説明

タービンエンジンの構成部品及びその製造方法

【課題】 高温条件下で作動する金属製の構成部品の断熱に用いられるコーティングの耐久性が、エンジンの運転状態の影響を受けないようなコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】 タービンエンジンの構成部品は、支持体(12)と、該支持体(12)の表面に施されるボンディングコート(14)と、該ボンディングコート(14)の表面に施されたクラック化構造を有する第1のセラミック層(16)と、該第1のセラミック層(16)の表面に施されたクラック化構造を有する第2のセラミック層と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンの構成部品、例えばブレード、ベーン、燃焼器パネル、又はシールに施される2層セラミックコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルバリアコーティングは、高温条件下で作動する金属製の構成部品の断熱に用いられる。タービンの構成部品は、一般に、1800°Fを超える温度条件下で酸化されるニッケルベースの合金である。燃焼器及びタービンの高温での運転を可能にするために、ブレード、ベーン、燃焼器及びシールに対して、セラミックコーティングが施されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コーティングの耐久性が、エンジンの運転状態に起因して影響を受ける場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、コーティングが熱サイクルで膨張及び縮小可能であり、これによって歪み耐性を増大させて、耐久性を増大する構造を有する2層セラミックコーティングが提供される。
【0005】
本発明によると、支持体と、該支持体の表面に施されるボンディングコートと、該ボンディングコートの上に施され、クラック化構造を有する第1のセラミック層と、該第1のセラミック層の上に施され、クラック化構造を有する第2のセラミック層と、を含むタービンエンジンの構成部品が提供される。
【0006】
更に、本発明によると、タービンエンジンの構成部品の製造方法が提供される。かかる方法は、支持体を準備するステップと、支持体の表面にボンディングコートを施すステップと、ボンディングコートの上にクラック化構造を有する第1のセラミック層を施すステップと、第1のセラミック層の上にクラック化構造を有する第2のセラミック層を施すステップと、を概して含む。
【0007】
本発明による2層セラミックコーティングに関する他の詳細、並びにこれに伴う他の目的及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面に示され、図面において、同様の符号は、同様の構成要素を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、タービンエンジンの構成部品、例えばブレード、ベーン、燃焼器パネル、又はシールに施される2層セラミックコーティングに関する。2層セラミックコーティングは、熱サイクルで膨張及び縮小可能であり、これによって歪み耐性を増大させて、耐久性を増大する。
【0009】
タービンエンジンの構成部品10は、金属製の材料、例えばニッケルベースの合金、コバルトベースの合金、耐熱金属合金、セラミックベースの合金、シリカベースの合金、又はセラミックマトリックス複合材料から形成される支持体12を含む。該支持体12の表面の上にボンディングコート14が施される。ボンディングコート14は、MCrAlY、例えば白金アルミナイドなどのアルミナイド、セラミック材料、及びシリカベースの材料からなる群から選択される材料から形成されても良い。ボンディングコート14は、当該分野で知られている好適な技術で施されても良い。ボンディングコート14は、溶射技術を用いて堆積されるのが好ましい。かかる技術において、スプレートーチは、60トール(60mmHg)未満の圧力か、又は空気等の他の好適な雰囲気下において、真空チャンバー中で操作可能である。真空チャンバーを用いる場合、支持体は、約1500〜約2000°Fの温度まで加熱されても良い。空気雰囲気下の場合、支持体の温度は、600°F未満に保持される。ボンディングコートは、高速フレーム溶射(HVOF)として知られている処理方法によって施されても良い。かかる堆積法では、スプレートーチを利用し、スプレートーチにおいては、液体の燃料又は気体を酸素と燃焼させて、高速の気体流を生成し、この気体流に、粉末化コーティング材料を注入し、加熱し、支持体に噴きつける(propel)。
【0010】
ボンディングコート14に用いられる粒径は、約15〜約100ミクロンの範囲であっても良く、約25ミクロンの平均粒径が好ましい。ボンディングコートは、約5.0〜約15ミル(mil)の範囲の厚さに施されても良い。
【0011】
金属製のボンディングコートの堆積後、2層セラミックコーティングは、金属製のボンディングコートに亘って形成される。第1のセラミック層16は、1.0〜25重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなる組成を有するイットリア安定化ジルコニアから形成されるのが好ましい。好ましい実施形態において、第1の層は、7重量%のイットリア安定化ジルコニアである。第2のセラミック層18は、5.0〜99重量%のガドリニア、好ましくは30〜70重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなる組成を有するガドリニア安定化ジルコニアから形成されるのが好ましい。好ましい実施形態において、第2のセラミック層18は、59重量%のガドリニア及び残部はジルコニアから形成される。
【0012】
必要により、第1のセラミック層16は、上述のガドリニア安定化ジルコニアから形成可能であり、第2のセラミック層18は、上述のイットリア安定化ジルコニアから形成可能である。
【0013】
各々の第1のセラミック層16及び第2のセラミック層18は、歪み適合性があり、剥離(spallation)に対して更に耐性を有するクラック化(セグメント化)構造を形成する溶射パラメータを用いる代表的な技術を利用することによって形成される。本発明のコーティングを形成する好ましい技術は、溶射、更に好ましくはプラズマ溶射によって行われる。好ましい噴射角度は、約90°であるが、噴霧角度は、複雑な部品の幾何形状に伴って変更することができる。部品までのガンの距離は、2.0〜5.0インチで変更可能である。かかる技術において、キャリアガスを使用する。5.0〜20SCFH(1時間あたりの標準立方フィート)のキャリアガス流量を用いるのが好ましい。溶射パラメータ、例えば第1のガス流量、第2のガス流量、ガンの電圧、及びガンの電流は、使用される器具の種類と共に変更することができる。
【0014】
第1のセラミックコーティング層16及び第2のセラミックコーティング層18におけるクラック化構造により、2層セラミックコーティングは、熱サイクルで膨張及び縮小可能であり、これによって歪み耐性を増大させて、耐久性を増大する。ガドリニア安定化ジルコニア、例えば59重量%のガドリニア安定化ジルコニアは、イットリア安定化ジルコニア、例えば7重量%のイットリア安定化ジルコニアの熱伝導性のおよそ半分を有し、一方、イットリア安定化ジルコニア、例えば7重量%のイットリア安定化ジルコニアは、高い靱性(toughness)を有する。
【0015】
第1のセラミックコーティング層16及び第2のセラミックコーティング層18の各々は、5.0〜50ミルの範囲の厚さを有していても良い。
【0016】
本発明における2層セラミックコーティングに対する一の利点は、熱伝導性を低減しつつ耐久性を増大させることである。
【0017】
かかるセラミックコーティングに対する他の利点は、段階的な領域が存在しないことである。上層に伝導性の低いセラミック材料を有し、下層にイットリア安定化ジルコニア材料を有するシステムは、逆のシステムと比較して、高い磨耗性(abradable)を有する。その上、本発明のコーティング組成物における層は、用途に応じて交換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】2層セラミックコーティングを有するタービンエンジンの構成部品を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体の表面に施されたボンディングコートと、
前記ボンディングコートの上に施されたクラック化構造を有する第1のセラミック層と、
前記第1のセラミック層の上に施されたクラック化構造を有する第2のセラミック層と、
を含むタービンエンジンの構成部品。
【請求項2】
前記第1のセラミック層はイットリア安定化ジルコニアを含み、前記第2のセラミック層はガドリニア安定化ジルコニアを含む請求項1に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項3】
前記イットリア安定化ジルコニアは、1.0〜25重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなり、前記第2のセラミック層は、30〜70重量%のガドリニア及び残部のジルコニアを含む請求項2に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項4】
前記イットリア安定化ジルコニアは、7重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなり、前記ガドリニア安定化ジルコニアは、59重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなる請求項2に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項5】
前記第2のセラミック層は、イットリア安定化ジルコニアを含み、前記第1のセラミック層は、ガドリニア安定化ジルコニアを含む請求項1に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項6】
前記イットリア安定化ジルコニアは、1.0〜25重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなり、前記第1のセラミック層は、30〜70重量%のガドリニア及び残部のジルコニアを含む請求項5に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項7】
前記イットリア安定化ジルコニアは、7重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなり、前記ガドリニア安定化ジルコニアは、59重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなる請求項5に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項8】
前記ボンディングコートは、金属製のボンディングコートである請求項1に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項9】
前記タービンエンジンの構成部品は、ブレード、ベーン、燃焼器パネル又はシールのいずれかである請求項1に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項10】
前記支持体は、ニッケルベースの合金、コバルトベースの合金、耐熱金属合金、セラミックベースの合金、シリカベースの合金、及びセラミックマトリックス複合材料からなる群から選択される材料から形成される請求項1に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項11】
前記第1のセラミック層及び第2のセラミック層の各々は、5.0〜50ミル(約0.13〜1.3mm)の範囲の厚さを有する請求項1に記載のタービンエンジンの構成部品。
【請求項12】
支持体を準備するステップと、
前記支持体の表面にボンディングコートを施すステップと、
前記ボンディングコートの上にクラック化構造を有する第1のセラミック層を施すステップと、
前記第1のセラミック層の上にクラック化構造を有する第2のセラミック層を施すステップと、
を含むことを特徴とするタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項13】
前記第1のセラミック層を施すステップでは、イットリア安定化ジルコニアを含む第1の層を施し、且つ前記第2のセラミック層を施すステップでは、ガドリニア安定化ジルコニアを含む第2の層を施す請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項14】
前記第1のセラミック層を施すステップでは、1.0〜25重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなるイットリア安定化ジルコニアを含む第1の層を施し、且つ前記第2のセラミック層を施すステップでは、30〜70重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなるガドリニア安定化ジルコニアを含む第2の層を施す請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項15】
前記第1のセラミック層を施すステップでは、7.0重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなるイットリア安定化ジルコニアを含む第1の層を施し、且つ前記第2のセラミック層を施すステップでは、59重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなるガドリニア安定化ジルコニアを含む第2の層を施す請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項16】
前記第1のセラミック層を施すステップでは、ガドリニア安定化ジルコニアを含む第1の層を施し、且つ前記第2のセラミック層を施すステップでは、イットリア安定化ジルコニアを含む第2の層を施す請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項17】
前記第1のセラミック層を施すステップでは、30〜70重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなるガドリニア安定化ジルコニアを含む第1の層を施し、且つ前記第2のセラミック層を施すステップでは、1.0〜25重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなるイットリア安定化ジルコニアを含む第2の層を施す請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項18】
前記第1のセラミック層を施すステップでは、59重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなるガドリニア安定化ジルコニアを含む第1の層を施し、且つ前記第2のセラミック層を施すステップでは、7.0重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなるイットリア安定化ジルコニアを含む第2の層を施す請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項19】
前記ボンディングコートを施すステップでは、金属製のボンディングコートを施す請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。
【請求項20】
前記第1のセラミック層及び第2のセラミック層の各々は、プラズマ溶射技術を用いて施される請求項12に記載のタービンエンジンの構成部品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−64089(P2008−64089A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−212138(P2007−212138)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】