説明

トルクリミッタ

【課題】高速回転に対応することのできるトルクリミッタを提供する。
【解決手段】外環部材2と内輪3との間に接続される差動機構20を備え、差動機構20は、第1回転体21である第1傘歯車31、第2回転体22である第2傘歯車32、これらの傘歯車に噛み合う差動部中間歯車23である差動部中間傘歯車33、および差動部支持軸37と、これに対して直交するように一体化し差動部中間傘歯車33が回転可能に設けられた差動部中間軸38とからなる差動回転体24から構成される。第1傘歯車31が外環部材2と一体化され、かつ、差動部支持軸37が内輪3と一体化されることにより、トルク発生時、外環部材2と内輪3との相対回転速度を低くして、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリンタや複写機等の給紙部用に使用されるトルクリミッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタや複写機等の事務機器の給紙部等に使用されているトルクリミッタには、主に摩擦式のものが採用され、例えば、図31に示したものが摩擦式トルクリミッタとして知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記摩擦式トルクリミッタ50は、外環部材51と、その内部に挿入され一端部のボス部52において相対回転可能に支持された内輪53と、その内輪53の外径面に所要の締め代で装着されたコイルばね54と、外環部材51の他端部においてその内径面に嵌合固定され内輪53の外径面との間を閉塞するとともに内輪53を回転自在に支持する蓋部材55とを備えている。
【0004】
コイルばね54は大径部54aと小径部54bを有し、小径部54bを内輪53の外径面に所要の締め代をもって装着されている。小径部54bの端部には軸方向に屈曲したフック54cが設けられ、これを外環部材51のボス部52に係合させている。また大径部54aの端部にも軸方向に屈曲したフック54dが設けられ、これを蓋部材55に係合させている。
【0005】
この摩擦式のトルクリミッタは、外環部材51と内輪53との間に作用するトルクが予め設定する規定トルクよりも小さいときは、外環部材51と内輪53とを一体回転させ、外環部材51と内輪53との間に作用するトルクが大きいときは、内輪53とコイルばね54との滑りにより、外環部材51と内輪53との相対回転を許容するものである。
【0006】
内輪53と外環部材51とが相対回転し、コイルばね54が回転すると、小径部54bにおいて拡径作用が生じ一定の大きさの前記規定トルクを発生させる。
【0007】
前記のトルクリミッタは、例えば、事務機等の給紙部に使用され、図31に示すように、外環部材51のボス部52側端部に紙さばきローラ56の一端部が連結され、内輪53に紙さばきローラ56の軸57が一体回転可能に挿通されたものである。
【0008】
紙さばきローラ56は、図32に示すように、給紙ローラ58が所要のニップ圧をもって接しており、その軸57に給紙ローラ58の回転方向と同方向への駆動力が作用している。この紙さばきローラ56と給紙ローラ58との間に1枚のシート紙59が送られるときは、給紙ローラ58からの回転が紙さばきローラ56を介して外環部材51に伝達される。
【0009】
このとき、紙さばきローラ56と外環部材51とは、給紙ローラ58の回転方向と逆方向に回転し(図32の矢印d参照)、内輪53が紙さばきローラ56の軸57とともに給紙ローラ58と同方向に回転する。
【0010】
この外環部材51と内輪53との相対回転により、コイルばね54の小径部54bにおいて拡径作用が生じて規定トルクを発生させ、さらに、紙さばきローラ56に作用する負荷トルクが前記規定トルク値以上となる。
【0011】
また、シート紙59の重送が発生したときは、重送に伴う摩擦の低下によって負荷トルクがトルクリミッタの規定トルク値よりも小さくなる。このため、外環部材51と紙さばきローラ56とは、給紙ローラ58と同方向に回転する軸57に取り付けられた内輪53側からコイルばね54を介して逆方向に回転され(図32の一点鎖線矢印e参照)、紙さばきローラ56に接したシート紙59を押し戻して重送を解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−96432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、近年、プリンタや複写機等の事務機器はプリント速度の高速化が要求され、それに伴って、給紙部に使用されるトルクリミッタの高速回転化が求められている。
【0014】
特許文献1に記載のトルクリミッタを高速回転させた場合、1枚のシート紙59が送られているとき、給紙ローラ58の回転が伝達される外環部材51と、内輪53とは互いに反対方向に回転している。このため、これらの部材の相対回転の回転数がより大きくなり、回転数が大きくなるに従ってトルクリミッタ内部における発熱量が増え、潤滑剤の劣化、粘性変化等の性状変化により、発生トルクに変動を来たす問題がある。また、コイルばね54と内輪53の外周面に摩耗が進行し、コイルばね54の早期劣化(いわゆるヘタリ)が発生し易くなり、この場合も、発生トルクの変動の原因となる。
【0015】
そこで、この発明の課題は、高速回転に対応することのできるトルクリミッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、この発明に係るトルクリミッタとしては、外環部材または内輪に伝達される回転を差動機構により減速して、外環部材と内輪との相対回転速度を低くする構成を採用したのである。
すなわち、外環部材の内部に内輪を相対回転可能に設け、前記外環部材と内輪との間でトルクを伝達するトルク伝達部材を設け、前記外環部材と内輪との間に作用するトルクが規定トルクよりも小さいときは、前記外環部材と内輪が一体回転し、前記外環部材と内輪との間に作用するトルクが規定トルクよりも大きいときは、前記外環部材または内輪と前記トルク伝達部材との滑りにより、前記外環部材と内輪との相対回転を許容するトルクリミッタにおいて、第1回転体と、第2回転体と、その第1回転体の回転速度と前記第2回転体の回転速度の間の回転速度で回転する差動回転体とを有する差動機構を設け、前記外環部材と前記内輪のうち一方を前記第1回転体と一体回転するように設け、前記外環部材と前記内輪のうち他方を前記差動回転体と一体回転するように設けた構成を採用することができる。
【0017】
この構成によると、外環部材と内輪のうち一方が回転するときに第1回転体が回転し、外環部材と内輪のうち他方と差動機構の差動回転体が一体回転する。この差動回転体は、第1回転体の回転速度と第2回転体の回転速度の間の回転速度で回転する。したがって、外環部材と内輪のうち他方は差動回転体の回転により、外環部材または内輪のいずれか一方に対して減速する。
【0018】
外環部材と内輪のうち他方の回転が減速されることで、前述した従来のトルクリミッタの場合と比較して、外環部材と内輪との相対回転速度が低くなる。その結果、従来のトルクリミッタにおける高速回転による不具合が発生せず、高速回転に対応することが可能となる。
【0019】
この構成において、前記第1回転体と反対向きに回転駆動する軸を備え、その軸を前記第2回転体と一体回転するように設けた構成を採用することができる。
【0020】
この構成においても、差動回転体が第1回転体の回転速度と、第1回転体と反対向きに回転駆動する軸から回転伝達される第2回転体の回転速度との間の回転速度で回転する。この差動回転体の回転により、外環部材と内輪のうち他方は、外環部材または内輪のいずれか一方の回転に対して回転速度が低くなる。これにより、従来のトルクリミッタの場合と比較して、外環部材と内輪との相対回転速度が低くなる。
【0021】
また、第1回転体の回転が停止した場合でも、差動回転体は、第1回転体と反対向きに回転駆動する軸から回転が伝達される第2回転体に対して回転速度が低くなる。これにより、外環部材と、軸の回転速度で一体回転する内輪とが相対回転する従来のトルクリミッタの場合と比較して、外環部材と内輪との相対回転速度が低くなる。
【0022】
上記の課題を解決するために、この発明に係るトルクリミッタとしては、差動機構に伝達される回転を減速して外環部材または内輪に伝えることにより、外環部材と内輪との相対回転速度を低くする構成としては、以下のものを採用することができる。
すなわち、外環部材の内部に内輪を相対回転可能に設け、前記外環部材と内輪との間でトルクを伝達するトルク伝達部材を設け、前記外環部材と内輪との間に作用するトルクが規定トルクよりも小さいときは、前記外環部材と内輪が一体回転し、前記外環部材と内輪との間に作用するトルクが規定トルクよりも大きいときは、前記外環部材または内輪と前記トルク伝達部材との滑りにより、前記外環部材と内輪との相対回転を許容するトルクリミッタにおいて、第1回転体と、第2回転体と、その第1回転体の回転速度と前記第2回転体の回転速度の間の回転速度で回転する差動回転体とを有する差動機構を設け、前記第1回転体と第2回転体のうち一方を回転停止状態に保持し、前記差動回転体を前記外環部材と内輪のうち一方に一体回転するように設けた構成を採用することができる。
【0023】
この構成によると、例えば、第1回転体と第2回転体のうち他方に外部部材から回転が伝達された場合、差動回転体は、第1回転体の回転速度と前記第2回転体の回転速度の間の回転速度で回転するため、その外部部材に対して回転速度が低くなり、その低い回転速度で外環部材と内輪のうち一方が一体回転する。
【0024】
低い回転速度で外環部材と内輪のうち一方が回転すると、外部部材から外環部材に回転が伝達された従来のトルクリミッタの場合と比較して、外環部材と内輪との相対回転速度が低くなる。
【0025】
上記の構成において、前記トルク伝達部材が前記外環部材と内輪との間に介在され前記内輪に対して締め代をもって装着されたコイルばねである構成を採用することができ、前記差動機構としては、傘歯車形式からなるもの(実施例1〜3参照)と、遊星歯車形式からなるもの(実施例4〜6)とすることができる。
【0026】
傘歯車形式からなる差動機構としては、前記内輪と同軸状態に設けられた第1傘歯車および第2傘歯車と、前記第1傘歯車と第2傘歯車との間において両者に噛み合う差動部中間傘歯車と、その差動部中間傘歯車のキャリアである前記差動回転体とを有し、前記第1回転体が前記第1傘歯車とされ、前記第2回転体が前記第2傘歯車とされ、前記差動回転体は前記内輪に対して同軸状態の差動部支持軸と、その差動部支持軸に対して直交するように一体に設けられた差動部中間軸とからなり、前記差動部中間傘歯車を前記差動部中間軸に回転可能に支持した構成を採用することができる。
【0027】
この構成を採用することで、第1回転体とした第1傘歯車と、第2回転体とした第2傘歯車を同軸状態に配置することが可能となり、第1傘歯車と第2傘歯車の歯数に基づいて大きな減速比を得ることできる。
【0028】
また、遊星歯車形式からなる差動機構としては、前記差動機構は、前記内輪と同軸状態に設けられた太陽歯車および内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間において両者に噛み合う遊星歯車と、その遊星歯車のキャリアである前記差動回転体とを有し、前記第1回転体が前記内歯車とされ、前記第2回転体が前記太陽歯車とされ、前記遊星歯車が前記差動回転体に回転可能に支持された構成を採用することができる。
【0029】
この構成によると、内歯車と太陽歯車の間に遊星歯車を噛み合わせる構造であるため、軸方向の寸法を小さくすることが可能となる。また、トルクの伝達時において、遊星歯車に負荷が分散されるため、トルクの伝達ロスを小さくすることができ、比較的大きいトルクを伝達することができる。
【0030】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係るトルクリミッタユニットとしては、上述した構成のトルクリミッタを用いたものとすることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、この発明は、内輪と外環部材の相対回転速度を低くするようにした構成により、高速回転に対応することが可能となる。
また、外環部材と内輪との間にその内輪に対して締め代をもったコイルばねが介在されると、トルク発生時、コイルばねと内輪との間の摩擦による発熱が抑えられ、また、コイルばねおよび内輪の摩耗を抑えられ、長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の断面図
【図2】同上の外環部材と第1傘歯車との係合手段を示す斜視図
【図3】同上の内輪と差動部支持軸との係合手段を示す斜視図
【図4】図1のX−X線における断面図
【図5】(a)実施例1を適用した給紙部を示す概略図、(b)同上の給紙部の重送状態を示す概略図
【図6】実施例1での回転軸が回転する状態の断面図
【図7】図6のX−X線における断面図
【図8】(a)実施例1での給紙部の回転軸が回転する状態の概略図、(b)給紙部のシート紙の重送状態を示す概略図
【図9】実施例2の断面図
【図10】同上の第2傘歯車と紙さばきローラとの係合手段を示す斜視図
【図11】同上の内輪と差動部支持軸との係合手段を示す斜視図
【図12】実施例2の変形例を示す断面図
【図13】実施例2の変形例の使用状態を示す概略図
【図14】実施例2の他の変形例を示す断面図
【図15】実施例3の断面図
【図16】同上の外環部材と差動部支持軸との係合手段を示す斜視図
【図17】実施例3の変形例を示す断面図
【図18】実施例4の断面図
【図19】図18のX−X線における断面図
【図20】実施例4での回転軸が回転する状態の断面図
【図21】図20のX−X線における断面図
【図22】実施例5の断面図
【図23】同上の内輪とキャリアとの係合手段を示す斜視図
【図24】同上の太陽歯車と紙さばきローラとの係合手段を示す斜視図
【図25】実施例5の変形例を示す断面図
【図26】実施例5の変形例の使用状態を示す概略図
【図27】実施例5の他の変形例を示す断面図
【図28】実施例6の断面図
【図29】同上の外環部材とキャリアとの係合手段を示す斜視図
【図30】実施例6の変形例を示す断面図
【図31】従来のトルクリミッタの断面図
【図32】従来の給紙部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明に係るトルクリミッタの実施例を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0034】
この実施例1でのトルクリミッタ1は、図1から図4に示すように、外環部材2と、その内部に挿入され相対回転可能に支持された内輪3と、内輪3の外径面に所要の締め代で装着されたトルク伝達部材であるコイルばね4と、外環部材2の他端部においてその内径面に嵌合固定され内輪3の外径面との間を閉塞するとともに内輪3を回転自在に支持する蓋部材5と、外環部材2と内輪3との間に接続される差動機構20とを備えている。
【0035】
外環部材2は、円筒状に形成され、一端側の閉塞端にボス部6が設けられ、ボス部6の中心部分に軸挿通孔7が設けられる。ボス部6に軸挿通孔7と同心で、かつその軸挿通孔7よりも大径の内輪支持部8が設けられる。外環部材2の他端側の開放端にはその内径面に嵌合固定され内輪3の外径面との間を閉塞する蓋部材5を備えている。また、外環部材2のボス部6側の外面にローラ等の外部部材に対する係合突起11が設けられる。
【0036】
内輪3は前記内輪支持部8および蓋部材5に形成された内輪支持孔9により、外環部材2に対して相対回転可能に支持される。内輪3と外環部材2の軸挿通孔7とに回転軸14が回転可能に挿通されている。また、内輪3としては潤滑油に含浸した焼結金属により形成可能であり、内輪3とコイルばね4との間の摩擦抵抗の低減を図ることができる。
【0037】
内輪3と外環部材2との間に介在されるコイルばね4は、大径部4aと小径部4bとからなり、両端部に軸方向に屈曲させたフック4c、4dが設けられ、それぞれ蓋部材5に形成されたフック穴12、外環部材2のボス部6に形成されたフック穴13に挿入されている。コイルばね4の大径部4aは内輪3の外径面に対しすき間をもって装着され、小径部4bは所定の締め代で内輪3に装着される。
【0038】
外環部材2と内輪3との少なくとも一方に回転が伝達された場合、外環部材2と内輪3との間に作用するトルクが、予め設定された規定トルクよりも小さいときは、外環部材2と内輪3が一体回転する。一方、外環部材2と内輪3との間に作用するトルクが前記の規定トルクよりも大きいときは、外環部材2に係合するコイルばね4の拡径作用により、そのコイルばね4と内輪3の外径面との間に滑りが生じ、外環部材2と内輪3との相対回転を許容する。
【0039】
前記の差動機構20は、第1回転体21と、第2回転体22と、これらの両回転体21、22間において両者に噛み合う差動部中間歯車23と、差動部中間歯車23を回転可能に支持するキャリアである差動回転体24とから構成される。
【0040】
第1回転体21が第1傘歯車31とされ、第2回転体22が第2傘歯車32とされ、第1傘歯車31および第2傘歯車32が内輪3に対して同軸状態にかつ歯が向かい合うように内向きに配置される。この両傘歯車31、32の間に差動部中間歯車23とされる差動部中間傘歯車33が噛み合わされている。第1傘歯車31、第2傘歯車32および差動部中間傘歯車33は同径で同じ歯数に形成されている。
【0041】
第1傘歯車31は、内輪3の径方向外側に回転可能に設けられ、蓋部材5側の端面周縁部に軸方向に形成された係合凹部34を備え、これが外環部材2の開放端側端面に形成された突起15に係合している(図2参照)。この係合により外環部材2が第1傘歯車31と一体回転するように設けられる。
【0042】
第2傘歯車32は、第1傘歯車31側の端面の中心部に円筒状の回転体支持部35が一体に設けられている。回転体支持部35に回転軸14が挿通され、キー36によって回転軸14と第2傘歯車32とが同軸状態に一体回転可能となっている。
【0043】
前記差動回転体24は、内輪3と同軸状態で円筒状の差動部支持軸37と、その差動部支持軸37に対して直交方向の両方向に一体に設けられた差動部中間軸38とから構成される。
【0044】
差動部支持軸37は回転軸14に対して回転可能に設けられ、内輪3側の端面の中心を挟んだ直径方向両側に軸方向への係合突起39が設けられる。図3に示すように、係合突起39が内輪3の他端側端面に形成された係合凹部16に係合して、内輪3が差動部支持軸37と一体回転するように設けられる。
【0045】
なお、差動機構20と、外環部材2および内輪3との接続構造は、内輪3を第1傘歯車31と一体回転するように設け、外環部材2を差動回転体24の差動部支持軸37と一体回転するように設けるようにしてもよい。実施例1での接続構造とすると、外環部材2内の内輪3と、第1傘歯車31を回転可能に支持する差動部支持軸37とを容易に一体回転するように設けることができる。
【0046】
差動部支持軸37内には、図1に示すように、回転軸14を挿通した第2傘歯車32の回転体支持部35が挿入され、回転体支持部35の外周部と差動部支持軸37の内周部との間に軸受40が設けられる。軸受40により差動部支持軸37は回転体支持部35に対して回転可能に支持されている。
【0047】
差動部支持軸37は回転体支持部35に対して軸受40を介して回転可能に支持されているが、軸受40を設けずに回転体支持部35に対して直接に回転可能に支持されるようにしてもよい。軸受40を介して支持されると、差動部支持軸37を円滑に回転させることができ、差動機構20での回転伝達が円滑に行われるため好ましい。
【0048】
両差動部中間軸38、38は、それぞれ差動部中間傘歯車33が回転可能に設けられ、これらが前記第1傘歯車31と第2傘歯車32とに噛み合わされている。差動部中間軸38の端部は差動部中間傘歯車33から外方に突き出し、その突出部分に止め輪41が嵌合されて抜け止めが図られる。
【0049】
なお、前記差動部中間軸38は、外環部材2の回転を内輪3に伝達可能であれば、差動部支持軸37に対して直交方向の一方向にのみ設けることが可能であるが、実施例1のように両方向に設けると、第1傘歯車31および第2傘歯車32と両差動部中間傘歯車33、33とが確実に噛み合い、差動部中間軸38の回転が安定する。
【0050】
差動部中間傘歯車33の外端面と止め輪41との間に、波形ワッシャ42が取り付けられる。波形ワッシャ42は円環状に形成された板ばねであり、差動部中間傘歯車33を第1傘歯車31および第2傘歯車32に押し付ける向きに付勢する。この付勢によって、差動機構20の各傘歯車間での噛み合わせが悪くなることを防止することができる。
【0051】
また、差動機構20は、外環部材2に対して第1傘歯車31を突起15と係合凹部34の係合により一体回転するように設け、内輪3に対して差動回転体24の差動部支持軸37を係合凹部16と係合突起39の係合により一体回転するように設けている。このため、差動機構20は、軸方向に移動させることで、突起15と係合凹部34および係合突起39と係合凹部16を係脱させて、外環部材2および内輪3に対して着脱することができる。これにより、差動機構20を予め組み立てておくことが可能となり、組立て性が向上する。
【0052】
実施例1のトルクリミッタ1は以上のような構成であり、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機等の給紙部に適用可能である。給紙部の紙さばきローラ25の一端部に外環部材2のボス部6側の端部が連結され、紙さばきローラ25の軸としての回転軸14が挿通されることにより使用される。
【0053】
回転軸14が回転しない場合、図示しないモータの駆動力により回転する給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して外環部材2に伝達され、外環部材2が図1の矢印A方向(図5(a)中の矢印a方向)に回転する。
【0054】
外環部材2の回転により、これに係合する第1傘歯車31が矢印A方向に同じ回転速度で回転し、これに噛み合う差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ矢印C、矢印D方向(図4中の矢印C、矢印D方向)に自転する。
【0055】
差動部中間傘歯車33の自転の際、回転軸14は回転していないため、これと一体回転可能に設けられた第2傘歯車32は回転せず、差動部中間傘歯車33、33の回転によって、差動部中間歯車23が回転軸14周りを矢印A方向に公転するとともに、差動回転体24の差動部中間軸38が矢印A方向に回転する(図4中の矢印A参照)。
【0056】
ここで、差動機構20では、第1傘歯車および第2傘歯車において、一方向への回転速度を正の回転速度とし、他方向への回転速度を負の回転速度とすると、差動回転体24の差動部中間軸38の回転速度は、第1傘歯車の回転速度と第2傘歯車の回転速度の平均値となる。したがって、差動部中間軸38は、第1傘歯車31の回転速度と第2傘歯車の回転速度の間の回転速度で回転する。
【0057】
また、差動部中間軸38の回転方向は、第1傘歯車31の回転速度と第2傘歯車32の回転速度のうち相対的な回転速度の速い方(回転数の大きい方)の傘歯車の回転方向と同じ方向となる。
【0058】
この差動機構20によって、第2傘歯車が回転停止状態であるときは、公転する差動部中間傘歯車33、すなわち、差動部中間軸38の回転速度は、外環部材2と一体回転する第1傘歯車の回転速度の2分の1となる。また、差動部中間軸38の回転方向は、前述したように第1傘歯車31の回転方向と同じ方向(矢印A方向)となる。
【0059】
差動部中間軸38の回転により、差動部支持軸37と、差動部支持軸37に係合する内輪3が、第1傘歯車31の回転速度に対して2分の1の回転速度でA方向に回転する。
【0060】
これにより、内輪3が外環部材2に対して2分の1の回転速度で同方向(図1中の矢印A方向)に回転する。その結果、外環部材2と内輪3とは同一方向に回転速度差をもって相対回転し、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0061】
規定トルク発生時、外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタでの外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも低くなり、トルクリミッタ1の高速回転化に対応することができる。また、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、これらの部材の摩耗が抑えられる。
【0062】
また、図5(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、重送に伴う摩擦の低下によって負荷トルクがトルクリミッタ1の規定トルク値よりも小さくなる。このため、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止して、紙さばきローラ25側のシート紙27の送り出しが阻止される。続いて、紙さばきローラ25が停止する状態で、給紙ローラ26が回転することにより、給紙ローラ26側のシート紙27が送り出され、重送が解消される。
【0063】
次に、図8(a)に示すように、図示しないモータの駆動力により紙さばきローラ25の軸(回転軸14)が給紙ローラ26に対して同じ回転速度で同方向(図8(a)中の矢印b方向)に回転する場合、給紙ローラ26と紙さばきローラ25とが同径であれば、給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して外環部材2に伝達され、外環部材2が給紙ローラ26に対して同じ回転速度で、図6の矢印A方向(図8(a)中の矢印a方向)に回転する。
【0064】
また、回転軸14の回転は、給紙ローラ26の回転方向(図8(b)中の矢印b参照)と同じであるため、第1傘歯車31の回転方向と反対向きである図6に示す矢印B方向の回転となり、回転軸14に係合する第2傘歯車32も給紙ローラ26に対して同じ回転速度で矢印B方向に回転する。
【0065】
図6に示すように、外環部材2に係合する第1傘歯車31と、回転軸14と一体回転する第2傘歯車32とが互いに反対向きに回転すると、両部材に噛み合う差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ矢印C、矢印D方向に自転する(図7参照)。
【0066】
第1傘歯車31と第2傘歯車32とが互いに反対向きに同じ回転速度で回転している場合、差動機構20では、前述のように、差動部中間軸38の回転速度は、第1傘歯車31の回転速度と第2傘歯車32の回転速度との平均の回転速度となる。このため、各差動部中間傘歯車33は公転せず、差動部中間軸38は静止し、これに係合した内輪3も静止する。
【0067】
内輪3が静止し、外環部材2が矢印A方向に回転すると、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0068】
規定トルク発生時、外環部材2のみが回転しているため、その外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタにおける外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。したがって、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、両部材の摩耗が抑えられる。
【0069】
また、図8(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、重送に伴う摩擦の低下によって負荷トルクがトルクリミッタ1の規定トルクよりも小さくなる。このため、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断された紙さばきローラ25が停止する。紙さばきローラ25の停止により、外環部材2、これに係合する第1傘歯車31の回転が停止する。
【0070】
第1傘歯車31の回転が停止した状態において、回転軸14の回転により、矢印B方向に回転する第2傘歯車32に噛み合う差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ矢印C、矢印D方向に自転している。このとき、外環部材2は回転していないため、これと一体回転可能に設けられた第1傘歯車31は回転せず、差動部中間傘歯車33、33の自転によって、差動部中間歯車23が公転し、差動部中間軸38が一点鎖線矢印で示したB方向に回転する。
【0071】
差動部中間軸38が回転すると、これと一体の差動部支持軸37と、差動部支持軸37に係合する内輪3が一点鎖線矢印で示したB方向に回転する。内輪3の回転により、その外周面に装着したコイルばね4を介して外環部材2と紙さばきローラ25とが、一点鎖線矢印で示したB方向に回転され(図8(b)の矢印c参照)、紙さばきローラ25に接したシート紙27を押し戻して重送を解消する。
【0072】
この発明の実施例2のトルクリミッタ1を図9から図11に基づいて説明する。
【実施例2】
【0073】
実施例2に係るトルクリミッタ1は、差動機構20が内輪3にのみ連結され、外環部材2が回転停止状態で保持されている点で前述の実施例1と相違するものである。相違する部分を主として説明し、実施例1の構成と同じと考えられる構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0074】
この実施例2では、差動機構20の差動回転体24が、内輪3と同軸状態で円筒状の差動部支持軸37と、その軸方向中央に一体に形成された差動部中間軸38とから構成されている。差動部支持軸37の軸方向両側の外周部に第1傘歯車31、第2傘歯車32がそれぞれ回転可能に設けられ、第1傘歯車31にその回転を規制するストッパ10を備えている。このストッパ10により第1傘歯車31が回転停止状態に保持される。
【0075】
差動部支持軸37は、これに挿通される回転軸14に対して回転可能に設けられ、実施例1の場合と同様、内輪3側の端面にその中心を挟んだ直径方向両側に軸方向への係合突起39が設けられる(図11参照)。係合突起39が内輪3の他端側端面に形成された係合凹部16に係合して、差動部支持軸37と内輪3とが一体回転するように連結されている。
【0076】
差動部中間軸38は、差動部支持軸37に対して直交方向の両方向に一体に設けられ、それぞれに差動部中間傘歯車33が回転可能に設けられ、これらが前記第1傘歯車31と第2傘歯車32とに噛み合わされている。
【0077】
実施例2のトルクリミッタ1は、以上のような構成であり、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能である。給紙部の紙さばきローラ25は、差動機構20側の端面の直径方向両側に軸方向の突起18が形成され、突起18が第2傘歯車32に形成された係合凹部19に係合している(図10参照)。この係合により、紙さばきローラ25と第2傘歯車32が一体回転するように連結される。
【0078】
紙さばきローラ25にその軸として回転軸14が挿通され、外環部材2はボス部6側端部において、回転軸14とともに事務機等の本体部分に固定され、回転停止状態に保持されている。
【0079】
図示しないモータの駆動力により回転する給紙ローラ26からの回転が、紙さばきローラ25を介して第2傘歯車32に伝達され、第2傘歯車32が図9の矢印Aの方向に回転する。
【0080】
第2傘歯車32の回転により、これに噛み合う差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ矢印D方向、C方向に自転する。このとき、ストッパ10によりその回転が規制される第1傘歯車31は回転せず、差動部中間傘歯車33、33の回転によって、回転軸14周りを差動部中間歯車23が矢印A方向に公転するとともに、差動部中間軸38が矢印A方向に回転する。
【0081】
ここで、実施例2における差動機構20では、実施例1のものと同様の作用により、第1傘歯車31が回転しない場合、差動部中間軸38の回転速度は、第2傘歯車32の回転速度の2分の1となり、その回転方向は、第2傘歯車32の回転方向と同方向(図9中のA方向)となる。
【0082】
差動部中間軸38の回転により、これと一体の差動部支持軸37と、差動部支持軸37と係合する内輪3が、第2傘歯車32の回転速度に対して2分の1の回転速度でA方向に回転する。
【0083】
このように、内輪3は回転が減速されるとともに外環部材2に対して相対回転し、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0084】
規定トルク発生時、内輪3のみが回転しているため、外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタにおける外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。したがって、トルクリミッタ1の高速回転化に対応することができ、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、両部材の摩耗が抑えられる。
【0085】
また、図5(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、重送に伴う摩擦の低下によって負荷トルクがトルクリミッタ1の規定トルク値よりも小さくなる。このため、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止して、紙さばきローラ25側のシート紙27の送り出しが阻止される。続いて、紙さばきローラ25が停止する状態で、給紙ローラ26が回転することにより、給紙ローラ26側のシート紙27が送り出され、重送が解消される。
【0086】
上記紙さばきローラ25と第2傘歯車32との接続構造は、駆動力が紙さばきローラ25から第2傘歯車32に伝達可能であれば、適宜に変更することができる。一例として、実施例2の変形例を図12に示す。なお、以下においては、上記実施例2との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成に同符号を用いる。
【0087】
この変形例では、図12に示すように、紙さばきローラ25および差動機構20の差動部支持軸37に挿通された回転軸14が、キー28、29により、紙さばきローラ25および第2傘歯車32に対して一体回転可能となっている。このため、紙さばきローラ25と差動機構20の第2傘歯車32とが回転軸14によって、所要の間隔をおいて接続される。
【0088】
紙さばきローラ25と第2傘歯車32とが相互に間隔をおいて接続されると、回転が紙さばきローラ25から回転軸14を介して第2傘歯車32に伝達される。これにより、例えば、図13に示すように、前述の給紙部において、給紙部のカセットに収められた用紙のサイズに応じて、その用紙の幅方向中央位置に紙さばきローラ25を給紙ローラ26とともに設けることができる。
【0089】
この変形例は、紙さばきローラ25と第2傘歯車32とを回転軸14を介して所要の間隔をおいて接続したものである。このため、前述した実施例2と同様の作用効果を有する。
【0090】
この実施例2の他の変形例を図14に示す。この変形例は、外環部材2の係合突起11に回転軸14と同軸状態の歯車60を一体回転するように設けたものである。なお、以下においては、上記実施例2との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成に同符号を用いる。
【0091】
この変形例は、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能であり、紙さばきローラ25と第2傘歯車32が突起18と係合凹部19の係合により一体回転するように連結されている。
【0092】
また、外環部材2の歯車60は図示しないモータの駆動力により給紙ローラ26に対して同じ回転速度で同方向(図14の矢印B方向)に回転し、歯車60が一体回転するように設けられた外環部材2も、給紙ローラ26に対して同じ回転速度で図14の矢印B方向に回転する。
【0093】
さらに、給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して第2傘歯車32に伝達され、第2傘歯車32が図14の矢印Aの方向に回転する。
【0094】
第2傘歯車32の回転により、差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ矢印C、Dの方向に回転し、差動部中間歯車23が矢印A方向に公転するとともに、差動部中間軸38が矢印A方向に回転する。この回転により、差動部支持軸37に係合する内輪3が、第2傘歯車32の回転速度に対して2分の1の回転速度で矢印A方向に回転する。
【0095】
このように、内輪3は回転が減速され、その内輪3と反対方向に回転する外環部材2に対して相対回転する。その外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタにおいて、外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。
【0096】
一方、図5(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、実施例2の場合と同様に、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止して、第2傘歯車32、差動部中間軸38の回転が停止する。
【0097】
差動部中間軸38の回転停止状態において、外環部材2の回転により、コイルばね4を介して、内輪3が、外環部材2に対して同方向(図14の一点鎖線矢印で示したB方向)にかつ同じ回転速度で回転する。
【0098】
内輪3の回転により、差動部中間軸38が一点鎖線矢印で示したB方向に回転する。このとき、第1傘歯車31はストッパ10により回転停止状態に保持されるため、差動部中間軸38が回転すると、第1傘歯車31に噛み合う差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ一点鎖線で示した矢印C、矢印D方向に自転する。
【0099】
差動部中間傘歯車33、33が自転し、第1傘歯車31が回転停止状態である場合、第2傘歯車32が一点鎖線で示す矢印Bの方向に回転する。
【0100】
ここで、差動機構20によると、実施例2の場合と同様に、第1傘歯車が回転停止状態にあるとき、第2傘歯車32から差動部中間軸38に回転が伝達されると、差動部中間軸38の回転速度は、第2傘歯車32の回転速度の2分の1となり、回転が逆に伝達されると、第2傘歯車の回転速度は差動部中間軸38の回転速度の2倍となる。
【0101】
このように、第2傘歯車32は、その回転が2倍に増速され、回転方向が一点鎖線矢印で示したB方向に回転することで、第2傘歯車32と一体回転する紙さばきローラ25が一点鎖線矢印で示したB方向に回転され、紙さばきローラ25に接したシート紙27を押し戻して重送を解消する。
【0102】
この発明の実施例3のトルクリミッタ1を図15、図16に基づいて説明する。
【実施例3】
【0103】
実施例3に係るトルクリミッタ1は、差動機構20が外環部材2に接続され、差動機構20に対して外環部材2、内輪3およびコイルばね4が軸方向反対向きに設けられている点で前述の実施例2と相違するものである。相違する部分を主として説明し、実施例2の構成と同じと考えられる構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0104】
この実施例3において、外環部材2は、閉塞端側の外端面が差動機構20を臨む状態に配置されており、図16に示すように、外環部材2の閉塞端側の外端面に係合凹部17が直径方向両側に形成されている。
【0105】
差動機構20の差動部支持軸37は、これに挿通される回転軸14に対して回転可能に設けられ、実施例2の場合と同様、外環部材2側の端面に係合突起39が設けられている。係合突起39と外環部材2の係合凹部17の係合により、差動部支持軸37と外環部材2とが一体回転するように接続される。
【0106】
実施例3のトルクリミッタ1は、以上のような構成であり、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能である。給紙部の紙さばきローラ25は、前述の実施例2の場合と同様、その突起18が第2傘歯車32の係合凹部19に係合している(図10参照)。この係合により、紙さばきローラ25と第2傘歯車32が一体回転可能に連結される。
【0107】
紙さばきローラ25にその軸として回転軸14が挿通され、内輪3は外環部材2の開放端側の端部において、キー30により回転軸14とともに事務機等の本体部分に固定され、回転停止状態となっている。
【0108】
図示しないモータの駆動力により回転する給紙ローラ26からの回転が、紙さばきローラ25を介して第2傘歯車32に伝達され、第2傘歯車32が図15の矢印Aの方向に回転する。
【0109】
実施例3における差動機構20は、前述の実施例2のものと同様の作用をするため、第2傘歯車32の回転により、差動部中間傘歯車33、33が自転して、差動部中間歯車23が回転軸14周りを矢印A方向に公転するとともに、差動部中間軸38が矢印A方向に回転する。
【0110】
差動部中間軸38が回転すると、これと一体の差動部支持軸37と、差動部支持軸37と係合する外環部材2が、駆動力が伝達された第2傘歯車32の回転速度に対して2分の1の回転速度でA方向に回転する。
【0111】
これにより、外環部材2は回転が減速されるとともに内輪3に対して相対回転し、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0112】
規定トルク発生時、外環部材2のみが回転しているため、外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタでの外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。したがって、トルクリミッタ1の高速回転化に対応することができ、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、両部材の摩耗が抑えられる。
【0113】
なお、この実施例3において、前述した実施例2の変形例の場合と同様に、紙さばきローラ25と第2傘歯車32とを回転軸14を介して所要の間隔をおいて接続するようにしたものを採用することができる。
【0114】
この実施例3の変形例を図17に示す。この変形例は、内輪3の外環部材2の開放端側に形成した係合突起61に、回転軸14と同軸状態の歯車60を一体回転するように設けたものである。なお、以下においては、前記実施例3との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成に同符号を用いる。
【0115】
この変形例は、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能であり、紙さばきローラ25と第2傘歯車32が突起18と係合凹部19の係合により一体回転するように連結されている。
【0116】
また、内輪3の歯車60は図示しないモータの駆動力により給紙ローラ26に対して同じ回転速度で同方向(図17の矢印B方向)に回転し、歯車60を介して内輪3が給紙ローラ26に対して同じ回転速度で図17の矢印B方向に回転する。
【0117】
さらに、給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して第2傘歯車32に伝達され、第2傘歯車32が図17の矢印Aの方向に回転する。
【0118】
第2傘歯車32の回転により、差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ矢印C、Dの方向に回転し、差動部中間歯車23が矢印A方向に公転するとともに、差動部中間軸38が矢印A方向に回転する。この回転により、差動部支持軸37に係合する外環部材2が第2傘歯車32の回転速度に対して2分の1の回転速度で矢印A方向に回転する。
【0119】
このように、減速された外環部材2と、その外環部材2と反対方向に回転する内輪3とが相対回転する。その外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタでの外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。
【0120】
一方、図5(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、実施例3の場合と同様に、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止して、第2傘歯車32、差動部中間軸38の回転が停止する。
【0121】
差動部中間軸38の回転停止状態において、内輪3の回転により、コイルばね4を介しての締め付けにより外環部材2が、内輪3に対して同方向(図17の一点鎖線矢印で示したB方向)にかつ同じ回転速度で回転する。
【0122】
外環部材2の回転により、差動部中間軸38が一点鎖線矢印で示したB方向に回転する。このとき、第1傘歯車31はストッパ10により回転停止状態に保持されるため、差動部中間軸38が回転すると、第1傘歯車31に噛み合う差動部中間傘歯車33、33がそれぞれ一点鎖線で示した矢印C、矢印D方向に自転する。
【0123】
差動部中間傘歯車33、33が自転し、第1傘歯車31が回転停止状態である場合、第2傘歯車32が一点鎖線で示す矢印Bの方向に回転する。
【0124】
ここで、差動機構20では、実施例3の場合と同様に、第1傘歯車が回転停止状態にあるとき、第2傘歯車32から差動部中間軸38に回転が伝達されると、差動部中間軸38の回転速度は、第2傘歯車32の回転速度の2分の1となり、回転が逆に伝達されると、第2傘歯車の回転速度は差動部中間軸38の回転速度の2倍となる。
【0125】
第2傘歯車32は、回転速度が2倍に増速され、回転方向が一点鎖線矢印で示したB方向に回転することで、第2傘歯車32と一体回転する紙さばきローラ25が一点鎖線矢印で示したB方向に回転され、紙さばきローラ25に接したシート紙27を押し戻して重送を解消する。
【0126】
この発明の実施例4のトルクリミッタ1を図18から図21に基づいて説明する。
【実施例4】
【0127】
実施例4に係るトルクリミッタ1は、前記の実施例1に対して差動機構20が相違するものであり、相違する部分を主として説明し、実施例1の構成と同じと考えられる構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0128】
すなわち、実施例4における差動機構20は、第1回転体21が内歯車44とされ、第2回転体22が太陽歯車43とされ、差動部中間歯車23が内歯車44と太陽歯車43とに噛み合わされた遊星歯車45とされ、差動回転体24は、内輪3に回転可能に挿通される回転軸14に対して回転可能に設けられ、遊星歯車45を回転可能に支持するように設けられたキャリア47とされたものである。
【0129】
太陽歯車43は、内輪3に挿通された回転軸14に対してキー36により一体回転可能に設けられ、その太陽歯車43と同軸状態に内歯車44が回転可能に嵌合されている。
【0130】
内歯車44は、内輪3側端部が開放し、内輪3に対して反対側端部が閉塞する円筒状に形成され、その閉塞側端部の中央部分に太陽歯車43が貫通している。内歯車44の開放端にはその内径面に嵌合固定され内輪3の外径面との間を閉塞する環状の蓋部材48を備え、蓋部材48の中央部分に内輪支持孔49が形成される。
【0131】
内歯車44の内輪3側の端面に軸方向に形成された係合凹部34を備え、これが外環部材2の開放端側端面に形成された突起15に係合している。この係合により内歯車44と外環部材2とが一体回転するように設けられる。
【0132】
また、図19に示すように、内歯車44は内径面に形成された内歯と太陽歯車43との間に環状空間が形成されており、環状空間の中心(回転軸14の軸心)に対して周方向3箇所に等配された遊星歯車45が介在される。各遊星歯車45は内歯車44の内歯と太陽歯車43とに噛み合い、支持軸46により自転可能に支持されている。
【0133】
キャリア47は、一端面に支持軸46が固定された円板状に形成され、内歯車44内に太陽歯車43に対して同軸状態に設けられ、回転軸14が回転可能に挿通されている。遊星歯車45の回転によって、図18に示すように、遊星歯車45を太陽歯車43の周りに公転させるとともに、キャリア47が回転軸14を中心に回転可能となっている。
【0134】
また、キャリア47の支持軸46側に対して反対側の端面にその中心を挟んだ直径方向両側に軸方向への係合突起39が設けられる。係合突起39が内輪3の外環部材2の開放端側端面に形成された係合凹部16に係合して、キャリア47が内輪3に一体回転するように設けられている。
【0135】
差動機構20は、外環部材2に対して内歯車44が係合凹部34により係合し、内輪3に対してキャリア47が係合突起39により係合している。このため、差動機構20は、軸方向に移動させることで、係合凹部34、係合突起39を係脱させて、外環部材2および内輪3に対して着脱することができる。これにより、実施例1の場合と同様、差動機構20を予め組み立てておくことが可能となり、組立て性が向上する。
【0136】
実施例4のトルクリミッタ1は以上のような構成であり、前述の実施例1のトルクリミッタ1と同様、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機等の給紙部に適用可能である。給紙部の紙さばきローラ25の一端部に外環部材2のボス部6側の端部が連結され、紙さばきローラ25の軸としての回転軸14が挿通されることにより使用される。
【0137】
回転軸14が回転しない場合、図示しないモータの駆動力により回転する給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して外環部材2に伝達され、外環部材2が図18の矢印A方向(図5中の矢印a方向)に回転する。
【0138】
外環部材2の回転により、これに係合する内歯車44が矢印A方向に回転し、これに噛み合う各遊星歯車45が自転する。このとき、回転軸14は回転していないため、これと一体回転可能に設けられた太陽歯車43は回転せず、各遊星歯車45が矢印A方向(図19中の矢印A方向)に公転するとともに、差動回転体24のキャリア47が矢印A方向に回転する。
【0139】
ここで、差動機構20では、内歯車44および太陽歯車43の回転速度において、一方向への回転速度を正の回転速度とし、他方向への回転速度を負の回転速度とすると、キャリア47の回転速度は、内歯車44、太陽歯車43および遊星歯車45の歯数に基づいて設定され、内歯車44の回転速度と太陽歯車43の回転速度の間の回転速度となる。また、キャリア47の回転方向は、その回転速度に応じた向きに回転する。
【0140】
この差動機構20により、太陽歯車43が回転停止状態であるときは、キャリア47は、内歯車44よりも減速され、内歯車44の回転方向と同じ方向矢印Aに回転し、キャリア47に係合する内輪3が矢印A方向に回転する。その結果、外環部材2と内輪3とは同一方向に回転速度差をもって相対回転し、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0141】
規定トルク発生時、前述の実施例1の場合と同様、外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタでの外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなり、トルクリミッタ1の高速回転化に対応することができる。また、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、これらの部材の摩耗が抑えられる。
【0142】
また、図5(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、実施例1の場合と同様、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止して、紙さばきローラ25側のシート紙27の送り出しが阻止される。続いて、紙さばきローラ25が停止する状態で、給紙ローラ26が回転することにより、給紙ローラ26側のシート紙27が順次送り出され、重送が解消される。
【0143】
次に、図8(a)に示すように、図示しないモータの駆動力により紙さばきローラ25の軸(回転軸14)が予め設定した回転速度で給紙ローラ26に対して同方向(図8(a)中の矢印b方向)に回転する場合、給紙ローラ26と紙さばきローラ25とが同径であれば、給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して外環部材2に伝達され、外環部材2が給紙ローラ26に対して同じ回転速度で、図20の矢印A方向(図8中の矢印a方向)に回転する。
【0144】
また、回転軸14の回転は、給紙ローラ26の回転方向(図8中の矢印b方向)と同じであるため、図20に示す矢印B方向の回転となり、回転軸14に係合する太陽歯車43も回転軸14と同じ回転速度で矢印B方向に回転する。
【0145】
図20に示すように、外環部材2と係合する内歯車44と太陽歯車43とが互いに反対向きに回転すると、遊星歯車45が自転するとともに、差動機構20により、キャリア47は、内歯車44、太陽歯車43および遊星歯車45の歯数に基づいて設定され、内歯車44の回転速度と太陽歯車43の回転速度の間の回転速度で回転する。すなわち、キャリア47は、外環部材2が係合する内歯車44よりも減速された回転速度で回転する。
【0146】
これにより、キャリア47に係合する内輪3と外環部材2とが相対回転し、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0147】
規定トルク発生時、外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタでの外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転数よりも小さくなり、トルクリミッタ1の高速回転化を図ることができる。また、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、これらの部材の摩耗が抑えられる。
【0148】
また、図8(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、実施例1の場合と同様、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止する。紙さばきローラ25の停止により、外環部材2、これに係合する内歯車44が停止する。
【0149】
内歯車44の停止状態において、回転軸14の回転により、図21中の矢印B方向に回転する太陽歯車43と内歯車44とに噛み合う各遊星歯車45がそれぞれ自転する。このとき、外環部材2は回転していないため、これと係合する内歯車44は回転せず、各遊星歯車45の自転によって、その遊星歯車45が公転し、キャリア47が一点鎖線矢印で示したB方向に回転する。
【0150】
キャリア47が回転すると、これに係合する内輪3が一点鎖線矢印で示したB方向に回転し、その外周面に装着したコイルばね4を介して外環部材2と紙さばきローラ25とが、一点鎖線矢印で示したB方向(図8(b)の矢印c方向)に回転され、紙さばきローラ25に接したシート紙27を押し戻して重送を解消する。
【0151】
この発明の実施例5のトルクリミッタ1を図22、図23に基づいて説明する。
【実施例5】
【0152】
実施例5に係るトルクリミッタ1は、差動機構20が内輪3にのみ接続されている点で前述の実施例4と相違するものである。相違する部分を主として説明し、実施例4の構成と同じと考えられる構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0153】
この実施例5では、キャリア47に設けられた係合突起39と、内輪3の係合凹部16とが係合し、キャリア47と内輪3とが一体回転可能とされ(図23参照)、内歯車44にその回転を規制するストッパ10を備えている。このストッパ10により内歯車44は回転停止状態に保持される。
【0154】
実施例5のトルクリミッタ1は、以上のような構成であり、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能である。給紙部の紙さばきローラ25は、図24に示すように、差動機構20側の端面の直径方向両側に軸方向の突起18が形成され、突起18が太陽歯車43に形成された係合凹部19に係合している。この係合により、紙さばきローラ25と太陽歯車43が一体回転するように連結される。
【0155】
紙さばきローラ25にその軸として回転軸14が挿通され、外環部材2はボス部6側端部において、回転軸14とともに事務機等の本体部分に固定され、回転停止状態となっている。
【0156】
図示しないモータの駆動力により回転する給紙ローラ26からの回転が、紙さばきローラ25を介して太陽歯車43に伝達され、太陽歯車43が図22の矢印Aの方向に回転する。
【0157】
太陽歯車43の回転により、これに噛み合う遊星歯車45がそれぞれ自転する。このとき、内歯車44がストッパ10によりその回転が規制されている場合、内歯車44は回転せず、太陽歯車43の回転によって、遊星歯車45が矢印A方向に公転するとともに、差動回転体24としてのキャリア47が矢印A方向に回転する。
【0158】
実施例5における差動機構20では、前述の実施例4の場合と同様の作用により、内歯車44が回転しない場合、キャリア47の回転は、太陽歯車43の回転に対して減速され、その回転方向は太陽歯車43の回転方向と同方向(図22中のA方向)となる。
【0159】
キャリア47の回転により、これと係合する内輪3は、その回転が減速されるとともに外環部材2に対して相対回転し、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0160】
規定トルク発生時、内輪3のみが回転しているため、外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタにおける外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。したがって、トルクリミッタ1の高速回転化に対応することができ、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、両部材の摩耗が抑えられる。
【0161】
上記紙さばきローラ25と太陽歯車43との接続構造は、駆動力が紙さばきローラ25から太陽歯車43に伝達可能であれば、適宜に変更することができる。一例として、実施例5の変形例を図25に示す。なお、以下においては、上記実施例5との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成に同符号を用いる。
【0162】
この変形例では、図25に示すように、紙さばきローラ25並びに差動機構20の太陽歯車43およびキャリア47に挿通された回転軸14が、キー28、29により、紙さばきローラ25と太陽歯車43に対して一体回転可能となっている。このため、紙さばきローラ25と差動機構20の太陽歯車43とが回転軸14によって、所要の間隔をおいて接続される。
【0163】
紙さばきローラ25と太陽歯車43とが、相互に間隔をおいて接続されると、駆動力が紙さばきローラ25から回転軸14を介して太陽歯車43に伝達される。これにより、例えば、図26に示すように、前述の給紙部において、給紙部のカセットに収められた用紙のサイズに応じて、紙さばきローラ25を用紙の幅方向中央位置に給紙ローラ26とともに設けることができる。
【0164】
この変形例は、紙さばきローラ25と太陽歯車43とを回転軸14を介して所要の間隔をおいて接続したものである。このため、前述した実施例5と同様の作用効果を有する。
【0165】
この実施例5の他の変形例を図27に示す。この変形例は、外環部材2の係合突起11に回転軸14と同軸状態の歯車60を一体回転するように設けたものである。なお、以下においては、上記実施例5との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成に同符号を用いる。
【0166】
この変形例は、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能であり、紙さばきローラ25と太陽歯車43が突起18と係合凹部19の係合により一体回転するように連結されている。
【0167】
また、外環部材2の歯車60は図示しないモータの駆動力により予め設定する回転速度で給紙ローラ26に対して同方向(図27の矢印B方向)に回転し、歯車60が一体回転するように設けられた外環部材2も、図27の矢印B方向に回転する。
【0168】
さらに、給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して太陽歯車43に伝達され、太陽歯車43が図27の矢印Aの方向に回転する。
【0169】
太陽歯車43の回転により、これに噛み合う遊星歯車45がそれぞれ自転する。このとき、内歯車44がストッパ10によりその回転が規制されている場合、内歯車44は回転せず、太陽歯車43の回転によって、遊星歯車45が矢印A方向に公転するとともに、キャリア47が矢印A方向に回転する。
【0170】
キャリア47の回転速度は、差動機構20によって、前述の実施例5の場合と同様、内歯車44が回転しない場合、太陽歯車43の回転速度に対して減速され、その回転方向は太陽歯車43の回転方向と同方向(図27中のA方向)となる。
【0171】
このように、減速されキャリア47と一体回転する内輪3は、反対方向に回転する外環部材2に対して相対回転する。その外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタにおいて、外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。
【0172】
一方、図5(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、実施例5の場合と同様に、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止して、太陽歯車43、キャリア47の回転が停止する。
【0173】
キャリア47の回転停止状態において、外環部材2の回転により、コイルばね4を介して、内輪3が、外環部材2に対して同方向(図27の一点鎖線矢印で示したB方向)にかつ同じ回転速度で回転する。
【0174】
内輪3の回転により、キャリア47が一点鎖線矢印で示したB方向に回転する。このとき、内歯車44はストッパ10により回転停止状態に保持されるため、キャリア47が回転すると、内歯車44に噛み合う各遊星歯車45が自転する。
【0175】
各遊星歯車45が自転し、内歯車44が回転停止状態である場合、太陽歯車43が一点鎖線で示す矢印Bの方向に回転する。
【0176】
ここで、差動機構20によると、内歯車44が回転停止状態にあるとき、太陽歯車43からキャリア47に回転が伝達されると、キャリア47は、その回転が太陽歯車43の回転に対して減速され、回転が逆に伝達されると、太陽歯車43は、その回転がキャリア47の回転に対して増速する。
【0177】
太陽歯車43は、その回転が増速され、回転方向が一点鎖線矢印で示したB方向に回転することで、太陽歯車43と一体回転する紙さばきローラ25が一点鎖線矢印で示したB方向に回転され、紙さばきローラ25に接したシート紙27を押し戻して重送を解消する。
【0178】
この発明の実施例6のトルクリミッタ1を図28、図29に基づいて説明する。
【実施例6】
【0179】
実施例6に係るトルクリミッタ1は、差動機構20が外環部材2に接続され、差動機構20に対して外環部材2、内輪3およびコイルばね4が軸方向反対向きに設けられている点で前述の実施例5と相違するものである。相違する部分を主として説明し、実施例5の構成と同じと考えられる構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0180】
この実施例6において、外環部材2は、閉塞端側の外端面が差動機構20を臨む状態に配置されており、図29に示すように、外環部材2の閉塞端側の外端面に係合凹部17が直径方向両側に形成されている。
【0181】
キャリア47は、これに挿通される回転軸14に対して回転可能に設けられ、実施例5の場合と同様、外環部材2側の端面に係合突起39が設けられている。係合突起39が外環部材2の係合凹部17に係合して、キャリア47と外環部材2とが一体回転するように接続される。
【0182】
実施例6のトルクリミッタ1は、以上のような構成であり、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能である。給紙部の紙さばきローラ25は、前述の実施例5の場合と同様、その突起18が太陽歯車43の係合凹部19に係合している(図28参照)。この係合により、紙さばきローラ25と太陽歯車43が一体回転可能に連結される。
【0183】
紙さばきローラ25にその軸として回転軸14が挿通され、内輪3は外環部材2の開放端側の端部において、キー30により回転軸14とともに事務機等の本体部分に固定され、回転停止状態となっている。
【0184】
実施例6において、図示しないモータの駆動力により回転する給紙ローラ26からの回転が、紙さばきローラ25を介して太陽歯車43に伝達され、太陽歯車43が図28の矢印Aの方向に回転する。
【0185】
実施例6における差動機構20は、前述の実施例5のものと同様の作用をするため、太陽歯車43の回転により、遊星歯車45、45が回転し、内歯車44がストッパ10によりその回転が規制されている場合、遊星歯車45が矢印A方向に公転するとともに、キャリア47が矢印A方向に回転する。
【0186】
キャリア47の回転は、差動機構20によって、前述の実施例5の場合と同様、内歯車44が回転しない場合、太陽歯車43の回転に対して減速され、その回転方向は太陽歯車43の回転方向と同方向(図28中のA方向)となる。
【0187】
これにより、キャリア47と一体回転する外環部材2は、その回転が減速されるとともに内輪3に対して相対回転し、外環部材2に係合したコイルばね4は、小径部4bにおいて生じた拡径作用によって、内輪3の外径面との間で滑りが生じ、一定の大きさのトルク、すなわち、規定トルクが発生する。
【0188】
規定トルク発生時、外環部材2のみが回転しているため、外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタでの外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。したがって、トルクリミッタ1の高速回転化に対応することができ、コイルばね4と内輪3との間の摩擦による発熱が抑えられ、両部材の摩耗が抑えられる。
【0189】
なお、この実施例6において、前述した実施例5の変形例と同様に、紙さばきローラ25と太陽歯車43とを回転軸14を介して所要の間隔をおいて接続するようにしたものを採用することができる。
【0190】
この実施例6の変形例を図30に示す。この変形例は、内輪3の外環部材2の開放端側に形成した係合突起61に、回転軸14と同軸状態の歯車60を一体回転するように設けたものである。なお、以下においては、前記実施例6との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成に同符号を用いる。
【0191】
この変形例は、例えば、図5(a)、(b)に示す事務機器等の給紙部に適用可能であり、紙さばきローラ25と太陽歯車43が突起18と係合凹部19の係合により一体回転するように連結されている。
【0192】
また、内輪3の歯車60は図示しないモータの駆動力により予め設定する回転速度で給紙ローラ26に対して同方向(図30の矢印B方向)に回転し、歯車60を介して内輪3が給紙ローラ26に対して同じ方向の図30の矢印B方向に回転する。
【0193】
さらに、給紙ローラ26からの回転が紙さばきローラ25を介して太陽歯車43に伝達され、太陽歯車43が図30の矢印Aの方向に回転する。
【0194】
差動機構20は、前述の実施例6のものと同様の作用をするため、太陽歯車43の回転により、遊星歯車45、45が回転し、内歯車44がストッパ10によりその回転が規制されている場合、遊星歯車45が矢印A方向に公転するとともに、キャリア47が矢印A方向に回転する。
【0195】
キャリア47の回転速度は、差動機構20によって、前述の実施例6の場合と同様、内歯車44が回転しない場合、太陽歯車43の回転速度に対して減速され、その回転方向は太陽歯車43の回転方向と同方向(図30中のA方向)となる。
【0196】
このように、減速されたキャリア47と一体に回転する外環部材2と、その外環部材2と反対方向に回転する内輪3とが相対回転する。その外環部材2と内輪3との相対回転速度は、従来のトルクリミッタでの外環部材51と内輪53とが反対方向に回転する場合での相対回転速度よりも小さくなる。
【0197】
一方、図5(b)に示すように、シート紙27に重送が発生したときは、実施例6の場合と同様に、給紙ローラ26からの回転伝達が遮断され、紙さばきローラ25が停止して、キャリア47の回転が停止する。
【0198】
キャリア47の回転停止状態において、内輪3の回転により、コイルばね4を介しての締め付けにより外環部材2が、内輪3に対して同方向(図30の一点鎖線矢印で示したB方向)にかつ同じ回転速度で回転する。
【0199】
外環部材2の回転により、キャリア47が一点鎖線矢印で示したB方向に回転する。このとき、内歯車44はストッパ10により回転停止状態に保持されるため、キャリア47が回転すると、内歯車44に噛み合う各遊星歯車45が自転する。
【0200】
各遊星歯車45が自転し、内歯車44が回転停止状態である場合、太陽歯車43が一点鎖線で示す矢印Bの方向に回転する。
【0201】
ここで、差動機構20によると、内歯車44が回転停止状態にあるとき、太陽歯車43からキャリア47に回転が伝達されると、キャリア47は、その回転が太陽歯車43の回転に対して減速され、回転が逆に伝達されると、太陽歯車43は、その回転がキャリア47の回転に対して増速する。
【0202】
太陽歯車43は、その回転が増速され、回転方向が一点鎖線矢印で示したB方向に回転することで、太陽歯車43と一体回転する紙さばきローラ25が一点鎖線矢印で示したB方向に回転され、紙さばきローラ25に接したシート紙27を押し戻して重送を解消する。
【符号の説明】
【0203】
1 トルクリミッタ
2 外環部材
3 内輪
4 コイルばね
4a 大径部
4b 小径部
4c、4d フック
5 蓋部材
6 ボス部
7 軸挿通孔
8 内輪支持部
9 内輪支持孔
10 ストッパ
11 係合突起
12、13 フック穴
14 回転軸
15 突起
16 係合凹部
17 係合凹部
18 突起
19 係合凹部
20 差動機構
21 第1回転体
22 第2回転体
23 差動部中間歯車
24 差動回転体
25 紙さばきローラ
26 給紙ローラ
27 シート紙
28 キー
29 キー
30 キー
31 第1傘歯車
32 第2傘歯車
33 差動部中間傘歯車
34 係合凹部
35 回転体支持部
36 キー
37 差動部支持軸
38 差動部中間軸
39 係合突起
40 軸受
41 止め輪
42 波形ワッシャ
43 太陽歯車
44 内歯車
45 遊星歯車
46 支持軸
47 キャリア
48 蓋部材
49 内輪支持孔
50 トルクリミッタ
51 外環部材
52 ボス部
53 内輪
54 コイルばね
54a 大径部
54b 小径部
54c、54d フック
55 蓋部材
56 紙さばきローラ
57 軸
58 給紙ローラ
59 シート紙
60 歯車
61 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外環部材(2)の内部に内輪(3)を相対回転可能に設け、前記外環部材(2)と内輪(3)との間でトルクを伝達するトルク伝達部材(4)を設け、前記外環部材(2)と内輪(3)との間に作用するトルクが規定トルクよりも小さいときは、前記外環部材(2)と内輪(3)が一体回転し、前記外環部材(2)と内輪(3)との間に作用するトルクが規定トルクよりも大きいときは、前記外環部材(2)または内輪(3)と前記トルク伝達部材(4)との滑りにより、前記外環部材(2)と内輪(3)との相対回転を許容するトルクリミッタにおいて、
第1回転体(21)と、第2回転体(22)と、その第1回転体(21)の回転速度と前記第2回転体(22)の回転速度の間の回転速度で回転する差動回転体(24)とを有する差動機構(20)を設け、
前記外環部材(2)と前記内輪(3)のうち一方を前記第1回転体(21)と一体回転するように設け、前記外環部材(2)と前記内輪(3)のうち他方を前記差動回転体(24)と一体回転するように設けたことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項2】
前記第1回転体(21)と反対向きに回転駆動する軸(14)を備え、その軸(14)を前記第2回転体(22)と一体回転するように設けたことを特徴とする請求項1に記載のトルクリミッタ。
【請求項3】
外環部材(2)の内部に内輪(3)を相対回転可能に設け、前記外環部材(2)と内輪(3)との間でトルクを伝達するトルク伝達部材(4)を設け、前記外環部材(2)と内輪(3)との間に作用するトルクが規定トルクよりも小さいときは、前記外環部材(2)と内輪(3)が一体回転し、前記外環部材(2)と内輪(3)との間に作用するトルクが規定トルクよりも大きいときは、前記外環部材(2)または内輪(3)と前記トルク伝達部材(4)との滑りにより、前記外環部材(2)と内輪(3)との相対回転を許容するトルクリミッタにおいて、
第1回転体(21)と、第2回転体(22)と、その第1回転体(21)の回転速度と前記第2回転体(22)の回転速度の間の回転速度で回転する差動回転体(24)とを有する差動機構(20)を設け、
前記第1回転体(21)と第2回転体(22)のうち一方を回転停止状態に保持し、前記差動回転体(24)を前記外環部材(2)と内輪(3)のうち一方に一体回転するように設けたことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項4】
前記トルク伝達部材が前記外環部材(2)と前記内輪(3)との間に介在され前記内輪(3)に対して締め代をもって装着されたコイルばね(4)であり、
前記差動機構(20)は、前記内輪(3)と同軸状態に設けられた第1傘歯車(31)および第2傘歯車(32)と、前記第1傘歯車(31)と第2傘歯車(32)との間において両者に噛み合う差動部中間傘歯車(33)と、その差動部中間傘歯車(33)のキャリアである前記差動回転体(24)とを有し、前記第1回転体(21)が前記第1傘歯車(31)とされ、前記第2回転体(22)が前記第2傘歯車(32)とされ、
前記差動回転体(24)は前記内輪(3)に対して同軸状態の差動部支持軸(37)と、その差動部支持軸(37)に対して直交するように一体に設けられた差動部中間軸(38)とからなり、前記差動部中間傘歯車(33)を前記差動部中間軸(38)に回転可能に支持したことを特徴とする請求項1または3に記載のトルクリミッタ。
【請求項5】
前記差動部中間軸(38)は、前記差動部中間傘歯車(33)を前記第1傘歯車(31)および前記第2傘歯車(32)に対して押し付ける向きに付勢する弾性体(42)を備えることを特徴とする請求項4に記載のトルクリミッタ。
【請求項6】
前記第2傘歯車(32)が前記差動部支持軸(37)を回転可能に支持する軸受(40)を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載のトルクリミッタ。
【請求項7】
前記差動部中間傘歯車(33)を前記差動部中間軸(38)の両端部に回転可能に設けたことを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載のトルクリミッタ。
【請求項8】
前記第1傘歯車(31)、前記第2傘歯車(32)、および前記差動部中間傘歯車(33)が同径で、かつ同じ歯数であることを特徴とする請求項4から7のいずれか1つに記載のトルクリミッタ。
【請求項9】
前記トルク伝達部材が、前記外環部材(2)と内輪(3)との間に介在され前記内輪(3)に対して締め代をもって装着されたコイルばね(4)であり、
前記差動機構(20)は、前記内輪(3)と同軸状態に設けられた太陽歯車(43)および内歯車(44)と、前記太陽歯車(43)と前記内歯車(44)との間において両者に噛み合う遊星歯車(45)と、その遊星歯車(45)のキャリアである前記差動回転体(24)とを有し、前記第1回転体(21)が前記内歯車(44)とされ、前記第2回転体(22)が前記太陽歯車(43)とされ、前記遊星歯車(45)を前記差動回転体(24)に回転可能に支持した請求項1または3に記載のトルクリミッタ。
【請求項10】
前記外環部材(2)を前記第1回転体(21)と一体回転するように設け、前記内輪(3)を前記差動回転体(24)と一体回転するように設けたことを特徴とする請求項1に記載のトルクリミッタ。
【請求項11】
前記差動機構(20)は前記外環部材(2)に対して前記第1回転体(21)を、前記内輪(3)に対して前記差動回転体(24)を着脱可能に設けたことを特徴とする請求項10に記載のトルクリミッタ。
【請求項12】
前記差動機構(20)は前記第1回転体(21)と前記第2回転体(22)のうち一方の回転を規制するストッパ(10)を備え、このストッパ(10)により前記第1回転体(21)と前記第2回転体(22)のうち一方を回転停止状態に保持したことを特徴とする請求項3に記載のトルクリミッタ。
【請求項13】
前記差動機構(20)は前記外環部材(2)と前記内輪(3)のうち一方に対して、前記差動回転体(24)を着脱可能に設けたことを特徴とする請求項3に記載のトルクリミッタ。
【請求項14】
前記内輪が潤滑油に浸漬した焼結金属により形成されたことを特徴とする請求項1から13のいずれか1つに記載のトルクリミッタ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載のトルクリミッタを用いたトルクリミッタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−190419(P2010−190419A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203538(P2009−203538)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】