説明

トラクタの操作装置

【課題】 トラクタ作業操作は、作業機を装着して特殊な作業操作を行うことが多く、トラクタ車体としての本来の走行操作は、できるだけペダル操作として、手動操作で作業機等の作業操作を行わせるのが、作業性や、作業能率、乃至安全性の向上において好ましい。
【解決手段】 HSTペダル1を前進位置Fへ踏込んだ状態で、オートクルーズ入りの操作と、オートクルーズを解除する操作を行うオートクルーズペダル2を設ける。また、前記オールトクルーズペダル2を、HSTペダル1の前周近傍部3で、このHSTペダル1のペダル面4よりも上位位置に配置して、前記HSTペダル1踏込の同足先で踏込操作してオートクルーズを入り切り可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トラクタのオートクルーズに関する。
【背景技術】
【0002】
オートクルーズをスイッチ操作で入り、切りする技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−208482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラクタ作業操作は、作業機を装着して特殊な作業操作を行うことが多く、トラクタ車体としての本来の走行操作は、できるだけペダル操作として、手動操作で作業機等の作業操作を行わせるのが、作業性や、作業能率、乃至安全性の向上において好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、HSTペダル1を前進位置Fへ踏込んだ状態で、オートクルーズ入りの操作と、オートクルーズを解除する操作を行うオートクルーズペダル2を設けたことを特徴とするトラクタの操作装置の構成とする。
【0006】
フロアの足元近くには、HSTペダル1と、オートクルーズペダル2が配置される。このHSTペダル1を前進位置Fへ踏込むことによって、HST(油圧無段変速装置)を中立位置から前進増速位置へ変速して走行させることができる。
【0007】
このHSTペダル1を前進位置Fへ踏込むとき、既にオートクルーズが設定されている状態では、このHSTペダル1を踏込むことによってオートクルーズが解除されて、HSTペダル1の踏込操作による新たな前進変速操作が行われる。そして、このHSTペダル1の踏込操作による前進変速においてオートクルーズペダル2を踏込操作するとによって、その変速操作位置でオートクルーズが設定される。
【0008】
このようにオートクルーズの設定、解除は、手動操作を要することなく、HSTペダル1の操作とオートクルーズペダル2のペダル操作によって行われるため、操作を簡単、容易に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記オールトクルーズペダル2を、HSTペダル1の前周近傍部3で、このHSTペダル1のペダル面4よりも上位位置に配置して、前記HSTペダル1踏込の同足先で踏込操作してオートクルーズを入り切り可能に設ける。
【0010】
前記のようにHSTペダル1とオートクルーズペダル2の操作により、オートクルーズの設定、解除を行いながら走行操作することができるが、このオートクルーズペダル2は、HSTペダル1の前周近傍部3で、このHSTペダル1のペダル面4よりも上位位置に配置しているため、HSTペダル1を踏込操作しながらオートクルーズペダル2を踏込操作してオートクルーズの設定を行わせる場合は、このオートクルーズペダル2がHSTペダル1の踏込操作と一体的に移動していて、ペダル面4より上位位置に突出したオートクルーズペダル2の関係位置を維持しているため、このHSTペダル1のペダル面4上に位置する踏込足の足先部をオートクルーズペダル2の上面に移動させて、このオートクルーズペダル2の踏込操作を簡単、容易に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記オートクルーズペダル2を、HSTペダル1設置のステップフロア5側とは反対側のステップフロア6に設ける。
前記オートクルーズペダル2をHSTペダル1側とは反対側のステップフロア6上に設けるものであるから、通常の右足でHSTペダル1を操作する形態の車体にあっては、オートクルーズペダル2を左側のステップフロア6に配置する。
【0012】
従って、オートクルーズを解除するときは、右側のステップフロア5上のHSTペダル1を右足で前進位置Fへ踏込操作するだけで、既に設定されていたオートクルーズを解除しながら走行速を無段変速する。更に、この変速走行時にオートクルーズを設定するときは、左側のステップフロア6上のオートクルーズペダル2を左足で踏込操作してオートクルーズを設定することができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は、ともに足操作のHSTペダル1とオートクルーズペダル2によって車体の走行速変速はもとより、オートクルーズの設定、解除の操作を簡明、迅速、的確に行うことができ、誤操作を解消し、構成を間潔にすることができ、作業操作の安全性を高めることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、オートクルーズペダル2が、HSTペダル1と一体的に構成されて、しかもこのペダル面4よりも上位位置に配置して踏む込操作し易い関係位置に設定されているため、HSTペダル1を踏込操作している状態から、同足の足先部でオートクルーズペダル2を踏込操作してオートクルーズを設定することができ、片足操作で簡単で的確な操作を行うことができ、オートクルーズペダル2をHSTペダル1に取付ける形態であるから、オートクルーズの操作を行い易くすると共に、構成を簡潔にすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記HST変速操作のオートクルーズは、このHSTペダル1の踏込操作によって、オートクルーズの解除を行わせると共に、前進走行速の無段変速を行わせるものであるから、このHSTペダル1を踏込操作して走行変速するときは、オートクルーズの入り、切りの状態を配慮することなく自由に操作されるが、オートクルーズを設定するときだけ、HSTペダル1とは反対側のオートクルーズペダル2を踏むことによって、オートクルーズを固定することができ、これらの操作は手動操作を要することなく、左右のペダル1、2操作で簡単に、的確に行うことができる。しかも、オートクルーズペダル2がHSTペダル1とは隔離して、左右反対側の足で操作する形態として誤操作のおそれを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HSTペダル部の側面図。
【図2】HSTペダル部の作動状態を示す側面図。
【図3】HSTペダル部の平面図。
【図4】HSTペダル部の正面図。
【図5】一部別例を示すHSTペダル部の斜視図。
【図6】車体にミットモアー及びコレクターを装着したトラクタの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面に基づいて、トラクタ車体は、乗用四輪走行形態で、ステアリングハンドル10によって操向の前輪11と、運転席12横のフェンダー13下の後輪14を配置し、前部ボンネット15下に搭載のエンジン16によって伝動駆動して走行する。この車体のフロア17の下側部にはモアーデッキ18を吊持して、ミッドモアーを構成し、このモアーデッキ18の後側の排草口19と、車体後側部に装着のコレクター20の入口21との間に左右後輪14間に位置するダクト22を連設して、モアーデッキ18で刈取られる芝草をダクト22で案内してコレクター20へ収容させる。23はコレクター20を着脱するとき使用する支持台である。
【0018】
前記後輪14、及びモアーデッキ18のブレード軸等の駆動は、エンジン16からHST(油圧無段変速装置)、及びミッションケース部のギヤ機構等を経て連動する構成である。このHSTは主変速装置として構成フロア17上のHSTペダル1またはHSTペダル7を踏込操作することによって、伝動停止の中立位置から前後進走行高速位置へ無段変速操作することができる。
【0019】
又、フロア17は、ステアリングポスト24の右足元側のステップフロア5と、左足元側のステップフロア6とに形成されて、運転者の各右足、左足を踏置く姿勢で運転する。又、HSTのトラニオン軸を回動操作して変速するためのHSTペダル1は、車体を前進方向Fへ走行させるためのもので、このHSTペダル1の右横側には後進方向Rへ走行させるためのHSTペダル7を配置している。又、これらHSTペダル1、7の間の前側上位にブレーキペダル8を配置している。
【0020】
前記ステアリングポスト24上部や、運転席12横側のフェンダ13部、更には後部のコレクタ20部等には、エンジン調整機構や、副変速機構、PTO変速機構、PTOクラッチレバー、モアーデッキ18を昇降するためのリフトレバー、ダクト22内のシャッターを切替える操作レバー、コレクタ20のダンプ排出作用を行わせるダンプレバー等各種多くの作業操作機構を配置している。
【0021】
ここにおいて、HSTペダル1を前進位置Fへ踏込んだ状態で、オートクルーズ入りの操作を行うオートクルーズペダル2を設けたトラクタの操作装置の構成とする。
フロアの足元近くには、HSTペダル1と、オートクルーズペダル2が配置される。このHSTペダル1を前進位置Fへ踏込むことによって、HST(油圧無段変速装置)を中立位置から前進増速位置へ変速して走行させることができる。このHSTペダル1を前進位置Fへ踏込むとき、既にオートクルーズが設定されている状態では、このHSTペダル1を踏込むことによってオートクルーズが解除されて、HSTペダル1の踏込操作による新たな前進変速操作が行われる。そして、このHSTペダル1の踏込操作による前進変速においてオートクルーズペダル2を踏込操作するとによって、その変速操作位置でオートクルーズが設定される。このようにオートクルーズの設定、解除は、手動操作を要することなく、HSTペダル1の操作とオートクルーズペダル2のペダル操作によって行われるため、操作を簡単、容易に行うことができる。
【0022】
又、前記オールトクルーズペダル2を、HSTペダル1の前周近傍部3で、このHSTペダル1のペダル面4よりも上位位置に配置して、前記HSTペダル1踏込の同足先で踏込操作してオートクルーズを入り切り可能に設ける。
【0023】
前記のようにHSTペダル1とオートクルーズペダル2の操作により、オートクルーズの設定、解除を行いながら走行操作することができるが、このオートクルーズペダル2は、HSTペダル1の前周近傍部3で、このHSTペダル1のペダル面4よりも上位位置に配置しているため、HSTペダル1を踏込操作しながらオートクルーズペダル2を踏込操作してオートクルーズの設定を行わせる場合は、このオートクルーズペダル2がHSTペダル1の踏込操作と一体的に移動していて、ペダル面4より上位位置に突出したオートクルーズペダル2の関係位置を維持しているため、このHSTペダル1のペダル面4上に位置する踏込足Aの足先部Bをオートクルーズペダル2の上面に移動させて、このオートクルーズペダル2の踏込操作を簡単、容易に行うことができる。
【0024】
前記HSTペダル1、7は、ステップフロア5の下部に横方向に沿って設けられるペダル軸25の周りに踏込回動することができ、HSTペダル1を中立位置から踏込むと、HSTを前進F高速位置へ増速し、HSTペダル7を中立位置から踏込むと、HSTを後進R高速位置へ増速する形態である。図1〜図5は、この前進F側のHSTペダル1にオートクルーズのためのオートクルーズペダル2を設けている。
【0025】
このうち図1〜図4において、前進F側のHSTペダル1のペダルアーム26の上端部に、オートクルーズペダル2を回動支点27によって上下回動自在に設ける。このオートクルーズペダル2の回動上限位置は、前記HSTペダル1のペダル面4の前方上方部への延長上、乃至これよりも若干上側に突出した位置として、HSTペダル1に踏みかけた右足Aの足先Bでの踏込操作を行い易く設定している。前記ペダルアーム26の下部には、複数個所のラック28を形成したラックアーム29をピン30周りに前後回動自在に枢支し、これらオートクルーズペダル2とラックアーム29との間をリンクロッド31で連動している。このラックアーム29はスプリング32により後側へ段発されていて(図1)、単なるHSTペダル1の踏込操作では、ラックアーム29は前側へ回動されないが、このHSTペダル1の踏込位置ではラックアーム29のラック28が、フロアフレーム33に固定の固定フック34の後側域に対向した状態にあって、このとき、HSTペダル1を踏込んでいる足先Bで、オートクルーズペダル2をスプリング32力に抗して踏込操作することによって(図2)、前記ラックアーム29を前側へ回動させて固定フック34へ係合させて、踏込位置の変速走行速を固定維持することができ、オートクルーズを設定することができる。又、このオートクルーズを解除するときは、単にHSTペダル1をこのオートクルーズ設定位置から若干踏込操作することによって、ラックアーム29の固定フック34に対する係合力が弱くなり、スプリング32力によって後側へ回動されて固定フック34との間の係合が外されるため、オートクルーズを解除することができる。
【0026】
図5は別実施例のオートクルーズである。
オートクルーズを入り切り操作するためのオートクルーズペダル2を、左側のステップフロア6上に配置して、左足で踏込操作する形態とする。この左側のオートクルーズペダル2と、右側のアームフック38の前側に位置するラックアーム29との間を、ステアリングポスト24の下部を左右横方向に軸支するピン軸30で連結して、スプリング32抗して踏込回動することによって、オートクルーズを働かせることができる。50はHSTペダル1、7の回動位置を調節するストッパボルトである。
【0027】
オートクルーズを設定するときには、HSTペダル1を所望の速度になるまで踏み、該所望の速度の場所でオートクルーズペダル2を踏込むと、ラックアーム29とアームフック38とが係合し、オートクルーズの状態となる。
【0028】
オートクルーズを解除するときには、HSTペダル1を踏込むと、ラックアーム29が前側へ回動して、アームフック38(前例の固定フック34に相当する)のラック28に対する係合を外すように構成することで、オートクルーズを解除する形態である。
【0029】
なお、この図5ではブレーキペダル8は省略している。
さらに、詳細に説明すると、前記アームフック38は、ペダル軸25周りに嵌合して支持されるボスカラー40から前側へ突出させて、前記ペダルアーム26等と一体的回動の構成である。そして前記HSTペダル1の踏込みよって一体としてペダル軸25周りに回動する。このアームフック38の前側に対向するラック28を形成したラックアーム29は、フロアフレーム33に対してピン30で枢支されて、前記オートクルーズペダル2を踏込み操作によってリンクロッド31を介してスプリング32力に抗してピン30周りに後側へ回動される。そして、このラック28をアームフック38に係合させて、そのHSTペダル1踏込位置におけるオートクルーズを働かすことができる。又、このオートクルーズが設定されているときにHSTペダル1のみ踏込操作すると、リンクロッド31の引っ張りが緩み、スプリング32力によってラックアーム29がピン30周りに前側へ回動されて、アームフック38との係合が外されて、オートクルーズが解除される。
【0030】
前記HSTペダル1のペダルアーム26の下端部側アーム46にはリンクロッド41が連結されて、HSTのトラニオン軸47アーム48の前進側連動連結している。又、HSTペダル8のペダルアーム36にはリンクロッド44が連結されて、後輪14等を制動するブレーキに連動している。前記ペダル軸25のリンクロッド41を連結するアーム46にはダンパー45を設けている。
【0031】
更には、前記オートクルーズペダル2を、HSTペダル1設置のステップフロア5側とは反対側のステップフロア6に設ける。
前記オートクルーズペダル2をHSTペダル1側とは反対側のステップフロア6上に設けるものであるから、通常の右足でHSTペダル1を操作する形態の車体にあっては、オートクルーズペダル2を左側のステップフロア6に配置する。従って、オートクルーズを解除するときは、右側のステップフロア5上のHSTペダル1を右足で前進位置Fへ踏込操作するだけで、既に設定されていたオートクルーズを解除しながら走行速を無段変速する。更に、この変速走行時にオートクルーズを設定するときは、左側のステップフロア6上のオートクルーズペダル2を左足で踏込操作してオートクルーズを設定することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 HSTペダル
2 オートクルーズペダル
3 前周近傍部
4 ペダル面
5 ステップフロア
6 ステップフロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSTペダル(1)を前進位置(F)へ踏込んだ状態で、オートクルーズ入りの操作と、オートクルーズを解除する操作を行うオートクルーズペダル(2)を設けたことを特徴とするトラクタの操作装置。
【請求項2】
前記オールトクルーズペダル(2)を、HSTペダル(1)の前周近傍部(3)で、このHSTペダル(1)のペダル面(4)よりも上位位置に配置して、前記HSTペダル(1)踏込の同足先で踏込操作してオートクルーズを入り切り可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載のトラクタの操作装置。
【請求項3】
前記オートクルーズペダル(2)を、HSTペダル(1)設置のステップフロア(5)側とは反対側のステップフロア(6)に設けることを特徴とする請求項1に記載のトラクタの操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67231(P2013−67231A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205970(P2011−205970)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】