説明

デキストロメトルファンを送出するためのロゼンジ

本発明は、イオン交換樹脂(この樹脂の粒径は直径が38μm又はそれ以下である)と複合したデキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、カラミフェン、カルバペンタン、エチルモルフィン、ノスカピン、コデイン及びそれらの混合物からなる群から選択される鎮咳剤を含有する感覚刺激的に心地良いロゼンジを提供する。また、このロゼンジの製造方法及びこのロゼンジの投与方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮咳剤を含有する菓子医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、デキストロメトルファン−樹脂複合体を含有するロゼンジに関する。このロゼンジは、このようなロゼンジに関連する苦味又は不快な口腔感なしに、治療有効量のデキストロメトルファンを供給する。
【背景技術】
【0002】
デキストロメトルファン(DM)は、上気道疾患、例えばインフルエンザ又は普通感冒に関連する咳症状を治療及び軽減するために多くの市販薬に用いられる鎮咳剤である。それは、その臭化水素酸塩、DM−HBr(臭化水素酸デキストロメトルファン)の形態で市販されている。この塩は消化液に容易に溶解し、そこからデキストロメトルファンは血流中に供給される。この薬剤の生物学的修飾及び/又は身体からの除去は直ちに始まる。従って、通常の用量は、体内で即時放出する薬剤のためには、4〜6時間ごとに投与して約15〜約30mgの範囲にある。
【0003】
15mgまでデキストロメトルファン用量を含有する咳抑制ロゼンジは、種々の製造業者から入手することができる。ロゼンジは、薬剤を4〜6時間ごとに摂取するための利便性を与える。それらは、持ち運びが極めて容易であり、そして投与が容易であるという利点を有する。しかしながら、デキストロメトルファンは、苦味及び不快な「口腔感」(すなわち、この生成物の口腔内での全体的な感覚)を有し、そしてロゼンジ当たり2.0mgを超える濃度では効果的に隠蔽することが困難である。2mgを超えるデキストロメトルファンを混合して口当たりの良いロゼンジにするために、三ケイ酸マグネシウム上のデキストロメトルファン吸着物(10% w/w)が用いられている。しかしながら、相当するデキストロメトルファン投与量を得るために、約10倍のデキストロメトルファン吸着物重量を加えなければならない。すなわち、標準的な3gロゼンジは、ロゼンジ当たり15mgの DM−HBr 相当物を送出するために150mgの吸着物を必要とする。この量の吸着物をキャンデー基剤に混合すると、結果としてロゼンジは不快な口腔感を有するネバネバした粉っぽいテクスチャーになる。
【0004】
イオン交換樹脂、例えば Amberlite IRP-69(Rohm and Haas)を用いた制御、持続放出性デキストロメトルファン/樹脂複合体が開発されている。U.S. 6,001,392は、例えば、1:1複合体を提供しており、ここで、相当するデキストロメトルファン投与量を得るために2倍までの樹脂複合体重量を必要とする。しかしながら、これらの複合体は、急速に摂取される医薬送出形態、特にシロップ懸濁液のような液体形態から制御及び持続放出を与えるために用いられる。これらの送出形態のためには、この目的に十分な薬剤の味隠蔽しか必要としない。
【0005】
ロゼンジはまさにそれらの性質上、口腔内で比較的長時間、例えば通常は必要に応じて約2〜15分間又はそれ以上にわたって、徐々に溶解するよう意図されている。味蕾及び嗅覚の感覚は、この溶解中に極めて僅かな苦味又は不快な口腔感さえも感知することができる。従って、口腔内でのこのような長い滞留時間中の不快な口腔感及び味の両者を克服する生成物を製造することは、重要なチャレンジである。
【0006】
デキストロメトルファンの口当たりの良いロゼンジ投与形態を提供することが望ましい。また、この薬剤のための公知のロゼンジ及び送出系の苦味、ベタツキ及び/又は全体的に不快な味及び口腔感なしに、ロゼンジ当たり種々の量のデキストロメトルファン、特に約5mg〜約30mgのDM−HBr相当物の量を送出し得るこのようなロゼンジを提供することが望ましい。本発明は、これらの及び他の利点に向けられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、感覚刺激的に心地良いロゼンジを提供し、このロゼンジは、
菓子基剤;
デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、カラミフェン、カルバペンタン、エチルモルフィン、ノスカピン、コデイン及びそれらの混合物からなる群から選択される鎮咳剤、
該鎮咳剤と複合したイオン交換樹脂(ここで、該イオン交換樹脂の粒径は直径が約38μm又はそれ以下である)
を含む。
【0008】
また、本明細書では、感覚刺激的に心地良いロゼンジの製造方法が提供され、該方法は、下記の各工程:
直径が約38μm又はそれ以下の粒径を有するイオン交換樹脂の粒子を選択し;
該樹脂を、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、カラミフェン、カルバペンタン、エチルモルフィン、ノスカピン、コデイン及びそれらの混合物からなる群から選択される鎮咳剤と、液体プレミックスとして複合させて薬剤−樹脂複合体を形成し、
菓子基剤を用意し、
該基剤を該薬剤−樹脂複合体と混合し、
そして該混合物から治療有効量の薬剤を含有するロゼンジを形成する
ことを含む。
【0009】
また、本明細書では、上記ロゼンジの投与方法が提供される。
【0010】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本明細書で用いられるように、DM−HBr 塩複合体の投与量は、「ミリグラム数 DM−HBr」と呼ばれる。臭化水素酸塩を含まない他の投与形態、例えばイオン交換体複合体(DM−樹脂)は、「DM−HBr 相当物」と呼ばれる。従って、これらの形態間の投与量の関係を決定し得るためには、デキストロメトルファン−樹脂複合体のための投与量は、「Xmg DM−HBr」と一般的に呼ばれ、「X」はデキストロメトルファン−樹脂複合体が相当する DM−HBr のmg である。
【0011】
本明細書において、「ロゼンジ」は、口腔内で長期間、通常は必要に応じて約2〜15分間又はそれ以上にわたって、保持及び溶解される低速溶解性硬質菓子組成物を包含するために用いられる。従って、「ロゼンジ」は、ハイボイルドのキャンデー菓子及び低温加工したシート状キャンデー菓子(伝統的なロゼンジ)を包含する。
【0012】
本明細書において、「菓子基剤」という用語は、多種多様な材料、例えば単糖、二糖(例えば、蔗糖)、ポリオール、オリゴ糖、多糖(例えば、トウモロコシシロップ及び澱粉、その他)、並びに無糖増量剤の場合にはイソマルト、パラチノース、パラチニット及び糖アルコール、例えばソルビトール、キシリトール、マルチトール及びマンニトール、その他から選択される炭水化物結合剤又は増量剤を含有する生成物を意味するために用いられる。このような炭水化物又は増量剤は、製菓技術の当業者に周知である。
【0013】
本明細書において、「菓子組成物」という用語は、菓子基剤を含有する組成物を意味するために用いられる。一般的に、基剤は、菓子組成物の約5%〜約99%、好ましくは約20%〜約95重量%を占めるだろう。
【0014】
本発明のロゼンジは、ロゼンジ当たり約5〜約35mgのデキストロメトルファンを供給する。デキストロメトルファンは、デキストロメトルファン−樹脂複合体から送出され、ここで、樹脂は直径が約38μm(ミクロン)未満の粒径を有する。樹脂複合体の小さいサイズは、ロゼンジのような製剤に用いる場合に、DM−HBr 又はより大きいサイズの樹脂粒子又は三ケイ酸マグネシウムのような吸着物で作ったロゼンジ製剤と比較して改善された口腔感を与える一方、依然として苦味を防止する。小さい粒径の樹脂はまた、樹脂上の増加した薬剤負荷量を与え、複合体から胃液中への迅速な放出という付加利益を有し、従って迅速な苦痛の軽減を与える。
【0015】
本発明のデキストロメトルファンロゼンジは、メントール、その他のような香味剤/清涼剤をさらに含有することができ、それらは、それらの清涼効果、すなわち喉鎮静効果が知られているものである。清涼剤の使用は、咳及び風邪にしばしば付随する苦しい咽頭痛症状を軽減するというさらなる利益を患者に与える。
【0016】
本発明のデキストロメトルファン−樹脂複合体に使用するために適するイオン交換樹脂は水に不溶性であり、そしてイオン性であるか又は適切なpH条件下でイオン化し得る共有結合した官能基を含有する薬理学的に不活性な有機又は無機マトリックスからなる。有機マトリックスは、合成の又は修飾された天然に存在する材料であってよい。合成有機マトリックス材料の非限定的な例は、アクリル酸、メタクリル酸、スルホン化スチレン又はスルホン化ジビニルベンゼンのポリマー又はコポリマーを包含する。修飾された天然に存在する材料の非限定的な例は、修飾されたセルロース及びデキストランを包含する。無機マトリックスは、例えば、イオン性基の付加により修飾されたシリカゲルを包含することができる。共有結合したイオン性基は、強酸性(例えば、スルホン酸)、弱酸性(例えば、カルボン酸)、強塩基性(例えば、第四級アンモニウム)、弱塩基性(例えば、第一級アミン)、又は酸性及び塩基性基の組み合わせであってよい。
【0017】
直径が約38μm又はそれ以下の粒径を得るために破砕又は別に処理することのできる任意の市販の樹脂を使用することができる。このように処理することのできる好適な樹脂は、Amberlite IRP-69(Rohm and Haas, Philadelphia, PAから入手できる)及び Dow XYS-40010.00(The Dow Chemical Company, Midland, MI から入手できる)が含まれる。これらのそれぞれは、8%のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンから構成されるスルホン化ポリマーであり、約4.5〜5.5meq/gの乾燥樹脂(H+型)のイオン交換能を有する。それらの本質的な相違は、物理的形態である。Amberlite IRP-69 は、1μm未満〜149μmのサイズ範囲を有する不規則形状の粒子からなり、親の Amberlite IRP-120 の大きいサイズの球状物の微粉砕によって製造されたものである。Dow XYS-40010.00 製品は、45μm〜150μmのサイズ範囲を有する球状粒子からなる。別の有用な交換樹脂、Dow XYS-40013.00 は、8%のジビニルベンゼンで架橋され、かつ第四級アンモニウム基で官能化されたポリスチレンから構成されるコポリマーである。その交換能は、通常は約3〜4meq/gの乾燥樹脂の範囲内にある。
【0018】
好ましくは、粒径が約38μm又はそれ以下に減少されている Amberlite IRP-69、ポリスチレン樹脂が用いられる。なぜならば、それは、一様な分散、迅速な放出、最小限のベタツキを得るために役立ち、そして結果として優れた味及び口腔感を有するロゼンジを生じる。樹脂の適切なサイズは、破砕又は別に処理した樹脂を 400メッシュ篩に通すか、又は粒子分級装置の使用によって得ることができる。後者は、Amberlite IRP-69 のような不規則形状の粒子にとってしばしば好ましい。樹脂のサイズは、1μm未満ほど小さいサイズから約38μmまでの範囲にあってよい。
【0019】
デキストロメトルファンとの複合体生成の前に樹脂を分粒することが好ましいが、分粒は複合体生成段階の後に行ってもよい。
【0020】
薬剤−樹脂複合体を形成するためのイオン交換樹脂粒子上への薬剤の複合体生成は、米国特許第2,990,332号及び第4,221,778号に記載されているように周知の技術であり、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。一般的に、薬剤を樹脂の水性懸濁液と混合し、次いで複合体を洗浄して乾燥する。より高い薬剤負荷量、すなわち 65%までを達成するためには、多段階負荷方法がより効果的であることが認められる。すなわち、薬剤を二つ又はそれ以上の部分に分割することができ、後続の部分を前の負荷で形成された樹脂−薬剤複合体の水性懸濁液と混合する。
【0021】
望ましい負荷レベルを達成するために、イオン交換過程及び臭化ナトリウムの損失を考慮した量が用いられる。
【0022】
形成された薬剤−樹脂複合体を集め、そして全ての未結合薬剤の除去を確保するためにエタノール及び/又は水で洗浄する。複合体は、通常は室温又は高められた温度において棚で空気乾燥される。樹脂上への薬剤の吸着は、反応媒質のpH変化の測定、又は呈色反応による臭化ナトリウムの濃度変化若しくはHPLCアッセイによる薬剤の濃度変化の測定によって検出することができる。一般的に、複合した樹脂粒子は、20%までの粒径増加をもたらし、そして直径が1μm未満〜約50μmの範囲にあるだろう。
【0023】
別法として、薬剤−樹脂複合体は、菓子組成物の製造においてその場で形成することができる。前の段階での製造が好ましい。
【0024】
38μm未満の粒径の使用は、単位体積当たり増加した有効全表面積を与え、増加した薬剤の存在によりロゼンジに苦味を付加することなく、負荷量の増加を可能にする。増加した負荷量の利点はまた、十分な投与量を達成するためにロゼンジに用いられる樹脂の量を減少することであり、樹脂の使用による不快な口腔感が避けられる。
【0025】
イオン交換樹脂上に負荷される薬剤の量は、薬剤−樹脂複合体の約45%〜約75質量%の範囲にあってよい。好ましくは、イオン交換樹脂上に負荷される薬剤の量は、少なくとも薬剤−樹脂複合体の50%、そして約50%〜約75質量%の範囲にある。最も好ましくは、イオン交換樹脂上に負荷される薬剤の量は、薬剤−樹脂複合体の約55%〜約70質量%である。
【0026】
従って、薬剤−樹脂複合体は、薬剤対樹脂の比率で表して約0.8:1〜約3:1、好ましくは約1:1〜約3:1、最も好ましくは約1.2:1〜2.3:1である。
【0027】
本発明のロゼンジは、薬剤をロゼンジ当たり約5〜約35ミリグラムの範囲の量で供給するために用いることができる。
【0028】
平均薬剤:樹脂比が約1:1(50%)であるならば、二つの3gロゼンジで送出される本発明の成人用量は、60mg DM−HBr 相当物投与量を送出するために約120mgの薬剤−樹脂複合体を含有することができ、30mg DM−HBr 相当物投与量を含有する各ロゼンジが4〜6時間ごとに服用される。その代わりに、それは、30mg DM−HBr 相当物投与量を送出するために約60mgの薬剤−樹脂複合体を含有することができ、15mg DM−HBr 相当物投与量を含有する各ロゼンジが4〜6時間ごとに服用される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、約1.8:1比、又は65%の樹脂上に負荷されたデキストロメトルファンを提供する。単一の3gロゼンジは、成人に対して30mgのDM−HBr 相当物を送出するために僅かに46mgのデキストロメトルファン−樹脂複合体を用いて、そして小児に対して15mgのDM−HBr 相当物を送出するために23mgのデキストロメトルファン−樹脂複合体を用いて製剤化することができる。これは、標準的な3gロゼンジが、ロゼンジ当たり15mgのDM−HBr 相当物を送出するために150mgの吸着物を必要とするのと対照的である。
【0030】
他の投与量スキームが可能であり、当業者に公知であるだろう。
【0031】
上記の議論ではデキストロメトルファンの使用を強調してきたが、本発明の薬剤−樹脂複合体はまた、他の鎮咳剤とともに使用するために適しており、そして酸性、両性又は最も多くの場合に塩基性鎮咳剤を含むことができる。本発明に有用な塩基性薬剤の例は、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、カラミフェン、カルバペンタン、エチルモルフィン、ノスカピン及びコデインを包含するが、これらに限定されない。
【0032】
望ましくは、本発明の薬剤−樹脂複合体は1種だけの活性成分、好ましくはデキストロメトルファンを含む。別の実施形態において、本発明はまた、追加の医薬活性化合物と組み合わせた薬剤−樹脂複合体に関する。このような追加の化合物の例は、抗ヒスタミン剤、交感神経模倣剤(鼻充血除去剤、気管支拡張剤)、鎮痛剤、抗炎症剤、咳止め剤及び/又は去痰剤の少なくとも1種を包含するが、これらに限定されない。抗ヒスタミン剤、交感神経模倣剤(鼻充血除去剤、気管支拡張剤)、鎮痛剤、抗炎症剤、咳止め剤及び/又は去痰剤である化合物は、当業者に周知であり、そして本明細書で詳細に議論する必要はない。
【0033】
いったん製造した後に、薬剤−樹脂複合体は、本発明の低速溶解性菓子組成物を製造するために、将来の使用のために貯蔵するか、又は従来の製薬上許容される担体とともに製剤化することができる。
【0034】
低速溶解性硬質菓子組成物、又はロゼンジは、製菓技術で確立された従来方法によって製造することができる。それらは、種々の形態で製造することができ、最も普通のものは、平坦、円形、八角形及び両凹面の形態である。
【0035】
ロゼンジは、一般的に二つのタイプ:ハイ−ボイルド及び低温加工のものである。好ましくは、本発明のロゼンジ組成物は、硬質のハイ−ボイルドキャンデーである。
【0036】
ハードボイルドキャンデー組成物は、硬質なテクスチャー、ガラス様外観及び97〜98%の固体含有量を有する。それらは、約70%までの糖(蔗糖)及び他の炭水化物増量剤、並びに通常は約92%までのトウモロコシシロップの混合物から構成された菓子基剤を一般的に含有する。それらはまた、非発酵性糖、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、エリスリトール、水素化澱粉加水分解物、その他から製造することができる。さらなる成分、例えば香味剤、強力甘味料、酸味料、ゲル化剤、希釈剤、着色剤、結合剤、保湿剤、保存剤、その他を添加することもできる。
【0037】
ハードボイルドキャンデー組成物は、従来方法、例えば加熱調理器、真空調理器及び高速常圧調理器とも呼ばれる表面切削調理器を用いる方法により普通に製造することができる。典型的には、ボイルドキャンデーロゼンジは、最初に少なくとも炭水化物及び水及び/又はトウモロコシシロップをステンレススチール製容器中で混合して約140℃にすることによって作られる。この混合物を、大部分の水分が逃散するまで加熱する。この混合物を幾分冷却させ、そしてこのバッチに残りの成分を混合することができる。本発明の実施に際し、本方法のこの段階でデキストロメトルファン−樹脂複合体を含めることが好ましい。香味剤は一般的に最後に添加される。冷却工程中に、水分が蒸発した後、このマスは液相を経てプラスチック及び固体に変化する。キャンデーマスを適当に練るとすぐに、それを取り扱い可能な部分に切断するか又は所望の形状に成形することができる。望ましい最終生成物の形状及びサイズに応じて、種々の成形技術を利用することができる。硬質菓子の組成及び製造に関する一般的な議論は、E. B. Jackson, Ed. “Sugar Confectionery
Manufacture”, 2nd edition, Blackie Academic & Professional Press, Glasgow UK, (1990), at pages 129-169 に見出すことができる。
【0038】
伝統的なロゼンジは、アイシング(粉末)糖から作られた低温加工の硬質菓子であり、この糖は結合剤溶液と混合され、シート状にされ、切断して形が整えられ、そして乾燥させられる。これらのロゼンジは、やや粗い硬質な仕上がりを有する傾向がある。
【0039】
これらの伝統的なロゼンジの主成分はアイシング糖であるので、選択される糖のグレートは最終生成物に対して根本的な効果を有するだろう。粒径が微小な糖を使用すべきである:粒子が微細であるほど、生成するテクスチャーは良くなる。大きな粒子が含まれると、最終生成物は粗い口内感を有するだろう。結合剤は、通常は溶液としてのアラビアゴム、ゼラチン、トラガントゴム又はより多くの場合にブレンドである。他の成分、例えば香味剤、高強度甘味料、酸味料、ゲル化剤、希釈剤、着色剤、結合剤、保湿剤、保存剤、その他を添加することもできる。
【0040】
このロゼンジ製造は低温加工法である。アイシング糖はZ−ブレード型のようなミキサーに負荷される。結合剤溶液はこのバッチに徐々に添加され、そしてよく混合される。混合した後、このロゼンジミックスは引き締まったパン生地のようなテクスチャーを有するべきである。着色剤及び本発明のデキストロメトルファン−樹脂複合体を包含する他の添加物を、混合段階中に添加することもできる。香味剤はできるだけ最終段階で添加するのが最善である。ドウが十分に混合されるとすぐに、それは装入ホッパーに供給され、ホッパーから押し出されてシートとなり、これは望ましい厚さが得られるまでローラーに通される。次いでこのドウはロゼンジを切り取るために打ち抜かれ、これらはトレイ上に送られ、そして屑「ウェブ」は再び加工される。
【0041】
ロゼンジはトレイ上に単層に広げられ、僅かな外皮を形成させ、その後に約35〜40℃でオーブン乾燥される。それらは、その水分含有量が約 1.5%になるまで乾燥される。伝統的なロゼンジ菓子の組成及び製造に関する一般的な議論は、E. B. Jackson, Ed. “Sugar Confectionery Manufacture", 2nd edition, Blackie Academic & Professional Press,
Glasgow UK, (1990), at pages 237-258 に見出すことができる。
【0042】
本発明の硬質菓子組成物に適する香味剤は、天然及び人工香味剤の両者を包含し、これらはミント、例えばペパーミント、メントール、人工バニラ、シナモン、単独の及び混合した両方の種々の果実香味剤、精油(すなわちチモール、エキュリプトール、メントール及びサリチル酸メチル)、その他を包含する。メントールは望ましい緩和効果を与えるので、メントール含有ミント香味剤は低速溶解性ロゼンジに好ましい。清涼剤、例えば N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシプロパン 1,2−ジオール、その他もまた、清涼感を与えるために使用することができる。
【0043】
香味料の使用量は、通常は香味の種類、個々の香味及び望ましい強度のようなファクターによる好みの問題である。従って、最終生成物で望ましい結果を得るために、量を変えることができる。このような変化は当業者の能力の範囲内にあり、過度な実験を必要としない。香味剤は、個々の香味に応じて変化する量で一般的に使用され、そして例えば、最終組成物質量の約0.01%〜約3%の量の範囲にあってよい。
【0044】
本発明の別の実施形態において、デキストロメトルファン−樹脂複合体は、潤滑剤により硬質菓子組成物に添加することができる。潤滑剤は、一般的に加工助剤である物質であって、ロゼンジ内での複合体の凝集を防止し、そして効果的かつ一様な分布を与えるために樹脂複合体と混合できるものである。潤滑剤は樹脂複合体とともに約5〜20% w/wの範囲で存在することができ、8〜15%の範囲が好ましい。潤滑剤は、脂肪若しくは油又はそれらのエステル若しくは塩、ワックス、無機塩から選択できるか、又は合成ポリマーであってよい。潤滑剤は、脂肪、例えば、カカオ脂、乳脂肪;植物油、例えば、トウモロコシ油、ヤシ油、ココナッツ油、綿実油、グリセリン;ステアリン酸金属塩、例えば、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム;ポリエチレングリコール;タルク;ラウリル硫酸ナトリウム;ポリオキシエチレンモノステアレート;天然ワックス、合成ワックス、石油ワックス;ナトリウム塩、例えば、酢酸、安息香酸及びオレイン酸ナトリウムを包含するが、これらに限定されない。
【0045】
下記の実施例は、本発明の組成物をより具体的に教示し、かつより良く定義するために提供される。それらは例示の目的のためにすぎない。本発明の範囲は請求項によって詳述される。
【0046】
〔実施例1〕
本発明の製剤
樹脂調製物:
IRP-69 樹脂を400メッシュ篩に装入し、約38μm又はそれ以下の粒径を分離した。この樹脂粒子に水性懸濁液として、デキストロメトルファンを0.8:1w/w 比で三段階法で負荷した。65%負荷量を達成するために、1580gの樹脂を順に945g、650g及び230gのDM−HBrと70〜80℃で約10分間混合した。次いでこの複合体を洗浄して乾燥した。この樹脂をアッセイしたところ65%デキストロメトルファンであり、これを用いて下記のようにロゼンジを製造した。
【0047】
ロゼンジの製造:
下記の表1に、本発明の15mg DM−HBr 相当物ロゼンジの製造における成分を挙げる。最終製剤中のパーセントが記載されている。
【表1】

【0048】
精製水、スクラロース、塩化ナトリウム、トウモロコシシロップ及びグラニュー糖をステンレススチール製容器中で混合し、大部分の水が逃散するまで 140℃で加熱した。このバッチを 110℃に冷却し、熱源を切った。6.9gの薬剤−樹脂複合体、モノアンモニウム glyyrrhizinate、リンゴ酸及び染料を加え、バッチに良く混合した。バッチが熱くて液体であるうちに、それを冷却台に移し、円形に広げた。この時点で、香味剤成分を加えた。1−メントールは添加の前にチェリー香味剤にあらかじめ溶解した。このバッチは冷却すると濃厚になり、ドロップ用ローラーに通して 3.5gロゼンジを形成した。これらのロゼンジを15分間冷却させた。冷却した後、ロゼンジを軽く篩分けして望ましくない粒子を除去し、次いで包装した。生成したロゼンジは2〜3%の水分を含有していた。
【0049】
〔実施例2〕
比較ロゼンジの製剤
比較ロゼンジを製造するために、薬剤−樹脂複合体の調製物は別として、実施例1で用いたのと同じ成分を用いた。同量の薬剤−樹脂複合体を用いたが、この薬剤−樹脂複合体は米国特許第6,001,392号により製造した。樹脂 IRP-69 は製造したままで、すなわち25μm〜200μmの範囲の粒径で用いた。デキストロメトルファンは上記のように樹脂上に負荷した。この樹脂をアッセイしたところ65%デキストロメトルファンであった。
【0050】
〔実施例3〕
味の比較
専門家7人のパネルが、苦味、砂のような感じ及び全体的な口腔感について、実施例1のロゼンジを比較例2と比較した。パネルは、実施例1により製造したロゼンジが苦くもなければ砂のような感じもなく、そして全体として優れた口腔感を有すると決定した。これと比較して、パネルは、砂のような感じ及び全体的な口腔感のレベルが比較例2により製造したそれぞれのロゼンジでは許容できないと決定した。さらに、7人のジャッジのうち4人は、比較例2により製造したロゼンジが許容できない苦味も有すると指摘した。
この試験は、38μm未満の粒子を含むイオン交換樹脂と複合したデキストロメトルファンを含有するロゼンジが、先行技術のデキストロメトルファン−樹脂複合体を用いたものよりも苦味及び砂のような感じが少ない薬用ロゼンジを生じることを確認する。
【0051】
〔実施例4〕
即時放出性ロゼンジ
下記の表2に、本発明の15mg DM−HBr 相当物ロゼンジにおける成分を挙げる。トウモロコシ油を潤滑剤として用いた。最終製剤中のパーセントが記載されている。
【表2】

【0052】
薬剤−樹脂複合体を実施例1のように製造した。5.0gのDM−樹脂複合体を0.43gのトウモロコシ油と混合した。
【0053】
デキストロメトルファン−樹脂複合体及び水を、トウモロコシシロップ、グラニュー糖及び赤色果実ジュースの混合物に加え、良く混合し、時々混合しながら約140℃に加熱した。この混合物に、スクラロース、モノアンモニウム glyyrrhizinate−20%及び酒石酸を加えた。生成した混合物を混合し、冷却させた。この第二の混合物に、それが冷却する間に、チェリー香味剤、ペパーミント香味剤及び天然メントールのプレミックスを加えた。このバッチは冷却のために濃厚になり、ドロップ用ローラーに通して3.5gロゼンジを製造した。これらのロゼンジを15分間冷却させた。冷却した後、ロゼンジを軽く篩分けして望ましくない粒子を除去し、次いで包装した。生成したロゼンジは2〜3%の水分を含有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
菓子基剤及び薬剤樹脂複合体を含む感覚刺激的に心地良いロゼンジであって、薬剤樹脂複合体は、
(a)デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、カラミフェン、カルバペンタン、エチルモルフィン、ノスカピン、コデイン及びそれらの混合物からなる群から選択される鎮咳剤;及び
(b)該薬剤と複合して該薬剤−樹脂複合体を形成するイオン交換樹脂(ここで、該樹脂の粒径は直径が約38μm又はそれ以下である)
を含む。
【請求項2】
鎮咳剤がデキストロメトルファンである、請求項1に記載のロゼンジ。
【請求項3】
薬剤−樹脂複合体が薬剤をロゼンジ当たり少なくとも5〜約35ミリグラムの範囲の量で送出する、請求項1に記載のロゼンジ。
【請求項4】
複合体における薬剤対樹脂の質量比が約0.8:1〜約3:1である、請求項1に記載のロゼンジ。
【請求項5】
抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤、解熱剤及び交感神経模倣剤の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載のロゼンジ。
【請求項6】
潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載のロゼンジ。
【請求項7】
香味剤もしくは清涼剤又はそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載のロゼンジ。
【請求項8】
感覚刺激的に心地良いロゼンジの製造方法であって、該方法は、下記の各工程:
(a)直径が約38μm又はそれ以下の平均粒径を有するイオン交換樹脂の粒子を選択し;
(b)該樹脂を、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、カラミフェン、カルバペンタン、エチルモルフィン、ノスカピン、コデインの塩及びそれらの混合物からなる群から選択される鎮咳剤と、液体プレミックスとして複合させて薬剤−樹脂複合体を形成し;
(c)菓子基剤を用意し;
(d)該基剤を工程(b)で形成した該薬剤−樹脂複合体と混合して混合物を形成し;そして
(e)該混合物から該ロゼンジを形成する
ことを含む。
【請求項9】
鎮咳剤がデキストロメトルファン塩又は塩混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
デキストロメトルファン塩が臭化水素酸デキストロメトルファンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
混合工程の前に液体プレミックスに潤滑剤を添加することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
即時放出性ロゼンジ中の鎮咳剤の投与方法であって、該方法は、請求項1に記載のロゼンジを患者に投与することを含む。

【公表番号】特表2007−534742(P2007−534742A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510144(P2007−510144)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001065
【国際公開番号】WO2005/102288
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】