説明

テンシン1発現を刺激することのできる活性薬剤を含む化粧用組成物

本発明は、(a)テンシン1発現を刺激することのできる少なくとも1種類の活性薬剤、及び(b)真皮において細胞外巨大分子、特にフィブロネクチン(fibroπectin)の合成を刺激するための少なくとも1種類の活性薬剤を含む化粧用組成物に関する。本発明はまた、この組成物の皮膚への局所適用を含む、少なくとも1つの皮膚の老化の徴候を防ぎ、かつ/又は処置することを意図するスキンケア法に関する。最後に、本発明は、テンシン1発現を刺激することのできる、エレミ又はカナリウム・インディクム(Canarium indicum)L.又はカナリウム・ルゾニクム(Canarium luzonicum)又はカナリウム・コムネ(Canarium commune)の特定の抽出物に関し、かつ、上記抽出物を含有する化粧用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)テンシン1発現を刺激することのできる少なくとも1種類の活性薬剤、及び(b)真皮において細胞外巨大分子、特にフィブロネクチン(fibroπectin)の合成を刺激するための少なくとも1種類の活性薬剤を含む化粧用組成物に関する。本発明はまた、この組成物の皮膚への局所適用を含む、少なくとも1つの皮膚の老化の徴候を防ぎ、かつ/又は処置することを意図するスキンケア法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化は、特に、皮膚の支持組織を構成する真皮において、その様々な構成要素の進行性の変化が長年にわたって蓄積し、かつ既存構造が崩壊した結果生じる、皮膚の被覆機能障害の集積によって定義される。
【0003】
細胞外マトリックスの成分、すなわちECM(コラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン、及び特にフィブロネクチン)と、アクチンフィラメントからなる線維芽細胞の細胞内細胞骨格との間の膜貫通相互作用の減少は、従って真皮において観察される。これらの相互作用は、線維芽細胞の血漿膜に位置するタンパク質複合体である接着点のレベルで起こる。これらの複合体は、細胞内区画と細胞外区画との間の双方向性のシグナルを確実に伝達する。それらは、細胞及び核の形状を安定させることにおいて;ECMの組織化を維持することにおいて;分子レベルで、テンセグリティー力の平衡において、かつ、細胞の生化学的機能に、必須の役割を果たす(D. Ingber, Pour la science [For science], 1998; Zamir E. et al., J. Cell Sci., 2001)。これらの複合体は主に、ECM中のフィブロネクチンに特異的な受容体であり、細胞内タンパク質に直接結合するα5β1膜内インテグリンを含む。上述の相互作用の減少は、接着部位で分子組織の崩壊、ならびに、線維芽細胞の増殖能力の低下、その代謝活性の低下(ECM成分の合成)及びその遊走能の低下を引き起こす(Sottile et al., Mol. Biol. Cell., 2002; Katz et al., Mol Bio Cell, 2000)。これらの機能障害は、皮膚の生体力学特性の変更、及び特に、皮膚の老化の主な機能的徴候の一つである皮膚のたるみの原因である。
【0004】
皮膚のたるみに対処するため、線維芽細胞増殖を刺激するための様々な化粧品成分、例えば大豆タンパク質、又はコラーゲン、エラスチン及び/又はグリコサミノグリカン類の合成を増加させるための化粧品成分、例えばアスコルビン酸及びその誘導体、あるいはボツリンイントキシン(botulin intoxin)の注射によるしわ及び表情線の原因である顔面筋を弛緩させるための化粧品成分が、当分野で提案されている。フィブロネクチンを含む、真皮において細胞外マトリックス(ECM)の様々な成分の合成を刺激するための薬剤、例えばSEDERMA社によりMatrixyl(登録商標)3000の商標名で販売されているアシル化オリゴペプチドなどを含む組成物の使用も提案されている。
【0005】
その利点にかかわらず、これらの解決法は完全に満足のいくものではない。それは、これらの解決法が皮膚のたるみの問題を根源で、かつ、その結果として、長期的に処置することができないためである。真皮における細胞の代謝活性及びECM構成要素の合成を長期間にわたって維持するため、ECMの良好な剛性及び良好な組織化ならびに線維芽細胞とその周囲のマトリックスとの間の相互作用を確実に維持可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テンシン1は、細胞の細胞骨格のアクチンフィラメント及び細胞外マトリックスに上述の接着点のレベルで結合し(Chen et al., PNAS, 2001; Takahara et al., J. Histochem. Cytochem., 2004)、かつα5β1インテグリンの細胞内部分に特異的に結合するリンタンパク質である。結合組織及び真皮において、テンシン1は、インテグリンを細胞膜に沿って移動させ、グループを作らせることが知られており、このようにして、これらのインテグリンに関係するフィブロネクチンを同伴し、フィブロネクチン分子の立体構造をそれらの重合を促進するように修飾する(Pankov et al., J. Cell. Biol., 2000)、フィブロネクチン自体は、組成物及び細胞外マトリックスの安定性に、特に原線維の形態のコラーゲンIを維持する際に重要な役割を果たす。本出願人は、真皮の細胞(線維芽細胞)のテンショニング(tensioning)の過程において、かつ、細胞活性に関して、皮膚の張りを増大させるため、かつ、真皮の老化プロセスの結果生じる皮膚のたるみを防ぎ、かつ/又はそれに対処するために、テンシン1が重要なタンパク質であることを初めて実証した。
【0007】
本出願人はまた、老化の間のテンシン1発現の低下が、ECM、特にフィブロネクチンの組織の崩壊をもたらし、その結果として真皮のたるみがもたらされることも実証した。また、テンシンの非存在下で真皮の収縮が著しく低下したことも実証された。そのために、本出願人には、化粧用組成物にテンシン1を刺激することのできる活性薬剤を使用することは、老化の間に観察される皮膚のたるみに対処することを可能にすることができると思われた。
【0008】
最終的に、本出願人は、その業績となる、テンシン1の発現を刺激するためにテンシン1に局所的に作用することのできる、生物活性薬剤、及び特に植物抽出物、例えばカンラン(Canarium)属の植物の非油性抽出物を選択するためのスクリーニング試験を開発した。
【0009】
これらの活性薬剤は、従って、本発明によると、細胞外巨大分子、例えばフィブロネクチンの合成を促進する薬剤と組み合わせて用いて、これらの巨大分子の立体構造及びECM内でのその組織化を向上させ、その結果皮膚の張りを相乗的に増強させ得る。
【0010】
テンシン1発現を刺激する活性薬剤の中で、本出願人は、カンラン属の特定の非油性抽出物を同定した。カンラン属の油性抽出物は、しわ及び皮膚の張りの喪失に対処するための抗炎症薬として既に公知である(国際公開第2005/053718号)。しかし、カンラン属の非油性抽出物が、特にテンシン1発現を刺激することにより、化粧品の抗老化作用をもたらし得ることは、本出願人の知る限りまだ提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の主題は、(a)テンシン1発現を刺激することのできる少なくとも1種類の活性薬剤、及び(b)真皮において細胞外巨大分子の、及び特にフィブロネクチンの合成を刺激するための少なくとも1種類の活性薬剤を含む、化粧用組成物である。
【0012】
本発明のもう一つの主題は、この組成物の皮膚への局所適用を含む、少なくとも1つの皮膚の老化の徴候を防ぎ、かつ/又は処置することを意図するスキンケア法である。
【0013】
前置きとして、「テンシン1発現を刺激することのできる活性薬剤」という表現は、非処理対照と比較してテンシン1発現を刺激することのできる化合物又は(特に植物抽出物の場合)化合物の混合物を意味することが意図され、特に以降の実施例に記載される方法を用いて、すなわちTGFβを添加した線維芽細胞培養の免疫蛍光により決定されることが明記される。好ましくは、対照と比較した標識の増加は少なくとも20%である。
【0014】
本発明に従って用いることのできる活性薬剤(a)は、有利には、植物抽出物、すなわち、任意の種類の溶媒を用いて植物の任意の部分の抽出により得た活性薬剤、例えば、樹皮、木質、根茎、茎、葉又は花、浸出液、例えば例としてゴム樹脂又はオレオゴム樹脂などである。このような活性薬剤の例としては、エレミ、すなわちカナリウム・インディクム(Canarium indicum)L(又はカナリウム・コムネ(Canarium commune)L)又はカナリウム・ルゾニクム(Canarium luzonicum)の(特に樹脂又はゴムの)抽出物が挙げられる。
【0015】
これらの活性薬剤は、例えば、
a)植物のガム又は樹脂の水蒸気蒸留と、
b)精油の除去と、
c)3.5より大きい極性指数を有する水以外の極性有機溶媒、例えばアルコール、特にメタノール、エタノール又はイソプロパノールなどを用いる、水蒸気蒸留残留物の抽出とを含む方法に従って得ることができる。いかなる場合でも、抽出は考慮される植物の全て又は一部で実施され得、植物は通常の方法で粉砕されるか又は小片にされ得る。抽出は、一般に、例えば周囲温度から100℃の範囲の温度にて、およそ30分から12時間の間、粉砕した材料を1又はそれ以上の上述の溶媒中に浸漬するか又は穏やかに攪拌することにより実施される。次いで、植物の不溶性物質を除去するために、溶液を濾過することが好ましい。適切な場合には、溶媒が揮発性溶媒、例えばエタノール又はメタノールである場合、溶媒も取り除く。
【0016】
この抽出段階は、植物抽出の分野で一般的であり、当業者はその一般知識に基づいて抽出の反応パラメータを調整する立場にある。
【0017】
本出願人の知る限り、本方法はそれでもなおエレミに適用される場合に新規な生成物をもたらす。
【0018】
そのために、本発明の主題はまた、上記の方法に従って得られることを特徴とする、エレミ又はカナリウム・インディクムL.又はカナリウム・ルゾニクム又はカナリウム・コムネの抽出物である。
【0019】
本発明の主題はまた、美容用に許容される媒体中に、少なくとも1種類のこのような抽出物を含むことを特徴とする化粧用組成物である。
【0020】
本発明のもう一つの主題は、このカンラン属抽出物又はそれを含む組成物の皮膚への局所適用を含む、少なくとも1つの皮膚の老化の徴候を防ぎ、かつ/又は処置することを意図する美容法である。
【0021】
テンシン1発現を刺激することのできる活性薬剤(a)、例えば上記のカンラン属抽出物などは、組成物の総重量に対して0.00001〜5重量%の割合で、好ましくは0.0001〜0.1重量%の割合で、より好ましくは0.001〜0.3重量%の割合で用いてもよい。
【0022】
テンシン1発現を刺激する薬剤のほかに、本発明に従う方法で用いる組成物には、真皮において細胞外巨大分子の合成を刺激するための少なくとも1種類の活性薬剤(b)が含まれる。これらの巨大分子は、コラーゲンI、III、IV及び/又はVII、エラスチン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、ヒアルロナン、ラミニン(例えばラミニンVなど)及び/又はフィブロネクチンであってもよい。この薬剤はフィブロネクチンの合成を刺激することが好ましい。そのような薬剤(b)の例は、アシルオリゴペプチドである。このオリゴペプチドは、特に、少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個の炭素原子を含むアルカノイル基、特にパルミトイル基で修飾された、リシル−トレオニル−トレオニル−リシル−セリン、グリシル−ヒスチジル−リジン及びグリシル−グルタミル−プロリル−アルギニンの配列、及びそれらの混合物から選択されてもよい。この種類の活性薬剤は、特にSederma社によりMatrixyl(登録商標)3000の商標名で販売されている。
【0023】
真皮において細胞外巨大分子の合成を刺激する薬剤は、組成物の総重量に対して0.00001〜10重量%の割合、好ましくは0.0001〜1重量%の割合で用いることができる。
【0024】
本発明において標的とされる皮膚の老化の徴候は、経時的な(内在的な)老化の徴候であっても、光線による老化(光老化)の徴候であってもよい。本発明は、より特に、コラーゲンの産生の速度の低下及び/又は分解及び/又は組織崩壊に関係する皮膚の徴候、例えばしわ及び小じわ(fine lines)の形成、皮膚の張りの喪失及び/又は真皮の萎縮などを予防すること及び/又は処置することに対して向けられる。本発明に従う方法は、より特に、皮膚のたるみを防ぎ、かつ/又はそれに対処することを目的とする。
【0025】
好ましくは、本発明に従う組成物は、ヒト皮膚に、特に高齢者の皮膚に、特に閉経期の女性及び/又は50歳を超えた女性、又は60歳を超えた女性の皮膚にも適用される。
【0026】
この活性薬剤を含有する組成物は、朝及び/又は晩に、好ましくは晩に、顔全体、首及び、場合によっては、首と肩に、又は体にも適用され得る。
【0027】
本発明に従う組成物は、一般に、上記の活性薬剤に加えて、生理学的に許容される、かつ、好ましくは美容用に許容される媒体、すなわち使用者にとって受け入れ難い許容不快な感覚(発赤、引きつり(tautness)、刺痛など)を引き起こさない媒体を含む。
【0028】
この媒体は、一般に水を含む。
【0029】
本発明に従う組成物は、皮膚への局所適用に適したあらゆる形態、特に水中油型、油中水型又は多重エマルジョン(W/O/W又はO/W/O)の形態であってもよく、それは場合によってはマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンであってもよく、あるいは水分散液、溶液、水性ゲル又は粉末の形態であってもよい。この組成物は水中油型エマルジョンの形態であることが好ましい。
【0030】
この組成物は、顔の皮膚及び/又は体の皮膚のためのケア又はクレンジング製品として使用されることが好ましく、特に、例えば、ポンプ式ディスペンサーボトル、エアゾール又はチューブに包装された、流体、ゲル又はムースの形態、あるいは、例えば、広口瓶に包装されたクリームの形態であってもよい。変形例として、この組成物はメークアップ製品、特にファンデーション又はルースもしくはコンパクトパウダーの形態であってもよい。
【0031】
この組成物は、様々な補助剤、例えば以下から選択される少なくとも1種類の化合物を含んでもよい:
−油、特に、揮発性又は不揮発性の、直鎖もしくは環状シリコーン油、例えばポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリアルキルシクロシロキサン(シクロメチコン)及びポリアルキルフェニルシロキサン(フェニルジメチコン)など;合成オイル、例えばフッ素油、アルキルベンゾエート及びポリイソブチレンなどの分枝炭化水素など;植物油、特に、ダイズ油又はホホバオイル;ならびに鉱油、例えば流動パラフィンなどから選択され得る;
−ろう、例えばオゾケライト、ポリエチレンろう、蜜ろう又はカルナウバろうなど;
−シリコーンエラストマー、特に、触媒の存在下、少なくとも1つの反応性基(特に水素又はビニル)を含有し、かつ少なくとも1つのアルキル基(特にメチル)又はフェニル基を、末端及び/又は側鎖に有するポリシロキサンと、有機シリコーン、例えば有機水素ポリシロキサンなどとの反応により得られるもの;
−界面活性剤、好ましくは、それらが非イオン性、陰イオン性、陽イオン性又は両性であろうと、乳化界面活性剤、及び特に、ポリオールの脂肪酸エステル、例えばグリセロールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル及びスクロースの脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールの脂肪アルコールエーテル;アルキルポリグルコシド;ポリシロキサン改質ポリエーテル;ベタイン及びその誘導体;ポリクオタニウム;エトキシ化脂肪アルコール硫酸塩;スルホスクシネート;サルコシネート(sarcosinates);リン酸アルキル及びジアルキル、及びそれらの塩;ならびに脂肪酸石鹸など;
−共界面活性剤、例えば直鎖脂肪アルコール及び特にセチルアルコール及びステアリルアルコール;
−増粘剤及び/又はゲル化剤、及び特に、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)の、及び/又はアクリルアミドの、及び/又はアクリル酸の、及び/又はアクリル酸塩もしくはエステルの、親水性もしくは両親媒性の架橋もしくは非架橋ホモポリマー又はコポリマー;キサンタンガム又はグアーガム;セルロース誘導体;ならびにシリコーンガム(ジメチコノール);
−保湿剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び糖を含むポリオール、ならびにグリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸及びその塩及びエステル;
−有機スクリーニング剤、例えば、ジベンゾイルメタン誘導体(ブチルメトキシジベンゾイルメタンを含む)、桂皮酸(cinammic acid)誘導体(エチルヘキシルメトキシシンナメートを含む)、サリチル酸塩、パラ−アミノ安息香酸、β,β’−ジフェニルアクリレート、ベンゾフェノン、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンズイミダゾール、トリアジン、フェニルベンゾトリアゾール及びアントラニル酸(anthranilic)誘導体;
−無機スクリーニング剤、被覆された又は被覆されていない色素又はナノ色素の形態の無機酸化物に基づくもの、及び特に二酸化チタン又は酸化亜鉛に基づくもの;
−染料;
−防腐剤;
−金属イオン封鎖剤、例えばEDTA塩;
−香料;
−ならびにそれらの混合物、
を含んでもよいが、このリストに限定されない。
【0032】
また、組成物には視覚的効果をもつ少なくとも1種類の化合物、例えば充填剤、色素、真珠層(nacre)、緊張剤及びマッティファイング(mattifying)ポリマー、及びそれらの混合物が含まれてもよい。
【0033】
用語「充填剤」は、適用してすぐに組成物密度(body)又は剛性及び/又は柔軟性、マット効果及び均一性を与えるために適した無色又は白色の、鉱物又は合成の、層状又は非層状粒子を意味するものと理解されるべきである。特に言及され得る充填剤の例としては、タルク、マイカ、アルミナ、シリカ、カオリン、ナイロン(登録商標)粉末、例えばナイロン−12(Atochem社より販売されるOrgasol(登録商標))、ポリエチレン粉末、ポリウレタン粉末、ポリスチレン粉末、ポリエステル粉末、場合によっては、加工デンプン、シリコーン樹脂マイクロビーズ、例えばTospearl(登録商標)の名称でToshiba社より販売されるもの、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア(Maprecos社製シリカビーズ(登録商標))及びか焼アルミナ(Spectral PC−401(登録商標))が挙げられる。
【0034】
用語「色素」は、媒体に不溶性の、白色又は有色の、無機もしくは有機粒子を意味するものと理解されるべきであり、組成物に色をつけ、かつ/又は不透明にすることを目的とする。色素は標準的なサイズであってもナノメートルのサイズであってもよい。言及され得る無機色素には、二酸化チタン、ジルコニウム二酸化物及びセリウム二酸化物、ならびにまた酸化亜鉛、酸化鉄及びクロム酸化物がある。
【0035】
用語「真珠層」は、光を反射する虹色の粒子を意味するものと理解されるべきである。想定され得る真珠層のうち、天然の真珠母貝、酸化チタンで、酸化鉄で、天然色素で、又はビスマスオキシクロライドで被覆されたマイカ、及び着色チタンマイカも言及され得る。
【0036】
これらの充填剤及び/又は色素及び/又は真珠層の水相中の質量濃度は、一般に組成物の総重量に対して0.1%〜20重量%、好ましくは0.2%〜7重量%である。
【0037】
用語「緊張剤」は、皮膚の緊張を作成するために適し、さらにこの緊張効果によって、皮膚を滑らかにし、かつ、しわ及び小じわを皮膚から減らすか又は直ちに排除さえする化合物を意味するものと理解されるべきである。言及され得る緊張剤としては、天然起源のポリマーが挙げられる。用語「天然起源のポリマー」とは、植物起源、野菜、藻又は細菌源のポリマー、及び生物工学により合成されたタンパク質、外皮に由来するポリマー、卵タンパク質及び天然起源のラテックスを意味する。これらのポリマーは親水性であることが好ましい。特に言及され得る植物起源のポリマーとしては、タンパク質及びタンパク質加水分解物、特に穀類、マメ科植物及び油を産出する植物の抽出物、例えばトウモロコシ、ライ麦、小麦、ソバ、ゴマ、スペルト、エンドウマメ、マメ、レンティル、大豆及びルピナスの抽出物;ならびに、より特に、SilabによりPolylift BG(登録商標)の名称で販売されている、アーモンドに由来する水溶性タンパク質(プルヌス・アミグダラス・ダルシス(prunus amygdallus dulcis)(スイートアーモンド)種子抽出物)が挙げられる。合成ポリマーは、一般にラテックス又は疑似ラテックスの形態であり、重縮合型であるか、又はフリーラジカル重合により得ることができる。特に、ポリエステル/ポリウレタン及びポリエーテル/ポリウレタン分散体を言及することができる。好ましくは、緊張剤は、PVP/ジメチコニル(dimethiconyl)アクリレート及び親水性ポリウレタン(Hydromer社製Aquamere S−2001(登録商標))の共重合体である。
【0038】
用語「マッティファイングポリマー」とは、本明細書において、溶液中の、分散体の、又は粒子の形態の任意のポリマーを意味し、皮膚の光沢を緩和し、顔貌を一様にするものである。言及され得る例としては、シリコーンエラストマー;樹脂粒子;及びそれらの混合物が挙げられる。言及され得るシリコーンエラストマーの例としては、Shin−Etsu社よりKSG(登録商標)の名称で販売されている製品、Dow Corning社よりTrefil(登録商標)、BY29(登録商標)又はEPSX(登録商標)の名称で販売されている製品、あるいはGrant Industries社よりGransil(登録商標)の名称で販売されている製品が挙げられる。
【0039】
このような補助剤の例は、特に、CTFA辞書(米国化粧品トイレタリー香料工業協会(The Cosmetic、Toiletry and Fragrance Association)出版の国際化粧品成分辞典(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook)第9版、2002年)に言及されている。
【0040】
本発明に従って用いられる組成物はまた、上記の活性薬剤以外のその他の活性薬剤、特に以下から選択される少なくとも1種類の活性薬剤:成長因子の産生を刺激するための薬剤;抗糖化又は脱糖化剤(deglycating agent);コラーゲン分解を予防する薬剤(抗コラゲナーゼ薬、特にマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;エラスチン分解を予防する薬剤(抗エラスターゼ薬);グリコサミノグリカン又はプロテオグリカンの分解を予防する薬剤(抗プロテオグリカナーゼ薬(antiproteoglycanase agents));線維芽細胞によるインテグリン合成を刺激する薬剤;ケラチノサイト増殖又は分化を増加させる薬剤;線維芽細胞増殖を増加させる薬剤;脱色素又は抗色素剤;水和剤;抗酸化剤、フリーラジカルスカベンジャー又は汚染防止剤;表皮脂質合成を増加させる薬剤;及びそれらの混合物、を含んでもよいが、このリストに限定されない。
【0041】
このような薬剤の例は、特に、植物の抽出物、特にコンドラス・クリスパス(Chondrus crispus)の抽出物、サーマス・サーモフィラス(Thermas thermophilus)の抽出物、エンドウマメ(Pisum sativum)の抽出物、センテラ・アジアティカ(Centella asiatica)の抽出物、セネデスムス属(Scenedesmus)の抽出物、ワサビノキ(Moringa pterygosperma)の抽出物、マンサクの抽出物、ヨーロッパグリ(Castanea sativa)の抽出物、ローゼル(Hibiscus sabdriffa)の抽出物、チューベローザ(Polyanthes tuberosa)の抽出物、アルガンツリー(Argania spinosa)の抽出物、アロエベラ(Aloe vera)の抽出物、スイセン(Narcissus tarzetta)の抽出物、又は甘草の抽出物;シトラス・アウランチウム(Citrus aurantium)(ネロリ)の精油;特にCODIF社よりDermochlorella(登録商標)D/DPの商標名で販売されている、微細藻類クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)の抽出物;α−ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、乳酸及びクエン酸、ならびにそれらのエステル;β−ヒドロキシ酸、例えばサリチル酸及びその誘導体;植物タンパク質加水分解物(特に大豆又はヘーゼルナッツ加水分解物);アシルオリゴペプチド;酵母、特にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の抽出物;藻類、特にラミネール(Laminaires)の抽出物;ビタミン及びその誘導体、例えばレチニルパルミテート、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、マグネシウムアスコルビルホスフェート又はナトリウムアスコルビルホスフェート、アスコルビルパルミテート、アスコルビルテトライソパルミテート、アスコルビルソルベート、トコフェロール、トコフェロールアセテート及びトコフェロールソルベート;メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンホモポリマー及びコポリマー;尿素;例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリブチレングリコール、ならびに好ましくはその混合物から作成された、ポリアルキレングリコール及びグリセリンのエーテル、例えばWilbride(登録商標)S−753の商標名でNOFにより販売される製品;ヒアルロン酸ナトリウム;セラミド及びリン脂質;アルブチン;コジック酸;エラグ酸;及びそれらの混合物である。
【0042】
変形例として、又はそれに加えて、本発明に従う組成物は、好ましくは水溶性であり、好ましくはヒドロペルオキシドを減少させる特性を有する、少なくとも1種類の酸化防止剤、例えば特にExsymol社よりAlistin(登録商標)の商標名で販売されているカルシニン塩酸塩を含んでもよい。
【0043】
変形例として、又はそれに加えて、本発明に従う組成物は、線維芽細胞及びケラチノサイトの可動性を増大させること及び/又はヒト皮膚の接着タンパク質及び/又は細胞骨格タンパク質(インテグリン、アクチン、ビメンチン)の産生を促進することのできる少なくとも1種類の薬剤、例えば、10〜800nm、具体的には、10〜200μmの極めて規則正しい大きさのシリカ球からなり、特にMerck社よりOpal(登録商標)の商標名で販売されている、オパール(opale)粉末又は水和二酸化ケイ素を含んでもよい。
【0044】
変形例として、又はそれに加えて、本発明に従う組成物は、エラスターゼに誘導されるエラスチンの分解を防ぐことにより、ケラチノサイトでエラフィン発現を刺激すること及び/又は細胞外マトリックスを保護することのできる少なくとも1種類の薬剤、例えば特にCodif International社よりDilsea Carnosa(登録商標)の商標名で販売されている、ジルセア・カルノサ(Dilsea carnosa)抽出物(リュウモンソウ科、紅藻類)を含んでもよい。
【0045】
変形例として、又はそれに加えて、本発明に従う組成物は、ヒト線維芽細胞の成長を活性化させることのできる少なくとも1種類の薬剤、例えば、LSN−Cognis社よりNoctiliss LS 9803(登録商標)の商標名で販売されている、ヨルソケイ(Nyctanthes Abor-Tristis)葉抽出物(ナイトジャスミン又はパリジャタ・フラワー(Parijata Flowers)とも呼ばれる)を含んでもよい。
【0046】
あるいは又はその上、本発明に従う組成物は、微小循環を活性化する、かつ/又は抗浮腫性を有する少なくとも1種類の薬剤、例えば「アイパフ(eye puffs)の低下を可能にし、LipotecによりEyeseryl(登録商標)の商標名で市販されているアセチルテトラペプチド−5」;又は例えばPhytosome Escine/β−シトステロール(登録商標)の商標名で販売されているエスチンを含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明を以下の限定されない実施例により説明する。
【実施例】
【0048】
実施例1:エレミ(カナリウム・コムネ)の抽出物によるテンシン発現刺激試験
エレミ(カナリウム・コムネ)の抽出物のテンシン1発現への効果を評価した。
【0049】
プロトコール:
−エレミ(カナリウム・コムネ)の抽出物の調製:
この抽出物は、エレミガムの水蒸気蒸留、得られる精油の除去、蒸留残留物(使い尽くされたガム)の回収及びエタノール抽出、濾液の濾過及び回収ならびに、糊状の液体抽出物を得るためにジプロピレングリコールに溶解し濾過する、エタノールの蒸発により得られる。次の段階が実行される。
【0050】
第1段階:水蒸気蒸留
a.150gの粗エレミガム樹脂を従来型水蒸気蒸留装置の中に挿入。
b.ガム樹脂が使い尽くされるまで精油を蒸留。
c.蒸留装置の冷却及び蒸留残留物を濾過。
d.使い尽くされたエレミガムを乾燥。
【0051】
この段階の収量は、精油について25%、すなわち使い尽くされたガム樹脂について75%である。
【0052】
第2段階:エタノール抽出
a.100gの使い尽くされたガムを500mlのエタノールとともに96.3%(容積/容積)の反応器の中に挿入。
b.この混合物を60℃にて1時間攪拌。
c.溶液を冷却。
d.ブフナー漏斗を介する溶液の濾過及び濾液の回収。
e.ロータリーエバポレーターでエタノールを蒸発。
【0053】
この段階の収量は、82%である。
【0054】
第3段階:ジプロピレングリコールに溶解
a.10gのエタノール抽出物を10gのジプロピレングリコール及び30mlのエタノールとともに96.3%(容積/容積)にて反応器の中に挿入。
b.30分間50℃にて混合物を攪拌。
c.溶液を周囲温度まで冷却。
d.濾過。
e.ロータリーエバポレーターでエタノールを蒸発。
f.ジプロピレングリコール溶液中20gの抽出物の回収。このようにして50重量%のジプロピレングリコールを含有する抽出物が得られる。
【0055】
このようにして得られた抽出物をその後、培養液中0.0003重量%に希釈した。
【0056】
−テンシン1発現刺激試験:
形成手術により得た5名のドナーに由来する皮膚サンプルから単離した細胞(線維芽細胞)を、プラスチック製マイクロプレート中、2mMのL−グルタミン、50IU/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン及び10%のウシ胎児血清(FCS)を添加したDMEM培地を用いて培養した。培養液及び補助剤はInvitrogenより入手した。TGFβ(R&D Systems)を10ng/mlで添加した後、テンシン1発現の刺激を制御した。
【0057】
細胞をその後ウェルあたり1000細胞の割合で96ウェルプレートのウェルに入れ、72時間培養した。固定/透過処理は、4%のパラホルムアルデヒド(Sigma)及び0.1%のTriton X−100(Sigma)を含有するリン酸緩衝液(PBS、Invitrogen)中で行った。飽和、標識及び洗浄段階は、0.05%のTween 20(Sigma)を含有する、場合により5g/lの乾燥脱脂粉乳を添加したPBS中で行った(飽和)。ヒトテンシン1(TNS1)に対するモノクローナル一次抗体は、BD Transduction Laboratoriesより得た。Alexa fluor 488蛍光剤に結合した二次抗体はInvitrogenに由来する。PBS/Tween(Sigma)溶液中のビスベンズイミドである、Hoechst染料を用いて、核を染色した。プレートは、InCell 1000アナライザ(GE Healthcare)を用いて分析した。各ウェルの最低5の固定域(fixed zones)を画像解析に使用し、少なくとも3ウェルを培養条件の各々に使用した(三重反復)。画像解析はToolbox1.5ソフトウェア(GE Healthcare)を用いて行った。最小蛍光閾値の較正後、蛍光シグナル(FS)を、細胞の数に関係する、標識された(陽性)表面積(μm)として表した。
【0058】
結果:
平均の標識された表面積の87138(±18188)μm、すなわち非刺激対照に対して+48%のパーセント変化が測定された(p<0.05)。
【0059】
従ってこのアッセイは試験したエレミの抽出物がテンシン1発現を有意に刺激することを示す。
【0060】
実施例2:様々な皮膚サンプルにおけるテンシン1発現の免疫蛍光評価
実施例1に類似する方法で、α5インテグリン及びフィブロネクチンのテンシン1の発現を、胸部手術により生じる(正常成人ヒト皮膚、21〜51歳の5名のドナーのプール、プールPF2)、8代継代(正常線維芽細胞)で、又はHayflic複製老化モデルを用いる同じ皮膚サンプルの人工老化後(老化線維芽細胞)のいずれかで使用される(Hayflick, L., Clin Geriatr Med, 1985; Hayflick, L. How and Why We Age, Ballantine Books, 1994)、皮膚サンプル由来の線維芽細胞の培養物、ならびに、子供由来の皮膚サンプル(3〜5歳の5名のドナーのプール)(若年の線維芽細胞)由来の線維芽細胞の培養物の免疫蛍光により比較した。正常成人線維芽細胞を対照として使用する。この研究で用いたプロトコールは、実施例1に記載されるものと同一である。ヒトα5インテグリン(CD49e)及びヒトフィブロネクチンに対する一次抗体は、それぞれImmunotech及びSigma製である。
【0061】
結果を下の表1に示す。
【表1】

【0062】
従って、上述の3種類のタンパク質の量は、正常ヒト皮膚と比較して、老化細胞においておよそ30%減少することが観察される。
【0063】
従って、これらの結果は、ヒト皮膚においてテンシン1発現が年齢とともに低下することを実証する。
【0064】
実施例3:様々な皮膚サンプルにおけるテンシン1発現のRT−QPCR評価
プロトコール:
培養後、実施例1に記載されるように調製した細胞を、血清を除去するために洗浄し、全RNAをTri試薬(登録商標)(Sigma)を用いて標準的なプロトコールに従って抽出した。サンプル(三重反復)を回収し、DNA−free(登録商標)システム(Ambion)を用いてDNアーゼで処理した。RNAの定性的及び定量的分析を、Bio−Analyzer(Agilent)を用いて行った。逆転写(RT;Superscipt II(登録商標)酵素、Invitrogen)を1μgのDNAを含まない全RNAで行い、10ngのcDNAを最終的にリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅法(定量的PCR又はQPCR)による分析目的に用いた。QPCR分析は、「SYBR Green I Master(登録商標)」ミックスを用いて検出するLight Cycler 480マシンを用いて行った。次のGENBANK配列:G3PDH(NM002046)、TNS1(NM022648)及びITGA5(NM002205)から、以下のプライマーを選択した。増幅した全ての断片は唯一のものであり、同定検証のために配列決定した。発現値を、同一培養条件下のG3PDHハウスキーピング遺伝子の発現に関係づけた。結果はそれぞれの対照に対するパーセントとして表される。
【0065】
結果:
TNS1発現のRT−QPCR解析により、48時間培養した後の、実施例2の免疫蛍光により得た結果が確認された。テンシン1(TNS1)及びα5インテグリン(ITGA5)をコードするmRNAは、老化線維芽細胞に関しておよそ50%減少した。培養時間を48時間から96時間に増加させると、老化線維芽細胞においてTNS1 mRNAの相対量がさらに減少し、その値は対照(正常皮膚サンプル)について得た量の30%であった。逆に、テンシン1をコードするmRNAは、小児線維芽細胞に関して、対照の量の140%を示した。
【0066】
従って、この試験によりテンシン及びα5インテグリン発現が年齢とともに減少することが確認された。
【0067】
実施例4:テンシン1不活性化の効果
a)TNS1の部分的不活性化ならびにマーカーの発現及び局在性への効果についての試験
実施例2に記載される正常皮膚サンプル由来の線維芽細胞を、供給業者のプロトコールに従って、OptiMEM培地(Invitrogen)中のLipofectamine LTX(Invitrogen)試薬と複合体を形成した、合計90nMのサイレンシングRNA(SiRNA Ambion AM16708A)にトランスフェクトした。ヒトTNS1を不活化させる3つの異なるRNA(参照番号50−52)を試験した。不適切なサイレンシングRNA及びDNAを含まないトランスフェクション試薬を対照として用いた。サイレンシングRNA ref.52(SiRNA ID 139898;センス配列CCGAGGCAGGAUAGGAGUUtt)を、予備実験に基づいて選択し、その後の不活性化及び機能調査に用いた。トランスフェクションの後、これらの細胞を10ng/mlのTGFβで処理し、又は処理しなかった。mRNAの分析(RT−QPCR)及び免疫蛍光分析は、実施例2及び実施例3にあるように、それぞれ48時間後及び72時間後に行った。
【0068】
サイレンシングRNA ref.52は、それがTNS1発現を減少させる範囲で、RT−QPCR分析から導かれる蛍光シグナルの定量的分析により測定される、最良の結果、60%の減少をもたらした。不活性化は、TGFβで刺激した細胞に関してさらに大きかった。この不活性化のレベルは少なくとも72時間安定した。α5インテグリン及びフィブロネクチン(接着点プロセスにも関与)の発現の定量的レベルが、用いたサイレンシングRNAの影響を受けなかったことにも留意されたい。他方、α5インテグリン及びフィブロネクチン蛍光の分布は、サイレンシングRNA ref.52の存在下で変化する。実際、後者の場合、蛍光はもはや接着点部位に集中しているように見えない。結果的に、テンシン1の(部分的)不活性化は、α5インテグリン又はフィブロネクチンの発現のレベルを変化させないが、これらのマーカーの分布が変化し、マーカーはもはや接着部位に存在しない。
【0069】
b)コラーゲン格子の収縮試験
6−ウェルプレートに格子を調製し、7×10細胞(実施例2に記載されるように、正常、老化及び小児細胞)を10ng/mlのTGFβの存在下及び非存在下、2.4mg/ウェルのラットテールコラーゲンI(J Boy Institute)を添加した標準培地で培養した。サイレンシングRNAをトランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの48時間後に収縮試験に用いた。1時間重合した後、真皮同等物(DE)を手作業で支持体から取り外し、培養液中で8時間浮遊させ続けた。培地を交換し、コンピュータ画像分析を1、3、6及び8日目に行った。Lucia3.0ソフトウェア(Nikkon)を用いて表面を測定した。
【0070】
様々な線維芽細胞集団により形成された格子の収縮能力を分析することを目的とする予備試験により、小児線維芽細胞が最大の収縮能力(1000mm〜200mm)を示すことが明らかとなった。老化線維芽細胞の格子では収縮は大幅に小さかった(1000mm〜350mm)。
【0071】
テンシン1が格子収縮プロセスに関与している可能性を評価するため、サイレンシングRNA ref.52(不活性化TNS1)でトランスフェクトした正常線維芽細胞を用いて格子を調製した。トランスフェクション混合物で処理した線維芽細胞を含む格子を対照として用いた。
【0072】
不活性化TNS1を含む線維芽細胞が、対照(1000mm〜200mm)と比較して、コラーゲン格子を収縮させるその能力の大幅な低下(1000mm〜380mm)を示したことがはっきりと観察された。
【0073】
そのために、この試験は、テンシン1がコラーゲン格子収縮プロセスに関与することを示す。
【0074】
実施例5:化粧用組成物
以下の組成物は、当業者に慣習的な方法で調製することができる。下に示す量は、重量パーセントとして表される。
【0075】
5A−SPF 15 デイクリーム
【表2】

【0076】
5B−SPF 15 流体
【表3】

【0077】
5C−血清
【表4】

【0078】
5D−ナイトクリーム
【表5】

【0079】
5E−アイクリーム
【表6】

【0080】
これらの組成物は、皮膚を引き締めるために顔に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テンシン1発現を刺激することのできる少なくとも1種類の活性薬剤、及び(b)真皮において細胞外巨大分子の合成を刺激するための少なくとも1種類の活性薬剤を含む、化粧用組成物。
【請求項2】
前記活性薬剤が、エレミ又はカナリウム・インディクム(Canarium indicum)L.又はカナリウム・ルゾニクム(Canarium luzonicum)又はカナリウム・コムネ(Canarium commune)の抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性薬剤が、
a)植物のガム又は樹脂の水蒸気蒸留と、
b)精油の除去と、
c)極性指数が3.5より大きい水以外の極性有機溶媒、例えばアルコール、特にメタノール、エタノール又はイソプロパノールなどを用いる、水蒸気蒸留残留物の抽出と、を含む方法に従って得ることのできる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞外巨大分子の合成を刺激する活性薬剤が、フィブロネクチンの合成を刺激する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記フィブロネクチンの合成を刺激する活性薬剤がアシルオリゴペプチドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、抗エラスターゼ剤、線維芽細胞及びケラチノサイトの移動度を増大させることができ、かつ/又は、ヒト皮膚の接着タンパク質及び/又は細胞骨格タンパク質の産生を促進することができる薬剤、ケラチノサイトにおいてエラフィン発現を刺激することのできる薬剤、ヒト線維芽細胞の成長を活性化することのできる薬剤、微小循環を活性化することができ、かつ/又は抗浮腫性を有する薬剤、抗酸化剤、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1種類の活性薬剤も含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物の皮膚への局所適用を含む、少なくとも1つの皮膚の老化の徴候を防ぎ、かつ/又は処置することを意図するスキンケア法。
【請求項8】
皮膚のたるみを防ぎ、かつ/又はそれに対処することを目的とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
高齢者の皮膚で実施される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項3に記載の方法に従って得ることのできる、エレミ又はカナリウム・インディクムL.又はカナリウム・ルゾニクム又はカナリウム・コムネの抽出物。
【請求項11】
美容用に許容される媒体中に、請求項10に記載されるような少なくとも1種類の抽出物を含む、化粧用組成物。
【請求項12】
請求項10に記載のカナリウム抽出物又は請求項11に記載の組成物の皮膚への局所適用を含む、少なくとも1つの皮膚の老化の徴候を防ぎ、かつ/又は処置することを意図する美容方法。

【公表番号】特表2010−528090(P2010−528090A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509822(P2010−509822)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056609
【国際公開番号】WO2008/145692
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508283406)シャネル パフュームズ ビューテ (23)
【Fターム(参考)】