説明

トロイダル式無段変速機

【課題】パワーローラが所定の移動範囲を越えてしまった際に、該所定の移動範囲に即座に押し戻すことが可能なトロイダル式無段変速機を提供する。
【解決手段】油圧制御装置Aにおいて、パワーローラ4の回転中心dが予め設定された所定の移動範囲を越えた際に回動されるエンドストップレバー48A,48Bと、該エンドストップレバー48A又はエンドストップレバー48Bが回動された際に押圧されて切換えられ、作動圧を調圧するための第1又は第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ112,113を迂回してライン圧PLを直接的に油圧サーボ40A1,40B1又は油圧サーボ40A2,40B2に供給する第1エンドストップバルブ115、及び第2エンドストップバルブ116とを備える。これにより、パワーローラ4を所定の移動範囲に即座に押し戻すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、作業車輌等に搭載されるトロイダル式無段変速機に係り、詳しくは、パワーローラの回転中心が入力ディスク及び出力ディスクの面方向に対して移動し得るトロイダル式無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用の変速機として、入力ディスク、出力ディスク、及びそれら両ディスクに挟持されたパワーローラを有し、該パワーローラの位置制御により変速を可能とするトロイダル式無段変速機が提案されている(特許文献1参照)。このものは、オイルポンプ(油供給ポンプ71)の供給圧を調圧弁(72)によってライン圧に調圧し、更に該ライン圧を調圧バルブ(制御バルブ75)によって調圧して、油圧サーボ(変速制御用油圧シリンダ76,76)に作動圧として供給することで、パワーローラの位置を押圧駆動制御している。上記両ディスクの面方向に対して押圧駆動されて移動されたパワーローラは、両ディスクの回転方向の違いにより、両ディスクの挟持(接触)部分の一方が内周側に、他方が外周側に引き摺られて傾斜角度が変化するため、自律的に接触部分の径が変化することで変速比が変更され、これによって変速が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−82658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えばフットブレーキによる急制動で出力ディスクが急に減速された場合等、両ディスクの相対回転が急に変化すると、パワーローラに生じている両ディスクの面方向に対する力が急に変化し、油圧サーボの押圧駆動制御が遅れてしまうことがある。このような場合、該パワーローラが大きく移動され、設定された正常に変速可能な移動範囲を越えてしまう虞があり、この際には、該パワーローラを即座に該移動範囲内に押戻すと共に、直ちにパワーローラの変速制御を油圧サーボの押圧駆動制御による制御下に復帰させることが望まれる。
【0005】
そこで本発明は、パワーローラが所定の移動範囲を越えたことを検知した際に、油圧サーボの作動圧を急上昇させることを可能とし、もって上記課題を解決したトロイダル式無段変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図8参照)、入力ディスク(2A,2B)、出力ディスク(3)、及びそれら両ディスクに挟持されたパワーローラ(4)を有するバリエータ装置(5)と、
油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)、及び前記パワーローラ(4)を支持するリンク機構(41,42,45,46)を有し、前記油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)の押圧駆動に基づき前記リンク機構(41,42,45,46)を介して前記パワーローラ(4)の回転中心(d)を前記両ディスクの面方向に対して移動駆動し得るローラ駆動装置(B)と、
油圧発生源(110)の油圧を元圧(PL)として調圧する元圧調圧弁(111)と、
該元圧(PL)を前記油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)に供給する作動圧(PS1,PS2)として調圧する作動圧調圧弁(112,113)と、を備えたトロイダル式無段変速機(1)において、
前記パワーローラの回転中心(d)が所定の移動範囲を越えたことを検知する範囲外検知手段(48A,48B)と、
前記範囲外検知手段(48A,48B)が前記パワーローラ(4)の回転中心(d)が所定の移動範囲を越えたことを検知した際に、前記作動圧調圧弁(112,113)を迂回して前記元圧(PL)を前記油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)の作動圧(PS1,PS2)として供給する迂回路連通弁(115,116)と、を備えた、
ことを特徴とするトロイダル式無段変速機(1)にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は(例えば図4及び図8参照)、前記作動圧調圧弁(112,113)を複数備え、
前記油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)は、ピストン(40Ap,40Bp)に対向した2つの油室(40Aa,40Ab,40Ba,40Bb)に異なる前記作動圧(PS1,PS2)を入力し、前記リンク機構(41,42,45,46)を介して前記パワーローラ(4)の回転中心(d)を前記両ディスク(2A,2B,3)の面方向に対して押圧駆動し得るパワーローラ制御用油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)であり、
前記迂回路連通弁(115,116)は、前記元圧(PL)を、前記パワーローラ(4)を前記所定の移動範囲内に押圧駆動する方向に対して該ピストン(40Ap,40Bp)に作用する油室(40Aa,40Ab,40Ba,40Bb)に供給してなる、
請求項1記載のトロイダル式無段変速機(1)にある。
【0008】
請求項3に係る本発明は(例えば図4及び図8参照)、前記リンク機構(41,42,45,46)は、前記油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)の押圧駆動により前記両ディスク(2A,2B,3)平行な面上で回動駆動し得るレバー部材(45A,45B)と、前記レバー部材に揺動自在かつ回転自在に接続されると共に、前記パワーローラ(4)の回転中心(d)を回転自在に支持するローラキャリッジ(41)と、を有してなり、
前記範囲外検知手段(48A,48B)は、前記レバー部材(45A,45B)が所定の角度以上回動した際に、前記レバー部材(45A,45B)に当接・押圧されて回動することで、前記パワーローラ(4)の回転中心(d)が所定の移動範囲を越えたことを検知するエンドストップレバー(48A,48B)からなり、
前記迂回路連通弁(115,116)は、前記エンドストップレバー(48A,48B)が回動された際に、該エンドストップレバー(48A,48B)によりスプリング(115g,116g)に反してスプール(115f、116f)が押圧駆動されて、前記元圧(PL)を入力する入力ポート(115b,116b)と前記油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)に直接連通する出力ポート(115a,116a)とが連通されることで、前記作動圧調圧弁(112,113)を迂回して前記元圧(PL)を前記油圧サーボ(40A1,40A2,40B1,40B2)の作動圧として供給するエンドストップ弁(115,116)からなる、
請求項1または2記載のトロイダル式無段変速機(1)にある。
【0009】
請求項4に係る本発明は(例えば図1乃至図4、及び図8参照)、前記バリエータ装置(5)は、フルトロイダル型である、
請求項1ないし3のいずれか記載のトロイダル式無段変速機(1)にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、範囲外検知手段がパワーローラの回転中心が所定の移動範囲を越えたことを検知した際に、迂回路連通弁が作動圧調圧弁を迂回して元圧を油圧サーボの作動圧として供給するので、パワーローラの回転中心が所定の移動範囲を越えた際に、油圧サーボの作動圧を急上昇させることが可能となる。これにより、パワーローラが、所定の移動範囲を越えてしまった際に、該パワーローラを即座に該所定の移動範囲内に押戻すことができるものでありながら、該パワーローラの変速制御を油圧サーボの押圧駆動制御による制御下に直ちに復帰させることができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、トロイダル式無段変速機は、作動圧調圧弁を複数備え、油圧サーボはピストンに対向した2つの油室に異なる作動圧を入力し、リンク機構を介してパワーローラの回転中心を両ディスクの面方向に対して押圧駆動し得るパワーローラ制御用油圧サーボであるので、元圧を、パワーローラを所定の移動範囲内に押圧駆動する方向に対して該ピストンに作用する油室に供給することができる。これにより、該パワーローラを即座に該所定の移動範囲内に押戻すことができるものでありながら、該パワーローラの変速制御を油圧サーボの押圧駆動制御による制御下に直ちに復帰させることができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、範囲外検知手段は、エンドストップレバーからなり、迂回路連通弁は、該エンドストップレバーが回動された際に元圧を油圧サーボの作動圧として供給するエンドストップ弁からなるので、パワーローラが所定の移動範囲を越えたことを検知し、油圧サーボの作動圧を急上昇させるまでの作動を、例えばセンサにより検出して電気的に油圧上昇を行うことなく、機械的に行うことができ、安価でかつコンパクト化を可能とすることができる。
【0014】
請求項4に係る本発明によると、バリエータ装置は、フルトロイダル型であるので、パワーローラを上記両ディスクに平行な面上で移動駆動することで、自律的に変速させることを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図8に沿って説明する。
【0016】
無段変速機(IVT)1は、図1に示すように、トロイダル式無段変速装置(以下、単にバリエータとする)5と、プラネタリギヤ機構6、反転ギヤ機構7、及びロー・ハイ切換え機構10からなるプラネタリギヤ装置Uとからなる。バリエータ5は、フルトロイダル式無段変速装置からなり、入力軸12に連結された2個の入力ディスク2A,2Bと中空軸16に連結された1個の出力ディスク3と、両ディスクの間に挟持されるパワーローラ4,4と、を有する。入力ディスク2A,2B及び出力ディスク3は、それぞれ対向するように円形の一部を形成する円弧状の凹溝2a,3aを有しており、2列のパワーローラを挟んでダブルキャビティ31A,31Bを構成して、入力ディスク同士のスラスト力を打消す構成からなる。パワーローラ4,4は、軸に直角方向にシフトさせることにより傾斜して、入力ディスク2A,2Bと出力ディスク3との接触半径を変更することにより、無段に連続して変速する。本バリエータ5にあっては、−0.4〜−2.5の速度比(出力速度/入力速度)を有する。なお、入力ディスク2A,2Bに対して出力ディスク3が反転するので、速度比は−(マイナス)になる。
【0017】
プラネタリギヤ機構6は、2個のピニオンP1,P2を有するフロントキャリヤCと、ローモード用シンプルプラネタリギヤ11と、を備えており、該ローモード用シンプルプラネタリギヤ11は、反転ギヤ機構7のデュアルプラネタリギヤ14と共通のリヤキャリヤC0を有する。上記2個のピニオンP1,P2は共通のピニオンシャフトに回転自在に支持される一体構造からなり、かつこれらピニオンを支持するフロントキャリヤCは、上記ローモード用シンプルプラネタリギヤ11の第1のリングギヤR3に連結している。該フロントキャリヤCは、入力軸12に連結されていると共に後側の入力ディスク2Bに結合されており、一定速回転が伝達されている。
【0018】
第1のピニオンP1には、バリエータ5の出力ディスク3に連結されている第1のサンギヤS1が噛合しており、該第1のサンギヤS1は、バリエータ5による変速回転を入力する入力ギヤとなる。第2のピニオンP2は、ハイモード用出力ギヤとなる第2のサンギヤS2に噛合しており、かつローモード用シンプルプラネタリギヤ11の第3のサンギヤS3に一体に結合している。第2のサンギヤS2は、ロー・ハイ切換え機構10のハイクラッチHを介して出力軸13に連結して、ハイモード時出力ギヤを構成している。
【0019】
反転ギヤ機構7は、互いに噛合する2個のピニオンP4,P5を有するデュアルプラネタリギヤ14からなり、そのリヤキャリヤC0が上述したようにローモード用シンプルプラネタリギヤ11のキャリヤと一体に構成されており、第2のリングギヤR0がケース20に固定されており、そして第4のサンギヤS0がロークラッチLを介して出力軸13に連結している。
【0020】
なお、本無段変速機1は、主に自動車等に用いられ、出力軸13がディファレンシャル装置(不図示)を介して駆動車輪に接続されており、バリエータ5等により反転された出力軸13の回転は、該ディファレンシャル装置によって再度反転されるように構成されている。
【0021】
図3に示すように、無段変速機(IVT)1は、ミッションケース20内に収納されており、該ケース20は、筒状のメインケース20a、該メインケース20aの前側に固定されるハウジング20b及びメインケース20aの後側に固定されるエンドケース20cからなる。ハウジング20bは、その前端をエンジンに結合され、不図示のダンパ装置が収納される。即ち、本無段変速機1は、詳しくは後述するギヤニュートラル(GN)を有するので、従来の自動変速機(AT)及び無段変速機(CVT)に必要とされた、トルクコンバータ等の発進装置が不要となり、従ってハウジング20b内には、エンジンの振動及び脈動等を吸収するダンパ装置のみで足りる。
【0022】
メインケース20aには、バリエータ5とプラネタリギヤ機構6及び反転ギヤ機構7のギヤ機構とが配置されており、エンドケース20cにはロー・ハイ切換え機構10が配置され、メインケース20aの後端面とエンドケース20cの前端面とが連結・固定され、一体の収納部が形成される。メインケース20aの下方は、開口されており、かつ該開口はオイルパン21により閉塞されている。該オイルパン21部分に、オイルポンプとバルブボディとが一体となったポンプ・バルブブロック22と、フォルクラムブロック23とが収納される状態で、これら両ブロック22,23は一体に固着されると共に、前記メインケース20aの開口部分に固定されている。
【0023】
ハウジング20bとメインケース20aとに挟まれるように前隔壁板25が固定されており、該隔壁板25の中心ボス部25aには、不図示のニードルベアリングを介して入力軸12の前側部分が回転自在に支持されている。該入力軸12の先端部12aは、ハウジング20b内に延び、該ハウジング20b内のダンパ装置を介してエンジン出力軸と連結している。入力軸12には、皿状の支持板27が一体に固定されており、該支持板27に隣接して前側の入力ディスク2A支持されている。該入力ディスク2Aは、支持板27とその外周部分にてスプライン係合をしていると共に、該入力ディスク2Aの背面と支持板27との間に押圧装置29が配置されており、入力ディスク2Aは、入力軸12と一体に回転すると共に、バリエータ5に必要とする押圧力が付与される。
【0024】
入力軸12には出力ディスク3がニードルベアリングを介して回転自在に支持されており、該出力ディスク3のボス部3bはスリーブ軸16が一体に連結し、かつ該スリーブ軸16は、入力軸12にニードルベアリングを介して回転自在に支持されていると共に、該入力軸12に被嵌して後方に延び、その後端部に第1のサンギヤS1が形成されている。上記スリーブ軸16に被嵌して後側入力ディスク2Bが配置されており、該後側入力ディスク2Bは、後述するようにフォルクラムブロック23にて支持され、スリーブ軸16とは非接触又は無負荷状態に保持される。
【0025】
上記前側入力ディスク2Aに形成された環状円弧面2aと、出力ディスク3の前方に形成された環状円弧面3aとの間にそれぞれ複数枚(3枚)のパワーローラ4が挟持されており、同様に後側入力ディスク2Bに形成された環状円弧面2aと、出力ディスク3の後方に形成された環状円弧面3aとの間にそれぞれ複数枚(3枚)のパワーローラ4が挟持されている。上記互いに対向する円弧面2a,3aにより断面円形状に2個のキャビティ31A,31Bが形成され、上記パワーローラ4は、その中心が上記各円形キャビティ31A,31Bの中心にあってかつ該中心を通るセンタ軸dを中心に回転する。即ち、バリエータ5は、フルトロイダルダブルキャビティ型からなり、従ってダブルキャビティ(2列)からなることにより、1列のものに比してトルク容量が2倍となると共に、入力ディスク同士、出力ディスク同士でスラスト力を打消し合い、軸受負荷とならず、かつパワーローラ4の2個の接触点がキャビティ31の中心点の互いに反対側にあって打消し合うので、パワーローラ4に殆どスラスト力が作用しない。
【0026】
フォルクラムブロック23は、正面断面図L型からなり、底部のバリエータ制御ブロック部23aと、該底部の後端側から立上る支持ブロック部23bとを有する。そして、制御ブロック部23aが、図4に示すように、メインケース20aの開口部分20eに、複数のノックピン33及び多数のボルト35により正確に位置決めされて固定されている。制御ブロック部23aは、図4に概略して示すように、各キャビティ31A,31Bに位置する3個の各ローラ4に、それぞれリンクを介して連結している油圧アクチュエータ40を有している。詳しくは、フォルクラムブロックの制御ブロック部23aには、ローラ4の数と同じ油圧アクチュエータ40と、各アクチュエータに連通する油圧回路とが形成されており、各アクチュエータ40は、ポンプ・バルブブロック22(図3参照)からの制御された所定油圧が作用する。
【0027】
なお、支持板27の押圧装置29(図3参照)は、予め定められた予圧を作用するスプリング(板ばね)と、上記ポンプ・バルブブロック22からの油圧が作用する油圧アクチュエータを有しており、各パワーローラ4が入力ディスク2A,2B及び出力ディスク3の各円弧面2a,3aに所定圧力で押付ける押付け力を作用しており、これによりトラクションオイルの介在の基に、各パワーローラ4とディスクとの間にトラクション力が作用する。即ち、バリエータ5は、トラクションドライブにより入力ディスク2A,2Bと出力ディスク3との間に動力が伝達される。
【0028】
上記各パワーローラ4は、図4に示すように、キャリッジ41により軸dを中心に回転自在に支持されており、かつ該キャリッジ41はその一端部にて球面軸受42により支持されている。各球面軸受42は、支軸43により揺動自在に支持されるレバー45の先端部に設けられており、かつこれらレバー45は、それぞれ上記油圧アクチュエータ40のピストンロッド46に連結している。これにより、詳しくは後述するように、ローラとディスクとの接触面に作用するトラクション力と上記油圧アクチュエータ40の押付け力(リアクション力)との関係に基づき、パワーローラ4の傾きが自律的に制御される。即ち、油圧アクチュエータ40によりバリエータ5は、変速制御される。
【0029】
一方、フォルクラムブロック23の立上り支持ブロック部23bは、図3に詳示するように、円筒状の支持孔50が穿設されている。また、後側入力ディスク2Bの背面には、環状突部54が一体に形成されており、更に該突部の中央部分に突出してボス部55が一体に形成されている。そして、上記支持孔50には軸方向に隣接してボールベアリング51及びワンウェイクラッチ52が配置されている。
【0030】
フルトロイダルバリエータ5は、パワーローラ4にスラスト力が作用せず、上述したようにパワーローラ4を軸に直交方向にシフトさせることにより、少ない力で変速が可能であるが、反対方向に回転すると、パワーローラ4の挟持力が緩んでしまう。このため、万一、エンジンの逆転又は車輪からの逆駆動により、バリエータ5に逆方向のトルクが作用しても、上記ワンウェイクラッチ52によりバリエータ5が逆回転することを阻止している。なお、図3中の符号56は、入力ディスクのボス部55と一体のキャリヤCのボス部58に固定されたスプロケットであり、チェーン57を介してポンプ・バルブブロック22のオイルポンプ(油圧発生源)110(図8参照)を駆動する。
【0031】
図3に示すように、上記プラネタリギヤ機構6のフロントキャリヤCは、キャリヤ本体61と該本体に固定されるキャリヤカバー62とからなり、上記入力軸12の後端側には、キャリヤ本体61がスプライン嵌合していると共にナット63が螺合して、該入力軸12に一体のキャリヤCが固定されている。キャリヤ本体62は、その前端がドックmになっているボス部58を有しており、また後側入力ディスク2Bの背面ボス部55の先(後)もドックnになっており、両ボス部58,55は上記ドックm,nが係合することにより回転方向一体に連結していると共に、キャリヤ本体61は、上記スプロケット56を介して入力ディスク2Bの背面kにボールベアリング51を押付けている。
【0032】
上記キャリヤ本体61とキャリヤカバー62に亘って、ピニオンシャフト67が支持されており、該ピニオンシャフト67には、軸方向に並列して第1のピニオンP1と第2のピニオンP2とが支持されている。第1のピニオンP1及び第2のピニオンP2は一体に形成されており、同じ歯数でもよいが、本実施の形態では僅かに異なる歯数からなり、これら共通ピニオンP1,P2がニードルベアリング(又はブシュ)を介して上記ピニオンシャフト67に回転自在に支持されている。第1のピニオンP1には第1のサンギヤS1が噛合しており、第2のピニオンP2には第2のサンギヤS2が噛合している。
【0033】
上記第1のサンギヤS1は、中空軸16の先端部分に形成されており、該中空軸16は、ニードルベアリングを介して入力軸12に被嵌して回転自在に支持されていると共に、その基端部分にて上述したようにバリエータ5の出力ディスク3に連結されている。第2のサンギヤS2は中間軸70の基端部に形成されており、該中間軸70はその基端部分を入力軸12(に一体のフロントキャリヤC)に被嵌してニードルベアリングを介して回転自在に支持されていると共に、その先端(後方)側にてロー・ハイ切換え機構10のハイクラッチHのクラッチハブ72にスプライン係合により接続している。中間軸70には第3のサンギヤS3がスプライン係合しかつスナップリングにより抜止めされて結合されており、またフロントキャリヤCのキャリヤカバー62には第1のリングギヤR3がスナップリングにより一体に係合されている。これら第3のサンギヤS3、第1のリングギヤR3及び反転ギヤ機構7と一体のリヤキャリヤC0により、上記プラネタリギヤ機構6のシンプルプラネタリギヤ11が構成されている。
【0034】
上記出力(共通)キャリヤC0は、中央に位置するキャリヤ本体76と、左右の側板を構成する前後キャリヤカバー77,78とからなる。該キャリヤ本体76は中間軸70に回転自在に支持されており、該キャリヤ本体76と前キャリヤカバー77との間にピニオンシャフト80が回転不能に支持されており、該ピニオンシャフト80に第3のピニオンP3が回転自在に支持されている。該第3のピニオンP3は、上記第3のサンギヤS3及び第1のリングギヤR3に噛合して、上記シンプルプラネタリギヤ11を構成している。
【0035】
キャリヤ本体76と後キャリヤカバー78との間にはピニオンシャフト81及びピニオンシャフト82が回転不能に支持されており、ピニオンシャフト81には第4のピニオンP4が回転自在に支持され、ピニオンシャフト82には第5のピニオンP5が回転自在に支持されている。これら両ピニオンP4,P5は互いに噛合していると共に、一方の第4のピニオンP4が第4のサンギヤS0に噛合し、他方の第5のピニオンP5が第2のリングギヤR0に噛合して、反転ギヤ機構7用のデュアルプラネタリギヤ14を構成している。また、第2のリングギヤR0はミッションケース20aとスプライン係合により接続され、回転方向に対して固定されており、第4のサンギヤS0にはロークラッチL用ハブ83が溶接等により一体に形成されている。上記クラッチハブ72及び83は、出力軸13に一体のドラム85との間に、それぞれ湿式多板クラッチからなるロークラッチL及びハイクラッチHが介在して、ロー・ハイ切換え機構10を構成している。
【0036】
上記エンドケース20cのエンドプレート20dにはボス部材95がボルトにより一体に固定されており、出力軸13は、ボールベアリング96及びニードルベアリングを介して上記一体のエンドケース20cに支持されている。該出力軸13は、その先(前)端部分にて、上記ボス95に被嵌しているスリーブ軸99を一体に連結しており、該スリーブ軸99と上記クラッチドラム85が一体に連結されている。該クラッチドラム85及びスリーブ軸99をシリンダとしてピストン100との間に形成された油室が油密状になるように嵌合しており、該ピストン100は、上記ハイクラッチHの外摩擦板に形成された孔を通ってロークラッチLに当接して、ロークラッチ用油圧サーボ101を構成している。また、スリーブ軸99にシリンダ板102が固定されており、該シリンダ板102及びスリーブ軸99をシリンダとしてピストン103との間に形成された油室が油密状になるように嵌合しており、該ピストン103は、ハイクラッチHに当接してハイクラッチ用油圧サーボ105を構成している。
【0037】
ついで、上記無段変速機(IVT)1の作用について図1及び図2に沿って説明する。
【0038】
例えば無段変速機1を搭載した車輌の発進時又は後進時においては、不図示のシフトレバーや油圧制御装置Aによる油圧制御に基づきロー・ハイ切換え機構10が制御されて、ハイクラッチHが解放されると共にロークラッチLが係合され、無段変速機1はローモード状態にされる。すると、図1及び図2に示すように、エンジン出力軸に連結している入力軸12の回転が、バリエータ5の入力ディスク2A,2B、プラネタリギヤ機構6のフロントキャリヤC、及びローモード用シンプルプラネタリギヤ11の第1のリングギヤR3に伝達される。このうち入力ディスク2A,2Bに入力された入力軸12の回転はバリエータ5で変速され、出力ディスク3よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、第1のサンギヤS1に入力される。
【0039】
第1のサンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、プラネタリギヤ機構6において、入力軸12の回転とバリエータ出力回転Voutとが(1次的な)トルク循環により合成され、ギヤ比に基づき、バリエータ出力回転Voutより僅かな増速回転として第2のサンギヤS2から出力され、第3のサンギヤS3に入力される。すると、ローモード用シンプルプラネタリギヤ11においては、第1のリングギヤR3に入力される入力軸12の回転と第3のサンギヤS3の上記増速回転とが(2次的な)トルク循環により合成されて、リヤキャリヤC0より出力される。このリヤキャリヤC0の出力回転は、バリエータ5の変速比の幅に応じて、減速の逆転回転からニュートラル位置(GNポイント)を介して減速の正転回転までの幅に変速された出力回転となる。
【0040】
このリヤキャリヤC0の出力回転は、反転ギヤ機構7のデュアルプラネタリギヤ14に入力され、ケース20に固定された第2のリングギヤR0を介して反転され第4のサンギヤS0より出力される。そして、この第4のサンギヤS0の出力回転OutLは、ローモード状態の出力回転として、ロークラッチLを介して出力軸13に出力される。
【0041】
以上のような伝達経路を形成するローモード時においては、バリエータ出力回転Vout(バリエータ5の変速比)が、図2中の一点鎖線で示すギヤニュートラル状態GNである際に、リヤキャリヤC0の回転がニュートラル状態となり、反転ギヤ機構7において反転された回転、つまりローモード時の出力回転OutLがニュートラル状態となる。上述したように、この状態においては、エンジン回転数(入力軸12の回転)と出力軸13の回転とが無関係となるので、例えば走行レンジに切換える際にバリエータ5の変速比をギヤニュートラル状態GNに合わせた後にロークラッチLを係合することで、回転数差を吸収することが不要であり、トルクコンバータ等の回転数差を吸収する装置を設ける必要がない。
【0042】
ここで、例えば不図示のシフトレバーがリバース(R)レンジであって、このギヤニュートラル状態GNより例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ5の変速比を大きくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを下方側にシフトしていくと)、出力軸13の出力回転OutLは、正転回転側に増速していき、ディファレンシャル装置で反転されて、つまり後進側に増速されていく。
【0043】
また反対に、例えば不図示のシフトレバーがドライブ(D)レンジであって、ギヤニュートラル状態GNより例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ5の変速比を小さくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを上方側にシフトしていくと)、出力軸13の出力回転OutLは、反転回転側に増速していき、ディファレンシャル装置で反転されて、つまり前進側に増速されていく。
【0044】
つづいて、上述のローモード状態で出力軸13の出力回転OutLが増速されていき(バリエータ5の変速比が小さくされていき)、図2中の破線で示すシンクチェンジSCの変速比に達して例えば車速やアクセル開度に応じて変速判断がなされると、不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づきロー・ハイ切換え機構10が制御されて、ロークラッチLが解放されると共にハイクラッチHが係合され、無段変速機1はハイモード状態にされる。
【0045】
すると、図1及び図2に示すように、このハイモード状態においても同様に、入力軸12の回転がバリエータ5の入力ディスク2A,2B、及びプラネタリギヤ機構6のフロントキャリヤCに伝達され、出力ディスク3よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、第1のサンギヤS1に入力される。第1のサンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、プラネタリギヤ機構6において、入力軸12の回転とバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、ギヤ比に基づき、バリエータ出力回転Voutより僅かな増速回転として第2のサンギヤS2から出力される。そして、この第2のサンギヤS2の出力回転OutHは、ハイモード状態の出力回転として、ハイクラッチHを介して出力軸13に出力される。
【0046】
上記シンクチェンジSC時におけるローモード状態とハイモード状態との切換えにおいては、バリエータ5の変速比(バリエータ出力回転Vout)が最も小さくなる同じ変速比で切換えが行われるように各ギヤのギヤ比が設定されている。つまりローモード状態においては、バリエータ5の変速比が小さく変速されていくと出力回転OutLが増速され、シンクチェンジSCを境に、ハイモード状態においては、反対にバリエータ5の変速比が大きく変速されていくと出力回転OutHが増速されていく。
【0047】
なお、上記ハイモード時においては、第2のサンギヤS2の出力回転OutHが第3のサンギヤS3に入力され、また、入力軸12の回転が第1のリングギヤR3に入力されるため、リヤキャリヤC0がローモード時と同様に回転されるが、ロークラッチLが解放されているので、第4のサンギヤS0が空転する。そのため、ローモード用シンプルプラネタリギヤ11及び反転ギヤ機構7のデュアルプラネタリギヤ14において、トルク伝達は行われない。
【0048】
また、本無段変速機1においては、第1及び第2のピニオンP1,P2の歯数をZP1,ZP2、第1及び第2のサンギヤS1,S2の歯数をZS1,ZS2としたときの歯数比(ZS1/ZP1)×(ZP2/ZS2)を1以上として、ハイモード時の出力回転OutH(即ち第2のサンギヤS2の回転)とバリエータ出力回転Vout(即ち第1のサンギヤS1の回転)とが異なるように構成され、バリエータ出力回転Voutが増速されて出力回転OutHとなるが(図2参照)、反対にバリエータ出力回転が減速されて出力回転となるように構成してもよく、更には、上記歯数比(ZS1/ZP1)×(ZP2/ZS2)を同じに構成し、出力回転とバリエータ出力回転とが同じになるようにしてもよい。
【0049】
ついで、バリエータ5における自律的な変速制御について図5乃至図7に沿って説明をする。
【0050】
例えば無段変速機1を搭載した車輌においては、図5に示すように、不図示のエンジンからの回転が伝達され、入力ディスク2A(2B)がバリエータ入力回転Vinで回転する。上記入力ディスク2A(2B)がバリエータ入力回転Vinで回転すると、パワーローラ4の接触半径に基づいた接触部Eiにおける表面速度ベクトルはVdiとなり、同時に接触部Eiにおけるパワーローラ4の表面速度ベクトルはVriとなって回転が伝達される。
【0051】
また、上記接触半径に基づいたパワーローラ4と出力ディスク3との接触部Eoにおけるパワーローラ4の表面速度は、表面速度ベクトルVriと逆向きで同じ大きさの表面速度ベクトルVroであり、同時に接触部Eoにおける出力ディスク3の表面速度ベクトルはVdoとなる。つまり、出力ディスク3は、接触半径に基づく接触部Eoにおける表面速度ベクトルVdoに応じてバリエータ出力回転Voutで回転することになる。
【0052】
一方、入力ディスク2A(2B)では、不図示のエンジンから該入力ディスク2A(2B)に伝達されるエンジントルクTEと、接触部Eiにおける接触半径とに基づいた力Tdiが作用する。このとき、パワーローラ4には、入力ディスク2A(2B)からパワーローラ4にトルク伝達される際に、該力Tdiに応じてトラクション力Ftriが作用する。
【0053】
同じように、パワーローラ4から出力ディスク3にトルク伝達する際にも、接触部Eoにおいて、トラクション力Ftriに応じて出力ディスク3には力Tdoが作用する。これにより、該出力ディスク3には、接触部Eoにおいて作用する力Tdoに応じて、上記接触半径に基づく回転トルクとしてバリエータ出力トルクToutが伝達される。
【0054】
また、パワーローラ4から出力ディスク3に力Tdoが作用する場合には、パワーローラ4に力Tdoの反力としてトラクション力Ftroが作用する。そして、パワーローラ4に作用するトラクション力Ftri及びFtroの合成力は、特に該パワーローラ4を移動させない状態にあって、上述したようにパワーローラ4を回転自在に支持し油圧アクチュエータ40と接続されているキャリッジ41に作用するリアクション力Fpと釣り合っている。
【0055】
ここで、例えば油圧アクチュエータ40の制御によりリアクション力Fpを強くすると、該リアクション力Fpと該トラクション力Ftri,Ftroの合成力とが釣り合わなくなり、パワーローラ4はY1方向に移動し、それに伴い接触部Ei,Eoも移動する。即ち、図6に示すように、パワーローラ4は図中xの位置からyの位置に移動する。すると、接触部Eiにおける表面速度ベクトルVdiは、図中xの位置では表面速度ベクトルVriと同じ向きで平行であったが、図中yの位置では、表面速度ベクトルVdiは接触部Eiにおける入力ディスク2A(2B)の接線方向となり表面速度ベクトルVriとは平行でなくなり、表面速度ベクトルVdi,Vriとの差ΔVも平行でなくなる。
【0056】
さらに、パワーローラ4に作用するトラクション力は表面速度ベクトルVdiとVriとの差ΔVの方向と同じなので、図6中のy位置で示した状態でのパワーローラ4に作用するトラクション力はFtiとなる。該トラクション力Ftiは、図7に示すように、トラクション力Ftriの方向成分のほかにトラクション力Ftriの方向成分とは垂直な方向成分の力Fttiを持っている。
【0057】
一方、パワーローラ4と出力ディスク3との接触部Eoにおいては、パワーローラ4には表面速度ベクトルVdiとは逆方向の速度ベクトルとなり、パワーローラ4から伝達(押圧)する力(この場合、外周側に向けて押圧する方向成分を含む力)の反力としてのトラクション力Ftoが作用し、つまり該トラクション力Ftoはトラクション力Ftroの方向成分と該トラクション力Ftroとは垂直な方向成分の力Fttoを持っている。これら力Ftti,Fttoの作用により、パワーローラ4のセンタ軸dはチルトされ、つまり入力ディスク2A(2B)と出力ディスク3との変速比(接触半径)が自律的に変化する。
【0058】
そして、パワーローラ4はキャスタ角βの効果により(図5参照)、図6中のzの位置で示すように回転方向に沿う向きに自律的に戻されつつ移動し、表面速度ベクトルVdi,Vrは再び平行となり、トラクション力の方向成分がFtri及びFtroと同方向になるのでパワーローラ4は安定する。
【0059】
このように、バリエータ5では、入力ディスク2A(2B)及び出力ディスク3とパワーローラ4との接触部Ei,Eoに発生するトラクション力Ftri+Ftroと、パワーローラ4を回転自在に支持するキャリッジ41を介して作用するリアクション力Fpとを変化させることにより、入力ディスク2A(2B)及び出力ディスク3とパワーローラ4との間の速度差ΔVを生じさせ、該速度差ΔVによって生じるトラクション力成分Ftti,Fttoにより変速が自律的に行われる。
【0060】
ついで、図8に沿って、本無段変速機1の油圧制御装置Aについての説明をする。図8は、本発明に係る無段変速機1のバリエータ5の一部と油圧制御装置Aの一部とを示す模式図である。なお、図8はバリエータ5と油圧制御装置とを示す概略図で、本発明を説明するための必要な要素だけを示したものであり、実際の油圧回路はさらに複雑で多くの要素を有するものである。
【0061】
本発明に係る油圧制御装置Aは、前記オイルポンプ(油圧発生源)110、プライマリレギュレータバルブ(元圧調圧弁)111、上記キャリッジ41と球面軸受42とレバー45とピストンロッド46と油圧アクチュエータ40A,40Bとを有してパワーローラ4を駆動するローラ駆動装置B、該油圧アクチュエータ40A,40Bに供給するサーボ圧(作動圧)PS1を調圧する第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ(作動圧調圧弁)112、該油圧アクチュエータ40A,40Bに供給するサーボ圧PS2を調圧する第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ(作動圧調圧弁)113、サーボ圧PS1用の第1エンドストップバルブ(迂回路連通弁)115、サーボ圧PS2用の第2エンドストップバルブ(迂回路連通弁)116、ロークラッチ用のクラッチプレッシャーコントロールバルブ120、ハイクラッチ用のクラッチプレッシャーコントロールバルブ121、パイロットシャトルチェックバルブ131,132,133、ボールシャトルバルブ138,139、及びバイパスチェックバルブ135,136などを有して構成されている。また、第1エンドストップバルブ115及び第2エンドストップバルブ116を機械的に制御するエンドストップレバー(範囲外検知手段)48A,48Bなどを備えて構成されている。
【0062】
上記プライマリレギュレータバルブ111は、スプール111eと、詳しくは後述する油路f7を介して油室111cに入力される信号圧PSに平行して該スプール111eを付勢するスプリング111dと、ポート111aの圧を信号圧PSに対向して該スプール111eに付勢する油室111fと、を有している。該プライマリレギュレータバルブ111は、スプリング111dの付勢力及び油路f7を介して油室111cに入力される信号圧PS及び油室111fに入力される油路a7の油圧によりスプール111eの位置が調整されることで、油路a7を介してポート111aに入力されるオイルポンプ110からの油圧の一部をポート111bから排出することで、油路a7ないし油路a1,a2,a3,a4,a5,a6の油圧をライン圧(元圧)として調圧する。該ポート111bから排出される油圧は、油路a8を介して(例えば不図示のセカンダリレギュレータバルブを介して)オイルポンプ110に還元され、該オイルポンプ110におけるエネルギ損失が低減される。
【0063】
なお、本油圧制御装置Aには、例えば上記プライマリレギュレータバルブ111のポート111bから排出された圧を入力し、略々一定のセカンダリ圧に調圧する不図示のセカンダリレギュレータバルブが備えられており、該セカンダリ圧が図示を省略した上記変速機構Uやバリエータ5等に潤滑油を供給するための潤滑油路に潤滑圧Plubeとして供給される。さらに、本油圧制御装置Aには、上記ライン圧PLを入力し、略々一定のモジュレータ圧に調圧する不図示のモジュレータバルブが備えられており、図示を省略したサーボ圧PS1調圧用のリニアソレノイドバルブ、サーボ圧PS2調圧用のリニアソレノイドバルブ、ロークラッチ係合圧PSCL調圧用のリニアソレノイドバルブ、ハイクラッチ係合圧PSCH調圧用のリニアソレノイドバルブに元圧として供給される。これら不図示のリニアソレノイドバルブは、図示を省略した制御部(ECU)からの電気信号に基づき、上記モジュレータ圧をリニアに調圧し、それぞれ信号圧PSS1、信号圧PSS2、信号圧PSCL、信号圧PSCHを出力する。
【0064】
上記ロークラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ120は、スプール120fと、スプール120fを一方向に付勢する図示を省略したスプリングとを有していると共に、油路a5を介して上記ライン圧PLが入力されるポート120cと、油路g1を介してロークラッチLの油圧サーボ101に接続されるポート120aと、ドレーンポート120bと、油路h3を介して入力される信号圧PSCLが該スプール120fに対して該スプリングの付勢力に対抗する方向に作用する油室120dと、ポート120aより出力された油圧が油路i3を介して該スプリングの付勢方向にフィードバック圧として作用するフィードバック油室120eとを有して構成されている。
【0065】
該ロークラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ120は、油室120dに入力される信号圧PSCLが大きくなるに連れて、油室120eに入力されるフィードバック圧によりフィードバック制御されつつ、スプリングの付勢力に抗してスプール120fの位置が右半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート120cとポート120aとの開口量が大きくされていくと共にドレーンポート120bの開口量が小さくされていき(或いは閉じられ)、即ち、ポート120cに入力されるライン圧PLに基づきポート120aから油路g1に出力するロークラッチ用のクラッチ圧PCLが大きくなるように調圧出力する。また、信号圧PSCLが出力されなくなると(或いは小さくされると)、スプリングの付勢力によってスプール120fの位置が左半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート120cとポート120aとの開口量が小さくされていく(或いは閉じられる)と共にドレーンポート120bの開口量が大きくなり、即ち、該ドレーンポート120bよりロークラッチ用クラッチ圧PCLを排出する。
【0066】
また同様に、上記ハイクラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ121は、スプール121fと、スプール121fを一方向に付勢する図示を省略したスプリングとを有していると共に、油路a6を介して上記ライン圧PLが入力されるポート121cと、油路g2を介してハイクラッチHの油圧サーボ105に接続されるポート121aと、ドレーンポート121bと、油路h4を介して入力される信号圧PSCHが該スプール121fに対して該スプリングの付勢力に対向する方向に作用する油室121dと、ポート121aより出力された油圧が油路i4を介して該スプリングの付勢方向にフィードバック圧として作用するフィードバック油室121eとを有して構成されている。
【0067】
該ハイクラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ121は、油室121dに入力される信号圧PSCHが大きくなるに連れて、油室121eに入力されるフィードバック圧によりフィードバック制御されつつ、スプリングの付勢力に抗してスプール121fの位置が右半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート121cとポート121aとの開口量が大きくされていくと共にドレーンポート121bの開口量が小さくされていき(或いは閉じられ)、即ち、ポート121cに入力されるライン圧PLに基づきポート121aから油路g2に出力するハイクラッチ用のクラッチ圧PCHが大きくなるように調圧出力する。また、信号圧PSCHが出力されなくなると(或いは小さくされると)、スプリングの付勢力によってスプール121fの位置が左半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート121cとポート121aとの開口量が小さくされていく(或いは閉じられる)と共にドレーンポート121bの開口量が大きくなり、即ち、該ドレーンポート121bよりハイクラッチ用クラッチ圧PCHを排出する。
【0068】
一方、上記第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112は、スプール112fと、スプール112fを一方向に付勢する図示を省略したスプリングとを有していると共に、油路a3を介して上記ライン圧PLが入力されるポート112cと、油路b3を介してボールシャトルバルブ139に接続されるポート112aと、ドレーンポート112bと、油路h1を介して入力される信号圧PSS1が該スプール112fに対して該スプリングの付勢力に対向する方向に作用する油室112dと、ポート112aより出力された油圧が油路i1を介して該スプリングの付勢方向にフィードバック圧として作用するフィードバック油室112eとを有して構成されている。
【0069】
該第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112は、油室112dに入力される信号圧PSS1が大きくなるに連れて、油室112eに入力されるフィードバック圧によりフィードバック制御されつつ、スプリングの付勢力に抗してスプール112fの位置が右半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート112cとポート112aとの開口量が大きくされていくと共にドレーンポート112bの開口量が小さくされていき(或いは閉じられ)、即ち、ポート112cに入力されるライン圧PLに基づきポート112aから油路b3に出力するサーボ圧PS1が大きくなるように調圧出力する。また、信号圧PSS1が出力されなくなると(或いは小さくされると)、スプリングの付勢力によってスプール112fの位置が左半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート112cとポート112aとの開口量が小さくされていく(或いは閉じられる)と共にドレーンポート112b開口量が大きくなり、即ち、該ドレーンポート112bより潤滑油路にサーボ圧PS1を排出する。
【0070】
また同様に、上記第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113は、スプール113fと、スプール113fを一方向に付勢する図示を省略したスプリングとを有していると共に、油路a2を介して上記ライン圧PLが入力されるポート113cと、油路c3を介してボールシャトルバルブ138に接続されるポート113aと、ドレーンポート113bと、油路h2を介して入力される信号圧PSS2が該スプール113fに対して該スプリングの付勢力に対向する方向に作用する油室113dと、ポート113aより出力された油圧が油路i2を介して該スプリングの付勢方向にフィードバック圧として作用するフィードバック油室113eとを有して構成されている。
【0071】
該第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113は、油室113dに入力される信号圧PSS2が大きくなるに連れて、油室113eに入力されるフィードバック圧によりフィードバック制御されつつ、スプリングの付勢力に抗してスプール113fの位置が左半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート113cとポート113aとの開口量が大きくされていくと共にドレーンポート113bの開口量が小さくされていき(或いは閉じられ)、即ち、ポート113cに入力されるライン圧PLに基づきポート113aから油路c3に出力するサーボ圧PS2が大きくなるように調圧出力する。また、信号圧PSS2が出力されなくなると(或いは小さくされると)、スプリングの付勢力によってスプール113fの位置が右半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート113cとポート113aとの開口量が小さくされていく(或いは閉じられる)と共にドレーンポート113b開口量が大きくなり、即ち、該ドレーンポート113bより潤滑油路にサーボ圧PS2を排出する。
【0072】
油圧アクチュエータ40Aは、シリンダ40Asと、該シリンダ40Asに摺動自在に内包されると共にピストンロッド46Aに接続されたピストン40Apとを備えており、これらシリンダ40Asとピストン40Apとによって、該ピストン40Apを介して対向した油室40Aa,40Abが形成され、これによって互いに逆方向に作用する2つの油圧サーボ(パワーローラ制御用油圧サーボ)40A1、40A2が構成されている。
【0073】
該油圧サーボ40A1の油室40Aaは、油路c1、c4、c3を介して上記第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113のポート113aに接続されており、また、該油圧サーボ40A2の油室40Abは、油路b1、b4、b3を介して上記第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112のポート112aに接続されている。即ち、該ポート113aより出力されるサーボ圧PS2が該油室40Aaに作用し、該ポート112aより出力されるサーボ圧PS1が該油室40Abに作用する。
【0074】
サーボ圧PS1がサーボ圧PS2よりも大きく調圧されると(或いはサーボ圧PS2がサーボ圧PS1より小さくなるようにドレーンされると)、該油室40Abの油圧が該油室40Aaの油圧よりも相対的に大きくなり、ピストン40Apが図中上方に押圧駆動され、ピストンロッド46Aを介して支軸43を支点に回動するレバー45Aを図中上方に押圧駆動し、キャリッジ41及び球面軸受42を介してパワーローラ4aをω1方向に駆動する。
【0075】
また反対に、サーボ圧PS2がサーボ圧PS1よりも大きく調圧されると(或いはサーボ圧PS1がサーボ圧PS2より小さくなるようにドレーンされると)、該油室40Aaの油圧が該油室40Abの油圧よりも相対的に大きくなり、ピストン40Apが図中下方に押圧駆動され、ピストンロッド46Aを介して支軸43を支点に回動するレバー45Aを図中下方に引張駆動し、キャリッジ41及び球面軸受42を介してパワーローラ4aをω2方向に駆動する。
【0076】
また、上記油圧アクチュエータ40Aと同様に油圧アクチュエータ40Bは、シリンダ40Bsと、該シリンダ40Bsに摺動自在に内包されると共にピストンロッド46Bに接続されたピストン40Bpとを備えており、これらシリンダ40Bsとピストン40Bpとによって、該ピストン40Bpを介して対向した油室40Ba,40Bbが形成され、これによって互いに逆方向に作用する2つの油圧サーボ40B1、40B2が構成されている。
【0077】
該油圧サーボ40B1の油室40Baは、油路b2、b4、b3を介して上記第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112のポート112aに接続されており、また、該油圧サーボ40B2の油室40Bbは、油路c2、c4、c3を介して上記第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113のポート113aに接続されている。即ち、該ポート112aより出力されるサーボ圧PS1が該油室40Baに作用し、該ポート113aより出力されるサーボ圧PS2が該油室40Bbに作用する。
【0078】
サーボ圧PS2がサーボ圧PS1よりも大きく調圧されると(或いはサーボ圧PS1がサーボ圧PS2より小さくなるようにドレーンされると)、該油室40Bbの油圧が該油室40Baの油圧よりも相対的に大きくなり、ピストン40Bpが図中上方に押圧駆動され、ピストンロッド46Bを介して支軸43を支点に回動するレバー45Bを図中上方に押圧駆動し、キャリッジ41及び球面軸受42を介してパワーローラ4aをω2方向に駆動する。
【0079】
また反対に、サーボ圧PS1がサーボ圧PS2よりも大きく調圧されると(或いはサーボ圧PS2がサーボ圧PS1より小さくなるようにドレーンされると)、該油室40Baの油圧が該油室40Bbの油圧よりも相対的に大きくなり、ピストン40Bpが図中下方に押圧駆動され、ピストンロッド46Bを介して支軸43を支点に回動するレバー45Bを図中下方に引張駆動し、キャリッジ41及び球面軸受42を介してパワーローラ4aをω1方向に駆動する。
【0080】
なお、図8においては、紙面の都合上、2枚のパワーローラ4a,4cを駆動制御する2つの油圧アクチュエータ40A,40Bを示して説明をしているが、実際は他に同様の油圧アクチュエータを4つ備えており、つまり全6枚のパワーローラ4の全てが、2つのリアクションプレッシャーコントロールバルブ112,113によってサーボ圧PS1,PS2が供給されることで駆動する全6つの油圧アクチュエータによって駆動制御されている。
【0081】
上記エンドストップレバー48Aは、端部48Aaがレバー(レバー部材)45Aの端部45Aaに対向配置されると共に、端部48Acが詳しくは後述する第1エンドストップバルブ115の衝撃吸収用スプリング115dに対抗配置されており、ケース20に固着された支持部48Abを支点として回動自在に配設されている。パワーローラ4aが所定の移動範囲を越えるとレバー45Aの端部45Aaがエンドストップレバー48Aの端部48Aaを押圧し、反対側の端部48Acで第1エンドストップバルブ115のスプリング115dを押圧する機構を形成している。
【0082】
上記第1エンドストップバルブ115は、スプール115fと、該スプール115fを図中右方側に付勢するスプリング115gと、衝撃吸収用のスプリング115dとを有しており、上記エンドストップレバー48Aの端部48Acによりスプリング115dを介してスプール115fが図中左方側に押圧駆動され、該エンドストップレバー48Aの押圧力がスプリング115gの付勢力を上回った場合に、スプール115fの位置が図中右半位置に切換えられる。該スプール115fが図中右半位置に切換えられると、ポート115aとポート115bが連通され、油路a4を介してポート115bに入力されるライン圧PLをポート115aから油路d1に出力する。また、エンドストップレバー48Aにより押圧されていない状態、或いは油路i5を介して油室115eに入力されるポート115aからのライン圧PLの作用とスプリング115gの付勢力とが該エンドストップレバー48Aの押圧力よりも上回ると、スプール115fの位置が図中左半位置に切換えられる。該スプール115fが図中左半位置に切換えられると、ポート115aとドレーンポート115cが連通され、該ドレーンポート115cより油路d1の油圧が排出される。
【0083】
また同様に、エンドストップレバー48Bは、端部48Baがレバー45Bの端部45Baに対向配置されると共に、端部48Bcが詳しくは後述する第2エンドストップバルブ116の衝撃吸収用スプリング116dに対抗配置されており、ケース20に固着された支持部48Bbを支点として回動自在に配設された部材であり、パワーローラ4cが所定の移動範囲を越えるとレバー45Bの端部45Baがエンドストップレバー48Bの端部48Baを押圧し、反対側の端部48Bcで第2エンドストップバルブ116のスプリング116dを押圧する機構を形成している。
【0084】
上記第2エンドストップバルブ116は、スプール116fと、該スプール116fを図中左方側に付勢するスプリング116gと、衝撃吸収用のスプリング116dとを有しており、上記エンドストップレバー48Bの端部48Bcによりスプリング116dを介してスプール116fが図中右方側に押圧駆動され、該エンドストップレバー48Bの押圧力がスプリング116gの付勢力を上回った場合に、スプール116fの位置が図中左半位置に切換えられる。該スプール116fが図中左半位置に切換えられると、ポート116aとポート116bが連通され、油路a1を介してポート116bに入力されるライン圧PLをポート116aから油路d2に出力する。また、エンドストップレバー48Bにより押圧されていない状態、或いは油路i6を介して油室116eに入力されるポート116aからのライン圧PLの作用とスプリング116gの付勢力とが該エンドストップレバー48Bの押圧力よりも上回ると、スプール116fの位置が図中右半位置に切換えられる。該スプール116fが図中右半位置に切換えられると、ポート116aとドレーンポート116cが連通され、該ドレーンポート116cより油路d2の油圧が排出される。
【0085】
上記パイロットシャトルチェックバルブ131は、油路f1からサーボ圧PS2と油路f2からサーボ圧PS1とを対向して受圧するチェックボール131bを有しており、油路f1のサーボ圧PS2と油路f2のサーボ圧PS1との高い方の圧力により該チェックボール131bが移動され、油路f1及び油路f2の圧力の高い方と油路f3と連通する。つまり、パイロットシャトルチェックバルブ131は、サーボ圧PS1とサーボ圧PS2との高い方の油圧を油路f3に出力する。
【0086】
また、パイロットシャトルチェックバルブ132は、油路f5からロークラッチ用クラッチ圧PCLと油路f6からハイクラッチ用クラッチ圧PCHとを対向して受圧するチェックボール132bを有しており、油路f5のロークラッチ用クラッチ圧PCLと油路f6のハイクラッチ用クラッチ圧PCHとの高い方の圧力により該チェックボール132bが移動され、油路f5及び油路f6の圧力の高い方と油路f4と連通する。つまり、パイロットシャトルチェックバルブ132は、ロークラッチ用クラッチ圧PCLとハイクラッチ用クラッチ圧PCHとの高い方の油圧を油路f4に出力する。
【0087】
さらに、パイロットシャトルチェックバルブ133は、上述した油路f3からの油圧と油路f4からの油圧とを対向して受圧するチェックボール133bを有しており、上述した油路f3からの油圧と油路f4からの油圧との高い方の圧力により該チェックボール133bが移動され、油路f3及び油路f4の圧力の高い方と油路f7と連通する。つまり、パイロットシャトルチェックバルブ133は、油路f3の油圧と油路f4の油圧との高い方の油圧を油路f7に出力する。
【0088】
上記ボールシャトルバルブ138は、油路d2からの油圧と油路c3からサーボ圧PS2とを対向して受圧するチェックボール138bを有しており、油路d2からの油圧と油路c3からサーボ圧PS2との高い方の圧力により該チェックボール138bが移動され、油路d2及び油路c3の圧力の高い方と油路c4と連通する。つまり、ボールシャトルバルブ138は、油路d2の油圧とサーボ圧PS2との高い方の油圧を油路c4に出力する。
【0089】
また同様に、ボールシャトルバルブ139は、油路d1からの油圧と油路b3からサーボ圧PS1とを対向して受圧するチェックボール139bを有しており、油路d1からの油圧と油路b3からサーボ圧PS1との高い方の圧力により該チェックボール139bが移動され、油路d1及び油路b3の圧力の高い方と油路b4と連通する。つまり、ボールシャトルバルブ139は、油路d1の油圧とサーボ圧PS1との高い方の油圧を油路b4に出力する。
【0090】
上記バイパスチェックバルブ135は、油路c4からサーボ圧PS2と油路eから潤滑圧Plubeとを対向して受圧するチェックボール135bを有しており、通常油路c4はサーボ圧PS2が出力されているが、サーボ圧PS2よりも潤滑圧Plubeが高くなる場合にはチェックボール135bが移動され、油路c4と油路eとが連通する。つまり、バイパスチェックバルブ135は、サーボ圧PS2よりも潤滑圧Plubeが高くなる場合に、該潤滑圧Plubeを油路c4に出力する。
【0091】
また同様に、バイパスチェックバルブ136は、油路b4からサーボ圧PS1と油路eから潤滑圧Plubeとを対向して受圧するチェックボール136bを有しており、通常油路b4はサーボ圧PS1が出力されているが、サーボ圧PS1よりも潤滑圧Plubeが高くなる場合にはチェックボール136bが移動され、油路b4と油路eとが連通する。つまり、バイパスチェックバルブ136は、サーボ圧PS1よりも潤滑圧Plubeが高くなる場合に、該潤滑圧Plubeを油路b4に出力する。
【0092】
ついで、上記油圧回路に基づいた本無段変速機1の作動について図8に沿って説明する。例えば無段変速機1を搭載した車輌の発進時又は後進時においては、不図示のシフトレバーを操作し、ドライブ(D)レンジにするとローモード状態にされる。即ち、上記ロークラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ120に入力されたライン圧PLが、ロークラッチ用のクラッチ圧PCLに調圧され、ロークラッチLの油圧サーボ101に供給されて該ロークラッチLの係合が行われると共に、上記ハイクラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ121からハイクラッチHの油圧サーボ105へのクラッチ圧PCHの供給は行われずに、ハイクラッチHは解放状態とされる。また、速度が増加し比較的高速になり、変速判断がなされると、該ロークラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ120からロークラッチLの油圧サーボ101へのクラッチ圧PCLの供給は停止され、ドレーンポート120bよりクラッチ圧PCLが排出され、該ロークラッチLは解放状態とされると共に、上記ハイクラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ121に入力されたライン圧PLは、ハイクラッチ用のクラッチ圧PCHに調圧され、ハイクラッチHの油圧サーボ105に供給されて該ハイクラッチHの係合が行われ、ハイモード状態にされる。
【0093】
一方、本無段変速機1では不図示のシフトレバーを操作し、ドライブ(D)レンジにするとローモード状態にされると共に、第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112では、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブからの信号圧PSS1に基づいてサーボ圧PS1に調圧され、該サーボ圧PS1は油路b3,b4,b1を介して油圧サーボ40A2の油室40Abに供給され、また、油路b3,b4,b2を介して油圧サーボ40B1の油室40Baにも供給される。さらに、第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113でも同様に、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブからの信号圧PSS2に基づいてサーボ圧PS2に調圧され、該サーボ圧PS2は油路c3,c4,c1を介して油圧サーボ40A1の油室40Aaに供給され、また、油路c3,c4,c2を介して油圧サーボ40B2の油室40Bbにも供給される。これにより、パワーローラ4a,4cは油圧アクチュエータ40A,40Bにより油圧制御されている。
【0094】
また、バリエータ5の駆動状態において、出力ディスク3がω1方向に回転している場合(入力ディスク2Aはω2方向に回転)、パワーローラ4aには上述したようにリアクション力が作用しており、油圧アクチュエータ40Aでは油室40Abのサーボ圧PS1が油室40Aaのサーボ圧PS2よりも大きい状態で制御されている。
【0095】
このとき、バリエータ5を増速側に変速させる場合には、上述のように、不図示のサーボ圧PS1調圧用のリニアソレノイドバルブが不図示の制御部(ECU)からの電気信号に基づいた信号圧PSS1を出力し、該信号圧PSS1に基づいて第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112がサーボ圧PS1を出力する。該サーボ圧PS1が油圧サーボ40A2の油室40Abに供給されると、油圧アクチュエータ40Aのピストン40Ap及びピストンロッド46Aを図中上方に押圧し、レバー45Aが支軸43を中心に左回りに回転移動し端部45Aaが球面軸受42及びキャリッジ41を介してパワーローラ4aをω1方向側に移動させる。
【0096】
また、上記信号圧PSS1に基づいて第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112から出力されたサーボ圧PS1は、油圧サーボ40B1の油室40Baにも供給され油圧アクチュエータ40Bのピストン40Bp及びピストンロッド46Bを図中下方に押圧し、レバー45B、球面軸受42、及びキャリッジ41を介してパワーローラ4cもω1方向側に移動させる。これにより、上述したように、パワーローラ4a(4c)は入力ディスク2A側(紙面手前側)が該入力ディスク2Aの外周側に、出力ディスク3側(紙面奥側)が該出力ディスク3の中心側にそれぞれ傾くようにチルトし、出力ディスク3は入力ディスク2Aに対して増速される。
【0097】
また、バリエータ5を減速側に変速させる場合には、不図示のサーボ圧PS2調圧用のリニアソレノイドバルブが不図示の制御部(ECU)からの電気信号に基づいた信号圧PSS2を出力し、該信号圧PSS2に基づいて第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113がサーボ圧PS2を出力する。該サーボ圧PS2が油圧サーボ40A1の油室40Aaに供給されると、油圧アクチュエータ40Aのピストン40Ap及びピストンロッド46Aを図中下方に押圧し、レバー45Aが支軸43を中心に右回りに回転移動し端部45Aaが球面軸受42及びキャリッジ41を介してパワーローラ4aをω2方向側に移動させる。
【0098】
また、上記信号圧PSS2に基づいて第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113から出力されたサーボ圧PS2は、油圧サーボ40B2の油室40Bbにも供給され油圧アクチュエータ40Bのピストン40Bp及びピストンロッド46Bを図中上方に押圧し、レバー45B、球面軸受42、及びキャリッジ41を介してパワーローラ4cもω2方向側に移動させる。これにより、上述したように、パワーローラ4a(4c)は入力ディスク2A側(紙面手前側)が該入力ディスク2Aの中心側に、出力ディスク3側(紙面奥側)が該出力ディスク3の外周側にそれぞれ傾くようにチルトし、出力ディスク3は入力ディスク2Aに対して減速される。
【0099】
本無段変速機1では、バリエータ5の入力ディスク2A,2B及び出力ディスク3の相対回転(加速度)に変化が生じると、パワーローラ4に作用しているトラクション力とリアクション力との釣り合いのバランスが崩れる。この場合の油圧制御について説明する。
【0100】
例えば平坦路から登坂路に移る場合等のように出力ディスク3が減速される力が作用する場合、パワーローラ4に作用するトラクション力が強まり、該トラクション力がリアクション力を上回る。
【0101】
即ち、パワーローラ4aでもトラクション力がリアクション力を上回り、該パワーローラ4aは出力ディスク3のω2方向側に移動しはじめる。すると、該パワーローラ4aはキャリッジ41及び球面軸受42を介してレバー45Aの端部45Aaに作用し、該レバー45Aは支軸43を中心に右回転方向に回転移動し、該レバー45Aに接続されているピストンロッド46Aを介してピストン40Apを図中下方向へ移動させる。
【0102】
またパワーローラ4cも同じくトラクション力がリアクション力を上回り、該パワーローラ4cは出力ディスク3のω2方向側に移動しはじめる。該パワーローラ4cはキャリッジ41及び球面軸受42を介してレバー45Bの端部45Baに作用し、該レバー45Bは支軸43を中心に右回転方向に回転移動し、該レバー45Bに接続されているピストンロッド46Bを介してピストン40Bpを図中上方向へ移動させる。
【0103】
すると、油圧アクチュエータ40A,40Bの油室が拡がる側(サーボ圧PS2が供給される側)の油室40Aa,40Bb及び該油室40Aa,40Bbに接続されている油路c1,c2,c4のサーボ圧PS2が減圧される。このとき、潤滑圧Plubeよりも該油室40Aa,40Bb及び該油室40Aa,40Bbに接続されている油路c1,c2,c4のサーボ圧PS2のほうが小さくなるまで減圧された場合には、バイパスチェックバルブ135において、上述したようにチェックボール135bが移動され油路c4と油路eとが連通し、油路e,c4,c1,c2を介して油室40Aa,40Bbに潤滑圧Plubeが供給される。
【0104】
同時に、上記油圧アクチュエータ40A,40Bの油室が狭まる側(サーボ圧PS1が供給される側)の油室40Ab,40Ba及び該油室40Ab,40Baに接続されている油路b1,b2,b4のサーボ圧PS1が加圧される。このとき、油室40Ab,40Baから押し出された油は、油路b1,b2,b4を介して第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112のポート112aに入力されると共に油路i1を介して第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112のフィードバック油室112eにも入力される。該第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112では、フィードバック油室112eに入力された油による作用とスプリングの付勢力とが信号圧PSS1に抗してスプール112fの位置が左半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート112aとポート112bとが連通され、油室40Ab,40Baから押し出された油は油路eに排出される。
【0105】
一方、例えば平坦路から降坂路に移る場合等のように出力ディスク3が増速される力が作用する場合、パワーローラ4に作用するトラクション力が弱まり、リアクション力が該トラクション力を上回る。
【0106】
即ち、パワーローラ4cでもリアクション力がトラクション力を上回り、該パワーローラ4cは出力ディスク3のω1方向側に移動しはじめる。すると、該パワーローラ4cはキャリッジ41及び球面軸受42を介してレバー45Bの端部45Baに作用し、該レバー45Bは支軸43を中心に左回転方向に回転移動し、該レバー45Bに接続されているピストンロッド46Bを介してピストン40Bpを図中下方向へ移動させる。
【0107】
またパワーローラ4aも同じくリアクション力がトラクション力を上回り、該パワーローラ4aは出力ディスク3のω1方向側に移動しはじめる。該パワーローラ4aはキャリッジ41及び球面軸受42を介してレバー45Aの端部45Aaに作用し、該レバー45Aは支軸43を中心に左回転方向に回転移動し、該レバー45Aに接続されているピストンロッド46Aを介してピストン40Apを図中上方向へ移動させる。
【0108】
すると、油圧アクチュエータ40A,40Bの油室が拡がる側(サーボ圧PS1が供給される側)の油室40Ab,40Ba及び該油室40Ab,40Baに接続されている油路b1,b2,b4のサーボ圧PS1が減圧される。このとき、潤滑圧Plubeよりも該油室40Ab,40Ba及び該油室40Ab,40Baに接続されている油路b1,b2,b4のサーボ圧PS1のほうが小さくなるまで減圧された場合には、バイパスチェックバルブ136において、上述したようにチェックボール136bが移動され油路b4と油路eとが連通し、油路e,b4,b1,b2を介して油室40Ab,40Baに潤滑圧Plubeが供給される。
【0109】
同時に、上記油圧アクチュエータ40A,40Bの油室が狭まる側(サーボ圧PS2が供給される側)の油室40Aa,40Bb及び該油室40Aa,40Bbに接続されている油路c1,c2,c4のサーボ圧PS2が加圧される。このとき、油室40Aa,40Bbから押し出された油は、油路c1,c2,c4を介して第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113のポート113aに入力されると共に油路i2を介して第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113のフィードバック油室113eにも入力される。該第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113では、フィードバック油室113eに入力された油による作用とスプリングの付勢力とが信号圧PSS2に抗してスプール113fの位置が右半位置に向けて移動駆動される。これによって、ポート113aとポート113bとが連通され、油室40Aa,40Bbから押し出された油は油路eに排出される。
【0110】
以上のように、本無段変速機1では、拡がる側の油室及びその供給油路におけるサーボ圧PS1又はPS2が潤滑圧Plubeよりも低くなった場合には、該広がる側の油室及び油路に潤滑圧Plubeが供給されることで負圧が生じてしまうことを防ぐことを可能としている。また、狭まる側の油室から押し出された油を第1又は第2リアクションプレッシャコントロールバルブ112,113を介して油路eに排出するので、該油路eから、バイパスチェックバルブ135又はバイパスチェックバルブ136を介して拡がる側の油室に作動油を循環させ、つまり広がる側の作動圧を直ちに上昇することが可能となって、油圧応答性の向上も図ることが可能となる。これにより、本無段変速機1では、バイパス回路やバイパス弁の制御装置などを不要とし、安価でかつコンパクト化を可能としている。
【0111】
さらに、パワーローラ4に上述したような出力ディスク3に減速される力が作用する状態よりも大きな力が作用する場合、即ち、例えばフットブレーキによる急制動で出力ディスク3が急に減速された場合、パワーローラ4に作用するトラクション力がリアクション力を上回り、該パワーローラ4はω2方向に大きく移動し所定の移動範囲を越える場合がある。
【0112】
このとき、パワーローラ4aは、上述と同様にω2方向に大きく移動し、キャリッジ41及び球面軸受42を介してレバー45Aの端部45Aaに作用し、該レバー45Aは支軸43を中心に右回転方向に回転移動する。該レバー45Aは大きく回転移動されることで、端部45Aaがエンドストップレバー48Aの端部48Aaを押圧し、該エンドストップレバー48Aは支点48Abを介したもう一方の端部48Acで第1エンドストップバルブ115のスプリング115dを押圧し、スプール115fが図中右半位置へと移動駆動される。これにより、第1エンドストップバルブ115ではポート115aとポート115bとが連通し、油路a4を介してポート115bに入力されるライン圧PLをポート115aから油路d1に出力する。該油路d1に出力されたライン圧PLはボールシャトルバルブ139へ入力され、該ボールシャトルバルブ139へ入力されたライン圧PLは、油路b3のサーボ圧PS1よりも圧力が大きいので、チェックボール139bを移動させ、油路d1と油路b4とを連通し、該ライン圧PLは油路b4,b1,b2を介して油圧サーボ40A2の油室40Ab及び油圧サーボ40B1の油室40Baに供給される。
【0113】
さらに、該油室40Ab,40Baに入力されたライン圧PLは、油圧サーボ40A2においてピストン40Apを図中上方向に押圧し、該ピストン40Apに接続されているピストンロッド46A、レバー45A、球面軸受42、及びキャリッジ41等を介して、パワーローラ4aは所定の移動範囲内に移動するようにω1方向に押圧駆動される。また、該ライン圧PLは、油圧サーボ40B1においてピストン40Bpを図中下方向に押圧し、該ピストン40Bpに接続されているピストンロッド46B、レバー45B、球面軸受42、及びキャリッジ41等を介して、パワーローラ4cは所定の移動範囲内に移動するようにω1方向に押圧駆動される。
【0114】
また、パワーローラ4aがω1方向に押圧駆動されると、レバー45Aの端部45Aaは該端部45Aaの移動に伴いエンドストップレバー48Aの端部48Aaを押圧する力が弱まり、最終的に端部48Acが第1エンドストップバルブ115のスプリング115dより離反する。すると、第1エンドストップバルブ115の油室115eからの作用とスプリング115gの付勢力とによって該スプール115fは図中右方向に切換えられ、ライン圧PLが入力されるポート115bが閉じられると共に、ポート115aとドレーンポート115cが連通して油路d1,i5及び油室115eの油圧がドレーンされる。
【0115】
これにより、第1エンドストップバルブ115は油路d1,b4,b1,b2を介して油圧サーボ40A2の油室40Ab及び油圧サーボ40B1の油室40Baにライン圧PLの供給を停止し、油路d1,i5及び油室115eの油圧が第1エンドストップバルブ115のドレーンポート115cからドレーンされる。該油圧がドレーンされ、該油路d1の油圧が油路b3のサーボ圧PS1より小さくなると、ボールシャトルバルブ139のチェックボール139bが移動されて、再び油路b3と油路b4とが連通され通常のサーボ圧PS1による制御状態とされる。
【0116】
また、パワーローラ4に作用するリアクション力がトラクション力を上回るように、出力ディスク3に大きな力が作用する場合にも、該パワーローラ4はω1方向に大きく移動し所定の移動範囲を越える場合がある。
【0117】
このとき、パワーローラ4cは、上述と同様にω1方向に大きく移動し、キャリッジ41及び球面軸受42を介してレバー45Bの端部45Baに作用し、該レバー45Bは支軸43を中心に左回転方向に回転移動する。該レバー45Bは大きく回転移動されることで、端部45Baがエンドストップレバー48Bの端部48Baを押圧し、該エンドストップレバー48Bは支点48Bbを介したもう一方の端部48Bcで第2エンドストップバルブ116のスプリング116dを押圧し、スプール116fが図中左半位置へと移動駆動される。これにより、第2エンドストップバルブ116ではポート116aとポート116bとが連通し、油路a1を介してポート116bに入力されるライン圧PLをポート116aから油路d2に出力する。該油路d2に出力されたライン圧PLはボールシャトルバルブ138へ入力され、該ボールシャトルバルブ138へ入力されたライン圧PLは、油路c3のサーボ圧PS2よりも圧力が大きいので、チェックボール138bを移動させ、油路d2と油路c4とを連通し、該ライン圧PLは油路c4,c1,c2を介して油圧サーボ40B2の油室40Bb及び油圧サーボ40A1の油室40Aaに供給される。
【0118】
さらに、該油室40Bb,40Aaに入力されたライン圧PLは、油圧サーボ40B2においてピストン40Bpを図中上方向に押圧し、該ピストン40Bpに接続されているピストンロッド46B、レバー45B、球面軸受42、及びキャリッジ41等を介して、パワーローラ4cは所定の移動範囲内に移動するようにω2方向に押圧駆動される。また、該ライン圧PLは、油圧サーボ40A1においてピストン40Apを図中下方向に押圧し、該ピストン40Apに接続されているピストンロッド46A、レバー45A、球面軸受42、及びキャリッジ41等を介して、パワーローラ4aは所定の移動範囲内に移動するようにω2方向に押圧駆動される。
【0119】
また、パワーローラ4cがω2方向に押圧駆動されると、レバー45Bの端部45Baは該端部45Baの移動に伴いエンドストップレバー48Bの端部48Baを押圧する力が弱まり、最終的に端部48Bcが第2エンドストップバルブ116のスプリング116dより離反する。すると、第2エンドストップバルブ116の油室116eからの作用とスプリング116gの付勢力とによって該スプール116fは図中左方向に切換えられ、ライン圧PLが入力されるポート116bが閉じられると共に、ポート116aとドレーンポート116cが連通して油路d2,i6及び油室116eの油圧がドレーンされる。
【0120】
これにより、第2エンドストップバルブ116は油路d2,c4,c1,c2を介して油圧サーボ40B2の油室40Bb及び油圧サーボ40A1の油室40Aaにライン圧PLの供給を停止し、油路d2,i6及び油室116eの油圧が第2エンドストップバルブ116のドレーンポート116cからドレーンされる。該油圧がドレーンされ、該油路d2の油圧が油路c3のサーボ圧PS2より小さくなると、ボールシャトルバルブ138のチェックボール138bが移動されて、再び油路c3と油路c4とが連通され通常のサーボ圧PS2による制御状態とされる。
【0121】
なお、上記説明については、2枚のパワーローラ4a,4cを駆動制御する2つの油圧アクチュエータ40A,40Bを示して説明をしているが、実際は他に同様の油圧アクチュエータを4つ備えており、つまり全6枚のパワーローラ4の全てが、2つのエンドストップバルブ115,116によってライン圧PLが供給されることで駆動する全6つの油圧アクチュエータによって駆動制御されている。
【0122】
また、本無段変速機1の油圧制御装置Aでは、ライン圧PLが適正な圧となるように、作動圧を信号圧PSとしてプライマリレギュレータバルブ111に入力し、該作動圧より所定圧高いライン圧PLに調圧されるように作動する。即ち、図8に示すように、サーボ圧PS1、サーボ圧PS2、ロークラッチ用クラッチ圧PCL、及びハイクラッチ用クラッチ圧PCHをそれぞれ出力させる。サーボ圧PS1は第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112から出力され、油路b4,f2を介してパイロットシャトルチェックバルブ131に入力され、サーボ圧PS2は第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113から出力され、油路c4,f1を介してパイロットシャトルチェックバルブ131に入力される。
【0123】
そして上述したように高い方の作動圧が油路f3に出力される。同様にロークラッチ用クラッチ圧PCLはロークラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ120から出力され、油路g1,f5を介してパイロットシャトルチェックバルブ132に入力され、ハイクラッチ用クラッチ圧PCHはハイクラッチ用クラッチプレッシャーコントロールバルブ121から出力され、油路g2,f6を介してパイロットシャトルチェックバルブ132に入力される。そして上述したように高い方の作動圧が油路f4に出力される。
【0124】
さらに、上記圧力の高い方のサーボ圧は、油路f3を介してパイロットシャトルチェックバルブ133に入力され、また上記高い方のクラッチ圧は、油路f4を介してパイロットシャトルチェックバルブ133に入力され、該サーボ圧と該クラッチ圧とで圧力の高い方の作動圧が油路f7に出力され、該油路f7を介してプライマリレギュレータバルブ111の油室111cに信号圧PSとして入力される。これにより、サーボ圧PS1、サーボ圧PS2、ロークラッチ用クラッチ圧PCL、及びハイクラッチ用クラッチ圧PCHの中で最も高い圧力の作動圧が信号圧PSとしてプライマリレギュレータバルブ111に入力され、該プライマリレギュレータバルブ111は該信号圧PSよりも所定圧高くなるように調圧されたライン圧PLが出力される。
【0125】
また、上述したように上記第1エンドストップバルブ115又は第2エンドストップバルブ116が作動し(図8参照)、ライン圧PLを作動圧PS1又は作動圧PS2として出力する際も、同様に油路f1又はf2、f3、f7を介して信号圧PSとして入力され、プライマリレギュレータバルブ111が該信号圧PSよりも所定圧高くなるようにライン圧PLを調圧するので、つまり上記第1エンドストップバルブ115又は第2エンドストップバルブ116が作動した際は、ライン圧PLを急上昇させることができる。これにより、上述した所定の範囲を越えたパワーローラ4を直ちに押戻すことが可能な構成となっている。
【0126】
このように、全ての作動圧に対応してライン圧PLを調圧することが可能となり、かつ例えば電磁弁を用いてライン圧PLを調圧することを不要とすることが可能となって、ライン圧調圧用の電磁弁を無くすことを可能としている。
【0127】
また、複数の作動圧のうちの2つをチェックボール131b,132b,133bに対向入力すると共に該チェックボール131b,132b,133bの位置によって大きい方の作動圧を導通させるパイロットシャトルチェックバルブ131,132,133を階層的に複数有しているので、複数の作動圧のうちの最大の作動圧をプライマリレギュレータバルブ111まで導くことを可能としている。
【0128】
以上のように本発明では、エンドストップレバー48A,48Bがパワーローラ4の回転中心dが所定の移動範囲を越えたことを検知した際に、第1エンドストップバルブ115、及び第2エンドストップバルブ116が第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112、及び第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113を迂回して元圧PLを油圧サーボ40A1,40A2,40B1,40B2の作動圧として供給するので、パワーローラ4の回転中心dが所定の移動範囲を越えた際に、油圧サーボ40A1,40A2,40B1,40B2の作動圧を急上昇させることが可能となる。これにより、パワーローラ4が、所定の移動範囲を越えてしまった際に、該パワーローラ4を即座に該所定の移動範囲内に押戻すことができるものでありながら、該パワーローラ4の変速制御を油圧サーボ40A1,40A2,40B1,40B2の押圧駆動制御による制御下に直ちに復帰させることができる。
【0129】
また、トロイダル式無段変速機1は、第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ112、及び第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ113を備え、油圧サーボ40A1,40A2,40B1,40B2はピストン40Ap,40Bpに対向した2つの油室40Aa,40Ab、及び40Ba,40Bbに異なる作動圧PS1,PS2を入力し、キャリッジ41、球面軸受42、レバー45、及びピストンロッド46を介してパワーローラ4の回転中心dを両ディスク2A,2B、及び3の面方向に対して押圧駆動し得るパワーローラ制御用油圧サーボであるので、元圧を、パワーローラ4を所定の移動範囲内に押圧駆動する方向に対して該ピストン40Ap,40Bpに作用する油室40Aa,40Ab、及び40Ba,40Bbに供給することができる。これにより、該パワーローラ4を即座に該所定の移動範囲内に押戻すことができるものでありながら、該パワーローラ4の変速制御を油圧サーボ40A1,40A2,40B1,40B2の押圧駆動制御による制御下に直ちに復帰させることができる。
【0130】
また、範囲外検知手段は、レバー45A,45Bからなり、迂回路連通弁は、エンドストップレバー48A,48Bが回動された際に元圧PLを油圧サーボ40A1,40A2,40B1,40Bの作動圧として供給する第1エンドストップバルブ115、及び第2エンドストップバルブ116からなるので、パワーローラ4が所定の移動範囲を越えたことを検知し、油圧サーボ40A1,40A2,40B1,40Bの作動圧を急上昇させるまでの作動を、例えばセンサにより検出して電気的に油圧上昇を行うことなく、機械的に行うことができ安価でかつコンパクト化を可能とすることができる。
【0131】
また、バリエータ5は、フルトロイダル型であるので、パワーローラ4を上記両ディスク2A,2B、及び3に平行な面上で移動駆動することで、自律的に変速させることを可能とすることができる。
【0132】
なお、以上説明した本実施の形態に係る油圧制御装置では、複数の作動圧のうちの最大の作動圧を元圧調圧弁(プライマリレギュレータバルブ)まで導くものとして、パイロットシャトルチェックバルブ、ボールシャトルバルブ、及びバイパスチェックバルブ等のシャトル弁を用いたものを説明したが、これらに限らず、複数の作動圧のうちの最大の作動圧を元圧調圧弁まで導くものであれば、どのようなものであってもよい。さらに、パイロットシャトルチェックバルブ、ボールシャトルバルブ、及びバイパスチェックバルブ等にあって、主に受圧部材としてチェックボールを用いるものを一例として説明したが、入力された2つの油圧のうちの大きい方の油圧を連通するものであれば、例えば受圧部材に例えばスプールを用いたものであってもよく、つまりどのようなシャトル弁であっても本発明に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係る無段変速機を示すスケルトン図。
【図2】本発明に係る無段変速機の速度線図。
【図3】本発明に係る無段変速機を示す全体断面図。
【図4】トロイダル式無段変速装置部分を示す概略横断面図。
【図5】トロイダル式無段変速装置部分の一部を示す模式図。
【図6】トロイダル式無段変速装置部分の一部を示す模式図。
【図7】トロイダル式無段変速装置部分の一部を示す模式図。
【図8】トロイダル式無段変速装置部分の一部と油圧制御装置の一部を示す模式図。
【符号の説明】
【0134】
1 無段変速機
2A,2B 入力ディスク
3 出力ディスク
4 パワーローラ
5 無段変速装置(バリエータ)
40Aa,40Ab,40Ba,40Bb 油室
40A1,40A2,40B1,40B2 パワーローラ制御用油圧サーボ(油圧サーボ)
40Ap,40Bp ピストン
41 ローラキャリッジ
41,42,45,46 リンク機構
45A,45B レバー部材(レバー)
48A,48B 範囲外検知手段(エンドストップレバー)
110 油圧発生源(オイルポンプ)
111 元圧調圧弁(プライマリレギュレータバルブ)
112 作動圧調圧弁(第1リアクションプレッシャーコントロールバルブ)
113 作動圧調圧弁(第2リアクションプレッシャーコントロールバルブ)
115 迂回路連通弁(第1エンドストップバルブ)
115a,116a 出力ポート
115b,116b 入力ポート
115f,116f スプール
115g,116g スプリング
116 迂回路連通弁(第2エンドストップバルブ)
B ローラ駆動装置
d 回転中心
PL 元圧(ライン圧)
PS1,PS2 作動圧(サーボ圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ディスク、出力ディスク、及びそれら両ディスクに挟持されたパワーローラを有するバリエータ装置と、
油圧サーボ、及び前記パワーローラを支持するリンク機構を有し、前記油圧サーボの押圧駆動に基づき前記リンク機構を介して前記パワーローラの回転中心を前記両ディスクの面方向に対して移動駆動し得るローラ駆動装置と、
油圧発生源の油圧を元圧として調圧する元圧調圧弁と、
該元圧を前記油圧サーボに供給する作動圧として調圧する作動圧調圧弁と、を備えたトロイダル式無段変速機において、
前記パワーローラの回転中心が所定の移動範囲を越えたことを検知する範囲外検知手段と、
前記範囲外検知手段が前記パワーローラの回転中心が所定の移動範囲を越えたことを検知した際に、前記作動圧調圧弁を迂回して前記元圧を前記油圧サーボの作動圧として供給する迂回路連通弁と、を備えた、
ことを特徴とするトロイダル式無段変速機。
【請求項2】
前記作動圧調圧弁を複数備え、
前記油圧サーボは、ピストンに対向した2つの油室に異なる前記作動圧を入力し、前記リンク機構を介して前記パワーローラの回転中心を前記両ディスクの面方向に対して押圧駆動し得るパワーローラ制御用油圧サーボであり、
前記迂回路連通弁は、前記元圧を、前記パワーローラを前記所定の移動範囲内に押圧駆動する方向に対して該ピストンに作用する油室に供給してなる、
請求項1記載のトロイダル式無段変速機。
【請求項3】
前記リンク機構は、前記油圧サーボの押圧駆動により前記両ディスク平行な面上で回動駆動し得るレバー部材と、前記レバー部材に揺動自在かつ回転自在に接続されると共に、前記パワーローラの回転中心を回転自在に支持するローラキャリッジと、を有してなり、
前記範囲外検知手段は、前記レバー部材が所定の角度以上回動した際に、前記レバー部材に当接・押圧されて回動することで、前記パワーローラの回転中心が所定の移動範囲を越えたことを検知するエンドストップレバーからなり、
前記迂回路連通弁は、前記エンドストップレバーが回動された際に、該エンドストップレバーによりスプリングに反してスプールが押圧駆動されて、前記元圧を入力する入力ポートと前記油圧サーボに直接連通する出力ポートとが連通されることで、前記作動圧調圧弁を迂回して前記元圧を前記油圧サーボの作動圧として供給するエンドストップ弁からなる、
請求項1または2記載のトロイダル式無段変速機。
【請求項4】
前記バリエータ装置は、フルトロイダル型である、
請求項1ないし3のいずれか記載のトロイダル式無段変速機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−271060(P2007−271060A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100669(P2006−100669)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【出願人】(301037257)トロトラック・(ディベロップメント)・リミテッド (13)
【Fターム(参考)】