説明

デカリン誘導体、それを含む樹脂組成物、それを用いた光半導体用封止剤、光学電子部材、レジスト材料、及びデカリン誘導体の製造方法

【課題】光学特性、電気特性に優れた硬化物を与えるデカリン誘導体及びそれを含む樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた半導体用封止剤、光学電子部材、レジスト材料、及びデカリン誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(I)のデカリン誘導体を含む樹脂組成物は、課題の特性を有する。


(式中、Yは水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、2つのYが一緒になって形成されたC=Oから選ばれる基を表わし、Yが複数ある場合、複数のYは同一であっても異なっていても良い。ただし、9又は10位の場合にはYは水素原子を表わす。Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表わす。nは0〜4の整数、pは1〜4の整数、qは12〜15の整数、p+q=16である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なデカリン誘導体、それを含む樹脂組成物であって、光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルム等)、及びこれらの接着剤として好適な、透明性、耐光性等の光学特性、長期耐熱性、誘電率等電気特性に優れた硬化物を与えるデカリン誘導体、及びそれを含む樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた光半導体用封止剤、光学電子部材、レジスト材料、並びにデカリン誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)チップを発光素子として備えた光半導体装置が各種ディスプレイ装置、表示用機器等に広く利用されている。この半導体装置の例としては、例えばGaN、GaAlN、InGaN、及びInAlGaN等の窒化ガリウム系化合物半導体を用いた可視光発光デバイスや高温動作電子デバイスがあり、最近では青色発光ダイオード、紫外発光ダイオードの分野で開発が進んでいる。
LEDチップを発光素子として備える光半導体装置は、リードフレームの発光面側にLEDチップを搭載して、LEDチップとリードフレームとをワイヤボンディングにより電気的に接続して、さらに、発光素子の保護及びレンズ機能を兼ねた樹脂により封止されている。
近年、新たな光源として白色LEDが注目されており、今後、照明用途を中心に大きく市場が広がると言われている。白色LEDはGaNのベアチップにYAG蛍光体を塗布し、GaNの青色発光と蛍光体の黄色発光を混色して白色を発光させるタイプと、赤・緑、・青の3チップを1パッケージ化して白色発光させるタイプが実用化されている。また、近年、色合いの改良から、紫外LEDチップを光源にして、複数の蛍光体材料を組み合わせる方法も開発されている。さらに、照明用途等にLEDを用いるためには、その耐久性を改良することが求められている。
LEDチップ等の発光素子を封止する際に用いられる封止材料としては、加工性のし易さや透明であること等の理由で、エポキシ樹脂が利用される場合が多い。代表的なエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂を青色、紫外、それらを組み合わせる白色等短波長のLED封止に用いる場合、耐熱性を有するものの芳香族成分を含有するため、光を吸収し、黄色劣化するといった問題があった。それらを解決するために芳香環を水素化したビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いるLED封止剤が提案されている(特許文献1)。この水素化されたビスフェノールA型エポキシ樹脂は光に対する劣化はないものの、発光の際に生じる発熱に耐えうるだけの耐熱性がない。
【0003】
近年、液晶や有機EL等を用いたフラットパネルディスプレイの高精細化、高視野角化、高画質化、LED等の発光ダイオード(光半導体)を用いた光源の高輝度・短波長化、白色化、さらに電子回路の高周波数化や光を用いた回路・通信等、光学・電子部品の高性能化・改良検討が進められている。
その改良手法として、液晶材料や有機EL用の発光材料等の基本材料の研究開発がされているが、それらの材料と共に使用されるコーティング剤、封止剤あるいは接着剤等の樹脂の高性能化も検討されている。光学・電子部品のコーティング材料や封止材料用、接着剤用の樹脂として、種々の熱硬化樹脂や光硬化樹脂、あるいは熱可塑性樹脂が適用されている。それらは樹脂単独での耐熱性や透明性、溶解性、密着性等の特性に応じて適用されている。
また、ディスプレイ分野では、小型、高精細、省エネに優れる有機ELが近年、商品化が進んでおり、トップエミッション型等の方式が採用されている。それにともない、有機EL素子の封止樹脂としても、従来のステンレス等の封止基板とガラス基板を接着する機能やガスバリア性等の機能のほかに、封止樹脂自体での透明性や耐光性、耐熱性、機械強度等がより求められている(非特許文献1)。
さらに、電子回路より高速処理が可能となる光導波路等を用いた光回路も検討されている。これらの用途で使用されている封止樹脂、接着用樹脂やフィルム、あるいはレンズ用の樹脂として、従来、使用されているビスフェノールA型のエポキシ樹脂等を使った場合、電子回路では誘電率が高かったり、耐熱性が不足したり、光導波路やLED封止では透明性の低下や樹脂の劣化による黄変等に問題がある。
凸状や凹状の形状を有するマイクロレンズが基材上に多数配置されたマイクロレンズアレイは、光利用率の向上をはかることができ、液晶ディスプレイやプロジェクター、イメージセンサー等の光学部品に用いられている。マイクロレンズの作製方法としては感光性樹脂をパターン露光、現像しレンズに対応するパターンを形成させた後、メルトフローさせる方法、メルトフローさせたレンズパターンをマスクとするドライエッチングにより下地にレンズ形状を転写させる方法、ガラス基板等に樹脂組成物をコートした後、レンズ形状を有するモールドを押し当てそのまま硬化する方法等がある。感光性樹脂を用いる場合、露光波長に対し透明性が必要であり、エッチングする場合にはエッチング耐性が要求される。モールドを用いて硬化させる場合、樹脂組成物は液状である必要がある。また、マイクロレンズそのものの性能として、透明性、耐熱性、耐光性等が要求される。このようなマイクロレンズ用樹脂組成物としてトリシクロデカン構造を有するメタクリレートの例が開示されている(特許文献2)。
しかし、これは、透明性は有するものの耐熱性が充分とは言い難い。
液晶ディスプレイ用のカラーフィルターは赤、青、緑の顔料を分散させた着色組成物(カラーレジスト)と黒色顔料を分散させた着色組成物(ブラックマトリックス)を逐次、露光、現像することによって形成される。その組成物中にはそれぞれの画素を形成させるために多官能アクリレートが配合されている場合が多い。その例としてペンタエリスリトールやジペンタエリスリトールのアクリレート類を用いた例が開示されている(特許文献3)が、これらアクリレート類は多官能であるため、未硬化部分ができ、耐熱性に問題がある。
一方、半導体分野では、その製造におけるリソグラフィー工程において、さらなる微細化が要求されており、微細パターンを形成させる方法が種々検討されている。その一つにナノインプリントリソグラフィーがある。ナノインプリントリソグラフィーにおいて用いられる樹脂組成物には、硬化収縮や線膨張係数が小さいこと、また、モールドを押し当てて硬化させることから液状であることが望まれる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−082062号公報
【特許文献2】特開2005−13440号公報
【特許文献3】特開2006−99033号公報
【非特許文献1】「マテリアルステージ」、2003年3月号52-64頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルム等)及びこれらの接着剤として好適な、透明性、耐光性等の光学特性、長期耐熱性、誘電率等電気特性に優れた硬化物を与える新規化合物、及びそれを含む樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた半導体用封止剤、光学電子部材、レジスト材料、及び前記化合物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するデカリン誘導体により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
1.下記一般式(I)で表されるデカリン誘導体。
【化1】

(式中、Yは水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、及び2つのYが一緒になって形成された=Oから選ばれる基を表わし、Yが複数ある場合、複数のYは同一であっても異なっていても良い。ただし、9又は10位の場合にはYは水素原子を表わす。Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表わす。nは0〜4の整数、pは1〜4の整数、qは12〜15の整数、p+q=16である。)
2.デカヒドロナフタレンアルコール類と、CH2=C(R)−COOH(ただし、Rは前記と同じである。)及びその反応性誘導体から選択される一種とを反応させることを特徴とする、前記一般式(I)で表されるデカリン誘導体の製造法。
3.上記1に記載のデカリン誘導体と重合開始剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
4.上記3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする光半導体用封止剤。
5.上記3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする光学電子部材。
6.上記3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とするレジスト材料。
7.上記3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とするレンズ材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルム等)及びこれらの接着剤として好適な、透明性、耐光性等の光学特性、長期耐熱性、誘電率等電気特性に優れた硬化物を与えるデカリン誘導体及びそれを含む樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた半導体用封止剤、光学電子部材、レジスト材料、及びデカリン誘導体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のデカリン誘導体は、下記一般式(I)で表される新規な化合物である。
【化2】

前記一般式(I)においては、Yは水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、及び2つのYが一緒になって形成された=Oから選ばれる基を表わし、Yが複数ある場合、複数のYは同一であっても異なっていても良い。ただし、9又は10位の場合にはYは水素原子を表わす。Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表わす。nは0〜4の整数、pは1〜4の整数、qは12〜15の整数、p+q=16である。なお、Yがハロゲン原子の場合、フッ素原子が好ましい。
前記一般式(I)で表されるデカリン誘導体の製造方法としては、特に制限はないが、本発明の方法によれば、下記一般式(II)で表されるデカヒドロナフタレンアルコール類と、CH2=C(R)−COOH及びその反応性誘導体から選択される一種とを反応させる方法が用いられる。
【化3】

(式中、Y、n、及びqは前記と同じである。)
ここでCH2=C(R)−COOHの反応性誘導体としては、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等を挙げることができる。すなわち、合成法として、共沸脱水法、酸無水物法、酸クロリド法、縮合法、及びエステル交換法等が用いられる。
【0009】
前記一般式(II)で表されるデカヒドロナフタレンアルコール類としては、デカヒドロナフタレン−1,2−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−1,3−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−1,4−ジイルジメタノール、デカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレン−1,6−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−1,7−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−1,8−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−2,3−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−2,4−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−2,5−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−2,7−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−2,8−ジイルジメタノール、デカヒドロナフタレン−1,2−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−1,3−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−1,4−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−1,5−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−1,6−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−1,7−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−1,8−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−2,3−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−2,4−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−2,5−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−2,7−ジイルジエタノール、デカヒドロナフタレン−2,8−ジイルジエタノール等が挙げられる。
【0010】
次に本発明に用いられるCH2=C(R)−COOH及びその反応性誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-トリフルオロメチルアクリル酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水α-トリフルオロメチルアクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、α-トリフルオロメチルアクリル酸クロリド等が挙げられる。
以下に、これらの原料を用いて、共沸脱水法、酸クロリド法、酸無水物法、及び縮合法でそれぞれ合成する場合の詳細について説明する。
【0011】
<共沸脱水法の場合>
用いられる(CH2=C(R)−COOHとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α-トリフルオロメチルアクリル酸等が挙げられる。
反応温度としては50〜200℃程度、望ましくは100〜180℃とする。温度が50℃未満の場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。逆に温度が200℃を越える場合、副反応が起きたり、着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
この反応に使用する触媒としては、硫酸やp-トルエンスルホン酸等の酸が挙げられ、酸の添加濃度は、その種類にもよるが、原料アルコールに対して0.01mol%〜20mol%程度、好ましくは0.05〜10mol%とする。
溶媒としては、デカヒドロナフタレンアルコール類の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
溶媒量はデカヒドロナフタレンアルコール類の濃度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上となる量である。この時、デカヒドロナフタレンアルコール類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
なお、必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加しても良い。添加する場合の添加濃度は、原料アルコールに対して、10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmとする。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
【0012】
<酸クロリド法の場合>
用いられる酸クロリドとしては、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、α-トリフルオロメチルアクリル酸クロリド等が挙げられる。
反応温度としては、−50〜100℃程度、望ましくは0〜50℃とする。温度が-50℃未満の場合、特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に温度が100℃を越える場合、副反応が起きたり着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。この圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
酸クロリド法の場合には、反応により発生する酸の捕捉剤として塩基を添加する。このような塩基として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミンや,水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等の無機塩基を使用することができる。
上記一般式(II)で表されるデカヒドロナフタレンアルコール類に対する前記塩基の使用割合は、塩基/デカヒドロナフタレンアルコール類(モル比)が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
溶媒としては、デカヒドロナフタレンアルコール類の溶解度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。
具体的には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、DMF、NMP、DMAc、DMSO、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。
なお、必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加しても良い。この場合、重合禁止剤の添加量としては、使用する酸クロリドに対して、10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmとする。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
【0013】
<酸無水物法の場合>
用いられる酸無水物としては、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水α-トリフルオロメチルアクリル酸等が挙げられる。
反応温度としては−50〜100℃程度、望ましくは0〜50℃とする。温度が−50℃未満の場合、特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に温度が100℃を越える場合、副反応が起きたり着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。この圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
酸無水物法の場合には、反応により発生する酸の捕捉剤として塩基を添加する。このような塩基として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等の無機塩基を使用することができる。
上記一般式(II)で表されるデカヒドロナフタレンアルコール類に対する前記塩基の使用割合は、塩基/デカヒドロナフタレンアルコール類(モル比)が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
溶媒としては、デカヒドロナフタレンアルコール類の溶解度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、DMF、NMP、DMAc、DMSO、ジエチルエーテル、THF、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。この時、デカヒドロナフタレンアルコール類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
なお、必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加しても良い。この場合、重合禁止剤の添加量としては、使用する酸無水物に対して、10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmとする。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
【0014】
<縮合法の場合>
用いられるCH2=C(R)−COOHとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α-トリフルオロメチルアクリル酸等が挙げられる。
反応温度としては、-20〜200℃程度、望ましくは0〜100℃とする。温度が-20℃未満の場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。逆に温度が200℃を越える場合、副反応が起きたり着色が激しくなったりする。
反応圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。この圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
縮合法の場合、縮合剤を使用するが、この縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド等を用いる。使用割合は、デカヒドロナフタレンアルコール類のアルコール基に対して、モル比が1〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
反応が遅い場合には、塩基を加えてもよい。このような塩基の種類としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等の無機塩基を使用することができる。
前記一般式(II)で表されるデカヒドロナフタレンアルコール類に対する塩基の使用割合は、塩基/デカヒドロナフタレンアルコール類(モル比)が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
溶媒としては、デカヒドロナフタレンアルコール類の溶解度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、DMF、NMP、DMAc、DMSO及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒量はデカヒドロナフタレンアルコール類の濃度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上となる量である。この時、デカヒドロナフタレンアルコール類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
なお、必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加しても良い。この場合、重合禁止剤の添加量としては、原料アルコールに対して、10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmとする。
反応時間としては、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
以上のいずれかの方法で製造された本発明のデカリン誘導体は、蒸留、晶析、カラム分離等の精製方法が採用可能であり、生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0015】
本発明は、以上の方法で生成したデカリン誘導体と重合開始剤を含む樹脂組成物をも提供する。重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、上記の一般式(I)で表されるデカリン誘導体に熱重合開始剤又は光重合開始剤等を混合し、成型する金型への注入、あるいはコーティングにより所望の形状にした後に、加熱硬化あるいは紫外線(UV)照射等で光硬化する。
この時、該デカリン誘導体を単独で用いてもよく、あるいは耐熱性や機械物性等に悪影響を与えない限りにおいて他の重合性モノマーを含んでもよい。
そのような重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
熱重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
一方、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジケタール類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイド類、アシルホスフィン酸エステル類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
重合開始剤の添加量は全組成物に対して0.01〜10質量%程度、好ましくは0.05〜5質量%であり、これらを単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0016】
本発明に係る硬化物は上記樹脂組成物を加熱又は光硬化することにより得ることができる。熱硬化温度は30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。
光硬化においては、例えば紫外線の照射により硬化物を得ることができる。照射光量はモノマーや重合開始剤の種類、硬化物の膜厚等から決められるので任意であるが、通常、100〜5000mJ/cm2程度、より好ましくは500〜4000mJ/cm2である。紫外線照射後に加熱を行ってもよく、この場合70〜200℃で0.5〜12時間行うことが好ましい。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、従来から用いられている各種の添加剤を適宜配合してもよい。添加剤としては、例えば、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末、溶剤、レベリング剤、離型剤、染料、顔料などが挙げられる。
劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、リン系化合物などの、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。
フェノール系化合物としては、イルガノクス1010(Irganox1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス1076(Irganox1076、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス1330(Irganox1330、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3114(Irganox3114、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3125(Irganox3125、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3790(Irganox3790、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)BHT、シアノクス1790(Cyanox1790、サイアナミド社、商標)、スミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社、商標)などの市販品を挙げることができる。
アミン系化合物としては、イルガスタブFS042(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、GENOX EP(クロンプトン社、商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド)など、さらにはヒンダードアミン系である旭電化社製のADK STAB LA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−68、LA−77、LA−82、LA−87、LA−94、CSC社製のTinuvin123、144、440、662、Chimassorb2020、119、944、Hoechst社製のHostavin N30、Cytec社製のCyasorb UV−3346、UV−3526、GLC社製のUval 299、Clariant社製のSanduvor PR−31等を挙げることができる。
有機硫黄系化合物としては、DSTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、DLTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、DLTOIB(吉富社、商標)、DMTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、Seenox 412S(シプロ化成社、商標)、Cyanox 1212(サイアナミド社、商標)などの市販品を挙げることができる。
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類などの、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系などの、従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えば、シリコーン系などの、従来から公知の脱泡剤が挙げられる。無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えば、ガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛、アルミナなどの公知の無機粉末が挙げられる。溶剤としては、エポキシ樹脂が粉末の場合や、コーティングの希釈溶剤として、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などが使用可能である。
本発明の樹脂組成物を硬化して得られた樹脂硬化物は耐熱性や透明性に優れており、全光線透過率が70%以上とすることができる。また、後の実施例に示すように、ガラス転移温度が高く、優れた耐久性(耐熱性および耐光性)を有し、誘電率など電気特性にも優れた硬化物が得られる。
このように、本発明の樹脂組成物は、前記のデカリン誘導体と重合開始剤を含有するものであり、このような樹脂組成物は、光半導体用封止剤や光学電子部材、レジスト材料、及びレンズ材料としても有用である。
本発明は又、前記樹脂組成物を含む、光半導体用封止剤、光学電子部材、レジスト材料及びレンズ材料をも提供する。
光半導体(LEDなど)用封止剤としては、砲弾型あるいはサーフェスマウント(SMT)型などの素子に適用でき、金属やポリアミド上に形成されたGaNなどの半導体と良好に密着し、さらにYAGなどの蛍光色素を分散しても使用できる。さらに、砲弾型LEDの表面コート剤、SMT型LEDのレンズなどにも使用可能である。
電子回路用に使用する際は、層間絶縁膜、フレキシブルプリント基板用のポリイミドと銅箔との接着剤、あるいは基板用樹脂として使用可能である。
有機EL用に適用する際は、一般的なガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子に使用可能である。有機EL素子の封止材として、金属缶や金属シートあるいはSiNなどのコーティングされた樹脂フィルムをEL素子にカバーする際の接着剤、あるいはガスバリアー性を付与するために、本発明の樹脂組成物に無機フィラーなどを分散することで、直接、EL素子を封止することも可能である。表示方式として、現在、主流のボトムエミッション型にも使用可能であるが、今後、光の取出し効率などの点で期待されるトップエミッション型に使用することにより、本発明の樹脂組成物の透明性や耐熱性の効果を活かせる。
光回路に使用する際は、シングルモードやマルチモード用の熱光学スイッチやアレイ導波路型格子、合分波器、波長可変フィルター、あるいは光ファイバーのコア材料やクラッド材料にも使用できる。また、導波路に光を集光するマイクロレンズアレイやMEMS型光スイッチのミラーにも使用できる。また、光電変換素子の色素バインダーなどにも使用可能である。
光学用フィルムとして用いる際は、液晶用のフィルム基板、有機EL用フィルム基板などのディスプレイ用として、あるいは光拡散フィルム、反射防止フィルム、蛍光色素などを分散することにより、色変換フィルムなどに使用可能である。
【実施例】
【0018】
以下に、実施例及び比較例を掲げて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下の実施例及び比較例において、得られた硬化物の評価は次の方法により行った。
(1)ガラス転移温度(℃):Tg
硬化した試料をアルミ容器に5mg入れ、示差走査型熱量計(パーキネルマー社製、DSC−7)を用い、0℃から10℃/分にて昇温して、得られた熱流束曲線に観測される不連続点より求めた。
(2)熱分解温度(℃):Td(5%)
硬化した試料をアルミ容器に5mg入れ、示差熱熱質量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DAT6000)を用い、窒素雰囲気下、25℃から600℃まで、5℃/分で昇温させることにより得られた質量変化曲線にて質量が5%減少した時の温度を求めた。
(3)光線透過率
試料として肉厚3mmの試験片を用いてJIS K-7105に準拠して測定した。測定装置は(株)島津製作所製分光光度計UV-3100Sを用い、測定波長は400nmで行った。
(4)曲げ強度
曲げ強度をJIS K-7055Kに準拠して、測定を行った。
(5)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4に準拠して、鉛筆法により、硬化物の引っかき硬度測定を行った。
【0019】
(実施例1)[デカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノールジアクリレートの合成]
ディーンスターク付き還流冷却管、攪拌機、温度計、エアー導入管を備え付けた2Lの4口フラスコに、デカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノール100g(0.504mol)、アクリル酸80g(1.11mol)、トルエン1000ml、98%硫酸4.4g、メトキノン0.16gを仕込み120℃のオイルバスにつけに加熱還流させた。反応の進行により生成してくる水を反応系外に抜きながら2時間反応させた。その後、反応液を室温にまで放冷し、分液ロートに移した。有機層を5質量%塩化ナトリウム水溶液500mlで1回、3質量%リン酸ナトリウム水溶液500mlで1回、さらに5質量%塩化ナトリウム水溶液500mlで1回洗浄した。有機層をわけ、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去し液状の粗生成物を得た。これをn-ヘキサン1000mlに溶解させ、シリカゲル10gを加え30分攪拌した後、シリカゲルをろ過、ヘプタンを留去し、下記の無色透明液状の目的物を得た(収率95%)。
【化4】

スペクトルデータ
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)日本電子株式会社製 JNM-ECA500
1H-NMR(500MHz):1.27-1.32(6H)、1.52-1.6(8H)、2.3(2H、b)、4.0-4.2(4H、g) 、5.8(2H、k2)、6.1(2H、i)、6.4(2H、k1)
13C-NMR(125MHz):166.0(h)、130.3(j)、128.1(i)、69.4(g)、37(f)、35.1(b)、34.9 (a)、31.3(e)、28.7(d)、23.8(c)
【0020】
(実施例2)[デカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノールジメタクリレートの合成]
ディーンスターク付き還流冷却管、攪拌機、温度計、エアー導入管を備え付けた2Lの4口フラスコに、デカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノール100g(0.504mol)、メタクリル酸109g(1.26mol)、トルエン1000ml、98%硫酸4.4g、メトキノン0.16gを仕込み120℃のオイルバスにつけに加熱還流させた。反応の進行により生成してくる水を反応系外に抜きながら、3時間反応させた。その後、反応液を室温にまで放冷し、分液ロートに移した。有機層を5質量%塩化ナトリウム水溶液500mlで1回、3質量%リン酸ナトリウム水溶液500mlで1回、さらに5質量%塩化ナトリウム水溶液500mlで1回洗浄した。有機層をわけ、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去し液状の粗生成物を得た。これをn-ヘキサン1000mlに溶解させ、シリカゲル10gを加え30分攪拌した後、シリカゲルをろ過、ヘプタンを留去し、下記の無色透明液状の目的物を得た(収率90%)。
【化5】

スペクトルデータ
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)日本電子株式会社製 JNM-ECA500
1H-NMR(500MHz):1.30-1.34(6H)、1.50-1.76(8H)、1.95(6H、l)、2.0(2H、b)、4.0-4.2(4H、g) 、5.5(2H、k2)、6.1(2H、k1)、
13C-NMR(125MHz):167.3(h)、136.5(j)、125.0(i)、69.7(g)、37.8(f)、35.2(b)、34.9 (a)、31.3(e)、28.7(d)、23.9(c)、18.3(l)
【0021】
(実施例3)
実施例1で得られたデカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノールジアクリレート10gに光重合開始剤としてベンゾインイソブチルエーテル0.1gを加え、よく混合し真空脱気した。この樹脂組成物をガラス製のセルに流し込み水銀灯を3000mJ/cm2で照射し、厚さ1mmの硬化物を得た。得られた硬化物の物性値を表1に示した。
【0022】
(実施例4)
実施例2で得られたデカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノールジメタクリレート10gに光重合開始剤としてベンゾインイソブチルエーテル0.1gを加え、よく混合し真空脱気した。この樹脂組成物をガラス製のセルに流し込み水銀灯を3000mJ/cm2で照射し、厚さ1mmの硬化物を得た。得られた硬化物の物性値を表1に示した。
【0023】
(比較例1)
実施例1においてデカヒドロ−2,7−ナフタレンジメタノールジアクリレートをアダマンチルアクリレートに変更した以外は同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の物性値を表1に示した。
【0024】
【表1】

【0025】
表1から、実施例3と4で得られた、デカリン誘導体を含む樹脂組成物の硬化物は、Tgと曲げ強度や鉛筆硬度が十分に高く、透明性も十分であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、新規デカリン誘導体を含む樹脂組成物とすることにより、光半導体用封止剤、光学電子部材、レジスト材料、及びレンズ材料として利用することができる。
また、本発明で得られた樹脂組成物の硬化物は透明性、(長期)耐光性等の光学特性、耐熱性に優れており、良好な機械物性を与え、線膨張係数や硬化収縮率が低い。そのため、各種コーティング剤、フィルムコンデンサー、ナノインプリント法で形成されるパターン形成体等としても好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるデカリン誘導体。
【化1】

(式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、及び2つのYが一緒になって形成された=Oから選ばれる基を表わし、Yが複数ある場合、複数のYは同一であっても異なっていても良い。ただし、9又は10位の場合にはYは水素原子を表わす。Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表わす。nは0〜4の整数、pは1〜4の整数、qは12〜15の整数、p+q=16である。)
【請求項2】
デカヒドロナフタレンアルコール類と、CH2=C(R)−COOH(ただし、Rは前記と同じである。)及びその反応性誘導体から選択される一種とを反応させることを特徴とする、前記一般式(I)で表されるデカリン誘導体の製造法。
【請求項3】
請求項1に記載のデカリン誘導体と重合開始剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする光半導体用封止剤。
【請求項5】
請求項3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする光学電子部材。
【請求項6】
請求項3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とするレジスト材料。
【請求項7】
請求項3に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とするレンズ材料。

【公開番号】特開2009−221175(P2009−221175A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70086(P2008−70086)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】