説明

ターボ機械用の流体シール

【課題】開示するのは、ターボ機械用のシール(10)である。
【解決手段】本シール(10)は、第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間に設置可能なシール面(20)を含む。1以上の流体チャネル(26)が、シールを貫通して延びる。1以上の流体チャネル(26)は、シール面(20)において第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間に流体流(16)を噴射して第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間の漏洩流を妨害することができる。さらに開示するのは、本シール(10)を使用したターボ機械(14)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はターボ機械に関する。具体的には、本願発明は、ターボ機械部品間のシールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なターボ機械では、様々な部位でシールを利用して、流体流が所望の流路の周りで漏洩するのを防止する。例えば、回転バケット先端と固定ケーシングの間にシールを設けて、バケット先端とケーシングの間ではなくてバケットを通過するように流れを導く。シールはまた、ロータと固定部品の間において、1以上のパッキンリングの形態として利用することができる。一般的なシール構成には、ラビリンスシール、ブラシシール、アブレイダブルシール、パターンアブレイダブルシール及びコンプライアントプレートシールが含まれる。例えば、ターボ機械におけるラビリンスシールは一般的に、第1の部品から第2の部品に向かって延びてそれら部品間に流体流用の蛇行通路を形成した1以上の歯を含む。しかしながら、ターボ機械の運転時に、歯は、第2の部品上に摩擦しかつ損傷した状態になり、それによって歯と第2の部品の間のギャップを増大させ、その結果、ターボ機械の性能に悪影響を与える漏洩の増加を許すおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5474417号明細書
【特許文献2】米国特許第5282718号明細書
【特許文献3】米国特許第5308225号明細書
【特許文献4】米国特許第5431533号明細書
【特許文献5】米国特許第5607284号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0110247号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様によると、ターボ機械用のシールは、第1のターボ機械部品と第2のターボ機械部品の間に設置可能なシール面を含む。1以上の流体チャネルが、シールを貫通して延びる。1以上の流体チャネルは、シール面において第1のターボ機械部品と第2のターボ機械部品の間に流体流を噴射して第1のターボ機械部品と第2のターボ機械部品の間の漏洩流を妨害することができる。
【0005】
本発明の別の態様によると、ターボ機械は、第1のターボ機械部品と、第2のターボ機械部品と、第1のターボ機械部品と第2のターボ機械部品の間の漏洩流を減少させることができる1以上のシールとを含む。1以上のシールは、第1のターボ機械部品と第2のターボ機械部品の間に配置されたシール面と、シールを貫通して延びる1以上の流体チャネルとを含む。1以上の流体チャネルは、シール面において第1のターボ機械部品と第2のターボ機械部品の間に流体流を噴射して第1のターボ機械部品と第2のターボ機械部品の間の漏洩流を妨害することができる。
【0006】
これらの及びその他の利点並びに特徴は、図面と併せて以下の説明を参照することによって明らかになるであろう。
【0007】
本発明は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲において具体的に指摘しかつ明確に特許請求している。本発明の上述の及びその他の目的、特徴並びに利点は、添付の図面と関連させてなした以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】半径方向シール歯を含む、ターボ機械用のシールの実施形態の断面図。
【図2】傾斜シール歯を含む、ターボ機械用のシールの実施形態の断面図。
【図3】傾斜シール歯を含む、ターボ機械用のシールの別の実施形態の断面図。
【図4】傾斜シール歯を含む、ターボ機械用のシールのさらに別の実施形態の断面図。
【図5】傾斜シール歯を含む、ターボ機械用のシールのさらに別の実施形態の断面図。
【図6】アブレイダブルシールを含む、ターボ機械用のシールの実施形態の断面図。
【図7】図1のシールの設置位置を概略的に示す、ターボ機械の部分断面図。
【図8】図1のシールの付加的な設置位置を概略的に示す、ターボ機械の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この詳細な説明では、図面を参照して、実施例によってその利点及び特徴と共に本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1に示すのは、それを通る流体流がほぼ軸方向16に発生するターボ機械14のケーシング12内に配置されたパッキンリング10の実施形態である。パッキンリング10は、ロータ18の周りで円周方向に延びる。パッキンリング10は、ロータ18に面したシール面20を含む。パッキンリング10は、1以上の(純)流体ダイオード22を含み、流体ダイオード22は、1以上の戻りチャネル26と流体連通した1以上の入口24、及び1以上の戻りチャネル26と流体連通した1以上の出口28を含む。図1のパッキンリング10の実施形態は、1つの入口24、1つの戻りチャネル26及び1つの出口28を有するが、例えば2つの入口24、2つの戻りチャネル26及び/又は2つの出口28を有するその他の構成も、本開示の技術的範囲内にあることを意図している。矢印16で示すターボ機械14を通る流れは、シール面20とロータ18の間のギャップ32に流入し、また流れ16の第1の部分34は、1以上の入口24において流体ダイオード22に流入する。第1の部分34は、1以上の戻りチャネル26を通って流れ、かつ強力速度成分がシール面20に設置された1以上の出口28を通して流れ16に対抗して配向された状態になる噴射角度36で流れ16内に噴射される。図1の実施形態では、1以上の入口24は、1以上の出口28の上流に設置されているが、1以上の入口24及び1以上の出口28のその他の位置も本開示の技術的範囲内にあることを意図していることを理解されたい。流れ16と衝突する角度36での流れ16内への第1の部分34の噴射は、有効通路面積を減少させ、かつ流れ16の妨害を引き起こす。流れ16の妨害は、シール面20とロータ18の間の流れ16の流体抵抗を増大させる。この流体抵抗の増大により、シール面20とロータ18の間の漏洩量の減少が生じる。
【0011】
図1に示す実施形態では、1以上の入口24は、シール面20に設置されているが、1以上の入口24は、パッキンリング10のその他の部分に配置することができることを理解されたい。例えば、図2に示すように、幾つかの実施形態では、1以上の入口24は、上流面38に配置される。高圧流体40は、その1以上の入口24に流入し、1以上の戻りチャネル26を通って流れ、かつ強力速度成分が流れ16に対抗して配向された状態になる噴射角度36で1以上の出口28から流出する。
【0012】
図3に示すような別の実施形態では、1以上の入口24は、パッキンリング10の半径方向外側面42に配置される。高圧流体40は、その1以上の入口24に流入し、かつ1以上の戻りチャネル26を通って流れる。高圧流体40は、強力速度成分が流れ16に対抗して配向された状態になる噴射角度36で1以上の出口28から流出する。この実施形態では、1以上の戻りチャネル26は、ほぼ直線状とすることができ、かつそれに加えて噴射角度36とほぼ等しい角度で配置することができる。図3に示すように、戻りチャネル26のチャネル幅44は、1以上の入口24から1以上の出口28まで減少させることができる。チャネル幅44の減少は、戻りチャネル26を通る高圧流体40の速度を増加させて、パッキンリング10の有効性を高める。
【0013】
図4を参照すると、パッキンリング10の幾つかの実施形態は、シール面20からロータ18に向かって延びる複数のシール歯48を含む。複数のシール歯48は、ほぼ半径方向内向きに又はシール面20に対する歯角度50で延びることができる。幾つかの実施形態では、1以上の入口24は、シール面20に配置され、かつ隣接するシール歯48の軸方向間に設置される。同様に、1以上の出口28は、隣接するシール歯48間に配置することができる。それに代えて、図5に示すように、1以上の入口24及び/又は1以上の出口28は、シール歯48の歯先端52に配置することができる。幾つかの実施形態では、噴射角度36は、パッキンリング10の有効性を高めるような歯角度50とほぼ等しい。
【0014】
幾つかの実施形態では、図6に示すように、パッキンリング10は、シール面20に配置されたアブレイダブルシール54を含むことができる。幾つかの実施形態におけるロータ18は、複数のシール歯56を有するパターンを含む。1以上の流体ダイオード22が、1以上の入口24及び1以上の出口28がアブレイダブルシール54を貫通して延びるように、配置される。
【0015】
再び図1を参照すると、流体ダイオード22は、ロータ18の周りでパッキンリング10と共に円周方向に延びる。幾つかの実施形態では、複数の流体ダイオード22は、複数の支持体(図示せず)によって分離された状態で、ロータ18の周りで円周方向に配置される。流体ダイオード22は、幾つかの方法の1つによって製作される。流体ダイオード22は、1以上のストラット58が内側ダイオードセクション60から外側ダイオードセクション62まで延びた状態で、ケーシングによって単体構造の一体形円周リングとして形成することができる。それに代えて、内側ダイオードセクション60及び外側ダイオードセクション62は、ケーシング又はその他の手段によって別個に形成しかつ例えば溶接又は機械的ファスナの使用により1以上のストラット58を用いて流体ダイオード22として組立てることができる。
【0016】
ここまで、パッキンリング10はパッキンケーシング12に設置されかつロータ18に対してシールを行うものとして説明してきたが、1以上の流体ダイオード22を含むパッキンリング10のその他の位置も本開示の技術的範囲内にあることを意図している。例えば、図7に示すように、1以上の流体ダイオード22を含むパッキンリング10は、ケーシング64及び1以上のバケット先端の間のシールを行うように配置することができる。さらに、1以上の流体ダイオード22を含むパッキンリング10は、ハブ68に設置して、ロータ18に対してシールを行うことができる。図8に示すさらに別の実施例として、1以上の流体ダイオード22を含むパッキンリング10は、ステータ70とロータ18の間のシールを行うようにステータ70に配置することができる。これらのシール位置は、単に、1以上の流体ダイオード22を含むシールを使用して、ターボ機械14の可動部品及び固定部品の間のシールのロバスト性を高めた実例に過ぎない。しかしながら、例えばターボ機械の固定部品間のようなその他の位置において流体ダイオード22を含むシールを利用することも、本技術的範囲内にあることを意図していることを理解されたい。
【0017】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明がそのような開示した実施形態に限定されるものではないことは、容易に理解される筈である。むしろ、本発明は、これまで説明していないが本発明の技術思想及び技術的範囲に相応するあらゆる数の変形、変更、置換え又は均等な構成を組込むように改良することができる。さらに、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、本発明の態様は説明した実施形態の一部のみを含むことができることを理解されたい。従って、本発明は、上記の説明によって限定されるものと見なすべきでなく、本発明は、特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0018】
10 パッキンリング
12 ケーシング
14 ターボ機械
16 流れ
18 ロータ
20 シール面
22 流体ダイオード
24 入口
26 戻りチャネル
28 出口
32 ギャップ
34 第1の部分
36 噴射角度
38 上流面
40 高圧流体
42 外側面
44 チャネル幅
48 シール歯
50 歯角度
52 歯先端
54 アブレイダブルシール
56 シール歯
58 ストラット
60 内側ダイオードセクション
62 外側ダイオードセクション
64 ケーシング
66 バケット先端
68 ハブ
70 ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械用のシール(10)であって、
第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間に配置可能なシール面(20)と、
シール(10)を貫通して延び、前記シール面(20)において第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間に流体流(16)を噴射して第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間の漏洩流を妨害することができる1以上の戻りチャネル(26)と
を備えるシール(10)。
【請求項2】
前記1以上の戻りチャネル(26)の1以上の出口(28)が、前記シール面(20)に配置される、請求項1記載のシール(10)。
【請求項3】
前記1以上の戻りチャネル(26)の1以上の入口(24)が、前記シール面(20)に配置される、請求項1記載のシール(10)。
【請求項4】
前記1以上の戻りチャネル(26)の1以上の入口(24)が、シール(10)の上流面(38)に配置される、請求項1記載のシール(10)。
【請求項5】
前記1以上の戻りチャネル(26)の1以上の入口(24)が、シール(10)の半径方向外側面(42)に配置される、請求項1記載のシール(10)。
【請求項6】
前記シール面(20)から第2のターボ機械部品(18)に向かって延びる複数のシール歯(48)を含む、請求項1記載のシール(10)。
【請求項7】
第1のターボ機械部品(12)と、
第2のターボ機械部品(18)と、
第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間の漏洩流を減少させることができる1以上のシール(10)と、
を含み、前記1以上のシールが、
第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間に配置されたシール面(20)と、
前記シール(10)を貫通して延び、前記シール面(20)において第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間に流体流(16)を噴射して第1のターボ機械部品(12)と第2のターボ機械部品(18)の間の漏洩流を妨害することができる1以上の戻りチャネル(26)と、を含む、
ターボ機械(14)。
【請求項8】
1以上の流体チャネルの1以上の出口(28)及び/又は前記1以上の戻りチャネル(26)の1以上の入口(24)が、前記シール面(20)に配置される、請求項7記載のターボ機械(14)。
【請求項9】
前記シール面(20)から第2のターボ機械部品(18)に向かって延びる複数のシール歯(48)を含む、請求項7記載のターボ機械(14)。
【請求項10】
前記1以上の戻りチャネル(26)の1以上の出口(28)及び/又は前記1以上の戻りチャネル(26)の1以上の入口(24)が、前記複数のシール歯(56)の隣接するシール歯(48)の間に配置される、請求項9記載のターボ機械(14)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−293617(P2009−293617A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129760(P2009−129760)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】