トラクターの作業モード切替装置
【課題】農作業機用のエンジンとして、各種の作業モードに対しトルク適応性を充分発揮できるよう改良を行う。
【解決手段】コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップAを使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップBを使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ1を設けたことを特徴とし、耕耘作業を行う作業モード時において、前記高トルクマップAと低トルクマップBとをそれぞれ作業内容に応じて切り替え可能に設けたことを特徴とするトラクタの構成とする。
【解決手段】コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップAを使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップBを使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ1を設けたことを特徴とし、耕耘作業を行う作業モード時において、前記高トルクマップAと低トルクマップBとをそれぞれ作業内容に応じて切り替え可能に設けたことを特徴とするトラクタの構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクターの作業モード切替装置に関し、コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、トルクマップにより仕分けされた作業モードを作業内容によって切り替えるもの等の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ガバナ制御式の舶用内燃機関は公知となっているが、この場合の最大トルク制御方式としては、内燃機関の破損を回避するため、各回転数において得られる最大トルクは、内燃機関の許容最大トルクよりも低く抑えたトルクとなるように設定して、電子ガバナの燃料噴射量設定用ラック位置を制御しているが、このように最大トルクが抑えられている状態では、回転数の低減量が大きくなり船速が大幅に落ちるため、出漁の際や漁獲後の水揚げ位置までのいち早い到着が要求される漁船にとっては致命的な問題である。
【0003】
そこで、電子ガバナ制御式内燃機関における機関回転数に対する最大ラック位置の設定マップに関し、機関許容最大トルクよりも制限トルクを低く抑えるように最大ラック位置を設定した標準マップと、機関許容最大トルクを得られるように最大ラック位置を設定した特殊マップの二つのマップを記録し、任意にマップを切り替え可能とすると共に、特殊マップによる内燃機関の制御時間を限定し、且つ、標準マップによる内燃機関制御に戻してから一定時間は特殊マップへの切り替えを不能とするもの等が開示されている。
(例えば、特許文献1参照)
また、一般に、作業機用エンジンは過負荷状態、低負荷・無負荷状態で運転されることが多く、外的に掛かる負荷の変動が大きく、過負荷状態から無負荷状態に瞬時に移行したり、逆に無負荷状態から過負荷状態へ移行したりすることが作業中頻繁に起きる。例えば、農作業機としての耕耘機用エンジンでは、ロータリー装置により耕耘状態から非耕耘状態となったときは、定格負荷,定格回転数の状態から一瞬のうちに無負荷状態になり、逆に、ロータリー装置が空転している状態から一気に耕耘状態となったときは、負荷が急激に増加し、時として過負荷状態となるので、その増加に対応して燃料噴射量を調整しないとエンストを起こしてしまう恐れがある。
【0004】
そこで、エンジンの運転状態が中負荷・高負荷であるか、低負荷・無負荷の何れであるか判別する負荷状態判別部と、負荷状態判別部が中負荷・高負荷であると判別したことに応答して中負荷・高負荷マップに基づいて空燃比によるフィードバック制御を行うフィードバック制御部と、負荷状態判別部が低負荷・無負荷であると判別したことに応答して、フィードバック制御を解除して燃料の多い側の目標空燃比を設定した低負荷・無負荷マップに基づいてオープン制御により噴射量の設定を行うオープン制御手段とを有するもの等が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平11−270359号公報
【特許文献2】特開2000−274280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記の如く、電子ガバナ制御式内燃機関において、機関許容最大トルクよりも制限トルクを低く抑えるように最大ラック位置を設定した標準マップと、機関許容最大トルクを得られるように最大ラック位置を設定した特殊マップの二つのマップによりエンジンの運転制御を行うもの、並びに、耕耘機用エンジンにおいて、運転状態が中負荷・高負荷であると判別したことに応答して中負荷・高負荷マップに基づいた空燃比による制御と、低負荷・無負荷であると判別したことに応答して低負荷・無負荷マップに基づいた燃料の多い側の空燃比による制御とによりエンジンの運転制御を行うものでは、何れも低トルクと高トルクの二つのマップによるトルクモードを切り替えて運転を行うことは可能であるが、この二つのマップによるトルクモードのみでは、作業の種類が多岐に亘っている農作業機用のエンジンとしては、各種の作業モードに対するトルク適応性が不充分であり、良好な作業性能に支障を来す恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、農作業機用のエンジンとして、各種の作業モードに対してトルク適応性を充分発揮できるよう改良することにより、良好な作業性能を得られるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップ(A)を使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップ(B)を使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ(1)を設けたことを特徴とするトラクタの構成とする。
【0008】
このような構成により、トラクターの適宜位置に配置した、高トルクマップ(A)による複数の作業モードと低トルクマップ(B)による複数の作業モードとを割り付けしているモード切替スイッチ(1)を、負荷率が大きい高負荷時の作業モードに対しては高トルクマップ(A)側に、通常負荷時の作業モードに対しては噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることにより、高トルクマップ(A)又は低トルクマップ(B)による最適の作業モードを選択することができる。
【0009】
請求項2の発明は、耕耘作業を行う作業モード時において、前記高トルクマップ(A)と低トルクマップ(B)とをそれぞれ作業内容に応じて切り替え可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のトラクタの構成とする。
【0010】
このような構成により、トラクターにおける耕耘作業時に、負荷率が大きい作業負荷時には高トルクマップ(A)側に、通常の作業負荷時には噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることにより、耕耘作業を作業負荷に影響されることなく行わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、上記作用の如く、トラクターの適宜位置に配置したモード切替スイッチ(1)を、負荷率が大きい高負荷時の複数の作業モードに対しては高トルクマップ(A)側に、通常負荷時の複数の作業モードに対しては噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることにより、高トルクマップ(A)又は低トルクマップ(B)による最適の作業モードを選択することができるから、従来の如く、低トルクモードにおいて負荷率が大きくなったとき、回転数が低下し作業性能に支障を生じると共に燃費性能も悪くなるということがなく、各種の作業モードに対する優れたトルク適応性により良好な作業性能と燃費性能を得ることができる。
【0012】
請求項2の発明では、上記作用の如く、トラクターにおける耕耘作業時に、負荷率が大きい高負荷対応の高トルクマップ(A)と、通常負荷対応の噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることができるから、従来の如く、低トルクモードにおいて負荷率が大きくなったとき、回転数が低下し作業性能に支障を生じると共に燃費性能も悪くなるということがなく、耕耘作業を作業負荷に影響されず良好な燃費性能により行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップAを使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップBを使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ1を設ける。また、前記コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、耕耘作業を行う作業モード時に高トルクマップAと低トルクマップBとを作業内容に応じて切り替え可能に設ける。
【0014】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
コモンレール式ディーゼルエンジンEについて、図3のシステム図によりその概要を示す如く、コモンレール式(蓄圧式燃料噴射方式)とは、各気筒への燃料噴射を要求圧力に調整して供給するコモンレール10(蓄圧室)を介して行うものである。
【0015】
燃料タンク11内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ12を介して該エンジンEで駆動される高圧ポンプ13に吸入され、この高圧ポンプ13によって加圧された高圧燃料は吐出通路14によりコモンレール10に導かれ蓄えられる。
【0016】
該コモンレール10内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路16により気筒数分のインジェクター17に供給され、エンジンコントロールユニット18(以後ECUという)からの指令に基づき、各気筒毎にインジェクター17が開弁作動して、高圧燃料が該エンジンEの各燃焼室内に噴射供給され、各インジェクター17での余剰燃料(リターン燃料)は各燃料戻し管19により共通の燃料戻し通路20へ導かれ、この燃料戻し通路20によって燃料タンク11へ戻される。
【0017】
また、コモンレール10内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ13に圧力制御弁21が設けられており、この圧力制御弁21はECU18からのデューティ信号によって、高圧ポンプ13から燃料タンク11への余剰燃料の燃料戻し通路20の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール10側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0018】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧センサ22により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁21を介してコモンレール圧をフィードバック制御する。
【0019】
農作業機におけるコモンレール式ディーゼルエンジンEのECU18は、回転数と出力トルクの関係において、回転数の変動で出力も変動するドループ制御と、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御と、アイソクロナス制御が負荷限界近くになると回転数を上昇させ出力を上げる重負荷制御とによる三種類の制御モードを設定している。
【0020】
ドループ制御は、農作業を行わず移動走行する場合に使用するものであり、例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができる。
【0021】
アイソクロナス制御は、通常の農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるとき、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するのでオペレータが楽に操縦できる。
【0022】
重負荷制御は、特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがない。
【0023】
従来、ディーゼルエンジンでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジン特有の、所謂ノック音を低減することが知られている。
【0024】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回乃至2回に固定して行われるものであったが、前記コモンレール10のシステムを用いることで、エンジンの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できる。
【0025】
コモンレール式ディーゼルエンジンEは、図4の全体構成に示す如く、クランク軸3を軸支したシリンダブロック4の上部にシリンダヘッド5を、下部にオイルパン6を配設すると共に、前部にギヤトレーンを内装したギヤケース7と冷却ファン8を、後部にフライホイル9を配設させる。
【0026】
該シリンダヘッド5の吸気側に吸気マニホールド23を接続し、その下方側近傍位置に前記コモンレール10を装着配置すると共に、その下方側にはギヤケース7により駆動される前記高圧ポンプ13を配置して設け、シリンダヘッド5の上面に前記インジェクター17を嵌着配設して構成させる。
【0027】
コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTは、図5の全体構成に示す如く、機体の前後部に前輪31と後輪32を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース30の変速装置によって適宜変速して、これら前輪31と後輪32に伝えるように構成している。
【0028】
機体中央であってキャビン33内のハンドルポスト34にはステアリングハンドル35が支持され、その後方にはシート36が設けられており、該ハンドル35の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り替える前後進レバー37が設けられている。この前後進レバー37を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。ロータリ装置38は機体後方にリンク39で連結構成されている。
【0029】
該ハンドルポスト34の上部に位置するパネル29に、図1及び図2に示す如く、負荷率が大きい高負荷時に対応させる高トルクマップAの領域に、4WD駆動時における4WD作業モード1a,旋回時のみ前輪31を駆動する前輪増速旋回モード1b,高負荷時における重耕耘作業モード1c等と、通常負荷時に対応させる噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップBの領域に、通常負荷時における通常耕耘作業モード1d,ローダー作業を行うローダーモード1e,通常走行を行う走行モード1f等とを割り付けしたモード切替スイッチ1を配置して構成している。
【0030】
このような構成により、パネル29に位置しているモード切替スイッチ1により、作業内容に応じて、高トルクマップAの領域に配置している4WD作業モード1a,前輪増速旋回モード1b,重耕耘作業モード1c等を適時切り替えて高負荷時の作業モードに対応させると共に、低トルクマップBの領域に配置している通常耕耘作業モード1d,ローダーモード1e,走行モード1f等を適時切り替えて通常負荷時の作業モードに対応させることにより、高トルクマップA又は低トルクマップBによる最適の作業モードを選択することができるから、従来の如く、低トルクモードにおいて負荷率が大きくなったとき、回転数が低下し作業性能に支障を生じると共に燃費性能も悪くなるということがなく、優れたトルク適応性を充分発揮して良好な作業性能と燃費性能を得ることができる。
【0031】
また、高トルクと低トルクの二つのマップを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、負荷率によって二つのマップから作業に適したマップを計算し、この計算したマップにより制御を行うもの等は見当たらない。
【0032】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、前記の如き、高トルクマップAと低トルクマップBによる二つのトルクモードを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、耕耘深さ等の負荷率情報によって作業に適した目標のトルクマップ計算を可能に構成させることにより、図6のフローチャートに示す如く、負荷率情報によって作業に適した目標のトルクマップを計算し、この計算によってマップの変更が必要なときは、二つのマップから作業に適した最適マップへの選択切り替えを行い、この最適マップにより制御を行うことにより、作業時の低燃費性及びトルクマップの計算による効率化を図ることができる。
【0033】
また、高トルクと低トルクの二つのマップを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、低トルクのトルクモードでは負荷率が高くなることにより回転数の低下等を生じ燃費性能に難点があった。
【0034】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、前記の如き、高トルクマップAと低トルクマップBによる二つのトルクモードを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、負荷率が一定値以上のときは自動的に高トルクマップAによるトルクモードに切り替え可能に構成させることにより、図7のフローチャートに示す如く、通常の作業では低燃費モードによる低トルクマップBにて作業を行うが、負荷率情報によって負荷率が一定値以上になると自動的に高トルクマップAに切り替え、作業時の燃費を向上させる制御を行うことにより、作業時の低燃費性及びトルクマップの自動切り替えによる効率化を図ることができる。
【0035】
また、高トルクと低トルクの二つのマップを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、CAN通信により回転制御方法(ドループ制御,アイソクロナス制御)やトルクカーブを選択できるものは見当たらない。
【0036】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、前記の如き、高トルクマップAと低トルクマップBによる二つのトルクモードを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、作業時はアイソクロナス制御にてエンジン回転数の制御を行い、旋回時や後退時等でエンジン回転数を変更する場合は、CAN通信によりドループ制御に切り替えると共に、アクセル開度指示によりエンジン回転数を制御可能に構成させる。
【0037】
このような構成により、図8のフローチャートに示す如く、初期設定値をCANメッセージにて送信を行い、CANによる変更が承認されたときは、図9の線図に示す如く、アクセル開度,回転制御方法,トルクカーブ等の変更を行うと共に、この変更の完了をCANメッセージにて返信を行う。このように、CAN通信によりエンジン回転数,回転制御方法(ドループ制御,アイソクロナス制御),トルクカーブ等が選択可能であるから、作業モードによって適切な制御方法によりエンジンを制御することができる。
【0038】
また、トラクターの旋回時等において急に負荷が軽くなったような場合、エンジン回転数が無負荷最高回転数まで上昇することにより高速旋回となるため、違和感と共に操作性が阻害されるものであった。
【0039】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、作業状態の判別確認により平均のエンジン回転数の算出を行い、旋回時等にロータリ装置38の上昇を検出したときは、急激な負荷の軽減により無負荷最高回転数まで上昇しようとするエンジン回転数を作業時の平均回転数となるよう制御可能に構成させる。
【0040】
このような構成により、図10のフローチャート及び図11の線図に示す如く、作業状態の判別確認により平均のエンジン回転数の算出を行い、旋回時等にロータリ装置38の上昇を検出したときは、急激な負荷の軽減により無負荷最高回転数まで上昇しようとするエンジン回転数を、回転数の変動で出力も変動するドループ制御又は自動アクセル制御でないときには、作業時の平均回転数となるよう制御が可能になると共に、再び作業を開始したときはエンジン回転数を通常の回転状態に制御を行うことができる。このように、急激な負荷の軽減時に作業時の平均回転数となるよう制御が可能となるから、違和感を低減すると共に操作性の向上を図ることができる。
【0041】
また、エンジン回転数が1000回転以下のような低い回転数の場合、通常、エンジンの始動性を優先させて噴射タイミングを進角させるが、通常運転時における1000回転以下の有負荷状態では始動時とは燃焼状態が異なるため、噴射タイミングを進角させた状態では逆に燃費が悪化し、エンジントルクが減少して粘りが出ないという難点があった。
【0042】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、エンジンが始動モード以外のとき、エンジン回転数が1000回転以下で、且つ指示噴射量が一定値以上のときは、噴射タイミングを遅角させるよう制御可能に構成させることにより、図12のフローチャートに示す如く、エンジンの状態確認により始動モードではないときに、エンジン回転数が1000回転以下を確認した状態で、且つ指示噴射量が一定値以上を確認したときは、メイン噴射タイミングを遅角させる。このように、トップ発進やスロー耕耘時等の低回転使用時に回転低下した際に、噴射タイミングを遅角させることで燃費が良好となり、エンジントルクが増大してそれ以上の回転低下を抑止することができる。
【0043】
また、エンジン回転数が1000回転以下のような低い回転数の場合、通常、エンジンの始動性を優先させて噴射パターン、例えば火付きの良いパイロット噴射を行ったりするが、一度エンジンが運転状態となり負荷等によって回転数が低下した際には、スモークが発生し易く、このスモークを制御するにはパイロット噴射では不向きであった。
【0044】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、エンジンが始動モード以外のとき、エンジン回転数が900回転以下で、且つ指示噴射量が一定値以上のときは、噴射パターンをパイロット噴射からアフター噴射に切り替え可能に構成させることにより、図13のフローチャートに示す如く、エンジンの状態確認により始動モードではないときに、エンジン回転数が900回転以下を確認した状態で、且つ指示噴射量が一定値以上を確認したときは、パイロット噴射をOFFすることによりアフター噴射をONすることができる。
【0045】
このアフター噴射については、従来、コモンレールエンジンではノズル耐久性の面から1サイクル当たりの噴射回数が2〜3回等に制限されるため、ECUマップ上でアフター噴射が設定されていても、パイロット噴射が設定されているときは通常ではパイロット噴射が優先されアフター噴射が行われないため、前記の如く、パイロット噴射をOFFするだけで予め設定しておいたアフター噴射がONされることになる。このように、トップ発進やスロー耕耘時等の低回転使用時に回転低下した際に、パイロット噴射からスモーク抑制に効果があるアフター噴射に切り替えることで、スモークの発生量を大幅に減らすことができる。
【0046】
また、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、アクセル開度100%が2秒以上継続したときは、アフター噴射量を略全量とし、それ以外のときはアフター噴射量を60%程度とするよう構成させることにより、図14のフローチャートに示す如く、アフター噴射量を60%程度とする通常作業時に、アクセル開度の確認により開度100%が2秒以上継続したときは、アフター噴射量を略全量とする。
【0047】
このようなアフター噴射を行うことによりスモークを抑制する効果があると共に、アフター噴射量を更に増量することで1サイクルにおいて噴射量を分散させた形となり、結果として噴射期間が延びたのと同じような効果でNoxが低減される。このように、作業時等の如き回転変動が少ないときにはアフター噴射量を多めでNox低減を重視し、路上走行の如きスモークが発生し易い状況ではアフター噴射量を減らしスモーク抑制を重視するといったように、目的別に仕分けすることで排ガスをよりクリーンにすることができる。
【0048】
また、図15の線図に示す如く、エンジンの燃料噴射において、常温時はトルクリミット(噴射量制限)が掛かり難くなるため、アクセルフィルターを効かせてトルクリミットと併用させることでスモークを抑制することができるが、低温時はエンジンフリクションの増加や燃料が冷えている等の原因により、アクセル0%時の指示噴射量が高くなるため、トルクリミットが掛かり易くなりアクセルフィルターを掛けなくてもスモークは抑制される。しかし、このような場合に、アクセルを踏み込むとトルクリミットと共にアクセルフィルターが加わり更にアクセルレスポンスが悪化するという難点があった。
【0049】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、水温の高低に応じて設定するアクセルフィルター係数kを、図16の線図に示す如く、0度C以下のときは係数を0(補正なし)とし、60度C以上のときは係数を1とし、0〜60度Cのときは0〜1を直線的に結んだ係数とした構成とすることにより、図17のフローチャートに示す如く、エンジン始動時において水温を監視し、この水温の状態によってアクセルフィルター係数kを決定して変更を行わせる。このように、低温時にはトルクリミットによる噴射量制限自体がアクセルフィルターの役目を果たすため、アクセルフィルターを減量又は解除することによりアクセルレスポンスを向上できると共に、常温時はアクセルフィルターが掛かるためスモークを抑制することができる。
【0050】
また、コンバインの旋回時における回転制御において、CAN通信によりアクセル開度を支持することで、アイソクロナス制御によりエンジン回転数を制御するものは見当らない。
【0051】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したコンバインにおいて、作業時は全回転域をアイソクロナス制御により回転制御を行うと共に、籾排出時や旋回時はCAN通信によりアクセル開度を変更してエンジン回転数を変更する構成で、負荷率情報により車速を制御することによってエンジン回転数を一定に保持することが可能となる。
【0052】
このような構成により、図18のフローチャートに示す如く、全回転域でアイソクロナス制御を行っているときに、CANメッセージにて送信を行い、図19の線図に示す如く、CANによるアクセル開度の変更を行うと共に、負荷率の確認により車速の制御を行い、エンジン回転数を一定に保持することができる。この変更の完了をCANメッセージにて返信を行う。このように、全域アイソクロナス制御にてCAN通信によりエンジン回転数を制御すると共に、負荷率情報により車速を一定に保持することで、エンジン回転数を一定に保持することができる。
【0053】
また、EGRシステムを有するエンジンにおいて、エンジンの運転状態が急変した場合、最適なEGRの駆動状態になるまでにタイムラグを生じる。このタイムラグによる課題の一つとして、一時的に吸気量不足となり黒煙を排出したり出力が低下する現象がある。
【0054】
そこで、電子制御EGRを有するコモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTやコンバイン等の農作業機において、図20に示す如く、該エンジンEのシリンダヘッド5排気側に接続した排気マニホールド24と、ターボ過給器25の排気タービン側25aとを排気経路26により接続すると共に、ターボ過給機25のコンプレッサ25b側と吸気マニホールド23とをインタークーラ27を経て吸気経路28により接続し、排気経路26の途中と吸気経路28の途中とをEGR経路40によって接続して配設させる。
【0055】
該排気経路26にEGR経路40を接続するEGRガス導入側にEGR率調整用のEGRバルブ41を配置し、このEGRバルブ41をECU18によって電気制御可能に接続して構成させる。
【0056】
このような構成により、耕耘作業の開始,刈取作業の開始,旋回動作等によりエンジン負荷が大きく増加側に変化する車両挙動を、位置センサ,加速度センサ,車載カメラの映像等によって予見検出することにより、検出した信号をトリガーとしてEGR率が低下する側にEGRバルブ41を自律的に事前制御を行わせることができる。
【0057】
このEGR率の自律的な事前制御により、全負荷作業中に負荷が大きくなり急激なエンジン回転数の低下が発生した場合においても、図21(a)の線図に示す如く、従来のタイムラグが大きく黒煙排出の多いEGR制御状態から、図21(b)の線図に示す如く、最適なEGR制御状態になるまでのタイムラグを低減することができるから、一時的な吸気量不足をカバーして黒煙排出や出力低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】高トルクマップと低トルクマップの領域に各々配置した作業モードを切り替えるモード切替スイッチの状態を示す平面図。
【図2】高トルクマップと低トルクマップにおける各トルクとエンジン回転数の関係を示す線図。
【図3】コモンレールによる蓄圧式燃料噴射ディーゼルエンジンを示すシステム図。
【図4】コモンレール式ディーゼルエンジンにおける全体構成を示す側面図。
【図5】トラクターにおける全体構成を示す側面図。
【図6】負荷率によってトルクマップを計算し最適マップへの切り替えを行う手順を示すフローチャート。
【図7】低トルクマップによる作業時に負荷率が一定値以上になったとき自動的に高トルクマップへの切り替えを行う手順を示すフローチャート。
【図8】初期設定値をCAN通信により送信しアクセル開度,回転制御方法,トルクカーブ等の変更を行う手順を示すフローチャート。
【図9】高・低のトルクマップにおけるトルクとエンジン回転数の関係においてアクセル開度によるアイソクロナス制御とドループ制御の状態を示す線図。
【図10】作業状態の確認により平均のエンジン回転数を算出し急激に負荷が軽減したとき作業時の平均回転数となる制御を行う手順を示すフローチャート。
【図11】作業時の平均回転数から急激に負荷が軽減したときにおける従来の回転上昇状態に対する本提案の回転制御状態を示す線図。
【図12】始動モード以外のときエンジン回転数が1000回転以下で且つ指示噴射量が一定値以上のときは噴射タイミングを遅角させる手順を示すフローチャート。
【図13】始動モード以外のときエンジン回転数が900回転以下で且つ指示噴射量が一定値以上のときはパイロット噴射のOFFによりアフター噴射をONする手順を示すフローチャート。
【図14】通常作業時にアクセル開度100%が2秒以上継続したときはアフター噴射量を60%程度から略全量とする手順を示すフローチャート。
【図15】常温時に対し低温時の方がトルクリミットが掛かり易くなる状態を示す線図。
【図16】水温の高低に応じてアクセルフィルター係数を設定する状態を示す線図。
【図17】水温の状態によってアクセルフィルター係数を決定して変更を行う手順を示すフローチャート。
【図18】コンバインにてアイソクロナス制御時にCAN通信によりアクセル開度を変更して負荷率を確認し車速の制御を行う手順を示すフローチャート。
【図19】トルクとエンジン回転数の関係においてアクセル開度の状態を示す線図。
【図20】ディーゼルエンジンの吸気経路と排気経路とを接続するEGR経路にEGRバルブを配置した状態を示す概略図。
【図21】(a)全負荷作業中に負荷が大きくなり急激なエンジン回転数の低下が発生した場合における従来のEGR制御状態を示す線図。
【0060】
(b)全負荷作業中に負荷が大きくなり急激なエンジン回転数の低下が発生した場合における本提案のEGR制御状態を示す線図。
【符号の説明】
【0061】
1 モード切替スイッチ
1a 4WD作業モード
1b 前輪増速旋回モード
1c 重耕耘作業モード
1d 通常耕耘作業モード
1e ローダーモード
1f 走行モード
A 高トルクマップ
B 低トルクマップ
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクターの作業モード切替装置に関し、コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、トルクマップにより仕分けされた作業モードを作業内容によって切り替えるもの等の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ガバナ制御式の舶用内燃機関は公知となっているが、この場合の最大トルク制御方式としては、内燃機関の破損を回避するため、各回転数において得られる最大トルクは、内燃機関の許容最大トルクよりも低く抑えたトルクとなるように設定して、電子ガバナの燃料噴射量設定用ラック位置を制御しているが、このように最大トルクが抑えられている状態では、回転数の低減量が大きくなり船速が大幅に落ちるため、出漁の際や漁獲後の水揚げ位置までのいち早い到着が要求される漁船にとっては致命的な問題である。
【0003】
そこで、電子ガバナ制御式内燃機関における機関回転数に対する最大ラック位置の設定マップに関し、機関許容最大トルクよりも制限トルクを低く抑えるように最大ラック位置を設定した標準マップと、機関許容最大トルクを得られるように最大ラック位置を設定した特殊マップの二つのマップを記録し、任意にマップを切り替え可能とすると共に、特殊マップによる内燃機関の制御時間を限定し、且つ、標準マップによる内燃機関制御に戻してから一定時間は特殊マップへの切り替えを不能とするもの等が開示されている。
(例えば、特許文献1参照)
また、一般に、作業機用エンジンは過負荷状態、低負荷・無負荷状態で運転されることが多く、外的に掛かる負荷の変動が大きく、過負荷状態から無負荷状態に瞬時に移行したり、逆に無負荷状態から過負荷状態へ移行したりすることが作業中頻繁に起きる。例えば、農作業機としての耕耘機用エンジンでは、ロータリー装置により耕耘状態から非耕耘状態となったときは、定格負荷,定格回転数の状態から一瞬のうちに無負荷状態になり、逆に、ロータリー装置が空転している状態から一気に耕耘状態となったときは、負荷が急激に増加し、時として過負荷状態となるので、その増加に対応して燃料噴射量を調整しないとエンストを起こしてしまう恐れがある。
【0004】
そこで、エンジンの運転状態が中負荷・高負荷であるか、低負荷・無負荷の何れであるか判別する負荷状態判別部と、負荷状態判別部が中負荷・高負荷であると判別したことに応答して中負荷・高負荷マップに基づいて空燃比によるフィードバック制御を行うフィードバック制御部と、負荷状態判別部が低負荷・無負荷であると判別したことに応答して、フィードバック制御を解除して燃料の多い側の目標空燃比を設定した低負荷・無負荷マップに基づいてオープン制御により噴射量の設定を行うオープン制御手段とを有するもの等が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平11−270359号公報
【特許文献2】特開2000−274280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記の如く、電子ガバナ制御式内燃機関において、機関許容最大トルクよりも制限トルクを低く抑えるように最大ラック位置を設定した標準マップと、機関許容最大トルクを得られるように最大ラック位置を設定した特殊マップの二つのマップによりエンジンの運転制御を行うもの、並びに、耕耘機用エンジンにおいて、運転状態が中負荷・高負荷であると判別したことに応答して中負荷・高負荷マップに基づいた空燃比による制御と、低負荷・無負荷であると判別したことに応答して低負荷・無負荷マップに基づいた燃料の多い側の空燃比による制御とによりエンジンの運転制御を行うものでは、何れも低トルクと高トルクの二つのマップによるトルクモードを切り替えて運転を行うことは可能であるが、この二つのマップによるトルクモードのみでは、作業の種類が多岐に亘っている農作業機用のエンジンとしては、各種の作業モードに対するトルク適応性が不充分であり、良好な作業性能に支障を来す恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、農作業機用のエンジンとして、各種の作業モードに対してトルク適応性を充分発揮できるよう改良することにより、良好な作業性能を得られるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップ(A)を使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップ(B)を使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ(1)を設けたことを特徴とするトラクタの構成とする。
【0008】
このような構成により、トラクターの適宜位置に配置した、高トルクマップ(A)による複数の作業モードと低トルクマップ(B)による複数の作業モードとを割り付けしているモード切替スイッチ(1)を、負荷率が大きい高負荷時の作業モードに対しては高トルクマップ(A)側に、通常負荷時の作業モードに対しては噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることにより、高トルクマップ(A)又は低トルクマップ(B)による最適の作業モードを選択することができる。
【0009】
請求項2の発明は、耕耘作業を行う作業モード時において、前記高トルクマップ(A)と低トルクマップ(B)とをそれぞれ作業内容に応じて切り替え可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のトラクタの構成とする。
【0010】
このような構成により、トラクターにおける耕耘作業時に、負荷率が大きい作業負荷時には高トルクマップ(A)側に、通常の作業負荷時には噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることにより、耕耘作業を作業負荷に影響されることなく行わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、上記作用の如く、トラクターの適宜位置に配置したモード切替スイッチ(1)を、負荷率が大きい高負荷時の複数の作業モードに対しては高トルクマップ(A)側に、通常負荷時の複数の作業モードに対しては噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることにより、高トルクマップ(A)又は低トルクマップ(B)による最適の作業モードを選択することができるから、従来の如く、低トルクモードにおいて負荷率が大きくなったとき、回転数が低下し作業性能に支障を生じると共に燃費性能も悪くなるということがなく、各種の作業モードに対する優れたトルク適応性により良好な作業性能と燃費性能を得ることができる。
【0012】
請求項2の発明では、上記作用の如く、トラクターにおける耕耘作業時に、負荷率が大きい高負荷対応の高トルクマップ(A)と、通常負荷対応の噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップ(B)側に、各々作業内容に応じて切り替えることができるから、従来の如く、低トルクモードにおいて負荷率が大きくなったとき、回転数が低下し作業性能に支障を生じると共に燃費性能も悪くなるということがなく、耕耘作業を作業負荷に影響されず良好な燃費性能により行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップAを使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップBを使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ1を設ける。また、前記コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、耕耘作業を行う作業モード時に高トルクマップAと低トルクマップBとを作業内容に応じて切り替え可能に設ける。
【0014】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
コモンレール式ディーゼルエンジンEについて、図3のシステム図によりその概要を示す如く、コモンレール式(蓄圧式燃料噴射方式)とは、各気筒への燃料噴射を要求圧力に調整して供給するコモンレール10(蓄圧室)を介して行うものである。
【0015】
燃料タンク11内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ12を介して該エンジンEで駆動される高圧ポンプ13に吸入され、この高圧ポンプ13によって加圧された高圧燃料は吐出通路14によりコモンレール10に導かれ蓄えられる。
【0016】
該コモンレール10内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路16により気筒数分のインジェクター17に供給され、エンジンコントロールユニット18(以後ECUという)からの指令に基づき、各気筒毎にインジェクター17が開弁作動して、高圧燃料が該エンジンEの各燃焼室内に噴射供給され、各インジェクター17での余剰燃料(リターン燃料)は各燃料戻し管19により共通の燃料戻し通路20へ導かれ、この燃料戻し通路20によって燃料タンク11へ戻される。
【0017】
また、コモンレール10内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ13に圧力制御弁21が設けられており、この圧力制御弁21はECU18からのデューティ信号によって、高圧ポンプ13から燃料タンク11への余剰燃料の燃料戻し通路20の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール10側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0018】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧センサ22により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁21を介してコモンレール圧をフィードバック制御する。
【0019】
農作業機におけるコモンレール式ディーゼルエンジンEのECU18は、回転数と出力トルクの関係において、回転数の変動で出力も変動するドループ制御と、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御と、アイソクロナス制御が負荷限界近くになると回転数を上昇させ出力を上げる重負荷制御とによる三種類の制御モードを設定している。
【0020】
ドループ制御は、農作業を行わず移動走行する場合に使用するものであり、例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができる。
【0021】
アイソクロナス制御は、通常の農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるとき、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するのでオペレータが楽に操縦できる。
【0022】
重負荷制御は、特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがない。
【0023】
従来、ディーゼルエンジンでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジン特有の、所謂ノック音を低減することが知られている。
【0024】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回乃至2回に固定して行われるものであったが、前記コモンレール10のシステムを用いることで、エンジンの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できる。
【0025】
コモンレール式ディーゼルエンジンEは、図4の全体構成に示す如く、クランク軸3を軸支したシリンダブロック4の上部にシリンダヘッド5を、下部にオイルパン6を配設すると共に、前部にギヤトレーンを内装したギヤケース7と冷却ファン8を、後部にフライホイル9を配設させる。
【0026】
該シリンダヘッド5の吸気側に吸気マニホールド23を接続し、その下方側近傍位置に前記コモンレール10を装着配置すると共に、その下方側にはギヤケース7により駆動される前記高圧ポンプ13を配置して設け、シリンダヘッド5の上面に前記インジェクター17を嵌着配設して構成させる。
【0027】
コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTは、図5の全体構成に示す如く、機体の前後部に前輪31と後輪32を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース30の変速装置によって適宜変速して、これら前輪31と後輪32に伝えるように構成している。
【0028】
機体中央であってキャビン33内のハンドルポスト34にはステアリングハンドル35が支持され、その後方にはシート36が設けられており、該ハンドル35の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り替える前後進レバー37が設けられている。この前後進レバー37を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。ロータリ装置38は機体後方にリンク39で連結構成されている。
【0029】
該ハンドルポスト34の上部に位置するパネル29に、図1及び図2に示す如く、負荷率が大きい高負荷時に対応させる高トルクマップAの領域に、4WD駆動時における4WD作業モード1a,旋回時のみ前輪31を駆動する前輪増速旋回モード1b,高負荷時における重耕耘作業モード1c等と、通常負荷時に対応させる噴射タイミングを進角させた低燃費による低トルクマップBの領域に、通常負荷時における通常耕耘作業モード1d,ローダー作業を行うローダーモード1e,通常走行を行う走行モード1f等とを割り付けしたモード切替スイッチ1を配置して構成している。
【0030】
このような構成により、パネル29に位置しているモード切替スイッチ1により、作業内容に応じて、高トルクマップAの領域に配置している4WD作業モード1a,前輪増速旋回モード1b,重耕耘作業モード1c等を適時切り替えて高負荷時の作業モードに対応させると共に、低トルクマップBの領域に配置している通常耕耘作業モード1d,ローダーモード1e,走行モード1f等を適時切り替えて通常負荷時の作業モードに対応させることにより、高トルクマップA又は低トルクマップBによる最適の作業モードを選択することができるから、従来の如く、低トルクモードにおいて負荷率が大きくなったとき、回転数が低下し作業性能に支障を生じると共に燃費性能も悪くなるということがなく、優れたトルク適応性を充分発揮して良好な作業性能と燃費性能を得ることができる。
【0031】
また、高トルクと低トルクの二つのマップを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、負荷率によって二つのマップから作業に適したマップを計算し、この計算したマップにより制御を行うもの等は見当たらない。
【0032】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、前記の如き、高トルクマップAと低トルクマップBによる二つのトルクモードを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、耕耘深さ等の負荷率情報によって作業に適した目標のトルクマップ計算を可能に構成させることにより、図6のフローチャートに示す如く、負荷率情報によって作業に適した目標のトルクマップを計算し、この計算によってマップの変更が必要なときは、二つのマップから作業に適した最適マップへの選択切り替えを行い、この最適マップにより制御を行うことにより、作業時の低燃費性及びトルクマップの計算による効率化を図ることができる。
【0033】
また、高トルクと低トルクの二つのマップを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、低トルクのトルクモードでは負荷率が高くなることにより回転数の低下等を生じ燃費性能に難点があった。
【0034】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、前記の如き、高トルクマップAと低トルクマップBによる二つのトルクモードを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、負荷率が一定値以上のときは自動的に高トルクマップAによるトルクモードに切り替え可能に構成させることにより、図7のフローチャートに示す如く、通常の作業では低燃費モードによる低トルクマップBにて作業を行うが、負荷率情報によって負荷率が一定値以上になると自動的に高トルクマップAに切り替え、作業時の燃費を向上させる制御を行うことにより、作業時の低燃費性及びトルクマップの自動切り替えによる効率化を図ることができる。
【0035】
また、高トルクと低トルクの二つのマップを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、CAN通信により回転制御方法(ドループ制御,アイソクロナス制御)やトルクカーブを選択できるものは見当たらない。
【0036】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、前記の如き、高トルクマップAと低トルクマップBによる二つのトルクモードを選択切り替えすることにより作業モードに対応させるシステムを有するもので、作業時はアイソクロナス制御にてエンジン回転数の制御を行い、旋回時や後退時等でエンジン回転数を変更する場合は、CAN通信によりドループ制御に切り替えると共に、アクセル開度指示によりエンジン回転数を制御可能に構成させる。
【0037】
このような構成により、図8のフローチャートに示す如く、初期設定値をCANメッセージにて送信を行い、CANによる変更が承認されたときは、図9の線図に示す如く、アクセル開度,回転制御方法,トルクカーブ等の変更を行うと共に、この変更の完了をCANメッセージにて返信を行う。このように、CAN通信によりエンジン回転数,回転制御方法(ドループ制御,アイソクロナス制御),トルクカーブ等が選択可能であるから、作業モードによって適切な制御方法によりエンジンを制御することができる。
【0038】
また、トラクターの旋回時等において急に負荷が軽くなったような場合、エンジン回転数が無負荷最高回転数まで上昇することにより高速旋回となるため、違和感と共に操作性が阻害されるものであった。
【0039】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、作業状態の判別確認により平均のエンジン回転数の算出を行い、旋回時等にロータリ装置38の上昇を検出したときは、急激な負荷の軽減により無負荷最高回転数まで上昇しようとするエンジン回転数を作業時の平均回転数となるよう制御可能に構成させる。
【0040】
このような構成により、図10のフローチャート及び図11の線図に示す如く、作業状態の判別確認により平均のエンジン回転数の算出を行い、旋回時等にロータリ装置38の上昇を検出したときは、急激な負荷の軽減により無負荷最高回転数まで上昇しようとするエンジン回転数を、回転数の変動で出力も変動するドループ制御又は自動アクセル制御でないときには、作業時の平均回転数となるよう制御が可能になると共に、再び作業を開始したときはエンジン回転数を通常の回転状態に制御を行うことができる。このように、急激な負荷の軽減時に作業時の平均回転数となるよう制御が可能となるから、違和感を低減すると共に操作性の向上を図ることができる。
【0041】
また、エンジン回転数が1000回転以下のような低い回転数の場合、通常、エンジンの始動性を優先させて噴射タイミングを進角させるが、通常運転時における1000回転以下の有負荷状態では始動時とは燃焼状態が異なるため、噴射タイミングを進角させた状態では逆に燃費が悪化し、エンジントルクが減少して粘りが出ないという難点があった。
【0042】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、エンジンが始動モード以外のとき、エンジン回転数が1000回転以下で、且つ指示噴射量が一定値以上のときは、噴射タイミングを遅角させるよう制御可能に構成させることにより、図12のフローチャートに示す如く、エンジンの状態確認により始動モードではないときに、エンジン回転数が1000回転以下を確認した状態で、且つ指示噴射量が一定値以上を確認したときは、メイン噴射タイミングを遅角させる。このように、トップ発進やスロー耕耘時等の低回転使用時に回転低下した際に、噴射タイミングを遅角させることで燃費が良好となり、エンジントルクが増大してそれ以上の回転低下を抑止することができる。
【0043】
また、エンジン回転数が1000回転以下のような低い回転数の場合、通常、エンジンの始動性を優先させて噴射パターン、例えば火付きの良いパイロット噴射を行ったりするが、一度エンジンが運転状態となり負荷等によって回転数が低下した際には、スモークが発生し易く、このスモークを制御するにはパイロット噴射では不向きであった。
【0044】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、エンジンが始動モード以外のとき、エンジン回転数が900回転以下で、且つ指示噴射量が一定値以上のときは、噴射パターンをパイロット噴射からアフター噴射に切り替え可能に構成させることにより、図13のフローチャートに示す如く、エンジンの状態確認により始動モードではないときに、エンジン回転数が900回転以下を確認した状態で、且つ指示噴射量が一定値以上を確認したときは、パイロット噴射をOFFすることによりアフター噴射をONすることができる。
【0045】
このアフター噴射については、従来、コモンレールエンジンではノズル耐久性の面から1サイクル当たりの噴射回数が2〜3回等に制限されるため、ECUマップ上でアフター噴射が設定されていても、パイロット噴射が設定されているときは通常ではパイロット噴射が優先されアフター噴射が行われないため、前記の如く、パイロット噴射をOFFするだけで予め設定しておいたアフター噴射がONされることになる。このように、トップ発進やスロー耕耘時等の低回転使用時に回転低下した際に、パイロット噴射からスモーク抑制に効果があるアフター噴射に切り替えることで、スモークの発生量を大幅に減らすことができる。
【0046】
また、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、アクセル開度100%が2秒以上継続したときは、アフター噴射量を略全量とし、それ以外のときはアフター噴射量を60%程度とするよう構成させることにより、図14のフローチャートに示す如く、アフター噴射量を60%程度とする通常作業時に、アクセル開度の確認により開度100%が2秒以上継続したときは、アフター噴射量を略全量とする。
【0047】
このようなアフター噴射を行うことによりスモークを抑制する効果があると共に、アフター噴射量を更に増量することで1サイクルにおいて噴射量を分散させた形となり、結果として噴射期間が延びたのと同じような効果でNoxが低減される。このように、作業時等の如き回転変動が少ないときにはアフター噴射量を多めでNox低減を重視し、路上走行の如きスモークが発生し易い状況ではアフター噴射量を減らしスモーク抑制を重視するといったように、目的別に仕分けすることで排ガスをよりクリーンにすることができる。
【0048】
また、図15の線図に示す如く、エンジンの燃料噴射において、常温時はトルクリミット(噴射量制限)が掛かり難くなるため、アクセルフィルターを効かせてトルクリミットと併用させることでスモークを抑制することができるが、低温時はエンジンフリクションの増加や燃料が冷えている等の原因により、アクセル0%時の指示噴射量が高くなるため、トルクリミットが掛かり易くなりアクセルフィルターを掛けなくてもスモークは抑制される。しかし、このような場合に、アクセルを踏み込むとトルクリミットと共にアクセルフィルターが加わり更にアクセルレスポンスが悪化するという難点があった。
【0049】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTにおいて、水温の高低に応じて設定するアクセルフィルター係数kを、図16の線図に示す如く、0度C以下のときは係数を0(補正なし)とし、60度C以上のときは係数を1とし、0〜60度Cのときは0〜1を直線的に結んだ係数とした構成とすることにより、図17のフローチャートに示す如く、エンジン始動時において水温を監視し、この水温の状態によってアクセルフィルター係数kを決定して変更を行わせる。このように、低温時にはトルクリミットによる噴射量制限自体がアクセルフィルターの役目を果たすため、アクセルフィルターを減量又は解除することによりアクセルレスポンスを向上できると共に、常温時はアクセルフィルターが掛かるためスモークを抑制することができる。
【0050】
また、コンバインの旋回時における回転制御において、CAN通信によりアクセル開度を支持することで、アイソクロナス制御によりエンジン回転数を制御するものは見当らない。
【0051】
そこで、コモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したコンバインにおいて、作業時は全回転域をアイソクロナス制御により回転制御を行うと共に、籾排出時や旋回時はCAN通信によりアクセル開度を変更してエンジン回転数を変更する構成で、負荷率情報により車速を制御することによってエンジン回転数を一定に保持することが可能となる。
【0052】
このような構成により、図18のフローチャートに示す如く、全回転域でアイソクロナス制御を行っているときに、CANメッセージにて送信を行い、図19の線図に示す如く、CANによるアクセル開度の変更を行うと共に、負荷率の確認により車速の制御を行い、エンジン回転数を一定に保持することができる。この変更の完了をCANメッセージにて返信を行う。このように、全域アイソクロナス制御にてCAN通信によりエンジン回転数を制御すると共に、負荷率情報により車速を一定に保持することで、エンジン回転数を一定に保持することができる。
【0053】
また、EGRシステムを有するエンジンにおいて、エンジンの運転状態が急変した場合、最適なEGRの駆動状態になるまでにタイムラグを生じる。このタイムラグによる課題の一つとして、一時的に吸気量不足となり黒煙を排出したり出力が低下する現象がある。
【0054】
そこで、電子制御EGRを有するコモンレール式ディーゼルエンジンEを搭載したトラクターTやコンバイン等の農作業機において、図20に示す如く、該エンジンEのシリンダヘッド5排気側に接続した排気マニホールド24と、ターボ過給器25の排気タービン側25aとを排気経路26により接続すると共に、ターボ過給機25のコンプレッサ25b側と吸気マニホールド23とをインタークーラ27を経て吸気経路28により接続し、排気経路26の途中と吸気経路28の途中とをEGR経路40によって接続して配設させる。
【0055】
該排気経路26にEGR経路40を接続するEGRガス導入側にEGR率調整用のEGRバルブ41を配置し、このEGRバルブ41をECU18によって電気制御可能に接続して構成させる。
【0056】
このような構成により、耕耘作業の開始,刈取作業の開始,旋回動作等によりエンジン負荷が大きく増加側に変化する車両挙動を、位置センサ,加速度センサ,車載カメラの映像等によって予見検出することにより、検出した信号をトリガーとしてEGR率が低下する側にEGRバルブ41を自律的に事前制御を行わせることができる。
【0057】
このEGR率の自律的な事前制御により、全負荷作業中に負荷が大きくなり急激なエンジン回転数の低下が発生した場合においても、図21(a)の線図に示す如く、従来のタイムラグが大きく黒煙排出の多いEGR制御状態から、図21(b)の線図に示す如く、最適なEGR制御状態になるまでのタイムラグを低減することができるから、一時的な吸気量不足をカバーして黒煙排出や出力低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】高トルクマップと低トルクマップの領域に各々配置した作業モードを切り替えるモード切替スイッチの状態を示す平面図。
【図2】高トルクマップと低トルクマップにおける各トルクとエンジン回転数の関係を示す線図。
【図3】コモンレールによる蓄圧式燃料噴射ディーゼルエンジンを示すシステム図。
【図4】コモンレール式ディーゼルエンジンにおける全体構成を示す側面図。
【図5】トラクターにおける全体構成を示す側面図。
【図6】負荷率によってトルクマップを計算し最適マップへの切り替えを行う手順を示すフローチャート。
【図7】低トルクマップによる作業時に負荷率が一定値以上になったとき自動的に高トルクマップへの切り替えを行う手順を示すフローチャート。
【図8】初期設定値をCAN通信により送信しアクセル開度,回転制御方法,トルクカーブ等の変更を行う手順を示すフローチャート。
【図9】高・低のトルクマップにおけるトルクとエンジン回転数の関係においてアクセル開度によるアイソクロナス制御とドループ制御の状態を示す線図。
【図10】作業状態の確認により平均のエンジン回転数を算出し急激に負荷が軽減したとき作業時の平均回転数となる制御を行う手順を示すフローチャート。
【図11】作業時の平均回転数から急激に負荷が軽減したときにおける従来の回転上昇状態に対する本提案の回転制御状態を示す線図。
【図12】始動モード以外のときエンジン回転数が1000回転以下で且つ指示噴射量が一定値以上のときは噴射タイミングを遅角させる手順を示すフローチャート。
【図13】始動モード以外のときエンジン回転数が900回転以下で且つ指示噴射量が一定値以上のときはパイロット噴射のOFFによりアフター噴射をONする手順を示すフローチャート。
【図14】通常作業時にアクセル開度100%が2秒以上継続したときはアフター噴射量を60%程度から略全量とする手順を示すフローチャート。
【図15】常温時に対し低温時の方がトルクリミットが掛かり易くなる状態を示す線図。
【図16】水温の高低に応じてアクセルフィルター係数を設定する状態を示す線図。
【図17】水温の状態によってアクセルフィルター係数を決定して変更を行う手順を示すフローチャート。
【図18】コンバインにてアイソクロナス制御時にCAN通信によりアクセル開度を変更して負荷率を確認し車速の制御を行う手順を示すフローチャート。
【図19】トルクとエンジン回転数の関係においてアクセル開度の状態を示す線図。
【図20】ディーゼルエンジンの吸気経路と排気経路とを接続するEGR経路にEGRバルブを配置した状態を示す概略図。
【図21】(a)全負荷作業中に負荷が大きくなり急激なエンジン回転数の低下が発生した場合における従来のEGR制御状態を示す線図。
【0060】
(b)全負荷作業中に負荷が大きくなり急激なエンジン回転数の低下が発生した場合における本提案のEGR制御状態を示す線図。
【符号の説明】
【0061】
1 モード切替スイッチ
1a 4WD作業モード
1b 前輪増速旋回モード
1c 重耕耘作業モード
1d 通常耕耘作業モード
1e ローダーモード
1f 走行モード
A 高トルクマップ
B 低トルクマップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップ(A)を使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップ(B)を使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ(1)を設けたことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
耕耘作業を行う作業モード時において、前記高トルクマップ(A)と低トルクマップ(B)とをそれぞれ作業内容に応じて切り替え可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のトラクタ。
【請求項1】
コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したトラクターにおいて、高負荷対応の高トルクマップ(A)を使用する複数の作業モードと、通常負荷対応の低トルクマップ(B)を使用する複数の作業モードとを作業内容に応じて切り替え可能に割り付けたモード切替スイッチ(1)を設けたことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
耕耘作業を行う作業モード時において、前記高トルクマップ(A)と低トルクマップ(B)とをそれぞれ作業内容に応じて切り替え可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のトラクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−53806(P2010−53806A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220968(P2008−220968)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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