説明

ダイナミン依存エンドサイトーシスを阻害する方法および薬剤

式(I)の化合物または二量体チルホスチン、生理的に許容できるその塩またはプロドラッグの有効量により細胞を処理することを含んでなる細胞内のダイナミン依存のエンドサイトーシスを阻害する方法を開示する。記載されている方法に有用である化合物もまた提供される。細胞のダイナミン依存エンドサイトーシスの阻害は、てんかんおよび神経学的疾患および病態の治療に提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミン依存エンドサイトーシスを阻害する薬剤およびダイナミン依存エンドサイトーシスにより媒介される疾患または病態の予防または治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞は、細胞外の物質を吸収し、形質膜における多数の膜小胞の形成を含むエンドサイトーシスによりそれらの膜をリサイクルする。該小胞は、大型食胞、より小型のクラスリンコーティング小胞から、小さなシナプス小胞(SV)の範囲の種々のサイズで生じる。エンドサイトーシスの機構は、細胞外栄養物の取り込み、細胞表面受容体発現およびシグナリングの調節、抗原提示およびシナプス伝達の維持などの多数の細胞機能に役立っている。
【0003】
種々のエンドサイトーシス経路の中には、生化学的に十分に特性化されているものは2つである。第1は、神経末端における小胞エキソサイトーシスに続く迅速なシナプス小胞エンドサイトーシス(SVE)である。SVEは、受容体活性化に特に関連しているわけではないが、後で再補充するために空のSV類を回収するのに役立っており、酵素ダイナミン(dynamin)Iの活性を必要とする。第2は、細胞表面の受容体に対するリガンド結合時に開始され、神経末端など、全ての細胞内のクラスリンコーティングピットを介して生じる受容体媒介エンドサイトーシス(RME)である。RMEは、形質膜成分(受容体リガンド複合体類および膜脂質類など)または細胞外体液に対して細胞への主要な入口点を提供し、ダイナミンIIの作用を含む。RMEおよびSVEは双方とも、同じニューロン内で共に作動するが、互いに異なる機能的役割を果たす。
【0004】
RMEおよびSVEは、同様の基礎的蛋白質機構を有しているが、それらは、同じ蛋白質の異なるイソ型を利用する。RMEおよびSVE双方の複数のサブ形体が存在する。例えば、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)の内在化およびトランスフェリン受容体は、RMEにより媒介され、ダイナミンの活性化に依存するが、前者のみが、チロシンキナーゼ(TK)阻害剤に感受性であることから、これら2つの活性化受容体のRMEに関して異なる生化学的要件が示唆される。エンドサイトーシスは、ニューロン障害などのヒトの病的状態において複数の役割を演じ、エンドサイトーシスを制御する方法についてのより良い理解は、臨床的に重要である。
【0005】
ダイナミンは、エンドサイトーシスの最終段階を媒介する重要な酵素である(ブロジン(Brodin)ら、2000年)。ダイナミンならびに、エンドサイトーシスの分子機構は、多くの蛋白質およびダイナミンの補充およびその活性化をもたらす脂質補因子に関係している(カジンおよびロビンソン(Cousin
and Robinson)、2001年)。エンドサイトーシス蛋白質は、少なくとも4つの形態学的および生化学的分類に入る段階でエンドサイトーシスにおいて連続的に作用するが、幾つかの蛋白質は、該経路において2つ以上の段階で関与している。これらの形態学的および生物学的分類は:
1.核形成:SV上のシナプス前部末端のシナプトタグミンは、エキソサイトーシスの部位における核形成点に対してAP−2アダプター蛋白質複合体を補充することによりエキソサイトーシスとエンドサイトーシスとの間の結合として機能する。AP−2は、クラスリンを補充して小胞コート、次いでアンフィフィシン(amphiphysin)を形成する。
2.陥入:アンフィフィシンは、小胞の陥入に必要とされる残りのエンドサイトーシス蛋白質類(ダイナミン、エンドフィリンおよびシナプトジャニン)の大部分を補充するドッキング分子である。
3.分裂:組立てられたダイナミン、アンフィフィシンおよび/またはエンドフィリンの環が、陥入小胞の頸部周囲に螺旋状環として形成する。これら3種の蛋白質は全て、インビトロで環内に自己組織化できる。小胞の放出を導く小胞頸部の分裂には、ダイナミンのGTPアーゼ活性を必要とする。GTP加水分解は、形質膜から小胞を押し出す螺旋体の急激な拡張を生じるか、あるいは、環収縮を引き起こす。ショウジョウバエ(Drosophila)株シビレ(shibire)において、ダイナミンのGTPアーゼドメインにおける変異(GTP結合をブロックしないが、GTP加水分解をブロックする)は、ダイナミン螺旋体の組立てを可能にし、さらにそれらが形成した後のSV分裂をブロックする(ケーニッヒおよびイケダ(Koenig
and Ikeda)、1989年)。これにより、GTP結合とダイナミンの反応サイクルのGTP加水分解ステップとの間が識別され、GTP加水分解すなわち、GTPアーゼ活性が、小胞分裂前の最終ステップであることが示される。GTPアーゼ欠損のダイナミン変異体の過剰発現により、RMEおよびSVEの双方が阻害される(ブロジン(Brodin)ら、2000年)。
4.脱コーティング:SVは脱コーティングされ、神経伝達物質で満たされてからエキソサイトーシスに利用できる。
【0006】
したがって、ダイナミンは、エキソサイトーシス後のシナプス小胞の回収に必要なGTPアーゼ酵素であり、陥入するシナプス小胞の頸部周囲の螺旋体としての組立てを刺激することによりエンドサイトーシスにおいて機能する(ブロジン(Brodin)ら、2000年;カジンおよびロビンソン(Cousin
and Robinson)、2001年)。ダイナミンはまた、リン蛋白質であり、インビトロで蛋白キナーゼC(PKC)により、またインビボでサイクリン依存蛋白キナーゼ(Cdk5)によりリン酸化される。それは、脱分極およびカルシウム流入によるエンドサイトーシスの刺激でカルシニューリンにより迅速に脱リン酸化されるが、脱リン酸化のブロッキングにより、神経末端におけるエンドサイトーシスが防止される。それは、大部分の小胞のエンドサイトーシス時に脱リン酸化されたままであり、エンドサイトーシスの完了時に再度リン酸化される。それ故、ダイナミンの脱リン酸化は、エンドサイトーシス時に役割を演じている可能性は低く、恐らくエンドサイトーシス前のプライミングステップであると考えられる。
【0007】
3種のダイナミン遺伝子があり、ダイナミンIはニューロンに発現し、一方、ダイナミンIIは、発現が偏在性である。ダイナミンIIIは、ニューロンに発現し、精巣に非常に多い。ダイナミン類は全て、4種の主要ドメイン、すなわち、GTPアーゼドメイン、プレクストリン(pleckstrin)相同性(PH)ドメイン、GTPアーゼエフェクタードメイン(GED)、およびプロリンリッチドメイン(PRD)を有する。
【0008】
GTPアーゼドメインは、他のGTPアーゼ類と比較して、GTP(10〜25μm)に対する異常に低い親和性および極めて高い回転率を有する。それは、小胞分裂に必要とされる。タマホコリカビ(Dictyostelium)由来のダイナミンのこのドメインの結晶構造が最近解明された(ニーマン(Niemann)ら、2001年)。この球状構造は、G−蛋白コア折りたたみを含有するが、通常の6枚のストランドβ−シートは、ユニークな55のアミノ酸挿入により8枚のストランドシートに拡張される。
【0009】
プレクストリン相同性(PH)ドメインは、目標ドメインであり、かつ潜在的GTPアーゼ阻害モジュールであり、エンドサイトーシスに必須である。ダイナミンは、このドメインを介して脂質類と相互作用し、ホスファチジルイノシトールビスホスフェート(PtdIns(4,5)P2)を含有するナノ小管へのダイナミン結合により、GTPアーゼ活性が大いに刺激される(ストーウェル(Stowell)ら、1999年)。このPHドメインは、自己組織化またはGTPアーゼ活性に必要ではなく、それ(デルタ−PHドメイン)の除去により、固有のGTPアーゼ活性を最大に増加する。
【0010】
GTPアーゼエフェクタードメイン(GED)は、ダイナミン−ダイナミン相互作用およびテトラマー構造へのダイナミン組立てを制御する。約28〜32のテトラマーが、協同して単環として、またはPtdIns(4,5)P2含有脂質混合物周囲の螺旋体として自己組織化する。GEDは、GTPアーゼメインとの結合によるテトラマー自己組織化の原因となる。GEDにおける変異は、細胞内におけるエンドサイトーシスに影響を及ぼし、エンドサイトーシスを減少させるものもあり、(驚くべきことに)増加させるものもある。GEDは、GTPアーゼ活性化蛋白質のように作用してGTPアーゼ活性化を刺激する。
【0011】
ダイナミンのC末端におけるプロリンリッチドメイン(PRD)は、多くのSH3ドメイン含有蛋白質およびカルシニューリンと相互作用し、インビボダイナミンリン酸化の部位である。
【0012】
カチオン性両親媒性薬物(例えば、クロルプロマジン)、コンカナバリンA、フェニルアルシンオキシド、ダンシルカダベリン、細胞内カリウム枯渇、細胞内酸化および媒体温度を4℃に減少させることなど、複数のエンドサイトーシス阻害剤およびエンドサイトーシスを阻害する方法が、が存在する。各々は、特異性に乏しく、有用性に限界がある。それにもかかわらず、それらの使用は、エンドサイトーシスのより良い理解に役立っている。幾つかは、エンドサイトーシスのブロッキングが、ヒトに対して臨床的な意味を有することを立証するために使用されている(アトウッド(Atwood)、2001年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
1つ以上の実施形態において、本発明は、ダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害できる化合物およびダイナミン依存のエンドサイトーシスを阻害するような化合物の使用に関する。特に、少なくとも幾つかの二量体チルホスチン(tyrphostin)類は、ダイナミンにより媒介されるエンドサイトーシスを阻害できることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の一態様において、細胞内のダイナミン依存のエンドサイトーシスを阻害する方法であって、式I
M−Sp−M' 式I
[式中、MおよびM'は、各々独立して式II
【化1】

(Vが、CまたはCHであり;
Wが、CHまたはリンカー基であり;
Yが、水素、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで該ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の該ヘテロ環式環または該炭素環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であり;
R'が、スペーサーに結合されているNH、OまたはSであり;
Zは:
(a)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換ヘテロ環式基;
(b)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換炭素環式基;
(c)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;および
(d)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、および、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される、
WがCHまたはリンカー基であるか、またはW、VおよびYが、非置換炭素環式基を形成する場合には、少なくとも2つの置換基、またはW、VおよびYが、ヘテロ環式基を形成する場合には、少なくとも1つの置換基からなる炭素環式基、
から選択され、
ここでMまたはM'のうちの1つのZが、(b)から選択され、MまたはM'の他方のZが、(a)、(c)または(d)から選択される)
の部分であって、同一か、または異なっており、Spがスペーサーである]
の化合物、または生理的に許容できるその塩の有効量により細胞を処理することを含んでなる方法を提供する。
【0015】
式Iの化合物は、二量体チルホスチンであることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、ダイナミン依存のエンドサイトーシス阻害に応答性の疾患または病態の予防処置または治療処置に関する。それ故、本発明の他の態様において、ダイナミン依存のエンドサイトーシスによって媒介される哺乳動物における疾患または病態の予防または治療方法であって、式Iの化合物、または生理的に許容できるその塩またはプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の態様において、ダイナミン依存のエンドサイトーシスによって媒介される哺乳動物における疾患または病態の予防または治療方法であって、ダイナミンに結合することによって、ダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害する二量体チルホスチン、または生理的に許容できるその塩、または類縁体、またはプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0018】
式Iの化合物、または二量体チルホスチンまたはその類縁体による細胞または哺乳動物の処置は、式Iの化合物、または蛋白質のGTPアーゼ活性を阻害するダイナミンに結合する二量体チルホスチンまたはその類縁体をインビボで産生するために二量化する化合物、および式Iの化合物、または蛋白質のGTPアーゼ活性を阻害するダイナミンに結合する二量体チルホスチンまたはその類縁体をインビボで生じるかまたは産生するために加工されるプロドラッグ類の投与が包含されている。
【0019】
本発明のさらなる態様において、ダイナミン依存のエンドサイトーシスによって媒介される哺乳動物における疾患または病態の予防または治療用の医薬品製造において、式Iの化合物または生理的に許容できるその塩の使用を提供する。
【0020】
本発明のさらなる他の態様において、ダイナミン依存のエンドサイトーシスによって媒介される哺乳動物における疾患または病態の予防または治療用の医薬品製造において、二量体チルホスチン、生理的に許容できるその塩、または類縁体、またはプロドラッグの使用を提供し、該二量体チルホスチンまたは類縁体は、ダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害するダイナミンに結合する。
【0021】
本発明のさらに他の態様において、式III
M−Sp−M' 式III
[式中、MおよびM'は、各々独立して式IV
【化2】

(Vが、CまたはCHであり;
Wが、CHまたはリンカー基であり;および
Yが、水素、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで該ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の該ヘテロ環式環または該炭素環式環は、シアノ、NH、ニトロ、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であり;
R'が、スペーサーに結合しているNH、OまたはSであり;
Zは:
(a)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換ヘテロ環式基;
(b)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換炭素環式基;
(c)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;および
(d)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、および、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される、
WがCHまたはリンカー基であるか、またはW、VおよびYが、非置換炭素環式基を形成する場合には、少なくとも2つの置換基、またはW、VおよびYが、ヘテロ環式基を形成する場合には、少なくとも1つの置換基からなる炭素環式基、
から選択され、
ここでMまたはM'のうちの1つのZが、(b)から選択される場合、MまたはM'の他方のZが、RがCXR'であり、XがOであり、R'がスペーサーに結合されているNHであり、VがCであり、WがCHであり、Yがシアノである場合、MおよびM'の少なくとも1つのZは、式IVaのベンジル基以外であるという条件で、(a)、(c)または(d)から選択され、および
【化3】

1、R2およびR5がHであり、およびR3ならびにR4がヒドロキシであるか;または
1およびR5がHであり、およびSpがC2〜C4アルキルスペーサーである場合、R2からR4までがヒドロキシであり;
ここでZ'がWに結合されている炭素原子である)
の部分であって、同一か、または異なっており、Spがスペーサーである]
の化合物、または生理的に許容できるその塩を提供する。
【0022】
本発明の化合物または本発明により投与される化合物のMまたはM'の1つのうちのY置換基が水素である場合、MまたはM'の他方のY置換基は水素以外であることが好ましい。典型的には、MおよびM'の少なくとも1つのZは、2,3−ニ置換炭素環式基以外である。好ましくは、MまたはM'の少なくとも1つのZは:
Z基が、(d)から選択され、WがCHまたはC1〜C3リンカー基である場合、互いにオルト位の関係か、または隣接置換位置にある少なくとも2つの置換基;または
Z基が、(c)から選択されるヘテロ環式基である場合、ヘテロ原子または複数のヘテロ原子の1つに隣接した炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つ;または
W、VおよびYが環化してZと縮合されたヘテロ環式環を形成する場合、ヘテロ環式環から少なくとも1つの結合長で離れたZの炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つを含んでなる。
【0023】
本発明の他の態様において、式I、または式IIIの化合物のプロドラッグを提供する。
【0024】
本発明のさらなる他の態様において、生理的に許容できる賦形剤、担体または希釈剤と共に、式IIIの化合物、または生理的に許容できるその塩、またはプロドラッグを含んでなる製薬組成物を提供する。
【0025】
本発明のさらに他の態様において、ダイナミンに結合してダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害する能力に関して二量体チルホスチンまたはその類縁体をスクリーニングする方法であって:
試験データを提供するために、二量体チルホスチンまたはその類縁体を、ダイナミンまたはダイナミンのGTPアーゼ活性を有する分子と共に温置すること;および
試験データに基づいて、二量体チルホスチンまたはその類縁体がダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害するかどうかを判定すること、
を含んでなる方法を提供する。
【0026】
ダイナミンのGTPアーゼ活性を有する分子は、GTPアーゼ活性を保持するダイナミンの断片、または例えば、アッセイにおいてダイナミンの代替物として作用するダイナミンの同族体、誘導体または類縁体であり得る。
【0027】
本明細書に記載された全ての刊行物は、参照として本明細書に組み込まれている。文献の考察のいずれも、本明細書に含まれている材料、装置、製品などを扱っており、本発明の背景を提供する目的のためだけである。これらの事柄のいずれかまたは全ては、先行技術の基礎の一部を形成しているか、またはこの出願の優先日以前にオーストラリアまたは他国に存在している本発明に関連する分野において共通の一般的知識であったことは、認められていないはずである。
【0028】
本明細書を通して用語の「含んでなる」、または「含む」または「含んでなること」などの変化は、記載された要素、整数またはステップ、または要素群、複数の整数または複数のステップを含むことを意味するが、他のいずれの要素、整数またはステップ、または要素群、複数の整数または複数のステップを除外しないことを意味するためと解される。
【0029】
本発明の特徴と利点は、添付の図面と共に以下の本発明の好ましい実施形態の説明からさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本明細書に用いられる用語の「アルキル」は、直鎖または分枝鎖飽和脂肪族基を包含する。「C1〜C2アルキル」とは、アルキル鎖の長さを意味する。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、1−メチル−エチル基および1,1−ジメチル−エチル基が挙げられる。
【0031】
本明細書に用いられる用語の「C1〜C2基」または「C1〜C3基」は、長さが特定の炭素原子数で分枝鎖または非分枝鎖であってもよい飽和または不飽和脂肪族基を包含する。このような基としては、アルキル基およびアルケニル基が挙げられる。アルケニル基には、少なくとも1つの二重結合を含む。C1〜C3基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、1,3−ジメチルプロピル、1−メチル−3−エチルプロピル、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチル−2−プロペニルおよび2−メチル−1−プロペニルが挙げられる。
【0032】
本明細書に用いられる用語の「C1〜C2」アルケニル基は、二重結合によりZのヘテロ環式基または炭素環式基に結合されているC1基を包含する。
【0033】
本明細書に用いられる用語の「C1〜C2アルコキシ」は、長さが特定の炭素原子数のアルコキシ基を包含する。該アルコキシ基には、炭素−炭素二重結合を含むことができる。
【0034】
本明細書に用いられる用語の「炭素環式基」は、炭素原子の1つ以上の環を含んでなる基を包含する。該炭素環式基の環、または環の少なくとも1つは、1つ以上の複数結合を有することができる。W、VおよびYが、式IまたはIIIの化合物に環化される場合に形成された炭素環式基は、1つ以上の二重結合を含むことが好ましいであろう。
【0035】
本明細書に用いられる用語の「ヘテロ環式基」は、該環、または該環の少なくとも1つが、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子を含む原子の1つ以上の環を含んでなる基を包含する。該環、または該環の少なくとも1つはまた、1つ以上の複数結合を有することができる。
【0036】
用語の「二量体チルホスチン」とは、該チルホスチン部分が同じであるか、または異なるスペーサー部分により一緒に結合されている2つのチルホスチン部分を含んでなる化合物を意味する。典型的に各チルホスチン部分は、同じである。各チルホスチン部分はベンジリデンマロニトリル部分であることが最も好ましいであろう。ビス−チルホスチンは、驚くべきことに、ダイナミンに結合でき、蛋白質のGTPアーゼ活性を阻害できることが現在分かっている1つのこのような二量体チルホスチンである。
【0037】
好ましくは、式IまたはIIIの化合物のMおよびM'は、各々独立して式V
【化4】

Vは、Cであり;
Wは、CHであり;
Yは、水素、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基であるか;または
W、VおよびYは、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの置換基、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基を有し;
Rは、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xは、OまたはSであり;
X'は、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基であり;
R'は、スペーサーに結合されているNH、OまたはSであり;
Zは、式IIにおけるとおりの基である)
の部分である。
【0038】
W、VおよびYが環化されない場合、Yは、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシまたはチオカルボキシであることが好ましいであろう。Yはシアノであることが最も好ましいであろう。
【0039】
Rは、CXR'(XがOまたはSであり、R'がNH、OまたはSである)であることが好ましい。Xは、OまたはSであり、R'はNHであることが好ましいであろう。
【0040】
Zが炭素環式基である場合、それは1つ以上の二重結合を含むことができる。該炭素環式基は、例えば、シクロアルカニル基、フェニル基またはナフチル基などのアリール基、またはビ−フェニルなどのポリフェニル基であり得る。該炭素環式基が2つの環を含んでなる場合、Wに対し直接結合されている環は、全ての置換基を有するか、またはWがCHまたはリンカー基である場合、少なくとも2つの置換基を有し、あるいはW、VおよびYが環化されている場合、該置換基、または該置換基の少なくとも1つを有することが好ましいであろう。好ましくは、Zが:
(i)O、NおよびSから独立して選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基;
(ii)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、ニトロ、NH、ハロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;および
(iii)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、およびニトロ、NH、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基からなる炭素環式基、
から選択される基である。
【0041】
好ましくは、Z基が炭素環式基であり、ハロ、シアノ、C1〜C2アルコキシまたはC1〜C2アシル置換基を有する場合、Z基は、好ましくはニトロ、NH、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソおよび硫黄から、最も好ましくは、ニトロ、NH、アミノ、ヒドロキシおよびカルボキシから独立して選択される少なくとも2つの他の置換基を一般に有する。カルボキシ環式基は、好ましくは、アリール基、最も好ましくは、置換ベンジル基である。
【0042】
好ましくは、Z基がヘテロ環式基である場合、それはO、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環を有し、ここで該ヘテロ環式基は、ニトロ、NH、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシおよびオキソから独立して選択される1つ以上の置換基を有するか、または5員環または6員環の単環およびニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシおよびカルボキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基を有するアリール基を有する。該アリール基は、置換フェニル基であることが好ましいであろう。
【0043】
該へテロ環式基は、置換または非置換イマダゾリル基、ピラニル基、イソベンジルフラニル基、フリル基、クロメニル基、ピロリル基、2H−ピロリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、プタラジニル(pthalazinyl)基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、チエニル基、またはベンゾチエニル基であることが好ましいであろう。該へテロ環式基は、このような置換基であることが最も好ましいであろう。
【0044】
W、VおよびYが、5員または6員のZと縮合したヘテロ環式環を形成している例において、Zが組み込まれて生じた基は、典型的に置換または非置換の2つの環のヘテロ環式基であり得る。この生じた基は、例えば、イマダゾリル、クロメニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、イソキノリル、キノリル、プタラジニル、ナフチリジニル(napthyridinyl)、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、ベンゾチエニルおよびイソベンゾフラニルから選択される置換または非置換ヘテロ環式基であることが好ましいであろう。この生じた基は、置換または非置換クロメニル、インドリル、またはイソキノリンであることが好ましいであろう。さらにW、VおよびYの環化により形成されたヘテロ環式基は、置換基であることが好ましいであろう。
【0045】
本発明の化合物または本発明の方法により哺乳動物に投与される化合物は:
MおよびM'は、各々独立して式VIの化合物であり、同じか、または異なっており、
【化5】

(Xが、OまたはSであり;
Yが、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、またはチオカルボキシであるか;または
1およびYが、環化して5員または6員の置換または非置換ヘテロ環式環または炭素環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を含み、置換された場合の該炭素環式環または該ヘテロ環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの基を有し;
2からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であるか;または
1からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、ハロ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であり;
Rが、NHであり、OがスペーサーSpに結合されているSであり;
ここでMおよびM'のうち少なくとも1つは、R1からR5までの少なくとも2つが水素以外であり、R1からR2までが水素以外である場合、R3からR5までの少なくとも1つもまた、水素以外であるか、またはR1およびYが環化する場合、R1およびYが非置換炭素環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも2つは、水素以外であるか、またはYおよびR1がヘテロ環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも1つは水素以外であることを特徴とする)
の化合物であることが最も好ましいであろう。
【0046】
好ましくは、YおよびR1が環化せず、R1およびR2が水素以外である場合、R3もまた水素以外である。典型的に、R1からR5までの少なくとも2つの置換基は、互いにオルト位の関係にある。化合物が3つの置換基を有する場合、該置換基が互いに隣接していることが好ましい。好ましくは、この場合、R1からR3までが水素以外であるか、またはR2からR5までが水素以外であるかのいずれかである。
【0047】
典型的に、R1からR5までまたはR2からR5までの少なくとも1つが、ハロ、C1〜C2アルコキシまたはC1〜C2アシルである場合、R1およびYが環化して、ヘテロ環式環を形成する場合には、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される少なくとも1つの他の置換基があるか、またはR1およびYが環化しないか、あるいは非置換炭素環式環を形成する場合には、これらの置換基から選択される少なくとも2つの他の置換基がある。
【0048】
ハロ置換基は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから典型的に選択される。ハロ置換基は、フルオロおよびクロロから選択されるのが好ましい。
【0049】
好ましくは、式IまたはIIIの部分のリンカー基は、単独の原子か、または1個以上の原子が、N、OまたはSなどの炭素以外の原子であり得る、長さが3個までの原子鎖を含んでなる。リンカー基は、C1〜C3リンカー基であることが好ましいであろう。リンカー基は、置換または非置換であってもよく、1つ以上の二重結合を含むことができる。置換基は、例えば、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、ニトロ、または化合物の活性に本質的に悪影響を及ぼさない基から選択できる。リンカー基は、非置換であることが最も好ましいであろう。
【0050】
本発明の化合物または本発明により哺乳動物に投与される化合物のスペーサー部分Spは、該化合物がヘアピンコンホメーションを採用し得ることが好ましいであろう。スペーサー部分は、N、OまたはSなどの炭素以外の1個以上の原子、および1つ以上の二重結合を含み得る置換または非置換の1個から7個の原子鎖であることが最も好ましいであろう。しかしながら、該化合物によってダイナミン依存のエンドサイトーシスの阻害を可能にする任意の好適なスペーサーを利用し得る。スペーサーは、例えば、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、ニトロ、または鎖の可撓性またはコンホメーションに本質的に影響を及ぼさない他の基から独立して選択される1つ以上の基で置換できる。スペーサー部分は、置換または非置換アルカン鎖であることが最も好ましいであろう。典型的にスペーサーは、構造:
−CH2(CH2)nCH2
(式中nは、1から5、より通常には2または3の整数である)
を有する非置換アルカン鎖である。
【0051】
製薬的に許容できる好適な塩類としては、妥当な有益性/危険性比の範囲内にあり、生理的に有効であり、過度の毒性、刺激またはアレルギー反応がなく動物組織と接触する上で適切である、酸およびアミノ酸の付加塩類、エステル類およびアミド類が挙げられる。代表的な塩類としては、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、蓚酸塩およびホウ酸塩が挙げられる。このような塩類は、例えば、対応する酸と、式Iの化合物、または二量体チルホスチンまたはその類縁体とを混合することにより調製できる。これらの塩類としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびカリウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属ならびにアンモニウムカチオンおよびアミンカチオンを挙げることができる。好適な製薬用塩類は、例えば、S.M バージ(S.M
Berge)ら、J.Pharmaceutical Sciences(1997年)、66:1−19頁に例示されており、その内容は、相互参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。代表的なエステル類としては、C1〜C7アルキル、フェニルおよびフェニル(C1〜6)アルキルエステル類が挙げられる。好ましいエステル類としては、メチルエステル類が挙げられる。
【0052】
式IおよびIIIの化合物、または二量体チルホスチンまたはそれらの類縁体のプロドラッグとしては、カーボネート類、カルバメート類、アミド類およびアルキルエステル類から選択される基が、該化合物、二量体チルホスチンおよびそれらの類縁体の遊離アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基またはカルボン酸基に共有結合しているものが挙げられる。好適なプロドラッグとしてはまた、リン−酸素結合を介して、遊離ヒドロキシル基、は式IおよびIIIの化合物、または二量体チルホスチンまたはそれらの類縁体の他の適切な基に結合した酸類、酸の塩類、またはエステル類などのホスフェート誘導体が挙げられる。プロドラッグは、例えば、投与時に不活性であるが、投与後に結合の開裂または加水分解または他の形体の結合修飾の結果、蛋白質のGTPアーゼ活性が阻害されるように、ダイナミンに結合する活性化合物へとインビボ修飾を受けることができる。活性化合物のプロドラッグ形体は、活性化合物よりも細胞膜透過性が大きく、それによって活性化合物の効力が増強されることが好ましい。プロドラッグはまた、該化合物の細胞に対する最適利用度および全身的利用のためにプロドラッグの細胞膜透過特性が維持されるように、細胞外におけるプロドラッグの早期のインビボ加水分解を最少にするようにデザインできる。
【0053】
エンドサイトーシスは、多様なヒト疾患の主要な一因または直接原因である。小胞輸送特異的疾患のリストは公表されており、例えば、アリドールおよびハンナン(Aridor
and Hannan)2000年、Traffic 1:836−851頁およびアリドールおよびハンナン(Aridor and Hannan)2002年、3:781−790頁を参照されたく、それらの内容は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。したがって、本発明の方法は、例えば、癌、眼科疾患、免疫不全疾患、胃腸疾患、ウィルス性および細菌性感染症、他の病原性感染症、神経変性疾患、神経学的疾患、腎臓病および病態、ならびにダイナミン依存エンドサイトーシスに関与する他の障害、または他にダイナミン依存エンドサイトーシスの阻害に感受性のある他の障害の予防と治療に有用であり得る。
【0054】
例えば、ヒトポリオーマウィルスJCVは、進行的多巣性白質脳症、致命的中枢神経系(CNS)脱髄疾患の病因物質であり、ニューロンへのその侵入が、クロルプロマジンなどのエンドサイトーシス阻害剤によりブロックされることは公知である(アトウッド W.(Atwood
W.)、2001年)。同様に、HIV(ワイス S.(Wyss S.)ら、2001年)、インフルエンザウィルス(ロイ A.(Roy A.)ら、2000年)およびアデノ関連ウィルス(デュアン D.(Duan
D.)ら、1999年)による感染は、エンドサイトーシスによるか、またはその阻害剤に感受性がある。
【0055】
さらに、成長因子受容体(例えば、EGF−R)は、シグナリングから細胞増殖まで、細胞活性の内在化および維持のためにダイナミンを必要とする(セト E.(Seto
E.)ら、2002年)。ダイナミン構成要素によるエンドサイトーシスのブロッキングは、これらの多くの例において細胞増殖を防止し(グリーブ T.(Grieb
T.)ら、2000年)、ダイナミンII(非ニューロン形態)阻害剤が抗癌活性を有し得る証拠を提供している。デント病(多発性嚢胞腎症)もまた、塩化ClC−5チャネルのエンドサイトーシスに関係しており、エンドサイトーシスブロッカーは、その内在化を防止する(シュウェーク M.(Schwake
M.)ら、2001年)。
【0056】
ダイナミンは、細胞表面、ゴルジ体、エンドソームおよびミトコンドリアからのエンドサイトーシス輸送全ての中心である。幾つかの神経変性疾患は、これらの輸送経路に関連している。2つ、すなわちエンドサイトーシス経路および分泌経路がβ−アミロイドの産生に関係がある(アリドールおよびハンナン(Aridor
and Hannan)2000年)。脳において、エンドサイトーシスが役割を演じている疾患および病態としては、アルツハイマー病、ハンチントン病(HD)、強直性ヒト症候群(stiff-person
syndrome)、レビー小体ジメンチアス(Lewy body dimentias)、およびニーマン−ピックC型病が挙げられる(カテルド(Cateldo)ら、2001年;メツラー(Metzler)ら、2001年;オング(Ong)ら、2001年;スミス(Smith)ら、2000年)。
【0057】
アルツハイマー病において、β−アミロイド前駆体蛋白質(APP)は、クラスリン被覆小胞の軸索細胞表面から内在化され、リサイクルしているシナプス小胞から区分されて、エンドソームおよび細胞体に輸送される(マルキーズ−スターリング N.(Marquez-Sterling
N.)ら、1997年)。エンドソームは、APPまたはApoEの内在化後のダイナミン依存エンドサイトーシス経路における第1のコンパートメントであり(スマイシーズ J.(Smythies
J.)、2000年)、エンドソームの変質は、アルツハイマー脳における垂体神経において明白である(カタルド A.(Cataldo A.)ら、1997年)。エンドサイトーシス経路活性化は、APP処理およびβ−アミロイド形成において顕著であり、散発性アルツハイマー病の脳の脆弱性領域におけるニューロンの初期の特徴である(カタルド A.(Cataldo
A.)ら、2001年)。
【0058】
ハンチントン病(HD)は、主として線条体ニューロンに影響を及ぼす神経変性障害であり、さらに変異遺伝子産物のハンチンチンは脳特異的ではない。ハンチンチンは、ハンチンチン相互作用蛋白質1(HIP1)ファミリーのメンバーと強力に相互作用する。ハンチンチン−HIP1相互作用は脳に限定されており、ハンチンチンのポリグルタミンの長さに逆相関している。通常のハンチンチン−HIP1相互作用の喪失は、脳における膜−細胞骨格完全性の欠損に寄与し得る。HIP1は、ダイナミン媒介エンドサイトーシス機構の基本的構成要素である(メッツラー M.(Metzler
M.)ら、2001年)。それ故、多数の報告は、HDにおける神経学的欠損をエンドサイトーシスの異常性と関連づけている(アリドールおよびハンナン(Aridor
& Hannan)、2000年;メッツラー M.(Metzler M.)ら、2001年)。
【0059】
他の例は、パーキンソン病、レビー小体認知症およびADのレビー小体変異体など、レビー小体疾患に寄与する主要な候補物であるシナプス前シヌクレイン蛋白質である。外因性シヌクレインは、そのエンドサイトーシスおよび細胞質内包含物形成のため、ニューロン細胞死を引き起こす。細胞死およびα−シヌクレイン凝集体は、ヒトの神経芽腫細胞におけるそのエンドサイトーシスの直接的結果である(スング J.(Sung
T.)ら、2001年)。エンドサイトーシスはまた、てんかんに関係があるとされている。例えば、2つのエンドサイトーシス蛋白質シナプトジャニン(synaptojanin)(SJ)またはアンフィフィシン(amphiphysin)のいずれかを目的として破壊されたマウスは、SVEを減じ、彼らの生存中にランダムなてんかん発作により死亡し(ジパオロ(Di
Paolo)ら、2002年)、ニューロン興奮性における役割およびてんかんへの関連を示している。
【0060】
エンドサイトーシス経路はまた、細胞への侵入口を得るためにウィルス、毒素および共生微生物により利用される。例えば、ボツリヌス神経毒および破傷風神経毒は、異なるシナプスにおいて伝達物質放出を阻害する細菌性蛋白質であり、2つの重篤な神経麻痺性疾患、破傷風およびボツリヌス中毒を引き起こす。それらの作用は、エンドサイトーシスを経て神経末端への内在化に依る(フミュー(Humeau)ら、2000年)。それ故、阻害剤によるエンドサイトーシスを標的とすることは、臨床的に有用な方法として適用される。
【0061】
したがって、本発明の方法が予防または治療に有用と考えられる具体的な疾患および病態の例としては、限定はしないが、多巣性白質脳症、多発性嚢胞腎疾患、β−アミロイド関連疾患、アルツハイマー病、ハンチントン病、強直性ヒト症候群、レビー小体疾患、レビー小体ジメンチアス、パーキンソン病、てんかん、破傷風、ボツリヌス中毒、HIV感染、インフルエンザおよびムコ脂質症が挙げられる。
【0062】
本発明により哺乳動物に投与される式Iの化合物は、二量体ベンジリデンマロニトリルチルホスチンまたはそのプロドラッグであることが好ましい。二量体チルホスチンは、ビス−チルホスチンまたはその類縁体であることが最も好ましい。ダイナミンに結合する能力を提供し、ダイナミン活性を阻害するビス−チルホスチンまたは二量体チルホスチンの機能および/または基の知識を用いて、構造が異なるにもかかわらずこの能力を保持する類縁体、特に模倣物をデザインできる。本明細書に記載された方法における二量体チルホスチン類縁体、特にビス−チルホスチン類縁体の使用は、本発明に包含されることは明白である。
【0063】
用語の「類縁体」は、二量体チルホスチンとは異なるが、二量体チルホスチンの生物学的機能または活性特性を提供する1つ以上の特徴の類似性を保持する分子を包含する。類縁体は、二量体チルホスチンと実質的に全体的類似性を有してもよいし、または生物学的機能または生物学的活性の提供源となるか、あるいはそうでなければ、生物学的機能または生物学的活性の提供に関与する二量体チルホスチンの1つ以上の領域を有する構造的類似性のみを有してもよい。ビス−チルホスチンの類縁体は、例えば、化合物の1つまたは双方の芳香族基の1つまたは双方のヒドロキシ置換基を、別の好適な基または上記の多くの異なる好適な基で置換することにより提供され得る。あるいは、なおその上、化合物の1つ以上の他の基を除去、修飾または置換してもよい。
【0064】
類縁体のデザインは、典型的にサイズ、荷電分布ならびに三次構造などの元の化合物の物性の判定および/または化合物のどの特徴が、ダイナミンに結合する能力を保持するために必要かを確認することを含む。特に、元の化合物は、X線結晶学、核磁気共鳴および商品として入手できるコンピュータモデリングソフトウェアを利用して化合物の立体化学および物性を考慮に入れて作成され得る。このアプローチの好ましい変法において、化合物とダイナミン自体との相互作用から生じるコンホメーションの変化が、類縁体のデザインに考慮され得るように、モデリングに前記相互作用を考慮に入れる。このようなモデリング技法は、当業界に周知であり、熟練者の範囲内に十分に入る。好適なモデリングアプローチとしては、Accelrys
Catalyst(登録商標)Pharmacore DevelopmentおよびAccelrys Cerius 4.8 LigandFit(登録商標)プロトコル(Accelrys社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)の使用が挙げられる。さらなる好適なモデリングアプローチとしては、Mac
Spartan Pro Version 1.1プロトコル(Wave Function社、アーバイン、カリフォルニア州、米国)の使用が挙げられる。
【0065】
類縁体の提供はまた、必要な物理的および化学的特性を提供するために、または必要な物理的および化学的特性を得るためのさらなる化学反応を促進するために、化学基を付加するテンプレート分子の選択、または誘導を含むことができる。テンプレート分子および化学基の選択は、合成の容易性、インビボ分解可能性の危険性、安定性および投与時の生物学的活性の維持に基づく。生理的許容性などもまた、当技術者により解されるようなデザインを考慮に入れる。
【0066】
化合物は、本発明に従って1つ以上の他の化合物または薬物と共に投与され得る。例えば、化合物は、化学療法薬または哺乳動物が治療を受けている特定の疾患または病態の予防または治療処置に従来から用いられる薬物と併用するか、または関連させて対象哺乳動物に共投与され得る。「共投与される」とは、同じかまたは異なる経路による同一製剤または2つの異なる製剤の同時投与、または同じかまたは異なる経路による連続投与を意味する。「連続」投与とは、非常に短い時間から数時間または数日の範囲で、該化合物と他の薬物または複数薬物との投与間の時間遅延を含んで次々に投与することを意味する。
【0067】
好適な製薬組成物としては、注射に好適な液剤が挙げられる。このような注射用組成物は、注射可能性が存在する程度の流体であり、典型的に、製造後に少なくとも数ヵ月間の貯蔵を可能にする安定がある。担体は、界面活性剤、生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、およびそれらの混液の1種以上を含有する溶媒または分散媒体であり得る。
【0068】
経口投与用に、該化合物は、経口的に許容できる不活性希釈剤、同化できる食用担体と共に製剤化できるか、または例えば、硬シェルまたは軟シェルゼラチンカプセルに封入できる。あるいは、それを食物に直接添加できる。さらに、該化合物は、リン酸二カルシウムなどの1種以上の賦形剤、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、またはアルギン酸などの崩壊剤と共に組み込むことができ、経口摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤およびシロップ剤の形態で使用できる。
【0069】
錠剤、丸剤などもまた、トラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシ澱粉またはゼラチンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、ショ糖、乳糖、サッカリンなどの甘味剤、および風味剤の1種以上を含有することができる。この剤形が、カプセル剤である場合、1種以上の上記成分に加えて液体担体を含有することができる。種々の他の成分が、コーティング剤として存在し得る。さらに、該化合物は、任意の好適な徐放性調製剤または製剤に組み込むことができる。
【0070】
該化合物は、典型的に、意図された対象への投与のために、製薬的に許容できる担体または賦形剤と共に製薬組成物中に製剤化される。好適と思われる従来から公知のこのような担体、希釈剤および賦形剤を使用できる。好適な製薬的に許容できる担体および賦形剤としては、任意の公知の適切な溶媒、分散媒体および等張製剤または液剤が挙げられる。製薬的活性物質のためのこのような成分および媒体の使用は周知である。典型的に、本発明の組成物にはまた、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメルサールなどの1種以上の保存剤が組み込まれる。好適な製薬的に許容できる担体および本発明の組成物に有用な製剤は、例えば、その内容が参照としてその全体が本明細書に組み込まれている、「レミングトン(Remington):The
Science and Practice of Pharmacy(Mack Publishing社、1995年)」など、熟練者に周知のハンドブックおよびテキストに記載されている。
【0071】
投与の容易性および投与量の均一性のために単位剤形で非経口組成物を製剤化することが特に好ましい。本明細書に用いられる単位剤形は、治療を受ける対象に対する単位用量として適している物理的に考慮された単位を意味するものであり、各単位は、選択された担体および/または賦形剤と組み合わせて所望の予防効果または治療効果を生じるように算出された活性剤の予め決められた量を含有する。
【0072】
投与される化合物の用量は、該化合物が予防的使用のために投与されるか、それとも治療的使用のために投与されるのか、薬剤の投与が意図される病態、病態の重症度、対象の年齢、ならびに体重および対象の全身の健康状態などの関連因子など、認められた規準に従って医師または医療担当者により判断し得る多くの因子に依存する。例えば、最初に低用量を投与し、引き続き対象の応答評価後に増量できる。同様に、投与回数は、同様の方法、すなわち各用量間での対象の応答を継続的にモニタリングすることにより判断でき、必要ならば投与回数の増加、あるいは投与回数を減少させて行うことができる。
【0073】
製薬組成物の投与経路もまた、組成物が投与されるべき疾患または病態の性質に依存する。投与の好適な経路としては、限定はしないが、気道、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、筋肉内、点滴、経口、直腸、局所および徐放性インプラントを挙げることができる。静脈内経路の場合、特に好適な経路は、治療を受ける腫瘍または特定の臓器に供給する血管内への注入を介するものである。化合物はまた、例えば、胸腔または腹腔などの腔内に送達できるか、または腫瘍または疾患組織に直接注入できる。
【0074】
本発明の性質が、より明確に理解できるように、ここでその好ましい形態を、以下の非限定例を参照として記載する。
【実施例】
【0075】
実施例1 ダイナミンGTPアーゼ活性のチルホスチン阻害剤の確認
1.1 材料とアッセイ
ホスファチジルセリン、1,2−ジオレイン、カルモジュリン、ATP、GTP、ロイペプチン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、ツウィーン80、ビス(スルホスクシニミジル)スベレート(BS3)およびグルタチオンアガロースは、Sigmaから入手した。パパインおよび二塩酸アンチパインは、Boehringer
Mannheim(ドイツ連邦共和国)から入手した。ゲル電気泳動の試薬および装置は、Bio−Radから供給された。[δ−32P]ATP(3000Ci/mmol)および[δ−32P]GTP(25μCi/mmol)は、Amersham
plc、英国から得た。蛋白質分子量マーカーはおよびクロマトグラフィ樹脂は、Pharmaciaから供給された。全て他の試薬は、分析試薬グレードまたはより良質のものであった。
【0076】
1.1.1 蛋白質製品
GST−Amph2−SH3(筋肉Amph2)に関するプラスミド(バットラー(Butler)ら、1997年)は、pGEX2TベクターにおいてPieto
DeCamilli、エール、コネチカット州、米国により供給された。プラスミドは、大腸菌(E.coli)中で増殖させ、GST−Amph2−SH3融合蛋白質は、20mMトリス−HCl、pH7.5中、10mM減少GSHでの溶出によるグルタチオン(GSH)−セファロース上で精製し、GSHなしの同じ緩衝液に対して透析し、4℃で保存した。ダイナミンは、ヒツジ脳の全脳の周辺膜フラクションからの抽出により精製し(ロビンソン(Robinson)ら、1993年)、先に記載したGST−Amph2−SH3−セファロース上でアフィニティー精製し(マークスおよびマクマホン(Marks
and McMahon)、1998年)、250gのヒツジ脳から8mgの蛋白質を得た。組換えダイナミンIIは、昆虫細胞内で発現するが、サンドラ・シュミット(Sandra
Schmid)博士(Scripps、サンディエゴ、カリフォルニア州)から恵与された。PHドメインを欠失する組換えダイナミンII(ダイナミンPH、ロビン・スカイフェ(Robin
Scaife)により提供)は、バキュロウィルス感染を用いて昆虫細胞内で発現させた(サリム(Salim)ら、1996年)。
【0077】
1.1.2 GTPアーゼアッセイ
ダイナミンGTPアーゼ活性は、先に記載された方法を修正した方法(ロビンソン(Robinson)ら、1993年)によって[δ−32P]GTPの加水分解により測定された。要約すると、精製ダイナミンIまたはダイナミンII(0.2μg/チューブ)を、GTPアーゼ緩衝液(10mMトリス、10mM NaCl、2mM Mg2+、0.05%ツウィーン80、pH7.4、1μg/mlロイペプチンおよび0.1mM PMSF)および0.3mM GTPと1.3μCi[δ−32P]−GTPを含有するGTPカクテル中、種々の濃度の阻害剤またはDMSO媒体の存在下または不在下で、30℃で10分間温置した。最終アッセイ容量は、40μlであった。ダイナミン活性は、ベースとしてまたは5μg/ml L−ホスファチジルセリンの添加により刺激されたリン脂質として測定された。この反応は、100μlのGTPアーゼ停止用緩衝液(2%ギ酸、8%酢酸、pH1.9)、次いで600μlの酸洗浄用木炭溶液(酸性溶液7%(w/v)木炭溶液)および100μlのBSA(5mg/ml)で終了させた。5分間の遠心分離(室温で13,000rpm)後、200μlの各上澄液を、[δ−32P]−GTPから32Piの放出に関する−カウンターでカウントした。
【0078】
1.1.3 [α−32P]−GTP結合アッセイ
[α−32P]−GTP結合アッセイを、96ウェルのマイクロタイタープレートのウェル内で実施した。ダイナミン(0.2μg/ウェル)をGTPアーゼ緩衝液に加え、4℃の暗所で10分間温置した。次に[α−32P]−GTP(2μCi/チューブ)を前記反応物に加え、さらに4℃の暗所で10分間温置した。次いでマイクロタイタープレートを、315nmの短波長紫外線ランプにより8cmの距離で30分間照射した。光標識の特異性は、1mMの冷GTPの存在下および不在下で標識を比較することにより判定された。次いでサンプルを、24ウェルのスロットブロッターのウェルを介す吸引によりニトロセルロース膜に添加した。該ニトロセルロース膜をPBSで3回洗浄して乾燥した。結合ヌクレオチドを、ホスホリメージャー(phosphorimager)(Molecular
Dynamics)により検出した。
【0079】
1.1.4 リン脂質結合およびヘリックス組立て
ヒツジ全脳から精製されたダイナミンI(50μg/ml)を、100μlの組立て用緩衝液(1mM EGTA、30mMトリス、100mM NaCl、1mM DTT、1mM PMSF、および完全プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Roche))中、1mM Mg/GTPの存在下または不在下で、ホスファチジルセリンリポソーム類(80μg/ml、30mMトリス/HCl、pH7.4中で超音波処理)と共に25℃で1時間温置した。サンプルを、14,000rpmで15分間遠心分離し、脂質結合(P)および遊離(S)ダイナミンを分離し、これらのフラクションを12%SDSポリアクリルアミドゲル上でゲル電気泳動により分析された。存在する場合、当該薬物(10μMおよび100μM)を予めリン脂質と混合してからダイナミンIと共に温置した。
【0080】
1.1.5 テキサスレッド−トランスフェリンの細胞内への取り込み
トランスフェリン(Tf)の取り込みを、先に記載した方法(ファンデル・ブリーク(van der Bliek)ら、1993年)に基づいてSwiss 3T3細胞およびHER14細胞内で分析した。手短に言うと、細胞を、DMEM培地プラス10%子ウシ胎仔血清中、60%集密性まで平板培養し、その後、細胞をDMEMマイナス子ウシ胎仔血清中、一晩(8〜10時間)温置した。テキサスレッド−トランスフェリン(Tf−TxR、Molecular
Probes、オレゴン州)を、5μg/mlの最終濃度まで加え、細胞を37℃で10分間温置した。細胞を氷冷酸洗浄溶液(0.2M酢酸+0.5M NaCl、pH2.8)中、15分間温置することにより、細胞表面染色を除去した。細胞を直ちに、4%パラホルムアルデヒドにより10分間固定してから、PBSにより3回洗浄した。核は、DAPI(Molecular
Probes、オレゴン州)を用いて染色した。スライドは、DABCOを用いて取り付け、Leica DMLB明視野顕微鏡およびSPOTデジタルカメラを用いて蛍光をモニターした。阻害剤との実験において、Tf−TxRの添加15分前または60分前にDMEMにビス−チルホスチンを補足した。
【0081】
1.1.6 エンドサイトーシス
単離された神経末端(シナプトソーム)は、ラット大脳皮質から不連続パーコール勾配の遠心分離により調製された(ダンクレイ(Dunkley)ら、1986年)。フラクション3および4を集めて、全ての実験に用いた。エンドサイトーシスは、先に記載された(カズンおよびロビンソン(Cousin
and Robinson)2000年a)蛍光染色剤FM2−10の取り込みを用いて測定された。シナプトソーム(2ml中0.6mg)を、プラスまたはマイナスCa2+クレブス様溶液中、37℃で5分間温置した。30mM KCl(S1)による刺激1分前にFM2−10(100M)を加えた。刺激のS1相におけるエンドサイトーシスを介して小胞によりFM2−10が吸収されるため、シナプトソームを、この相中のアンタゴニストと温置した。具体的に言うと、シナプトソームを、刺激5分前にチルホスチンA47またはビス−チルホスチンと温置した。刺激2分後、シナプトソームを1mg/mlのウシ血清アルブミンを含有するプラスCa2+溶液中で2回洗浄した。洗浄ステップにより、非内部移行のFM2−10およびチルホスチン類が除去される。洗浄されたシナプトソームを、プラスCa2+溶液中、37℃で再懸濁し、蛍光計キュベットに移し、30mM KCl(S2)の標準的添加により刺激した。標準的S2刺激により、蓄積された全てのFM2−10が放出され、溶液中への染色剤放出によるFM2−10蛍光の減少としてエンドサイトーシスを測定できる(励起488nm、発光540nm)。
【0082】
エンドサイトーシスは、S2における30mM KClにより刺激された絶対蛍光の減少として算出された。ディスプレイされたトレースは、Ca2+の不在下でFM2−10で装填されたシナプトソームから獲得されたバックグランドトレースを差し引いた後のシナプトソームからのFM2−10平均放出を表す。回復効率は、事前のエキソサイトーシス量を考慮に入れることから、エンドサイトーシスのより正確な測定値である。回復効率はエンドサイトーシス/エキソサイトーシスとして算出され、エンドサイトーシスは上記のとおり定義され、エキソサイトーシスは、刺激2分後のCa2+−依存グルタメート放出として定義される。回復効率値は、30mM KClに対して1.0の比に対して正規化された。
【0083】
1.1.7 グルタメート放出アッセイ
グルタメート放出アッセイは、放出されたグルタメートの酵素結合蛍光検出を用いて実施された(カズンおよびロビンソン(Cousin and Robinson)2000年a、b)。手短に言うと、シナプトソーム(2ml中0.6mg)を、プラス(1.2mM CaCl2)またはマイナス(1mM EGTA)Ca2+クレブス様溶液(118.5mM NaCl、4.7mM KCl、1.18mM MgCl2、0.1mM Na2HPO4、20mM Hepes、10mMグルコース、pH7.4)に37℃で再懸濁した。1mM NADP+の添加後実験を開始した。1分後、50Uのグルタメートデヒドロゲナーゼを加え、シナプトソーム懸濁液を、4分後30mM KClにより刺激した。NADPHの産生による蛍光増加は、340nmの励起および460nmの発光においてPerkin-Elmer
LS-50B蛍光光度計でモニターされた。実験は、4nmolのグルタメートの添加により正規化された。データは、同一の刺激条件に対してプラスCa2+とマイナスCa2+溶液間の放出差として算出されたCa2+−依存グルタメート放出として提供される。阻害剤を用いる実験では、シナプトソームは、KClによる刺激前にチルホスチンA47またはビス−チルホスチンのいずれかと共に5分間、前温置した。
【0084】
1.1.8 電子顕微鏡
シナプトソームを、1.2mM Ca2+を含有するクレブス様溶液中、5分間温置してから、30mM KClにより2分間刺激した。示されているKCl添加5分前にシナプトソームを、100μMのビス−チルホスチンと共に前温置した。刺激後、シナプトソームを、室温で1分間微量遠心管中でペレット化してから、5%グルタルアルデヒドで補足された氷冷リン酸緩衝生理食塩水中で静かに再懸濁して固定化した。1時間後、それらを低スピード(2500rpm)において室温で5分間遠心分離してシナプトソームをゆるいペレットにした。ペレットを低スピン(2500rpm)で7分間MOPs緩衝液により静かに3回洗浄してから、10%水中ウシ血清アルブミン(BSA)で静かに再懸濁して、室温で20分間放置した。次にシナプトソームを、低スピード(2500rpm)において室温で7分間再度遠心分離し、カルノフスキー(Karnovsky)の固定剤を上塗りし、4℃で一晩温置した。引き続きペレットをすすぎ、四酸化オスミウムの緩衝液中で3時間固定した。次いでシナプトソームをすすいで、2%酢酸ウラニル水中1時間着色してから、一連の連続的な10分間の洗浄:50%エタノールプラス0.1%NaCl、70%エタノールプラス0.1%NaCl、95%エタノールプラス0.1%NaCl、100%エタノールプラス0.1%NaClで2回および100%アセトンで2回、により乾燥した。次に、アセトン/樹脂混合物(1:1)で1時間浸潤し、スパー(Spur)のエポキシ樹脂中、70℃で10分間3回洗浄してから、スパー(Spur)のエポキシ樹脂で満たされた平押し金型内で、それらを70℃で10時間埋め込んだ。
【0085】
ウルトラミクロトームUltracut-E(Reichert、ドイツ国)を用いて、樹脂ブロックから0.5mエポキシ切片を得た。この切片を、ダイヤモンドナイフ(Diatome、スイス国)で切断し、水滴上に浮かべ、電子顕微鏡グリッド上に置き、最初にエタノール中2%酢酸ウラニルを15分間、次いでレイノルド(Reynold)のクエン酸鉛を4分間用いて二重染色した。グリッドを水で洗浄し、吸収性ろ紙を用いて接触乾燥し、電子顕微鏡による分析まで保存した。分析は、Phillips
1L-BioTwin(Einhoven、オランダ国)電子顕微鏡で実施し、撮られた写真を、電子顕微鏡プレートフィルム(Kodak、4489、8.3cm×10.2cm)上でプリントした。
【0086】
1.2 結果
1.2.1 ビス−チルホスチンは、ダイナミンIおよびダイナミンII双方のGTPアーゼ活性を阻害する
ダイナミンのGTPアーゼ活性は、エンドサイトーシス時に形質膜から成長する小胞の能力において本質的な役割を演じる。最初に神経特異的なダイナミンIの阻害剤を見出すために、極めて強力なATPアーゼ活性部位関連阻害剤である多数の蛋白キナーゼ阻害剤および幾つかの脂質キナーゼ阻害剤を試験した。これらの化合物は、ATPアーゼ活性部位がGTP活性部位と同様であり、したがって幾つかのATPアーゼ阻害剤もまたダイナミンを標的にすることができるという仮説に基づいて選択された。得られた結果は、低い効力のダイナミンI GTPアーゼ活性阻害を有してある程度の成功を示した。
【0087】
次いで一連のチルホスチン類を評価し、2つが阻害を示すことが判明した。すなわち、チルホスチンA47(IC50=100μM)および2μMのIC50を示したこのサンプリングの最も強力な阻害剤のビス−チルホスチンである(図1cおよび1dを参照)。
【0088】
観察された阻害がダイナミンIに特異的であるかどうか、または偏在性ダイナミンIIにも影響を及ぼすかどうかを評価する目的で引き続きチルホスチンA47およびビス−チルホスチンを試験した。両薬物とも、ダイナミンIIに対し、より強力であることが証明された(図1eおよび1fを参照)。より具体的には、チルホスチンA47は、ダイナミンIIに対し9MのIC50を示したが、ビス−チルホスチンは、丁度0.5μMのIC50を示した。これにより、各ダイナミン遺伝子産物に特異的な薬物をデザインでき、それによってエンドサイトーシスの種々の形態の薬剤による制御が可能になることが示されている。
【0089】
1.2.2 ビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47は、ダイナミンIまたはダイナミンIIに対するGTP結合を阻止しない
ダイナミンによるGTP加水分解を防ぐ上でビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47の作用機序を評価するために、該薬物が、ダイナミンの活性部位でGTPと競合するかどうかを見るために試験した。[α−32P]−GTP結合アッセイを完了して、ビス−チルホスチン、チルホスチンA47またはBIM Iの存在下または不在下でダイナミンに対する放射標識GTP結合を可視化した(図2a〜d)。対照(薬物なし)は、[α−32P]−GTPがダイナミンに結合しなかったことを示した。ビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47の存在下、GTP結合の減少は見られなかったが、高濃度では実際に増強するのが見られた。これは特に高濃度でダイナミンIIに対するGTP結合が非常に増加するチルホスチンA47の場合にはそうである。GTPアーゼ阻害剤BIM Iもまた、[α−32P]−GTP結合の減少によって見られるように、ダイナミンに対する結合に関してGTPとの競合が見られた。
【0090】
4種の小型G蛋白質(Rab3A、Ras、Arf2、RalA)の活性部位に関して、これらの薬物とGTPとの競合もまた試験した。いずれの薬物も、これらの蛋白質に対する[α−32P]−GTP結合に影響を及ぼさないことが判明した(データは示していない)。このことは、ビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47は、神経末端または神経細胞に存在し得る他のG蛋白質ではなくてダイナミンに対してそれらの作用が特異的である可能性が高いことを示している。
【0091】
1.2.3 ビス−チルホスチンは、ダイナミンIのPHドメインにおいて作用しない
ビス−チルホスチンが、そのPHドメインを介してダイナミンIを阻害するかどうかを判定するために、PHドメインを欠いているダイナミンIの組換え型変種(ダイナミンIのΔPHドメイン)に対するビス−チルホスチンの効果を、野生型ダイナミンに対するその効果と比較した(図3a)。ダイナミンIのPHドメインは、GTPアーゼ活性の負の調節剤として働き、ダイナミンIのΔPHドメインは、構成的に活性であり、リン脂質により影響を受けない。この結果により、ビス−チルホスチンが、ダイナミンIのΔPHドメインのGTP加水分解を10μMで50%超、依然として阻害できたことが示されている。このことは、PHドメインが、ダイナミンIに対するビス−チルホスチンの作用部位でないことを示しており、ビス−チルホスチンは、ダイナミンI分子上のアロステリック部位において阻害しているに違いないということを意味している。しかしながら、BIM Iは、PHドメインの除去によって、ダイナミンIのGTPアーゼ活性を阻害する能力を喪失し、この薬物が、PHドメインを介してGTP加水分解を防止することを示している。
【0092】
リン脂質とダイナミンとの相互作用は、協同的ダイナミンヘリックス組立てを誘導することによってGTPアーゼ活性を刺激する。組立てダイナミンは、簡単な沈降アッセイにより容易に検出され、この特性が、ビス−チルホスチンが、ダイナミンヘリックス組立てまたはリン脂質相互作用を調節するかどうかを判定するために使用された。ダイナミン単独では、このアッセイにおいて沈殿せず、上澄液が保持されているが(図3b、レーン1〜2)、PSリポソームの存在下ではペレットにおいて大部分が見られる(レーン3〜4)。リン脂質結合、それゆえのダイナミンヘリックス組立ては、10μMまたは100μMのビス−チルホスチンによる影響を完全に受けなかった(レーン5〜12)。Mg/GTPをこのアッセイに添加したが、その結果は変わらなかった。これは、ビス−チルホスチンが、リン脂質とのダイナミン結合体も、またその協同的組立ても阻止しないことを示している。それ故、ビス−チルホスチンは、アロステリック部位におけるダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害し、また、ヘリックス組立て後に阻害する。
【0093】
1.2.4 チルホスチンA47ではなくてビス−チルホスチンが、ダイナミンI媒介シナプス小胞回復を阻害し、その過程でダイナミンI環を形成する
ラット神経末端集団中のSVEに対するビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47の効果を確認するために蛍光測定法を用いた(シナプトソーム、図4)。ビス−チルホスチンおよびA47は、エキソサイトーシスに対する効果がなかった(Ca2+−依存グルタメート放出、図4aおよび4b)。ビス−チルホスチン(100μM10分間)は、SVEを有意に阻害したが、一方、A47(100μM)は阻害しなかった(図4cおよび4d)。このアッセイで検出されたSVE量は、事前のエキソサイトーシスの程度に依存することから、エンドサイトーシスの阻害は、回復効率を算出することにより定量化された。このパラメータは、各薬物に関してエキソサイトーシス量で割られたエンドサイトーシス量の比である(カズン(Cousin)ら、2001年)。回復効率1は、エンドサイトーシスに対する薬物効果を示さない。チルホスチンA47は、0.95(±0.05)の回復効率およびビス−チルホスチンが0.7(±0.05、図4e)の回復効率を示した。このことは、ビス−チルホスチンによるSVEの有意な減少を示している。
【0094】
ビス−チルホスチンは、GTP結合ではなくて(図2)ダイナミンIのGTPアーゼ活性を阻害することから(図1)、ビス−チルホスチンもまた、成長するシナプス小胞の頸部周囲に環として組み立てられるSVEの特定の段階でダイナミンを捕捉できるかどうかを判定するために、試験を行った。休止時または41mM KCl(S1)中10秒間で1回脱分極されたシナプトソームは、電子顕微鏡(EM)により正常な形態を示した(図5a〜b)。神経末端は:i)平滑な、密封された形質膜、ii)小型のシナプス小胞で完全に満たされ、およびiii)殆ど常に1つから3つの正常なミトコンドリアプロフィルを含み、時にはシナプスおよび関連シナプス後密度を含有することを特徴とした。非刺激シナプトームが、ビス−チルホスチンで処理された場合、それらの形態に及ぼす影響はなかった(図5a)。しかしながら、脱分極されると、シナプス小胞の大量の枯渇があった(図5b)。少数の形質膜陥入もまた検出され(図5e〜f)、エンドサイトーシスがないことを示唆した。GTP結合ではなくてGTP加水分解のブロッカーに予測されるように、明らかに高密度カラーに取り囲まれた小胞頸部を有する多数の巻かれたピットが見られた(図5c、d、gおよびh)
【0095】
1.2.5 ビス−チルホスチンは、トランスフェリンのSwiss 3T3細胞およびHER14細胞内へのダイナミンII−媒介受容体−媒介エンドサイトーシスをブロックする
トランスフェリンは、ダイナミンIIにより媒介されている受容体媒介エンドサイトーシスの過程により細胞内に輸送される。非ニューロン細胞へのトランスフェリン内在化に対するビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47双方の効果を試験した(図6)。対照細胞は、高い程度で細胞質染色(パネルaおよびe)を示し、トランスフェリンが細胞内に内在化されていることを示した。細胞核は、DAPIにより青色に共染色され、細胞体の所在を示した(パネルb、d、fおよびh)。ビス−チルホスチンの添加の際、トランスフェリン染色の非常に大きな減少が見られた。チルホスチンA47もまた、ビス−チルホスチンほど劇的ではないが、この効果を生じさせた(示していない)。この阻害もまた、濃度依存性であることが判明した。媒体DMSOは、トランスフェリン内在化に対する効果は無かった。
【0096】
1.3 考察
最初にショウジョウバエの変異株シビレ(shibire)で立証されたとおり、神経末端におけるダイナミンおよびエキソサイトーシスのブロッキングは、大部分のSV類の劇的な枯渇をもたらす。多数のSV類は、神経末端の最も明確な形態的特徴の1つであることから、それらの喪失は、視覚的に容易に明白である。さらに、形質膜の生じた形態は、ブロックが生じているエンドサイトーシス点の強い表示を提供することが知られている。ビス−チルホスチンは、多くのSV類の神経末端を枯渇させ、形質膜上に捕捉された頸部周囲の透明なダイナミンのカラーまたは環を有する極めて少数の小胞を生じた。ビス−チルホスチンの作用部位は、環組立て後の頸部開裂前であることが、この劇的な結果により明らかになった。しかしながら、驚くべきことに、ダイナミンのカラーは稀であった。この驚くべき複雑性はビス−チルホスチンが、環組立て前に第2の点でブロックすることを示唆しており、ダイナミンGTPアーゼ活性は、SVEの機構における2つの異なる点において重要であることが支持されている。
【0097】
3種のダイナミン遺伝子産物は、少なくとも3つの形態のエンドサイトーシスを媒介できる。ダイナミンIは、SVEを媒介し、ダイナミンIIはRMEを媒介し、ダイナミンIIIは、シナプス後棘におけるエンドサイトーシスを媒介する(グレイ(Gray)ら、2003年)。機構のさらに微妙な点もまた公知である。ダイナミン類の分化抑制により、これら細胞の役割間を識別する能力が提供される。特に、選択的阻害剤は、種々のエンドサイトーシス間を区別するための重要な手段であり、種々の形態のエンドサイトーシスに基づく病状の標的化に対して臨床的関心が持たれている。
【0098】
さらにこれらの結果により、ビス−チルホスチン(BisTまたはAG537)は、ダイナミンIおよびIIのGTPアーゼ活性を阻害し、神経末端(シナプトソーム)におけるSVE、および3T3細胞またはHER14細胞におけるトランスフェリンのRME双方をブロックすることが示されている。その作用部位は、GTP結合部位でもなく、またはPHドメインでもなく、したがってそれはアロステリック阻害剤である。GTP結合部位に影響を与えないことから、それは、環内のダイナミン組立てにも影響を与えないはずである。このことは、組立て後のダイナミンを標的とするユニークな手段を提供する。ビス−チルホスチンは、EGFR−TK(IC50=0.4M)およびEGF−依存細胞増殖(IC50=3M)を阻害することが以前に見出されている(ガジト(Gazit)ら、1996年)。したがって、ダイナミン阻害を保持するが、EGFR−チロシンキナーゼに対するそれらの効果を低下させる類縁体がデザインされた(チロシンキナーゼ特異性の決定因子が周知であることから)(ガジト(Gazit)ら、1996年)。
【0099】
実施例2 チルホスチン類縁体の開発
【化6】

【0100】
2.1 類縁体の開発
ビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47の構造は、上記に示されている。3,4−ジヒドロキシベンゼンのこれらの化合物間の構造的類似性およびシアノアミドまたはチオアミドの存在は、これらの基がダイナミン阻害に重要であり得ることを示唆している。これらの特徴は、ライブラリー開発に対して液相平行合成アプローチを高度に受けることができ、活性に重要な芳香族置換基のタイプおよび数、対称システム(1対2)の必要性、およびビス−チルホスチンに存在する2つのアミド部分間の中心アルカンスペーサーアームの長さの重要性を判定するために2つのライブラリーが合成された。これらのライブラリーは、ライブラリー1(二量体化合物)およびライブラリー2(非対称性、単量体化合物)と称された。
【0101】
2.2 類縁体ライブラリーの合成
クネーベナーゲル化学および一連の適切なα,w−ビスアミン類の簡単な適用により、所望のライブラリー(スキーム1)を良好から優れた収率で迅速に得られた。
【化7】

【0102】
このアプローチの有用性により、n=1〜5を有するアルカンスペーサーアームの長さに基づいて、ライブラリー1内に5つの考慮されたサブライブラリーの迅速な生成が可能であった。ダイナミンI GTPアーゼ活性に関する最初の生物学的スクリーンは、100μMで実施された。次いでより有望な類縁体のIC50値を決定するためにある濃度範囲にわたってそれらをスクリーンした(表2)。合成された80の類縁体の中で多くの化合物は、100μM以下のIC50を有することが判明し、また著しい阻害を示した。R1からR5置換基は下表1で確認される。
【0103】
2.3 二量体チルホスチン類の合成
2.3.1 一般
全ての出発物質は、Aldrich Chemical社およびLancaster Synthesisから購入された。1Hおよび13Cスペクトルは、Bruker
Advance AMX 300 MHz分光計上で、それぞれ300.1315および75.4762 MHzで記録された。化学シフトは、内部基準としてのTMSに相対的である。
【0104】
2.3.2 合成法
化合物5a:2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−エチル]−アセトアミド
エチレンジアミン(3a)(1.5g、25mmol)およびメチルシアノアセテート(5g、50mmol)を、室温で2時間撹拌した。次に生じた白色固体を10mLのエタノールと混合し、ろ過により採取した。エタノールからの再結晶により白色固体を得た、6.3g(81%)。mp182℃(文献値183℃)29
1H NMR(DMSO):8.25(2H,t,J=5.5Hz)、3.56(4H,s)、3.13(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):162.31、115.96、38.41、25.25。
【0105】
化合物5b:2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−プロピル]−アセトアミド
プロパンジアミン(3b)(2.2g、30mmol)およびメチルシアノアセテート(6.4g、65mmol)を、室温で2時間撹拌した。次に生じた白色固体を20mLのエタノールと混合し、ろ過により採取した。エタノールからの再結晶により4.995g(81%)の白色固体を得た。mp146℃(文献値148℃)29
1H NMR(DMSO):8.21(2H,t,J=5.5Hz)、3.59(4H,s)、3.07(4H,q,J=6.7Hz)、1.53(2H,quin,J=6.7Hz)。
13C NMR(DMSO):162.45、116.64、39.28、28.90、25.67。
【0106】
化合物5c:2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ブチル]−アセトアミド
1,4−ジアミノブタン(3c)(3g、34mmol)およびメチルシアノアセテート(7g、70mmol)を、室温で2時間撹拌し、その時間後に白色固体を形成した。次にこの固体をエタノール(10mL)と混合し、ろ過により採取した。エタノールからの再結晶により白色固体を得た、5.995g(78%)。mp145℃(文献値145℃)。
1H NMR(DMSO):8.15(2H,t,J=5.5Hz)、3.56(4H,s)、3.05(4H,br s)、1.38(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.84、116.09、38.63、26.07、25.17。
【0107】
化合物5d:2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ペンチル]−アセトアミド
1,5−ジアミノペンタン(3d)(2g、20mmol)およびメチルシアノアセテート(3.9g、40mmol)を、室温で2時間撹拌し、その時間後に白色固体を形成した。次にこの固体をエタノール(10mL)と混合し、ろ過により採取した。エタノールからの再結晶により白色固体を得た、4.62g(98%)。mp125℃(文献値125℃)。
1H NMR(DMSO):8.14(2H,t,J=5.4Hz)、3.55(s,4H)、3.03(4H,q,J=6.4Hz)、1.39(4H,quin,J=7Hz)、1.23(2H,quin,J=7Hz)。
13C NMR(DMSO):161.79、116.11、38.84、28.26、25.17、23.43。
【0108】
化合物5e:2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ヘキシル]−アセトアミド
1,6−ジアミノヘキサン(3e)(3g、26mmol)およびメチルシアノアセテート(6g、60mmol)を、室温で2時間撹拌し、その時間後に白色固体を形成した。次にこの固体をエタノール(10mL)と混合し、ろ過により採取した。エタノールからの再結晶により白色固体を得た、6.2g(95%)。mp141℃(文献値140℃)。
1H NMR(DMSO):8.15(2H,t,J=5.5Hz)、3.56(4H,s)、3.04(4H,q,J=6.1Hz)、1.37(4H,quin,J=5.9Hz)、1.24(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.76、116.12、38.85、28.58、25.16。
【0109】
化合物9:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−エチル}−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノ−アセチルアミノ)−エチル]−アセトアミド(5a)(0.3g、1.5mmol)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.42g、3mmol)、3滴のピペリジンおよびエタノール(10mL)を、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(10mL)で洗浄することにより、黄緑色固体を得た、0.54g(81%)。mp290℃(文献値295℃)。
1H NMR(DMSO):8.32(2H,t,J=5.5Hz)、7.92(2H,s)、7.53(2H,d,J=2.1Hz)、7.25(2H,dd,J=8.2,2.1Hz)、6.85(2H,d,J=2.1Hz)、3.45(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):162.50、151.63、161.61、146.22、125.76、123.45、117.65、116.53、116.31、100.85、39.60。
【0110】
化合物10:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−エチル}−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノ−アセチルアミノ)−エチル]−アセトアミド(5a)(0.056g、0.3mmol)、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド(0.1g、0.65mmol)および1滴のピペリジンおよびエタノール(2mL)を、1時間還流した。冷却、ろ過および冷エタノール(10mL)で洗浄することにより、橙色固体を得た、0.11g(82%)。mp>300℃。
1H NMR(DMSO):8.29(2H,t,J=5.5Hz)、7.79(2H,s)、6.99(4H,s)、3.32(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):162.15、150.7、145.96、140.24、121.26、117.30、109.97、99.76、39.40。
【0111】
化合物11:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−エチル}−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノ−アセチルアミノ)−エチル]−アセトアミド(5a)(0.06g、3mmol)、3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド(0.1g、0.6mmol)、1滴のピペリジンおよび2mLのエタノールを、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エタノール(5mL)で洗浄することにより、橙色固体を得た、0.101g(66%)。mp274℃。
1H NMR(DMSO):8.34(2H,t,J=5.5Hz)、7.93(1H,s)、7.20(2H,d,J=1.92Hz)、7.13(2H,d,J=1.92Hz)、3.77(6H,s)、3.35(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.90、150.85、148.03、145.83、139.90、121.76、117.20、111.09、107.20、100.83。
【0112】
化合物22:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−プロピル}−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノ−アセチルアミノ)−プロピル]−アセトアミド(5b)(0.3g、1.4mmol)、(0.4g、2.8mmol)3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3滴のピペリジンおよび10mLのエタノールを、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(10mL)で洗浄することにより、黄緑色固体を得た、0.55g(85%)。mp274℃(文献値277℃)。
1H NMR(DMSO):8.24(2H,t,J=5.5Hz)、7.92(s,2H)、7.52(2H,d,J=2.1Hz)、7.26(2H,dd,J=8.2,2.1Hz)、6.85(2H,d,J=8.2Hz)、3.23(4H,q,J=6Hz)、1.70(2H,quin,J=6.7Hz)。
13C NMR(DMSO):161.50、150.60、150.50、125.10、123.21、117.10、116.00、115.80、100.50、37.27、28.82。
【0113】
化合物23:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−プロピル}−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−プロピル]−アセトアミド(5b)(0.06g、0.29mmol)、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド(0.1g、0.58mmol)、1滴のピペリジンおよびエタノール(10mL)を、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エタノール(10mL)で洗浄することにより、橙色固体を得た、0.097g(70%)。mp>300℃(文献値>300℃)。
1H NMR(DMSO):8.18(2H,t,J=5.5Hz)、7.78(2H,s)、6.99(4H,s)、3.21(4H,q,J=6.8Hz)、1.68(2H,quin,J=6.8Hz)。
13C NMR(DMSO):161.80、150.70、145.95、140.30、121.22、117.30、109.90、99.50、38.20、28.90。
【0114】
化合物24:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−プロピル}−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−プロピル]−アセトアミド(5b)(0.3g、1.4mmol)、0.44gの3,4−ジヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、3滴のピペリジンおよびエタノール(10mL)を、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エタノール(5mL)で洗浄することにより、橙色固体を得た、0.31g(42%)。mp>300℃。
1H NMR(DMSO):8.35(2H,t,J=5.4Hz)、7.95(2H,s)、7.21(2H,d,J=1.9Hz)、7.12(2H,d,J=1.9Hz)、3.21(4H,q,J=6.8Hz)、1.71(2H,quin,J=6.8Hz)。
13C NMR(DMSO):161.30、150.61、147.20、145.30、121.04、117.60、110.60、107.65、98.71、38.35、28.88。
【0115】
化合物35:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ブチル}−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ブチル]−アセトアミド(5c)(0.3g、1.35mmol)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.37g、2.7mmol)、3滴のピペリジンおよびエタノール(10mL)を、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(10mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.61g(97%)。mp281℃(文献値283℃)。
1H NMR(DMSO):8.25(2H,t,J=5.5Hz)、7.91(2H,s)、7.53(2H,d,J=1.9Hz)、7.26(2H,dd,J=8.3,1.9Hz)、6.85(2H,d,J=8.3Hz)、3.20(4H,br s)、1.49(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.52、150.86、150.42、145.65、125.23、123.09、117.20、115.81、100.51、39.31。
【0116】
化合物36:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ブチル}−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ブチル]−アセトアミド(5c)(0.065g、0.3mmol)、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド(0.1g、0.6mmol)、1滴のピペリジンおよびエタノール(2mL)を、1時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(5mL)で洗浄することにより、2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ブチル}−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリルアミドを黄色固体として得た、0.121g(82%)。mp>300℃(文献値>300℃)29
1H NMR(DMSO):8.16(2H,t,J=5.5Hz)、7.78(2H,s)、6.98(4H,s)、3.19(4H,br s)、1.48(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.70、150.56、145.90、140.20、121.30、117.30、109.90、99.80、39.26、26.37。
【0117】
化合物37:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ブチル}−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ブチル]−アセトアミド(5c)(0.065g、0.3mmol)、3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド(0.1g、0.6mmol)、1滴のピペリジンおよびエタノール(2mL)を、1時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(5mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.110g(70%)。mp>300℃。
1H NMR(DMSO):8.09(2H,t,J=5.5Hz)、7.86(2H,s)、7.18(2H,d,J=1.9Hz)、7.10(2H,d,J=1.9Hz)、3.75(6H,s)、3.19(4H,br s)、1.48(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.71、150.23、148.70、146.24、120.25、117.51、109.50、106.80、98.81、55.76、39.31、26.64。
【0118】
化合物48:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ペンチル}−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ペンチル]−アセトアミド(5d)(0.2g、0.85mmol)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.23g、1.7mmol)、3滴のピペリジンおよび7mLのエタノールを、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(10mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.36g(90%)。mp252℃(文献値248℃)29
1H NMR(DMSO):8.15(2H,t,J=5.5Hz)、7.85(2H,s)、7.50(2H,d,J=2.1Hz)、7.20(2H,dd,J=8.5Hz,2Hz)、6.75(2H,d,J=8.5Hz)、3.16(4H,q,J=6.2Hz)、1.50(4H,quin,J=7.1Hz)、1.28(2H,quin,J=6.9Hz)。
13C NMR(DMSO):161.85、153.88、150.34、146.28、126.16、121.47、117.70、115.71、114.65、98.40、39.46、28.63、23.73。
【0119】
化合物49:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ペンチル}−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ペンチル]−アセトアミド(5d)(0.068g、0.29mmol)、(0.1g、058mmol)3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド(0.1g、0.58mmol)、1滴のピペリジンおよびエタノール(2mL)を、1時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(5mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.123g(83%)。mp>300℃32
1H NMR(DMSO):8.12(2H,t,J=5.5Hz)、7.76(2H,s)、6.98(4H,s)、3.16(4H,br s)、1.50(4H,quin,J=6.8Hz)、1.28(2H,quin,J=6.7Hz)。
13C NMR(DMSO):161.80、150.49、146.11、146.01、141.25、120.69、117.53、109.90、99.12、39.47、28.62、22.30。
【0120】
化合物50:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ペンチル}−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ペンチル]−アセトアミド(5d)(0.069g、0.29mmol)、3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド(0.1g、0.58mmol)、1滴のピペリジンおよびエタノール(2mL)を、1時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(5mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.126g(81%)。mp256℃。
1H NMR(DMSO):8.09(2H,t,J=5.5Hz)、7.86(2H,s)、7.18(2H,d,J=2Hz)、7.10(2H,d,J=2Hz)、3.75(6H,s)、3.17(4H,br s)、1.50(4H,quin,J=6.8Hz)、1.28(4H,quin,J=6.9Hz)。
13C NMR(DMSO):161.81、150.50、148.00、146.20、120.05、117.81、110.50、107.80、98.71、55.71、39.41、28.64,22.47。
【0121】
化合物61:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ヘキシル}−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ヘキシル]−アセトアミド(5e)(0.3g、1.2mmol)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.33g、0.24mmol)、3滴のピペリジンおよび10mLのエタノールを、2時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(10mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.52g(89%)。mp263℃(文献値260℃)。
1H NMR(DMSO):8.18(2H,t,J=5.5Hz)、7.89(2H,s)、7.51(2H,d,J=2Hz)、7.24(2H,dd,J=2Hz,8.3Hz)、6.83(2H,d,J=8.3Hz)、3.17(4H、q,J=6.1Hz)、1.47(4H,quin,J=6.1Hz)、1.28(4H,s)。
13C NMR(DMSO):161.52、151.18、150.30、145.72、125.22、122.91、117.24、115.80、115.72、100.38、39.48、28.78,25.98。
【0122】
化合物62:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ヘキシル}−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ヘキシル]−アセトアミド(5e)(0.073g、0.29mmol)、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド(0.1g、0.58mmol)、1滴のピペリジンおよびエタノール(2mL)を、1時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(5mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.1g(67%)。mp>300℃。
1H NMR(DMSO):8.11(2H,t,J=5.5Hz)、7.76(2H,s)、6.98(4H,s)、3.16(4H,br s)、1.47(4H,quin,J=6.1Hz)、1.28(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.80、150.46、145.99、141.19、120.71、117.53、109.89、99.15、39.68、28.84、26.01。
【0123】
化合物63:2−シアノ−N−{3−[2−シアノ−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリロイルアミノ]−ヘキシル}−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−アクリルアミド
2−シアノ−N−[3−(2−シアノアセチルアミノ)−ヘキシル]−アセトアミド(5e)(0.069g、0.28mmol)、3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド(0.1g、0.56mmol)、1滴のピペリジンおよびエタノール(2mL)を、1時間還流した。冷却、ろ過および冷エーテル(5mL)で洗浄することにより、黄色固体を得た、0.132g(86%)。mp243℃。
1H NMR(DMSO):8.17(2H,t,J=5.5Hz)、7.89(2H,s)、7.19(2H,d,J=1.6Hz)、7.13(2H,d,J=1.6Hz)、3.77(6H,s)、3.17(4H,br s)、1.48(4H,quin,J=6.1Hz)、1.29(4H,br s)。
13C NMR(DMSO):161.80、150.49、146.11、146.01、141.25、120.69、117.53、109.90、99.12、39.47、28.62,22.30。
【0124】
2.3.2 二量体チルホスチン類の活性
【0125】
【表1】

【0126】
置換基を含有しないか、または単一の−OH(例えば、R1またはR2がOHである)、−Cl(R2またはR4がClである)、−OMe(R2またはR3がOMeである)、または−COOH(R3がCOOHである)などの単一の置換基を含有するモノ置換芳香族化合物は、ダイナミン阻害を示さなかった。第2の酸素含有置換基の導入は、明白な効果を有した。3,4−ジ−OH(11、IC50=5.1±0.6μM)は、化合物1、すなわちビス−チルホスチン(2,3−ジ−OH)と同様の効力を示した。3,4,5−トリ−置換芳香族化合物(10)もまた、1と等しい効力を有した。種々の鎖長化合物の各シリーズで本質的に同じ傾向が見られた。
【0127】
アルカンスペーサー鎖の延長は、n>3までは、効力に対して殆ど効果がなかった。例えば、9(n=0)の鎖延長類縁体、すなわち22(n=1)、35(n=2)、48(n=3)、および61(n=4)は、それぞれ5.1±0.6、1.7±0.2、3.2±1、5±1.4および26±1.5μMのIC50値を示した。チロシンキナーゼ阻害に関して本質的に反対の傾向が以前に報告されていた。ポリ−GAT基質のEGF受容体チロシンキナーゼリン酸化に対する化合物を調べる限りで、ガジト(Gazit)らは、阻害が鎖長に依存していることを観察した(ガジト(Gazit)ら、1996年)。
【0128】
1およびシアニル基(CN)により占められた位置が環化している類縁体もまた提供できる。例えば、R1がヒドロキシである場合、該ヒドロキシ基は、シアニル基と反応して、下記のスキーム2に示すイミノクロメンを形成できる。
【化8】

スキーム2:ビス−チルホスチンのイミノクロメン類縁体の合成
【0129】
9の鎖延長類縁体に関する阻害値の類似性の説明を意図して、5つ全てのアルカンスペーサー類縁体のモデリング分析を実施し、生じたMacSpartanProの低エネルギーコンホーマーモデルが下記に示している。見られように、5つ全ての類縁体の低エネルギーコンホーマーは、比較可能なヘアピンコンホメーションを採り、末端フェニル環の間のパイ−パイ相互作用を最大にする。その結果、スペーサー長の増加は、エントロフィ効果が、ヘアピンコンホメーションの相対的安定性に影響を及ぼし始めるまで(n≧5)限定された影響を与える。これは、延長された構造に存するチロシンキナーゼ効力に対する二量体チルホスチン類の効果と対比的であり、したがってそれらをEGFRチロシンキナーゼ類の二量体中間体に適合させることができる。
【化9】

表2において、ビス−チルホスチン(1)はまた、スキーム1に従って合成された化合物9として同定される。したがって化合物1と9は同一である。
【0130】
1と会合する潜在的H−結合効果を調べるために、化合物71を開発した。この化合物は、全体サイズが1と同様の比較的非可撓性のピペラジンリンカーを有する。しかしながら、それは、≦100μMでダイナミン阻害を示さなかった。同様に、1のアルカンスペーサーをN−メチル化してN−メチル類縁体72を生成した後、阻害効果は見られなかった。これらの観察により、二量体チルホスチン類(tryphostins)のヘアピンコンホメーションは阻害作用に望ましく、モデリング観察(延長鎖よりもヘアピンコンホメーション)を支持しており、アミド置換基もまた、ダイナミンへの結合において重要な役割を演じることが示唆されている。
【化10】

【0131】
ビス−チルホスチンに基づく多数のμM効力の対称類縁体を首尾よく開発し、ダイナミン阻害における芳香族核の1つの修飾の役割を判定するためにそれらを調べた。したがって、チルホスチンA47(2)に基づく他の化合物ライブラリーが、スキーム3に示されているとおり、開発され、ダイナミンI GTPアーゼ活性を阻害する類縁体の能力を調べた。
【化11】

スキーム3.ライブラリー2の合成
【0132】
驚くべきことに、ライブラリー2の化合物のスクリーニングは、≦100μMのダイナミン阻害を有するものを示さなかった。より驚くべきことに、チルホスチンA47(2)がダイナミンIC50=70μMを示すことを、元のスクリーニングデータが示した。
【0133】
チルホスチンA47のより綿密な試験により、ライブラリー2において阻害活性を検出できない説明の可能性を得た。すなわち、単独−Sが、対応する二量体構造への溶液中の酸化に利用できる可能性があった。単純な互変異性に次いで酸化により、対応するジスルフィド種(121)が生成する(スキーム4を参照)。新鮮に調製された2の溶液は、阻害活性を示さなかったが、室温で24時間維持された保存液は、弱い効力を示した。還元剤ジチオトレイトール(2mM)が、ダイナミンアッセイ培地に含まれる場合、121のIC50は>300μMまでに減少した。ジチオトレイトール単独では、ダイナミンGTPアーゼ活性に対して効果がなかった(データは示していない)。二量体121のインサイチュ生成により、良好なダイナミン阻害を確保する上で適切に処理された必要で重要な官能基を有する類似の低エネルギーコンホメーションが得られる。同様の連続事象が、酸化の際の活性増加を示したEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるチオインドール類に見られている(トンプソン(Thompson)ら、1993年)。
【化12】

スキーム4
【0134】
2.4 考察
GTPアーゼ酵素ダイナミンに対する二量体チルホスチン類の構造−活性相関を、リード化合物ビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47に基づいて化合物の合成およびライブラリーのスクリーニングによって評価した。得られた結果から、強力な阻害活性は、3,4位にヒドロキシ基を有する2つの芳香族環を含有する二量体チルホスチン化合物に見られた。これらの化合物に対する修飾は、官能基がスペーサーを形成するために用いられる改変により容易に作製することができる。
【0135】
実施例3 プロドラッグの開発
細胞膜の透過性特性を増加させることによって細胞内の効力を増加させるためにビス−チルホスチンおよびその類縁体のプロドラッグが開発された。二量体チルホスチン化合物のプロドラッグを提供するための好適な反応は、スキーム5に図示されている。ビス−チルホスチンは、出発薬剤として例示されている。二量体チルホスチン化合物を、ピリジン/N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの適切な触媒存在下、適切な無水物または酸クロリド(過剰モルで)と共に撹拌する。幾つかの場合において、反応を完結させるために該溶液を還流する必要があり得る。反応が完結したら、エステル化された生成物を、再結晶またはクロマトグラフィにより精製する。開発されたプロドラッグの例は、表2および表3に示している。
【化13】

スキーム5.プロドラッグの合成
【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
プロドラッグPro−BisTは、ビス−チルホスチン上に存在する4つのヒドロキシル基の代りに4つのアセチルエステル基を有し、細胞の細胞外膜を交差する能力について評価された。Pro−BisTは、細胞内で活性な化合物ビス−チルホスチンに変換されてから、ダイナミンに結合し、それによってエンドサイトーシスを阻害できる。Pro−BisTは、細胞系Hela、HER14、COS7、Swiss 3T3、A431、B104およびB35においてトランスフェリンまたはEGFの受容体媒介エンドサイトーシス(RME)を阻害することが判明した。Pro−BisTは、ビス−チルホスチン(約30x)よりも有意に効力があり、10〜20μM間の濃度で試験された細胞系においてRMEを効率的にブロックし、ビス−チルホスチンと比較して細胞に侵入する能力が大いに改善されたことを示している。
【0139】
プロドラッグ80−1は、Pro−BisT(10〜20μM)と同様の濃度でRMEを阻害することが判明し、細胞内への通過前の細胞外環境におけるプロドラッグの早期加水分解を減少させるために開発された。このプロドラッグは、Pro−BisTと比較して粉末形態で貯蔵される場合、貯蔵期限が改善されている。
【0140】
具体的な実施形態に示されるように、多数の変化および/または修飾が、広く記載された本発明の精神または範囲から逸脱することなく本発明に対してなし得ることは当業者により認識されるであろう。したがって、本発明の実施形態は、全ての点で例証であって限定ではないものとして考慮されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】ビス−チルホスチンおよびチルホスチンA47(a、b)は、ダイナミンIおよびダイナミンII双方のGTPアーゼ活性を阻害することを示しているグラフである。0.2μgのダイナミンI(c、d)およびダイナミンII(e、f)のGTPアーゼ活性が、ビス−チルホスチン(c、e)またはチルホスチンA47(d、f)の存在下または不在下で1.3Ci[δ−32P]−GTPを用いて測定された。基礎的活性(白丸)とリン脂質刺激活性(黒丸)が比較されている。
【図2】ダイナミンIおよびダイナミンIIに対する[α−32P]−GTPの結合は、ビス−チルホスチンまたはチルホスチンA47(a、b)の添加によって影響を受けないことを示しているニトロセルロース膜のオートラジオグラフである。定量的データは、パネル(c)および(d)に示している。
【図3】(a)化合物が、このドメイン(「ダイナミンI−デルタPH」)を欠失する組換えダイナミンの変異体のGTPアーゼ活性をなお阻害することから、ビス−チルホスチンはダイナミンIのPHドメインにおいて作用しないことを示すグラフであり;(b)ビス−チルホスチンが、脂質に結合しているダイナミンをブロックせず、ダイナミンは上澄液(S)よりもペレット(P)に保持されていることを示す、クーマシーブルーで染色したSDSゲルの写真である。
【図4】単離神経末端(シナプトソーム)におけるエキソサイトーシス(a、c)およびエンドサイトーシス(b、d)の蛍光定量的アッセイにより、A47ではなくてビス−チルホスチンが特異的にエンドサイトーシスを減少させることが示されている。回復効率は、前述のエキソサイトーシス量に関連した、より正確なエンドサイトーシスの測定値であり、ビス−チルホスチンは、回復効率(e)において有意なブロックを生じた。
【図5】単離ラット脳神経末端(シナプトソーム)の電子顕微鏡写真により、ビス−チルホスチン添加時のシナプトソームにおけるシナプス小胞の欠損に次いで、脱分極(a、b)および小胞陥入ならびに環化ピットの蓄積(c〜h)による刺激が示されている。
【図6】テキサスレッド標識トランスフェリンのSwiss 3T3細胞(a〜d)またはHER14細胞(e〜d)への内在化が、100μMのビス−チルホスチンによる15分の前温置により阻害されていることを示す写真である。DAPI(青色)染色は、細胞核を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内のダイナミン依存のエンドサイトーシスを阻害する方法であって、式I
M−Sp−M' 式I
[式中、MおよびM'は、各々独立して式II

(Vが、CまたはCHであり;
Wが、CHまたはリンカー基であり;
Yが、水素、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であり;
R'が、スペーサーに結合しているNH、OまたはSであり;
Zは:
(a)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換ヘテロ環式基;
(b)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換炭素環式基;
(c)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;および
(d)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、および、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される、
WがCHまたはリンカー基であるか、またはW、VおよびYが、非置換炭素環式基を形成する場合には、少なくとも2つの置換基、またはW、VおよびYが、ヘテロ環式基を形成する場合には、少なくとも1つの置換基からなる炭素環式基、
から選択され、
ここでMまたはM'のうちの1つのZが、(b)から選択され、MまたはM'の他方のZが、(a)、(c)または(d)から選択される)
の部分であって、同一か、または異なっており、Spがスペーサーである]
の化合物、または生理的に許容できるその塩の有効量により細胞を処理することを含んでなる方法。
【請求項2】
Vが、Cであり;
Wが、CHであり;
Yが、水素、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの置換基、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Yが、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、またはシアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される1つの基により置換されているC1〜C2基であり;
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される少なくとも1つの置換基、またはシアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される1つの基により置換されているC1〜C2基を有し;
Rが、CXR'である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Zが、
(i)O、NおよびSから独立して選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基;
(ii)O、NおよびSから独立して選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、ニトロ、NH、ハロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;
(iii)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、およびニトロ、NH、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基からなる炭素環式基、
から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
MおよびM'のうちの少なくとも1つのZが、2,3−ニ置換炭素環式基以外のものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
MおよびM'のうちの少なくとも1つのZは:
前記Z基が(d)から選択され、WがCHまたはC1〜C3リンカー基である場合、互いにオルト位の関係か、または隣接置換位置にある少なくとも2つの置換基;または
前記Z基が(c)から選択されるヘテロ環式基である場合、ヘテロ原子または複数のヘテロ原子の1つに隣接した炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つ;または
W、VおよびYが環化してZと縮合したヘテロ環式環を形成する場合、前記ヘテロ環式環から少なくとも1つの結合長で離れた炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つ、
を含んでなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
MまたはM'のうちの1つのY置換基が水素である場合、MおよびM'の他方のY置換基が、水素以外のものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
W、VおよびYが、Zと縮合した5員または6員のヘテロ環式環を形成する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Zと縮合した前記ヘテロ環式環が、2つの環のへテロ環式基を形成する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Zが、5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、およびニトロ、NH、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基からなるアリール基を含んでなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Zが、6員環を有する1つの環、およびニトロ、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1〜C2アルコキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基からなるアリール基を含んでなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アリール基が、ニトロ、アミノ、およびヒドロキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基を有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Zが、O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環を有するヘテロ環式基であって、ニトロ、NH、ハロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基を含んでなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヘテロ環式基が、ニトロ、アミノおよびヒドロキシから独立して選択される1つ以上の置換基を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
MおよびM'は、各々独立して以下の部分:

式中:
Xが、OまたはSであり;
Yが、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、またはチオカルボキシであるか;または
1およびYが、環化して5員または6員の置換または非置換ヘテロ環式環または炭素環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記炭素環式環または前記ヘテロ環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
2からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であるか;または
1からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、ハロ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であり;
Rは、NHであり、OはスペーサーSpに結合しているSであり;
ここでMおよびM'のうち少なくとも1つは、R1からR5までの少なくとも2つが水素以外であり、R1からR2までが水素以外である場合、R3からR5までの少なくとも1つもまた、水素以外であるか、またはR1およびYが環化する場合、R1およびYが非置換炭素環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも2つは、水素以外であるか、またはYおよびR1がヘテロ環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも1つは水素以外であることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1からR3までが、水素以外である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1からR5までの少なくとも2つが、互いにオルト位の関係にある請求項15に記載の方法。
【請求項18】
MおよびM'のうち少なくとも1つが、3つの置換基を有し、前記置換基が互いに隣接している請求項15に記載の方法。
【請求項19】
1からR3までが水素以外であるか、またはR2からR5までが水素以外であるかのいずれかである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1からR5まで、またはR2からR5までの少なくとも1つが、ハロ、C1〜C2アルコキシまたはC1〜C2アシルである場合、R1およびYが環化し、ヘテロ環式環を形成している場合には、少なくとも1つの他の置換基は、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびチオカルボキシから選択されるか、またはR1およびYが環化していないか、または非置換炭素環式環を形成している場合には、少なくとも2つの他の置換基は、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される請求項15に記載の方法。
【請求項21】
Yがシアノであり、XがOであり、RがNHである請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
MおよびM'が同一である請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記スペーサーSpにより、前記化合物がヘアピンコンホメーションを採ることが可能になる請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記スペーサーSpが、以下の非置換アルカン鎖:
−CH2(CH2)nCH2
(式中、nは、1から5までの整数である)
を含んでなる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記式Iの化合物が、二量体チルホスチンである請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ダイナミン依存のエンドサイトーシスにより媒介される哺乳動物における疾患または病態の予防処置または治療処置をする方法であって、
M−Sp−M' 式I
[式中、MおよびM'が、各々独立して式II

(Vが、CまたはCHであり;
Wが、CHまたはリンカー基であり;
Yが、水素、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であり;
R'が、スペーサーに結合しているNH、OまたはSであり;
Zは:
(a)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換ヘテロ環式基;
(b)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換炭素環式基;
(c)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;および
(d)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、および、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される、
WがCHまたはリンカー基であるか、またはW、VおよびYが、非置換炭素環式基を形成する場合には、少なくとも2つの置換基、またはW、VおよびYが、ヘテロ環式基を形成する場合には、少なくとも1つの置換基からなる炭素環式基、
から選択され、
ここでMまたはM'のうちの1つのZ基が(b)から選択され、MまたはM'の他方のZ基が(a)、(c)または(d)から選択される)
の部分であって、同一か、または異なっており、Spがスペーサーである]
の化合物、または生理的に許容できるその塩、またはプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項27】
Vが、Cであり;
Wが、CHであり;
Yが、水素、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの置換基、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基、を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基であり;
R'が、スペーサーに結合されているNH、OまたはSである、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
Yが、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、またはシアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される1つの基により置換されているC1〜C2基であり;
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される少なくとも1つの置換基、またはシアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される1つの基により置換されているC1〜C2基を有し;
Rが、CXR'である、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
MおよびM'のうちの少なくとも1つのZが、2,3−ニ置換炭素環式基以外のものである請求項26〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
MおよびM'のうちの少なくとも1つのZは:
前記Z基が(d)から選択され、WがCHまたはC1〜C3リンカー基である場合、互いにオルト位の関係か、または隣接置換位置にある少なくとも2つの置換基;または
前記Z基が(c)から選択されるヘテロ環式基である場合、ヘテロ原子または複数のヘテロ原子のうち1つに隣接した炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つ;または
W、VおよびYが環化してZと縮合されたヘテロ環式環を形成する場合、前記ヘテロ環式環から少なくとも1つの結合長で離れたZの炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つ、
を含んでなる請求項26〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
MまたはM'のうちの1つのY置換基が水素であり、MおよびM'の他方のY置換基が水素以外である請求項26〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
MおよびM'は、各々独立して以下の部分:

(式中:
Xが、OまたはSであり;
Yが、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、またはチオカルボキシであるか;または
1およびYが、環化して5員または6員の置換または非置換ヘテロ環式環または炭素環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記炭素環式環または前記ヘテロ環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
2からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であるか;または
1からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、ハロ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であり;
Rは、NHであり、OはスペーサーSpに結合しているSであり;
ここでMおよびM'のうち少なくとも1つは、R1からR5までの少なくとも2つが水素以外であり、R1からR2までが水素以外である場合、R3からR5までの少なくとも1つもまた、水素以外であるか、またはR1およびYが環化する場合、R1およびYが非置換炭素環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも2つは、水素以外であるか、またはYおよびR1がヘテロ環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも1つは水素以外であることを特徴とする)
である、請求項26〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
1からR3までが、水素以外である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1からR5までの少なくとも2つが、互いにオルト位の関係にある請求項26〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
MおよびM'のうち少なくとも1つが、3つの置換基を有し、前記置換基が互いに隣接している請求項26〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
1からR3までが水素以外であるか、またはR2からR5までが水素以外であるかのいずれかである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
1からR5まで、またはR2からR5までの少なくとも1つは、ハロ、C1〜C2アルコキシまたはC1〜C2アシルである場合、R1およびYが環化し、ヘテロ環式環を形成している場合には、少なくとも1つの他の置換基は、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびチオカルボキシから選択されるか、またはR1およびYが環化していないか、または非置換炭素環式環を形成している場合には、少なくとも2つの他の置換基は、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される請求項26〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
Yがシアノであり、XがOであり、RがNHである請求項26〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
MおよびM'が同一である請求項26〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記スペーサーSpにより、前記化合物がヘアピンコンホメーションを採ることが可能になる請求項26〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記式Iの化合物が、二量体チルホスチンである請求項26〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記疾患または病態が、癌、眼科疾患、免疫不全疾患、胃腸疾患、病原性感染症、腎臓病、てんかん、および神経学的疾患、神経変性疾患ならびに神経系疾患および病態よりなる群から選択される請求項26〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記神経学的疾患、神経変性疾患ならびに神経系疾患および病態が、脱髄疾患、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病およびレビー小体病よりなる群から選択される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患または病態が、てんかんである請求項42に記載の方法。
【請求項45】
ダイナミン依存のエンドサイトーシスにより媒介される哺乳動物における疾患または病態の予防または治療をする方法であって、ダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害する二量体チルホスチン、または二量体チルホスチンの類縁体、生理的に許容できる塩、またはプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項46】
前記二量体チルホスチンは、スペーサー部分によって共に結合されている2つのチルホスチン部分を含んでなり、前記チルホスチン部分の少なくとも1つがベンジリデンマロニトリル部分である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記チルホスチン部分の双方が、ベンジリデンマロニトリル部分である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記チルホスチン部分が、同一である請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記二量体チルホスチンが、ビス−トリホスチンを含んでなる請求項45〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記疾患または病態が、癌、眼科疾患、免疫不全疾患、胃腸疾患、病原性感染症、腎臓病、てんかん、および神経学的疾患、神経変性疾患ならびに神経系疾患および病態よりなる群から選択される請求項45〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記神経学的疾患、神経変性疾患ならびに神経系疾患および病態が、脱髄疾患、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病およびレビー小体病よりなる群から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記疾患または病態が、てんかんである請求項50に記載の方法。
【請求項53】
ダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害する能力を有する二量体チルホスチンまたはその類縁体を同定する方法であって:
試験データを提供するために、二量体チルホスチンまたはその類縁体を、ダイナミンまたはダイナミンGTPアーゼ活性を有する分子と共に温置すること、および
前記試験データに基づいて、二量体チルホスチンまたはその類縁体がダイナミンのGTPアーゼ活性を阻害するかどうかを判定すること、
を含んでなる方法。
【請求項54】
細胞内のダイナミン依存のエンドサイトーシスを阻害するための請求項53に定義されている方法により同定される二量体チルホスチンまたはその類縁体の使用。
【請求項55】
式III
M−Sp−M' 式III
[式中、MおよびM'が、各々独立して式IV

(Vが、CまたはCHであり;
Wが、CHまたはリンカー基であり;
Yが、水素、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、NH、ニトロ、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、硫黄、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C3基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C3基であり;
R'が、スペーサーに結合しているNH、OまたはSであり;
Zは:
(a)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換ヘテロ環式基;
(b)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなる非置換炭素環式基;
(c)O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;および
(d)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、および、
(i)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシル;および
(ii)ニトロ、NH、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、スルフヒドリル、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから選択される少なくとも1つの置換基を有するC1〜C2アルキル基またはC1〜C2アルケニル基、から独立して選択される、
WがCHまたはリンカー基であるか、またはW、VおよびYが、非置換炭素環式基を形成する場合には、少なくとも2つの置換基、またはW、VおよびYが、ヘテロ環式基を形成する場合には、少なくとも1つの置換基からなる炭素環式基、
から選択され、
ここでMまたはM'のうちの1つのZが、(b)から選択される場合、MまたはM'の他方のZが、RがCXR'であり、XがOであり、R'がスペーサーに結合されているNHであり、VがCであり、WがCHであり、Yがシアノである場合、MおよびM'の少なくとも1つのZは、式IVaのベンジル基以外であるという条件で、(a)、(c)または(d)から選択され、および

1、R2およびR5がHであり、およびR3ならびにR4がヒドロキシであるか;または
1およびR5がHであり、およびSpがC2〜C4アルキルスペーサーである場合、R2からR4までがヒドロキシであり;
ここでZ'がWに結合されている炭素原子である)
の部分であって、同一か、または異なっており、Spがスペーサーである]
の化合物または生理学的に許容できるその塩、またはプロドラッグ。
【請求項56】
Vが、Cであり;
Wが、CHであり;
Yが、水素、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基であるか;または
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの置換基、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基を有し;
Rが、CH2R'、CXR'またはCHX'R'であり;
Xが、OまたはSであり;
X'が、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシ、または非置換C1〜C2基あるいはシアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から独立して選択される少なくとも1つの基により置換されているC1〜C2基である、
請求項55に記載の化合物。
【請求項57】
Yが、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、またはシアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される1つの基により置換されているC1〜C2基であり;
W、VおよびYが、5員または6員の置換または非置換の、Zと縮合した炭素環式環またはヘテロ環式環を形成し、前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記ヘテロ環式環または前記炭素環式環は、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される少なくとも1つの置換基、またはシアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される1つの基により置換されているC1〜C2基を有し;
Rが、CXR'である、
請求項56に記載の化合物。
【請求項58】
Zが、
(i)O、NおよびSから独立して選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基;
(ii)O、NおよびSから独立して選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環からなるヘテロ環式基であって、ニトロ、NH、ハロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基;
(iii)5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、およびニトロ、NH、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基からなる炭素環式基、
から選択される請求項55〜57のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項59】
MおよびM'のうちの少なくとも1つのZが、2,3−ニ置換炭素環式基以外のものである請求項55〜58のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項60】
MおよびM'のうちの少なくとも1つのZは:
前記Z基が(d)から選択され、WがCHまたはC1〜C3リンカー基である場合、互いにオルト位の関係か、または隣接置換位置にある少なくとも2つの置換基;または
前記Z基が、(c)から選択されるヘテロ環式基である場合、ヘテロ原子または複数のヘテロ原子のうち1つに隣接した炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つ;または
W、VおよびYが環化してZと縮合したヘテロ環式環を形成する場合、前記ヘテロ環式環から少なくとも1つの結合長で離れた炭素原子上の置換基または複数置換基のうちの1つ、
を含んでなる請求項55〜59のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項61】
MまたはM'のうちの1つのY置換基が水素である場合、MおよびM'の他方のY置換基が水素以外である請求項55〜60のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項62】
W、VおよびYが、Zと縮合した5員または6員のヘテロ環式環を形成する請求項55〜61のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項63】
Zと縮合した前記ヘテロ環式環が、2つの環のへテロ環式基を形成する請求項62に記載の化合物。
【請求項64】
Zが、5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環、およびニトロ、NH、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄、およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基からなるアリール基を含んでなる請求項55〜63のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項65】
Zが、6員環を有する1つの環、およびニトロ、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1〜C2アルコキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基からなるアリール基を含んでなる請求項64に記載の化合物。
【請求項66】
前記アリール基が、ニトロ、アミノ、およびヒドロキシから独立して選択される少なくとも2つの置換基を有する請求項65に記載の化合物。
【請求項67】
Zが、O、NおよびSから選択される3個までのヘテロ原子を含む5員環または6員環を独立して有する1つまたは2つの環を有するヘテロ環式基であって、ニトロ、NH、ハロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、硫黄およびC1〜C2アルコキシから独立して選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基を含んでなる請求項55〜62のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項68】
前記ヘテロ環式基が、ニトロ、アミノおよびヒドロキシから独立して選択される1つ以上の置換基を有する請求項67に記載の化合物。
【請求項69】
MおよびM'は、各々独立して以下の部分:

(式中:
Xが、OまたはSであり;
Yが、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、またはチオカルボキシであるか;または
1およびYが、環化して5員または6員の置換または非置換ヘテロ環式環または炭素環式環を形成し、ここで前記ヘテロ環式環は、O、NおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を含み、置換された場合の前記炭素環式環または前記ヘテロ環式環は、シアノ、ニトロ、NH、アミノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、カルボキシ、チオカルボキシおよび硫黄から選択される少なくとも1つの置換基を有し;
2からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であるか;または
1からR5までは、独立して水素、またはニトロ、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルフヒドリル、チオカルボキシ、ハロ、C1〜C2アルコキシおよびC1〜C2アシルから独立して選択される置換基であり;
Rは、NHであり、OはスペーサーSpに結合されているSであり;
ここでMおよびM'のうち少なくとも1つは、R1からR5までの少なくとも2つが水素以外であり、R1からR2までが水素以外である場合、R3からR5までの少なくとも1つもまた、水素以外であるか、またはR1およびYが環化する場合、R1およびYが非置換炭素環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも2つは、水素以外であるか、またはYおよびR1がヘテロ環式基を形成している場合には、R2からR5までの少なくとも1つは水素以外であることを特徴とする)
である、請求項55〜59のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項70】
1からR3までが、水素以外である請求項69に記載の化合物。
【請求項71】
1からR5までの少なくとも2つが、互いにオルト位の関係にある請求項69に記載の化合物。
【請求項72】
MおよびM'の少なくとも1つが、3つの置換基を有し、前記置換基が互いに隣接している請求項69に記載の化合物。
【請求項73】
1からR3までが水素以外であるか、またはR2からR5までが水素以外であるかのいずれかである請求項72に記載の化合物。
【請求項74】
1からR5までまたはR2からR5までの少なくとも1つが、ハロ、C1〜C2アルコキシまたはC1〜C2アシルである場合、R1およびYが環化し、ヘテロ環式環を形成している場合には、少なくとも1つの他の置換基は、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびチオカルボキシから選択されるか、またはR1およびYが環化していないか、または非置換炭素環式環を形成している場合には、少なくとも2つの他の置換基は、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびチオカルボキシから選択される請求項69に記載の化合物。
【請求項75】
Yがシアノであり、XがOであり、RがNHである請求項69〜74のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項76】
MおよびM'が同一である請求項55〜75のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項77】
前記スペーサーSpにより、前記化合物がヘアピンコンホメーションを採ることが可能になる請求項55〜76のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項78】
前記スペーサーSpが、以下の非置換アルカン鎖:
−CH2(CH2)nCH2
(式中、nは、1から5までの整数である)
を含んでなる、請求項55〜77のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項79】
前記式IIIの化合物が、二量体チルホスチンである請求項1〜78のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項80】
生理的に許容できる賦形剤、担体または希釈剤と共に請求項55〜58のいずれか一項に定義されている化合物を含んでなる製薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−515399(P2007−515399A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540085(P2006−540085)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001624
【国際公開番号】WO2005/049009
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500127922)ザ ユニバーシティ オブ ニューキャッスル リサーチ アソシエイツ リミテッド (1)
【出願人】(503052966)チルドレンズ メディカル リサーチ インスティチュート (1)
【Fターム(参考)】