省略する。
【0014】
図1(a)において、11は、厚みが0.5mm〜1.0mm程度の耐熱、電気絶縁性材料で、高い熱伝導性を有する例えばアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等の高剛性のセラミック製の平板短冊状のセラミック基板である。セラミック基板11の長手方向の一端側に形成された12,13は、それぞれ銀系等を主体とする良導電体膜からなる給電用の電極である。14,15は、セラミック基板11の長手方向の両側に非接触状態で並行させ、銀(Ag)の含有率が90wt%以上の材料で形成された配線パターンである。
【0015】
電極12,13および配線パターン14,15は、セラミック基板11の片側の面に別々の状態でそれぞれが形成される。これら電極12,13および配線パターン14,15は、導電ペーストをセラミック基板11上に塗り、これを焼成することによりセラミック基板11上に固着させた状態で形成することができる。
【0016】
図1(b)に示すように、配線パターン14の長手方向とセラミック基板11を挟んで対向する位置には、電極12と配線パターン14を接続させるための接続パターン16を形成する。同様に、配線パターン15の長手方向とセラミック基板11を挟んで対向する位置には、電極13と配線パターン15を接続させるための接続パターン17を形成する。
【0017】
そして、図2、図3にも示すように、電極12と接続パターン16はスルーホール181を介して電気的に接続されている。配線パターン14と接続パターン16は、スルーホール182を介して電気的に接続される。電極13と接続パターン17はスルーホール191を介して電気的に接続され、配線パターン15と接続パターン17はスルーホール192を介して電気的に接続される。
【0018】
20は、配線パターン14,15との間のセラミック基板11の長手方向に沿って平行に形成された比較的抵抗値の高い酸化ルテニウム(RuO)等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷した後、高温で焼成して所定の抵抗値を有する膜厚が10μm程度の幅広の発熱抵抗体である。配線パターン14,15の抵抗温度係数(TCR:Temperature Coefficient of Resistance)は、例えば3000ppm/℃と大きな値とする。
【0019】
配線パターン14および発熱抵抗体20と配線パターン15と発熱抵抗体20は、図3、図4に示すように、一部が重層形成されている。この場合の重層部分は、発熱抵抗体20を配線パターン14,15に対して上側に配置する関係にしてある。この関係は逆でも構わない。
【0020】
21は、配線パターン14,15および発熱抵抗体20を覆うように形成され、ガラス層厚が20μm〜100μm程度で、熱伝導率が例えば2W/m・K以上のアルミナ等熱伝導性の優れた無機酸化物フィラーを25wt%〜35wt%加えることで、摺動性を向上させたガラス等のオーバーコート層である。オーバーコート層21は、配線パターン14,15および発熱抵抗体20を機械的、化学的、電気的に保護する。
【0021】
ここで、電極12からスルーホール181、接続パターン16、スルーホール182、配線パターン14を介して発熱抵抗体20の一方と、電極13からスルーホール191、接続パターン17、スルーホール192、配線パターン15を介して発熱抵抗体20の他方とが通電されると、発熱抵抗体20は発熱される。
【0022】
ここで、図5の等価回路とともに動作について説明する。図5は、図1で示すスルーホール182から発熱抵抗体20のある端部までの配線パターン14の抵抗をR14、スルーホール192から発熱抵抗体20のある端部までの配線パターン15の抵抗をR15、スルーホール182から発熱抵抗体20までの配線パターン14の抵抗をR14b、スルーホール192から発熱抵抗体20までの配線パターン15の抵抗をR15b、抵抗R14bと抵抗R15b間の発熱抵抗体20の抵抗をR20a、配線パターン14,15の端部間の発熱抵抗体20の抵抗をR20bで示している。
【0023】
ここで、具体的な例を挙げて説明する。発熱抵抗体20の長さを2mm、幅を240mmとし、その両端に形成された配線パターン14,15の長さを240mm、幅を1mmとし、発熱抵抗体20の抵抗値を2400Ω/□、抵抗温度係数を0ppm/℃、配線パターン14,15を4mΩ/□、抵抗温度係数を3000ppm/℃とする。発熱抵抗体3の抵抗値は20Ωとなる。
【0024】
発熱抵抗体20が室温である場合に、抵抗R14b,R15bの値は、極めて小さく0Ω、抵抗R20aを20Ω、抵抗R14a+R15aを例えば0.96Ωであるとする。この場合のスルーホール182と192間の抵抗値は20Ω(R14b+R20a+R15b)である。
【0025】
また、室温でのスルーホール182から配線パターン14の端部、発熱抵抗体20、配線パターン15の端部からスルーホール192までの配線パターン15までの抵抗値は、20.96Ω(R14a+R20b+R15a)となる。
【0026】
発熱抵抗体20が180℃では、抵抗R14b,R15bの値は、極めて小さく0Ω、抵抗R20aは20Ωで、抵抗R14a+R15aは1.392Ωとなる。180℃におけるスルーホール182と192間の抵抗値は、20Ω(R14b+R20a+R15b)である。
【0027】
180℃でのスルーホール182から配線パターン14の端部、発熱抵抗体20、配線パターン15の端部からスルーホール192までの配線パターン15までの配線パターン14,15の抵抗値は、21.39Ωとなる。室温時の場合の違いは、配線パターン14,15の抵抗温度係数3000ppm/℃が加味されたからである。
【0028】
つまり、配線パターン14,15の抵抗R14b+R15bは、室温(30℃)下では0.16Ωであるが、配線パターン14,15の抵抗値は、3000ppm/℃の抵抗温度係数を有しているとしていることから、180℃となった場合は、0.16×(1+3000/1000000×(180−30))=0.232Ωとなることから、中央部におけるスルーホール182と192間の抵抗値は20.23Ωということになる。
【0029】
同様の考えから室温から180℃となった場合における配線パターン14,15の抵抗R14a,15aも増加することになる。
【0030】
従って、室温に近いヒータの立ち上がり時は、スルーホール182,192付近であるヒータの中間部と端部との抵抗値の差が少ないことから、ヒータ全体の立ち上がりが速くなる。また、定着温度の180℃となった場合は、配線パターン14,15の端部の見かけ上の抵抗温度係数を大きくすることができることから、端部付近に流れる電流を小さくできることができる。このため、端部と中央部に温度差が生じた場合に、端部の発熱量を抑制することが可能となる。
【0031】
図6、図7は、この発明のセラミックヒータに関する第2の実施形態について説明するための、図6は正面図、図7は動作について説明するための等価回路である。
【0032】
この実施形態は、発熱抵抗体20の幅方向の中心Cから、配線パターン14に沿ってスルーホール182を距離L1だけ、配線パターン15に沿ってスルーホール192を距離L2だけ、それぞれ離れる方向にシフトさせたものである。
【0033】
ここで、室温時における抵抗R14b,R15bの値は、スルーホール182がL1だけ、スルーホール192がL2だけシフトした分が増加し、それぞれ0.16Ωとなる。発熱抵抗体の長さ方向の抵抗R20bが20Ω、抵抗R14a+R15aが0.96Ωであるとする。この場合のスルーホール182と192間の抵抗値は20.23Ω(R14b+R20a+R15b)である。また、室温でのスルーホール182から配線パターン14の端部、発熱抵抗体20、配線パターン15の端部からスルーホール192までの配線パターン15までの抵抗値は21.39Ωとなる。
【0034】
発熱抵抗体20が180℃では、抵抗R14b,R15bの値は、極めて小さく実質的に0Ω、抵抗R20aは20Ωで、抵抗R14a+R14aは1.392Ωとなる。180℃の定着時におけるスルーホール182と192間の抵抗値は、20Ω(R14b+R20a+R15b)である。
【0035】
180℃でのスルーホール182から配線パターン14の端部、発熱抵抗体20、配線パターン15の端部からスルーホール192までの配線パターン15までの抵抗値は21.39Ω(R14a+R20b+R15a)となる。
【0036】
この実施形態では、室温時における中央部のスルーホール182と192間の抵抗値が20.16Ωで、端部のスルーホール182と192間の抵抗値が20.96Ωとなる。これは、上記したセラミックヒータの第1の実施形態と同じように、ヒータ立ち上がりの速度が向上することになる。
【0037】
また、定着時の180℃では、配線パターン14,15の抵抗温度係数3000ppm/℃の作用によって配線パターン14,15の端部付近に流れる電流を小さくできる。従って、中央部と端部とで通紙時に温度差が生じた場合は、端部における発熱量を抑制することが可能となる。
【0038】
図8〜図11は、この発明のセラミックヒータに関する第3の実施形態について説明するための、図8(a)は正面図、図8(b)は背面図、図9は図8のIIa−IIb線の断面図、図10は図8のIIc−IId線の断面図、図11は図8のIIe−IIf線の断面図である。
【0039】
この実施形態は、発熱抵抗体20の幅方向の中央部の幅L3の範囲内において配線パターン14,15の両端の幅を狭くした配線パターン142,143と配線パターン152,153としたものである。配線パターン142,143と152,153は、中央部の配線パターン141と151の幅より5%程度狭くなっている。
【0040】
この場合の室温時における中央部のスルーホール182および発熱抵抗体20間とスルーホール192および発熱抵抗体間のそれぞれの抵抗R14bとR15bは、長さが極めて短く実質0Ωであることから、20Ω(R14b+R20a+R15b)である。端部の配線パターン143,153の抵抗値は5%狭くなった分だけ高い1.01Ωとすると、発熱抵抗体20を含めた端部の抵抗値は21.01Ω(R14a+R20b+R15a)である。
【0041】
180℃の定着時における中央部の抵抗は20Ωで、端部の抵抗は、配線パターン14の抵抗R14a、発熱抵抗体20の抵抗R20b、配線パターン15の抵抗R15aに配線パターン14,15の抵抗温度係数を加味すると21.39Ωとなる。
【0042】
このように、室温に近いヒータの立ち上がり時は、スルーホール182,192付近であるヒータの中間部と端部との抵抗値の差が少ないことから、ヒータ全体の立ち上がりが速くなる。また、定着温度の180℃となった場合は、配線パターン14,15の端部付近に流れる電流を小さくできることから、端部の見かけ上の抵抗温度係数を大きくすることができることから、端部と中央部に温度差が生じた場合に、端部の発熱量を抑制することができる。
【0043】
図12は、この発明のセラミックヒータの第4の実施形態について説明するための構成図である。
【0044】
この実施形態は、上記したセラミックヒータの第3の実施形態のスルーホール182,192を、図6のように、中間部CからL1,L2の距離だけ互いに離れる方向にシフトさせたものである。
【0045】
この場合、室温時における抵抗R14b,R15bの値は、スルーホール182がL1だけ、スルーホール192がL2だけシフトした分が増加し、それぞれ0.16Ωとなる。発熱抵抗体20の長さ方向の抵抗R20bが20Ω、抵抗R14a+R15aが0.96Ωであるとする。この場合のスルーホール182と192間の抵抗値は20.16Ω(R14b+R20a+R15b)である。また、室温でのスルーホール182から配線パターン14の端部、発熱抵抗体20、配線パターン15の端部からスルーホール192までの配線パターン15までの抵抗値は21.39Ωとなる。
【0046】
発熱抵抗体20が180℃では、抵抗R14b,R15bの値は、極めて小さく実質的に0Ω、抵抗R20bは20Ωで、抵抗R14a+R14aは1.392Ωとなる。180℃の定着時におけるスルーホール182と192間の抵抗値は、20Ω(R14b+R20a+R15b)である。
【0047】
180℃でのスルーホール182から配線パターン14の端部、発熱抵抗体20、配線パターン15の端部からスルーホール192までの配線パターン15までの抵抗値は21.39Ω(R14a+R20b+R15a)となる。
【0048】
この実施形態では、室温時における中央部のスルーホール182と192間の抵抗値が20.16Ωで、端部のスルーホール182と192間の抵抗値が20.96Ωとなる。これは、上記したセラミックヒータの第1の実施形態と同じように、ヒータ立ち上がりの速度が向上することになる。
【0049】
また、定着時の180℃では、配線パターン14,15の抵抗温度係数3000ppm/℃の作用によって配線パターン14,15の端部付近に流れる電流を小さくできる。従って、中央部と端部とで通紙時に温度差が生じた場合は、端部における発熱量を抑制することが可能となる。
【0050】
図13は、この発明のセラミックヒータに関する第5の実施形態について説明するための構成図である。
【0051】
この実施形態は、上記したセラミックヒータの第4の実施形態の端部の配線パターン14,15を、発熱抵抗体20側に絞り発熱抵抗体20の長さであるセラミック基板11の幅方向を、中央部の発熱抵抗体201に比べて端部の発熱抵抗体202,203を短くしたものである。
【0052】
このような構成の室温時における抵抗R14b,R15bの値は、スルーホール182がL1だけ、スルーホール192がL2だけシフトした分が増加し、それぞれ0.16Ωとなる。発熱抵抗体20の長さ方向の抵抗R20bが20Ω、抵抗R14a+R15aが0.96Ωであるとする。この場合のスルーホール182と192間の抵抗値は20.16Ω(R14b+R20a+R15b)である。
【0053】
また、室温でのスルーホール182から配線パターン14の端部、発熱抵抗体20、配線パターン15の端部からスルーホール192までの抵抗値は、発熱抵抗体20の長さが長くなる分だけ抵抗値が減り19.2Ω、配線パターン14,15の抵抗値の0.96Ωであることから、20.16Ω(R14a+R20b+R15a)となる。室温では中央部と端部のスルーホール182,192間の抵抗値は同じとなる。
【0054】
発熱抵抗体20が定着温度である180℃での抵抗R14b+R15bの値は、0.232Ω、抵抗R20aは20Ωとなる。従って、定着温度である180℃時におけるスルーホール182と192間の抵抗値は、20.23Ω(R14b+R20a+R15b)となる。
【0055】
180℃での配線パターン14,15の抵抗温度係数3000ppm/℃を加味すると、スルーホール182から配線パターン14の端部までの抵抗R14とスルーホール192から配線パターン15の端部までの抵抗R15は、1.392Ωとなる。また、端部の発熱抵抗体の抵抗R20bは、抵抗温度係数が0であることから室温時と同じ19.2Ωである。従って、端部の180℃でのスルーホール182,192間の抵抗は、20.59Ω(R14a+R20b+R15a)となる。
【0056】
この実施形態では、室温時における中央部のスルーホール182と192間の抵抗値が20.16Ωで、端部のスルーホール182と192間の抵抗値が20.16Ωとなる。ヒータ中央部と端部の電流量が同条件となり、立ち上がり時のヒータ全体の温度の均一化が図れる。定着温度になり通紙されない端部の温度が上がった場合は、端部での抵抗値が大きくなることから電流量を抑制することができる。
【0057】
図14、図15は、この発明のセラミックヒータの第6および第7の実施形態について説明するため、それぞれ構成図である。
【0058】
図14の実施形態は、発熱抵抗体20の長さが同じで、発熱抵抗体20の両端に接続される配線パターン14,15の幅を、発熱抵抗体20の幅方向中間部から外側に向かって漸次狭くしたものである。
【0059】
また、図15の実施形態は、図14の実施形態に加え、発熱抵抗体20の長さも幅方向の中間部が外側ら向かって漸次長さを短くしたものである。
【0060】
図14、図15の各実施形態ともに、ヒータの中央部から端部にかけてテーパー状に配線パターン14A,15Bの幅あるいは配線パターン14A,15Aおよび発熱抵抗体20Aの長さを変えて形成することで、セラミック基板11の長手方向で連続的に発熱量を変えることができる。このため、あらゆる被定着物のサイズに対応することが可能となる。
【0061】
図16〜図19は、この発明の第8の実施形態について説明するための、図16(a)は正面図、図16(b)は背面図、図17は図16のIIIa−IIIb線の断面図、図18は図16のIIIc−IIId線の断面図、図19は図16の要部の等価回路である。
【0062】
この実施形態は、配線パターン14の長さ方向の図中中央部の幅L3の範囲両端に、例えば1Ωの副配線パターン16a,16bを、配線パターン15も同じ範囲の両端に、例えば1Ωの副配線パターン16c,16dをそれぞれ電気的に重ね合わせた接続状態で形成されている。さらに、発熱抵抗体20の幅方向の中央部の幅L3の範囲の幅と発熱抵抗体20と同じ長さの副発熱抵抗体16eを電気的に重ね合わせた接続状態で形成されている。
【0063】
ここで、実施例について説明する。発熱抵抗体20の長さを2mm、幅を240mmとし、抵抗が2400Ω/□、抵抗温度係数を0ppm/℃のRuO系抵抗体を用いて形成するとし、配線パターン14,15の長さを240mm、幅を1mmとし、抵抗が25mΩ/□、TCRを3000ppm/℃のAg系配線パターンでそれぞれ形成したとする。副発熱抵抗体16eは長さを2mm、幅を80mmとし、抵抗が34kΩ/□、抵抗温度係数が0ppm/℃のRuO系抵抗体、副配線パターン16a〜16dを長さを80mm、幅を1mmでシート抵抗が4mΩ/□、TCRが3000ppm/℃のAg系配線パターンでそれぞれ形成したとする。
【0064】
この場合、中央部と端部の抵抗値は、何れも60.3Ωである。つまり、中央部のスルーホール182と192間の抵抗値は、60.3Ω(R14b+R20a+R15b)で、端部とスルーホール182と192間の抵抗値は、60.3Ω(R14a+R20b+R15a)である。ただし、R20aは発熱抵抗体20と副発熱抵抗体16eの合成抵抗値、R14bは配線パターン14と副配線パターン16bの合成抵抗値であり、さらにR15bは配線パターン15と副配線パターン16dの合成抵抗値である。
【0065】
これにより、セラミック基板11の長手方向に対する均一な温度分布を実現することが可能となる。
【0066】
ヒータ長に対して短い被定着物を通紙して、ヒータ中央部が200℃、端部が240℃となった場合、中央部の抵抗値は60.5Ω(R14b+R15b=0.5Ω,R20a=60Ω)、端部の抵抗値は63.0Ω(R14a+R15a=7Ω,R20b=56Ω)となるため、約4%の抵抗値差が生じ、中央部と端部の抵抗値の差が大きく、端部への通電の抑制効果を向上させることができる。
【0067】
この発明のセラミックヒータは、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば電極12,13と発熱抵抗体20の幅方向の中間とを説明するためのスルーホールは、配線パターン14,15と同一面上のセラミック基板11にスルーホールに変わる波線パターンを形成しても同様の構成を実現することが可能である。
【0068】
また、配線パターン14,15の抵抗温度係数は、3000ppm/℃を例に挙げたが、3000ppm/℃以上であれば、効果の得られる定着温度での端部の抵抗値を大きくでき電流量を抑制させる効果がある。
【0069】
図20は、この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための上記したセラミックヒータ100をヒータ支持体に取り付けたヒータユニットを加熱装置200に実装した場合の断面図である。図中100については、図1〜図4で説明したセラミックヒータであり、同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0070】
図20において、201は、ポリイミド樹脂等の耐熱性のフィルムをロール状にして循環自在に巻装された円筒状の定着フィルムである。この定着フィルム201は、支持体202の底部にセラミックヒータ100を固着させ、セラミックヒータ100に電力を供給させ、加熱したセラミックヒータ100に形成されたオーバーコート層21に圧接加熱しながら移動させる。
【0071】
203は、その表面に耐熱性弾性材料である、たとえばシリコーンゴム層204が嵌合してある加圧ローラであり、加圧ローラ203の回転軸205と対向してセラミックヒータ100が、定着フィルム201と並置して図示しない基台内に取り付けられている。加圧ローラ203は、定着フィルム201と相互に圧接させることで、発熱抵抗体20と加圧ローラ203とで形成されるニップ部Nを形成するとともに、作動時にはそれぞれを矢印の方向に回転させる。
【0072】
このとき、オーバーコート層20上に配置された定着フィルム201面とシリコーンゴム層204との間で、トナー像To1がまず定着フィルム201を介してセラミックヒータ100により加熱溶融され、少なくともその表面部は融点を大きく上回り完全に軟化して溶融する。この後、加圧ローラ203の用紙排出側では複写用紙Pがセラミックヒータ100から離れ、トナー像To2は自然放熱して再び冷却固化し、定着フィルム201も複写用紙Pから離反される。
【0073】
この実施形態では、非通紙部分での温度上昇を抑制できるセラミックヒータを用いたことで、温度立ち上がりの高速化をさせることができるとともに、非通紙部昇温の抑制を行うことが可能となる。
【0074】
次に、図21を参照しながら、この発明の加熱装置200が搭載された複写機を例に挙げた場合の、この発明の画像形成装置について説明する。図中、加熱装置200の部分は、図20で説明したもの同じであり、同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0075】
図21において、301は複写機300の筐体、302は筐体301の上面に設けられたガラス等の透明部材からなる原稿載置台で、矢印Z方向に往復動作させて原稿P1を走査する。
【0076】
筐体301内の上方向には光照射用のランプと反射鏡とからなる照明装置302が設けられており、この照明装置302により照射された原稿P1からの反射光源が短焦点小径結像素子アレイ303によって感光ドラム304上スリット露光される。なお、この感光ドラム304は矢印方向に回転する。
【0077】
また、305は帯電器で、例えば酸化亜鉛感光層あるいは有機半導体感光層が被覆された感光ドラム304上に一様に帯電を行う。この帯電器305により帯電された感光ドラム304には、結像素子アレイ303によって画像露光が行われた静電画像が形成される。この静電画像は、現像器306による加熱で軟化溶融する樹脂等からなるトナーを用いて顕像化される。
【0078】
カセット307内に収納されている複写用紙Pは、給送ローラ308と感光ドラム304上の画像と同期するタイミングをとって上下方向で圧接して回転される対の搬送ローラ309によって、感光ドラム304上に送り込まれる。そして、転写放電器310によって感光ドラム304上に形成されているトナー像は複写用紙P上に転写される。
【0079】
その後、感光ドラム304上から離れた用紙Pは、搬送ガイド311によって加熱装置200に導かれて加熱定着処理された後に、トレイ312内に排出される。なお、トナー像が転写された後、感光ドラム304上の残留トナーはクリーナ313を用いて除去される。
【0080】
加熱装置200は、複写用紙Pの移動方向と直交する方向に、この複写機300が複写できる最大判用紙の幅(長さ)に合わせた有効長、すなわち最大判用紙の幅(長さ)より長い発熱抵抗体を備えたセラミックヒータ100が、加圧ローラ203の外周に取り付けられたシリコーンゴム層204に加圧された状態で設けられている。
【0081】
そして、セラミックヒータ100と加圧ローラ203との間を送られる用紙P上の未定着トナー像T1は、発熱抵抗体20の熱を受け溶融して複写用紙P面上に文字、英数字、記号、図面等の複写像を現出させる。
【0082】
この実施形態では、立ち上がりの高速化と非通紙部での昇温を抑制するセラミックヒータを備えた加熱装置を用いたことより、立ち上がりが早く十分な熱対策を図ることが可能となる。
【0083】
セラミックヒータの用途としては、複写機等の画像形成装置の定着用に用いたが、これに限らず、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源としても使用できる。
【符号の説明】
【0084】
11 セラミック基板
12,13 電極
14,15,141,142,143,151,152,153,14A,15A 配線パターン
16,17 接続パターン
181,182,191,192 スルーホール
20,201,202,203 発熱抵抗体
21 オーバーコート層
16a〜16d 副配線パターン
16e 副発熱抵抗体
100 セラミックヒータ
200 加熱装置
201 定着フィルム
203 加圧ローラ
300 複写機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺平板状の耐熱性で絶縁性のセラミック基板と、
前記セラミック基板上の短手方向が長さで長手方向が幅の発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体の長手方向両端に沿って形成し、前記発熱抵抗体の両端と接続した第1および第2の配線パターンと、
前記セラミック基板上に形成し電力供給用の、前記第1の配線パターンの前記セラミック基板の長手方向の中央部分と接続した第1の電極および前記第2の配線パターンの前記セラミック基板の長手方向の中央部分と接続した第2の電極と、
前記発熱抵抗体を保護する絶縁性のオーバーコート層と、を具備し、
前記第1および第1の配線パターンは、高い値の抵抗温度係数で形成したことを特徴するセラミックヒータ。
【請求項2】
前記第1および第2の配線パターンの抵抗温度係数は、3000ppm/℃以上であることを特徴する請求項1記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記第1電極および前記発熱抵抗体の一端との接続と前記第2電極および前記発熱抵抗体の他端との接続は、前記発熱抵抗体が形成された前記セラミック基板の裏面側を、スルーホールを介して接続したことを特徴とする請求項1または2記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記第1電極および前記発熱抵抗体の一端との接続と前記第2電極および前記発熱抵抗体の他端との接続は、前記発熱抵抗体が形成された前記セラミック基板と同一面に形成された接続パターンで接続したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記第1および第2の配線パターンは、前記抵抗発熱体の幅方向の中央部に比べ、該中央部の両端の幅を狭くしたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のセラミックヒータ。
【請求項6】
前記発熱抵抗体は、幅方向の中央部に比べ、該中央部の両端の幅を狭くしたことを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項7】
前記第1の配線パターンに形成されたスルーホールと前記第1の配線パターンに形成されたスルーホールとは、互いが離れるシフトした位置に形成したことを特徴とする請求項3記載のセラミックヒータ。
【請求項8】
前記セラミック基板の長手方向に対して、前記第1および第2の配線パターンは、中央部から端部にかけて漸次幅を狭くしたことを特徴とする請求項1〜7の何れに記載のセラミックヒータ。
【請求項9】
前記発熱抵抗体の中央部には、該発熱抵抗体とは抵抗値の異なる副発熱抵抗体を電気的に重ね合わせ、前記第1および第2の配線パターンの中央部両端に、該第1および第2の配線パターンとは抵抗値の異なる副配線パターンを電気的に重ね合わせて形成したことを特徴とする請求項請求項1〜8の何れに記載のセラミックヒータ。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載のセラミックヒータと、
前記セラミック基板に対向配置し、該セラミック基板を圧接するように回転可能に支持された加圧ローラと、
前記セラミック基板と前記加圧ローラとの間に設けられ、前記加圧ローラの回転に伴い前記セラミック基板上を摺動する定着フィルムと、を具備したことを特徴とする加熱装置。
【請求項11】
媒体に形成された静電潜像にトナーを付着させてこのトナーを用紙に転写して所定の画像を形成する形成手段と、
画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記ヒータに圧接しながら通過させることによって、トナーを定着するようにした請求項10記載の加熱装置と、を具備したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−165467(P2010−165467A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4509(P2009−4509)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】