説明

トレンチゲート型半導体装置およびその製造方法

【課題】ワイドバンドギャップ半導体材料を用いた場合でも、オーム性接触を改善するとともに、熱拡散法による横方向拡散を利用せずにセルピッチを縮小することができ、オン抵抗を低減できるトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】トレンチゲート型MOS構造を自己整合によって形成することと、第1トレンチ10aを形成するために用いる第1絶縁膜と第2絶縁膜を有する第1マスクのうち、第1絶縁膜を第2トレンチ10bを形成した後も残し、ソース電極23のうちソースコンタクト領域6aにのみ接するべき電極材料をリフトオフするために用いることにより、オーム性接触を改善するとともに、セルピッチを縮小してオン抵抗の小さいトレンチゲート型MOSFETの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置およびその製造方法、特には、炭化珪素半導体(以降SiCと略記)あるいはAlGaN系半導体を含むIII族窒化物半導体などのワイドバンドギャップ半導体を用いるトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体(以降SiCともいう)あるいはIII族窒化物半導体(以降、AlGaNと略記する。ただし、ここで、AlGaNとはAlNとGaNとの混晶であるが、GaNだけの場合も含む。)を用いて高耐圧パワーデバイスを作製すると、オン抵抗を大幅に低減できる可能性がある。SiCを用いた耐圧1〜1.2kV級のMISFETによって、5mΩcm2以下のオン抵抗が得られており、これは、同じ耐圧クラスのシリコン半導体(以降Siと略記)製IGBTに比較して、オン抵抗が半分以下である。今後、コストの低減と性能向上が進めば、インバーター部品としてSi製IGBTの大半を置き換える可能性も考えられる。
SiCやAlGaN等を用いることでオン抵抗を大幅に低減できるのは、SiCやAlGaN等がSiよりワイドバンドギャップを有して高い絶縁破壊電界を有するので、同じ耐圧を実現するために、耐圧層を薄く、また耐圧層のドーピング密度を高くすることにより抵抗をSiに比べて2桁以上低減することができるからである。
MISFET、IGBTなどは、n型である耐圧層とp型であるボディー領域の間のpn接合によって、耐圧を維持している。さらにMISFETやIGBTにおけるボディー領域のドーピング量あるいは不純物密度は、耐圧よりもチャネル移動度や(ゲート)閾値電圧に大きく影響する。ボディー領域のドーピング量あるいは不純物密度が高すぎると、閾値電圧が不必要に高くなるとともに、チャネル移動度が著しく低下するので、好ましくない。この点からは、SiC製やAlGaN製MISFETやIGBTにおけるボディー領域の不純物密度はSiの場合に比べてあまり高くすることができないという制約を受ける。
【0003】
一方、耐圧層の不純物密度に関しては、同じ耐圧であれば、SiCやAlGaN等の方が、Siよりも1〜2桁高い。したがって、特にSiCやAlGaN等の場合、耐圧層だけでなく、耐圧層との不純物密度差の小さいボディー領域にも、その分、空乏層が延びやすいという特徴がある。
ところで、SiCやAlGaN等を用いたMISFETにおいては、耐圧層の抵抗が低減する結果、耐圧層以外の抵抗成分、すなわち、チャネル抵抗や、いわゆるDMOS型構造の場合には、いわゆるJFET抵抗の比率が相対的に大きくなり、無視できない抵抗成分となる。JFET抵抗成分については、いわゆるトレンチゲート構造を採用することにより除去することが知られている。もう一方のチャネル抵抗を下げる一方法としてはチャネル長を短くする方法が有効である。しかし、前記トレンチゲート構造の場合にチャネル長を短くするにはボディー領域の厚さを薄くする必要がある。ボディー領域の厚さを薄くすると、オフ電圧によりボディー領域がすべて空乏化するパンチスルー状態となり易く、SiCやAlGaN等の有する高い絶縁破壊電界から期待される高耐圧特性に悪影響を及ぼす。
チャネル抵抗を下げる別の方法は、単位面積あたりのチャネル密度を増加させることである。一般に、パワーデバイスでは、主電流の流れる活性領域は、この活性領域内に配置されるユニットセルの集合体として構成される。各ユニットセルには必ずチャネルが含まれるので、一ユニットセル寸法を小さくする、言い換えるとユニットセルの繰り返し幅(セルピッチという)を狭くすれば、単位面積あたりのチャネル密度を増加することができる。つまり、チャネル抵抗を下げるにはセルピッチを縮小すればよい。
【0004】
次に、前記セルピッチを縮小する方法について以下説明する。一般に、半導体デバイスの製造においてはフォトリソグラフィー工程が必須である。製造工程において複数回のフォトリソグラフィー工程が行われる場合に、前工程のフォトパターンに次工程のフォトパターンをマスク合わせするというプロセスが必要となる。一般に、このマスク合わせプロセスの回数が多くなると、マスク合わせ精度の低下が解像度に比べて無視できなくなる。たとえば、ある市販g線ステッパーの場合、解像限界が1μmなのに対して、最大で一回当り0.4〜0.8μmのマスク合わせ誤差を生じる。最大値に範囲があるのは、装置限界は0.4μmであるが、現実には、生産性を考えると0.8μm程度まで許容する必要があるためである。フォトリソグラフィー工程が1回(マスク合わせなし)であれば、セルピッチは最小でたとえば2μmまで小さくすることができるが、フォトリソグラフィー工程が2回(マスク合わせ1回)であると、セルピッチは最小でたとえば3.6〜5.2μmも必要となる。したがって、マスク合わせの回数が増えるほど、最小セルピッチを増大せざるを得なくなる。
一方、SiやGaAsなど用に設計された解像度の高い(高性能な)ステッパーあるいは類似装置(ステッパー等という)の場合、通常でマスク合わせ誤差の小さいマスク合わせ機構が組み込まれている。しかし、このような高性能なステッパー等は、短波長の光源を用いているため、焦点深度が浅いことが多い。ところが、SiCは特殊なバルク成長法の関係から、また、AlGaN等は主としてサファイア、SiCあるいはSi基板にヘテロエピタキシャル成長によって形成される関係から、積層基板に大きく不均一な反りが発生し、前記のような高性能なステッパー等の浅い焦点深度では、1ショット内で全面に適切に露光ができない事態が生じ易い。したがって、別の技術的な進展により前述した積層基板の反りが改善されるまでの当面の間、焦点深度が深い、すなわち、多少の反りがあってもマスク合わせが可能な、ステッパーを用いざるを得ない。したがって、SiCあるいはAlGaNなどではセルピッチを縮小するためには、前述のような解像度の高いステッパー等を採用することができないので、マスク合わせ回数の少ない製造プロセスにして、合わせ誤差の累積による精度低下を小さくすることが望ましいのである。
【0005】
Si半導体のように、熱拡散法によって不純物ドーピングを行うことが可能な場合、たとえば、次のようなSi製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法によって、自己整合的にユニットセルの構造を形成することにより、マスク合わせ回数を減らすことのできる方法が知られている。
Siのウエハプロセスにおける前記セルピッチとトレンチ幅の具体例について、後でSiCおよびAlGaN等のプロセスの場合のセルピッチと比較するために、以下説明する。前記g線ステッパーを用いる場合、トレンチ幅は、たとえば1μm(解像限界に一致する)であるが、製造工程における制約から、セルピッチはたとえば4μmとなる。
前記製造工程における制約の詳細については、次に述べる図13および図14〜図17に示すSi製トレンチゲート型MOSFETの要部断面図およびその製造工程毎の要部断面図を参照して説明する。
図14のSiウエハ(積層基板)の要部断面図に示すように、まず、バルクのn型Si半導体基板1を用意する。この基板1の一方の主面(おもて面という)に、n型で所定のドーピング量と層厚のSiエピタキシャル成長層を形成する。以降、基板1のように基板の後ろに符号1を付す場合はバルク基板であるサブストレートを言い、符号なしで単に半導体基板、積層基板、ウエハ、Siウエハ、SiCウエハなどと言う場合はサブストレートの上に機能層、機能領域を積層および形成した積層基板全体を言うこととする。次に、前記n型のSiエピタキシャル成長層の表面から主電流の流れる活性領域部分にホウ素を熱拡散して、p型であるボディー領域5を形成する。表面にボディー領域5が形成された前記n型のSiエピタキシャル成長層のうち、前記ボディー領域の下層部分または残りの部分(ボディー領域5以外のSiエピタキシャル成長層部分)は、耐圧層3となる。続いて、このウエハのおもて面の全面に所定の膜厚の酸化膜を形成し、適宜パターニングしてマスク酸化膜101を形成する。ここで、マスク酸化膜101の幅および隣接するマスク酸化膜101との間隔は、望むのであれば、それぞれ用いるステッパーの解像限界まで小さくすることができ、それらの幅および間隔はたとえば1μmである。ただし、本例においては、後の熱拡散の都合上、マスク酸化膜101の幅は少し広く、たとえば3μmとしておく。前記マスク酸化膜の間隔1μmと幅3μmとを併せた4μmが、以降の説明で作り込まれることになるユニットセルのセルピッチとなる。その後、マスク酸化膜101の間隔(開口部)のウエハ表面からリンをイオン注入し、熱処理することで、ソース領域6を形成する(図15)。この際、イオン注入したリンが熱拡散するので、図15の要部断面図に示すように、ソース領域6は主面に平行な方向(横方向ということもある)にも拡散しマスク酸化膜101の下に回りこむ。その回り込み幅は、たとえば1μmである。また、一般的なイオン注入装置を用いてリンをイオン注入できる深さは、高々0.8μm程度であるが、熱拡散によって、ソース領域6の深さ(pn接合深さ)を、たとえば2μm程度にすることができる。
【0006】
次に、同じマスク酸化膜101をエッチングマスクとして用い、Siウエハを表面から異方性エッチングして、図16の要部断面図に示すように、耐圧層3に到達する深さのトレンチ10を形成する。その後、図17の要部断面図に示すように、トレンチ10の内壁面にゲート絶縁膜11を形成する。続いて、高ドープ(高ドーピング量または高不純物密度)の多結晶シリコンをSiウエハ全面に成膜して、ゲートパッド付近(図示せず)を保護した後、エッチバックすることにより、トレンチ10の内部に所要の高さまでゲート電極12を埋め込む。この結果、トレンチ内部のゲート電極12はゲート絶縁膜11を介してソース領域6とボディー領域5と耐圧層3とに対向することになる。
同様に、適宜ドープしたSiO2膜をSiウエハ全面に成膜して、適宜エッチバックすることにより、トレンチ10内部の前記ゲート電極12上に層間絶縁膜21を埋め込む。図17に示すように、ゲート電極12の上端は、ソース領域6の下端と上端の間になければならない。また、層間絶縁膜21は堆積法により形成するため、熱酸化膜よりも耐圧が低く、所定のゲート耐圧を得るために、ある程度の厚さが必要である。また、エッチバックの際の作製余裕(寸法的な余裕)も必要である。この作製余裕は、ゲート電極12と同様に、もっぱらソース領域6の厚さによって与えられる。このような事情から、ソース領域6の厚さとして、前述のように2μm程度の厚みが必要となる。
【0007】
最後に、Siウエハのおもて面と裏面について、それぞれ不要な堆積物等を除去した上で、それぞれ所定のソース電極23とドレイン電極22、およびゲートパッド電極(図示せず)を形成すると、図13に示すSi製のトレンチゲート型MOSFETが完成する。
前記図13〜図17を参照して説明した従来のSi製トレンチゲート型MOSFETおよびその製造方法の中で重要なことは、ユニットセルを形成するためのフォトリソグラフィー工程は、マスク酸化膜101をパターニングするための1回だけで済むことである。ポリシリコン層やSiO2膜をエッチバックする工程においては、ゲートパッド等を形成するためにフォトリソグラフィー工程を要するが、ユニットセルには位置を合わせるべきパターンがなく自己整合するので、パターン合わせ誤差に関係なくセルピッチ値を決めることができるのである。その結果、セルピッチを縮小することができる。
以上、説明したように、ユニットセルを自己整合的に形成することは、ユニットセルを形成するに必要なフォトリソグラフィー工程の回数を減らして形成できることを意味するので、同時にパターン合わせ誤差が少なくなることを意味する。このようにSiではイオン注入法と熱拡散法とを併せた不純物ドーピングが可能であるので、ユニットセルを自己整合的に形成することにより、パターン合わせ誤差を考慮する必要の無い製造方法とすることができるので、セルピッチを縮小することが容易となるのである。
【0008】
しかし、SiCやAlGaN等のワイドバンドギャップ半導体の場合には、ドナーやアクセプタとなる不純物の拡散係数が著しく小さいため、熱拡散法は高温すぎて量産的な生産方法としては非現実的であり、熱拡散法を生産ラインに取り入れることは困難であるので、Siと同様の製造方法によっては、ユニットセルを自己整合的に形成することはできない。すなわち、前述のように従来の自己整合的なユニットセルの形成のためには、選択的、または局所的な不純物ドーピングの際に、イオン注入法と熱拡散法を併せた不純物ドーピングにより得られる所定の不純物プロファイルを形成する必要があるからである。つまり、イオン注入法では横方向への不純物の拡散がほとんどないため、前記図15と図16で説明したSiウエハの断面パターンに示されるようなソース領域6とトレンチ10の配置パターンを全く同一のマスクで(つまりパターン合わせ無しに)自己整合的に形成するプロセスを採用することはできないのである。
また、一般的なイオン注入装置を用いてイオン注入を行う場合には、ソース領域のイオン注入深さは、高々1μm以下である。そのため、ゲート電極12と層間絶縁膜21をエッチバックする際の作製余裕が足りないことが多い。したがって、SiC製トレンチゲート型MOSFETの場合には、従来、たとえば次のようなユニットセル構造およびその製造方法によらざるを得なかったのである。
【0009】
図18に、従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETにおけるユニットセルの要部断面図を示す。主要な構造は前記図13に示したSi製トレンチゲート型MOSFETと同様であるから、同様の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図18において、前記図13と異なる特徴的な点は、層間絶縁膜21がトレンチ10の上方にはみ出していることである。さらに、ソース電極23は、層間絶縁膜21に設けたコンタクトホール20を充填することによりSiCウエハ表面にオーム性接触している。またさらに、図18では、前記図13でボディー領域5がSiウエハ表面に露出する部分の表面層に相当する領域(符号なし)に、高ドープの第2導電型ボディーコンタクト領域7が設けられている。同様に、図18では、前記図13のソース領域6に相当する領域が、ソース領域6の表面層にあたる高ドープの第1導電型ソースコンタクト領域6aと、下層部にあたる第1導電型ソース拡張領域6bとに分けられる構成となっている。前記ボディーコンタクト領域7の表面と前記ソースコンタクト領域6aの表面は共通にソース電極23がオーム性接触している。
SiC製トレンチゲート型MOSFETにおけるトレンチ幅とセルピッチは、図18と前記図13では寸法的に正確な図面ではないので、図面上は同じ寸法に見えるが、実際に同じg線ステッパーを用いて製造するには、前述した前記図13に示すSiの場合のセルピッチ4μmより、少なくとも25%増の5μmにしなければならない。生産性を考えると、前記セルピッチは、さらに175%以上増の11μmになるように、トレンチ10の間隔を広げて設計する必要がある。
【0010】
従来のSiC製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を、図19〜図22および図18を参照して順を追って以下説明する。図19のSiC製トレンチゲート型MOSFETの要部断面図に示すように、n型SiC半導体基板1の一方の主面(おもて面という)に、エピタキシャル成長により全面に、n型である所定のドーピング密度と膜厚を有する耐圧層3と、p型である所定のドーピング密度と膜厚を有するボディー層をこの順にそれぞれ成膜する。前記ボディー層のドーピング密度は、図18に示すボディー領域5のドーピング密度に一致する。この段階における前記ボディー層の膜厚は、ボディー領域5とボディーコンタクト領域7の厚さの和に一致する。
次に、前述のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造工程と同様に、フォトリソグラフィー工程において位置合わせに用いるマーカー(図示せず)を形成する。続いて、たとえば、プラズマCVDによりSiO2膜を堆積し、前記Siと同様のフォトリソグラフィーによって、これを所定の開口部を有するようにパターニングして、ボディーコンタクト領域用のイオン注入マスクとする(図示せず)。この工程には、フォトリソグラフィー工程が必要である。続いて、ウエハをたとえば500℃に加熱した上で、表面から0.4μm程度まで、アルミニウムをイオン注入する。イオン注入深さは、1価のアルミニウムを用いて一般的な400keVイオン注入装置で安定的に実現できる加速エネルギーによって概ね決まっている。次に、不活性ガス(少量のSiH4等を添加してもよい)中で所定の温度・時間で熱処理(活性化アニールという)を行って、イオン注入したアルミニウムを電気的に活性化させるとともに、注入損傷を回復する。ボディーコンタクト領域7の活性化アニールが終了した状態での要部断面図が前記図19となる。
【0011】
次に、同様の方法によって、ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bのためのイオン注入と活性化アニールを行う。ソースコンタクト領域6aには、高ドープが可能なリンの1価イオンを用いて、表面から0.35μm程度まで注入する。ソース拡張領域6bには、たとえば1〜2価の窒素イオンを用いて、0.8μm程度まで注入する。なお、ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bには、同一のマスクを用いることができ、活性化アニールも同時に行って差し支えない。ただし、前記ボディーコンタクト領域7との位置関係は、フォトリソグラフィーの位置合わせによって決まるので、最大の変位を生じた場合でも、平面視にてボディーコンタクト領域7がソースコンタクト領域6a内に完全に含まれて、無くなってしまうことのないように、適切に設計しなければならない。たとえば前記g線ステッパーを用いる場合、ボディーコンタクト領域7の幅として、0.8〜1.6μm以上必要であり、パターン変換誤差を考えると1〜2μm以上とするのが安全である。ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bの活性化アニールが終了した状態での要部断面図を図20に示す。
その後、前記Si製トレンチゲート型MOSFETと同様に、たとえばSiO2膜からなる適切な開口部を有するエッチングマスク(図示せず)を用いて、図21の要部断面図に示すように、トレンチ10を形成する。この際、エッチングマスクに適切な開口部を設けるために、フォトリソグラフィー工程を必要とする。トレンチ10の幅は、ゲート絶縁膜11とゲート電極12とを形成できる範囲内で、望む限り小さくしても差し支えない。トレンチ10は、終端部を除き、平面視にて、ソースコンタクト領域6aの内部になければならない。また、後に形成するコンタクトホール20の端部は、平面視にて、トレンチ10とボディーコンタクト領域7の間になければならない。したがって、ボディーコンタクト領域7の端部とコンタクトホール20の端部、ならびにコンタクトホール20の端部とトレンチ10の端部は、たとえば前記g線ステッパーを用いる場合、それぞれ、0.8〜1.6μm以上離す必要があり、パターン変換誤差を考えると1〜2μm以上離すのが安全である。以上により、セルピッチは、少なくとも5〜9μm以上必要であり、パターン変換誤差を考えると6〜11μm以上とするのが安全である。トレンチ10形成まで終了した状態の要部断面図を図21に示す。
【0012】
続いて、トレンチ10の内壁面にゲート絶縁膜11を形成した後、前記Si製トレンチゲート型MOSFETと同様に、高ドープのポリシリコン層を堆積させ、続いてエッチバックして、ゲート電極12をトレンチ10内の所要の高さに埋め込む。その後、層間絶縁膜21をウエハ全面に堆積するが、前記Siの場合と異なり、エッチバックは行わず、代わりに、層間絶縁膜21にコンタクトホール20を形成する。この際に、フォトリソグラフィーが必要である。平面視にてのボディーコンタクト領域7とトレンチ10との位置関係については、前述したとおりである。コンタクトホール20形成まで終了した状態の要部断面図を図22に示す。
次に、たとえば、ニッケルとチタン膜を順にスパッタ成膜してパターニングする。ただし、パターニングの際に、セルには合わせるべきパターンはなく、セルの全面にニッケルとチタン膜(あるいはこれらとSiCとの反応生成物)が残っていてもよい。すなわち、ソースコンタクト領域6aとボディーコンタクト領域7の両方に、同じようにニッケルとチタン膜が接触していてもよい。これらの金属をパターニングする方法は、いくつかあるが、もっとも単純には、単にフォトリソグラフィーを行ったのち、エッチングするものである。別の方法として、熱処理を行ってSiCと金属を反応させ、その後、未反応の金属を薬品に溶解して除去する、いわゆるサリサイド工程によりパターンを形成することもできる。その後、ウエハのおもて面をフォトレジスト等で保護し、裏面の不要な堆積物等を除去した後、裏面にたとえばニッケルとチタン膜を順にスパッタ成膜する。ウエハのおもて面のフォトレジストを除去した後、熱処理を行って、ドレイン電極22およびソース電極23とSiCウエハ表面とのオーム性接触を得る。この際の前記熱処理温度はアルミニウムの融点(約630℃)よりも高い温度が好ましいとされる。したがって、ソース電極の最上層としてニッケルとチタン膜の上にアルミニウム膜を積層することが多い通常のMOSFETでは、このアルミニウム膜を成膜する前に、前記熱処理を完了していなければならない。この後は、Siと同様に、アルミニウム膜等を適宜成膜してパターニングすることにより、ソース電極23の残りの部分(図示されていないソース電極部分)および図示しないゲートパッド電極を形成する。ドレイン電極22の残りの部分(図示されていないドレイン電極部分)もSiと同様に所定の金属を成膜して、前記図18のSiC製トレンチゲート型MOSFETが完成する。
【0013】
以上説明したSiC製トレンチゲート型MOSFET以外に、よく知られた他のSiC半導体装置の製造方法の公知技術として次のものがある。p型多結晶シリコン層および浅いn型多結晶シリコン層上に堆積したハードマスクを選択的にエッチングした残部分をマスクにして、前記p型多結晶シリコン層中にn型不純物をイオン注入してn型多結晶シリコン層を形成する。次に側壁の材料となる膜を等方的に堆積して異方性エッチングを行い、前記ハードマスクの側面に側壁を形成し、ハードマスクおよび側壁をマスクとして前記n型多結晶シリコン層をエッチングすることにより、自己整合的にn型多結晶シリコン層の幅を充分に狭くする方法が知られている(特許文献1)。
セルフアラインにより素子分離領域を形成することに関する記載がある(特許文献2)。多段リセス溝の形成を自己整合的に歩留まり良く製造することに関する記述がある(特許文献3、4)。第一のマスクを使ってウエットエッチングすることにより、2段溝構造を形成するリセス構造に関する記述がある(特許文献5)。自己整合型二重酸化物UMOSFETに関する記載がある(特許文献6)。
【特許文献1】特開2007−27491号公報(要約、段落0011)
【特許文献2】特開平4−209541号公報
【特許文献3】特開平3−184334号公報
【特許文献4】特開平4−206838号公報
【特許文献5】特開平4−196542号公報
【特許文献6】特表2005−505138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のように、SiCにあっては、主としてニッケルの作用により、高ドープn型であるソースコンタクト領域6a表面に対して良好なオーム性接触が得られるとともに、高ドープp型であるボディーコンタクト領域7表面に対してもオーム性接触が得られる(図22)。
しかしながら、ニッケル膜を用いた場合には、ボディーコンタクト領域7表面に対するオーム性接触は、比較的高抵抗となるのが一般的である。用途によって、この高抵抗が問題になる場合は、ボディーコンタクト領域7表面に対して、チタン・アルミニウム合金膜にするなど、ソースコンタクト領域6a表面とは別の金属を接触させて、接触抵抗を小さくする必要がある。
AlGaN等の場合のオーム性接触は、さらに困難な状況であって、n型領域表面に対してはチタンやアルミニウムによって良好なオーム性接触が得られるが、これらの金属によってp型領域表面に対してオーム性接触を得るのは容易ではない。
これらの問題に対して、フォトリソグラフィー技術も用いることにより、ソースコンタクト領域6aと異なる金属電極をボディーコンタクト領域7に接触させてオーム性接触を改善することは可能ではあるが、その場合には、マスク合わせ余裕のために、セルピッチが著しく広がってしまう新たな問題が生ずる。たとえば前記g線ステッパーを用いる場合、ソースコンタクト領域6aとボディーコンタクト領域7に対して同じ金属を接触させる場合のセルピッチは前記のように2ミクロン(解像限界の2倍)とすることができるのに対し、前記のようにして異なる金属を接触させる場合には、セルピッチは最低でも3.6〜5.2ミクロン、パターン変換誤差を見込むと実際には4〜6ミクロン必要となる。したがって、セルピッチは2〜3倍に広がるという問題がある。
【0015】
本発明は、前述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ワイドバンドギャップ半導体材料を用いた場合でも、オーム性接触を改善するとともに、熱拡散法による横方向拡散を利用せずにセルピッチを縮小することができ、オン抵抗を低減できるトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、トレンチゲート型MOS構造を自己整合方法によって形成することと、第1トレンチ10aを形成するために用いる第1絶縁膜と第2絶縁膜を有する第1マスクのうち、第1絶縁膜を第2トレンチ10bを形成した後も残し、ソース電極23のうちソースコンタクト領域6aにのみ接するべき電極材料をリフトオフするために用いることにより、オーム性接触を改善するとともに、セルピッチを縮小してオン抵抗の小さいトレンチゲート型MOSFETの製造方法とすることによって、前記本発明の目的は達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワイドバンドギャップ半導体材料を用いた場合でも、オーム性接触を改善するとともに、熱拡散法による横方向拡散を利用せずにセルピッチを縮小することができ、オン抵抗を低減できるトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。たとえば、トレンチIGBT等、他のトレンチゲート構造を有するMOS型半導体装置にも適用することができる。
図1〜図8は本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのユニットセルの要部断面図である。図9〜図12は本発明の実施例2にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのユニットセルの要部断面図である。
【実施例1】
【0019】
実施例1では、図1にセルの要部断面図を示すAlGaN製トレンチゲート型MOSFETについて説明する。ソース電極は第1金属電極であるソースコンタクト電極23a、第2金属電極であるボディーコンタクト電極23b、上層のチタン、窒化チタン、アルミニウムなどの積層膜からなるトップ電極23cとに分けられている。これらの積層金属膜全体で、通常のソース電極と同様の機能を発揮するものである。
ボディーコンタクト領域7はp型に対してオーム性接触を得やすくするため、たとえばマグネシウムと酸素を同時ドープすることにより、高ドープの表面密度を有する領域とすること、および/または、たとえばアルミニウム組成を成長方向に変化させることにより、量子井戸構造とすることができる。n型のソースコンタクト領域6aとn型のソース拡張領域6bは、たとえばシリコンをイオン注入して形成する。
n型のソースコンタクト領域6aは、たとえば深さが0.3μmで、原子密度がたとえば2×1020cm-3のボックスプロファイルであり、n型のソース拡張領域6bは、トレンチ10aの底面からの深さがたとえば0.9μmで、原子密度がたとえば5×1018cm-3のボックスプロファイルとなるようにする。本実施例1においては、ゲート電極12と層間絶縁膜21をエッチバックするための製造余裕が足りないので、一般的ではないMeV級イオン注入装置を用いて、シリコンを0.9μm程度の深さまでイオン注入する。
【0020】
基板1は、AlGaN(AlNとGaNとの混晶)等の自立基板であってもよいし、たとえばSiのようにAlGaN等をヘテロエピタキシャル成長できるものであってもよい。また、仮に基板1がサファイア基板のように導電性でない場合には、従来知られているサファイア基板上に形成されるInGaNの発光ダイオードと同様に、ドレイン電極22を基板1のおもて面側に形成する構成にしてもよい。
以下では簡単のため、基板1はn型Siであって、適切なバッファ層を介して、耐圧層3以降のAlGaN層がヘテロエピタキシャル成長されているものとして説明を続ける。図1のAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルピッチは、たとえば2μmである。第1トレンチ10aの幅は、たとえば1μm(解像限界に一致する)、第2トレンチ10bの幅は、たとえば0.6μmとすることができる。なお、n型とp型の導電型を入れ替えた層構成も可能であるが、SiCと同様、AlGaNでも電子のほうが正孔よりも移動度が大きいので、主要なキャリアが電子であることが好まれ、したがって、前述の層構成とすることが好ましい。
このAlGaN製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を、図2〜図8と前記図1を参照して、順を追って説明する。まず、図2に示すように、Si基板1の上に、耐圧層3、ボディー層5−1、ボディーコンタクト層7−1を順にAlGaNのヘテロエピタキシャル成長によりそれぞれ成膜する。AlGaNの組成(AlNとGaNの比率)は、すべての層で同じであってもよいし、異なるものであってもよいが、以下では簡単のため、量子井戸構造を含むボディーコンタクト層7−1を除き、すべての層がGaN層であるとして説明を続ける。
【0021】
耐圧層3とボディー層5−1のドーピングと膜厚は、製造誤差を勘案して、所望の特性が得られるように適宜選択すべきものである。たとえば、600V耐圧の場合、耐圧層3はドーピングがたとえば1.2×1016cm-3で膜厚がたとえば7μm、ボディー層5−1はドーピングがたとえば2×1017cm-3で、ボディー領域5の膜厚(ソース拡張領域6bと耐圧層3にはさまれた厚さをいい、チャネル長に一致する)がたとえば1.5μmとなるように調整する。ボディーコンタクト層7−1の厚さは、エピタキシャル成長によって制御可能であって、この後の製造工程で不用意になくなってしまう危険性のない膜厚であれば、どのようなものであっても差し支えないが、たとえば0.5μmとする。
次に、第1絶縁膜である窒化珪素膜(酸素や水素を含んでいてもよい)をウエハ全面に所定の膜厚、たとえば1μm堆積した上に、さらに第2絶縁膜であるSiO2膜を全面に成膜後、前記SiO2膜と窒化珪素膜の両方を共通のパターンでエッチングして、第1マスク106aを形成する。第1マスク106aは、下部窒化珪素膜107aと上部SiO2膜107bからなる。第1マスクの下部窒化珪素膜107aは、後でソースコンタクト電極23aをリフトオフするために利用されるので、ある程度の膜厚と、この後の熱処理に対する耐性は必要である。たとえば、熱リン酸に溶解するような、ソースコンタクト電極23aに対して選別的にエッチング除去できる材料であれば、他の膜であってもよい。
【0022】
第1マスクの上部SiO2膜107bは、ボディーコンタクト層7−1、ボディー層5−1を異方性エッチングして第1トレンチ10aと第2トレンチ10bを形成するためのものであり、これらの目的のために十分な厚さがあればよく、たとえば1μmもあれば、十分である。ただし、第1マスクの下部窒化珪素膜107aと上部SiO2膜107bを合わせて、ソース拡張領域6bに注入するイオン(たとえばシリコン)に対して十分なマスク材となる不純物密度と膜厚を有している必要がある。
続いて、図3に示すように、第1マスク106aを用いてボディーコンタクト層7−1を異方性エッチングして、ボディー層5−1に到達する深さの第1トレンチ10aを形成する。前記ボディーコンタクト層7−1の残部は、ボディーコンタクト領域7となる。一般に、AlGaN層等の異方性エッチングには主としてCl系ガスが用いられるが、窒化珪素膜は多少サイドエッチングを受けることがある。もし、サイドエッチング量が大きすぎるのであれば、第1トレンチ10aを形成するエッチングの前に、このあと説明する側壁保護膜107cと同様に、側壁保護膜を形成しておくことができる。
次に、図4に示すように、再びSiO2膜を全面に成膜後、ウエハ全面でSiO2膜を異方性エッチングして、少なくとも第1マスクの下部窒化珪素膜107aの開口部の側壁に、SiO2膜からなる側壁保護膜107cを形成する。この際、第1マスクの上部SiO2膜107bの開口部の側壁および上面には、SiO2膜が形成されてもよいし、形成されなくてもよいし、さらには第1マスクの上部SiO2膜107bが一部エッチングされてもよい。側壁保護膜107cの厚さ(側方への長さをいう)は、たとえば0.1μmもあれば十分である。
【0023】
続いて、図5に示すように、第1マスク106aと側壁保護膜107cをマスクとして、たとえばシリコンをボディー層5−1の表面にイオン注入する。次に、ウエハの全面に、熱処理を行う際に、表面荒れあるいは半導体表面の組成変化が問題となるのであれば、熱処理に先立って、シリコン酸化膜などの第2絶縁膜とGaN層とに対して選別してエッチング除去できる窒化珪素などのキャップ材料を成膜した後、たとえば窒素雰囲気にて1300℃で熱処理を行って、イオン注入したシリコンを活性化させることにより、ソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bを形成する。SiCと違って、活性化アニールの温度が1300℃でもよく、一方で第1マスクがSiO2膜であれば、1350℃程度まではマスクとしての機能を失うことはないので、この時点で活性化アニールを完了できる。もし、活性化アニールに1350℃を超える温度が必要であれば、SiCと同様に、ここでは必要に応じて変質を防ぐための熱処理を行うにとどめ、第2トレンチ10bを形成して第2マスク110bと側壁保護膜107cと第1マスクの上部SiO2膜107bを除去した後に、あらためて活性化アニールを行えばよい。第1マスクの下部窒化珪素膜107aだけであれば、成膜条件にもよるが、少なくとも1400℃までは耐えられる。その後、たとえば熱リン酸に浸漬して、窒化珪素からなる前記キャップを除去する。
【0024】
次に、図6に示すように、第1マスク106aと側壁保護膜107cを残したまま、さらにウエハ全面にSiO2膜を成膜して、ウエハ全面でSiO2膜を異方性エッチングすることにより、少なくとも側壁保護膜107cの側面に、第2マスク110bを形成する。側壁保護膜107cと同様に、第1マスクの上部SiO2膜107bの開口部の側壁および上面には、SiO2膜が形成されてもよいし、形成されなくてもよいし、さらには第1マスクの上部SiO2膜107bが一部エッチングされてもよい。第2マスク110bの厚さ(側方への長さをいう)は、たとえば0.1μmとする。
続いて、第2マスク110bと側壁保護膜107cと第1マスク106aを用いて、ソースコンタクト領域6aの表面から耐圧層3に達する深さに異方性エッチングして、第2トレンチ10bを形成する(図7)。次に、たとえば希フッ酸に浸して、SiO2膜からなる第2マスク110bと側壁保護膜107cと第1マスクの上部SiO2膜107b(第2絶縁膜)を除去する。この際、第1マスクの下部窒化珪素膜107aがなくなってしまわないように、処理条件には注意を要する。
次に、窒化珪素膜とSiO2膜を順次成膜して、少なくとも第2トレンチ10bの側壁面と底面に、窒化珪素膜とSiO2膜からなるゲート絶縁膜11を形成する。実際には、この際、第1トレンチ10aの側壁面と底面ならびに、第1マスクの下部窒化珪素膜107aの側面と上面にも、窒化珪素膜とSiO2膜が成膜される。次に、高密度にホウ素をドープした多結晶シリコンをウエハ全面に成膜して、ゲートパッド(図示せず)付近を保護した後、エッチバックすることにより、第2トレンチ10b内にゲート電極12を埋め込む。同様に、適宜ドープしたSiO2膜をウエハ全面に成膜して、適宜エッチバックすることにより、第2トレンチ10bの内部に層間絶縁膜21を埋め込む。この際、第1トレンチ10aの側壁面と底面ならびに、第1マスクの下部窒化珪素膜107aの側面と上面に成膜されていたゲート絶縁膜11のうち、SiO2膜の部分は同時に除去される。その後、ごく短時間だけたとえば熱リン酸に浸すか、フッ素系・塩素系混合プラズマで異方性エッチングして、第1トレンチ10aの少なくとも底面に残っている窒化珪素膜を除去する。ただし、第1マスクの下部窒化珪素膜107aがなくなってしまわないように、注意する。
【0025】
続いて、図8に示すように、EB(Electron Beam)蒸着により、たとえば、チタンとパラジウムを、たとえば10ナノメートルずつ、この順に成膜する。その後、熱リン酸に浸すと、第1マスクの下部窒化珪素膜107a(第1絶縁膜)が除去されるので、ボディーコンタクト領域7の上に成膜されたチタンとパラジウムがリフトオフされ、ソースコンタクト領域6aの上に、ソースコンタクト電極23aが残る。
次に、フォトリソグラフィーによりセル付近のみを開口したレジストパターン(図示せず)を形成し、さらに、たとえばパラジウムを、たとえばEB蒸着により成膜した後、有機溶媒に浸してレジストを除去すると、セル以外のパラジウムがリフトオフされ、図1に示すように、ボディーコンタクト領域7およびソースコンタクト領域6aの上に、ボディーコンタクト電極23bが残る。ソースコンタクト電極23a上の金属はトップ電極23cの一部となるので、わざわざ除去する必要はない。その後、たとえば800℃にて窒素雰囲気で熱処理して、ソースコンタクト領域6aとボディーコンタクト領域7に対してオーム性接触を得る。
その後、Siの場合のプロセスと同様に、たとえばチタン、窒化チタン、アルミニウムを順に積層してパターニングすることにより、トップ電極23c部分を形成する。最後に、Siと同様に、裏面側にドレイン電極22を形成する。
【0026】
以上により、図1に示すAlGaN製トレンチゲート型MOSFETが完成する。このように、本発明によれば、n型領域表面とp型領域表面に対して異なる金属電極を接触させて良好なオーム性接触を得る金属電極構成としているにもかかわらず、自己整合的にセルの構造を形成できるので、セルピッチの縮小にも効果がある。
【実施例2】
【0027】
実施例2では、図9にセルの要部断面図を示すAlGaN製トレンチゲート型MOSFETについて説明する。構成要素の多くは、前記実施例1と同様であるから、同一の構成要素には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。本実施例2においては、ソース領域6は、第1トレンチ10aの少なくとも内部に、選択エピタキシャル成長により形成される(第1トレンチ10aの上にはみ出してもよい)。この場合、ソース領域6の厚さは、第1トレンチ10aの深さによって任意に決定できるので、前記実施例1のように一般的ではない高エネルギーイオン注入に頼らなくても、ゲート電極12と層間絶縁膜21をエッチバックする余裕を確保できることを特徴とする。前記実施例1と同じステッパー等を用いると、第1トレンチ10aの幅は、たとえば0.8μmとなる。第2トレンチ10bの幅は、前記実施例1と同じく、たとえば0.6μmとなる。セルピッチは、前記実施例1と同じで、たとえば2μmとなる。
このAlGaN製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を、図10〜図12と前記図9を参照し、順を追って説明する。大方は前記実施例1と同様であるから、前記実施例1と異なる部分を中心に説明する。まず、図10に示すように、前述の実施例1と同様にSi基板1の上に、耐圧層3、ボディー層5−1、ボディーコンタクト層7−1を順にAlGaNのヘテロエピタキシャル成長によりそれぞれ成膜する。
【0028】
次に、窒化珪素膜およびSiO2膜をウエハ全面に成膜した後、パターニングして、第1マスク106aのうち、それぞれ下部窒化珪素膜107aおよび上部SiO2膜107bとする。次に、再びSiO2膜を全面に成膜してエッチバックすることにより、少なくとも第1マスクの下部窒化珪素膜107aの開口部の側壁に、SiO2膜からなる側壁保護膜107cを形成する。側壁保護膜107cの厚さ(側方への長さをいう)は、たとえば0.1μmとする。その後、側壁保護膜107cと第1マスク106aを用いて、GaN層であるボディーコンタクト層の表面から異方性エッチングして、第1トレンチ10aを形成する。図10は第1トレンチ10aを形成した後の図面であるので、ボディーコンタクト層を第1トレンチ10aにより区分した後のボディーコンタクト領域7を表示している。第1トレンチ10aのエッチングの深さは、所望するソース領域6の厚さに応じて決まり、たとえば1.5μmである。
その後、図11に示すように、第1マスク106aと側壁保護膜107cをマスクとして、第1トレンチ10aの内部に選択エピタキシャル成長を行い、高ドープのn型のソース領域6を形成する。図11では、ソース領域6の表面がボディーコンタクト領域7の表面と一致しているが、ソース領域6の表面は選択エピタキシャル成長の条件に依存し、必ずしもこのようにならなくてもよい。
【0029】
続いて、図12に示すように、第1マスク106aと側壁保護膜107cを残したまま、さらに、ウエハ全面にSiO2膜を成膜して、ウエハ全面でSiO2膜を異方性エッチングすることにより、少なくとも側壁保護膜107cの側面に、第2マスク110bを形成する。第2マスク110bの厚さ(側方への長さをいう)は、たとえば0.1μmとする。
続いて、第2マスク110bと側壁保護膜107cと第1マスク106aを用いて、n型のソース領域6の表面から異方性エッチングして、第2トレンチ10bを形成する。この後の工程は、前記実施例1と同様である。まず、たとえば希フッ酸に浸して、SiO2膜からなる第2マスク110bと側壁保護膜107cと第1マスクの上部SiO2膜107bを除去する。次に、窒化珪素膜とSiO2膜を順次成膜して、少なくとも第2トレンチ10bの側壁面と底面に、窒化珪素膜とSiO2膜からなるゲート絶縁膜11を形成する。その後、高ドープのポリシリコンを成膜・エッチバックして、第2トレンチ10bにゲート電極12を埋め込む。同様に、適宜ドープしたSiO2膜を成膜・エッチバックして、第2トレンチ10b内の、前記ゲート電極12上に層間絶縁膜21を埋め込む。
次に、第1トレンチ10aの少なくとも底面に残っている窒化珪素膜を除去する。続いて、EB蒸着により、たとえばチタンとパラジウムを、成膜する。その後、熱リン酸に浸して第1マスクの下部窒化珪素膜107aを除去することにより、チタンとパラジウムをリフトオフして、ソースコンタクト電極23aを形成する。次に、たとえばパラジウムをリフトオフして、ボディーコンタクト電極23bを形成する。続いて、熱処理を行って、ソースコンタクト領域6aとボディーコンタクト領域7に対してオーム性接触を得る。その後、Siの場合のプロセスと同様に、トップ電極23c部分を形成する。最後に、Siと同様に、ドレイン電極22を形成する。以上により、図9のAlGaN製トレンチゲート型MOSFETが完成する。
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、n型とp型に対して異なる金属電極を接触させて良好なオーム性接触としているにもかかわらず、自己整合的にセルの構造を形成できるので、セルピッチの縮小およびオン抵抗の低減に役立つ。特に実施例2では、前記実施例1と比べて、高エネルギーイオン注入に頼らなくても、ゲート電極12と層間絶縁膜21をエッチバックする余裕を確保できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その8)を示す。
【図2】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その1)を示す。
【図3】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その2)を示す。
【図4】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その3)を示す。
【図5】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その4)を示す。
【図6】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その5)示す。
【図7】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その6)を示す。
【図8】本発明の実施例1にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その7)を示す。
【図9】実施例2にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETのセルの要部断面図(その4)を示す。
【図10】実施例2にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETの製造工程において、第1トレンチ10aの形成が終了した状態の要部断面図(その1)を示す。
【図11】実施例2にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETの製造工程において、ソース領域6の形成が終了した状態の要部断面図(その2)を示す。
【図12】実施例2にかかるAlGaN製トレンチゲート型MOSFETの製造工程において、ソース領域6の形成が終了した状態の要部断面図(その3)を示す。
【図13】従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法説明するためのセルの要部断面図(その5)を示す。
【図14】従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その1)を示す。
【図15】従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その2)を示す。
【図16】従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その3)を示す。
【図17】従来のSi製トレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その4)を示す。
【図18】従来のSiCトレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その5)を示す。
【図19】従来のSiCトレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その1)を示す。
【図20】従来のSiCトレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その2)を示す。
【図21】従来のSiCトレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その3)を示す。
【図22】従来のSiCトレンチゲート型MOSFETの製造方法を説明するためのセルの要部断面図(その4)を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 基板
3 耐圧層(ドリフト層)
5 ボディー領域
5−1 ボディー層
6 ソース領域
6a ソースコンタクト領域
6b ソース拡張領域
7 ボディーコンタクト領域
7−1 ボディーコンタクト層
10a 第1トレンチ
10b 第2トレンチ
11 ゲート絶縁膜
12 ゲート電極
21 層間絶縁膜
22 ドレイン電極
23 ソース電極
23a ソースコンタクト電極
23b ボディーコンタクト電極
23c トップ電極
106a 第1マスク
107a 下部窒化珪素膜
107b 上部SiO2
107c 側壁保護膜
110b 第2マスク。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル成長させることが可能であるバルク基板の一方の主面に、それぞれ所要の比率のAlNとGaNの混晶半導体を主要材料とする、第1導電型の耐圧層と第2導電型のボディー層と第2導電型のボディーコンタクト層とをこの順にエピタキシャル成長により積層する第一工程と、前記ボディーコンタクト層の表面に第1絶縁膜と、該第1絶縁膜と溶解液を異にする第2絶縁膜とをこの順に形成した後、異方性エッチングにより前記第1絶縁膜と第2絶縁膜とを貫通する第1開口部を形成して第1マスクとし、該第1マスクを用いて異方性エッチングにより前記第1開口部から前記ボディー層に達する深さの第1トレンチを形成する第二工程と、前記第1トレンチ内の前記第1絶縁膜側壁に該第1絶縁膜と溶解液を異にする第3絶縁膜を形成した後、前記第1トレンチ底部へソースコンタクト領域およびソース拡張領域を形成する第三工程と、第4絶縁膜を成膜し、前記第1トレンチ底部に異方性エッチングにより第2開口部を形成して第2マスクとし、該第2マスクを用いて異方性エッチングにより前記第2開口部から前記耐圧層に達する深さの第2トレンチを形成する第四工程と、前記第2絶縁膜を除去し、第2トレンチ内面に形成されるゲート絶縁膜を介してゲート電極と層間絶縁膜を埋め込み、ソースコンタクト領域表面に対してオーム性接触を与える第1金属電極膜を成膜した後、前記第1絶縁膜を除去すると同時に該第1絶縁膜上の前記第1金属電極膜をリフトオフして除去する第五工程と、前記ボディーコンタクト領域表面に対してオーム性接触を与える第2金属電極膜を成膜する第六工程をこの順に含むことを特徴とするトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記エピタキシャル成長させることが可能であるバルク基板が、AlGaN混晶半導体基板、シリコン半導体基板、サファイア基板のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1絶縁膜が窒化シリコン系絶縁膜であり、前記第2乃至第4絶縁膜がシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1または2記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1金属電極膜が前記ソースコンタクト領域表面に接触する金属がチタンとパラジウムであり、前記第2金属電極膜が前記ボディーコンタクト領域表面と接触する金属がパラジウムであることを特徴とする請求項3記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第五工程における第1金属電極膜のリフトオフは、前記第1絶縁膜を熱リン酸により除去して行うことを特徴とする請求項4に記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記所要の比率のAlNとGaNの混晶半導体に換えて単独のGaN半導体を用いることを特徴とする請求項1記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1トレンチ底部へソースコンタクト領域およびソース拡張領域を形成する第三工程が、それぞれイオン注入により領域形成が行われるとともに、該イオン注入後、前記第2マスクとする第4絶縁膜を形成する前に、注入イオンの活性化熱処理が行われることを特徴とする請求項1記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記活性化熱処理の温度が1350℃以下であることを特徴とする請求項7記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記活性化熱処理の前に、前記第2絶縁膜とAlNとGaN混晶半導体材料に対してエッチングによる選別性を有する窒化珪素膜をキャップ材料として形成することを特徴とする請求項8記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ボディーコンタクト領域が、オーム性接触が得られる所定の表面不純物密度を有するようにエピタキシャル成長の際の同時ドーピングにより形成される工程および/または当該所定の量子井戸構造を形成するように混晶組成が成長方向に制御される工程を有することを特徴とする請求項1記載のトレンチゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項11】
エピタキシャル成長させることが可能であるバルク基板の一方の主面に第1導電型の耐圧層と第2導電型のボディー層と高ドープであって選択的に載置される複数の第2導電型のボディーコンタクト領域とをこの順に備え、前記選択的に載置される複数のボディーコンタクト領域の間のボディー層の表面層に上層の第1導電型のソースコンタクト領域と下層の第1導電型のソース拡張領域とを有し、前記第1導電型のソースコンタクト領域の表面から、前記複数のボディーコンタクト領域間の距離より狭い幅と前記耐圧層に達する深さとを有するトレンチを有し、該トレンチの内面に設けられるゲート絶縁膜と、該ゲート絶縁膜を介して前記耐圧層、前記ボディー層および前記ソース拡張領域に対向するように埋設されるゲート電極と、前記ソースコンタクト領域表面と前記ボディーコンタクト領域表面とにオーム性接触を形成するソース電極とを有する半導体装置において、前記ソースコンタクト領域表面と前記ボディーコンタクト領域表面とにオーム性接触を形成するソース電極が、前記ソースコンタクト領域表面にオーム性接触する第1金属電極と、前記ボディーコンタクト領域表面にオーム性接触する第2金属電極とを有することを特徴とするトレンチゲート型半導体装置。
【請求項12】
前記第2金属電極は、前記第1金属電極の上を覆っていることを特徴とする請求項11に記載のトレンチゲート型半導体装置。
【請求項13】
前記第2金属電極の上に積層される金属電極の最上層がアルミニウム電極であることを特徴とする請求項12に記載のトレンチゲート型半導体装置。
【請求項14】
前記ボディーコンタクト領域が、オーム性接触を得るに好適な量子井戸構造を含むことを特徴とする請求項11記載のトレンチゲート型半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−266981(P2009−266981A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113352(P2008−113352)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】