説明

データスライサ

【課題】入力信号を適切にスライス可能なデータスライサを実現する。
【解決手段】現在の入力電圧信号の最大値と最小値とだけではなく、入力電圧信号に含まれるヘッダパターンにおける平均電圧と、ヘッダパターン検出完了時のピーク電圧・ボトム電圧とにも基づいて、スライスレベルを算出する。具体的には、スライスレベルをS15、ヘッダパターンの平均電圧をS6、ヘッダパターン検出完了時のピーク電圧をS7、ヘッダパターン検出完了時のボトム電圧をS8、最大電圧検出・保持部に保持された最大電圧をS10、最小電圧検出・保持部に保持された最小電圧をS11として、スライスレベルの電圧値を、S15=S6+(S10+S11)/2−(S7+S8)/2と算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力信号をあるレベルでスライスして二値化するデータスライサに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変調(Frequency Modulation)方式を採用したデジタル無線通信用LSI(Large Scale Integration)の復調器においては、周波数−電圧変換等を行った信号に対して“0”レベルと“1”レベルとを判定し、二値化を行うデータスライサが用いられる。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−32958号公報
【特許文献2】特開2001−358780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば上記特許文献1においては、その図1乃至図3に示されているように、入力信号の最大値と最小値との中間値を用いてスライスレベルを決定する構成が示されている。
【0006】
しかし、このようなデータスライサにおいては、常に、入力信号の最大値と最小値との中間値を用いてスライスレベルを決定しているため、以下のような問題があった。
【0007】
すなわち、入力信号が長期間にわたって“0”レベルまたは“1”レベルのいずれかを出力し続けている場合、最大値と最小値とがともに“0”レベルまたは“1”レベルであると検出されてしまい、その中間値たるスライスレベルも“0”レベルまたは“1”レベルに張り付いてしまうことがあった。スライスレベルが“0”レベルまたは“1”レベルに張り付いてしまうと、入力信号が再度振れだしたときに、入力信号を適切にスライスすることができなくなってしまう。
【0008】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、入力信号を適切にスライス可能なデータスライサを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、入力電圧信号に含まれるヘッダパターンを検出するパターン検出部と、前記ヘッダパターン中のピーク電圧を検出し、保持するピーク電圧検出・保持部と、前記ヘッダパターンの検出完了時に前記ピーク電圧検出・保持部に保持されている前記ピーク電圧を保持するピーク電圧保持部と、前記ヘッダパターン中のボトム電圧を検出し、保持するボトム電圧検出・保持部と、前記ヘッダパターンの検出完了時に前記ボトム電圧検出・保持部に保持されている前記ボトム電圧を保持するボトム電圧保持部と、前記入力電圧信号中の前記ヘッダパターンに後続する部分における最大電圧を検出し、保持する最大電圧検出・保持部と、前記後続する部分における最小電圧を検出し、保持する最小電圧検出・保持部と、前記ピーク電圧保持部に保持された前記ピーク電圧および前記ボトム電圧保持部に保持された前記ボトム電圧の平均電圧たる、第1平均電圧を生成する第1平均電圧生成部と、前記最大電圧検出・保持部に保持された前記最大電圧および前記最小電圧検出・保持部に保持された前記最小電圧の平均電圧たる、第2平均電圧を生成する第2平均電圧生成部と、前記ヘッダパターン中の少なくとも一部における平均電圧たる、第3平均電圧を算出する平均電圧算出部と、算出された前記第3平均電圧を保持する平均電圧保持部と、前記第1乃至第3平均電圧を加減算することによりスライスレベルを算出する算出部と、前記入力電圧信号と前記スライスレベルとの比較を行い、比較結果に応じて出力を活性化する比較器とを備えるデータスライサである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、算出部が第1乃至第3平均電圧を加減算することによりスライスレベルを算出する。ヘッダパターンに後続する部分における最大電圧・最小電圧に基づく第2平均電圧だけでなく、ヘッダパターンにおけるピーク電圧・ボトム電圧に基づく第1平均電圧、および、ヘッダパターン中の少なくとも一部における平均電圧たる第3平均電圧をも用いて、スライスレベルを算出するので、ヘッダパターンに後続する部分が長期間にわたって“0”レベルまたは“1”レベルである場合にも、スライスレベルが“0”レベルまたは“1”レベルに張り付いてしまうことはない。よって、入力信号を適切にスライス可能なデータスライサが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施の形態1>
本実施の形態は、現在の入力電圧信号の最大値と最小値とだけではなく、入力電圧信号に含まれるヘッダパターンにおける平均電圧と、ヘッダパターン検出完了時のピーク電圧・ボトム電圧にも基づいてスライスレベルを算出するデータスライサである。なお、本実施の形態においては、デジタル無線通信用LSIの復調器内で使用されるデータスライサを想定して説明を行うが、本発明に係るデータスライサは、デジタル無線通信用だけでなく、データパケット通信を行う信号処理回路一般に適用可能である。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るデータスライサの構成を示すブロック図である。図1に示すように、このデータスライサは、ノードN1,N2、パターン検出部PT、ピーク電圧検出・保持部PK、ボトム電圧検出・保持部BT、平均電圧算出部AV、最大電圧検出・保持部MX、最小電圧検出・保持部MN、ピーク電圧保持部SH1、ボトム電圧保持部SH2、平均電圧保持部SH3、第1平均電圧生成部GN1、第2平均電圧生成部GN2、減算器SB、加算器ADおよび比較器CP1を含んでいる。このデータスライサにおいては、ノードN1に無線受信した入力電圧信号Vinが与えられ、スライス後の信号がノードN2から出力電圧信号Voutとして出力される。
【0013】
また、図2〜図8は、各部の詳細構成を示す回路図である。すなわち、図2はピーク電圧検出・保持部PKの回路図であり、ピーク電圧検出・保持部PKは、演算増幅器AP1、ダイオードD1およびコンデンサC1を含んでいる。ダイオードD1のアノードには演算増幅器AP1の出力が与えられ、ダイオードD1のカソードにはコンデンサC1の一端が接続される。コンデンサC1の他端には、接地電位GNDが与えられる。演算増幅器AP1の正入力端には入力電圧信号Vinが信号S1として与えられ、演算増幅器AP1の負入力端にはダイオードD1のカソードにおける信号S3がフィードバックされる。信号S3はピーク電圧検出・保持部PKからの出力ともなる。
【0014】
図3はボトム電圧検出・保持部BTの回路図であり、ボトム電圧検出・保持部BTは、演算増幅器AP2、ダイオードD2およびコンデンサC2を含んでいる。ダイオードD2のカソードには演算増幅器AP2の出力が与えられ、ダイオードD2のアノードにはコンデンサC2の一端が接続される。コンデンサC2の他端には、接地電位GNDが与えられる。演算増幅器AP2の正入力端には入力電圧信号Vinが信号S1として与えられ、演算増幅器AP2の負入力端にはダイオードD2のアノードにおける信号S4がフィードバックされる。信号S4はボトム電圧検出・保持部BTからの出力ともなる。
【0015】
図4はピーク電圧保持部SH1の回路図であり、ピーク電圧保持部SH1は、単極単投スイッチSW1およびコンデンサC3を含んでいる。単極単投スイッチSW1の単極には、ピーク電圧検出・保持部PKからの信号S3が与えられ、単投にはコンデンサC3の一端が接続される。コンデンサC3の他端には、接地電位GNDが与えられる。コンデンサC3の一端における電位は、ピーク電圧保持部SH1から出力される信号S7となる。
【0016】
図5はボトム電圧保持部SH2の回路図であり、ボトム電圧保持部SH2は、単極単投スイッチSW2およびコンデンサC4を含んでいる。単極単投スイッチSW2の単極には、ボトム電圧検出・保持部BTからの信号S4が与えられ、単投にはコンデンサC4の一端が接続される。コンデンサC4の他端には、接地電位GNDが与えられる。コンデンサC4の一端における電位は、ボトム電圧保持部SH2から出力される信号S8となる。
【0017】
図6は平均電圧保持部SH3の回路図であり、平均電圧保持部SH3は、単極単投スイッチSW3およびコンデンサC5を含んでいる。単極単投スイッチSW3の単極には、平均電圧算出部AVからの信号S2が与えられ、単投にはコンデンサC5の一端が接続される。コンデンサC5の他端には、接地電位GNDが与えられる。コンデンサC5の一端における電位は、平均電圧保持部SH3から出力される信号S6となる。
【0018】
図7は最大電圧検出・保持部MXの回路図であり、最大電圧検出・保持部MXは、単極単投スイッチSW4、演算増幅器AP3、ダイオードD3およびコンデンサC6を含んでいる。単極単投スイッチSW4の単極には、入力電圧信号Vinが信号S1として与えられ、単投には演算増幅器AP3の正入力端が接続される。ダイオードD3のアノードには演算増幅器AP3の出力が与えられ、ダイオードD3のカソードにはコンデンサC6の一端が接続される。コンデンサC6の他端には、接地電位GNDが与えられる。演算増幅器AP3の負入力端にはダイオードD3のカソードにおける信号S10がフィードバックされる。信号S10は最大電圧検出・保持部MXからの出力ともなる。
【0019】
図8は最小電圧検出・保持部MNの回路図であり、最小電圧検出・保持部MNは、単極単投スイッチSW5、演算増幅器AP4、ダイオードD4およびコンデンサC7を含んでいる。単極単投スイッチSW5の単極には、入力電圧信号Vinが信号S1として与えられ、単投には演算増幅器AP4の正入力端が接続される。ダイオードD4のカソードには演算増幅器AP4の出力が与えられ、ダイオードD4のアノードにはコンデンサC7の一端が接続される。コンデンサC7の他端には、接地電位GNDが与えられる。演算増幅器AP4の負入力端にはダイオードD4のアノードにおける信号S11がフィードバックされる。信号S11は最小電圧検出・保持部MNからの出力ともなる。
【0020】
図9は、入力電圧信号Vin、理想的なスライサ出力および出力電圧信号Voutを示すタイミングチャートである。図9を用いつつ、本実施の形態に係るデータスライサの動作について説明する。
【0021】
なお、入力電圧信号Vinには、データパケットごとの信号初頭に定型信号たるヘッダパターンが含まれている。図9においては、このヘッダ部分を期間T1で示している。また、ヘッダパターンの後半には、第1論理値たる“1”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した部分と、第2論理値たる“0”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した部分とが、交互に現れる交番信号部が含まれている。図9においては、この交番信号部を期間T2で示している。
【0022】
まず、パターン検出部PTは、入力電圧信号Vinに含まれるヘッダパターンを検出する。パターン検出部PTには、復調に伴って用いられる一般的なパターン検出回路を採用すればよい。パターン検出部PTは、ヘッダパターンの検出完了時(図9における時点P1)にワンショットパルスの信号S5を、ピーク電圧保持部SH1、ボトム電圧保持部SH2および平均電圧保持部SH3に出力し、かつ、ヘッダパターン検出完了を境に活性化してその信号値を持続する信号S9を、最大電圧検出・保持部MXおよび最小電圧検出・保持部MNに出力する。
【0023】
ピーク電圧検出・保持部PKは、ヘッダパターン中のピーク電圧を検出し、コンデンサC1にて、その検出したピーク電圧を信号S3として保持する。ピーク電圧の検出は、ヘッダパターン初頭はもちろん、交番信号部T2においても行われるので、最終的なピーク電圧の検出は、入力電圧信号Vinの“1”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行われることとなる。なお、コンデンサC1の容量値を適切に選択することにより、図9に示すように、ピーク電圧検出・保持部PKにて保持中のピーク電圧の信号S3の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる。ピーク電圧の信号S3の絶対値が時間経過とともに減衰すれば、ヘッダパターン後半におけるピーク電圧値がそれ以前のピーク電圧値より弱まった場合であっても、直近のピーク電圧値を適切に捉えることができる。
【0024】
ボトム電圧検出・保持部BTは、ヘッダパターン中のボトム電圧を検出し、コンデンサC2にて、その検出したボトム電圧を信号S4として保持する。ボトム電圧の検出は、ヘッダパターン初頭はもちろん、交番信号部T2においても行われるので、最終的なボトム電圧の検出は、入力電圧信号Vinの“0”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行われることとなる。なお、コンデンサC2の容量値を適切に選択することにより、図9に示すように、ボトム電圧検出・保持部BTにて保持中のボトム電圧の信号S4の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる。ボトム電圧の信号S4の絶対値が時間経過とともに減衰すれば、ヘッダパターン後半におけるボトム電圧値がそれ以前のボトム電圧値より弱まった場合であっても、直近のボトム電圧値を適切に捉えることができる。
【0025】
平均電圧算出部AVは、ヘッダパターン中の交番信号部T2における平均電圧を算出し、その算出値を信号S2として出力する。この平均電圧算出部AVには、RC積分器等の一般的な積分器を採用すればよい。
【0026】
ピーク電圧保持部SH1は、ヘッダパターンの検出完了時にピーク電圧検出・保持部PKに保持されているピーク電圧を保持する。具体的には、パターン検出部PTからのワンショットパルス信号S5を受けることにより、ピーク電圧保持部SH1内の単極単投スイッチSW1が一時的にオンし、ピーク電圧検出・保持部PKからの信号S3を受けて、ヘッダパターンの検出完了時のピーク電圧をコンデンサC3が保持する。なお、コンデンサC3の容量値を適切に選択することにより、図9に示すように、検出完了時のピーク電圧の信号S7を長期間に亘って安定して保持させることができる。
【0027】
ボトム電圧保持部SH2は、ヘッダパターンの検出完了時にボトム電圧検出・保持部BTに保持されているボトム電圧を保持する。具体的には、パターン検出部PTからのワンショットパルス信号S5を受けることにより、ボトム電圧保持部SH2内の単極単投スイッチSW2が一時的にオンし、ボトム電圧検出・保持部BTからの信号S4を受けて、ヘッダパターンの検出完了時のボトム電圧をコンデンサC4が保持する。なお、コンデンサC4の容量値を適切に選択することにより、図9に示すように、検出完了時のボトム電圧の信号S8を長期間に亘って安定して保持させることができる。
【0028】
平均電圧保持部SH3は、ヘッダパターンの検出完了時に平均電圧算出部AVから出力される平均電圧を保持する。具体的には、パターン検出部PTからのワンショットパルス信号S5を受けることにより、平均電圧保持部SH3内の単極単投スイッチSW3が一時的にオンし、平均電圧算出部AVからの信号S2を受けて、ヘッダパターンの検出完了時の平均電圧をコンデンサC5が保持する。なお、コンデンサC5の容量値を適切に選択することにより、図9に示すように、検出完了時の平均電圧の信号S6を長期間に亘って安定して保持させることができる。
【0029】
最大電圧検出・保持部MXは、入力電圧信号Vin中のヘッダパターンに後続する部分における最大電圧を検出し、保持する。具体的には、ヘッダパターン検出完了を境に活性化した信号S9をパターン検出部PTから受けることにより、最大電圧検出・保持部MX内の単極単投スイッチSW4がオンする。これにより、最大電圧検出・保持部MXは、ヘッダパターンに後続する部分の最大電圧を検出し、コンデンサC6にて、その検出した最大電圧を信号S10として保持する。
【0030】
なお、コンデンサC6の容量値を適切に選択することにより、図9に示すように、最大電圧検出・保持部MXにて保持中の最大電圧の信号S10の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる(信号S10は時間経過とともに信号S7に近づいている)。最大電圧の信号S10の絶対値が時間経過とともに減衰すれば、ヘッダパターンに後続する部分における最大電圧の絶対値が減少方向に徐々にシフトする場合であっても、検出・保持された最大電圧値と実際の最大電圧値との乖離を抑制可能である。
【0031】
また、最大電圧の検出における最大電圧検出・保持部MXの応答時間を、ピーク電圧の検出におけるピーク電圧検出・保持部PKの応答時間に比して遅くしておけばよい。応答時間の調節は、ピーク電圧検出・保持部PK内の演算増幅器AP1および最大電圧検出・保持部MX内の演算増幅器AP3に含まれる、各差動増幅回路のトランジスタ特性等を調節することにより行える。
【0032】
最小電圧検出・保持部MNは、入力電圧信号Vin中のヘッダパターンに後続する部分における最小電圧を検出し、保持する。具体的には、ヘッダパターン検出完了を境に活性化した信号S9をパターン検出部PTから受けることにより、最小電圧検出・保持部MN内の単極単投スイッチSW5がオンする。これにより、最大電圧検出・保持部MNは、ヘッダパターンに後続する部分の最小電圧を検出し、コンデンサC7にて、その検出した最小電圧を信号S11として保持する。
【0033】
なお、コンデンサC7の容量値を適切に選択することにより、図9に示すように、最小電圧検出・保持部MNにて保持中の最小電圧の信号S11の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる。最小電圧の信号S11の絶対値が時間経過とともに減衰すれば、ヘッダパターンに後続する部分における最小電圧の絶対値が減少方向に徐々にシフトする場合であっても、検出・保持された最小電圧値と実際の最小電圧値との乖離を抑制可能である。
【0034】
また、最小電圧の検出における最小電圧検出・保持部MNの応答時間を、ボトム電圧の検出におけるボトム電圧検出・保持部BTの応答時間に比して遅くしておけばよい。応答時間の調節は、ボトム電圧検出・保持部BT内の演算増幅器AP2および最小電圧検出・保持部MN内の演算増幅器AP4に含まれる、各差動増幅回路のトランジスタ特性等を調節することにより行える。
【0035】
第1平均電圧生成部GN1は、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)およびボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)を受けて、両者の平均電圧を信号S13として生成する。具体的には例えば、信号の絶対値を1/2倍にする抵抗分割回路を第1平均電圧生成部GN1内の信号S7およびS8の入力部にそれぞれ設け、両抵抗分割回路の出力を加算する演算増幅器を用いた電圧加算回路を第1平均電圧生成部GN1内の両抵抗分割回路の後段に設けることで、ピーク電圧およびボトム電圧の平均電圧生成が行える。すなわち、信号S13の電圧絶対値はS13=(S7+S8)/2と算出される。
【0036】
第2平均電圧生成部GN2は、最大電圧検出・保持部MXに保持された最大電圧(信号S10)および最小電圧検出・保持部MNに保持された最小電圧(信号S11)を受けて、両者の平均電圧を信号S12として生成する。具体的には例えば、信号の絶対値を1/2倍にする抵抗分割回路を第2平均電圧生成部GN2内の信号S10およびS11の入力部にそれぞれ設け、両抵抗分割回路の出力を加算する演算増幅器を用いた電圧加算回路を第2平均電圧生成部GN2内の両抵抗分割回路の後段に設けることで、最大電圧および最小電圧の平均電圧生成が行える。すなわち、信号S12の電圧絶対値はS12=(S10+S11)/2と算出される。
【0037】
減算器SBおよび加算器ADは、平均電圧たる信号S6,S12,S13を加減算することによりスライスレベルを算出する算出部として機能する。具体的には、減算器SBは、平均電圧たる信号S13を負値に反転し、信号S14として出力する。このような減算器SBは、例えば入力信号を−1倍する演算増幅器を用いた電圧乗算回路により構成できる。
【0038】
また、加算器ADは、信号S6,S12,S14を加算し、加算結果をスライスレベルたる信号S15として出力する。このような加算器ADは、信号S6,S12,S14の各電圧信号を加算する演算増幅器を用いた電圧加算回路により構成できる。
【0039】
すなわち、信号S15の電圧絶対値はS15=S6+(S10+S11)/2−(S7+S8)/2と算出される。
【0040】
比較器CP1は、入力電圧信号Vinとスライスレベルたる信号S15との比較を行い、比較結果に応じて、その出力たる信号S16を活性化する。この信号S16が出力電圧信号Voutとなる。
【0041】
これにより、図9に示すように、入力電圧信号Vin全体が時間経過とともに徐々に低電圧方向にシフトしてゆく場合であっても、スライスレベルの決定因子に、ヘッダパターンに後続する部分の最小電圧(信号S11)が含まれているので、入力電圧信号Vinの電圧シフトにスライスレベルを追従させることができ、理想スライサ出力とほぼ同様の出力電圧信号Voutを得ることができる。
【0042】
もちろん、図9の場合とは逆に、入力電圧信号Vin全体が時間経過とともに徐々に高電圧方向にシフトしてゆく場合であっても、スライスレベルの決定因子に、ヘッダパターンに後続する部分の最大電圧(信号S10)が含まれているので、入力電圧信号Vinの電圧シフトにスライスレベルを追従させることができ、理想スライサ出力とほぼ同様の出力電圧信号Voutを得ることができる。
【0043】
また、図9のようにヘッダパターンに後続する部分が頻繁に“0”レベルと“1”レベルとを往来するのではなく、長期間にわたって“0”レベルまたは“1”レベルのいずれかに張り付いてしまう場合にも、本願発明の場合は上記特許文献1および2の場合と異なり、スライスレベルを適切に保つことができる。本願発明の場合は、スライスレベルの決定因子に、ヘッダパターン中の交番信号部T2における検出完了時の平均電圧(信号S6)と、ヘッダパターンのピーク電圧およびボトム電圧の平均電圧(信号S13)とが含まれている。よって、ヘッダパターンに後続する部分の最大電圧および最小電圧の平均電圧(信号S12)が、“0”レベルまたは“1”レベルに張り付いてしまう場合であっても、信号S6およびS13が所定の電圧値を確保するので、スライスレベルが“0”レベルまたは“1”レベルに張り付いてしまうことはない。
【0044】
すなわち、本実施の形態に係るデータスライサによれば、減算器SBおよび加算器ADで構成される算出部が平均電圧たる信号S6,S12,S13を加減算することによりスライスレベルたる信号S15を算出する。ヘッダパターンに後続する部分における最大電圧・最小電圧に基づく平均電圧(信号S12)だけでなく、ヘッダパターンにおけるピーク電圧・ボトム電圧に基づく平均電圧(信号S13)、および、ヘッダパターン中の少なくとも一部における平均電圧たる平均電圧(信号S6)をも用いて、スライスレベルを算出するので、ヘッダパターンに後続する部分が長期間にわたって“0”レベルまたは“1”レベルである場合にも、スライスレベルが“0”レベルまたは“1”レベルに張り付いてしまうことはない。よって、入力信号を適切にスライス可能なデータスライサが実現できる。
【0045】
また、本実施の形態に係るデータスライサによれば、最大電圧検出・保持部MXにて保持中の最大電圧の絶対値、および、最小電圧検出・保持部MNにて保持中の最小電圧の絶対値は、減衰する。よって、スライスレベルへの最大電圧および最小電圧の影響を徐々に緩和することができ、スライスレベルを適切に維持することができる。
【0046】
すなわち、例えば図9のように、入力電圧信号Vin全体が時間経過とともに徐々に低電圧方向にシフトしてゆく場合、最大電圧検出・保持部MXにて保持された最大電圧の絶対値が減衰しなければ、検出・保持された最大電圧を示す信号S10の値と実際の最大電圧値との乖離が大きくなるが、最大電圧の絶対値が減衰すれば、このような乖離を抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態に係るデータスライサによれば、最大電圧の検出における最大電圧検出・保持部MXの応答時間は、ピーク電圧の検出におけるピーク電圧検出・保持部PKの応答時間に比して遅く、最小電圧の検出における最小電圧検出・保持部MNの応答時間は、ボトム電圧の検出におけるボトム電圧検出・保持部BTの応答時間に比して遅い。“0”レベルと“1”レベルとが短期間内に混在するヘッダパターンにおけるピーク電圧およびボトム電圧の正確な検出には、早い応答時間が要求され、一方、ヘッダパターンに後続する部分における最大電圧および最小電圧の検出には、入力電圧信号Vinに含まれたノイズ成分を拾いにくくするため、遅い応答時間が要求される。よって、最大電圧および最小電圧の検出時にノイズ成分の影響を排除しやすい。
【0048】
また、本実施の形態に係るデータスライサによれば、ピーク電圧検出・保持部PKにおけるピーク電圧の検出は、入力電圧信号Vinの“1”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行い、ボトム電圧検出・保持部MNにおけるボトム電圧の検出は、入力電圧信号Vinの“0”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行う。よって、ヘッダパターンにノイズが混入して、一時的に入力電圧信号Vinが急上昇または急下降する場合であっても、ピーク電圧およびボトム電圧の検出時にノイズ成分の影響を排除しやすい。
【0049】
<実施の形態2>
本実施の形態は、実施の形態1に係るデータスライサの変形例であって、実施の形態1における減衰後の最大電圧の絶対値を、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧の絶対値以上に保ち、減衰後の最小電圧の絶対値を、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧の絶対値以上に保つようにしたものである。
【0050】
図10は、本実施の形態に係るデータスライサを示す図である。なお、図10においては、本実施の形態において追加された比較器CP2,CP3、および、単極双投スイッチSW6,SW7についての説明を行うために、最大電圧検出・保持部MX、最小電圧検出・保持部MN、ピーク電圧保持部SH1、ボトム電圧保持部SH2、第1平均電圧生成部GN1および第2平均電圧生成部GN2付近の構成のみを示し、他の構成要素の表示は省略している。しかし、比較器CP2,CP3、単極双投スイッチSW6,SW7および必要な結線の追加以外は、本実施の形態に係るデータスライサは図1の装置構成と同じである。
【0051】
図10に示すように、本実施の形態に係るデータスライサにおいては、最大電圧検出・保持部MXからの信号S10とピーク電圧保持部SH1からの信号S7とが、比較器CP2に入力される。また、最大電圧検出・保持部MXからの信号S10とピーク電圧保持部SH1からの信号S7とはそれぞれ、単極双投スイッチSW6の一投および他投に与えられる。
【0052】
比較器CP2は、信号S10の電圧絶対値と信号S7の電圧絶対値とを比較し、信号S10の電圧絶対値が大きければ、単極双投スイッチSW6が信号S10を信号S19として第2平均電圧生成部GN2に与えるように、信号S17を出力する。また、信号S10の電圧絶対値が信号S7の電圧絶対値以下であれば、単極双投スイッチSW6が信号S7を信号S19として第2平均電圧生成部GN2に与えるように、比較器CP2は信号S17を出力する。
【0053】
また、最小電圧検出・保持部MNからの信号S11とボトム電圧保持部SH2からの信号S8とが、比較器CP3に入力される。また、最小電圧検出・保持部MNからの信号S11とボトム電圧保持部SH2からの信号S8とはそれぞれ、単極双投スイッチSW7の一投および他投に与えられる。
【0054】
比較器CP3は、信号S11の電圧絶対値と信号S8の電圧絶対値とを比較し、信号S11の電圧絶対値が大きければ、単極双投スイッチSW7が信号S11を信号S20として第2平均電圧生成部GN2に与えるように、信号S18を出力する。また、信号S11の電圧絶対値が信号S8の電圧絶対値以下であれば、単極双投スイッチSW7が信号S8を信号S20として第2平均電圧生成部GN2に与えるように、比較器CP3は信号S18を出力する。
【0055】
このように、本実施の形態においては、減衰後の最大電圧(信号S10)の絶対値を、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)の絶対値以上に保ち、減衰後の最小電圧(信号S11)の絶対値を、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)の絶対値以上に保っている。より具体的には、減衰後の最大電圧(信号S10)の絶対値が、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)の絶対値に達した場合は、単極双投スイッチSW6によって、最大電圧(信号S10)に代わって、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)を第2平均電圧生成部GN2に与え、減衰後の最小電圧(信号S11)の絶対値が、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)の絶対値に達した場合は、単極双投スイッチSW7によって、最小電圧(信号S11)に代わって、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)を第2平均電圧生成部GN2に与える。
【0056】
図11は、本実施の形態に係るデータスライサの入力電圧信号、理想的なスライサ出力および出力電圧信号を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートにおいては、ヘッダパターンに後続する部分が、長期間にわたって“0”レベルまたは“1”レベルのいずれかに張り付いてしまう場合を例に採っている。すなわち、図11ではヘッダパターンの検出完了後に、入力電圧信号Vinがまず“1”レベルに張り付き、その後、“0”レベルに張り付いた場合を示している。
【0057】
入力電圧信号Vinが最初に“1”レベルに張り付いている間、最小電圧を示す信号S11の絶対値は、徐々に減衰する。そして、ついには信号S11の絶対値は、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)の絶対値に達する(図11における時点P2)。この場合、単極双投スイッチSW7によって、最小電圧(信号S11)に代わって、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)が第2平均電圧生成部GN2に与えられる。よって、その間は、S15=S6+(S10+S11)/2−(S7+S8)/2で算出されるスライスレベルは、S6+(S10+S8)/2−(S7+S8)/2=S6+(S10−S7)/2として算出される。
【0058】
次に、入力電圧信号Vinが“1”レベルから遷移して“0”レベルに張り付いた後は、最大電圧を示す信号S10の絶対値は、徐々に減衰する。そして、ついには信号S10の絶対値は、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)の絶対値に達する(図11における時点P3)。この場合、単極双投スイッチSW6によって、最大電圧(信号S10)に代わって、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)が第2平均電圧生成部GN2に与えられる。よって、その間は、S15=S6+(S10+S11)/2−(S7+S8)/2で算出されるスライスレベルは、S6+(S7+S11)/2−(S7+S8)/2=S6+(S11−S8)/2として算出される。
【0059】
このように、本実施の形態に係るデータスライサによれば、減衰後の最大電圧(信号S10)の絶対値は、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)の絶対値以上に保たれ、減衰後の最小電圧(信号S11)の絶対値は、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)の絶対値以上に保たれる。よって、減衰過剰によりスライスレベルが変動することはなく、スライスレベルを適切に維持することができる。
【0060】
すなわち、本実施の形態に係るデータスライサによれば、減衰後の最大電圧(信号S10)の絶対値が、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)の絶対値に達した場合、および、減衰後の最小電圧(信号S11)の絶対値が、ボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)の絶対値に達した場合は、第2平均電圧生成部GN2に、最大電圧および最小電圧に代わって、ピーク電圧およびボトム電圧が与えられる。よって、スライスレベルを適切に維持することができる。
【0061】
<実施の形態3>
本実施の形態も、実施の形態1および2に係るデータスライサの変形例であって、入力電圧信号Vinに対してアナログ−デジタル変換を行った後に、そのデジタル値に対して実施の形態1における各信号処理を行うものである。上記実施の形態1および2に記載のような、アナログ信号処理に限らずとも、デジタル信号処理によっても、上記実施の形態1および2に係る各発明と同様の効果が得られる。
【0062】
図12は、本実施の形態に係るデータスライサの構成を示すブロック図である。このデータスライサにおいても図1のデータスライサと同様、ノードN1に無線受信した入力電圧信号Vinが与えられ、スライス後の信号がノードN2から出力電圧信号Voutとして出力される。図12に示すように、このデータスライサは、アナログ信号たる入力電圧信号Vinをデジタル値に変換するAD(Analog to Digital)コンバータCVを有しており、ADコンバータCVには入力電圧信号Vinが信号S1として与えられる。ADコンバータCVは、入力電圧信号Vinの値に対応するデジタル値を信号S1aとして出力する。なお、ADコンバータCVのサンプリングレートやビット分解能の値に、特に制限はない。
【0063】
また、このデータスライサは、図1のデータスライサと同様の、ピーク電圧検出・保持部PK、ボトム電圧検出・保持部BT、平均電圧算出部AV、最大電圧検出・保持部MX、最小電圧検出・保持部MN、ピーク電圧保持部SH1、ボトム電圧保持部SH2、平均電圧保持部SH3、第1平均電圧生成部GN1、第2平均電圧生成部GN2、減算器SBおよび比較器CP1を含んでいる。そして、このデータスライサは、図1におけるパターン検出部PTおよび加算器ADに代わって、パターン検出部PTa、第1および第2加算器AD1,AD2を備え、上記の各構成要素に加えて、電圧保持部SH4、タイマー部TM、並びに、単極双投スイッチSW8をも備えている。
【0064】
ただし、これらADコンバータCVより後段の各構成要素はいずれも、デジタル信号処理部としての機能を有するにすぎず、図2〜図8に示したようなアナログ回路構成を有しているのではない。より具体的には、これらの各部を一つのハードウェアでまとめて構成し、その一つのハードウェアが、図12内ADコンバータCVより後段の各部の行うべきデジタル信号処理を並列して同時に行うよう構成しても良い。また、ADコンバータCVより後段の各部の一つ一つを、ディスクリートのデジタル信号処理用ハードウェアで構成して、各部にデジタル信号処理機能を担わせてもよい。さらには、ADコンバータCVより後段の各部の機能を、例えばCPU(Central Processing Unit)とレジスタ等の記憶回路とを用いてソフトウェアにより実現しても良いし、その他にも、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてソフトウェアにより実現しても良い。なお、信号処理用ハードウェアやソフトウェア処理を採用する場合の処理速度や動作速度の値に、特に制限はない。
【0065】
本実施の形態に係るデータスライサも、図9のタイミングチャートに示されたと同様の動作を行う。
【0066】
まず、平均電圧算出部AVは、ヘッダパターン中の交番信号部T2における平均電圧を算出し、その算出値を信号S2として出力する。平均電圧保持部SH3は、平均電圧算出部AVから出力される平均電圧を保持する。パターン検出部PTaからのワンショットパルス信号S5を受けるまでは、平均電圧保持部SH3は、平均電圧算出部AVからの平均電圧の信号S2の更新に伴って、保持内容を更新する。
【0067】
単極双投スイッチSW8は、ヘッダパターン検出によりパターン検出部PTaからの信号S9が活性化するまでは、平均電圧保持部SH3の出力する信号S6を信号S21として出力する。信号S21はスライスレベルとして機能し、比較器CP1にて、ADコンバータCVの出力するデジタル値の信号S1aと比較される。比較器CP1における比較結果は、信号S16としてパターン検出部PTaに入力される。
【0068】
パターン検出部PTaは、信号S16に基づいて、入力電圧信号Vinに含まれるヘッダパターンを検出する。そして、ヘッダパターンの検出完了時(図9における時点P1)にワンショットパルスの信号S5を、タイマー部TM、ピーク電圧保持部SH1、ボトム電圧保持部SH2および平均電圧保持部SH3に出力し、かつ、ヘッダパターン検出完了を境に活性化してその信号値を持続する信号S9を、単極双投スイッチSW8、最大電圧検出・保持部MXおよび最小電圧検出・保持部MNに出力する。
【0069】
ピーク電圧検出・保持部PKは、ヘッダパターン中のピーク電圧を検出し、ピーク電圧検出・保持部PKを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等内の記憶回路にて、その検出したピーク電圧を信号S3として保持する。ピーク電圧の検出は、ヘッダパターン初頭はもちろん、交番信号部T2においても行われるので、最終的なピーク電圧の検出は、入力電圧信号Vinの“1”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行われることとなる。なお、デジタル信号処理用ハードウェアやDSP等の動作を適切に設定することにより、図9に示すように、ピーク電圧検出・保持部PKにて保持中のピーク電圧の信号S3の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる。
【0070】
ボトム電圧検出・保持部BTは、ヘッダパターン中のボトム電圧を検出し、ボトム電圧検出・保持部BTを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等内の記憶回路にて、その検出したボトム電圧を信号S4として保持する。ボトム電圧の検出は、ヘッダパターン初頭はもちろん、交番信号部T2においても行われるので、最終的なボトム電圧の検出は、入力電圧信号Vinの“0”レベルに相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行われることとなる。なお、デジタル信号処理用ハードウェアやDSP等の動作を適切に設定することにより、図9に示すように、ボトム電圧検出・保持部BTにて保持中のボトム電圧の信号S4の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる。
【0071】
ピーク電圧保持部SH1は、ヘッダパターンの検出完了時にピーク電圧検出・保持部PKに保持されているピーク電圧を保持する。また、ボトム電圧保持部SH2は、ヘッダパターンの検出完了時にボトム電圧検出・保持部BTに保持されているボトム電圧を保持する。平均電圧保持部SH3は、パターン検出部PTaからのワンショットパルス信号S5を受けることにより、平均電圧算出部AVからの信号S2を受けて、ヘッダパターンの検出完了時の平均電圧を保持する。
【0072】
最大電圧検出・保持部MXは、入力電圧信号Vin中のヘッダパターンに後続する部分における最大電圧を検出し、その検出した最大電圧を信号S10として、最大電圧検出・保持部MXを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等内の記憶回路にて保持する。なお、最大電圧検出・保持部MXを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等の動作を適切に設定することにより、図9に示すように、最大電圧検出・保持部MXにて保持中の最大電圧の信号S10の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる。
【0073】
また、最大電圧の検出における最大電圧検出・保持部MXの応答時間を、ピーク電圧の検出におけるピーク電圧検出・保持部PKの応答時間に比して遅くしておけばよい。応答時間の調節は、ピーク電圧検出・保持部PKおよび最大電圧検出・保持部MXを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等の動作を適切に設定することにより行える。
【0074】
最小電圧検出・保持部MNは、入力電圧信号Vin中のヘッダパターンに後続する部分における最小電圧を検出し、その検出した最小電圧を信号S11として、最小電圧検出・保持部MNを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等内の記憶回路にて保持する。なお、最小電圧検出・保持部MNを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等の動作を適切に設定することにより、図9に示すように、最小電圧検出・保持部MNにて保持中の最小電圧の信号S11の絶対値を時間経過とともに減衰させることができる。
【0075】
また、最小電圧の検出における最小電圧検出・保持部MNの応答時間を、ボトム電圧の検出におけるボトム電圧検出・保持部BTの応答時間に比して遅くしておけばよい。応答時間の調節は、ボトム電圧検出・保持部BTおよび最小電圧検出・保持部MNを構成するデジタル信号処理用ハードウェアやDSP等の動作を適切に設定することにより行える。
【0076】
第1平均電圧生成部GN1は、ピーク電圧保持部SH1に保持されたピーク電圧(信号S7)およびボトム電圧保持部SH2に保持されたボトム電圧(信号S8)を受けて、両者の平均電圧を信号S13として生成する。具体的には例えば、両信号の絶対値を1/2倍にして加算する信号処理を行うことで、ピーク電圧およびボトム電圧の平均電圧生成が行える。すなわち、信号S13の電圧絶対値はS13=(S7+S8)/2と算出される。
【0077】
第2平均電圧生成部GN2は、最大電圧検出・保持部MXに保持された最大電圧(信号S10)および最小電圧検出・保持部MNに保持された最小電圧(信号S11)を受けて、両者の平均電圧を信号S12として生成する。具体的には例えば、両信号の絶対値を1/2倍にして加算する信号処理を行うことで、最大電圧および最小電圧の平均電圧生成が行える。すなわち、信号S12の電圧絶対値はS12=(S10+S11)/2と算出される。
【0078】
減算器SBおよび第1加算器AD1は、平均電圧たる信号S12,S13を加減算することによりスライスレベルを算出する算出部として機能する。具体的には、減算器SBは、平均電圧たる信号S13を負値に反転し、信号S14として出力する。このような減算器SBは、例えば入力信号を−1倍する信号処理により実現できる。
【0079】
また、第1加算器AD1は、信号S12,S14を加算し、加算結果を信号S15aとして出力する。このような第1加算器ADは、信号S12,S14の各信号の加算処理により実現できる。すなわち、信号S15aの電圧絶対値はS15a=(S10+S11)/2−(S7+S8)/2と算出される。
【0080】
電圧保持部SH4は、第1加算器AD1からの信号S15aの値を、タイマー部TMからの信号S15dが活性化している間、保持する。そして、電圧保持部SH4から出力される信号S15bは、第2加算器AD2に与えられる。第2加算器AD2は、平均電圧保持部SH3からの信号S6と電圧保持部SH4からの信号S15bとを加算する。加算結果は、信号S15cとして、単極双投スイッチSW8に与えられる。
【0081】
単極双投スイッチSW8は、ヘッダパターン検出によりパターン検出部PTaからの信号S9が活性化した後は、平均電圧保持部SH3の出力する信号S6に代わって、第2加算器AD2からの信号S15cを信号S21として出力する。信号S21はスライスレベルとして機能し、比較器CP1にて、ADコンバータCVの出力するデジタル値の信号S1aと比較される。比較器CP1における比較結果は、スライス後の信号S16として、ノードN2から出力電圧信号Voutとして出力される。
【0082】
タイマー部TMは、例えばダウンカウントを行う計数部として機能し、パターン検出部PTaからのワンショットパルス信号S5を契機として、その計数を開始する。そして、この計数が行われている間は信号S15dを活性化し、計数が終了すれば一旦、信号S15dを非活性化する。その後、再び初期値から計数を行い、その間は信号S15dを活性化し、以降、これらの動作を繰り返す。これにより、ダウンカウント数に基づいて所定の期間、信号15dの活性化させ、その活性化を繰り返し行うことができる。
【0083】
よって、信号S15dの活性化期間を長期に設定(ダウンカウント数を大きく設定)すれば、スライスレベルの決定因子となる信号S15bを電圧保持部SH4にて比較的低頻度で更新することができるし、一方、信号S15dの活性化期間を短期に設定(ダウンカウント数を小さく設定)すれば、スライスレベルの決定因子となる信号S15bを電圧保持部SH4にて比較的高頻度で更新することができる。また、信号S15dの活性化期間を0とすれば、電圧保持部SH4を、第1加算器AD1からの信号S15aをそのままスルーさせるだけの回路として機能させることもできる。この場合は、スライスレベルの決定因子となる信号S15bを常時、更新することとなる。
【0084】
本実施の形態に示したように、本発明に係るデータスライサをデジタル信号処理により実現しても良い。この場合も、実施の形態1に係るデータスライサの場合と同様に、スライスレベルの“0”または“1”レベルへの張り付き防止との効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施の形態1に係るデータスライサの構成を示すブロック図である。
【図2】ピーク電圧検出・保持部の回路図である。
【図3】ボトム電圧検出・保持部の回路図である。
【図4】ピーク電圧保持部の回路図である。
【図5】ボトム電圧保持部の回路図である。
【図6】平均電圧保持部の回路図である。
【図7】最大電圧検出・保持部の回路図である。
【図8】最小電圧検出・保持部MNの回路図である。
【図9】実施の形態1に係るデータスライサの入力電圧信号、理想的なスライサ出力および出力電圧信号を示すタイミングチャートである。
【図10】実施の形態2に係るデータスライサを示す図である。
【図11】実施の形態2に係るデータスライサの入力電圧信号、理想的なスライサ出力および出力電圧信号を示すタイミングチャートである。
【図12】実施の形態3に係るデータスライサの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0086】
PT パターン検出部、PK ピーク電圧検出・保持部、BT ボトム電圧検出・保持部、AV 平均電圧算出部、MX 最大電圧検出・保持部、MN 最小電圧検出・保持部、SH1 ピーク電圧保持部、SH2 ボトム電圧保持部、SH3 平均電圧保持部、GN1 第1平均電圧生成部、GN2 第2平均電圧生成部、SB 減算器、AD 加算器、CP1〜CP3 比較器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧信号に含まれるヘッダパターンを検出するパターン検出部と、
前記ヘッダパターン中のピーク電圧を検出し、保持するピーク電圧検出・保持部と、
前記ヘッダパターンの検出完了時に前記ピーク電圧検出・保持部に保持されている前記ピーク電圧を保持するピーク電圧保持部と、
前記ヘッダパターン中のボトム電圧を検出し、保持するボトム電圧検出・保持部と、
前記ヘッダパターンの検出完了時に前記ボトム電圧検出・保持部に保持されている前記ボトム電圧を保持するボトム電圧保持部と、
前記入力電圧信号中の前記ヘッダパターンに後続する部分における最大電圧を検出し、保持する最大電圧検出・保持部と、
前記後続する部分における最小電圧を検出し、保持する最小電圧検出・保持部と、
前記ピーク電圧保持部に保持された前記ピーク電圧および前記ボトム電圧保持部に保持された前記ボトム電圧の平均電圧たる、第1平均電圧を生成する第1平均電圧生成部と、
前記最大電圧検出・保持部に保持された前記最大電圧および前記最小電圧検出・保持部に保持された前記最小電圧の平均電圧たる、第2平均電圧を生成する第2平均電圧生成部と、
前記ヘッダパターン中の少なくとも一部における平均電圧たる、第3平均電圧を算出する平均電圧算出部と、
算出された前記第3平均電圧を保持する平均電圧保持部と、
前記第1乃至第3平均電圧を加減算することによりスライスレベルを算出する算出部と、
前記入力電圧信号と前記スライスレベルとの比較を行い、比較結果に応じて出力を活性化する比較器と
を備えるデータスライサ。
【請求項2】
請求項1に記載のデータスライサであって、
前記最大電圧検出・保持部にて保持中の前記最大電圧の絶対値、および、前記最小電圧検出・保持部にて保持中の前記最小電圧の絶対値は、減衰する
データスライサ。
【請求項3】
請求項2に記載のデータスライサであって、
減衰後の前記最大電圧の絶対値は、前記ピーク電圧保持部に保持された前記ピーク電圧の絶対値以上に保たれ、
減衰後の前記最小電圧の絶対値は、前記ボトム電圧保持部に保持された前記ボトム電圧の絶対値以上に保たれる
データスライサ。
【請求項4】
請求項3に記載のデータスライサであって、
減衰後の前記最大電圧の絶対値が、前記ピーク電圧保持部に保持された前記ピーク電圧の絶対値に達した場合は、前記最大電圧に代わって、前記ピーク電圧保持部に保持された前記ピーク電圧が前記第2平均電圧生成部に与えられ、
減衰後の前記最小電圧の絶対値が、前記ボトム電圧保持部に保持された前記ボトム電圧の絶対値に達した場合は、前記最小電圧に代わって、前記ボトム電圧保持部に保持された前記ボトム電圧が前記第2平均電圧生成部に与えられる
データスライサ。
【請求項5】
請求項1に記載のデータスライサであって、
前記最大電圧の検出における前記最大電圧検出・保持部の応答時間は、前記ピーク電圧の検出における前記ピーク電圧検出・保持部の応答時間に比して遅く、
前記最小電圧の検出における前記最小電圧検出・保持部の応答時間は、前記ボトム電圧の検出における前記ボトム電圧検出・保持部の応答時間に比して遅い
データスライサ。
【請求項6】
請求項1に記載のデータスライサであって、
前記ピーク電圧検出・保持部における前記ピーク電圧の検出は、前記入力電圧信号の第1論理値に相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行い、
前記ボトム電圧検出・保持部における前記ボトム電圧の検出は、前記入力電圧信号の前記第1論理値とは異なる第2論理値に相当する電圧が2ビット以上連続した箇所で行う
データスライサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−340162(P2006−340162A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163961(P2005−163961)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】