説明

セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、並びに、それを用いた位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置

【課題】光学異方性と吸湿率を制御しており、偏光板に直接貼り合わせることが可能なセルロースアシレートフィルム等を提供する。
【解決手段】 X線回折強度が下記式(I)〜(III)の全てを満たし、且つ2θ2における半値幅が3°より大きく7°以下である、セルロースアシレートフィルム。
式(I): 0.40≦Ic2/(Iam2+Ic2)≦0.75
式(II): Iam2=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ2−2θ1)}
式(III): Ic2=I2−Iam2
[式中、2θ1は、2θが4〜5°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ2は、2θが5〜10°の間で強度が最大となる2θを表し、2θ3は、2θが14〜16°の間で強度が最小となる2θを表す。但し、θはブラッグ角である。また、I1は2θ1における回折強度を表し、I2は2θ2における回折強度を表し、I3は2θ3における回折強度を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性が小さく、偏光膜に直接貼り合わせることが可能なセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法に関し、また、該セルロースアシレートフィルムを用いた位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀写真感光材料、位相差フィルム、偏光板および画像表示装置には、セルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマービニルポリマー、および、ポリイミド等に代表されるポリマーフィルムが用いられている。これらのポリマーからは、平面性や均一性の点でより優れたフィルムを製造することができるため、光学用途のフィルムとして広く採用されている。
【0003】
これらのうち、適切な透湿度を有するセルロースアシレートフィルムは、最も一般的なポリビニルアルコール(PVA)/ヨウ素からなる偏光膜とオンラインで直接貼り合わせることが可能である。そのため、特にセルロースアセテートは偏光板の保護フィルムとして広く採用されている。
【0004】
一方、セルロースアシレートフィルムを、位相差フィルム、位相差フィルムの支持体、および、偏光板の保護フィルム、並びに、液晶表示装置のような光学用途に使用する場合、その光学異方性の制御は、表示装置の性能(例えば、視認性)を決定する上で非常に重要な要素となる。近年の液晶表示装置の広視野角化要求に伴ってレターデーションの補償性向上が求められるようになっており、偏光膜と液晶セルとの間に配置される位相差フィルムの面内方向のレターデーション値(Re;以下、単に「Re」と称することがある。)と膜厚方向のレターデーション値(Rth;以下、単に「Rth」と称することがある。)とを適切に制御することが要求されている。そして、偏光板の保護フィルムであり、かつ偏光膜と液晶セルとの間に配置される保護フィルムとして用いられるフィルムは、光学等方性、すなわちReもRthもともに低いことが必要とされており、液晶表示装置の視認性に大きな影響を及ぼす。さらに、フィルムの光学特性だけではなく、吸湿率も適切に制御することが求められている。
【0005】
このような光学特性を示すセルロースアシレートフィルムの製造方法として、例えば、レターデーション低減剤を用いる方法やポリマーの種類を選択する方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。しかしながら、これらの方法で製造したフィルムでは、フィルムの光学特性と吸湿率とを両立できないという問題があった。
【0006】
他方で、セルロースエステルドープからなるウェブを140〜200℃の範囲で延伸して位相差フィルムを製造する方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。しかしながら、これらの文献では、ポリマーの種類と熱処理温度とが適切に制御されていないため、レターデーションの低いフィルムは達成できていない。
【0007】
【特許文献1】特開2006−30937号公報
【特許文献2】特開2003−14933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光学特性と吸湿率を両立するセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することにある。また、これらの条件の他に、さらにレターデーションが低いという性質も備えた好ましいセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することも目的とする。さらに、本発明の目的は、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた位相差フィルム、並びに、本発明のセルロースアシレートフィルムを、位相差フィルム、位相差フィルムの支持体または偏光板の保護フィルムとして直接偏光膜と貼合し、優れた光学性能を発揮することのできる偏光板を提供することにもある。さらに、本発明の目的は、これを用いた信頼性の高い液晶表示装置を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は下記の手段により解決される。
(1)X線回折強度が下記式(I)〜(III)の全てを満たし、且つ2θ2における半値幅が3°より大きく7°以下である、セルロースアシレートフィルム。
式(I): 0.40≦Ic2/(Iam2+Ic2)≦0.75
式(II): Iam2=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ2−2θ1)}
式(III): Ic2=I2−Iam2
[式中、2θ1は、2θが4〜5°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ2は、2θが5〜10°の間で強度が最大となる2θを表し、2θ3は、2θが14〜16°の間で強度が最小となる2θを表す。但し、θはブラッグ角である。また、I1は2θ1における回折強度を表し、I2は2θ2における回折強度を表し、I3は2θ3における回折強度を表す。]
(1−2)前記X線回折強度が、さらに下記式(IV)〜(VI)の全てを満たす、(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(IV): Ic4/(Iam4+Ic4)≦0.20
式(V): Iam4=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ4−2θ1)}
式(VI): Ic4=I4−Iam2
[式中、2θ1は、2θが4〜5°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ3は、2θが14〜16°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ4は、2θが12.5〜14°の間のピーク位置を表す。但し、θはブラッグ角である。また、I1は2θ1における回折強度を表し、I3は2θ3における回折強度を表し、I4は2θ4における回折強度を表す。]
(1−3)下記式(VII)を満たす(1)または(1−2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(VII): Ic21/Ic22>50
[式中、Ic21はI2が最大となる方位におけるIc2であり、Ic22はこれと直交する方位におけるIc2を表す。]
(2)相対湿度80%における吸湿率が3.0%以下である、(1)〜(1−3)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
(2−2)分子量が3000以下の添加剤の添加量が0〜20質量%である、(1)〜(2)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3)ヘイズが2%以下である、(1)〜(2−2)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3−2)レターデーションが下記式(VIII)を満たす、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(VIII): Re<5、且つ、|Rth|<20
[式中、ReおよびRthは、それぞれ面内方向および膜厚方向のレターデーション値(単位;nm)を表す。]
(4)セルロースアシレートフィルムを(−285×S+970)℃以上(−285×S+1000)℃未満で0.01分以上60分未満熱処理することを含むセルロースアシレートフィルムの製造方法(ただし、Sはセルロースアシレートフィルムの全置換度を表す)。
(4−2)前記熱処理の際にフィルムを幅方向に収縮させることを含む、(4)記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(5)前記幅方向に収縮させる工程における収縮率が0.1〜80%である、(4)または(4−2)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(5−2)熱処理直前のセルロースアシレートフィルムの残留溶媒量が3質量%以下の状態で熱処理ゾーンに挿入することを含む、(4)〜(5)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(6)セルロースアシレートフィルムを延伸することを含む、(4)〜(5−2)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(6−2)セルロースアシレートフィルムを延伸しない、(4)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(7)(4)〜(6−2)のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、セルロースアシレートフィルム。
(7−2)(1)〜(3−2)または(7)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有することを特徴とする位相差フィルム。
(7−3)(1)〜(3−2)または(7)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム上に、0≦Re≦200nmであり、且つ、|Rth|≦400nmである光学異方性層を設けた、位相差フィルム。
(8)(1)〜(3−2)または(7)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚有する、偏光板。
(9)前記セルロースアシレートフィルムが偏光膜と直接貼合されている、(8)に記載の偏光板。
(10)(1)〜(3−2)または(7)のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、または(8)または(9)に記載の偏光板を、少なくとも1枚有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学特性と吸湿率を両立するセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することができ、優れた位相差フィルムを提供することができる。また、これらの条件の他に、さらにレターデーションが低いという性質も備えた好ましいセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することもできる。
さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムは適度な透湿度を有するため、偏光膜とオンラインで貼り合わせることができ、視認性に優れた偏光板を生産性よく提供することができる。さらに、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、位相差フィルム、偏光板、および、液晶表示装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
《セルロースアシレートフィルム》
本発明のセルロースアシレートフィルムは、X線回折強度が下記式(I)〜(III)の全てを満たし、且つ2θ2におけるピークの半値幅が3°より大きく7°以下である。X線回折強度を後述のように適切に制御することにより、本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学特性と吸湿率を両立することが可能となる。
式(I): 0.40≦Ic2/(Iam2+Ic2)≦0.85
式(II): Iam2=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ2−2θ1)}
式(III): Ic2=I2−Iam2
[式中、2θ1は、2θが4〜5°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ2は、2θが5〜10°の間で強度が最大となる2θを表し、2θ3は、2θが14〜16°の間で強度が最小となる2θを表す。但し、θはブラッグ角である。また、I1は2θ1における回折強度を表し、I2は2θ2における回折強度を表し、I3は2θ3における回折強度を表す。]
【0013】
[X線回折強度]
本発明において、セルロースアシレートフィルムのX線回折強度は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、自動X線回折装置(RINT 2000:(株)リガク製)、および汎用型イメージングプレート読み取り装置(R−AXIS DS3C/3CL)を用いて、フィルムを透過したビームの回折写真から求めた(Cu Kα線 50kV 200mA 10分)。得られた回折写真から、全方位における回折プロファイルをそれぞれ求め、2θが5〜10°の間に存在するピーク強度が最大となる方位における回折プロファイルから下記式(II)および(III)、および(V)および(VI)に従ってそれぞれIam2およびIc2、およびIam4およびIc4を求めた。[ここで、θはブラッグ角を表す。]但し、2θ1を求める際は、ビームストッパーによってビームが除去されている部分を解析から外す。なお、本発明において、ピーク位置とは、ピークの最大値(ピークトップ)における2θの値と定義する。また、2θ4におけるピークが観測されない場合には、I4=0とする。
式(II): Iam2=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ2−2θ1)}
式(III): Ic2=I2−Iam2
式(V): Iam4=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ4−2θ1)}
式(VI): Ic4=I4−Iam2
[式中、2θ1は、2θが4〜5°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ2は、2θが5〜10°の間で強度が最大となる2θを表し、2θ3は、2θが14〜16°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ4は、2θが12.5〜14°の間のピーク位置を表す。但し、θはブラッグ角である。また、I1は2θ1における回折強度を表し、I2は2θ2における回折強度を表し、I3は2θ3における回折強度を表し、I4は2θ4における回折強度を表す。]
【0014】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Iam2およびIc2が下記式(I)を満たすことを特徴とする。Ic2/(Iam2+Ic2)を0.40以上とすることにより、吸湿率をより効果的に低減させることができ、Ic2/(Iam2+Ic2)を0.75以下とすることにより、レターデーションをより効果的に低くできる傾向にある。
式(I): 0.40≦Ic2/(Iam2+Ic2)≦0.75
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Iam2およびIc2が下記式(Ia)を満たすことがより好ましい。
式(Ia): 0.40≦Ic2/(Iam2+Ic2)≦0.65
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Iam2およびIc2が下記式(Ib)を満たすことがさらに好ましい。
式(Ib): 0.45≦Ic2/(Iam2+Ic2)≦0.60
【0015】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記2θ2におけるピークの半値幅
が3°より大きく7°以下であり、3.3〜6°であることがより好ましく、3.5〜5°であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、さらに前記Iam4およびIc4が下記式(IV)を満たすことが好ましい。Ic4/(Iam4+Ic4)を0.20以下にすることにより、レタデーションの湿度依存性をより効果的に低減させることができる。
式(IV): Ic4/(Iam4+Ic4)≦0.20
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Iam4およびIc4が下記式(IVa)を満たすことがより好ましい。
式(IVa): Ic4/(Iam4+Ic4)≦0.15
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Iam4およびIc4が下記式(IVa)を満たすことがさらに好ましい。
式(IVb): 0.001≦Ic4/(Iam4+Ic4)≦0.10
【0017】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記2θが5〜10°の間に存在するピーク強度が最大となる方位におけるIc2をIc21とし、これと直交する方位におけるIc2をIc22とした場合に、下記式(VIIa)を満たすことが好ましい。
式(VIIa): Ic21/Ic22<1000
本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記式(VIIb)を満たすことがより好ましい。
式(VIIb): 10<Ic21/Ic22<1000
本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記式(VIIc)を満たすことがより好ましい。
式(VIIc): 20<Ic21/Ic22<200
【0018】
[吸湿率]
本発明において、セルロースアシレートフィルムの相対湿度80%における吸湿率は、フィルムを25℃、相対湿度80%RHにて24時間調湿後、加熱気化水分システム(AQS−2110:平沼産業(株)製)を用いて測定した。
本発明のセルロースアシレートフィルムの相対湿度80%における吸湿率は、3.0%以下であることが好ましく、0.1〜2.7%であることがより好ましく、0.5〜2.5%であることがさらに好ましい。
【0019】
[ヘイズ]
本発明において、セルロースアシレートフィルムのヘイズは、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
一般に、ポリマーフィルムのヘイズ値は、X線回折強度の上昇に伴って増大してしまう。しかし、本発明の如く、液晶表示装置をはじめとする光学フィルム用途で用いられるフィルムにおいては、ヘイズ値は低いことが好ましい。このためには、前述のX線回折プロファイルにおいて、2θ2や2θ4におけるピークを適切に制御することにより達成することができる。本発明のセルロースアシレートフィルムのヘイズは2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは、0.1〜1.0%であり、最も好ましくは、0.1〜0.5%である。
【0020】
[音波伝搬速度(音速)]
本発明の光学特性と力学物性の方向性を両立するセルロースアシレートフィルムの達成のためには、後述するように、面内の遅相軸の向きと、音波伝播速度が最大となる方向とを制御することが好ましい。
本発明において音波伝播速度が最大となる方向は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、配向性測定機(SST−2500:野村商事(株)製)を用いて、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向として求めた。
【0021】
[レターデーション]
まず、本発明における各レターデーションについて説明する。本明細書において、Re、Rth(単位;nm)は次の方法にしたがって求めたものである。まず、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism Coupler:Metricon製)を用い、25℃、相対湿度60%において、532nmの固体レーザーを用いて下記式(a)で表される平均屈折率(n)を求める。
式(a): n=(nTE×2+nTM)/3
[式中、nTEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、nTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
【0022】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが一軸または二軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、λに関する記載が特になく、Re、Rthとのみ記載されている場合は、波長590nmの光を用いて測定した値のことを表す。また、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率および入力された膜厚値を基に、以下の式(b)および式(c)よりRthを算出することもできる。
式(b):
【0023】
【化1】

[式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタ−デーション値を表す。また、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。]
式(c): Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
測定されるフィルムが一軸や二軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
これら平均屈折率と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
【0024】
また、本明細書において、Re(H%)およびRth(H%)は各々、相対湿度がH(単位;%)における面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。これらは、フィルムを25℃、相対湿度H%にて24時間調湿後、25℃、相対湿度H%において、前記方法と同様にして、相対湿度H%におけるレターデーション値を測定、算出したものである。
【0025】
本発明のセルロースアシレートフィルムのレターデーション値は、面内のレターデーション(Re)が5nm未満であることが好ましく、0〜4nmであることがより好ましく、0〜2.5nmであることがより好ましく、0.1〜2nmであることがさらに好ましい。膜厚方向のレターデーション(Rth)の絶対値は20nm未満であることが好ましく、0〜15nmであることがより好ましく、0〜10nmであることがさらに好ましく、0〜5nmであることが特に好ましく、0.1〜3nmであることが最も好ましい。
【0026】
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいて、面内の遅相軸の方向と、音波伝搬速度が最大となる方向とのなす角は、特に問われないが、0±10°もしくは90±10°であることが好ましく、0±5°もしくは90±5°であることがより好ましく、0±3°もしくは90±3°であることがさらに好ましく、場合により、0±1°もしくは90±1°であることが好ましい。
【0027】
[膜厚]
本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚は20μm〜180μmが好ましく、40μm〜160μmがより好ましく、60μm〜140μmがさらに好ましい。膜厚が20μmより薄くなると偏光板等に加工する際のハンドリング性や偏光板のカールが好ましくない。また、本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚むらは、搬送方向および幅方向のいずれも0〜2%であることが好ましく、0〜1.5%がさらに好ましく、0〜1%であることが特に好ましい。
【0028】
[透湿度]
次に透湿度について説明する。本発明において「透湿度」とは、塩化カルシウムを入れたカップを各々のフィルム試料を用いて蓋をし、且つ密閉したものを、40℃・相対湿度90%の条件で24時間放置した際の調湿前後の質量変化(g/(m2・day))から
評価した値である。
なお、透湿度は、温度の上昇に伴い上昇し、また、湿度の上昇に伴い上昇するが、各条件によらず、フィルム間における透湿度の大小関係は不変である。そのため、本発明においては40℃・相対湿度90%における前記質量変化の値を基準とする。
【0029】
本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、100〜400g/(m2・day)であることが好ましい。前記透湿度を100〜400g/(m2・day)としたフィルムを使用することで、高温低湿下での液晶表示装置のムラを低減し、信頼性の高い液晶表示装置を提供しやすくなる。前記透湿度としては、100〜350g/(m2・day)がより好ましく、150〜300g/(m2・day)がさらに好ましい。
【0030】
[セルロースアシレート]
本発明のセルロースアシレートフィルムの構成要素となるポリマーとしては、セルロースアシレート化合物、および、セルロースを原料として生物的或いは化学的に官能基を導入して得られるアシル置換セルロース骨格を有する化合物が挙げられる。
前記ポリマーとしては、粉末や粒子状のものを使用することができ、また、ペレット化したものも用いることができる。
前記ポリマーの吸湿率は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。また、前記吸湿率は場合により0.2質量%以下であることが好ましい。前記ポリマーの吸湿率が好ましい範囲内にない場合には、前記ポリマーを加熱などにより乾燥してから使用することが好ましい。
これらのポリマーは単独で用いてもよいし、2種類以上のポリマーを併用してもよい。
なお、本発明のセルロースアシレートフィルムの主成分としてのポリマーとしては、上述のセルロースアシレートを用いることが好ましい。ここで、「主成分としてのポリマー」とは、単一のポリマーからなる場合には、そのポリマーのことを示し、複数のポリマーからなる場合には、構成するポリマーのうち、最も質量分率の高いポリマーのことを示す。
【0031】
前記セルロースアシレートは、セルロースとカルボン酸とのエステルである。前記エステルを構成する酸としては、炭素原子数が2〜22の脂肪酸がより好ましく、炭素原子数が2〜4の低級脂肪酸がさらに好ましい。
前記セルロースアシレートは、セルロースを構成するグルコース単位の2位、3位および6位に存在するヒドロキシル基の水素原子の全部または一部が、アシル基で置換されている。前記アシル基の例としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、および、シンナモイル基が挙げられる。前記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基がより好ましく、アセチル基が最も好ましい。
セルロースアシレートは、セルロースと複数種類のカルボン酸とのエステルであってもよい。また、セルロースアシレートは、複数種類のアシル基で置換されていてもよい。
【0032】
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、セルロースアシレートのアシル置換度が2.50〜3.00であるセルロースアシレートを用いることが好ましく、アシル置換度が2.70〜2.98のセルロースアシレートがより好ましく、2.80〜2.95のセルロースアシレートがさらに好ましく、2.85〜2.94のセルロースアシレートが最も好ましい。
【0033】
セルロースアシレートの合成方法について、基本的な原理は、右田伸彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。セルロースアシレートの代表的な合成方法としては、カルボン酸無水物−カルボン酸−硫酸触媒による液相アシル化法が挙げられる。具体的には、まず、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸などのカルボン酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。前記アシル化混液は、一般に溶媒としてのカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物および触媒としての硫酸を含む。また、前記カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。
【0034】
次いで、アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰カルボン酸無水物の加水分解を行うために、水または含水酢酸を添加する。さらに、エステル化触媒を一部中和するために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)を含む水溶液を添加してもよい。さらに、得られた完全セルロースアシレートを少量のアシル化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、20〜90℃に保つことにより鹸化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記中和剤などを用いて完全に中和するか、或いは、前記触媒を中和することなく水若しくは希酢酸中にセルロースアシレート溶液を投入(或いは、セルロースアシレート溶液中に、水または希酢酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理により目的物であるセルロースアシレートを得ることができる。
【0035】
前記セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で150〜500が好ましく、200〜400がより好ましく、220〜350がさらに好ましい。前記粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)の記載に従って測定することができる。前記粘度平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報にも記載がある。
【0036】
また、低分子成分が少ないセルロースアシレートは、平均分子量(重合度)が高いが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低い値になる。このような低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより行うことができる。また、低分子成分の少ないセルロースアシレートを合成により得ることもできる。低分子成分の少ないセルロースアシレートを合成する場合、アシル化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。前記硫酸触媒の量を前記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
セルロースアシレートの原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁にも記載がある。
【0037】
[セルロースアシレートフィルムの作製]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートや各種添加剤を含有するセルロースアシレート溶液から溶液流延製膜方法によって作製することができる。また、本発明のセルロースアシレートの融点、もしくはセルロースアシレートと各種添加剤との混合物の融点が、これらの分解温度よりも低くかつ延伸温度よりも高い場合には、溶融製膜法によって製膜することで作製することもできる。ここでいうセルロースアシレートの融点は、後述する実施例に記載される測定法により測定された値である。本発明のセルロースアシレートフィルムは溶融製膜法によって製膜することもでき、溶融製膜法については、特開2000−352620号公報などに記載がある。
【0038】
[セルロースアシレート溶液]
(溶媒)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、例えば、セルロースアシレートや必要に応じて各種添加剤を含有するセルロースアシレート溶液を溶液流延製膜方法等によって製膜することで作製することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの作製に用いられるセルロースアシレート溶液の主溶媒としては、該ポリマーの良溶媒である有機溶媒を好ましく用いることができる。このような有機溶媒としては、沸点が80℃以下の有機溶媒が乾燥負荷低減の観点からより好ましい。前記有機溶媒の沸点は、10〜80℃であることがさらに好ましく、20〜60℃であることが特に好ましい。また、場合により沸点が30〜45℃である有機溶媒も前記主溶媒として好適に用いることができる。
【0039】
このような主溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アルコールおよび炭化水素などが挙げられ、これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。また、前記主溶媒は、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれかを二つ以上有していてもよい。さらに、前記エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。なお、本発明のセルロースアシレートフィルムの作製に用いられるセルロースアシレート溶液の主溶媒とは、単一の溶媒からなる場合には、その溶媒のことを示し、複数の溶媒からなる場合には、構成する溶媒のうち、最も質量分率の高い溶媒のことを示す。
【0040】
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、例えば、ジクロロメタンおよびクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンがさらに好ましい。
前記エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0041】
これら主溶媒と併用される有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アルコールおよび炭化水素などが挙げられ、これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。また、前記有機溶媒としては、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれか二つ以上を有していてもよい。さらに、前記エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。
【0042】
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、例えば、ジクロロメタンおよびクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンがさらに好ましい。
前記エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記2種類以上の官能基を有する有機溶媒としては、例えば、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0043】
さらに、全溶媒中に5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%、さらに好ましくは10〜20質量%のアルコールを含有することがバンドからの剥離荷重低減の観点から好ましい。
【0044】
本発明のセルロースアシレートフィルムの作製に用いられるポリマー溶液の溶媒として好ましく用いられる有機溶媒の組み合せの例を以下に挙げるが、本発明で採用することができる有機溶媒の組み合わせはこれらに限定されるものではない。なお、比率の数値は、質量部を意味する。
【0045】
(1)ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/10/5/5
(2)ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/5/5/10
(3)ジクロロメタン/イソブチルアルコール=90/10
(4)ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール=80/5/5/10
(5)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=80/8/10/2
(6)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5
(7)ジクロロメタン/ブタノール=90/10
(8)ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/ブタノール=68/10/10/7/5
(9)ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/ペンタノール=80/2/15/3
(10)ジクロロメタン/メチルアセテート/エタノール/ブタノール=70/12/15/3
(11)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/5/5/10
(12)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/ペンタノール=50/20/15/5/10
(13)ジクロロメタン/1,3−ジオキソラン/メタノール/ブタノール=70/15/5/10
(14)ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/ブタノール=75/5/10/5/5
(15)ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブチルアルコール/シクロヘキサン=60/18/3/10/7/2
(16)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/イソブチルアルコール=70/10/10/10
(17)ジクロロメタン/アセトン/エチルアセテート/ブタノール/ヘキサン=69/10/10/10/1
(18)ジクロロメタン/メチルアセテート/メタノール/イソブチルアルコール=65/15/10/10
(19)ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=85/7/3/5
(20)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール=83/15/2
(21)ジクロロメタン=100
(22)アセトン/エタノール/ブタノール=80/15/5
(23)メチルアセテート/アセトン/メタノール/ブタノール=75/10/10/5
(24)1,3−ジオキソラン=100
(25)ジクロロメタン/メタノール=92/8
(26)ジクロロメタン/メタノール=90/10
(27)ジクロロメタン/メタノール=87/13
(28)ジクロロメタン/エタノール=90/10
【0046】
また、非ハロゲン系有機溶媒を主溶媒とした場合については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載があり、適宜、使用することができる。
【0047】
(溶液濃度)
調製する前記セルロースアシレート溶液中のポリマー濃度は、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましく、15〜30質量%が最も好ましい。
前記ポリマー濃度は、ポリマーを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、ポリマーの濃度を低下させることもできる。
【0048】
(添加剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムの作製に用いられる前記セルロースアシレート溶液は、各調製工程において用途に応じた各種の液体または固体の添加剤を含むことができる。前記添加剤の例としては、可塑剤(好ましい添加量はポリマーに対して0.01〜20質量%、以下同様)、紫外線吸収剤(0.001〜1質量%)、平均粒子サイズが5〜3000nmである微粒子粉体(0.001〜1質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)が含まれる。
【0049】
前記可塑剤や前記光学異方性制御剤は、疎水部と親水部とを併せ持つ化合物である。これらの化合物は、ポリマー鎖間で配向することにより、レターデーション値を変化させる。さらに、これらの化合物は、本発明で特に好ましく用いられるセルロースアシレートと併用することで、フィルムの疎水性を向上させ、レターデーションの湿度変化を低減させることができる。また、前記紫外線吸収剤や前記赤外線吸収剤を併用することで、効果的にレターデーションの波長依存性を制御することもできる。本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられる添加剤は、いずれも乾燥過程での揮散が実質的にないものが好ましい。
【0050】
レターデーションの湿度変化低減を図る観点からは、これらの添加剤の添加量は多いほうが好ましいが、添加量の増大に伴い、ポリマーフィルムのガラス転移温度(Tg)低下や、フィルムの製造工程における添加剤の揮散問題を引き起こしやすくなる。従って、本発明においてより好ましく用いられるセルロースアセテートをポリマーとして用いる場合、分子量が3000以下の添加剤の添加量は、前記セルロースアシレートに対し0〜20質量%が好ましく、0〜12質量%がより好ましく、0.2〜10質量%がさらに好ましい。なお、レターデーションを低減させる効果のある添加剤は、分子量が低い、もしくは分子間相互作用が小さいという化学構造の特徴を有するため、揮散しやすいという問題があり、本発明においては、レターデーションを低減させる効果のない添加剤が好ましく用いられる。
【0051】
本発明のセルロースアシレートフィルムを構成するポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合に好適に用いることのできる可塑剤や光学異方性制御剤としては、具体的には、特開2005−104148号公報の〔0197〕〜〔0202〕に記載の可塑剤や、特開2005−104148号公報の〔0227〕〜〔0449〕に記載の光学異方性のコントロール剤などを挙げることができる。また、赤外吸収剤については、特開平2001−194522号公報に記載されるものを挙げることができる。添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて適宜決定することができる。また、前記添加剤については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)16頁〜22頁にも記載がある。
【0052】
(セルロースアシレート溶液の調製)
前記セルロースアシレート溶液の調製は、例えば、特開昭58−127737号公報、同61−106628号公報、特開平2−276830号公報、同4−259511号公報、同5−163301号公報、同9−95544号公報、同10−45950号公報、同10−95854号公報、同11−71463号公報、同11−302388号公報、同11−322946号公報、同11−322947号公報、同11−323017号公報、特開2000−53784号公報、同2000−273184号公報、同2000−273239号公報に記載されている調製方法に準じて行うことができる。具体的には、セルロースアシレートと溶媒とを混合攪拌し膨潤させ、場合により冷却や加熱等を実施して溶解させた後、これをろ過してポリマー溶液を得る。
【0053】
本発明においては、セルロースアシレートの溶媒への溶解性を向上させるため、セルロースアシレートと溶媒の混合物を冷却および/または加熱する工程を含んでもよい。
溶媒としてハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒の混合物を冷却する場合、混合物を−100〜10℃に冷却することが好ましい。また、冷却工程より前の工程に−10〜39℃で膨潤させる工程を含み、冷却より後の工程に0〜39℃に加温する工程を含むことが好ましい。
【0054】
溶媒としてハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒の混合物を加熱する場合、下記(a)または(b)より選択される1以上の方法で溶媒中にセルロースアシレートを溶解する工程を含むことが好ましい。
(a)−10〜39℃で膨潤させ、得られた混合物を0〜39℃に加温する。
(b)−10〜39℃で膨潤させ、得られた混合物を0.2〜30MPaで40〜240℃に加熱し、加熱した混合物を0〜39℃に冷却する。
さらに、溶媒として非ハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒の混合物を冷却する場合、混合物を−100〜−10℃に冷却する工程を含むことが好ましい。また、冷却工程より前の工程に−10〜55℃で膨潤させる工程を含み、冷却より後の工程に0〜57℃に加温する工程を含むことが好ましい。
【0055】
溶媒としてハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒の混合物を加熱する場合、下記(c)または(d)より選択される1以上の方法で溶媒中にセルロースアシレートを溶解する工程を含むことが好ましい。
(c)−10〜55℃で膨潤させ、得られた混合物を0〜57℃に加温する。
(d)−10〜55℃で膨潤させ、得られた混合物を0.2〜30MPaで40〜240℃に加熱し、加熱した混合物を0〜57℃に冷却する。
【0056】
[流延、乾燥]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、従来の溶液流延製膜方法に従い、従来の溶液流延製膜装置を用いて製造できる。具体的には、溶解機(釜)で調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を、ろ過後、貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製することができる。ドープは30℃に保温し、ドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延する(流延工程)。次いで、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離し、続いて乾燥ゾーンへ搬送し、ロール群で搬送しながら乾燥を終了する。本発明においては、金属支持体として金属ベルトが好ましい。
【0057】
このようにして乾燥の終了したフィルム中の残留溶剤量は0〜2質量%が好ましく、より好ましくは0〜1質量%である。このフィルムは、そのまま熱処理ゾーンへ搬送してもよいし、フィルムを巻き取ってからオフラインで熱処理を実施してもよい。熱処理前のセルロースアシレートフィルムの好ましい幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3mである。また、一旦フィルムを巻き取る場合には、好ましい巻長は300〜30000mであり、より好ましくは500〜10000mであり、さらに好ましくは1000〜7000mである。
【0058】
[熱処理]
本発明では、光学特性と吸湿率を両立させるために、製膜されたセルロースアシレートフィルムを熱処理する際の、熱処理温度とセルロースアシレートの全置換度とを適切に制御することが重要であり、前記X線回折で観測される構造体の、2θ2や2θ4におけるピークを適切に制御することが可能となる。このようにすることで、固有複屈折の符号の異なる2つの成分をセルロースアシレートフィルム中に自発的に形成させることが可能となり、延伸倍率によらず、レターデーションが発現しないセルロースアシレートフィルムを達成することが可能となる。したがって、製造工程における変形ムラにより発生するレタデーションムラの抑制されたセルロースアシレートフィルムを製造することができる。
【0059】
本発明の製造方法では、セルロースアシレートフィルムを搬送し、セルロースアシレートの全置換度をSとしたときに(−285×S+970)℃以上(−285×S+1000)℃未満に保持して熱処理する工程を有する。前記熱処理温度は、より好ましくは(−285×S+975)℃以上〜(−285×S+1000)℃未満であり、さらに好ましくは(−285×S+980)〜(−285×S+1000)℃未満であり、特に好ましくは(−285×S+985)〜(−285×S+995)℃である。
置換度Sが2.85のセルロースアシレートフィルムの熱処理を158〜188℃の範囲内で行い、置換度Sが2.80のセルロースアシレートフィルムの熱処理を172〜202℃の範囲内で行うと、本発明の目的にかなうフィルムを調製することができる。これらの結果に基づいて、(−285×S+970)℃以上(−285×S+1000)℃未満という熱処理温度範囲が導かれた。この式にしたがって計算される熱処理温度範囲において、Sが2.80や2.85以外のセルロースアシレートフィルムを熱処理することによって、同様に本発明の目的にかなうフィルムを調製することができる。
本発明の製造方法では、セルロースアシレートの全置換度と熱処理温度とを適切に制御することにより、フィルムの変形挙動によらずレタデーション発現性を低く保つことができる。したがって、製造工程における変形ムラにより発生するレタデーションムラの抑制されたセルロースアシレートフィルムを製造することができる。また、本発明の製造方法では、セルロースアシレートフィルムの吸湿率を低減させることができるため、特に熱処理工程における延伸倍率を低下させることにより、光学異方性が小さく、且つ光学異方性の湿度依存性も小さいセルロースアシレートフィルムを製造することができる。
前記熱処理工程が、フィルムを幅方向に収縮させる工程を含むことが光学特性と吸湿率の両立において特に好ましい。幅方向に収縮させる工程は、少なくとも前記熱処理工程に含まれていればよく、前記熱処理工程やその前や後の工程に、さらにフィルムを幅方向に延伸する工程を含んでいてもよい。また、レタデーションの湿度依存性をより効果的に低減させるためには、特に熱処理工程における延伸倍率を低下させることが好ましい。
さらに、幅方向に収縮させる工程は一段で行ってもよく、収縮工程と延伸工程とを繰り返し実施してもよい。
【0060】
熱処理ゾーンに挿入される直前のセルロースアシレートフィルムの残留溶媒量は、3質量%以下であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.1〜1.5質量%であることがさらに好ましい。ここで、セルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量は、下記式に基づいて算出されるものである。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
[式中、Mは、熱処理ゾーンに挿入される直前のセルロースアシレートフィルムの質量、Nは、熱処理ゾーンに挿入される直前のセルロースアシレートフィルムを110℃で3時間乾燥させたときの質量を表す]
【0061】
フィルムを幅方向に収縮させる工程の前後のフィルムの収縮率は0.1〜80%であることが好ましく、1〜60%であることがより好ましく、3〜50%であることがさらに好ましく、5〜40%であることが特に好ましい。幅方向の収縮率はフィルムの端部をテンタークリップで把持している場合にはレールの拡幅率などで制御することができる。また、フィルムの端部が固定されておらず、ニップロール等のフィルムを搬送方向に固定する装置によってのみ保持されている場合には、搬送方向に固定する装置間距離の調整や、フィルムにかかるテンションの調整や、フィルムに与えられる熱量の調整などによって制御することができる。幅方向の収縮率は、フィルムが収縮する直前と直後の全幅を計測し、下記式から求めた。
幅方向の収縮率(%)=100×(収縮直前の全幅−収縮直後の全幅)/収縮直前の全幅
【0062】
また、前記のように熱処理温度を設定することで、レターデーションが低い本発明のセルロースアシレートフィルムを製造することも可能となる。熱処理の時間は、通常0.01分以上60分未満であり、好ましくは0.03〜10分であり、さらに好ましくは0.05〜5分である。
【0063】
[延伸]
ReおよびRthを調整するために、前記熱処理ゾーン内を搬送しているセルロースアシレートフィルムを熱処理と同時に延伸したり、熱処理後のセルロースアシレートフィルムをさらに延伸したりすることもできる。
【0064】
(延伸方法)
延伸は、例えば、出口側の周速を速くしたフィルムを搬送方向に保持する2つ以上の装置(例えば、ニップロールやサクションドラム)間に加熱ゾーンを有する装置内にて搬送方向に実施する縦延伸でもよいし、フィルムの両端をチャックで把持しこれを搬送方向と直交する方向に広げて実施する延伸でもよいし、これらを組み合わせて実施してもよい。
熱処理後のセルロースアシレートフィルムをさらに延伸する場合、熱処理後に一旦フィルムを冷却し、さらに延伸工程に移ることが好ましい。この場合、熱処理は搬送しながら熱処理ゾーンを通過させることで実施することが好ましく、延伸はフィルムの両端をチャックで把持しこれを搬送方向と直交する方向に広げて実施することが好ましい。
【0065】
延伸倍率はフィルムに要求するレターデーションに応じて適宜設定することができ、1〜500%が好ましく、3〜100%がより好ましく、5〜80%がさらに好ましく、10〜60%が特に好ましい。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式を用いて求めたものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
【0066】
前記延伸における延伸速度は10〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20〜1000%/分であり、さらに好ましくは30〜800%/分である。
【0067】
本発明のセルロースアシレートフィルムは単層構造であることが好ましい。ここで、「単層構造」のフィルムとは、複数のフィルム材が貼り合わされているものではなく、一枚のポリマーフィルムを意味する。そして、複数のポリマー溶液から、逐次流延方式や共流延方式を用いて一枚のポリマーフィルムを製造する場合も含む。この場合、添加剤の種類や配合量、ポリマーの分子量分布やポリマーの種類等を適宜調整することによって厚み方向に分布を有するようなポリマーフィルムを得ることができる。また、それらの一枚のフィルム中に光学異方性部、防眩部、ガスバリア部、耐湿性部などの各種機能性部を有するものも含む。
【0068】
[表面処理]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、適宜、表面処理を行うことにより、各機能層(例えば、下塗層、バック層、光学異方性層)との接着を改善することが可能となる。前記表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、鹸化処理(酸鹸化処理、アルカリ鹸化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリ鹸化処理が好ましい。ここでいう「グロー放電処理」とは、プラズマ励起性気体存在下でフィルム表面にプラズマ処理を施す処理である。これらの表面処理方法の詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載があり、適宜、使用することができる。
【0069】
フィルム表面と機能層との接着性を改善するため、表面処理に加えて、或いは表面処理に代えて、本発明のセルロースアシレートフィルム上に下塗層(接着層)を設けることもできる。前記下塗層については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載があり、これらを適宜、使用することができる。また、本発明のセルロースアシレートフィルム上に設けられる機能性層については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に記載があり、これに記載のものを適宜、使用することができる。
【0070】
《位相差フィルム》
本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、位相差板、光学補償フィルム、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、位相差フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることで、Re値およびRth値を自在に制御した位相差フィルムを容易に作製することができる。例えば、遅相軸方向への傾斜角によらずレターデーションが変化しない位相差フィルムとして、Re≧50nmかつ|Rth|≦15nmを満たすフィルムを好ましく作製することができ、Re≧100nmかつ|Rth|≦10nmを満たすフィルムをより好ましく作製することができる。
【0071】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、そのまま位相差フィルムとして用いることができる。また、本発明のセルロースアシレートフィルムを複数枚積層したり、本発明のセルロースアシレートフィルムと本発明外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して位相差フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
【0072】
また、場合により、本発明のセルロースアシレートフィルムを位相差フィルムの支持体として用い、その上に液晶等からなる光学異方性層を設けて位相差フィルムとして使用することもできる。本発明の位相差フィルムに適用される光学異方性層は、例えば、液晶性化合物を含有する組成物から形成してもよいし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成してもよい。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
【0073】
[ディスコティック液晶性化合物]
本発明において前記液晶性化合物として使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(例えば、C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang etal.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0074】
前記光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。また、ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子については、特開2001−4387号公報に開示されている。
【0075】
[棒状液晶性化合物]
本発明において前記液晶性化合物として使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。また、前記棒状液晶性化合物としては、以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0076】
前記光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例は、例えば、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4,683,327号明細書、同5,622,648号明細書、同5,770,107号明細書、国際公開第95/22586号パンフレット、同95/24455号パンフレット、同97/00600号パンフレット、同98/23580号パンフレット、同98/52905号パンフレット、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報等に記載の化合物が含まれる。
【0077】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
前記光学異方性層は、ポリマーフィルムから形成してもよい。前記ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成することができる。前記光学異方性を発現し得るポリマーの例には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、および、セルロースエステル(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、前記ポリマーとしては、これらポリマーの共重合体若しくはポリマー混合物を用いてもよい。
【0078】
《偏光板》
本発明のセルロースアシレートフィルムまたは位相差フィルムは、偏光板(本発明の偏光板)の保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなり、本発明のセルロースアシレートフィルムまたは位相差フィルムは少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを前記偏光板保護フィルムとして用いる場合、本発明のセルロースアシレートフィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、または、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましく、アルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
【0079】
また、前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面に本発明のセルロースアシレートフィルムの表面処理面を直接貼り合わせることができる。本発明の製造方法においては、このように前記セルロースアシレートフィルムが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
【0080】
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のセルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置における偏光膜と液晶層(液晶セル)との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。また、前記偏光膜を挟んで本発明のセルロースアシレートフィルムの反対側に配置される保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層などを設けることができ、特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムとして好ましく用いられる。
【0081】
《液晶表示装置》
本発明のセルロースアシレートフィルム、位相差フィルムおよび偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明のセルロースアシレートフィルム、位相差フィルムおよび偏光板は特にVAモードおよびIPSモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型および半透過型のいずれでもよい。
【0082】
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号および特開平9−26572号の各公報の他、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0083】
(STN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0084】
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の位相差フィルムや位相差フィルムの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
【0085】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の位相差フィルムや位相差フィルムの支持体、または偏光板の保護フィルムとして特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
【0086】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置或いはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が位相差フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0087】
(反射型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest-Host)型の反射型液晶表示装置の位相差フィルムとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
【0088】
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置とについては、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))に記載がある。
【0089】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、場合により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいても好ましく用いることができる。
【実施例】
【0090】
《測定法》
まず、本実施例および比較例中で用いた特性の測定法および評価法を以下に示す。
【0091】
[X線回折強度]
フィルムの幅方向3点(中央部、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置))をサンプリングし、2cm□の大きさのサンプルを取り出し、前述の方法に従って評価した各点の平均値を算出し、Ic2/(Iam2+Ic2)および半値幅およびIc4/(Iam4+Ic4)およびIc21/Ic22を求めた。
【0092】
[吸湿率]
フィルムの幅方向3点(中央部、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置))をサンプリングし、前述の方法に従って評価した各点の平均値を算出し、吸湿率を求めた。
【0093】
[ヘイズ]
フィルムの幅方向5点(中央部、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)、および中央部と端部の中間部2点)をサンプリングし、前述の方法に従って評価した各点の平均値を算出し、ヘイズ値を求めた。
【0094】
[レターデーション]
フィルムの幅方向5点(中央部、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)、および中央部と端部の中間部2点)とを長手方向に100mごとにサンプリングし、5cm□の大きさのサンプルを取り出し、前述の方法に従って評価した各点の平均値を算出し、ReおよびRthおよび面内の遅相軸の方向を求めた。
【0095】
[融点]
示差走査カロリメトリー(DSC)の測定パンにサンプルを20mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で30℃から120℃まで昇温して15分保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却した。この後、再度30℃から300℃まで昇温した際に現れた吸熱ピークの頂点における温度をフィルムの融点とした。
【0096】
[偏光度]
作製した2枚の偏光板を吸収軸を平行に重ね合わせた場合の透過率(Tp)および吸収軸を直交させて重ね合わせた場合の透過率(Tc)を測定し、下記式で表される偏光度(P)を算出した。
偏光度P=((Tp−Tc)/(Tp+Tc))0.5
【0097】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0098】
[実施例101〜114、比較例101〜103]
(ポリマー溶液の調製)
1)セルロースアシレート
実施例101〜114および比較例101〜103においては、下記のセルロースアシレートAおよびBの中から表1に記載される方を選択して使用した。各セルロースアシレートは120℃に加熱して乾燥し、吸湿率を0.5質量%以下とした後、15質量部を使用した。
【0099】
・セルロースアシレートA:
置換度が2.85のセルロースアセテートの粉体を用いた。セルロースアシレートAの粘度平均重合度は300、6位のアセチル基置換度は0.89、アセトン抽出分は7質量%、質量平均分子量/数平均分子量比は2.3、吸湿率は0.2質量%、6質量%ジクロロメタン溶液中の粘度は305mPa・s、残存酢酸量は0.1質量%以下、Ca含有量は65ppm、Mg含有量は26ppm、鉄含有量は0.8ppm、硫酸イオン含有量は18ppm、イエローインデックスは1.9、遊離酢酸量は47ppmであった。粉体の平均粒子サイズは1.5mm、標準偏差は0.5mmであった。
・セルロースアシレートB:
置換度が2.80のセルロースアセテートの粉体を用いた。セルロースアシレートBの粘度平均重合度は300、6位のアセチル基置換度は0.87であった。
【0100】
[置換度]
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83-91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
[重合度]
製造したセルロースアシレートを絶対乾燥した後、約0.2gを精秤し、ジクロロメタン:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mLに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度DPを以下の式により求めた。
ηrel=T/T0
[η]=ln(ηrel)/C
DP=[η]/Km
[式中、Tは測定試料の落下秒数、T0は溶剤単独の落下秒数、lnは自然対数、Cは濃度(g/L)、Kmは6×10-4である。]
【0101】
2)溶媒
各実施例および比較例において、下記の溶媒AおよびBの中から表1に記載される方を選択して使用した。なお、溶媒の吸湿率は、いずれも0.2質量%以下であった。
・溶媒A
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(83/15/2質量部)の混合溶媒を使用した。
・溶媒B
ジクロロメタン/メタノール(92/8質量部)の混合溶媒を使用した。
【0102】
3)添加剤
各実施例および比較例において、下記組成の添加剤A〜Dの中から選択して使用した。
【0103】
・添加剤A:
トリフェニルホスフェート(1.2質量部)
ビフェニルジフェニルホスフェート(0.6質量部)
二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度 約7)(0.08質量部)
・添加剤B:
二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度 約7)(0.08質量部)
・添加剤C:
トリフェニルホスフェート(2.0質量部)
ビフェニルジフェニルホスフェート(1.0質量部)
二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度 約7)(0.08質量部)
・添加剤D:
トリフェニルホスフェート(3.0質量部)
ビフェニルジフェニルホスフェート(1.5質量部)
二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度 約7)(0.08質量部)
【0104】
4)溶解
各実施例および比較例において、下記の溶解工程を使用した。
・溶解工程
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、前記溶媒および添加剤を投入して撹拌、分散させながら、前記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2〔4.9×105N/m/sec2〕)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2〔9.8×104N/m/sec2〕)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
膨潤した溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、さらに2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。この際、高温にさらされるフィルター、ハウジング、および配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
次に36℃まで温度を下げ、セルロースアシレート溶液を得た。
【0105】
5)ろ過
得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過してポリマー溶液を得た。
【0106】
(フィルムの作製)
各実施例および比較例において、下記の製膜工程を使用した。
・製膜工程A
前記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは50m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートの膜厚80μmの透明フィルムを得た。
【0107】
(熱処理)
各実施例および比較例において、下記の熱処理工程A〜Cの中から選択し、表1に記載した。
また、フィルムの伸びは、フィルムの搬送方向と直交する方向に一定間隔の標線を入れ、その間隔を熱処理前後で計測し、下記式から求めた。
フィルムの伸び(%)=100×(熱処理後の標線の間隔−熱処理前の標線の間隔)/
熱処理前の標線の間隔
なお、表1中、タックAは市販のセルロースアシレートフィルム(フジタックT80UZ;富士写真フィルム(株)製)である。
【0108】
・熱処理工程A
得られたフィルムを、2つのニップロール間に加熱ゾーンを有する装置を用いて熱処理した。幅方向の収縮率は、加熱ゾーンの温度およびニップロールの周速を調整することで制御した。縦横比(ニップロール間の距離/ベース幅)は3.3となるように調整し、加熱ゾーンに入る前のベース温度は25℃とし、加熱ゾーンは表1に記載の温度として1分間加熱した。
【0109】
・熱処理工程B
得られたフィルムの両端をテンタークリップで把持しながら、加熱ゾーンを通過させる装置を用いて熱処理した。幅方向の収縮率はレール幅を調整することで制御した。加熱ゾーンに入る前のベース温度は25℃とし、加熱ゾーンは表1に記載の温度として1分間加熱した。
【0110】
(製造されたセルロースアシレートフィルムの評価)
各実施例および比較例で得られた各セルロースアシレートフィルムの評価を行った。結果を下記表1に示す。
上記のレターデーション測定と同様にして取り出した各実施例のサンプルのReおよびRthのばらつき(5点の測定値のばらつき)は、全てのサンプルでReは±0.5nm以内、Rthは±1nm以内であり、遅相軸の向きの変動幅は0.5°未満であった。
【0111】
【表1】

【0112】
表1に示したように、本発明の方法に従い、熱処理を実施することにより、好ましいX線回折強度を示し、ヘイズが低く、光学特性と吸湿率を両立したセルロースアシレートフィルムを製造することができる。これに対し、熱処理条件が本発明の範囲外である場合には、好ましいX線回折強度を示すセルロースアシレートフィルムを製造することができなかった。
【0113】
表1中、熱処理の際にフィルムを延伸しなかった実施例113および114のサンプルでは、Reの湿度依存性(ΔRe=|Re(10%)−Re(80%)|)がともに0nmであり、Rthの湿度依存性(ΔRth=|Rth(10%)−Rth(80%)|)がそれぞれ19nm、27nmでともに小さかった。
【0114】
[比較例104]
実施例102の添加剤Aを添加剤Dに変更した以外は、実施例102と全く同様に実施したところ、熱処理時に添加剤が酷くブリードアウトしてしまい、光学フィルムとしては適用できないものになってしまった。
【0115】
[実施例151〜154]
(フィルムの再延伸)
前記熱処理が終了したセルロースアシレートフィルムの両端をテンタークリップで把持した後、加熱ゾーン内で搬送方向と直交する方向に延伸した。このときの加熱ゾーンの温度および延伸倍率、および得られたセルロースアシレートフィルムの評価結果は、表2に示した。なお、延伸倍率は、フィルムの搬送方向と平行な方向に一定間隔の標線を入れ、その間隔を延伸前後で計測し、下記式から求めた。
延伸倍率(%)=100×(延伸後の標線の間隔−延伸前の標線の間隔)/延伸前の標線の間隔
【0116】
【表2】

【0117】
[実施例201]
(位相差フィルムの作製)
実施例152で得られたセルロースアシレートフィルムを特開2003−315541号公報の実施例1に記載の方法に準じて位相差フィルム試料を作製した。
【0118】
具体的には、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB)とから合成されたポリイミド(質量平均分子量(Mw)7万、Δnが約0.04)を、シクロヘキサノン(溶媒)に溶解し、25質量%に調製した溶液を、実施例152において得られたセルロースアシレートフィルム上に塗布した。その後100℃で10分熱処理し、熱処理後、130℃で15%縦一軸延伸することにより膜厚5.7μmのポリイミド層が実施例152で得られたセルロースアシレートフィルム上に形成された位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの光学特性は、Re=70nm、Rth=220nm、配向軸のズレ角度は±0.3°以内で、nx>ny>nzの複屈折層を持つ位相差フィルムであった。
【0119】
[比較例201]
(位相差フィルムの作製)
実施例201において、実施例152で得られたセルロースアシレートフィルムを、比較例103のセルロースアシレートフィルムに変更した以外は、実施例201と全く同様に実施して位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの光学特性は、Re=70nm、Rth=260nm、配向軸のズレ角度は±0.3°以内で、nx>ny>nzの複屈折層を持つ位相差フィルムであった。
【0120】
[実施例301〜320、比較例301〜310]
(偏光板の作製)
フィルムを鹸化処理し、偏光板を作製した。
【0121】
1)フィルムの鹸化
下記表3に記載のフィルムAおよびフィルムBを55℃に調温した1.5mol/LのNaOH水溶液(けん化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、さらに水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
【0122】
2)偏光層の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光層を調製した。
【0123】
3)貼り合わせ
このようにして得た偏光層と、前記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び(それぞれフィルムA、フィルムBとし、下記表3に各実施例および比較例における組み合せを記載した。)、フィルムの鹸化面を偏光膜側に配置し、これらで前記偏光層を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせた。
なお、下記表3中、「タックB」とは、フジタックTD80UF(富士写真フイルム(株)製;40℃・相対湿度90%における透湿度=430g/(m2・day)(膜厚80μm換算))を示し、「ポリカーボネート」とは、パンライトC1400(帝人化成(株)製;40℃・相対湿度90%における透湿度=30g/(m2・day)(膜厚80μm換算))を示し、「COP1」とは、アートンフィルム(膜厚80μm、JSR(株)製;40℃・相対湿度90%における透湿度=30g/(m2・day)(膜厚80μm換算))を示す。また、「COP2」とは、ゼオノアフィルム(膜厚100μm、日本ゼオン製;40℃・相対湿度90%における透湿度=0g/(m2・day)(膜厚80μm換算)を示す。
また、比較例304では、フィルムの表面処理をコロナ処理に変更して貼り合わせを実施した。
さらに、実施例320および比較例310では、偏光膜との貼り合せ面をポリイミドを塗布していない側にし、位相差フィルムの遅相軸方向と偏光板の吸収軸とが直交するように貼り合せた。
【0124】
(偏光板の評価)
[初期偏光度]
前記偏光板の偏光度を前述した方法で算出した。結果を下記表3に示す。
【0125】
[経時偏光度1]
前記偏光板のフィルムA側を粘着剤でガラス板に貼り合わせ、60℃・相対湿度95%の条件で500時間放置し、放置後の偏光度(経時偏光度)を前述の方法で算出した。結果を下記表3に示す。
【0126】
[経時偏光度2]
前記偏光板のフィルムA側を粘着剤でガラス板に貼り合わせ、90℃・相対湿度0%の条件で500時間放置し、放置後の偏光度(経時偏光度)を前述の方法で算出した。結果を下記表3に示す。
【0127】
【表3】

【0128】
《実施例401〜420》
(液晶表示装置への実装評価)
各実施例におけるセルロースアシレートフィルム、位相差フィルムおよび偏光板を用いて、液晶表示装置へ実装評価することにより、その光学性能が十分であるか確認テストを実施した。なお、ここではIPS型、VA型、およびOCB型液晶セルを用いたが、本発明のセルロースアシレートフィルム、位相差フィルムおよび偏光板の用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
【0129】
(IPS型液晶表示装置への実装評価1)
アートンフィルム(JSR(株)製)を用いて、特開平5−157911号公報の方法にしたがって、Reが270nm、Rthが0nmの位相差フィルムを作製した。これに実施例301〜320の偏光板を、位相差フィルムの面内の遅相軸方向と偏光板の透過軸とが直交するように貼り合わせて光学補償機能を持たせた積層体を作製し、それぞれ実施例401〜420とした。
実施例401〜420において、前記積層体をそれぞれ2組ずつ作製し、位相差フィルムが各々液晶セル側となるように、「実施例401〜420における積層体/IPS型の液晶セル/実施例401〜420における積層体」の順番に重ね合わせて組み込んだ液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(即ち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向とは直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものをそのまま使用した。また、液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いた。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5°、ラビング方向:基板上下とも75°であった。
【0130】
前記のように作製した全ての液晶表示装置において、装置正面からの方位角方向45°、極角方向70°における黒表示時の光漏れ率を測定したところ、0.10%以下と良好な視野角特性であり、レターデーションの波長分散性が小さいために、表示色味に優れていることも分かった。
これに対し、比較例304〜309の偏光板を用いて、全く同様の評価を行ったところ、全ての液晶表示装置において、光漏れ率が0.5%程度と、視野角特性に劣ることが分かった。
【0131】
また、実施例313および実施例314の偏光板を組み込んだ液晶表示装置の相対湿度を10%から80%まで変化させた場合に、前述の方法に準じて評価を行い、視認性の変化を観測したところ、レタデーションの湿度依存性が小さいために、変化は観測されなかった。
これに対し、比較例307および308の偏光板を用いて、全く同様の評価を行ったところ、いずれの液晶表示装置においても、湿度変化に伴う視認性の変化が観測された。
【0132】
(IPS型液晶表示装置への実装評価2)
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769および誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
【0133】
このIPSモード液晶セルの一方に、実施例317の偏光板の吸収軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように、且つフィルムA側が液晶セル側になるように貼り合せた。続いて、液晶セルの他方に比較例308における偏光板をクロスニコルの配置で貼り付け、実施例317の偏光板側にバックライトが配置されるように液晶表示装置を作製した。
【0134】
以上と同様に実施例317の偏光板の代わりに比較例308における偏光板を用いて実装評価を行い、液晶表示装置の黒の色味を極角60°における全方位角方向の変化(Δuv)で評価したところ、実施例317を用いた場合では、Δuvが0.05以下となり、実質的に色味変化は感じられなかったのに対し、比較例308における偏光板を2枚用いた場合には、Δuvが0.05を超えてしまい、色味変化が明らかに認められた。しかも、ReやRthが小さく、波長依存性も小さい本発明のセルロースアシレートフィルムおよび偏光板を用いることにより、色味変化が改善されることも分かった。
【0135】
(VA型、OCB型液晶表示装置への実装評価)
実施例101〜114のフィルムを用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、いずれの場合においてもコントラスト視野角が良好な性能が得られた。
【0136】
(VA型液晶表示装置への実装評価)
実施例320の位相差フィルム側が液晶セル側となるように粘着剤でVA型液晶表示装置へ貼り合せた。なお、液晶セルの反対側には偏光板の吸収軸同士が直交するように比較例308における偏光板を粘着剤を介してVA液晶パネルに貼り合せた。以上のようにして得られた液晶表示装置の視野角特性を測定したところ、良好な特性を示すことが分かった。
これに対し、実施例320の代わりに比較例310を用いて実装評価を行ったところ、比較例310を用いた場合では左右上下の視野角が劣ることがわかり、本発明のセルロースアシレートフィルム、位相差フィルムおよび偏光板がVA用の位相差フィルムとしても優れるものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明によれば、光学特性と吸湿率を両立したセルロースアシレートフィルムを提供することができる。また本発明によれば、上記条件を満たすうえにレターデーションが低いセルロースアシレートフィルムを提供することもできる。また、本発明のセルロースアシレートフィルムは適度な透湿度を有するため、偏光膜とオンラインで貼り合わせることができ、視認性に優れた偏光板を生産性よく提供することができる。さらに、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、実施例102および比較例103の、2θが5〜10°の間に存在するピーク強度が最大となる方位における回折プロファイルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折強度が下記式(I)〜(III)の全てを満たし、且つ2θ2における半値幅が3°より大きく7°以下である、セルロースアシレートフィルム。
式(I): 0.40≦Ic2/(Iam2+Ic2)≦0.75
式(II): Iam2=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ2−2θ1)}
式(III): Ic2=I2−Iam2
[式中、2θ1は、2θが4〜5°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ2は、2θが5〜10°の間で強度が最大となる2θを表し、2θ3は、2θが14〜16°の間で強度が最小となる2θを表す。但し、θはブラッグ角である。また、I1は2θ1における回折強度を表し、I2は2θ2における回折強度を表し、I3は2θ3における回折強度を表す。]
【請求項2】
前記X線回折強度が、さらに下記式(IV)〜(VI)の全てを満たす、請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(IV): Ic4/(Iam4+Ic4)≦0.20
式(V): Iam4=I1+{(I3−I1)/(2θ3−2θ1)×(2θ4−2θ1)}
式(VI): Ic4=I4−Iam2
[式中、2θ1は、2θが4〜5°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ3は、2θが14〜16°の間で強度が最小となる2θを表し、2θ4は、2θが12.5〜14°の間のピーク位置を表す。但し、θはブラッグ角である。また、I1は2θ1における回折強度を表し、I3は2θ3における回折強度を表し、I4は2θ4における回折強度を表す。]
【請求項3】
相対湿度80%における吸湿率が3.0%以下である、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項4】
ヘイズが2%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項5】
セルロースアシレートフィルムを(−285×S+970)℃以上(−285×S+1000)℃未満で0.01分以上60分未満熱処理することを含む、セルロースアシレートフィルムの製造方法(ただし、Sはセルロースアシレートフィルムの全置換度を表す)。
【請求項6】
前記熱処理の際にフィルムを幅方向に収縮させることを含む、請求項5に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記幅方向に収縮させる工程における収縮率が0.1〜80%である、請求項6に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項8】
セルロースアシレートフィルムを延伸することを含む、請求項6または7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記熱処理の際にフィルムを延伸しない、請求項5に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、セルロースアシレートフィルム。
【請求項11】
請求項1〜4または請求項10のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚有する、偏光板。
【請求項12】
前記セルロースアシレートフィルムが偏光膜と直接貼合されている、請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
請求項1〜4または請求項10のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、または請求項11または12に記載の偏光板を、少なくとも1枚有する液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−331388(P2007−331388A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132406(P2007−132406)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】