説明

セラミック積層体、セラミック部品、セラミック積層体の製造方法及びセラミック部品の製造方法

【課題】セラミック成形体の加熱圧着時において、導体成形体の位置の変化を抑制して、分布定数回路部品の特性のばらつきを抑える。
【解決手段】第1セラミック積層体10Aは、導体成形体12を有する第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16とが積層されて構成されている。第1セラミック成形体14は、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第1スラリー18を、導体成形体12を被覆するように塗布した後に硬化することによって得られる。熱硬化性樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂を使用することができる。第2セラミック成形体16は、熱可塑性樹脂とセラミック粉末と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリー20を硬化することによって得られる。熱硬化性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に導体が埋設されたセラミック積層体、セラミック部品とこれらの製造方法に関し、例えば高周波特性に優れた受動部品等に適用して好適なセラミック積層体、セラミック部品、セラミック積層体の製造方法及びセラミック部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体基板を用いた受動部品等を作製する場合、セラミック粉末と樹脂を含むセラミック成形体に導体パターンを形成したものを積層一体化した後、焼成するようにしている(特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば、本出願人は特許文献1において、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第1スラリーを電極となる導体成形体を被覆するようにして供給し硬化することで、導体成形体の一部が埋設された第1セラミック成形体と、熱可塑性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第2スラリーを硬化して得られる第2セラミック成形体とを、加熱圧着する方法を提案している。第1セラミック成形体に熱硬化性樹脂前駆体を含ませることで、加熱圧着時における導体成形体の変形を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266831号公報
【特許文献2】特開2002−286680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、セラミック成形体を積層した積層成形体を焼成する場合、層間の焼成収縮率が異なると、焼成後に得られるセラミック部品に変形や積層界面における剥離が生じる懸念がある。特に、特許文献1では、熱硬化性樹脂前駆体を用いた第1セラミック成形体と、熱可塑性樹脂前駆体を用いた第2セラミック成形体との間で焼成収縮率に差異が生じるおそれがあった。
【0006】
このような焼成収縮に起因する問題に関し、特許文献2では、原料粉末に球状カーボン粉末を添加する技術が提案されているが、この技術は、焼成の対象が多孔質セラミックであるため、緻密質なセラミック部品の製造には不向きである。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、セラミック積層体を焼成したときの変形や積層界面における剥離の発生を抑制することができるセラミック積層体、セラミック部品、セラミック積層体の製造方法及びセラミック部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明に係るセラミック積層体は、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第1スラリーを、導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られる第1セラミック成形体と、
熱可塑性樹脂前駆体とセラミック粉末と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリーを硬化して得られる第2セラミック成形体とが積層されて構成されたことを特徴とする。
【0009】
熱可塑性樹脂前駆体をバインダとする第2セラミック成形体に昇華性物質を含ませることにより、熱可塑性樹脂前駆体の添加量を増やすことなく第2セラミック成形体の焼成収縮率を調整することができる。その結果、セラミック積層体全体の焼成収縮率を均一化することが可能となる。これにより、セラミック積層体を焼成して得られるセラミック部品の変形や積層界面における剥離の発生を抑えることができる。また、焼成時の加熱によって昇華性物質が昇華すると、第2セラミック成形体中に空隙が形成されるため、脱脂が容易になる。
【0010】
第1の本発明に係るセラミック積層体において、前記昇華性物質は、テオブロミン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、テオフィリン、イソプロピルアンチピリン、カフェイン類、カンフル類、メントール類、安息香酸類、サリチル酸類、から選ばれる1種以上の物質であることを特徴とする。
【0011】
これらの昇華性物質は、比較的低い昇華点を有していることから、添加物として好適である。
【0012】
第1の本発明に係るセラミック積層体において、前記昇華性物質は、針状の結晶構造を有することが好ましい。針状の昇華性物質であれば、セラミック成形体の焼成を阻害することがなく、セラミック積層体の変形等の防止と緻密化の両方を達成できる。また、昇華性物質が昇華した後の空隙が、脱脂の際にガスの経路となるため、脱脂性も向上する。
【0013】
そして、第1の本発明に係るセラミック積層体を焼成することにより、セラミック部品を得ることができる。
【0014】
次に、第2の本発明に係るセラミック積層体の製造方法は、
導体成形体を形成する導体形成工程と、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第1スラリーを、導体成形体を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
前記第1スラリーを硬化して第1セラミック成形体を作製する第1スラリー硬化工程と、
熱可塑性樹脂前駆体とセラミック粉末と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリーを硬化して第2セラミック成形体を作製する第2スラリー硬化工程と、
前記第1セラミック成形体と前記第2セラミック成形体とを加熱圧着する貼合せ工程とを有することを特徴とする。
【0015】
このような製造方法によれば、昇華性物質を効果的に第2セラミック成形体に含有させることができ、第2セラミック成形体の乾燥時や焼成時における収縮率を調整することが容易になる。
【0016】
第2の本発明に係るセラミック積層体の製造方法において、前記昇華性物質としては、テオブロミン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、テオフィリン、イソプロピルアンチピリン、カフェイン類、カンフル類、メントール類、安息香酸類、サリチル酸類、から選ばれる1種以上の物質を用いることができる。また、前記昇華性物質は、針状の結晶構造を有することが好ましい。
【0017】
そして、第2の本発明に係るセラミック積層体の製造方法を経て得られたセラミック積層体を焼成することによりセラミック部品を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係るセラミック積層体、セラミック部品、セラミック積層体の製造方法及びセラミック部品の製造方法によれば、セラミック積層体を焼成したときの変形や積層界面における剥離の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1セラミック積層体を示す断面図である。
【図2】図2Aは導体ペーストによる導体成形体を示す断面図であり、図2Bは鋳込み型内に導体成形体を設置した状態を示す断面図であり、図2Cは鋳込み型内に第1スラリーを注入して硬化した状態を示す断面図である。
【図3】第2セラミック積層体を示す断面図である。
【図4】図4Aはフィルム上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図4Bは鋳込み型内にフィルムを設置した状態を示す断面図であり、図4Cは鋳込み型内に第1スラリーを注入して硬化した状態を示す断面図である。
【図5】図5Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフィルムごと離型した状態を示す断面図であり、図5Bはフィルムから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図6】図6Aはフィルム上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図6Bは鋳込み型内にフィルムを他のフィルム及びスペーサと共に設置した状態を示す断面図であり、図6Cは鋳込み型内に第1スラリーを注入して硬化した状態を示す断面図である。
【図7】図7Aは鋳込み型からセラミック成形体をフィルム、他のフィルム及びスペーサごと離型した状態を示す断面図であり、図7Bはフィルム、他のフィルム及びスペーサからセラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図8】図8Aは第2スラリーを硬化して第2セラミック成形体とした状態を示す断面図であり、図8Bは第1セラミック成形体と第2セラミック成形体とを積層して第2セラミック積層体とした状態を示す断面図である。
【図9】第2セラミック積層体を焼成してセラミック部品とした状態を示す断面図である。
【図10】第1セラミック成形体を作製する場合に使用される鋳込み型を示す分解斜視図である。
【図11】第1セラミック成形体及びセラミック部品を作製する手順を示す工程ブロック図である。
【図12】図11のステップS6〜ステップS11までの手順を示す説明図である。
【図13】第2セラミック積層体を積層して積層体を構成した状態を示す断面図である。
【図14】図14Aは基体上に導体ペーストをパターン形成、硬化して導体成形体を形成した状態を示す工程図であり、図14Bは導体成形体を被覆するように基体上に第1スラリーを塗布した状態を示す工程図である。
【図15】図15Aは基体上に第1スラリーを塗布する方法の一例を示す斜視図であり、図15Bはその側面図である。
【図16】図16Aは基体上に塗布した第1スラリーを硬化した状態を示す工程図であり、図16Bは基体を剥離して第1セラミック成形体とした状態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るセラミック積層体、セラミック部品、セラミック積層体の製造方法及びセラミック部品の製造方法の実施の形態例を図1〜図16Bを参照しながら説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
先ず、第1の実施の形態に係るセラミック積層体(以下、第1セラミック積層体10Aと記す)は、図1に示すように、内部に導体成形体12が埋め込まれた第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16とが積層されて構成されている。
【0022】
この第1セラミック積層体10Aは、図2Aに示すように、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む導体ペースト13を所定の形状に成形硬化した後に、図2Bに示すように、鋳込み型17内に設置し、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶媒を含む第1のゲルキャスト用スラリー(以下、第1スラリー18と記す)を鋳込み型17内に鋳込んだ後に、硬化することによって得られる(図2C参照)。なお、鋳込み型17は断面で示す構造の一部が開放されていても第1スラリー18の漏洩がなければ問題ない。
【0023】
導体ペースト13に使用される樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0024】
第1スラリー18に使用される熱硬化性樹脂前駆体は、ポリウレタン樹脂前駆体であることが好ましい。
【0025】
導体成形体12は、導体ペースト13を印刷法によってパターン形成した後、硬化することによって得られる。
【0026】
一方、第2セラミック成形体16は、熱可塑性樹脂とセラミック粉末と溶剤と昇華性物質とが混合された第2スラリー20を硬化することによって得られる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂やブチラール樹脂を使用することができる。
【0027】
昇華性物質としては、例えば、テオブロミン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、テオフィリン、イソプロピルアンチピリン、カフェイン類、カンフル類、メントール類、安息香酸類、サリチル酸類から選ばれる1種以上の物質を使用することができる。
【0028】
そして、図1に示すように、第1セラミック成形体14の一主面と、第2セラミック成形体16の一主面とを対向させて、互いに加熱圧着することにより、第1セラミック積層体10Aが完成する。
【0029】
なお、ポリオレフィン樹脂やブチラール樹脂といった熱可塑性樹脂と、セラミック粉末と、可塑剤と、溶剤とが混合された接着ペーストを、第1セラミック成形体14の接着面、第2セラミック成形体16の接着面のいずれか一方あるいは両方に塗布、乾燥することにより、第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16の加熱圧着時の接着性が良好とすることができるため好ましい。
【0030】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係るセラミック積層体(以下、第2セラミック積層体10Bと記す)は、図3に示すように、上述した第1セラミック積層体10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1セラミック成形体14の一主面に導体成形体12の一部が露出している点で異なる。そして、第1セラミック成形体14のうち、導体成形体12が露出した面と、第2セラミック成形体16の一主面とを対向させて、互いに加熱圧着することにより、第2セラミック積層体10Bが構成されている。
【0031】
そして、第2セラミック積層体10Bにおける第1セラミック成形体14は、例えば図4Aに示すように、フィルム21上に導体ペースト13を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム21上に導体成形体12を形成した後に、図3Bに示すように、フィルム21を鋳込み型17内に設置し、第1スラリー18を鋳込み型17内に鋳込んだ後に、硬化することによって得られる(図4C参照)。この場合、図5Aに示すように、フィルム21上に第1セラミック成形体14(導体成形体12が埋設されている)が設置された状態になっているため、第1セラミック成形体14をフィルム21から離型することによって、図5Bに示すように、導体成形体12が埋設された第1セラミック成形体14が得られる。
【0032】
なお、第1の実施の形態と同様、ポリオレフィン樹脂やブチラール樹脂といった熱可塑性樹脂と、セラミック粉末と、可塑剤と、溶剤とが混合された接着ペーストを、第1セラミック成形体14の接着面、第2セラミック成形体16の接着面のいずれか一方あるいは両方に塗布、乾燥することにより、第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16の加熱圧着時の接着性が良好とすることができるため好ましい。
【0033】
第1セラミック成形体14の鋳込み型17からの離型性を良好にするために、図6A〜図7Bに示すようにしてもよい。すなわち、図6Aに示すように、フィルム21上に導体ペースト13を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム21上に導体成形体12を形成した後に、図6Bに示すように、フィルム21を鋳込み型17内に設置する際に、フィルム21と他のフィルム22とを導体ペースト13が形成された面と他のフィルム22とを対向させ、さらに、フィルム21と他のフィルム22の間にスペーサ24を挟んで設置する。そして、スペーサ24にて形成される空間26内に第1スラリー18を流し込んだ後に、硬化することによって第1セラミック成形体14を得るようにしてもよい(図6C参照)。この場合、図7Aに示すように、第1セラミック成形体14がフィルム21、他のフィルム22及びスペーサ24にて囲まれた状態となっているため、第1セラミック成形体14が鋳込み型17に不要に付着することなく、簡単に鋳込み型17から離型することができる。
【0034】
さらに、導体成形体12が形成されるフィルム21の表面に塗布された剥離剤の剥離力と、他のフィルム22の表面に塗布された剥離剤の剥離力とを異なるようにすれば、必ずどちらかのフィルム21(又は22)が剥がれ易くなり、フィルム21(又は22)からの離型も容易になる。図7Bに、フィルム21、他のフィルム22及びスペーサ24から第1セラミック成形体14を離型した状態を示す。
【0035】
一方、第2セラミック成形体16は、図8Aに示すように、熱可塑性樹脂とセラミック粉末と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリー20を、ドクターブレード、ダイコーター、押出し成形等の連続成形機を使用して形成される。これらの連続成形機は、ブレード、ダイ、金型のギャップを高精度に制御することによって、厚みばらつきが少なく均一な厚みの第2セラミック成形体16を高精度に成形することが可能となる。
【0036】
そして、図8Bに示すように、第1セラミック成形体14のうち、導体成形体12が露出した面と、第2セラミック成形体16の一主面とを対向させて、互いに加熱圧着することにより、第2セラミック積層体10Bが完成する。
【0037】
この場合、加熱しても軟化し難い熱硬化性樹脂を含む第1セラミック成形体14中に導体成形体12を埋設しているため、加熱圧着時には第2セラミック成形体16のみの形状が変化し、第1セラミック成形体14に埋設された導体成形体12の位置はほとんど変化しない。
【0038】
その後、図9に示すように、第2セラミック積層体10Bを焼成することによって、導体成形体12が埋め込まれたセラミック焼成体100を有する本実施の形態に係るセラミック部品102が完成する。
【0039】
このように、第2セラミック成形体16に昇華性物質を添加することで、第2セラミック成形体16と、第1セラミック成形体14とのセラミック粉末充填率を均一化することができる。これにより、第1セラミック積層体10A及び第2セラミック積層体10Bの均一な焼成収縮が可能となり、セラミック部品の変形や、積層界面における剥離の発生を解消することができる。
【0040】
さらに、第1セラミック積層体10A及び第2セラミック積層体10Bは、導体成形体12を埋設した熱硬化性樹脂を利用した第1セラミック成形体14と、導体成形体12を埋設しない熱可塑性樹脂を利用した第2セラミック成形体16とを組み合わせることで、比較的厚い導体成形体12を埋設し、且つ、各部の精密な厚み制御を可能にした第1セラミック積層体10A及び第2セラミック積層体10Bを得ることができる。しかも、第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16との加熱圧着時において、導体成形体12の位置が変化することを抑制することができ、分布定数回路部品の特性の変化(特性のばらつき)を回避することが可能となる。
【0041】
次に、上述した第2セラミック積層体10B及びセラミック部品並びに第2セラミック積層体10Bの製造方法及びセラミック部品の製造方法の実施例について図10〜図12を参照しながら説明する。
【0042】
この実施例では、図10に示す鋳込み型17が使用される。
【0043】
鋳込み型17は、一度に複数枚(例えば3枚)の第1セラミック成形体14を作製することができるようになっている。
【0044】
鋳込み型17は、図10に示すように、1つの基台30と、基台30上に載置される複数枚の板部材(第1板部材32a〜第4板部材32d)と、第4板部材32d上に載置される上板34とを有する。
【0045】
さらに、基台30は、その上面のうち、第1側面に近接する部分と第2側面(第1側面と対向する側面)に近接する部分にそれぞれ数本(例えば3本)の棒部材36が設けられている。各棒部材36は、軸方向が基台30の上面の法線方向となるように基台30の上面に設けられている。
【0046】
第1板部材32a〜第4板部材32d並びに上板34は、基台30の棒部材36と対応する部分にそれぞれ位置決め用の貫通孔(以下、位置決め孔38と記す)が設けられ、第1板部材32a〜第4板部材32d並びに上板34を基台30上に順番に載置した際に、各位置決め孔38を通じて基台30の棒部材36が挿通されるようになっている。
【0047】
そして、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間に、第1フィルム21と、スペーサ24と、第2フィルム22の積層体が挿入される。第1フィルム21には、その上面に導体ペースト13によって複数の電極パターン40が形成されている。
【0048】
これら第1フィルム21、第2フィルム22及びスペーサ24は、鋳込み型17内で作製された第1セラミック成形体14が鋳込み型17の第1板部材32a〜第4板部材32d等に不要に付着するのを防止するためのものであり、特に、第1フィルム21は、作製される第1セラミック成形体14の下面の形状を決定づけ、第2フィルム22は、作製される第1セラミック成形体14の上面の形状を決定づけるようになっている。スペーサ24は、開口部を有するほぼ枠状に形成され、第1セラミック成形体14の面積と高さを決定づける。図10の例では、第1フィルム21上に形成された電極パターン40の群を三方から囲むようにほぼ枠状に形成されている。このスペーサ24は、例えば第1フィルム21や第2フィルム22と同様の材質で構成してもよい。また、これら第1フィルム21、第2フィルム22及びスペーサ24は、各表面に、離型剤がコートされており、作製された第1セラミック成形体14が容易に離れるようになっている。
【0049】
これら第1フィルム21、第2フィルム22及びスペーサ24には、基台30の棒部材36と対応する部分にそれぞれ位置決め孔42、46及び44が設けられている。
【0050】
さらに、上板34には、第1スラリー18を注入するためのU字状の切欠き48が形成され、第2板部材32b〜第4板部材32dにも、それぞれU字状の切欠き48に対応した部分に、第1スラリー18を注入するための貫通孔(以下、注入孔50と記す)が形成されている。
【0051】
第1フィルム21、第2フィルム22及びスペーサ24にも、第2板部材32b〜第4板部材32dの注入孔50に対応した部分にそれぞれ切欠き52や注入孔(図示せず)が形成されている。
【0052】
従って、鋳込み型17を組み立てる場合は、例えば以下のようにして行われる。
【0053】
先ず、基台30の上面に第1板部材32aを載置する。このとき、基台30の棒部材36を第1板部材32aの位置決め孔38にそれぞれ挿通させて載置する。その後、第1板部材32a上に第1フィルム21、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置する。このとき、第1フィルム21、スペーサ24、第2フィルム22の各位置決め孔42、44及び46にそれぞれ基台30の棒部材36を挿通させて載置する。以下、同様に、第2板部材32bを載置し、該第2板部材32b上に、第1フィルム21、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置し、さらに、第3板部材32cを載置し、該第3板部材32c上に、第1フィルム21、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置し、さらに、第4板部材32dを載置し、そして、最後に上板34を載置する。これによって、鋳込み型17が完成する。
【0054】
鋳込み型17内には、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間に、それぞれ第1フィルム21、スペーサ24及び第2フィルム22によって囲まれた中空部が形成される。
【0055】
次に、鋳込み型17を使用して第1セラミック積層体10A並びにセラミック部品を作製する方法について図11及び図12を参照しながら説明する。
【0056】
先ず、図11のステップS1において、第1フィルム21上に導体ペースト13を印刷して複数の電極パターン40を形成する。
【0057】
具体的には、第1フィルム21は、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)である。導体ペースト13の加熱硬化時における収縮、歪を抑制するために、予め第1フィルム21に温度150℃で10分以上のアニール処理を施す。
【0058】
その後、鋳込み型17への積層時の位置決めを行えるように、第1フィルム21に位置決め孔42を形成する。次いで、第1フィルム21の上面のうち、位置決め孔42を基準にした所定領域に導体ペースト13を印刷して、複数の電極パターン40を形成する。この導体ペースト13は、例えばレゾール型フェノール樹脂を含有した熱硬化型の銀(Ag)ペーストである。導体ペースト13中のAg粉末は、誘電体との同時焼成の際の焼成収縮温度特性を近づけるため、粒度調整された粉末を使用している。
【0059】
次に、図11のステップS2において、第1フィルム21上に形成された電極パターン40を加熱硬化する。すなわち、熱硬化型のAgペーストを硬化させるために、120℃×1時間の熱処理を施す。
【0060】
その後、図11のステップS3において、鋳込み型17を組み立てて、電極パターン40が形成された第1フィルム21を第2フィルム22及びスペーサ24と共に鋳込み型17内に設置する。図10の鋳込み型17では、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間にそれぞれ第1フィルム21が設置される。もちろん、スペーサ24及び第2フィルム22も第1フィルム21上に積層されて設置される。
【0061】
一方、図11のステップS4及びステップS5において、鋳込み型17に注入される第1スラリー18を調製する。
【0062】
先ず、ステップS4において、セラミックスラリーを調製する。セラミックスラリーは、酸化チタン、酸化バリウム系粉末と焼結助剤としてのボロシリケートガラスとを混合したセラミック粉末を有する。すなわち、セラミックスラリーは、上述のセラミック粉末を100重量部と、脂肪族二塩基酸エステルを15〜40重量部、トリアセチンを0.5〜10重量部及びポリカルボン酸共重合体を0.5〜10重量部からなる有機分散媒(ポリカルボン酸は有機分散剤として作用)との混合物からなる。
【0063】
その後、ステップS5において、上述のセラミックスラリーに、ゲル化剤としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの変性物1〜10重量部とエチレングリコール0.05〜2.7重量部、反応触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールを0.03〜0.3重量部添加した後、攪拌して、第1スラリー18、すなわち、ゲルキャスト用スラリーを調製する。
【0064】
次に、ステップS6において、鋳込み型17内に第1スラリー18を注入(注型)する。具体的には、鋳込み型17における上板34のU字状の切欠き48から露出する第4板部材32dの注入孔50(図10、図12参照)を介して第1スラリー18を注入する。この注入によって、鋳込み型17内の複数の中空部に第1スラリー18がそれぞれ充填される。第1スラリー18は、ゲルキャスト用スラリーであることから、中空部に充填された状態でそのまま硬化される。これによって、鋳込み型17内に例えば3つの第1セラミック成形体14が作製されることになる。
【0065】
その後、ステップS7において、鋳込み型17を分解し、第1フィルム21、スペーサ24及び第2フィルム22から第1セラミック成形体14を剥がす。これによって、第1セラミック成形体14、すなわち、導体成形体12を埋設した第1セラミック成形体14(第1セラミックテープ14とも記す)が完成する(図12参照)。
【0066】
一方、ステップS8において、例えば図8Aに示すように、セラミック粉末と熱可塑性樹脂と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリー20を、ドクターブレード、ダイコーター、押出し成形等の連続成形機を使用して成形することにより、第2セラミック成形体16(第2セラミックテープ16とも記す)を形成する。第2スラリー20は、セラミック粉末として、第1スラリー18と同種のものを用い、このセラミック粉末100重量部と、熱可塑性樹脂としてブチラール樹脂5〜20重量部、昇華性物質として針状の結晶構造を有するテオブロミン1〜5重量部との混合物からなる。
【0067】
なお、加熱圧着前に第1セラミックテープ14、第2セラミックテープ16の接着面のいずれか一方或いは両方に、前記セラミックスラリーで使用したものと同種のセラミック粉末100重量部に対し、ポリオレフィン樹脂あるいはブチラール樹脂10〜150重量部、DOP(フタル酸ジオクチル)、DBP(フタル酸ジブチル)、DINP(フタル酸ジイソノニル)等の可塑剤0〜50重量部、及びブチルカルビトールアセテートや2エチルヘキサノールといった溶剤を適量混合した接着ペーストを塗布、乾燥することにより第1セラミックテープ14と第2セラミックテープ16の接着性が良好となるため好ましい。
【0068】
次に、図11のステップS9において、図12に示すように、第1セラミックテープ14と第2セラミックテープ16とがそれぞれ交互に重なるようにして、複数枚の第1セラミックテープ14及び第2セラミックテープ16を積層して、図13に示すように、積層体60を作製する。このとき、第1セラミックテープ14の反応性官能基が完全に反応しない状態(室温において、注型後、1時間〜48時間経過後)で、5〜100kgf/cmの圧力で加圧積層する。加圧力は、第1セラミックテープ14の強度と許容される積層ずれに応じて適宜選択される。
【0069】
積層時の加圧力が小さい場合は、積層ずれは小さいものの、積層時の接着不良による焼成体のデラミネーションが発生し易くなる一方、積層時の加圧力が大きい場合は、上述のデラミネーションの発生を抑制できるものの、第1セラミックテープ14の積層圧力による変形及び破損が発生し易くなる。しかし、上述した加圧力の範囲であれば、積層ずれとデラミネーションを抑制することができ、好ましい。また、必要に応じて、上記5〜100kgf/cmの加圧に引き続き、50〜400kgf/cmの加圧力で一体性を高めてもよい。
【0070】
また、複数の第1セラミックテープ14の間にそれぞれ熱可塑性樹脂を含む第2セラミックテープ16が存在していることから、上述の加熱圧着によって、第2セラミックテープが軟化し、テープ同士の凹凸が吸収され、密着性が向上する。このとき、第1セラミックテープ14は熱硬化性樹脂を含んでいるため、複数の第1セラミック成形体14及び第2セラミック成形体16の加熱圧着時において、導体成形体の位置の変化を抑制することができる。なお、より短時間で反応硬化させるために、60℃〜80℃に加温しながら積層することが好ましい。
【0071】
次に、図11のステップS10において、積層体60を乾燥した後、ステップS11において、積層体を複数のチップ62に分割する(図12参照)。
【0072】
その後、ステップS12において、各チップ62の表面や側面に端子電極を印刷により形成する。
【0073】
そして、ステップS13において、各チップ62を焼成することで、実施例に係るセラミック部品が完成する。機械的強度、熱伝導性等の観点から、チップ62を十分に緻密質とすることが好ましい。
【0074】
図1に示すように、熱可塑性樹脂を含む第2セラミック成形体16を、熱硬化性樹脂を含む第1セラミック成形体14に積層することで、第1セラミック成形体14のみを積層した場合よりも接着性を改善することができる。その結果、例えば図13に示すように、第2セラミック積層体10Bを複数積層して1つの積層体60を構成する場合に、各第2セラミック積層体10Bの接着性が良好となることから、製造過程において第2セラミック積層体10Bが剥離するという不都合を回避でき、複数の第2セラミック積層体10Bの積層体60によるセラミック部品の歩留まりを向上させることができる。
【0075】
さらに、第2セラミック成形体16に昇華性物質を含ませることで、第2セラミック成形体16と、第1セラミック成形体14とのセラミック粉末充填率を均一化することができる。これにより、第2セラミック積層体10Bの均一な焼成収縮が可能となり、チップ62を焼成して得られるセラミック部品の変形や、積層界面における剥離の発生を解消することができる。
【0076】
上述の例では、導体ペースト13を所定の形状に成形硬化した後に、鋳込み型17内に設置し、その後、第1スラリー18を鋳込み型17内に鋳込んだ後に、硬化することによって第1セラミック成形体14を得るようにしたが、その他、第1スラリー18を、導体成形体12を被覆するように塗布した後に硬化することによって得るようにしてもよい。
【0077】
具体的には、先ず、図14Aに示すように、フィルム等の基体70の上面に剥離剤(図示せず)を塗布し、その後、基体70の上面に導体ペースト13を例えば印刷法によってパターン形成し、さらに、このパターン形成された導体ペースト13を加熱硬化して、基体70上に導体成形体12を形成する。
【0078】
その後、図14Bに示すように、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第1スラリー18を、導体成形体12を被覆するように基体70上に塗布する。塗布方法としては、ディスペンサー法や、図15A及び図15Bに示す方法やスピンコート法等がある。図15A及び図15Bに示す方法は、一対のガイド板72a及び72bの間に基体70(導体成形体12が形成された基体70)を設置し、その後、第1スラリー18を、導体成形体12を被覆するように基体70上に塗布した後、ブレード状の治具74を一対のガイド板72a及び72bの上面を滑らせて(摺り切って)、余分な第1スラリー18を取り除く方法である。一対のガイド板72a及び72bの高さを調整することによって、第1スラリー18の厚みを容易に調整することができる。
【0079】
その後、図16Aに示すように、基体70上に塗布された第1スラリー18を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させる。
【0080】
その後、図16Bに示すように、基体70を剥離、除去することによって第1セラミック成形体14が完成する。
【0081】
その後は、上述したように、熱可塑性樹脂前駆体とセラミック粉末と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリー20を使用して第2セラミック成形体16を作製し、第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16とを互いに加熱圧着することにより、第2セラミック積層体10Bが完成する。
【0082】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0083】
[導体ペースト13]
導体ペースト13としては、バインダとしてエポキシ、フェノール等の未硬化物を含有するものが好ましいが、とりわけ、レゾール型フェノール樹脂を含有するものが好ましい。また、金属粉末については、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Rhといった金属の単体又は合金、金属間化合物を用いることができるが、同時焼成されるセラミック部材に要求される特性、すなわち、焼成時の酸素分圧、温度、焼成収縮温度特性を考慮し、適宜選択される。焼成収縮温度特性については金属粉末組成だけではなく、金属粉末の粒径、比表面積、凝集度によっても適宜制御される。導体ペースト13中のバインダ分量については、例えば、Ag粉末の場合、金属粉末重量の1%〜10%の範囲を使用するが、セラミック部材の焼成収縮率、スクリーン印刷時の印刷性を考慮し、3〜6%の範囲が好ましい。
【0084】
導体ペースト13は、上述したように、印刷後、加熱硬化させるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えばレゾール型フェノール樹脂の場合、120℃で10分〜60分硬化させる。
【0085】
導体ペースト13による電極パターン40を硬化した後、硬化した電極パターン40が形成されている第1フィルム21(この場合、PETフィルム)は、鋳込み型17に設置される。PETフィルムを鋳込み型17に設置する際、PETフィルムのうねりを抑制するため、所望の平行度、平坦度を有する型板(第1板部材32a〜第3板部材32c)に真空吸着、糊付け、静電吸着等の手段により吸着させる。
【0086】
[鋳込み型17(金型)]
型板(第1板部材32a〜第3板部材32c)は、吸着手段に応じた板部材を使用する。例えば真空吸着の場合は、金属、セラミック、樹脂等の材質は関係なく、多孔質板や吸着用孔を多数あけた板を使用し、糊付けの場合は、糊との反応性がなく、後に溶剤等で糊を拭き取る際にも変質を起こさない材質の板を使用し、静電吸着の場合は、PETと静電吸着し易い材料でできた板を使用することが好ましい。
【0087】
鋳込み型17は、内部に第1スラリー18が流通する経路を有し、鋳込み硬化後の第1スラリー18が所望の厚みの板状となるように、型板間に、電極パターン40が形成された第1フィルム21、第2フィルム22(電極パターンが形成されていても、されていなくてもよい)及びスペーサ24を設置して、第1フィルム21及び第2フィルム22を平行に対向した形態を有し、且つ、第1フィルム21と第2フィルム22との間に適当な間隔が設定されるようにすることが好ましい。
【0088】
第1フィルム21、第2フィルム22、スペーサ24は、PETフィルム、離型剤をコートした金属板・セラミック板、あるいはテフロン(登録商標)樹脂板等を用いることができる。
【0089】
そして、この鋳込み型17に、反応硬化する樹脂を含有する第1スラリー18を流し込み、硬化させる。
【0090】
[第1スラリー18]
第1スラリー18は、用途に応じ、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含んだセラミックス粉末といった無機成分と、例えば分散剤とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応が誘起される有機化合物とからなる。
【0091】
この第1スラリー18は、無機成分粉末の他、有機分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。有機分散媒は反応性官能基を有していてよく、あるいは有していなくともよい。しかし、この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
【0092】
反応性官能基を有する有機分散媒としては、以下を例示することができる。
【0093】
すなわち、反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、第1スラリー18を固化可能な液状物質であること、及び鋳込みが容易な高流動性の第1スラリー18を形成できる液状物質であることの2つを満足する必要がある。
【0094】
ゲル化剤と化学結合し、第1スラリー18を固化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より十分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール、多塩基酸が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリグリセリンのように多数あってもよい。
【0095】
一方、注型が容易な高流動性の第1スラリー18を形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に、20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえ第1スラリー18を固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル、多価アルコールの酸エステル等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、第1スラリー18を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0096】
第1スラリー18に含有されていてもよい反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。また、非反応性分散媒としては、炭化水素、エーテル、トルエン等を例示できる。
【0097】
[ゲル化剤]
第1スラリー18中に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、以下を例示することができる。
【0098】
すなわち、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることにより第1スラリー18を固化することが好ましい。
【0099】
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、第1スラリー18を固化可能な物質である。従って、ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0100】
但し、反応性ゲル化剤は、第1スラリー18の流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0101】
一般に、平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本実施例では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。なお、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0102】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0103】
イソシアナート類は、ジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前に第1スラリー18が固化してしまう場合がある。
【0104】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応により第1スラリー18を固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応により第1スラリー18を固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、第1スラリー18を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0105】
イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0106】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0107】
なお、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0108】
第1スラリー18には、上述した成分以外に、消泡剤、界面活性剤、焼結助剤、触媒、可塑剤、特性向上剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0109】
上述した第1スラリー18は、以下のように作製することができる。
(1)分散媒に無機物粉末を分散して第1スラリー18とした後、ゲル化剤を添加する。
(2)分散媒に無機物粉末及びゲル化剤を同時に添加して分散することにより第1スラリー18を製造する。
【0110】
注型時及び塗布時の作業性を考慮すると、20℃における第1スラリー18の粘度は3000cps以下であることが好ましく、2000cps以下であることがより好ましい。第1スラリー18の粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉末の種類、分散剤の量、第1スラリー18の濃度(第1スラリー18全体の体積に対するセラミック粉末体積%)によっても調整することができる。
【0111】
但し、第1スラリー18の濃度は、通常は、25〜75体積%のものが好ましく、焼結性や脱脂性を考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。有機成分として分散媒、分散剤、反応硬化物、反応触媒を有する。このうち、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により固化する。
【0112】
本実施の形態では、第1セラミック成形体14を製造する際に、第1スラリー18に熱硬化性樹脂を含ませて、乾燥時に熱硬化性樹脂を硬化させて三次元網目構造を生成させ、収縮を小さくすることで導体成形体12の変形を抑えている。
【0113】
この場合、第1スラリー18に使用する溶剤に、熱硬化性樹脂が硬化する温度での蒸気圧が小さいものを選定し、熱硬化時の溶剤乾燥による収縮を小さくすることが望ましい。室温で硬化する樹脂を用いた場合は、特に作業や装置が簡単になる。
【0114】
ポリウレタン樹脂は、硬化後の弾性を制御し易く、柔軟な成形体も可能となる等の利点を有する。後工程での取り扱いを考えると、あまり硬い成形体は適さない場合があり、熱硬化性樹脂は三次元網目構造をとるので一般に硬いが、ポリウレタン樹脂は、柔軟性のある成形体も可能で、特にテープ状の成形体は、柔軟性が要求される場合が多いため望ましい。また、スラリー性状の制御のため、熱可塑性樹脂を含ませてもよい。
【0115】
本実施の形態においては、導体ペースト13に熱硬化性樹脂を含ませているため、耐溶剤性が向上し、パターン形状の崩れは生じない。また、熱硬化性樹脂は、硬化後は三次元の網目構造となり、元に戻らないため、硬化後は、溶剤への再溶解性がなくなり、一般に、熱可塑性樹脂よりも耐溶剤性が高い。
【0116】
熱硬化性樹脂の中では、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が硬化前プレポリマーの分子量の制御ができ、ペースト性状のコントロールが可能なため、好適である。なお、熱可塑性樹脂をペースト性状の制御のために、熱硬化性樹脂と一緒に含めるようにしてもよい。
【0117】
特に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂は、硬化剤が必要なく、加熱するだけで硬化するタイプがあり、導体ペースト13の効率的な使用に適する。つまり、硬化剤の添加が必要な他の熱硬化性樹脂は、導体ペースト13を印刷する前に、硬化剤を混合する必要があるが、混合すると保存がきかない。従って、印刷後に残った導体ペースト13を回収して保存する必要のある印刷法によって導体ペースト13を印刷する場合は、硬化剤を混合する必要がない熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型フェノール樹脂が好適である。
【0118】
本実施の形態においては、熱硬化性樹脂をバインダに使用して導体成形体12を埋設した第1セラミック積層体10A及び第2セラミック積層体10Bを得ることにより、焼成ばらつきを小さくすることができる。
【0119】
[第2スラリー20]
第2スラリー20に含まれるセラミック粉末は、用途に応じて、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含む。
【0120】
第2スラリー20に含まれる熱可塑性樹脂は、例えばポリオレフィン樹脂やブチラール樹脂を使用することができる。もちろん、ポリオレフィン樹脂やブチラール樹脂中に、安定剤、可塑剤等の少量の改質成分を含んでもよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が挙げられ、ブチラール樹脂としてはポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。第2スラリー20には、その他、昇華性物質、有機分散媒、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。
【0121】
昇華性物質としては、例えば、テオブロミン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、テオフィリン、イソプロピルアンチピリン、カフェイン類、カンフル類、メントール類、安息香酸類、サリチル酸類を挙げることができる。昇華性物質は、針状の結晶構造を有していることが好ましく、特にテオブロミン、カフェインを用いることが好ましい。
【0122】
熱可塑性樹脂と昇華性物質との体積比(昇華性物質/熱可塑性樹脂)は、第1セラミック成形体14との接着性や第2セラミック成形体16自体の成形性を考慮すると、0.1〜0.4、より好ましくは0.2〜0.3の範囲とすることが好ましい。
【0123】
また、第2スラリー20に含有されてよい有機分散媒としては、第1スラリー18において具体的に例示したものが挙げられる。この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
【0124】
第2スラリー20の粘度は、ドクターブレード、ダイコーター、押し出し成形等の連続成形機での作業性を考慮すると、20℃における第2スラリー20の粘度は1500cps以下であることが好ましく、1000cps以下であることがより好ましい。第2スラリー20の粘度は、セラミック粉末の種類、熱可塑性樹脂前駆体、昇華性物質、分散剤の種類や量、第2スラリー20の濃度(第2スラリー20全体の体積に対するセラミック粉末体積%)によっても調整することができる。
【0125】
第2スラリー20の濃度は、通常は、30〜50体積%が好ましく、第1セラミック成形体14との接着性や乾燥・脱脂の容易性を考慮すると、35〜45体積%がさらに好ましい。
【0126】
ここで、第2セラミック成形体16において昇華性物質を含んでいない従来のセラミック積層体の問題点と、本実施の形態に係る第1セラミック積層体10A及び第2セラミック積層体10Bによる問題解決について説明する。
【0127】
従来においては、セラミック積層体を焼成して得られるセラミック部品に変形や、積層界面における剥離が生じる場合があった。これは、セラミック積層体を構成する第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16のそれぞれのセラミック粉末の充填率が異なるためと考えられる。
【0128】
すなわち、第1セラミック成形体14では、熱硬化性樹脂が、収縮を伴わずに硬化し、その後乾燥しても、熱硬化性樹脂による骨格が形成されているために、乾燥収縮は極めて小さい。換言すれば、第1セラミック成形体14におけるセラミック粉末の充填率は第1スラリー18からほとんど変化しない。一方、第2セラミック成形体16における硬化は、乾燥収縮を伴うものであるため、乾燥硬化の過程で、セラミック粉末の充填率が高まる。
【0129】
そのため、充填率の低い第1セラミック成形体14は焼成収縮率が大きくなり、充填率の大きい第2セラミック成形体16は焼成収縮率が小さくなる。その結果、第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16とが積層されて構成されたセラミック積層体の均一な焼成収縮が妨げられ、セラミック部品が変形したり、積層界面で剥離したりといった問題が生じる。
【0130】
このセラミック部品の変形や積層界面における剥離への対策として、第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16とのセラミック粉末の充填率を均一化することが考えられる。この場合、第2セラミック成形体16における熱可塑性樹脂前駆体の量を相対的に増やすことによってセラミック粉末の充填率を下げようとすると、焼成時の加熱により熱可塑性樹脂が大量に溶融して、セラミック積層体が著しく変形することがある。また、熱可塑性樹脂が溶融して凝縮し、比表面積が小さくなるために酸素との接触が不足し、脱脂不良を引き起こすことがある。
【0131】
一方、本実施の形態では、第2セラミック成形体16における熱可塑性樹脂前駆体の量を増やすのではなく、昇華性物質を添加することで、第2セラミック成形体16と、第1セラミック成形体14とのセラミック粉末充填率を均一化している。これにより、第1セラミック成形体14と第2セラミック成形体16とが積層されて構成された第1セラミック積層体10A及び第2セラミック積層体10Bの均一な焼成収縮が可能となり、セラミック部品の変形や、積層界面における剥離の発生を解消することができる。
【0132】
この場合、昇華性物質が、焼成時の加熱によって昇華すると、第2セラミック成形体16中に空隙が形成されるため、脱脂が容易になる。また、添加する昇華性物質が針状の結晶構造であれば、昇華した後の空隙が、脱脂の際にガスの経路となり、より一層脱脂性が向上する。従って、昇華性物質は、熱可塑性樹脂の脱脂温度よりも低温で昇華することが好ましい。
【0133】
さらに、昇華性物質が針状であれば、昇華によって形成される空隙が焼成を阻害せず、緻密なセラミック部品を得ることができる。
【0134】
しかも、昇華性物質の添加により、相対的に熱可塑性樹脂前駆体の添加量を減らすことができるため、焼成時に加熱したときの熱可塑性樹脂の溶融、流動による変形を抑えることができるとともに、熱可塑性樹脂の流動による凝集も抑えられて脱脂が容易になる。
【0135】
なお、本発明に係るセラミック積層体、セラミック部品、セラミック積層体の製造方法及びセラミック部品の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0136】
10A…第1セラミック積層体
10B…第2セラミック積層体
12…導体成形体
14…第1セラミック成形体
16…第2セラミック成形体
18…第1スラリー
20…第2スラリー
100…セラミック焼成体
102…セラミック部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第1スラリーを、導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られる第1セラミック成形体と、
熱可塑性樹脂前駆体とセラミック粉末と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリーを硬化して得られる第2セラミック成形体とが積層されて構成されたセラミック積層体。
【請求項2】
請求項1記載のセラミック積層体において、
前記昇華性物質は、テオブロミン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、テオフィリン、イソプロピルアンチピリン、カフェイン類、カンフル類、メントール類、安息香酸類、サリチル酸類、から選ばれる1種以上の物質であることを特徴とするセラミック積層体。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセラミック積層体において、
前記昇華性物質は、針状の結晶構造を有することを特徴とするセラミック積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック積層体を焼成してなるセラミック部品。
【請求項5】
導体成形体を形成する導体形成工程と、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合された第1スラリーを、導体成形体を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
前記第1スラリーを硬化して第1セラミック成形体を作製する第1スラリー硬化工程と、
熱可塑性樹脂前駆体とセラミック粉末と昇華性物質と溶剤とが混合された第2スラリーを硬化して第2セラミック成形体を作製する第2スラリー硬化工程と、
前記第1セラミック成形体と前記第2セラミック成形体とを加熱圧着する貼合せ工程とを有するセラミック積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のセラミック積層体の製造方法において、
前記昇華性物質は、テオブロミン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、テオフィリン、イソプロピルアンチピリン、カフェイン類、カンフル類、メントール類、安息香酸類、サリチル酸類、から選ばれる1種以上の物質であることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載のセラミック積層体の製造方法において、
前記昇華性物質は、針状の結晶構造を有することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のセラミック積層体を焼成するセラミック部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−232511(P2012−232511A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103050(P2011−103050)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】