説明

タッチパネル装置およびこれを備えたプラズマディスプレイ装置

【課題】プラズマディスプレイパネルの放射ノイズの影響でタッチ位置の検出精度が低下することを避けることができるようにする。
【解決手段】送信電極7および受信電極8が格子状に設けられて、プラズマディスプレイパネル2の前面に配置されるパネル本体5と、送信電極に対して駆動信号を印加する送信部9と、送信電極に印加する駆動信号に応じて受信電極から出力される応答信号を受信して電極交点ごとの検出データを出力する受信部10と、受信部から出力される電極交点ごとの検出データに基づいてタッチ位置を求める制御部11と、プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知するアンテナ受信回路19と、を備え、制御部は、アンテナ受信回路の検知結果に基づいて、維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データに基づいてタッチ位置を求めるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの前面に配置されるタッチパネル装置およびこれを備えたプラズマディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置には、タッチ位置を検出する原理が異なる種々の方式があるが、抵抗膜方式や静電容量方式のように多数の電極をパネル内に配設した構成のものでは、電極がアンテナとして作用するため、外来ノイズの影響を受け易くなる。特に静電容量方式では、導電性物体(例えば人体)が接近あるいは接触することによる電極近傍の微小な静電容量の変化を利用してタッチ位置を検出することから、ノイズがタッチ位置の検出精度に大きく影響する。
【0003】
一方、タッチパネル装置は、プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネルなどの画像表示装置と組み合わせて用いられることが一般的であるが、画像表示装置をタッチパネル装置と一体化した場合、画像表示装置がノイズ源となって、タッチ位置の検出精度を低下させるという問題があり、このような画像表示装置に起因するノイズによる影響を低減する技術が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−174120号公報
【特許文献2】特開2010−009439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、プラズマディスプレイパネルは、放電に伴う放射ノイズが顕著であるため、前記の従来のノイズ対策は十分な解決策とはならず、タッチ位置の検出精度が大幅に低下して、実用上十分な検出精度を確保することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、プラズマディスプレイパネルと組み合わせて用いる場合に、プラズマディスプレイパネルの放射ノイズの影響でタッチ位置の検出精度が低下することを避けることができるように構成されたタッチパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタッチパネル装置は、互いに並走する複数の送信電極および互いに並走する複数の受信電極が格子状に設けられて、プラズマディスプレイパネルの前面に配置されるパネル本体と、前記送信電極に対して駆動信号を印加する送信部と、前記送信電極に印加する駆動信号に応じて前記受信電極から出力される応答信号を受信して電極交点ごとの検出データを出力する受信部と、前記受信部から出力される電極交点ごとの検出データに基づいてタッチ位置を求める制御部と、前記プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知する維持放電検知手段と、を備え、前記制御部は、前記維持放電検知手段の検知結果に基づいて、維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データのみに基づいてタッチ位置を求める構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラズマディスプレイパネルにおいて大きな放射ノイズが発生する維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データのみに基づいてタッチ位置を求めるため、放射ノイズの影響でタッチ位置の検出精度が低下することを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るプラズマディスプレイ装置1を示す全体構成図
【図2】受信信号処理部16の概略構成図
【図3】PDP2の放電制御を説明する図
【図4】PDP2の放電制御を説明する図
【図5】PDP2の放射ノイズを示す波形図
【図6】アンテナ受信回路19の概略構成図
【図7】タッチパネル装置4の制御部11で行われる処理の手順を示すフロー図
【図8】タッチパネル装置4のパネル本体5とPDP2とを一体化した状態を示す模式的な断面図
【図9】タッチパネル装置4のパネル本体5およびPDP2を示す模式的な平面図
【図10】送信電極7および受信電極8を示す平面図
【図11】本発明に係るタッチパネル装置の別例を示す概略構成図
【図12】本発明に係るタッチパネル装置の制御方法の別例を説明する波形図
【図13】制御部11で行われる処理の手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、互いに並走する複数の送信電極および互いに並走する複数の受信電極が格子状に設けられて、プラズマディスプレイパネルの前面に配置されるパネル本体と、前記送信電極に対して駆動信号を印加する送信部と、前記送信電極に印加する駆動信号に応じて前記受信電極から出力される応答信号を受信して電極交点ごとの検出データを出力する受信部と、前記受信部から出力される電極交点ごとの検出データに基づいてタッチ位置を求める制御部と、前記プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知する維持放電検知手段と、を備え、前記制御部は、前記維持放電検知手段の検知結果に基づいて、維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データのみに基づいてタッチ位置を求める構成とする。
【0011】
これによると、プラズマディスプレイパネルにおいて大きな放射ノイズが発生する維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データのみに基づいてタッチ位置を求めるため、放射ノイズの影響でタッチ位置の検出精度が低下することを避けることができる。
【0012】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記送信電極が、前記プラズマディスプレイパネル側に配置され、前記受信電極が、前記プラズマディスプレイパネルと相反するタッチ面側に配置された構成とする。
【0013】
これによると、受信電極がプラズマディスプレイパネルから離れているため、放射ノイズを受信電極が拾いにくくなり、維持放電期間を除く期間、すなわち初期化放電期間およびアドレス放電期間における放射ノイズの影響を小さく抑えることができる。
【0014】
また、第3の発明は、前記第1若しくは第2の発明において、前記受信電極は、前記プラズマディスプレイパネルの走査電極と直交する方向に配置された構成とする。
【0015】
これによると、プラズマディスプレイパネルの放射ノイズが主に走査電極によるため、受信電極を走査電極と直交する方向に配置することで、放射ノイズを受信電極が拾いにくくなり、維持放電期間を除く期間、すなわち初期化放電期間およびアドレス放電期間における放射ノイズの影響を小さく抑えることができる。
【0016】
また、第4の発明は、前記第1乃至第3の発明において、前記送信電極および前記受信電極は共に、導線が格子状に配置されたメッシュ状電極で構成された構成とする。
【0017】
これによると、導線を微細な線径に形成することで電極を見えにくくして、タッチパネル装置の背面側に配置されるプラズマディスプレイパネルの画面の視認性を高めることができる。また、特にメッシュ状電極で構成された送信電極をプラズマディスプレイパネル側に配置することで、プラズマディスプレイパネルの放射ノイズを遮断するシールド効果が得られるため、維持放電期間を除く期間における放射ノイズの影響を小さく抑えることができる。
【0018】
また、第5の発明は、前記第4の発明において、前記受信電極のメッシュピッチが前記送信電極のメッシュピッチより大きい構成とする。
【0019】
これによると、受信電極のメッシュピッチを大きくすることで、タッチ操作に応じた応答信号の変化率が大きくなり、タッチ位置の検出精度を高めることができる。また、特に送信電極をプラズマディスプレイパネル側に配置した場合、送信電極のメッシュピッチを小さくすることで、送信電極によるシールド効果を向上させることができる。
【0020】
また、第6の発明は、前記第1乃至第5の発明において、前記制御部は、前記送信部による前記送信電極に対する駆動信号の印加および前記受信部による前記受信電極からの出力信号の処理からなるスキャン動作を、維持放電期間か否かに関係なく実行し、前記維持放電検知手段の検知結果に基づいて維持放電期間に取得したものと判断される検出データを破棄して、その破棄された電極交点の検出データを再取得するためにスキャン動作をやり直す構成とする。
【0021】
これによると、維持放電期間を除く期間を最大限に有効利用して電極交点ごとの検出データを取得することができるため、1フレーム分の電極交点ごとの検出データを効率良く取得することができる。
【0022】
なお、この他に、維持放電期間を避けてスキャン動作を行い、これにより取得した電極交点ごとの検出データに基づいてタッチ位置を求める構成も可能である。
【0023】
また、第7の発明は、前記第1乃至第6の発明において、前記維持放電検知手段は、前記プラズマディスプレイパネルの放射ノイズを検出するアンテナの出力信号に基づいて前記プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知する構成とする。
【0024】
これによると、維持放電期間でプラズマディスプレイパネルの放射ノイズが顕著になるため、放射ノイズの大きさで維持放電期間を検知することができる。この場合、アンテナは、感度を高めるためにプラズマディスプレイパネルの動作周波数の近傍に共振周波数を有する特性に設定するとよい。
【0025】
また、第8の発明は、前記第1乃至第6の発明において、前記維持放電検知手段は、前記プラズマディスプレイパネルの放射光を検出する光センサの出力信号に基づいて前記プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知する構成とする。
【0026】
これによると、プラズマディスプレイパネルの放電セルが維持放電期間で発光するため、発光の有無で維持放電期間を検知することができる。この場合、プラズマディスプレイパネルの表示領域の外周縁部で、実際に画像が表示される領域の外側に、光センサを配置すればよい。なお、光センサは、可視光および赤外光のいずれを検出するものであってもよい。
【0027】
また、第9の発明は、プラズマディスプレイ装置であり、前記第1乃至第8の発明に係るタッチパネル装置を、前記プラズマディスプレイパネルの前面に備えた構成とする。
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明に係るプラズマディスプレイ装置1を示す全体構成図である。このプラズマディスプレイ装置1は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼称する)2と、PDP制御部3と、タッチパネル装置4とからなっており、タッチパネル装置4のパネル本体5がPDP2の表示面の前側に配置されている。
【0030】
タッチパネル装置4のパネル本体5は、指示物(ユーザの指先及びスタイラスや指示棒等の導電体)によるタッチ操作が行われるタッチ面6を備え、互いに並走する複数の送信電極7と互いに並走する複数の受信電極8とが格子状に配置されている。
【0031】
また、タッチパネル装置4は、送信電極7に対して駆動信号を印加する送信部9と、送信電極7に印加された駆動信号に応答した受信電極8の応答信号を受信して、送信電極7と受信電極8とが交差する電極交点ごとの検出データを出力する受信部10と、この受信部10から出力される検出データに基づいてタッチ位置を検出すると共に送信部9及び受信部10の動作を制御する制御部11とを備えている。
【0032】
制御部11から出力されるタッチ位置情報は、パソコンなどの外部機器12に入力され、ここで生成した表示画面データがPDP2を制御するPDP制御部3に出力される。これによりパネル本体5のタッチ面6上でユーザが指示物で行ったタッチ操作に対応した画像がPDP2の画面に表示され、タッチ面6にマーカーで直接描画するのと同様の感覚で所要の画像を表示させることができ、またPDP2の表示画面に表示されたボタンなどを操作することができる。さらに、タッチ操作で描かれた画像を消去するイレーサを用いることもできる。
【0033】
送信電極7と受信電極8とは、絶縁層を挟んで重なり合う態様で交差しており、この送信電極7と受信電極8とが交差する電極交点にはコンデンサが形成され、ユーザが指等の指示物でタッチ操作を行う際に、指示物がタッチ面6に接近あるいは接触すると、これに応じて電極交点の静電容量が実質的に減少することで、タッチ操作の有無を検出することができる。
【0034】
ここでは、相互容量方式が採用されており、送信電極7に駆動信号を印加すると、これに応答して受信電極8に充放電電流が流れ、この充放電電流が応答信号として受信電極8から出力され、このとき、ユーザのタッチ操作に応じて電極交点の静電容量が変化すると、受信電極8の充放電電流、すなわち応答信号が変化し、この変化量に基づいてタッチ位置が算出される。この相互容量方式では、受信部10で応答信号を信号処理して得られる検出データが、送信電極7と受信電極8とによる電極交点ごとに出力されるため、同時に複数のタッチ位置を検出する、いわゆるマルチタッチ(多点検出)が可能である。
【0035】
制御部11のタッチ位置算出部17は、受信部10から出力される電極交点ごとの検出データから所定の演算処理によってタッチ位置(タッチ領域の中心座標)を求める。このタッチ位置の演算では、X方向(受信電極8の配列方向)とY方向(送信電極7の配列方向)とでそれぞれ隣接する複数(例えば4×4)の電極交点ごとの検出データから所要の補間法(例えば重心法)を用いてタッチ位置を求める。これにより、送信電極7及び受信電極8の配置ピッチ(例えば10mm)より高い分解能(例えば1mm以下)でタッチ位置を検出することができる。
【0036】
また、制御部11のタッチ位置算出部17では、タッチ面6の全面に渡って電極交点ごとの検出データの受信が終了する1フレーム周期ごとにタッチ位置を求める処理が行われ、タッチ位置情報がフレーム単位で外部機器12に出力される。外部機器12では、時間的に連続する複数のフレームのタッチ位置情報に基づいて、各タッチ位置を時系列に連結する表示画面データを生成して、PDP制御部3に出力する。なお、マルチタッチの場合には、複数の指示物によるタッチ位置を含むタッチ位置情報がフレーム単位で出力される。
【0037】
送信部9は、駆動信号となるパルスを発生する送信パルス発生部13と、送信電極7を1本ずつ選択して、送信パルス発生部13から出力されたパルスを送信電極7に順次印加する電極選択部14と、を備えている。
【0038】
受信部10は、受信電極8から出力される応答信号を処理する受信信号処理部16と、受信電極8を1本ずつ選択して、受信電極8からの応答信号を受信信号処理部16に順次入力させる電極選択部15と、を備えている。
【0039】
送信部9および受信部10は、制御部11から出力される同期信号に応じて動作し、1本の送信電極7にパルス信号を印加する間に、受信電極8を1本ずつ選択して、受信電極8からの応答信号を受信信号処理部16に順次入力させ、これを全ての送信電極7について順次繰り返すことで、全ての電極交点ごとの応答信号を取り出すことができる。
【0040】
図2は、受信信号処理部16の概略構成図である。この受信信号処理部16は、IV変換部21と、バンドパスフィルタ22と、絶対値検知部23と、積分部24と、サンプルホールド部25と、AD変換部26とを備えている。
【0041】
IV変換部21では、電極選択部15を介して入力される受信電極8の応答信号(充放電電流信号)が電圧信号に変換される。バンドパスフィルタ22では、IV変換部21の出力信号に対して、送信電極7に印加される駆動信号の周波数以外の周波数成分を有する信号を除去する処理が行われる。絶対値検出部(整流部)23では、バンドパスフィルタ22の出力信号に対して全波整流が行われる。積分部24では、絶対値検出部23の出力信号を時間軸方向に積分する処理が行われる。サンプルホールド部25では、積分部24の出力信号を所定のタイミングでサンプリングする処理が行われる。AD変換部26では、サンプルホールド部25の出力信号をAD変換して電極交点ごとの検出データ(レベル信号)を出力する。
【0042】
図3および図4は、PDP2の放電制御を説明する模式図である。図3に示すように、PDP2は、維持電極31と、走査電極32と、アドレス電極33と、を備えている。維持電極31および走査電極32は互いに平行に配置され、アドレス電極33は維持電極31および走査電極32に対して直交する向きに配置されている。PDP2は、ADSサブフィールド法(Address and Display period Separated sub-field method,アドレス・表示分離型サブフィールド法)により駆動される。図4に示すように、1フィールドを時間軸上で複数(ここでは8つ)のサブフィールドに分割し、各サブフィールドでは、初期化放電とアドレス放電と維持放電とが順次繰り返される。これにより、多階調の画像を表示することができる。
【0043】
図3(A)に示したように、初期化放電では、維持電極31と走査電極32との間で放電が行われ、この放電は全ての放電セルに対して同時に行われる。図3(B)に示したように、アドレス放電では、走査電極32とアドレス電極33との間で放電が行われ、走査電極32とアドレス電極33との交点に位置する放電セルが選択される。図3(C)に示したように、維持放電では、維持電極31と走査電極32との間で放電が行われ、アドレス放電で選択された放電セルのみが放電し、これにより映像が表示される。
【0044】
図5は、PDP2の放射ノイズを示す波形図であり、(A)の要部を(B)に拡大してして示す。初期化放電期間、アドレス放電期間、および維持放電期間のいずれにおいても放射ノイズが発生しているが、維持放電期間では、初期化放電期間およびアドレス放電期間に比較して特に大きな放射ノイズが発生しており、この放射ノイズの影響でタッチ位置の誤検出が発生する。そこでここでは、以下に説明するように、特に放射ノイズが大きい維持放電期間を検知して、放射ノイズによるタッチ位置の誤検出が発生しないようにしている。
【0045】
図1に示したように、タッチパネル装置4は、PDP2の放射ノイズを検出するアンテナ18を備えており、制御部11は、アンテナ18の出力信号に基づいてPDP2の維持放電期間を検知するアンテナ受信回路(維持放電検知手段)19を備えており、タッチ位置算出部17では、アンテナ受信回路19の検知結果に基づいて、維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データのみに基づいてタッチ位置を求めるようにしている。
【0046】
図6は、アンテナ受信回路19の概略構成図である。アンテナ受信回路19は、アンテナ18から出力されるアナログ信号を処理して、維持放電期間か否かを示す維持放電期間検知信号を出力するものであり、アンテナ出力検知部41と、全波整流部42と、平滑化部43と、比較部44と、を備えている。
【0047】
このアンテナ受信回路19では、アンテナ18の出力信号がアンテナ出力検知部41に入力し、全波整流部42で全波整流が行われ、平滑化部43で平滑化処理が行われ、比較部44で所定の閾値との比較により維持放電期間か否かを示す維持放電期間検知信号を出力する。PDP2では、維持放電期間で放射ノイズが顕著になるため、放射ノイズの大きさで維持放電期間を検知することができる(図5参照)。なお、維持放電期間検知信号は、例えば維持放電期間であれば1、維持放電期間でなければ0とすればよい。
【0048】
アンテナ18は、例えば基板上に導線をループ状に形成したものでよく、感度を高めるためにPDP2の動作周波数の近傍に共振周波数を有する特性に設定するとよい。このアンテナ18は、PDP2の表示領域外、すなわちタッチパネル装置4およびPDP2を収容する筐体46のベゼル部47で覆われる位置に配置すればよい。
【0049】
図7は、タッチパネル装置4の制御部11で行われる処理の手順を示すフロー図である。ここでは、スキャン動作、すなわち送信部9による送信電極7に対する駆動信号の印加および受信部10による受信電極8からの出力信号の処理を、PDP2の維持放電期間か否かに関係なく実行し、維持放電期間に取得した検出データを破棄して、その破棄された電極交点の検出データを再取得するためにスキャン動作をやり直すようにしている。
【0050】
具体的には、まず、スキャン動作を実行させて電極交点ごとの検出データを取得し(ST101)、ついでアンテナ受信回路19から出力される維持放電期間検知信号が維持放電期間であることを示していると(ST102でYes)、同じ電極交点の検出データを再取得のための処理が行われる(ST103)。一方、維持放電期間でなければ(ST102でNo)、次の電極交点の検出データを取得するための処理が行われる(ST104)。
【0051】
このようにして維持放電期間に取得した検出データを破棄してスキャン動作をやり直すことにより、維持放電期間を除く期間、すなわち初期化放電期間およびアドレス放電期間のみで取得した電極交点ごとの検出データを、1フレーム分取得することができ、1フレーム分の検出データが揃ったところで、その検出データに基づくタッチ位置算出処理が行われる。
【0052】
なお、制御部11では、スキャン動作により電極交点ごとの検出データを受信部10から取得し、このときアンテナ受信回路19の維持放電期間検知信号を同時に受信して、検出データが維持放電期間に取得したものか否かの判定(ST102)が行われる。また、検出データの破棄と、検出データを再取得するためにスキャン動作は、1本の送信電極7に対応する1ライン単位で行うようにするとよい。
【0053】
以上のように、PDP2において大きな放射ノイズが発生する維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データのみに基づいてタッチ位置を求めるため、放射ノイズの影響でタッチ位置の検出精度が低下することを避けることができる。特に、スキャン動作を、維持放電期間か否かに関係なく実行した上で、維持放電期間に取得した検出データを破棄して、スキャン動作をやり直すことにより、維持放電期間を除く期間を最大限に有効利用して電極交点ごとの検出データを取得することができるため、1フレーム分の電極交点ごとの検出データを効率良く取得することができる。
【0054】
図8は、タッチパネル装置4のパネル本体5とPDP2とを一体化した状態を示す模式的な断面図である。タッチパネル装置4のパネル本体5に設けられた送信電極7はPDP2側に配置され、受信電極8はPDP2と相反するタッチ面6側に配置されている。送信電極7は送信電極基板51上に形成され、受信電極8は受信電極基板52上に形成されている。送信電極基板51および受信電極基板52はPETなどの透明な絶縁材料で形成される。受信電極8の表面側には、タッチ面6を形成する表面板53が配置されている。表面板53は、ガラスなどの透明な絶縁材料で形成される。なお、PDP2には、前記のように維持電極31、走査電極32、アドレス電極33が配設されている。
【0055】
前記のように、PDP2では、維持放電期間を除く期間にも初期化放電およびアドレス放電が行われているが、ここでは受信電極8がPDP2から離れているため、PDP2の放射ノイズを受信電極8が拾いにくくなり、維持放電期間を除く期間、すなわち初期化放電期間およびアドレス放電期間における放射ノイズの影響を小さく抑えることができる。
【0056】
なお、タッチパネル装置4は、指の他に電子ペンによるタッチ操作を検出するように構成してもよく、この場合、電子ペンのペン識別信号を受信電極8を介して送信するようにすると、描画色などの属性(機能)の異なる複数の電子ペンを使い分けて使用することができ、使い勝手が向上する。このような構成では、PDP2の放射ノイズでペン識別信号の送信が阻害されることが考えられるが、受信電極8がタッチ面6側に配置されているので、PDP2の放射ノイズの影響を受けにくくなるため、ペン識別信号による電子ペンの識別を確実に行うことができる。
【0057】
図9は、タッチパネル装置4のパネル本体5およびPDP2を示す模式的な平面図である。図9(A)に示すように、タッチパネル装置4のパネル本体5では、送信電極7がX方向に延在し、受信電極8がY方向に延在している。一方、図9(B)に示すように、PDP2では、維持電極31および走査電極32がX方向に延在し、アドレス電極33がY方向に延在している。したがって、タッチパネル装置4の受信電極8は、PDP2の走査電極32と直交する方向に配置された状態となっている。
【0058】
前記のように、PDP2では、維持放電期間を除く期間にも初期化放電およびアドレス放電が行われているが、PDP2の放射ノイズは主に走査電極32によるため、受信電極8を走査電極32と直交する方向に配置することで、放射ノイズを受信電極8が拾いにくくなり、維持放電期間を除く期間、すなわち初期化放電期間およびアドレス放電期間における放射ノイズの影響を小さく抑えることができる。
【0059】
図10は、送信電極7および受信電極8を示す平面図である。送信電極7は、導線61a,61bが格子状に配置されたメッシュ状電極で構成されている。導線61aは、送信電極7の長手方向に対して時計方向に所定角度θだけ傾いた方向に延在し、導線61bは、送信電極7の長手方向に対して反時計方向に所定角度θだけ傾いた方向に延在し、導線61a,61bの交差角度2θを90度より小さくすることで、菱形格子が連続する形態をなしている。なお、導線61a,61bは、交差部分で互いに電気的に接続されている。
【0060】
受信電極8も、送信電極7と同様に、導線62a,62bが格子状に配置されたメッシュ状電極で構成されており、導線62a,62bの配置形態も、送信電極7の導線61a,61bと同様であるが、受信電極8のメッシュピッチP2は、送信電極7のメッシュピッチP1より大きくなっている(P1<P2)。
【0061】
このように送信電極7および受信電極8を構成して、導線61a,61b,62a,62bを微細な線径に形成することにより、送信電極7および受信電極8を見えにくくして、タッチパネル装置4の背面側に配置されるPDP2の画面の視認性を高めることができ、さらに、PDP2の画素パターンに送信電極7および受信電極8が重なり合うことで発生するモアレを抑制することができる。また、受信電極8のメッシュピッチを大きくすることで、タッチ操作に応じた応答信号の変化率が大きくなり、タッチ位置の検出精度を高めることができる。
【0062】
また、図8に示したように、PDP2側に配置される送信電極7をメッシュ状電極とすることで、PDP2の放射ノイズを遮断するシールド効果が得られるが、この送信電極7のメッシュピッチを小さくすることで、送信電極7によるシールド効果を向上させることができる。また、送信部9の電極選択部15で送信電極7を1本ずつ選択して駆動信号を印加する際に、非選択状態にある送信電極7をGND接続することで、シールド効果をより一層高めることができる。
【0063】
図11は、本発明に係るタッチパネル装置の別例を示す概略構成図である。なお、ここでは前記の例と異なる点にのみ言及し、その他の構成は前記の例と同様である。
【0064】
ここでは、前記の例でのアンテナ18およびアンテナ受信回路19に代えて、PDP2の放射光を検出する光センサ71と、光センサ71の出力信号に基づいてPDP2の維持放電期間を検知する受光回路(維持放電検知手段)72とが設けられている。PDP2では、画素(放電セル)が維持放電期間で発光するため、光センサ71でPDP2の放射光を検出することで、維持放電期間を検知することができる。
【0065】
受光回路72は、光センサ71から出力されるアナログ信号を処理して、維持放電期間か否かを示す維持放電期間検知信号を出力するものであり、IV変換部73と、全波整流部74と、平滑化部75と、比較部76と、を備えている。この受光回路72では、光センサ71の出力信号に対してIV変換、全波整流、および平滑化処理が行われ、比較部76で所定の閾値との比較により維持放電期間か否かを示す維持放電期間検知信号を出力する。PDP2では、放電セルが維持放電期間で発光するため、発光の有無で維持放電期間を検知することができる。
【0066】
光センサ71は、例えばフォトダイオードで構成され、筐体46のベゼル部47で覆われる位置、特にPDP2の表示領域77の外周縁部で、実際に画像が表示される領域の外側に配置すればよい。また、PDP2の表示領域77内における光センサ71による監視領域の画素を常時点灯状態として、全てのサブフィールドで維持放電が行われるようにするとよい。なお、光センサ71は、可視光および赤外光のいずれを検出するものであってもよい。
【0067】
図12は、本発明に係るタッチパネル装置の制御方法の別例を説明する波形図である。図13は、制御部11で行われる処理の手順を示すフロー図である。
【0068】
ここでは、維持放電期間を避けてスキャン動作、すなわち送信部9による送信電極7に対する駆動信号の印加および受信部10による受信電極8からの出力信号の処理を行い、これにより取得した電極交点ごとの検出データに基づいてタッチ位置を求めるようにしている。またここでは、維持放電が終了した後に所定の待ち時間をおいてスキャン動作を行うようにしている。
【0069】
具体的には、図13に示すように、アンテナ受信回路19が出力する維持放電期間検知信号が維持放電期間が終了したことを示していると(ST201でYes)、所定の待ち時間が経過した後(ST202)、所定回数のスキャン動作を実行させる(ST203)。ここでは、1本の送信電極7に対応する1ライン分のスキャン動作が所定回数(例えば10回)実行され、所定ライン数の電極交点ごとの検出データを取得する。
【0070】
このように維持放電期間が終了するのに応じて、1ライン分のスキャン動作を所定回数実行して、所定ライン数の電極交点ごとの検出データを取得し、これを維持放電期間が終了するたびに繰り返すことで1フレーム分の電極交点ごとの検出データを取得することができ、1フレーム分の検出データが揃ったところで、その検出データに基づくタッチ位置算出処理が行われる。
【0071】
なお、制御部11で行われる前記の処理は、CPUで所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、アンテナ受信回路19が出力する維持放電期間検知信号に応じたCPUでの割り込みにより前記の処理が実行される。
【0072】
この図13に示した処理方法は、図4に示したように、サブフィールドごとに維持放電が実行され、維持放電が終了するたびに定期的に放射ノイズが低くなる期間(初期化放電期間およびアドレス放電期間)が現れる場合に都合がよい。一方、サブフィールドでの維持放電を適宜に省略する制御もあり、この場合には、維持放電が定期的に行われないため、前記の図7に示した処理方法の方が都合がよい。
【0073】
なお、前記の例では、図1に示したように、PDP2の放射ノイズを検出するためにアンテナ18を設けたが、受信電極8で放射ノイズを検出する構成も可能である。この場合、受信電極8の1本をタッチ位置検出に用いないダミー電極として放射ノイズを検出する構成が簡便である。
【0074】
また、前記の例では、PDP2の放射ノイズや放射光に基づいてPDP2の維持放電期間を検知するものとしたが、PDP2側から維持放電期間か否かを示す信号を出力させ、その信号に基づいてタッチパネル装置2側で維持放電期間を検知する構成も可能である。この場合、PDP2側に信号を生成出力する手段を設ける必要がある。これに対して、PDP2の放射ノイズや放射光に基づいて維持放電期間を検知する構成は、PDP2側に特別な構成を付加する必要がなく、簡便に実施することができ、製造コストの上昇を抑えることができる利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかるタッチパネル装置およびこれを備えたプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネルの放射ノイズの影響でタッチ位置の検出精度が低下することを避けることができる効果を有し、プラズマディスプレイパネルの前面に配置されるタッチパネル装置およびこれを備えたプラズマディスプレイ装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 プラズマディスプレイ装置
2 PDP(プラズマディスプレイパネル)
3 PDP制御部
4 タッチパネル装置
5 パネル本体
6 タッチ面
7 送信電極
8 受信電極
9 送信部
10 受信部
11 制御部
17 タッチ位置算出部
18 アンテナ
19 アンテナ受信回路(維持放電検知手段)
31 維持電極
32 走査電極
33 アドレス電極
71 光センサ
72 受光回路(維持放電検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並走する複数の送信電極および互いに並走する複数の受信電極が格子状に設けられて、プラズマディスプレイパネルの前面に配置されるパネル本体と、
前記送信電極に対して駆動信号を印加する送信部と、
前記送信電極に印加する駆動信号に応じて前記受信電極から出力される応答信号を受信して電極交点ごとの検出データを出力する受信部と、
前記受信部から出力される電極交点ごとの検出データに基づいてタッチ位置を求める制御部と、
前記プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知する維持放電検知手段と、を備え、
前記制御部は、前記維持放電検知手段の検知結果に基づいて、維持放電期間を除く期間で取得した電極交点ごとの検出データのみに基づいてタッチ位置を求めることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記送信電極が、前記プラズマディスプレイパネル側に配置され、前記受信電極が、前記プラズマディスプレイパネルと相反するタッチ面側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記受信電極は、前記プラズマディスプレイパネルの走査電極と直交する方向に配置されたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記送信電極および前記受信電極は共に、導線が格子状に配置されたメッシュ状電極で構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記受信電極のメッシュピッチが前記送信電極のメッシュピッチより大きいことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記送信部による前記送信電極に対する駆動信号の印加および前記受信部による前記受信電極からの出力信号の処理からなるスキャン動作を、維持放電期間か否かに関係なく実行し、前記維持放電検知手段の検知結果に基づいて維持放電期間に取得したものと判断される検出データを破棄して、その破棄された電極交点の検出データを再取得するためにスキャン動作をやり直すことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項7】
前記維持放電検知手段は、前記プラズマディスプレイパネルの放射ノイズを検出するアンテナの出力信号に基づいて前記プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項8】
前記維持放電検知手段は、前記プラズマディスプレイパネルの放射光を検出する光センサの出力信号に基づいて前記プラズマディスプレイパネルの維持放電期間を検知することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のタッチパネル装置を、前記プラズマディスプレイパネルの前面に備えたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−138036(P2012−138036A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291488(P2010−291488)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】