説明

チブサノキエキス沈澱から不溶性物質を得る方法、チブサノキエキス沈澱からの物質およびその用途

本発明は、化粧品組成物、医薬組成物、織物組成物、塗料組成物およびワニス組成物ならびに食品組成物に適用するための極性および/または非極性媒体物質を得るためのチブサノキ(Genipa americana)エキスの沈澱に関する。本発明の実施態様にしたがって、以下のステップを含む、チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法を請求する:
a)チブサノキ果実からエキスを得ること;
b)(a)で得られるエキスに、吸着剤および媒染剤(沈澱剤)を加えること;および
c)ステップ(b)で沈澱した固体物質を分離すること。もう1つの実施態様において、本発明は、上記本発明方法にしたがって得られるチブサノキエキス沈澱からの物質に関する。本発明はさらに、本発明のチブサノキエキス沈澱からの物質を用いる化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物、非治療的処置における該物質の使用および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品組成物、医薬組成物、織物組成物、食品組成物、塗料組成物およびワニス組成物に適用するための不溶性物質を得るためのチブサノキ(Genipa americana)エキスの沈澱に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジルでは、本発明に用いる植物は、特に、「jenipapo、jenipa」として知られている(英語では、「genipap」または「genipapo」である)。「genipap」は、アカネ科、Genipa属、Americana種に属する。
【0003】
チブサノキ果実の使用は、非常に広範囲にわたる。完熟果実は、酒および甘味食品組成物の形態でより頻繁に用いられる。ブラジルの北東部では、チブサノキ果汁は、貧血に対抗するため、および潰瘍に対する利尿薬として、用いられる。家庭薬において、チブサノキ根から作られる茶は、瀉下効果を有し、粉砕された種は、嘔吐を引き起こす;チブサノキ葉から作られる茶は、他の用途とともに、下痢止め効果を有する。未熟果実は、古くからインディアンによって使用される染料を作り出し、酸化によって青から黒に変わる色を有する水溶性およびエタノールおよびメタノールなどのアルコール溶解性の染料を作り出す。この染料は、織物、陶磁器を染色するのに用いられることが多く、半永久的入れ墨を得るのにも用いられる。
【0004】
ブラジルでは、チブサノキは、ほとんどすべての地域に存在するが、南東部、中央西部および北部に多い。
【0005】
染色物質は、「ゲニピナ(genipina)」(ゲニピン(genipin))と呼ばれ、果実が完熟すると染色効果は失われる。したがって、チブサノキ果実が未熟であるほど、色素として強力である。搾り取り直後はわずかに緑がかった染料は、酸素の存在下でアミノ酸と反応し、青色または緑がかった黒色になる。
【0006】
ゲニピンは、チブサノキ果実に見出されるイリドイド配糖体であるゲニポシド由来のアグリコンである。
【0007】
イリドイドは、メバロン酸を介して合成され、[c]-シクロペンタン炭酸のモノテルペノイドとして技術的に知られている。イリドイド配糖体のアグリコンは、その骨格内にフランまたはピランを有する。
【0008】
ゲニピンは、溶液では無色であるが、酸素の存在下で一級アミノ酸と自発的に反応し、青みがかった黒色の色素を形成する。ゲニピンから、組み合わせあるいは化学的置換によって他の染色物質を得ることが可能である。
【0009】
没食子酸、アルミニウム塩の塩、カルシウムおよびアルミニウム、鉄、亜鉛、銅、バリウム、マグネシウム、マンガン、アンチモン、スズなどの他の多価金属塩由来のなめし剤が、染色工業において広く知られており、染料を定着させ、沈殿剤または吸着剤として作用するための媒染剤としての色素は、光、熱およびpH変化によってその色が容易に失われるか、または変化する分子である天然染料を安定化させるために用いることができる。
【0010】
現在のところ、多くの分子が有害反応に関連している合成染料および色素を置き換える必要性が出てきたことにより、このような分子を安定化させる手段を見出すことが重要になってきている。
【0011】
特許文献PI 0005165-9、PI 0402011-1、US 5078750、WO 2002/36364、US 2003/064039、US 2004/076650、US 2003/064039、JP 200-31912、JP 5-194177、JP 6-056638、JP 7-310023、JP 5-339134、JP 8-301739、JP 2001-122731、JP 8-231353、JP 200-0958859、JP 9-030949、JP 1-124322およびUS 2004/0197429に開示される発明は、チブサノキエキスの植物エキスを得ること、安定化および主として毛染めなどの毛髪処置および半永久的入れ墨などのための処置的用途に焦点を合わせている別の適用を明らかにしている。しかしながら、従来技術におけるすべての適用は、水溶性形態での使用に焦点を合わせており、不溶形態でチブサノキエキスを用いていない。
【0012】
文献PI 0005165-9は、染料エキスを得ること、およびそれに続く、化粧品組成物、食品組成物、塗料組成物などにおける水溶性形体での適用のために植物エキス染料をより安定にするタンニンエキスでの修飾に関する。
【0013】
文献PI 0402011-1は、以下のステップに基づいて、非永久的入れ墨を描く化合物の製造方法に対する保護を請求する:
チブサノキ果実(Jenipapo)からの一定量の果汁を搾ること、この果汁に増粘剤(consistency agent)を加えること、この混合物に植物染料を加えることなど。この場合、描くために意図される化合物もまた、水溶性である。
【0014】
文献WO 2002/36364は、その成分、粘着性マトリックス、粘着性ポリマーおよび、たとえば、チブサノキエキスからの脂肪分散性有機剤であってもよい少なくとも1つの有効な皮膚着色剤などからなる着色サンプル/鋳型から皮膚への移転システムを開示する。
【0015】
文献US 5078750は、ゲニポシド酸であるイリドイド配糖体またはゲニピンであるアグリコンに毛髪繊維を接触させるにことを含む、毛髪の染色/着色方法を提案する。
【0016】
文献US 2003/064039は、生理的に許容しうる媒体中で、角度彩色性色素およびさらなる着色剤を0.1-2の割合で含む組成物に関する。さらなる着色剤のグループの一部でありうる色素の選択肢は、チブサノキなどの天然植物源から搾り取られる色素である。
【0017】
文献US 2004/0766650は、生理的に許容しうる媒体、粒子によって製品に与えられた色をマスクするのに十分な量で、さらなる染料と合わせて組成物の着色において着色効果を示す「干渉」粒子を含む組成物の保護を請求する。さらなる着色剤は、組成物中に、(水溶性)チブサノキエキスなどの植物源から搾り取ることができる少なくとも1つの合成または有機色素を含まれなければならない。さらに、該発明は、ヘアメイクアップ組成物に適用することができることが記載されている。
【0018】
文献JP 200-319120は、天然の皮膚保湿効果を保持する特性を有する植物成分を含む入浴用美容剤に関する。選択肢として言及されるエキスは、フイト(huito)エキス(チブサノキ)である。
【0019】
文献JP 5-194177は、有色細胞におけるメラニン形成抑制作用を刺激することによる、優れた予防的色素沈着促進効果を示す局所適用剤に関する。該作用剤は、その活性成分としてチブサノキエキスを有する。
【0020】
文献JP 6-056638は、短時間かつ安全に毛髪を着色する能力があるイリドイド毛髪染料に関する。該染料は、ゲニポシド、ゲニポシド酸およびゲニピンなどの場合、アカネ科に属する植物から得ることができる。
【0021】
文献JP5-339134は、使用者に悪影響を引きおこすことなく特殊な色調または濃さで、毛髪を迅速に染色する能力がある安定な毛髪染料に関する。該染料は、青みがかった黒い色調に毛髪を着色するために、L-アルギニンなどのアミノ酸と合わせて、ゲニピンであるアグリコンを含む。
【0022】
文献JP 8-301739は、白髪染めに関して優れた均一性を示す、有効染色成分としてチブサノキエキスを含む、毛髪の処置のための組成物に関する。
【0023】
文献JP 2001-122731は、天然の皮膚保湿効果を保持する特性を有する植物成分を含む入浴用美容剤に関する。選択肢として言及されるエキスは、フイト(huito)エキス(チブサノキ)である。
【0024】
文献JP 8-231353は、毛髪繊維の発達を刺激するだけでなく、脱毛を予防する効果を有するヘアトニックに関する。該トニックは、有効成分として、フイト(huito)エキス(チブサノキ)を含むのが好ましい。
【0025】
文献JP 200-095654は、手の皮膚および毛髪への粘着性は低いが、優れた毛髪繊維着色能力を有する組成物に関する。組成物は、他の成分の中で特に、クチナシからエキスされる青色色素溶液(ゲニピン)をベースとする。
【0026】
文献JP 5058859は、ゲニポシドおよび/またはゲニピンおよびアニリン誘導体の組み合わせをベースとする、皮膚および毛髪用の即効性染料に関する。
【0027】
文献US 2004/0197429は、チブサノキなどのGenipa属に属する種である、いくつかの植物の抗炎症性能力( COX-2の阻害)を扱う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
発明の目的
本発明の目的は、チブサノキエキス沈澱から不溶性物質を得ること、ならびにその投与により、たとえば、化粧品組成物、医薬組成物、食品組成物、織物組成物、塗料組成物およびワニス組成物などに適用して、ヒト、動物もしくは野菜製品に、および/または、皮膚に、および/または、タンパク質もしくはセルロース材料に色を着けるためにこの沈殿を用いることである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の概要
本発明は、媒染剤または吸着剤を用いる、水溶性チブサノキエキスからの物質の沈殿、とりわけ、その不溶性形態における染料物質ゲニピンに関する。本発明方法は、以下のステップを含む:
a)チブサノキ果実からエキスを得ること;
b)(a)で得られるエキスに、媒染剤を加えること;および
c)ステップ(b)の固体沈殿物質を分離すること。
本発明はまた、上記方法によってチブサノキエキスから得られる沈殿した固体物質ならびにそれらを含む化粧品組成物およびその使用に関する。
発明の詳細な記載
本発明の沈殿方法は、チブサノキエキスの半精製および標準化を行うことを含み、媒染剤は、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、バリウム、マグネシウム、マンガン、スズおよびストロンチウム、より好ましくはアルミニウムおよびカルシウムなどの多価金属などから選ばれるのが好ましく、またはタンニン(なめし剤)、タンパク質、脂肪酸、炭水化物、樹脂などの天然の媒染剤から選ばれるのが好ましく、タンニンなどの没食子酸から誘導される化合物がより好ましい。所望の沈殿形成を起こすためには、エキスを精製する方法、したがって、本発明の非限定的パラメーターである、使用する各反応物のための温度、撹拌および適切かつ特定のpH範囲を考慮に入れるべきである。
【0030】
結晶化および沈殿形成方法が極めて複雑であることを考慮して、アミノ酸、ミネラル、タンニン、糖、サポニン、クマリン、フラボノイドなどのエキスに存在する非着色剤化合物は一般に、粒子の不安定化、結晶形成および最終的に沈殿形成がもたらされるために、基質および媒染剤と錯体を形成することにおいて根本的な役割を果たす。このように、化粧用途(毒性、微生物汚染などのリスクがない)のために十分に標準化され、純粋な沈殿を得るために、精製の正確な程度を定義することが重要であるが、同時に、錯体形成および結晶形成のために十分な量の非染料化合物が存在することが重要である。チブサノキエキスの場合、本発明は、エキスの錯体形成および結晶化に必須である、適切なレベルの非染料化合物を維持している半精製および標準化エキスを使用するのが好ましい。このような非染料化合物は、エキス中で、5〜20重量%、好ましくは10〜16重量%で変化することができる。さらに、この化合物の初期量をバランスさせるために、色標準化工程に、アミノ酸などの化合物を加えてもよく、研究中に得られるエキスにしたがって、100〜800 ppmの間で、果実の熟成状態に応じて変わる。
【0031】
本発明方法は、水溶性チブサノキエキスを不溶性沈殿に変化させる。水溶性部分もまた形成されるが、次いで、それらは、洗浄によって不溶性生成物から除去されうる。水溶性沈殿が形成される場合、ほとんど完全に除去されるのが好ましい。
【0032】
本発明にしたがってチブサノキエキスを沈殿させることによって得られる物質は、極性および/または非極性媒体中で不溶性である。不溶性形態の利点は、それを水溶性および脂溶性製剤における懸濁液ならびに粉末製剤(シャドウ、ほお紅)として用いることができることである。さらに、不溶性形態は、高い皮膚被覆性(着色性)を示す。チブサノキエキスの水溶性形体は、粉末(スプレードライヤーまたは凍結乾燥による乾燥後)においてさえも、高い被覆性をもって着色を付与することはない。
【0033】
所望の最終製剤のタイプに応じて、本発明組成物は、不溶性形態または不溶性形体と水溶性形体を併せた状態のいずれかで用いることができる。該製剤を得るために、可溶化は行われず、むしろ分散が行われる。本発明組成物には、不溶性エキスのみを用いるものもあり、相乗効果を得るために可溶性および不溶性エキスを併せて用いるものもある。不溶性形態が無くては、化粧のための適切で望ましい着色および被覆を得るのは不可能である。
【0034】
好ましい実施態様において、本発明は、以下のステップを含む、チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法に関する:
a)チブサノキ果実からエキスを得る;使用する特定の果実に応じて変わる触感、直径および色などのパラメーターを考慮して、あらかじめ熟成度を定義するのが好ましい;
b)未加工のエキスの半精製および非染料化合物を定性する;
c)非染料化合物の添加によるエキスを標準化する;
d)(c)で得られるエキスに、吸着剤および媒染剤を加える;
e)ステップ(d)の固体沈殿物質を分離する;
f)洗浄し、沈殿の導電率を調節する;
g)オーブンで乾燥する;および
h)(g)で得られる乾燥沈殿の粒径の均一化のために磨り潰し、篩いにかける。
【0035】
すべての工程は、各特定のケースにしたがって決定されるべきであるが、本発明方法にとって限定的なパラメーターを意味しないpHにて撹拌しながら、温度など、適切で特定の条件下で行われる。
【0036】
本発明の好ましい実施態様にしたがって、ステップa)では、約1,000〜約5,000 rpm、好ましくは約1,800 rpmの高回転下で、定義したサイズおよび触感、それぞれ約20mm〜約150mm、好ましくは約39〜約90mmに、および、およそ500gf〜およそ10,000gf、好ましくはおよそ1,000gf〜およそ6,000gfに、未熟果を磨り潰すことによってチブサノキ果実エキスを得る。遠心力によって、エキスを果実から分離し、次いで、2〜およそ10℃、好ましくはおよそ5℃に冷却し、加圧もしくは真空濾過器で濾過する。
【0037】
次いで、一級アミノ酸、好ましくはグリシンを加えることによって、チブサノキエキスを標準化し(前述のステップc)に詳述したパラメーターにしたがう)、約30分〜約5時間の間で変わりうる時間、好ましくは約1時間、約50〜約95℃、好ましくは約80℃の温度に加熱する。
【0038】
該好ましいステップc)において、アミノ酸は、存在するゲニピン含量に基づいて選ばれ、特に、一級アミノ酸は、さまざまな量において、グルタミン酸、セリン、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、トレオニン、アラニン、プロリン、チロシン、バリン、メチオニン、シスチン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンおよびリシンであり、それらは、沈殿した不溶性エキスに起こる着色の形成に主として関与する。
【0039】
約30分〜約5時間、好ましくは約1時間、約50〜約95℃、好ましくは約80℃にて加熱下、撹拌しながら、上記のアミノ酸などの一級アミノ酸、好ましくはグリシンを加えることによって、可溶性チブサノキエキスを標準化することが可能である。加えられるアミノ酸の量は、チブサノキエキスの量に関して、約0.10〜約5.00%の範囲であり、反射率分光光度計で決定される最終着色のエキスを得るための標準化中に確立され、そのL*a*b*値は、L*=10.00〜50.00、好ましくは24.00±0.30、a*=(-1.00)〜3.00、好ましくは0.20±0.50およびb*=0.10〜2.00、好ましくは0.20±0.10の間である。ステップd)で用いる媒染剤は、以下から選ばれる:
(1)多価金属塩の溶液または分散液、好ましくは、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、バリウム、マグネシウム、マンガン、アンチモン、スズ、ストロンチウムなどから選ばれる多価金属を含む多価金属塩の溶液または分散液として加えられる多価金属塩。CaCO3またはAl2(SO4)3・18H2Oなどのカルシウムまたはアルミニウム塩を含む多価金属塩の溶液がより好ましい。
【0040】
一般に、ラッカーは、基質と沈殿形成剤を加えることによって製造される。両方は、媒染剤として分類される。チブサノキエキスから製造される不溶性化合物の場合、使用される基質は、炭酸カルシウム(吸着剤)であり、沈殿形成剤は、タンニンであった。タンニンは、エキス染料に結合し、炭酸カルシウムは、同じものを吸着する。染料に結合する沈殿形成剤とともに他のカルシウム塩を用いる場合もある。本明細書に記載するように、化学結合と吸着の両方が、pHおよび温度の理想的条件に応じて変化する。沈殿形成剤または吸着剤は、各染料への親和性にしたがって選択され、着色された不溶性化合物を得るためのすべての方法において等しいわけではない。
(2)天然基質の溶液、好ましくは、タンニン(なめし剤)、タンパク質、脂肪酸、炭水化物、樹脂などを含む天然基質溶液として加えられる天然基質。天然基質溶液が、タンニンなどの没食子酸から誘導される化合物を含むのがより好ましい(タンニンエキスの水溶液)。
【0041】
ステップd)において、基質の加熱後および加熱中に、エキスの総量に対して、およそ2〜およそ4重量0%、好ましくはおよそ9重量%にて、炭酸カルシウムの水性懸濁液を加え、次いで、塩酸、硫酸および酢酸、好ましくは酢酸などの酸でpHが、約2〜約6、好ましくは約4〜約5に達するまで予め酸性化した、水和硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、またはバリウム、マグネシウム、マンガン、アンチモン、スズおよびストロンチウム塩、あるいは硫酸塩ではない、他のアルミニウム塩、亜鉛塩および銅塩などの他の多価金属塩の溶液を加える。エキスおよび炭酸カルシウムの混合物は、約50〜約96℃、好ましくは約80℃の温度にて、約30分〜約5時間、好ましくは約1時間、加熱および撹拌下に維持すべきである。
【0042】
炭酸カルシウムが、その形態学的および物理化学的特性ゆえに用いられるのが好ましい。さらに、アジュバント様式で炭酸カルシウムと作用するもう1つの媒染剤を用いてもよい。炭酸カルシウムがエキスの吸着を可能にするので、もう1つの媒染剤と併用での炭酸カルシウムは、エキスを固定し、極性および/または非極性媒体中でエキスを不溶性にする。
【0043】
エキスに炭酸カルシウムを加えた後、もう1つの媒染剤(天然物質または多価金属塩)を加え、水性媒体中に沈殿を得た後、このような目的のために通常用いられる手順および装置によって、得られる固体物質を真空下または加圧濾過器で濾過する。
【0044】
得られる固体物質を洗浄して、残りの水溶性エキスを除去し、洗液自体によって、または、必要であれば、50mV〜150mV、好ましくは70〜90mVの間で所望の導電性を得るのを可能にする正または負の電解質を加えることによって、その導電性を調節する。
【0045】
極性または非極性物質中で不溶性である得られる固体物質を、最終水分量が約0〜約10%、好ましくは約1〜約2%に達するまで、約30〜約80℃、より好ましくは約50〜約60℃の温度にて、オーブンで乾燥するのが好ましい。
【0046】
次いで、その粒径が、約15μm〜約150μm、好ましくは約30〜約50μmの範囲に達するまで、乾燥した固体物質を磨り潰す。
【0047】
好ましい実施態様において、本発明方法は、天然のアカシアエキスから実行され、該方法は、少なくとも73%のなめし剤および炭酸カルシウムを含む。
【0048】
本発明方法にしたがって得られるチブサノキエキス沈殿からの可溶性物質はまた、本発明の実施態様であり、その物理化学的特性を下記の表1に示す。
【表1】

【0049】
本発明はさらに、上記方法によって得られるチブサノキエキス沈澱からの不溶性物質および担体または賦形剤を含む組成物に関する。
【0050】
本発明はまた、チブサノキエキス沈澱からの不溶性物質、ならびに化粧品組成物、医薬組成物、食品組成物の場合、生理的に許容しうる担体または賦形剤である担体または賦形剤を含む、化粧品組成物、医薬組成物、食品組成物、織物組成物および塗料組成物に関する。用語「生理的に許容しうる」は、当業界で利用でき最も広い範囲であると理解すべきであり、一般に、問題となっている物質が、健康な生物の細胞、組織、臓器およびシステムに対して相互作用しないか、悪影響を与えないか、または副作用を引き起こさないことを示す。
【0051】
該化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物はさらに、日焼け止め剤、着色剤、皮膚軟化剤、抗酸化物質、塗膜形成剤、構造剤、増粘剤、湿潤剤、pH調節剤、保存剤、感覚作用剤、懸濁化剤、結合剤、非凝集剤、乳化剤またはその組み合わせから選ばれる活性化合物を含んでもよい。
【0052】
上述した担体、賦形剤および活性化合物は、化粧品、医薬品、織物、塗料およびワニスならびに食品工業において通常用いられるすべての物質を包含する。例示を目的として、本発明の範囲に制限を加えることなく、以下のものが挙げられる:
日焼け止め剤:メトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、二酸化チタン;
着色剤:有機または無機色素;
皮膚軟化剤:カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、ステアロイルイソセチル、認証天然αビサボロールFSC、ジカプリル酸エーテル、精油/植物油(たとえば、ひまし油、水添ひまし油など)、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、ムルムルバター、オレイン酸デシル、ポリブテン、パルミチン酸イソプロピル;
抗酸化物質:トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、クエン酸、ブチルヒドロキシトルエン;
構造剤:ステアリン酸、カンデリラろう、カルナバろう、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、セレシン、グリセリルトリベヘニン/トリベヘネート;
増粘剤:キサンタンゴム、ステアリン酸;
湿潤剤:グリセリン、植物グリセリン、プロピレングリコール;
pH調節剤:トリエタノールアミン;
保存剤:ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、DMDMヒダントイン;
感覚作用剤:グリセリルトリベヘニン/トリベヘネート、雲母、タピオカデンプン;
懸濁化剤:ステアラルコニウムヘクトライト/炭酸プロピレン、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムおよびマグネシウム;
結合剤:合成ろう、グリセリルトリベヘニン/トリベヘネート、ステアロイルイソセチル;
非凝集剤:コロイド状二酸化ケイ素;
乳化剤:ステアリン酸グリセリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、オリーブ油脂肪酸セテアリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン;
担体/賦形剤:水、植物エキス(たとえば、チブサノキエキスなど)、タルク。
【0053】
本発明の化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物は、顔および身体用乳液ならびに化粧品、ろう状および油状製品、粉末、化粧石鹸、(水性または油性)ジェル、(水性、油性または乳液状)ペーストおよびローションを含んでもよい。
【0054】
本発明のもう1つの実施態様は、化粧品、医薬品、織物、塗料およびワニスならびに食品工業における本発明のチブサノキエキス沈澱からの不溶性物質の使用に関する。特に、本発明は、これも本発明の目的である、製品を着色する、化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物の製造におけるチブサノキエキス沈澱からの不溶性物質の使用を含む。
【0055】
本発明のもう1つの実施態様は、皮膚および/またはそのケラチン性材料を着色する、ヒトまたは動物への、本発明のチブサノキエキス沈澱からの不溶性物質の投与または本発明の化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物の局所投与を含む、ヒトおよび動物を処置する非治療的方法である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
実施例
本発明の範囲の制限であると解釈されるべきではない説明的目的のために、本発明のいくつかの実施態様に関連して、以下に実施例を提供する:(i)チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法;(ii)チブサノキエキス沈澱からの物質;および(iii)チブサノキエキス沈澱からの物質を含む化粧品組成物。有機化学、化粧品および薬剤学において通常である方法および技術によって、本発明のチブサノキエキス沈澱を用いるシャドウなどの粉末、マスカラおよびアイライナーなどの乳液ならびにジェルを製造した。
【実施例1】
【0057】
チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法およびチブサノキエキス沈澱からの物質
チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法を、以下のステップによって行った:
a)予め分類された未熟のチブサノキ果実から染料を抽出する;高回転下で果実を磨り潰し、遠心力によって未熟果から果汁を分離する;次いで、エキスを冷却し、濾過した;
b)グリシンを加え、約80℃にて約1時間加熱することによってチブサノキエキスを標準化した;
c)ステップb)のエキスを加熱した後、加熱を続けながら、pHが約4〜約5の範囲になるまで、酢酸で予め酸性化した炭酸カルシウムの9%水性分散液をエキスに加えた;このステップにおいて、約80℃にて約1時間、エキスと炭酸カルシウム溶液の混合物の加熱および撹拌を継続した;
d)ステップc)において炭酸カルシウムをエキスに加えた後、Al2(SO4)3・18H2Oの水溶液を含む媒染剤をエキスに加えた;
d.1)Al2(SO4)3・18H2Oの水溶液の添加:pHが約0.9〜約2の範囲で、Al2(SO4)3・18H2Oを9%にて水に溶解した;Al2(SO4)3・18H2Oの溶液をチブサノキエキスおよび炭酸カルシウムの混合物に加え、約80℃にて約1時間、撹拌および加熱を継続した;
e)水性媒体中の沈殿を得た後、この目的のために当業界で通常用いられる手順および装置によって、得られた固体物質を真空下または加圧濾過器にて濾過した;
f)ステップd)で得られた固体物質を脱塩水で洗浄し、導電率の値が50〜150mV、好ましくは70〜90mVに達するまで導電率を低下させた;
g)極性または非極性媒体中で不溶性の得られた固体物質を、最終水分が約1〜約2%に達するまで、約50〜約60℃の温度にて、オーブンで乾燥した;
h)乾燥した固体物質を、その粒径が約15μm〜約150μm、好ましくは約30〜約50μmに達するまで磨り潰した。
【0058】
上述の方法によって得られたチブサノキエキス沈澱から得られた粉末固体物質は、下記表2に示す物理化学的特性を示した。
【表2】

【実施例2】
【0059】
チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法およびチブサノキエキス沈澱からの物質
チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法を、以下のステップによって行った:
a)予め分類された未熟のチブサノキ果実から染料を抽出する;高回転下で果実を磨り潰し、遠心力によって未熟果から果汁を分離する;次いで、エキスを冷却し、濾過した;
b)グリシンを加え、約80℃にて約1時間加熱することによってチブサノキエキスを標準化した;
c)ステップb)のエキスを加熱した後、加熱を続けながら、pHが約4〜約5の範囲になるまで、酢酸で予め酸性化した炭酸カルシウムの9%水性分散液をエキスに加えた;このステップにおいて、約80℃にて約1時間、エキスと炭酸カルシウム溶液の混合物の加熱および撹拌を継続した;
d)ステップc)において炭酸カルシウムをエキスに加えた後、タンニンエキスの水溶液を含む媒染剤をエキスに加えた;
d.1)タンニンの水溶液の添加:pHが約4〜約5の範囲で、9%タンニンエキスを水に溶解し、チブサノキエキスおよび炭酸カルシウムの混合物に加え、約80℃にて約1時間、撹拌および加熱を継続した;
e)水性媒体中の沈殿を得た後、この目的のために当業界で通常用いられる手順および装置によって、得られた固体物質を真空下または加圧濾過器にて濾過した;
f)ステップd)で得られた固体物質を脱塩水で洗浄し、導電率の値が50〜150mV、好ましくは70〜90mVに達するまで導電率を低下させた;
g)極性または非極性媒体中で不溶性の得られた固体物質を、最終水分が約1〜約2%に達するまで、約50〜約60℃の温度にて、オーブンで乾燥した;
h)乾燥した固体物質を、その粒径が約15μm〜約150μm、好ましくは約30〜約50μmに達するまで磨り潰した。
【0060】
上述の方法によって得られたチブサノキエキス沈澱から得られた粉末固体物質は、下記表3に示す物理化学的特性を示した。
【表3】

【実施例3】
【0061】
アイライナー
【表4】

【実施例4】
【0062】
シャドウ
【表5】

【実施例5】
【0063】
クリームシャドウ
【表6】

【実施例6】
【0064】
ジェルシャドウ
【表7】

【実施例7】
【0065】
リップスティック
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、チブサノキエキス沈澱から物質を得る方法:
a)チブサノキ果実からエキスを得る;
b)(a)で得られたエキスに媒染剤を加える;および
c)ステップ(b)で沈殿した固体物質を分離する。
【請求項2】
ステップ(b)において、媒染剤が、多価金属塩および/または天然基質から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多価金属塩が、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、バリウム、マグネシウム、マンガン、アンチモン、スズおよびストロンチウムから選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
多価金属塩が、CaCO3またはAl2(SO4)3・18H2Oであるカルシウムまたはアルミニウムを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
天然基質が、タンニン(なめし剤)、タンパク質、脂肪酸、炭水化物および樹脂を含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
天然基質が、タンニンなどの没食子酸から誘導される化合物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)において、炭酸カルシウムが、炭酸カルシウムの水性分散液として加えられる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、以下のステップを含む請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法:
a1)高回転下で果実を磨り潰すことによってチブサノキ果実からエキスを得、次いで、冷却し、濾過する;
a2)生のエキスを半精製し、非染料化合物を定性する;
a3)一級アミノ酸を加えることによってエキスを標準化し、30分〜約5時間、約50〜約95℃の温度範囲にて、得られる濾液を加熱する
【請求項9】
ステップ(b)が、以下のステップを含む請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法:
b1)(a)で得られるエキスに、エキス総重量に対しておよそ2〜およそ40重量%、このましくはおよそ9重量%炭酸カルシウムの水性懸濁液を加え、エキスと炭酸カルシウム溶液を、約30分〜約5時間、約50〜約95℃の温度にて加熱および撹拌を継続する;
b2)次いで、タンニン溶液を含む媒染剤を加え、エキスとタンニン溶液の混合物を、約30分〜約5時間、約50〜約95℃にて加熱および撹拌を継続する
b3)得られる固体物質を濾過し、洗浄し、導電率を低下させ、水分が約0〜約10%に達するまで、約30〜約80℃の温度にて乾燥する。
【請求項10】
炭酸カルシウムの水溶液が、pHが約2から約6の範囲に達するまで、酢酸で予め酸性化される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チブサノキエキスの沈殿形成によって得られる物質が、極性または非極性物質に不溶性である請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法によって得られるチブサノキエキス沈澱からの物質。
【請求項13】
請求項12に記載のチブサノキエキス沈澱からの物質および生理的に許容しうる担体または賦形剤を含む化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物。
【請求項14】
化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物の製造における請求項12に記載のチブサノキエキス沈澱からの物質の使用。
【請求項15】
ヒトまたは動物への請求項12に記載のチブサノキエキス沈澱からの物質、あるいは請求項13に記載の化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物の局所投与を含む、ヒトまたは動物の非治療的処置のための方法。

【公表番号】特表2012−520828(P2012−520828A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500010(P2012−500010)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/BR2010/000082
【国際公開番号】WO2010/105320
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510057936)ナチュラ コスメティコス ソシエダッド アノニマ (3)
【Fターム(参考)】