説明

トラクタ

【課題】 ボンネット内のヒートバランスを良好に確保すること。
【解決手段】 エンジンの前方に、外気吸引ファンを具備するラジエータを配置し、これらをボンネットにより被覆すると共に、同ボンネットに設けたフロントグリル部を通して外気を上記外気吸引ファンにより吸引してラジエータを冷却するようにしたトラクタにおいて、ボンネットの側壁部にラジエータ冷却風排出口部を設けると共に、同ラジエータ冷却風排出口部は後方へ向けて開口させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの一形態として、エンジンの前方に、外気吸引ファンを具備するラジエータを配置し、これらをボンネットにより被覆すると共に、同ボンネットに設けたフロントグリル部を通して外気を上記外気吸引ファンにより吸引してラジエータを冷却するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、ボンネットの側壁部には、ラジエータ冷却風排出用の排気グリルを設けて、同排気グリルを通してラジエータ冷却風を機外へ排出するようにしている。
【特許文献1】特開平7−17439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前方から後方へ向けて流れるラジエータ冷却風は、ボンネットの側壁部に沿って流れる状態にあり、同側壁部に設けられた排気グリルとの位置関係は略平行状態となるために、同排気グリルを通して排気され難いという不具合があり、ボンネット内のヒートバランスを良好に確保できない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明では、エンジンの前方に、外気吸引ファンを具備するラジエータを配置し、これらをボンネットにより被覆すると共に、同ボンネットに設けたフロントグリル部を通して外気を上記外気吸引ファンにより吸引してラジエータを冷却するようにしたトラクタにおいて、ボンネットの側壁部にラジエータ冷却風排出口部を設けると共に、同ラジエータ冷却風排出口部は後方へ向けて開口させたことを特徴とするトラクタを提供するものである。
【0006】
また、本発明は、以下の構成にも特徴を有する。
【0007】
(1)ボンネットの側壁部に、前部が外側方に位置すると共に、後部が内側方に位置する段付き凹部を形成して、同段付き凹部の段部端面にラジエータ冷却風排出口部を形成し、同ラジエータ冷却風排出口部よりも後方に位置するボンネットの側壁部に、ラジエータ冷却風排出口部を通して排出されるラジエータ冷却風のガイド面部を形成すると共に、同ガイド面部は前部側から後部側に向けて後部側が漸次外側方に位置する傾斜面となしたこと。
【0008】
(2)ラジエータ冷却風排出口部は、上下方向に伸延させて形成すると共に、上端部から下端部に向けて漸次広幅に形成したこと。
【発明の効果】
【0009】
(1)請求項1記載の本発明では、エンジンの前方に、外気吸引ファンを具備するラジエータを配置し、これらをボンネットにより被覆すると共に、同ボンネットに設けたフロントグリル部を通して外気を上記外気吸引ファンにより吸引してラジエータを冷却するようにしたトラクタにおいて、ボンネットの側壁部にラジエータ冷却風排出口部を設けると共に、同ラジエータ冷却風排出口部は後方へ向けて開口させている。
【0010】
このようにして、ボンネットの側壁部に設けたラジエータ冷却風排出口部は、後方へ向けて開口させているため、前方から後方へ向けて流れるラジエータ冷却風は、ボンネットの側壁部に沿って流れると共に、ラジエータ冷却風排出口部を通して円滑に機外へ排出される。
【0011】
その結果、ボンネット内のヒートバランスを良好に確保することができて、ラジエータの冷却性能を向上させることができる。
【0012】
(2)請求項2記載の本発明では、ボンネットの側壁部に、前部が外側方に位置すると共に、後部が内側方に位置する段付き凹部を形成して、同段付き凹部の段部端面にラジエータ冷却風排出口部を形成し、同ラジエータ冷却風排出口部よりも後方に位置するボンネットの側壁部に、ラジエータ冷却風排出口部を通して排出されるラジエータ冷却風のガイド面部を形成すると共に、同ガイド面部は前部側から後部側に向けて後部側が漸次外側方に位置する傾斜面となしている。
【0013】
このようにして、ラジエータ冷却風排出口部よりも後方に位置するボンネットの側壁部に形成したガイド面部を、前部側から後部側に向けて後部側が漸次外側方に位置する傾斜面となしているため、ラジエータ冷却風排出口部を通して排出された冷却風を、ガイド面部に沿わせて後方かつ外方へ向けて案内しながら、円滑に流れる排出流路を形成することができる。
【0014】
しかも、後方の運転部に着座して運転操作をしているオペレータの顔等に、ラジエータ冷却風排出口部を通して排出されたラジエータ冷却風が当たらないようにすることができる。
【0015】
その結果、ボンネット内のヒートバランス性を向上させることができると共に、オペレータの運転操作環境を良好に確保することができる。
【0016】
(3)請求項3記載の本発明では、ラジエータ冷却風排出口部は、上下方向に伸延させて形成すると共に、上端部から下端部に向けて漸次広幅に形成している。
【0017】
このようにして、上下方向に伸延させて形成したラジエータ冷却風排出口部を、上端部から下端部に向けて漸次広幅に形成しているため、同ラジエータ冷却風排出口部を通して機外へ排出されるラジエータ冷却風を、後下方へ向けて誘導することができる。
【0018】
従って、この点からも、後方の運転部に着座して運転操作をしているオペレータの顔等に、ラジエータ冷却風排出口部を通して排出されたラジエータ冷却風が当たらないようにすることができる。
【0019】
その結果、ボンネット内のヒートバランス性を向上させることができると共に、オペレータの運転操作環境をより一層良好に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に示すAは、本発明に係るトラクタであり、同トラクタAは、機体フレーム1上に原動機部2を設け、同原動機部2にクラッチ部3を介してミッション部4を連動連設し、同ミッション部4上に運転部5を配設して、上記機体フレーム1の下方にフロントアクスルケース6を介して左右一対の前車輪7,7を連動連結する一方、上記ミッション部4にリヤアクスルケース8,8を介して左右一対の後車輪9,9を連動連結している。
【0021】
原動機部2は、図2にも示すように、機体フレーム1上にエンジン10を搭載し、同エンジン10の直前方位置に、支持枠体11を介して、外気吸引ファン12を具備するラジエータ13を配置し、同ラジエータ13の直前方位置に上記支持枠体11を介してエアクリーナ14を配置し、同エアクリーナ14の直上方位置にプレクリーナ15を配置する一方、上記エアクリーナ14の直下方位置にバッテリー16を配置しており、上記エンジン10の直上方位置に前後方向に伸延させて形成した燃料タンク17を配置して、これらをボンネット18により開閉自在に被覆している。19はマフラー、20は給気配管である。
【0022】
このようにして、原動機部2では、ボンネット18に設けた後述のフロントグリル部を通して外気を上記外気吸引ファン12により吸引してラジエータ13を冷却することができるようにしている。
【0023】
ボンネット18は、図1〜図4に示すように、前下方へやや下り傾斜状に湾曲させて形成した天井部21と、同天井部21の前端縁部より四分の一円弧状に屈曲させて形成した前上部22と、同前上部22の下端縁部より下方へ伸延させて形成した前壁部23と、同前壁部23の左右側縁部及び天井部21の左右側縁部とになめらかに湾曲させて連設した左・右側壁部24,24とから形成している。
【0024】
そして、図3に示すように、前上部22には、機体の前方からボンネット18内を視認することができる視認部25を設けると共に、天井部21の前端左・右側部には、ボンネット18の前部の左・右側方位置から同ボンネット16内に光を採り入れることができる採光窓部26,26を設けている。
【0025】
このようにして、採光窓部26,26を通してボンネット18内に光を採り入れることにより、視認部25を通してボンネット18内、特に、プレクリーナ15の集塵・貯留状況を容易に視認することができようにしている。
【0026】
また、前壁部23には、図1及び図3に示すように、上部に左右一対のヘッドライト27,27を設け、これらのヘッドライト27,27の下方位置に、フロントグリル部としての上段吸気口部28と下段吸気口部29とを上下二段に配置して設けており、各吸気口部28,29には網体(図示せず)を張設している。
【0027】
左・右側壁部24,24は、図1〜図4に示すように、前半部側壁形成体30,30と後半部側壁形成体31,31とから形成しており、前半部側壁形成体30,30は、各側壁部24,24の前半部と各側壁部24,24の後半上縁部とを一体成形して、天井部21と前上部22と前壁部23の各側縁部に連結する一方、後半部側壁形成体31,31は、機体フレーム1に着脱自在に立設している。
【0028】
そして、前半部側壁形成体30には側方吸気口部32を設けており、吸気口部32には網体(図示せず)を張設している。33は、左側の後半部側壁形成体31に形成したマフラー挿通用切欠口である。
【0029】
上記のような構成において、本発明の要旨は、ボンネット18の左・右側壁部24,24にラジエータ冷却風排出口部34,34を設けると共に、同ラジエータ冷却風排出口部34,34は後方へ向けて開口させたことにある。
【0030】
すなわち、ボンネット18の左・右側壁部24,24は、前半部側壁形成体30,30の後端縁部30a,30aが外側方に位置すると共に、後半部側壁形成片31,31の前端縁部31a,31aが内側方に位置するように、後半部側壁形成片31,31に前半部に段付き凹部35,35を形成して、上記前半部側壁形成体30,30の後端縁部30a,30aと後半部側壁形成片31,31の前端縁部31a,31aとにより、後方に向けて開口するラジエータ冷却風排出口部34,34を形成している。
【0031】
しかも、ラジエータ冷却風排出口部34,34よりも後方に位置する後半部側壁形成片31,31の段付き凹部35,35に、各ラジエータ冷却風排出口部34,34を通して排出されるラジエータ冷却風のガイド面部36,36を形成しており、各ガイド面部36,36は、前部側から後部側に向けて後部側が漸次外側方に位置する傾斜面となしている。
【0032】
さらには、ラジエータ冷却風排出口部34,34は、上下方向に伸延させて形成すると共に、上端部34a,34aから下端部34b,34bに向けて漸次広幅に形成している。
【0033】
上記のように、本実施の形態では、ボンネット18の左・右側壁部24,24に設けたラジエータ冷却風排出口部34,34は、後方へ向けて開口させているため、前方から後方へ向けて流れるラジエータ冷却風は、ボンネット18の左・右側壁部24,24に沿って流れると共に、ラジエータ冷却風排出口部34,34を通して円滑に機外へ排出される。aは、ラジエータ冷却風の流れ方向である。
【0034】
その結果、ボンネット18内のヒートバランスを良好に確保することができて、ラジエータ13の冷却性能を向上させることができる。
【0035】
しかも、ラジエータ冷却風排出口部34,34よりも後方に位置する段付き凹部35,35に形成したガイド面部36,36を、前部側から後部側に向けて後部側が漸次外側方に位置する傾斜面となしているため、ラジエータ冷却風排出口部34,34を通して排出された冷却風を、ガイド面部36,36に沿わせて後方かつ外方へ向けて案内しながら、円滑に流れる排出流路を形成することができる。
【0036】
しかも、後方の運転部5に着座して運転操作をしているオペレータの顔等に、ラジエータ冷却風排出口部34,34を通して排出されたラジエータ冷却風が当たらないようにすることができる。
【0037】
その結果、ボンネット18内のヒートバランス性を向上させることができると共に、オペレータの運転操作環境を良好に確保することができる。
【0038】
さらには、上下方向に伸延させて形成したラジエータ冷却風排出口部34,34を、上端部34a,34aから下端部34b,34bに向けて漸次広幅に形成しているため、同ラジエータ冷却風排出口部34,34を通して機外へ排出されるラジエータ冷却風を、後下方へ向けて誘導することができる。
【0039】
従って、この点からも、後方の運転部5に着座して運転操作をしているオペレータの顔等に、ラジエータ冷却風排出口部34,34を通して排出されたラジエータ冷却風が当たらないようにすることができる。
【0040】
その結果、ボンネット18内のヒートバランス性を向上させることができると共に、オペレータの運転操作環境をより一層良好に確保することができる。
【0041】
運転部5は、図1に示すように、原動機部2に設けたボンネット18の後端開口部を閉塞するようにダッシュボード40を配設し、同ダッシュボード40の上面部にメータパネル41を設けて、同メータパネル41の後方位置より上方へステアリングホイール支軸42を突出させて、同ステアリングホイール支軸42の上端部にステアリングホイール43を取り付け、同ステアリングホイール43の後方位置でかつミッション部4の直上方位置に運転席44を配置している。
【0042】
そして、ミッション部4の前部左右側方位置には、運転部5のステップ部45,45を外側方へ張り出し状に形成すると共に、各ステップ部45,45の後端縁部より左・右側後車輪9,9の前方と上方とを被覆する状態に左右一対のフェンダー部46,46を延設している。
【0043】
このようにして、オペレータは、運転席44に着座すると共に、ステップ部45,45上に両足を載せた状態にて、ステアリングホイール43を把持して操作を行うことができるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るトラクタの側面図。
【図2】同トラクタの原動機部の平面説明図。
【図3】同トラクタのボンネットの斜視説明図。
【図4】同ボンネットの断面背面説明図。
【符号の説明】
【0045】
A トラクタ
10 エンジン
11 ラジエータ
12 エアクリーナ
15 プレクリーナ
16 バッテリー
17 燃料タンク
18 ボンネット
34 ラジエータ冷却風排出口部
35 段付き凹部
36 ガイド面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの前方に、外気吸引ファンを具備するラジエータを配置し、これらをボンネットにより被覆すると共に、同ボンネットに設けたフロントグリル部を通して外気を上記外気吸引ファンにより吸引してラジエータを冷却するようにしたトラクタにおいて、
ボンネットの側壁部にラジエータ冷却風排出口部を設けると共に、同ラジエータ冷却風排出口部は後方へ向けて開口させたことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
ボンネットの側壁部に、前部が外側方に位置すると共に、後部が内側方に位置する段付き凹部を形成して、同段付き凹部の段部端面にラジエータ冷却風排出口部を形成し、
同ラジエータ冷却風排出口部よりも後方に位置するボンネットの側壁部に、ラジエータ冷却風排出口部を通して排出されるラジエータ冷却風のガイド面部を形成すると共に、同ガイド面部は前部側から後部側に向けて後部側が漸次外側方に位置する傾斜面となしたことを特徴とする請求項1記載のトラクタ。
【請求項3】
ラジエータ冷却風排出口部は、上下方向に伸延させて形成すると共に、上端部から下端部に向けて漸次広幅に形成したこと特徴とする請求項1又は2記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−62454(P2007−62454A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248397(P2005−248397)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】