説明

デジタル位相検出器

【課題】 従来、デジタル位相検出器における位相検出限界は、遅延素子の遅延時間により決定されるため、例えば、PLL回路に低ジッタ特性が要求される場合には、全デジタルPLL回路は不適当であった。
【解決手段】 第1のクロックCLKfを遅延する複数の第1の遅延素子1011〜101nと、第2のクロックCLKrを遅延する複数の第2の遅延素子1021〜102nと、前記第2の遅延素子により順次遅延された前記第2のクロックREF1〜REFnに従って、前記第1の遅延素子により順次遅延された前記第1のクロックFB1〜FBnを取り込み、相対的な位相関係を表すデジタル値Q1〜Qnを保持する複数のデータ保持回路1031〜103nと、を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル位相検出器に関し、特に、標準的なデジタルCMOSプロセスで製造され、PLL(Phase-locked loop)回路において位相比較器として利用されるデジタル位相検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られているアナログ構成のPLL回路において、位相比較器からの位相差情報は出力パルスの幅として与えられ、チャージポンプ回路が、そのパルス幅に応じた電荷を電圧制御発振器(Voltage-Controlled Oscillator:VCO)の制御電圧端子に供給する。さらに、制御電圧端子には、ループフィルタが接続され、チャージポンプ回路からの電荷を電圧値に変換する。
【0003】
ところで、上述したようなアナログ構成のPLL回路は、容量素子や抵抗素子といったアナログ素子を用いるが、このようなアナログ素子は標準的なデジタルCMOSプロセスでは製造することができないため、オプションが必要とされる場合が多い。また、これらアナログ素子がPLL回路の占有面積の支配要因となる場合、近年のデジタルCMOSの微細化の恩恵を受けることができない。さらに、PLL回路のループ中に2つ以上の極をもつことになるため、ループの帯域幅を広く設定すると位相余裕が小さくなり、その結果として、PLL回路の応答時間を小さくすることが困難になる。
【0004】
そこで、近年、PLL回路の素子を全てデジタル構成にする全デジタルPLL(All Digital Phase-locked loop)回路の研究開発が進められている。この全デジタルPLL回路を実現するためには、アナログ構成のPLL回路で用いられているような位相差情報を出力パルスの時間差に変換する位相比較器ではなく、位相差をデジタルコードとして出力するデジタル位相比較器が必要となる。
【0005】
ところで、従来、周波数合成器が使用する時間差をデジタルコードとして表す時間デジタル変換器を使用し、VCOの出力クロックのエッジと基準クロック間の遅れを測定する量子化方式に対応させたデジタル位相検出器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
さらに、従来、遅延時間を補償すると共に消費電力を減少させることができる位相同期技術として、イネーブル信号により、外部から入力される基準クロック信号とフィードバッククロック信号との位相を測定して測定開始信号および測定終了信号を生成し、これら2つの信号を利用して各々の測定遅延ユニット単位で遅延時間補償サイクル決定信号を出力し、遅延時間補償サイクル決定信号に応じて遅延時間補償信号を発生し、基準クロック信号を遅延して位相同期されたクロック信号を出力する高速位相同期回路が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−076886号公報
【特許文献2】特許第3143743号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1は従来のデジタル位相検出器の一例を概略的に示すブロック回路図である。図1において、参照符号1011〜101nは遅延素子(インバータ)、1031〜103nはデータ保持回路(フリップフロップ)、104は論理回路、CLKfはフィードバッククロック、そして、CLKrは基準クロックを示している。
【0009】
図1に示されるように、従来のデジタル位相検出器は、フィードバッククロックCLKfを複数の遅延素子1011〜101nに通過させることで、各遅延素子1011〜101nの遅延時間だけ順次遅延されたフィードバッククロック(クロックFB1〜FBn)を生成し、基準クロックCLKr(クロックREF1〜REFn)との相対的な位相関係を順次変化させるようになっている。ここで、各遅延素子1011〜101nは、全て同一の遅延時間を有している。
【0010】
データ保持回路1031は、フィードバッククロックCLKfが一段の遅延素子1011で遅延されたクロック(フィードバッククロック)FB1を、基準クロックREF1のエッジ(立ち上がりエッジ)でラッチする。また、データ保持回路1032は、フィードバッククロックCLKfが二段の遅延素子1011,1012で遅延されたフィードバッククロックFB2を、基準クロックREF2のエッジでラッチする。
【0011】
さらに、データ保持回路103nは、フィードバッククロックCLKfがn段の遅延素子1011〜101nで遅延されたフィードバッククロックFBnを、基準クロックREFnのエッジでラッチする。ここで、各データ保持回路1031〜103nに供給される基準クロッククロックREF1〜REFnは、全て入力される基準クロックCLKrと同じ位相関係になっている。
【0012】
すなわち、データ保持回路1031〜103nは、フィードバッククロックCLKfを第1の遅延素子1011〜101nで順次遅延したフィードバッククロックFB1〜FBnを、同じ位相の基準クロックREF1〜REFn(CLKr)のエッジでラッチし、それぞれ各フィードバッククロックFB1〜FBnおよび基準クロックREF1〜REFn(CLKr)の位相差の情報をデジタル信号Q1〜Qnとして論理回路104に出力する。なお、論理回路104では、信号Q1〜Qnにおける論理の変化を検出してデジタルコードを出力することになる。
【0013】
図2は図1に示すデジタル位相検出器の動作の一例を説明するためのタイミング図である。なお、図2は、便宜的に、5つのデータ保持回路1031〜1035による処理を示している。
【0014】
図2に示されるように、フィードバッククロックCLKfは、複数の遅延素子1011〜1015を順次通過することにより、遅延素子101(1011〜1015)の一段毎の遅延時間が順次加算されたフィードバッククロックFB1〜FB5となって、それぞれデータ保持回路1031〜1035のデータ端子Dに入力される。
【0015】
各データ保持回路1031〜1035のクロック端子(制御端子)には、それぞれ同じ位相の基準クロックREF1〜REFn(CLKr)が入力され、これら基準クロックREF1〜REFnの立ち上がりタイミングで対応するクロックFB1〜FB5をラッチし、出力Q1〜Q5(QまたはXQ)を論理回路104に出力する。
【0016】
なお、図1のデジタル位相検出器において、遅延素子101(1011〜1015)はインバータとして構成されており、論理を整合させるために、奇数段(1,3,5段目)のデータ保持回路103(1031,1033,1035)の出力Q1,Q3,Q5は正論理の出力Qから取り出され、また、偶数段(2,4段目)のデータ保持回路103(1032,1034)の出力Q2,Q4は負論理の出力XQから取り出されるようになっている。
【0017】
論理回路104では、信号Q1〜Q5における論理の変化、すなわち、信号Q1の論理『0』から信号Q2の論理『1』への変化を検出して対応するデジタルコードを出力する。
【0018】
ところで、図2から明らかなように、遅延素子101(1011〜1015)により遅延されたフィードバッククロックFB1〜FB5を、データ保持回路1031〜1035により、同じタイミングの1つの基準クロックCLKrでラッチしたのでは、その分解能としては、遅延素子101の一段分の遅延時間に規定されることになる。
【0019】
すなわち、従来のデジタル位相検出器において、位相検出限界は、遅延素子101の遅延時間により決定されるため、例えば、PLL回路に低ジッタ特性が要求される場合には、全デジタルPLL回路は不適当であった。
【0020】
本発明は、上述した従来のデジタル位相検出器が有する課題に鑑み、デジタル位相検出器の位相検出分解能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、第1のクロックを遅延する複数の第1の遅延素子と、第2のクロックを遅延する複数の第2の遅延素子と、前記第2の遅延素子により順次遅延された前記第2のクロックに従って、前記第1の遅延素子により順次遅延された前記第1のクロックを取り込み、相対的な位相関係を表すデジタル値を保持する複数のデータ保持回路と、を備えることを特徴とするデジタル位相検出器が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、デジタル位相検出器の位相検出分解能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るデジタル位相検出器の実施例を、添付図面を参照して詳述する。
【実施例】
【0024】
図3は本発明に係るデジタル位相検出器の一実施例を概略的に示すブロック回路図である。図3において、参照符号1011〜101nは第1の遅延素子(インバータ)、1021〜102nは第2の遅延素子(インバータ)、1031〜103nはデータ保持回路(フリップフロップ)、104は論理回路、CLKfはフィードバッククロック、そして、CLKrは基準クロックを示している。
【0025】
図3に示されるように、本実施例のデジタル位相検出器は、図1を参照して説明した従来のデジタル位相検出器と同様に、フィードバッククロックCLKfを複数の第1の遅延素子1011〜101nに通過させることで、各第1の遅延素子1011〜101nの遅延時間だけ順次遅延されたフィードバッククロック(クロックFB1〜FBn)を生成する。
【0026】
さらに、本実施例のデジタル位相検出器は、基準クロックCLKrに関しても、基準クロックCLKrを複数の第2の遅延素子1021〜102nに通過させることで、各第2の遅延素子1021〜102nの遅延時間だけ順次遅延された基準クロック(クロックREF1〜REFn)を生成する。
【0027】
データ保持回路1031は、フィードバッククロックCLKfが一段の第1の遅延素子1011で遅延されたクロック(フィードバッククロック)FB1を、基準クロックCLKrが一段の第2の遅延素子1021で遅延されたクロック(基準クロック)REF1のエッジ(立ち上がりエッジ)でラッチする。また、データ保持回路1032は、フィードバッククロックCLKfが二段の第1の遅延素子1011,1012で遅延されたフィードバッククロックFB2を、基準クロックCLKrが二段の第2の遅延素子1021,1022で遅延された基準クロックREF2のエッジでラッチする。
【0028】
さらに、データ保持回路103nは、フィードバッククロックCLKfがn段の第1の遅延素子1011〜101nで遅延されたフィードバッククロックFBnを、基準クロックCLKrがn段の第2の遅延素子1021〜102nで遅延された基準クロックREFnのエッジでラッチする。ここで、本実施例のデジタル位相検出器において、各データ保持回路1031〜103nに供給される基準クロッククロックREF1〜REFnは、入力される基準クロックCLKrが第2の遅延素子1021〜102nで順次遅延されて、それぞれ異なる位相関係になっている。
【0029】
すなわち、本実施例のデジタル位相検出器におけるデータ保持回路1031〜103nは、フィードバッククロックCLKfが第1の遅延素子1011〜101nで順次遅延されたフィードバッククロックFB1〜FBnを、基準クロックCLKrが第2の遅延素子1021〜102nで順次遅延された位相の異なる基準クロッククロックREF1〜REFnのエッジでラッチし、それぞれ各フィードバッククロックFB1〜FBnおよび基準クロックREF1〜REFnの位相差の情報をデジタル信号Q1〜Qnとして論理回路104に出力する。
【0030】
そして、論理回路104では、信号Q1〜Q5における論理の変化、すなわち、信号Q1の論理『0』から信号Q2の論理『1』への変化を検出して対応するデジタルコードを出力する。
【0031】
図4は図3に示すデジタル位相検出器の動作の一例を説明するためのタイミング図である。なお、図4は、便宜的に、5つのデータ保持回路1031〜1035による処理を示している。
【0032】
図4に示されるように、フィードバッククロックCLKfは、複数の第1の遅延素子1011〜1015を順次通過することにより、第1の遅延素子101(1011〜1015)の一段毎の遅延時間が順次加算されたフィードバッククロックFB1〜FB5となって、それぞれデータ保持回路1031〜1035のデータ端子Dに入力される。
【0033】
また、基準クロックCLKrは、複数の第2の遅延素子1021〜1025を順次通過することにより、第2の遅延素子102(1021〜1025)の一段毎の遅延時間が順次加算された基準クロックREF1〜REFnとなって、それぞれデータ保持回路1031〜1035のクロック端子に入力される。
【0034】
各データ保持回路1031〜1035のクロック端子には、それぞれ位相の異なる基準クロックREF1〜REFnが入力され、これら基準クロックREF1〜REFnの立ち上がりタイミングで対応するクロックFB1〜FB5をラッチし、出力Q1〜Q5(QまたはXQ)を論理回路104に出力する。
【0035】
なお、図3のデジタル位相検出器において、第1の遅延素子101(1011〜1015)はインバータとして構成されており、論理を整合させるために、奇数段(1,3,5段目)のデータ保持回路103(1031,1033,1035)の出力Q1,Q3,Q5は正論理の出力Qから取り出され、また、偶数段(2,4段目)のデータ保持回路103(1032,1034)の出力Q2,Q4は負論理の出力XQから取り出されるようになっている。
【0036】
さらに、第2の遅延素子102(1021〜1025)もインバータとして構成されているため、奇数段(1,3,5段目)のデータ保持回路103(1031,1033,1035)のクロック端子には、基準クロックREF1,REF3,REF5の論理を反転した信号が入力されるようになっている。
【0037】
本実施例のデジタル位相検出器において、第1の遅延素子101(1011〜101n)の遅延時間は、第2の遅延素子102(1021〜102n)の遅延時間とは異なるように構成されており、第1の遅延素子101の遅延時間と第2の遅延素子102の遅延時間との差ΔDに応じてデジタル位相検出器の分解能が規定されることになる。ここで、デジタル位相検出器の分解能(各基準クロッククロックREF1〜REFnのエッジでラッチした対応するフィードバッククロックFB1〜FBnの論理変化を検出する精度(時間間隔))は、第1の遅延素子101の遅延時間と第2の遅延素子102の遅延時間との差ΔDが小さいほど高くなり、第1の遅延素子101の遅延時間と第2の遅延素子102の遅延時間との差ΔDが大きいほど低くなる。
【0038】
すなわち、本実施例のデジタル位相検出器は、フィードバッククロックおよび基準クロックをそれぞれ異なる遅延時間を有する第1および第2の遅延素子に入力し、これら第1および第2の遅延素子の遅延時間差分だけ位相の相対関係をずらすことによって位相検出分解能を向上させるものである。
【0039】
ここで、例えば、361個の第1の遅延素子101(1011〜101361)および第2の遅延素子102(1021〜102361)を設け、1周期分の位相差を361の遅延段で分割することができる。
【0040】
このように、第1および第2の遅延素子の遅延時間を制御することにより、位相検出分解能を制御することができる。また、位相検出分解能と第1および第2の遅延素子の段数の積が検出できる位相差の範囲となるが、目的に合わせて位相検出分解能と検出位相差範囲を制御することができる。
【0041】
なお、図3において、仮想線(一点鎖線)Laに示されるように、1段目の第1の遅延素子(インバータ)1011の入力に対して最終段(奇数段目)の第2の遅延素子101nの出力を接続し、デジタル位相検出器をリング発振器として構成することもできる。
【0042】
図5は図3に示すデジタル位相検出器の変形例における動作の一例を説明するためのタイミング図である。
【0043】
前述した第1実施例では、第1の遅延素子101(1011〜101n)の遅延時間と第2の遅延素子102(1021〜102n)の遅延時間との差ΔDを一定としたが、本変形例では、第1の遅延素子101の遅延時間と第2の遅延素子102の遅延時間との差を各遅延段で変化させるようになっている。
【0044】
すなわち、例えば、第1実施例において、第1の遅延素子101の遅延時間と第2の遅延素子102の遅延時間との差(遅延時間差)ΔD1は、361個の遅延段で一周期分の位相差を検出するようになっているが、本変形例では、初段の遅延時間差をΔD1とし、順次遅延段が進むに従って、前段の遅延時間差よりも1割ずつ大きくなる場合を示している。
【0045】
ここで、一周期分の位相差を検出するために必要となる遅延段の数をnとすると、本変形例では、第1の遅延素子101の遅延時間と第2の遅延素子102の遅延時間との遅延時間差ΔDの総和がクロックの1周期分(ΔD1・361)あればよいため、
【0046】
ΔD1+ΔD1・1.1+ΔD1・1.2+……+ΔD1・(1+0.1・(n-1))=ΔD1・361
が成り立つ。これを解くと、n=76となる。すなわち、上記の例では、比較する2つのクロックの位相が近接した領域での位相検出分解能を減らすことなく、遅延段の数を361段から76段に削減することができる。
【0047】
このように、遅延素子の遅延時間を各段で変えることにより、検出位相差範囲を保ったまま特定の位相差での分解能を高めることができる。すなわち、例えば、2つのクロックの位相差が小さいときには、遅延素子の最初の方の遅延時間差を小さくする(少ない段数の第1の遅延素子101の遅延時間と第2の遅延素子102の遅延時間との遅延時間差を小さく設定する)ことにより検出位相差範囲を保ったまま分解能を高めることができる。
【0048】
図6は本発明に係るデジタル位相検出器の他の実施例を概略的に示すブロック回路図である。
【0049】
図6と図3との比較から明らかなように、本実施例のデジタル位相検出器は、図3に示すデジタル位相検出器に対して、各データ保持回路103(1031〜103n)のデータ入力端子およびクロック端子に対して、それぞれバッファ105(1051〜105n),106(1061〜106n)および容量107(1071〜107n),108(1081〜108n)を設けるようにしたものである。
【0050】
すなわち、各段において、インバータ101の出力とデータ保持回路103のデータ入力端子Dとの間にバッファ105を挿入すると共に、インバータ102の出力とデータ保持回路103のクロック端子との間にバッファ106を挿入する。さらに、データ保持回路103のデータ入力端子Dとグランド間に容量107を挿入すると共に、データ保持回路103のクロック端子とグランド間に容量108を挿入するようになっている。
【0051】
ここで、バッファ105および106は、インバータ101および102に対して容量107および108の遅延時間に対する影響を与えないために設けている。また、容量107および108は、遅延段に応じて容量値を変えるようになっており、信号Q1〜Qnにデータが出力するタイミングを調節することを可能にしている。
【0052】
ここで、例えば、各データ保持回路103のデータ入力端子Dおよびクロック端子に対して複数の容量107および108を設け、ヒューズやスイッチ素子等によりそれら複数の容量107および108の接続を調整して各段の第1および第2の遅延素子の遅延時間のトリミングを行うことができる。さらに、容量107および108に対して、それぞれスイッチ手段(トランジスタ)を直列に設け、外部からスイッチのオン・オフ制御を行って各段の第1および第2の遅延素子の遅延時間を変化させるように構成することもできる。これは、従来より知られている様々な手法を適用することで実現される。
【0053】
そして、第1の遅延素子101の遅延時間および第2の遅延素子102の遅延時間は、それぞれ任意に制御することができ、第1の遅延素子の遅延時間、および/または、第2の遅延素子の遅延時間を各段においてそれぞれ異なるように制御したり、或いは、各段における第1の遅延素子の遅延時間と第2の遅延素子の遅延時間との差を所定の比率で変化(増加)させるように構成してもよい。
【0054】
図7は本発明に係るデジタル位相検出器が適用される一例の全体構成を概略的に示すブロック図であり、全デジタルPLL(All Digital Phase-locked loop)回路の例を示すものである。
【0055】
図7に示されるように、全デジタルPLL回路は、デジタル制御発振器(DCO:Digitally Controlled Oscillator)205の出力を目的の逓倍数分だけ分周器204で分周し、その出力クロックCLKfと基準クロックCLKrを本発明に係るデジタル位相検出器(DPD:Digital Phase Detector)201により位相比較して位相差情報をデジタル化する。同時に、デジタル周波数検出器(DFD:Digital Frequency Detector)202で周波数情報をデジタル化し、両デジタル信号をデジタルフィルタ(DF:Digital Filter)203によりデジタル制御発振器205の制御信号を生成して、デジタル制御発振器205の出力信号が基準クロックCLKrと同期するよう制御する。
【0056】
図8は本発明に係るデジタル位相検出器が適用される他の例の全体構成を概略的に示すブロック図であり、ロック判定回路の例を示すものである。
【0057】
図8に示されるように、ロック判定回路は、PLL回路301の出力クロックCLKfと基準クロックCLKrを本発明に係るデジタル位相検出器(DPD)302に入力して位相比較する。そして、デジタル位相検出器302の出力コードCoから、上記2つのクロックCLKfおよびCLKrが所望の位相差の範囲内に収まっていればロックしたことを示す信号を後段の論理回路303から出力する。このロック判定回路は、例えば、試験時において、クロックがロックしたかどうかを判定するために使用することができる。
【0058】
また、同じ回路構成により、デジタル位相検出器の出力コードを所望の時間だけ蓄積することによって、位相ジッタ検出回路として使うこともできる。
【0059】
このように、本発明に係るデジタル位相検出器は、全デジタルPLL回路だけでなく、様々な回路に対して適用することが可能である。
【0060】
以上、説明したように本発明のデジタル位相比較器によれば、遅延素子の遅延時間により位相検出限界が制限されることのなく、微小な位相も検出可能なデジタル位相比較器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るデジタル位相検出器は、全デジタルPLL回路を始めとして、試験時に使用するロック判定回路や他の様々な回路に対して幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】従来のデジタル位相検出器の一例を概略的に示すブロック回路図である。
【図2】図1に示すデジタル位相検出器の動作の一例を説明するためのタイミング図である。
【図3】本発明に係るデジタル位相検出器の一実施例を概略的に示すブロック回路図である。
【図4】図3に示すデジタル位相検出器の動作の一例を説明するためのタイミング図である。
【図5】図3に示すデジタル位相検出器の変形例における動作の一例を説明するためのタイミング図である。
【図6】本発明に係るデジタル位相検出器の他の実施例を概略的に示すブロック回路図である。
【図7】本発明に係るデジタル位相検出器が適用される一例の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】本発明に係るデジタル位相検出器が適用される他の例の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
101,1011〜101n 第1の遅延素子(遅延素子:インバータ)
102,1021〜102n 第2の遅延素子(インバータ)
103,1031〜103n データ保持回路(フリップフロップ)
104,303 論理回路
105(1051〜105n),106(1061〜106n) バッファ
107(1071〜107n),108(1081〜108n) 容量
201,302 デジタル位相検出器
202 デジタル周波数検出器
203 デジタルフィルタ
204 分周器
205 デジタル制御発振器
301 PLL回路
CLKf フィードバッククロック(クロック)
CLKr 基準クロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロックを遅延する複数の第1の遅延素子と、
第2のクロックを遅延する複数の第2の遅延素子と、
前記第2の遅延素子により順次遅延された前記第2のクロックに従って、前記第1の遅延素子により順次遅延された前記第1のクロックを取り込み、相対的な位相関係を表すデジタル値を保持する複数のデータ保持回路と、を備えることを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル位相検出器において、前記第1の遅延素子の遅延時間を制御するようにしたことを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項3】
請求項2に記載のデジタル位相検出器において、前記第1の遅延素子の遅延時間を各段においてそれぞれ異なるようにしたことを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項4】
請求項1に記載のデジタル位相検出器において、前記第2の遅延素子の遅延時間を制御するようにしたことを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項5】
請求項4に記載のデジタル位相検出器において、前記第2の遅延素子の遅延時間を各段においてそれぞれ異なるようにしたことを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項6】
請求項1に記載のデジタル位相検出器において、前記第1の遅延素子の遅延時間および前記第2遅延素子の遅延時間を制御するようにしたことを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項7】
請求項6に記載のデジタル位相検出器において、前記第1の遅延素子の遅延時間および前記第2遅延素子の遅延時間を各段においてそれぞれ異なるようにしたことを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項8】
請求項2〜7の何れか1項に記載のデジタル位相検出器において、各段における前記第1の遅延素子の遅延時間と前記第2遅延素子の遅延時間との差を所定の比率で変化させるようにしたことを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項9】
請求項1に記載のデジタル位相検出器において、前記データ保持回路はフリップフロップであり、前記第2の遅延素子により遅延された前記第2のクロックは、該フリップフロップのクロック端子に入力され、且つ、前記第1の遅延素子により遅延された前記第1のクロックは、該フリップフロップのデータ端子に入力されることを特徴とするデジタル位相検出器。
【請求項10】
請求項1に記載のデジタル位相検出器において、該デジタル位相検出器は、リング発振器として構成されることを特徴とするデジタル位相検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−110370(P2007−110370A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298491(P2005−298491)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】