説明

ダイシング・ダイボンドフィルム、ダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法、及び、半導体装置の製造方法

【課題】 ダイシングの際の保持力を維持しつつ、ピックアップの際の剥離性を向上させることを可能とするとともに、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれることを抑制することを可能とするダイシング・ダイボンドフィルムを提供すること。
【解決手段】 粘着剤層は、特定のアクリル系ポリマーに、特定のイソシアネート化合物を付加反応させたポリマーと、特定の架橋剤とを含み、粘着剤層のダイシングリングを貼り付ける部分の特定の引き剥がし粘着力が1.0N/20mmテープ幅以上10.0N/20mmテープ幅以下であり、ダイシングリングを貼り付ける部分の23℃における引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.4MPa未満であり、ダイボンドフィルムは、紫外線照射後の粘着剤層に対し貼り合わされたものであるダイシング・ダイボンドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ状ワーク(半導体チップ等)と電極部材とを固着するための接着剤を、ダイシング前にワーク(半導体ウエハ等)に付設した状態で、ワークのダイシングに供するダイシング・ダイボンドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンを形成した半導体ウェハ(ワーク)は、必要に応じて裏面研磨により厚さを調整した後、半導体チップ(チップ状ワーク)にダイシングされる(ダイシング工程)。ダイシング工程では、切断層の除去のため半導体ウェハを適度な液圧(通常、2kg/cm程度)で洗浄するのが一般的である。次いで、前記半導体チップを接着剤にてリードフレームなどの被着体に固着(マウント工程)した後、ボンディング工程に移される。前記マウント工程においては、接着剤をリードフレームや半導体チップに塗布していた。しかし、この方法では接着剤層の均一化が困難であり、また接着剤の塗布に特殊装置や長時間を必要とする。このため、ダイシング工程で半導体ウェハを接着保持するとともに、マウント工程に必要なチップ固着用の接着剤層をも付与するダイシング・ダイボンドフィルムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のダイシング・ダイボンドフィルムは、支持基材上に接着剤層を剥離可能に設けてなるものである。すなわち、接着剤層による保持下に半導体ウェハをダイシングしたのち、支持基材を延伸して半導体チップを接着剤層とともに剥離し、これを個々に回収してその接着剤層を介してリードフレームなどの被着体に固着させるようにしたものである。
【0004】
この種のダイシング・ダイボンドフィルムの接着剤層には、ダイシング不能や寸法ミスなどが生じないように、半導体ウェハに対する良好な保持力と、ダイシング後の半導体チップを接着剤層と一体に支持基材から剥離しうる良好な剥離性が望まれる。しかし、この両特性をバランスさせることは決して容易なことではなかった。特に、半導体ウェハを回転丸刃などでダイシングする方式などのように、接着剤層に大きな保持力が要求される場合には、上記特性を満足するダイシング・ダイボンドフィルムを得ることは困難であった。
【0005】
そこで、このような問題を克服するために、種々の改良法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、支持基材と接着剤層との間に紫外線硬化が可能な粘着剤層を介在させ、これをダイシング後に紫外線硬化して、粘着剤層と接着剤層との間の接着力を低下させ、両者間の剥離により半導体チップのピックアップを容易にする方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、この改良法によっても、ダイシング時の保持力とその後の剥離性とをうまくバランスさせたダイシング・ダイボンドフィルムとすることは困難な場合がある。例えば10mm×10mm以上の大型の半導体チップや25〜75μmの極めて薄い半導体チップの場合には、一般のダイボンダーでは容易に半導体チップをピックアップすることができない。
【0007】
そこで、従来、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、当該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムにおいて、ダイシングフィルムの粘着剤層中に含まれるポリマーを特定のものとし、且つ、架橋剤の添加量を制御することにより、ダイシングの際の保持力を維持しつつ、ピックアップの際の剥離性を向上させることを可能とするダイシング・ダイボンドフィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−57642号公報
【特許文献2】特開平2−248064号公報
【特許文献3】特開2009−170787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載のダイシング・ダイボンドフィルムでは、このダイシング・ダイボンドフィルムをダイシングリングに貼り付ける際、貼付装置の貼り付け速さ、圧力、張力等の貼付条件が適切でない場合や、ダイシングリングに汚れや傷があり、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングに貼り付き難くなっている場合に、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれるおそれがあるといった点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ダイシング・ダイボンドフィルムをダイシングリングに貼り付ける際の貼付装置の条件等に関わらず、ダイシングの際の保持力を維持しつつ、ピックアップの際の剥離性を向上させることを可能とするとともに、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれることを抑制することを可能とするダイシング・ダイボンドフィルム、当該ダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法、及び、当該ダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。すなわち、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルムは、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該ダイシングフィルム上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、前記粘着剤層は、10〜40mol%のヒドロキシル基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーに、前記ヒドロキシル基含有モノマーに対し70〜90mol%の範囲内のラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を付加反応させたポリマーと、ヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基を分子中に2個以上備え、かつ、前記ポリマー100重量部に対し含有量が0.5〜2重量部の架橋剤とを含み、かつ、所定条件下での紫外線照射により硬化されたものであり、前記粘着剤層のダイシングリングを貼り付ける部分のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が測定温度23±3℃、引張速度300mm/分の条件下において1.0N/20mmテープ幅以上10.0N/20mmテープ幅以下であり、前記ダイシングリングを貼り付ける部分の23℃における引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.4MPa未満であり、前記ダイボンドフィルムは、紫外線照射後の粘着剤層に対し貼り合わされたものであることを特徴とする。
【0012】
前記粘着剤層は、ダイボンドフィルムとの貼り合わせの前に紫外線照射により予め硬化されて形成されたものである。そのため粘着剤層表面は固く、ダイボンドフィルムとの貼り合わせの際には両者の密着度の低減が可能になる。これにより、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の投錨効果を低減させ、例えば半導体チップのピックアップの際には、粘着剤層とダイボンドフィルムの間での剥離性が良好となる。その結果、ピックアップ性の向上が図れる。また、紫外線照射により粘着剤層を硬化させると、架橋構造が形成されることにより粘着剤層の体積が縮小する。そのため、例えばダイボンドフィルムとの貼り合わせ後に粘着剤層に紫外線を照射しこれを硬化させると、ダイボンドフィルムに対し応力が加わる。その結果、ダイシング・ダイボンドフィルム全体として反りが生じる場合がある。しかし、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、紫外線照射により硬化された後にダイボンドフィルムと貼り合わせて形成されたものであるため、ダイボンドフィルムに対し不要な応力が加わることも防止できる。その結果、反りのないダイシング・ダイボンドフィルムが得られる。
【0013】
また、前記粘着剤層にはヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基を分子中に2個以上備えた架橋剤を必須成分として含有しており、この架橋剤の添加量を制御することにより、ダイシングの際の保持力を維持しつつ良好なピックアップ性が可能になる様に引張弾性率を調整するものである。即ち、本発明の架橋剤は、前記ポリマー100重量部に対し含有量が2重量部以下であるため、ポリマーの架橋を抑制して引張貯蔵弾性率を低下させ、ダイシングリング貼り付け部の粘着力を高く維持することができる。その結果、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。一方、前記含有量が0.5重量部以上であるため、粘着剤には十分な凝集力があり、ピックアップ後にダイシングリングからダイシングフィルムを剥離した際に、糊残りが発生することを防止することができる。
【0014】
また、ヒドロキシル基含有モノマーの含有量を10mol%以上にすることにより、紫外線照射後の架橋が不足するのを抑制する。その結果、ピックアップ性が低下するのを防止することができる。その一方、前記含有量を40mol%以下にすることにより、粘着剤の極性が高くなりダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることにより剥離が困難になりピックアップ性が低下するのを防止することができる。また、ポリマーの一部ゲル化に伴う生産性の低下も防止できる。
【0015】
更に、本発明に於いては、10〜40mol%のヒドロキシル基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーに、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を付加反応させて使用し、さらにダイボンドフィルムを貼り合わせる前に、粘着剤を紫外線照射によって硬化させる。従って、架橋剤による架橋が抑制されても、紫外線照射によって粘着剤は十分に硬化し、良好なピックアップ性を持たせることが可能である。
【0016】
また、ダイシングリングを貼り付ける部分の23℃における引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.4MPa未満であるため、粘着力を高く保つことができ、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。一方、前記引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上であるため、ダイシングリングからダイシングフィルムを剥離した際に糊残りが発生することを防止することができる。
【0017】
また、粘着剤層のダイシングリングを貼り付ける部分のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が測定温度23±3℃、引張速度300mm/分の条件下において1.0N/20mmテープ幅以上10.0N/20mmテープ幅以下である。前記粘着力が1.0N/20mmテープ幅以上であるため、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。一方、前記粘着力が10.0N/20mmテープ幅以下であるため、ダイシングリングからダイシングフィルムを剥離する際に容易に剥離することができる。
【0018】
前記構成において、前記粘着剤層は、さらに、前記ポリマー100重量部に対し5〜100重量部の紫外線硬化性のオリゴマー成分を含むことが好ましい。粘着剤層における紫外線硬化していない部分においては、オリゴマーは、可塑剤として機能する。その結果、ダイシングリングを貼り付ける部分での粘着力を高く維持することができ、ダイシングリングへの密着性を向上させることができる。一方、紫外線硬化させた部分においては、ポリマーだけでなく、オリゴマー成分も紫外線硬化しているため、ダイボンドフィルムとの密着性を低く維持することができ、半導体チップを良好にピックアップすることができる。
【0019】
前記紫外線の照射は30〜1000mJ/cmの範囲内で行われることが好ましい。紫外線の照射を30mJ/cm以上にすることにより粘着剤層の硬化を十分なものにし、ダイボンドフィルムと過度に密着するのを防止する。その結果、良好なピックアップ性能を可能にし、ピックアップ後にダイボンドフィルムに粘着剤が付着(いわゆる糊残り)するのを防止できる。その一方、紫外線の照射を1000mJ/m以下にすることにより基材に対する熱的ダメージを低減することができる。また、粘着剤層の硬化が過度に進行して引張弾性率が大きくなりすぎ、エキスパンド性が低下するのを防止できる。更に、粘着力が低下し過ぎるのを防止し、これによりワークのダイシングの際に、チップ飛びの発生を防止することができる。
【0020】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも何れか1種であることが好ましい。
【0021】
前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの少なくとも何れかであることが好ましい。
【0022】
前記粘着剤層はアクリル酸を含まないことが好ましい。これにより、粘着剤層とダイボンドフィルムの反応や相互作用を防止することができ、ピックアップ性の一層の向上が図れる。
【0023】
また、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法は、前記の課題を解決する為に、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法であって、10〜40mol%のヒドロキシル基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーに、前記ヒドロキシル基含有モノマーに対し70〜90mol%の範囲内のラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を付加反応させたポリマーと、ヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基を分子中に2個以上備え、かつ、前記ポリマー100重量部に対し含有量が0.5〜2重量部の架橋剤とを含み構成される粘着剤層前駆体を前記基材上に形成する工程と、前記粘着剤層前駆体に所定条件下で紫外線を照射し、ダイシングリングを貼り付ける部分のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が測定温度23±3℃、引張速度300mm/分の条件下において1.0N/20mmテープ幅以上10.0N/20mmテープ幅以下であり、且つ、前記ダイシングリングを貼り付ける部分の23℃における引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.4MPa未満である粘着剤層を形成する工程と、前記粘着剤層上に前記ダイボンドフィルムを貼り合わせる工程とを有することを特徴とする。
【0024】
前記ダイシングフィルムの粘着剤層は、ダイボンドフィルムが貼り合わされる前に、紫外線照射により予め硬化されている。従って、粘着剤層の表面は固く、凹凸に対する密着性が低下した状態となっている。本発明は、その様な粘着剤層に対しダイボンドフィルムを貼り合わせてダイシング・ダイボンドフィルムを作製するので、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の密着性を低減し、投錨効果を減少させている。その結果、例えば半導体チップのピックアップの際には、粘着剤層とダイボンドフィルムの間の剥離性に優れ、良好なピックアップ性を示すダイシング・ダイボンドフィルムが得られる。また、紫外線照射により粘着剤層を硬化させると、架橋構造が形成されることにより粘着剤層の体積が縮小する。そのため、例えばダイボンドフィルムとの貼り合わせ後に粘着剤層に紫外線を照射しこれを硬化させると、ダイボンドフィルムに対し応力が加わる結果、ダイシング・ダイボンドフィルム全体として反りが生じる場合がある。しかし、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、紫外線照射により硬化された後にダイボンドフィルムと貼り合わせて形成されるので、ダイボンドフィルムに対し不要な応力が加わることも防止できる。その結果、反りのないダイシング・ダイボンドフィルムが得られる。
【0025】
また、前記粘着剤層の構成材料としてはヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基を分子中に2個以上備えた架橋剤を必須成分として含有しており、この架橋剤の添加量を制御することにより、ダイシングの際の保持力を維持しつつ良好なピックアップ性が可能になる様に引張弾性率を調整するものである。即ち、本発明の架橋剤は、前記ポリマー100重量部に対し含有量が2重量部以下であるため、紫外線による架橋を抑制して引張貯蔵弾性率の低下を防止し、粘着力を高く維持することができる。その結果、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。一方、前記含有量が0.5重量部以上であるため、半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分を紫外線により硬化させて粘着力を好適に低下させることができる。その結果、半導体チップのピックアップの際のピックアップ性を向上させることができる。
【0026】
また、ヒドロキシル基含有モノマーの含有量を10mol%以上にすることにより、紫外線照射後の架橋が不足するのを抑制する。その結果、ピックアップ性が低下するのを防止することができる。その一方、前記含有量を40mol%以下にすることにより、粘着剤の極性が高くなりダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることにより剥離が困難になりピックアップ性が低下するのを防止することができる。また、ポリマーの一部ゲル化に伴う生産性の低下も防止できる。
【0027】
前記構成において、前記粘着剤層前駆体は、さらに、前記ポリマー100重量部に対し0〜100重量部の紫外線硬化性のオリゴマー成分を含んでいてもよい。紫外線を照射して粘着剤層を形成する際、紫外線を照射しない部分においては、オリゴマーは、可塑剤として機能する。その結果、ダイシングリングを貼り付ける部分での粘着力を高く維持することができ、ダイシングリングへの密着性を向上させることができる。一方、紫外線が照射される部分においては、ポリマーだけでなく、オリゴマー成分も紫外線硬化するため、ダイボンドフィルムとの密着性を低く維持することができ、半導体チップを良好にピックアップすることができる。
【0028】
前記紫外線の照射は30〜1000mJ/cmの範囲内で行われることが好ましい。紫外線の照射を30mJ/cm以上にすることにより粘着剤層の硬化を十分なものにし、ダイボンドフィルムと過度に密着するのを防止する。その結果、良好なピックアップ性能を可能にし、ピックアップ後にダイボンドフィルムに粘着剤が付着(いわゆる糊残り)するのを防止できる。その一方、紫外線の照射を1000mJ/m以下にすることにより基材に対する熱的ダメージを低減することができる。
【0029】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記の課題を解決する為に、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、前記に記載のダイシング・ダイボンドフィルムを用意し、前記粘着剤層のダイシングリングを貼り付ける部分にダイシングリングを貼り付ける工程と、前記ダイボンドフィルム上に半導体ウェハを圧着する工程と、前記半導体ウェハを前記ダイボンドフィルムと共にダイシングすることにより半導体チップを形成する工程と、前記半導体チップを前記ダイボンドフィルムと共に、前記粘着剤層から剥離する工程とを含み、前記半導体ウェハの圧着工程から半導体チップの剥離工程までは、前記粘着剤層に紫外線を照射することなく行うことを特徴とする。
【0030】
前記方法においては、半導体ウェハのダイシングの際には半導体チップのチップ飛びの発生を防止すると共に、ピックアップ性にも優れたダイシング・ダイボンドフィルムを使用するので、例えば10mm×10mm以上の大型の半導体チップや25〜75μmの極めて薄い半導体チップの場合にも、半導体チップをダイボンドフィルムと共にダイシングフィルムから容易に剥離することができる。即ち、前記方法であると、歩留まりを向上させて半導体装置を製造することができる。
【0031】
また、前記方法ではピックアップの前に粘着剤層に対し紫外線を照射する必要がない。その結果、従来の半導体装置の製造方法と比較して工程数の低減が図れる。更に、半導体ウェハが所定の回路パターンを有する場合にも、紫外線の照射に起因した回路パターンの不具合の発生を防止することができる。その結果、信頼性の高い半導体装置の製造が可能になる。
【0032】
また、前記方法では、前記に記載のダイシング・ダイボンドフィルムを用意し、前記粘着剤層のダイシングリングを貼り付ける部分にダイシングリングを貼り付けるため、ダイシングリングを貼り付ける部分の粘着力を高く保つことができ、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルムがダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の一形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る他のダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図3】図2に示したダイシング・ダイボンドフィルムに於けるダイボンドフィルムを介して半導体チップを実装した例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(ダイシング・ダイボンドフィルム)
本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。図2は、本実施の形態に係る他のダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。但し、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にする為に拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0035】
図1に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム10は、基材1上に粘着剤層2が設けられたダイシングフィルムと、該粘着剤層2上にダイボンドフィルム3を有する構成である。粘着剤層2は、半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分2aと、ダイシングリング12を貼り付ける部分2cと、これら以外の他の部分2bとを有している。ダイボンドフィルムは、粘着剤層2の部分2c以外の部分に貼り付けられていればよく、例えば、図2に示すように、半導体ウェハ貼り付け部分にのみダイボンドフィルム3’を形成した構成であってもよい。
【0036】
前記基材1は紫外線透過性を有し、かつダイシング・ダイボンドフィルム10、11の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0037】
また基材1の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材1を熱収縮させることにより粘着剤層2とダイボンドフィルム3、3’との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0038】
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0039】
前記基材1は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材1には、帯電防止能を付与する為、前記の基材1上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材1は単層あるいは2種以上の複層でもよい。
【0040】
基材1の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0041】
前記粘着剤層2は紫外線硬化型粘着剤を含み構成されており、予め紫外線の照射により硬化されている。硬化されている部分は粘着剤層2の全領域である必要はなく、粘着剤層2の半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分2aが少なくとも硬化されていればよい(図1参照)。粘着剤層2はダイボンドフィルム3との貼り合わせ前に紫外線照射により硬化されたものであるので、その表面は固くなっており、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との界面で過度に密着性が大きくなるのを抑制している。これにより、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との間の投錨効果を減少させ、剥離性の向上を図っている。その一方、粘着剤層2の部分2b及び部分2cは紫外線が照射されていないため未硬化であり、前記部分2aよりも粘着力が大きい。これにより、部分2cにダイシングリング12を貼り付けた場合には、ダイシングリング12を確実に接着固定することができる。
【0042】
また、図2に示すダイボンドフィルム3’に合わせて紫外線硬化型の粘着剤層2を予め硬化させておくことにより、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との界面で過度に密着性が大きくなるのを抑制している。これにより、ピックアップの際には粘着剤層2からダイボンドフィルム3’が容易に剥離する性質を備える。その一方、粘着剤層2の部分2b及び部分2cは紫外線が照射されていないため未硬化であり、前記部分2aよりも粘着力が大きい。これにより、部分2cにダイシングリング12を貼り付けた場合には、ダイシングリング12を確実に接着固定することができる。
【0043】
前述の通り、図1に示すダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層2に於いて、未硬化の紫外線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bはダイボンドフィルム3と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に紫外線硬化型粘着剤は、半導体チップを基板等の被着体に固着する為のダイボンドフィルム3を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。図1に示すダイシング・ダイボンドフィルム10、及び、図2に示すダイシング・ダイボンドフィルム11の粘着剤層2に於いては、前記部分2cがダイシングリングを固定できる。ダイシングリングは、例えばステンレス製などの金属からなるものや樹脂製のものを使用できる。
【0044】
ダイシング・ダイボンドフィルム10、11において、ダイシングリングを貼り付ける部分2cの23℃での引張貯蔵弾性率は、0.05MPa以上0.4MPa未満である。前記引張貯蔵弾性率が0.4MPa未満であるため、粘着力を高く保つことができ、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルム10、11がダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。一方、前記引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上であるため、ダイシングリングからダイシングフィルムを剥離した際に糊残りが発生することを防止することができる。
【0045】
また、ダイシング・ダイボンドフィルム10、11において、部分2aの硬化後における23℃での引張貯蔵弾性率は、5MPa以上100MPa以下であることが好ましく、7MPa以上80MPa以下であることがより好ましい。
【0046】
ダイシング・ダイボンドフィルム10、11において、ダイシングリングを貼り付ける部分2cのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力は、測定温度23±3℃、引張速度300mm/分の条件下において1.0N/20mmテープ幅以上10N/20mmテープ幅以下である。前記粘着力が1.0N/20mmテープ幅以上であるため、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルム10、11がダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。一方、前記粘着力が10.0N/20mmテープ幅以下であるため、ダイシングリングからダイシングフィルムを剥離する際に容易に剥離することができる。
【0047】
ダイシング・ダイボンドフィルム10において、粘着剤層2における前記部分2aの半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する粘着力は、前記他の部分2bの半導体ウェハ貼り付け部分3aとは異なる部分3bに対する粘着力よりも小さくなる様に設計されている。常温(23℃)での粘着力(剥離角度15度、剥離速度300mm/分)に基づいて、前記部分2aの粘着力は、ウェハの固定保持力や形成したチップの回収性などの点より0.5〜1.5N/10mmであることが好ましい。粘着力が0.5N/10mm未満であると半導体チップの接着固定が不十分となるため、ダイシングの際にチップ飛びを生じる場合がある。また、粘着力が1.5N/10mmを超えると粘着剤層2はダイボンドフィルム3を過度に接着し過ぎるため、半導体チップのピックアップが困難になる場合がある。一方、前記他の部分2bの粘着力は、0.5〜10N/10mm、さらには1〜5N/10mmであるのが好ましい。前記部分2aが低い粘着力であっても、前記他の部分2bの粘着力によりチップ飛びなどの発生を抑え、ウェハ加工の為に必要な保持力を発揮させることができる。
【0048】
ダイシング・ダイボンドフィルム11において、粘着剤層2における前記部分2aの半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する粘着力は、前記部分2bのダイシングリング12に対する粘着力よりも小さくなる様に設計されている。半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する前記部分2aの粘着力(前記同条件)は、上記と同様0.5〜1.5N/10mmであるのが好ましい。一方、ダイシングリング12に対する前記他の部分2bの粘着力は、0.05〜10N/10mm、さらには0.1〜5N/10mmであるのが好ましい。前記部分2aが低いピール粘着力であっても、前記他の部分2bの粘着力によりチップ飛びなどの発生を抑え、ウェハ加工に充分な保持力を発揮させることができる。尚、これらの粘着力は、常温(23℃)、剥離角度180度、引張速度300mm/分における測定値に基づく。
【0049】
また、ダイシング・ダイボンドフィルム10、11において、半導体ウェハ貼り付け部分3aの、半導体ウェハに対する粘着力は、前記部分2aに対する粘着力よりも大きくなるように設計するのが好ましい。半導体ウェハに対する粘着力は、その種類に応じて適宜に調整される。半導体ウェハ貼り付け部分3aの前記部分2aに対する粘着力(前記同条件)は、0.05〜10N/10mm、さらには0.1〜5N/10mmであるのが好ましい。一方、半導体ウェハ貼り付け部分3aの半導体ウェハに対する粘着力(前記同条件)は、ダイシング時、ピックアップ時、ダイボンド時の信頼性、ピックアップ性の点から0.5〜15N/10mm以下、さらには1〜15N/10mmであるのが好ましい。
【0050】
ここで、半導体ウェハ4の直径をrとし、粘着剤層2における前記部分2aの直径をrとし、ダイボンドフィルム3における半導体ウェハ貼り付け部分3a(又はダイボンドフィルム3’)の直径をrとした場合、r<r<rの関係を満たすことが好ましい。これにより、半導体ウェハ4の全面をダイボンドフィルム3、3’上に接着固定すると共に、半導体ウェハ貼り付け部分3a(又はダイボンドフィルム3’)の周縁部を前記他の部分2bに接着固定することができる。前記他の部分2bの粘着力は前記部分2aよりも大きい為、前記周縁部において半導体ウェハ貼り付け部分3a(又はダイボンドフィルム3’)の接着固定が可能になる。その結果、ダイシングの際にチップ飛びの発生を一層防止することができる。
【0051】
前記紫外線硬化型粘着剤は、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合等の紫外線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを使用する。紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤に、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の紫外線硬化型粘着剤を例示できる。なかでも、紫外線硬化性のオリゴマー成分を配合したものが好ましい。アクリル系粘着剤はアクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤であり、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点で好ましい。
【0052】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどがあげられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0053】
前記アクリル系ポリマーは、前記アクリル酸エステルと共重合可能なヒドロキシル基含有モノマーを必須成分として含む。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの含有量は、アクリル酸エステルに対し10〜40mol%の範囲内であることが好ましく、15〜30mol%の範囲内であることがより好ましい。含有量が10mol%未満であると、紫外線照射後の架橋が不足し、ピックアップ性が低下する場合がある。その一方、含有量が40mol%を超えると、粘着剤の極性が高くなり、ダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることにより剥離が困難になる。
【0055】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上を使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。但し、前記カルボキシル基含有モノマーの場合、そのカルボキシル基とダイボンドフィルム3中のエポキシ樹脂におけるエポキシ基とが反応することにより、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との境界面が消失し、両者の剥離性が低下することがある。従って、カルボキシル基含有モノマーの使用量は、全モノマー成分の0〜3重量%以下が好ましい。その他、ヒドロキシル基含有モノマーやグリシジル基含有モノマーも、エポキシ樹脂におけるエポキシ基と反応し得るので、カルボキシル基含有モノマーの場合と同様にするのが好ましい。また、これらのモノマー成分のうち、本発明の粘着剤層2はアクリル酸を含まない方が好ましい。アクリル酸はダイボンドフィルム3と反応したり相互作用することにより剥離性を低下する場合があるからである。
【0056】
ここで、前記アクリル系ポリマーは、共重合用モノマー成分として多官能性モノマーを含まない。これにより、多官能性モノマーがダイボンドフィルムに物質拡散をすることがなくなり、粘着剤層2とダイボンドフィルム3の境界面が消失することによるピックアップ性の低下を防止することができる。
【0057】
また、前記アクリル系ポリマーは、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を必須成分として含む。前記イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物の含有量は、ヒドロキシル基含有モノマーに対し含有量が70〜90mol%の範囲内であることが好ましく、75〜85mol%の範囲内であることがより好ましい。含有量が70mol%未満であると、紫外線照射後の架橋が不足し、ダイシングの際に粘着剤層上に貼り付けられるダイシングリングに対し、糊残りが発生する。その一方、含有量が90mol%を超えると、粘着剤の極性が高くなり、ダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることにより剥離が困難になる。
【0059】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは35万〜100万、更に好ましくは45万〜80万程度である。
【0060】
また、粘着剤層2は、ヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基を分子中に2個以上備えた架橋剤を含む。ヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、グリシジル基等が挙げられる。その様な官能基を有する架橋剤としては、より具体的には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0061】
前記イソシアネート系架橋剤としては、分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されず、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記エポキシ系架橋剤としては、分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記アジリジン系架橋剤としては、分子中にアジリジン基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。例えば、ω−アジリジニルプロピオン酸−2,2−ジヒドロキシメチル−ブタノール−トリエステル、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−sym−トリアジン、1,6−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ヘキサン等が好適に用いられる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記架橋剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対し0.5〜2重量部である。前記架橋剤の含有量は、0.5〜1.0重量部の範囲内であることが好ましい。前記含有量が2重量部以下であるため、紫外線による架橋を抑制して引張貯蔵弾性率の低下を防止し、粘着力を高く維持することができる。その結果、半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルム10、11がダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。一方、前記含有量が0.5重量部以上であるため、ダイシングリングからダイシングフィルムを剥離した際に糊残りが発生することを防止することができる。尚、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0065】
配合する前記紫外線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また紫外線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、0〜100重量部含まれることが好ましく、10〜50重量部含まれることがより好ましい。粘着剤層2における紫外線硬化していない部分(部分2bや部分2c)においては、オリゴマーは、可塑剤として機能する。その結果、ダイシングリングを貼り付ける部分2cでの粘着力を高く維持することができ、ダイシングリングへの密着性を向上させることができる。一方、紫外線硬化させた部分(部分2a)においては、ポリマーだけでなく、オリゴマー成分も紫外線硬化しているため、ダイボンドフィルム3、3’との密着性を低く維持することができ、半導体チップを良好にピックアップすることができる。
【0066】
また、紫外線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の紫外線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の紫外線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の紫外線硬化型粘着剤は、低分子量成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0067】
前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0068】
前記アクリル系ポリマーへのラジカル反応性炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計の点で容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーにヒドロキシル基を有するモノマーを共重合した後、このヒドロキシル基と反応しうるイソシアネート基及びラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合の紫外線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。イソシアネート基及びラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、前記に例示したものが挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0069】
前記内在型の紫外線硬化型粘着剤は、前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。紫外線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0070】
前記紫外線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0071】
また紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0072】
ダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層2に於いては、前記部分2aの粘着力<その他の部分2bの粘着力、となるように粘着剤層2の一部を紫外線照射してもよい。即ち、基材1の少なくとも片面の、半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに紫外線硬化型の粘着剤層2を形成した後に紫外線照射して、半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた前記部分2aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作製することができる。
【0073】
尚、紫外線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、紫外線硬化型の粘着剤層2の表面から酸素(空気)を遮断するのが望ましい。その方法としては、例えば粘着剤層2の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の紫外線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0074】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜40μm、更には5〜30μmが好ましい。
【0075】
ダイボンドフィルム3、3’は、例えば接着剤層の単層のみからなる構成とすることができる。また、ガラス転移温度の異なる熱可塑性樹脂、熱硬化温度の異なる熱硬化性樹脂を適宜に組み合わせて、2層以上の多層構造にしてもよい。尚、半導体ウェハのダイシング工程では切削水を使用することから、ダイボンドフィルム3、3’が吸湿して、常態以上の含水率になる場合がある。この様な高含水率のまま、基板等に接着させると、アフターキュアの段階で接着界面に水蒸気が溜まり、浮きが発生する場合がある。従って、ダイ接着用接着剤としては、透湿性の高いコア材料をダイ接着剤で挟んだ構成とすることにより、アフターキュアの段階では、水蒸気がフィルムを通じて拡散して、かかる問題を回避することが可能となる。かかる観点から、ダイボンドフィルム3、3’はコア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造にしてもよい。
【0076】
前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。
【0077】
本発明に係るダイボンドフィルム3、3’は、エポキシ樹脂を主成分として含み構成される。エポキシ樹脂は、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ない点で好ましい。前記エポキシ樹脂としては、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0078】
また、ダイボンドフィルム3、3’は、適宜必要に応じてその他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を併用させることができる。前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0079】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0080】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0081】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―アクリル酸共重合体、エチレン―アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0082】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0083】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0084】
ダイボンドフィルム3、3’の接着剤層には、予めある程度架橋をさせておく為、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのが好ましい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図る。
【0085】
尚、ダイボンドフィルム3、3’の接着剤層には、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0086】
ダイボンドフィルム3、3’の厚さは特に限定されないが、例えば、5〜100μm程度、好ましくは5〜50μm程度である。
【0087】
ダイシング・ダイボンドフィルム10、11には、帯電防止能を持たせることができる。これにより、その接着時及び剥離時等に於ける静電気の発生やそれによる半導体ウェハの帯電で回路が破壊されること等を防止することができる。帯電防止能の付与は、基材1、粘着剤層2乃至ダイボンドフィルム3、3’へ帯電防止剤や導電性物質の添加する方法、基材1への電荷移動錯体や金属膜等からなる導電層の付設等、適宜な方式で行うことができる。これらの方式としては、半導体ウェハを変質させるおそれのある不純物イオンが発生しにくい方式が好ましい。導電性の付与、熱伝導性の向上等を目的として配合される導電性物質(導電フィラー)としては、銀、アルミニウム、金、銅、ニッケル、導電性合金等の球状、針状、フレーク状の金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、前記ダイボンドフィルム3、3’は、非導電性であることが、電気的にリークしないようにできる点から好ましい。
【0088】
前記ダイシング・ダイボンドフィルム10、11のダイボンドフィルム3、3’は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでダイボンドフィルム3、3’を保護する保護材としての機能を有している。また、セパレータは、更に、粘着剤層2にダイボンドフィルム3、3’を転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイシング・ダイボンドフィルムのダイボンドフィルム3、3’上にワークを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0089】
(ダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法)
次に、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法について、ダイシング・ダイボンドフィルム10を例にして説明する。先ず、基材1は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0090】
次に、基材1上に粘着剤を含む組成物を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)粘着剤層2を形成する。塗布方式としては、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、塗布は直接基材1上に行ってもよく、表面に剥離処理を行った剥離紙等に塗布後、基材1に転写してもよい。
【0091】
次に、基材1上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層前駆体を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては塗布膜の厚さや材料等に応じて種々設定される。具体的には、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層前駆体を形成してもよい。その後、基材1上に粘着剤層前駆体を転写する。この様にして形成された粘着剤層前駆体は所定条件下で紫外線照射され、これにより粘着剤層2が形成される。紫外線の照射条件としては、その積算光量が30〜10000mJ/cmとなる範囲内であることが好ましく、100〜500mJ/cmとなる範囲内であることがより好ましい。紫外線の照射が30mJ/cm未満であると、粘着剤層の硬化が不十分になる場合がある。その結果、ダイボンドフィルムとの密着性が増大し、ピックアップ性の低下を招来する。またピックアップ後、ダイボンドフィルムに糊残りが発生する。その一方、紫外線の照射が1000mJ/mを超えると、基材に対し熱的ダメージを与える場合がある。また、粘着剤層の硬化が過度に進行して引張弾性率が大きくなりすぎ、エキスパンド性が低下する。更に、粘着力が過度に低下し、これにより半導体ウェハのダイシングの際に、チップ飛びが発生する場合がある。
【0092】
次に、ダイボンドフィルム3を形成する為の形成材料を剥離紙上に所定厚みとなる様に塗布し、更に所定条件下で乾燥してダイボンドフィルム3を形成する。このダイボンドフィルム3を前記粘着剤層2上に転写することにより、ダイシング・ダイボンドフィルムを形成する。以上により、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルム10を得ることができる。
【0093】
(半導体装置の製造方法)
本発明のダイシング・ダイボンドフィルム11を用いた半導体装置の製造方法について、図3を参照しながら説明する。
【0094】
先ず、ダイシング・ダイボンドフィルム11のダイボンドフィルム3’上に半導体ウエハ4を圧着するとともに、粘着剤層2のダイシングリングを貼り付ける部分2c(図2参照)にダイシングリング12(図2参照)を貼り付ける。粘着剤層2は、上述したポリマーと、上述した含有量が0.5〜2重量部の架橋剤とを含み、かつ、所定条件下での紫外線照射により硬化されたものであり、粘着剤層2のダイシングリングを貼り付ける部分2cのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が上述した数値範囲内にあり、且つ、ダイシングリングを貼り付ける部分2cの23℃における引張貯蔵弾性率が上述した数値範囲内にある。その結果、粘着剤層2は、前記2cの部分において、粘着力を高く保つことができ、後述する半導体ウェハのダイシングの際、ダイシング・ダイボンドフィルム11がダイシングリングから剥がれることを抑制することができる。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。
【0095】
次に、半導体ウェハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を形成する。ダイシングは、例えば半導体ウェハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイボンドフィルム3まで完全に切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。ダイボンドフィルム3はエポキシ樹脂を含み構成されるので、ダイシングにより切断されても、その切断面において接着剤の糊はみ出しが生じるのを防止することができる。その結果、切断面同士が再付着(ブロッキング)するのを防止し、後述のピックアップを一層良好に行うことができる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハ4はダイボンドフィルム3により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。尚、ダイシングにより粘着剤層2にまで切り込みが行われた場合にも、粘着剤層2は紫外線照射により硬化されているので、糸屑等の発生も防止される。
【0096】
次に、ダイシング・ダイボンドフィルム11のエキスパンドを行う。エキスパンドは、従来公知のエキスパンド装置を用いて行う。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシング・ダイボンドフィルム11を下方に押し下げることが可能なドーナツ状の外リングと、該外リングよりも径が小さくダイシング・ダイボンドフィルム11を支持する内リングとを有している。ダイシング・ダイボンドフィルム11では、粘着剤層2における前記部分2aのみが紫外線照射により硬化され、その他の部分2bは未硬化であるので、破断することなく隣り合う半導体チップ間の隙間を十分に広げることができる。その結果、後述のピックアップの際に、半導体チップ同士が接触して破損するのを防止することができる。
【0097】
ダイシング・ダイボンドフィルム11に接着固定された半導体チップ5を剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップは粘着剤層2に対し紫外線を照射することなく行われる。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシング・ダイボンドフィルム11側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。ダイシング・ダイボンドフィルム11では、粘着剤層2とダイボンドフィルム3の剥離性が良好であるので、例えばニードル数を低減したり、突き上げ量を小さくしても歩留まりを低減してピックアップを行うことができる。
【0098】
ピックアップした半導体チップ5は、ダイボンドフィルム3aを介して被着体6に接着固定する(ダイボンド)。被着体6はヒートブロック9上に載置されている。被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。
【0099】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0100】
ダイボンドフィルム3が熱硬化型の場合には、加熱硬化により、半導体チップ5を被着体6に接着固定し、耐熱強度を向上させる。尚、ダイボンドフィルム3aを介して半導体チップ5が基板等に接着固定されたものは、リフロー工程に供することができる。その後、基板の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディングを行い、更に半導体チップを封止樹脂8で封止し、当該封止樹脂8をアフターキュアする。これにより、本実施の形態に係る半導体装置が作製される。
【実施例】
【0101】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。また、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0102】
(実施例1)
<ダイシングフィルムの作製>
冷却管、窒素導入管、温度計、及び、撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」ともいう。)86.4部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう。)13.6部、過酸化ベンゾイル0.2部、及び、トルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
【0103】
アクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」ともいう。)14.6部を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0104】
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)0.5部、及び、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤組成物溶液Aを得た。
【0105】
粘着剤組成物溶液Aを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥し、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、形成した粘着剤層上に、ポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間加熱して架橋処理を行い、さらにウエハを貼り付ける部分より大きく、かつ、ダイシングリングを貼り付ける部分よりも中心側の範囲に、日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるようにポリオレフィンフィルム側から紫外線を照射して、ダイシングフィルムAを作製した。
【0106】
<ダイボンドフィルムの作製>
エポキシ樹脂(a)(JER(株)製、エピコート1001)20部、フェノール樹脂(b)(三井化学(株)製、MEH7851)22部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(c)(根上工業(株)製,パラクロンW−197CM)100部、フィラー(d)としての球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)180部をメチルエチルケトンに溶解して濃度23.6重量%となるように調整した。この接着剤組成物の溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ40μmのダイボンドフィルムAを作製した。
【0107】
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
上記のダイシングフィルムAの剥離ライナーを剥がし、紫外線を照射した部分に、40±3℃にて、ダイボンドフィルムAのダイボンドフィルム層を貼り合せ、ダイシング・ダイボンドフィルムAを作製した。
【0108】
(実施例2)
<ダイシングフィルムの作製>
ポリイソシアネート化合物の添加量を1部とした以外は、実施例1と同様にしてダイシングフィルムBを得た。
【0109】
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
上記のダイシングフィルムBの剥離ライナーを剥がし、紫外線を照射した部分に、40±3℃にて、ダイボンドフィルムAのダイボンドフィルム層を貼り合せ、ダイシング・ダイボンドフィルムBを作製した。
【0110】
(実施例3)
<ダイシングフィルムの作製>
ポリイソシアネート化合物の添加量を2部とした以外は、実施例1と同様にしてダイシングフィルムCを得た。
【0111】
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
上記のダイシングフィルムCの剥離ライナーを剥がし、紫外線を照射した部分に、40±3℃にて、ダイボンドフィルムAのダイボンドフィルム層を貼り合せ、ダイシング・ダイボンドフィルムCを作製した。
【0112】
(実施例4)
<ダイシングフィルムの作製>
ポリイソシアネート化合物の添加量を2部とし、さらに、紫外線硬化性オリゴマー(商品名「紫光UV−1700B」、日本合成化学工業(株)製)30部を加えた以外は、実施例1と同様にしてダイシングフィルムDを得た。
【0113】
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
上記のダイシングフィルムDの剥離ライナーを剥がし、紫外線を照射した部分に、40±3℃にて、ダイボンドフィルムAのダイボンドフィルム層を貼り合せ、ダイシング・ダイボンドフィルムDを作製した。
【0114】
(比較例1)
<ダイシングフィルムの作製>
ポリイソシアネート化合物の添加量を0.3部とした以外は、実施例1と同様にしてダイシングフィルムEを得た。
【0115】
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
上記のダイシングフィルムEの剥離ライナーを剥がし、紫外線を照射した部分に、40±3℃にて、ダイボンドフィルムAのダイボンドフィルム層を貼り合せ、ダイシング・ダイボンドフィルムEを作製した。
【0116】
(比較例2)
<ダイシングフィルムの作製>
ポリイソシアネート化合物の添加量を3部とした以外は、実施例1と同様にしてダイシングフィルムFを得た。
【0117】
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
上記のダイシングフィルムFの剥離ライナーを剥がし、紫外線を照射した部分に、40±3℃にて、ダイボンドフィルムAのダイボンドフィルム層を貼り合せ、ダイシング・ダイボンドフィルムFを作製した。
【0118】
(ダイシングリングに貼り付ける部分のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力)
まず、シリコンミラーウェハを、トルエンを含ませたウェスにて拭いた後、メタノールを含ませたウェスで拭き、さらにトルエンを含ませたウェスで拭いた。次にダイシングフィルムの紫外線照射をしていない、ダイシングリングに貼り付ける部分を20mmテープ幅の短冊状に切断した後、剥離ライナーを剥がし、上記シリコンミラーウェハに貼り合わせた。その後、室温雰囲気下で30分静置した。
30分静置後、粘着剤層の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角θを180°、引張り速度300mm/分、室温(23℃)の引き剥がし条件で、粘着力を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
(粘着剤の引張貯蔵弾性率)
ダイシングフィルムA〜Fを得る工程で、ポリオレフィンフィルムの代わりに、PET剥離ライナーを貼り付け、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層を作製した。それにダイシングフィルムを作製するのと同じ条件で紫外線を照射し、紫外線で硬化した粘着剤層を作製した。その後、幅50mm、長さ100mmの短冊状にカットし、片方のPET剥離ライナーを剥がし、粘着剤層のみを棒状に丸めて、長さ100mmの棒状サンプルを作製した。このサンプルをチャック間距離50mm、引張り速度50mm/分、室温(23℃)の条件で引張り、引張り長さと応力の傾きから引張貯蔵弾性率(ヤング率)を求めた。結果を表1に示す。
【0120】
(ダイシング性)
ダイシング・ダイボンドフィルムに、厚さ75umに研削したシリコンウエハを40℃にて貼り付け、以下の条件にて10mm×10mmのサイズになるようにダイシングを行った。チップ飛びが発生しなければ○、発生したら×とした。結果を表1に示す。
【0121】
<ダイシング条件>
ダイシング装置:ディスコ社製、DFD−6361
ダイシングリング:2−8−1(ディスコ社製)
ダイシング速度:80mm/秒
ダイシングブレード:
Z1;ディスコ社製2050HEDD
Z2;ディスコ社製2050HEBB
ダイシングブレード回転数:
Z1;40,000rpm
Z2;40,000rpm
ブレード高さ:
Z1;0.155mm
Z2;0.085mm
カット方式:Aモード/ステップカット
チップサイズ:10.0mm角
【0122】
(ピックアップ性)
ダイシングを行ったサンプルを、以下の条件にてピックアップした。
【0123】
<ピックアップ条件>
ダイボンダー装置:株式会社新川社製 SPA−300
マウントフレーム:ディスコ社製 2−8−1
ウェハータイプ:Mirror Wafer(no pattern)
チップサイズ:10mmx10mm
チップ厚さ:75μm
ニードル数:9本
ニードル突き上げ速度:5mm/秒
コレット保持時間:1000m秒
エキスパンド:引き落とし量3mm
ニードル突き上げ高さ:300μm
【0124】
評価は、10チップをピックアップし、全てピックアップできた場合には○、1〜9チップピックアップできた場合には△、全てピックアップできなかった場合には×とした。結果を表1に示す。
【0125】
(ウエハマウント評価)
以下の条件でウエハマウントを行い、貼り付けた48時間後にダイシングリングから剥がれていれば×、剥がれていなければ○とした。ダイシングフィルムの外周のみ浮いているものも×とした。結果を表1に示す。
<ウエハマウント条件>
ウエハマウント装置:日東精機製 MSA−840
ダイシングリング:ディスコ社製 2−8−1
ウェハータイプ:厚さ760um、直径8インチのミラーウエハ
ラミネート温度:55℃
ラミネート圧力:2kgf
ラミネート速度:10mm/秒
チャックテーブル高さ:4mm
【0126】
(ダイシングリングへの糊残り)
ダイシングリングに貼り付けたダイシング・ダイボンドフィルムを手で引き剥がし、目視で糊がダイシングリングに残っていなければ○、残っていれば×とした。結果を表1に示す。
【0127】
【表1】

【符号の説明】
【0128】
1 基材
2 粘着剤層
3 ダイボンドフィルム
4 半導体ウェハ
5 半導体チップ
6 被着体
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
9 ヒートブロック
10、11 ダイシング・ダイボンドフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該ダイシングフィルム上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記粘着剤層は、10〜40mol%のヒドロキシル基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーに、前記ヒドロキシル基含有モノマーに対し70〜90mol%の範囲内のラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を付加反応させたポリマーと、ヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基を分子中に2個以上備え、かつ、前記ポリマー100重量部に対し含有量が0.5〜2重量部の架橋剤とを含み、かつ、所定条件下での紫外線照射により硬化されたものであり、
前記粘着剤層のダイシングリングを貼り付ける部分のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が測定温度23±3℃、引張速度300mm/分の条件下において1.0N/20mmテープ幅以上10.0N/20mmテープ幅以下であり、
前記ダイシングリングを貼り付ける部分の23℃における引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.4MPa未満であり、
前記ダイボンドフィルムは、紫外線照射後の粘着剤層に対し貼り合わされたものであることを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層は、さらに、前記ポリマー100重量部に対し5〜100重量部の紫外線硬化性のオリゴマー成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記紫外線の照射は30〜1000mJ/cmの範囲内で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも何れか1種であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項5】
前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項6】
前記粘着剤層はアクリル酸を含まないことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項7】
基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法であって、
10〜40mol%のヒドロキシル基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーに、前記ヒドロキシル基含有モノマーに対し70〜90mol%の範囲内のラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を付加反応させたポリマーと、ヒドロキシル基に対し反応性を示す官能基を分子中に2個以上備え、かつ、前記ポリマー100重量部に対し含有量が0.5〜2重量部の架橋剤とを含み構成される粘着剤層前駆体を前記基材上に形成する工程と、
前記粘着剤層前駆体に所定条件下で紫外線を照射し、ダイシングリングを貼り付ける部分のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が測定温度23±3℃、引張速度300mm/分の条件下において1.0N/20mmテープ幅以上10.0N/20mmテープ幅以下であり、且つ、前記ダイシングリングを貼り付ける部分の23℃における引張貯蔵弾性率が0.05MPa以上0.4MPa未満である粘着剤層を形成する工程と、
前記粘着剤層上に前記ダイボンドフィルムを貼り合わせる工程とを有することを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記粘着剤層前駆体は、さらに、前記ポリマー100重量部に対し0〜100重量部の紫外線硬化性のオリゴマー成分を含むことを特徴とする請求項7に記載のダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記紫外線の照射は30〜1000mJ/cmの範囲内で行うことを特徴とする請求項7又は8に記載のダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法。
【請求項10】
基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
請求項1〜6に記載のダイシング・ダイボンドフィルムを用意し、前記粘着剤層のダイシングリングを貼り付ける部分にダイシングリングを貼り付ける工程と、
前記ダイボンドフィルム上に半導体ウェハを圧着する工程と、
前記半導体ウェハを前記ダイボンドフィルムと共にダイシングすることにより半導体チップを形成する工程と、
前記半導体チップを前記ダイボンドフィルムと共に、前記粘着剤層から剥離する工程とを含み、
前記半導体ウェハの圧着工程から半導体チップの剥離工程までは、前記粘着剤層に紫外線を照射することなく行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−69586(P2012−69586A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211088(P2010−211088)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】