説明

ドア治具

【課題】スライドドアを車体に対して各種作業に適した状態で位置決め保持可能とし、かつ搬送ライン周辺の作業スペースの縮小を図ることができるドア治具を提供する。
【解決手段】第一アーム8及び第二アーム9の一端は、車体側ベース部2のブラケットに回動軸を異にして回転自在に接続され、第一アーム8及び第二アーム9の他端は、ピボット部材13の一側に回動軸を異にして回転自在に接続され、第三アーム27及び第四アーム28の一端は、ピボット部材13の他側に回動軸を異にして回転自在に接続され、第三アーム27及び第四アーム28の他端は、ヒンジ部材37に回転軸を異にして回転自在に接続され、スライドドア側ベース部3は、ヒンジ部材37に連結軸46を介して回転自在に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装及び部品組み付け等に用いるドア治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドドアを有する車体に対する塗装は、例えば特許文献1に示すように、リンク機構を有するドア治具を用いて、車体及びスライドドアの塗装面がオーバーラップしないように、スライドドアを車体のスライドドア開口部に近接させ、かつ車体側面と略平行に保持した状態で、車体及びドアの外板塗装を行うことで、車体及びスライドドアの間に色差が生じることを抑止している。
また、車体及びスライドドアの内板塗装を行う場合には、前記リンク機構を用いてスライドドアを回動させることで、車体にスライドドアが干渉することなくスムーズに開放できるようにしている。
【0003】
一方、例えば特許文献2には、リンク機構を用いてスライドドアを車体に対して略直角にして位置固定可能とし、スライドドアの内面への内張り作業の容易化を図る技術が開示されている。
これは、上記前者の技術では、スライドドアの内面への内張り作業を行う際にスライドドアの位置を固定できず、作業者がスライドドアに接触するとドアが閉動して作業の邪魔になるという不具合があるのに対し、前記ドアの閉動を防止できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−206644号公報
【特許文献2】特開2001−205150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スライドドアを車体に組み付ける方法としては、車体側のスライドレールに予めスライドドア側のローラーブラケットを組み付けておき、塗装工程で塗装の完了したスライドドアを塗装治具から取り外して、前記車体に予め組み付けられたローラーブラケットに取り付ける方法が一般的であったが、デザインの多様化により上記組み付け手順の変更を余儀なくされる場合が出てきた。
すなわち、スライドドアに予めローラーブラケットを組み付けておき、車体側に組み付けられたスライドレールにスライドドア側のローラーブラケットを組み付ける方法である。
【0006】
この場合、塗装用のドア治具にスライドドアを保持した状態でローラーブラケットをスライドドアに組み付け、その後に塗装治具よりスライドドアを取り外し、車体側のスライドレールに組み付ける方法が最も効率的である。
またこの場合、車体に対してローラーブラケットを組み付けるための十分な隙間をスライドドアと車体との間に確保するために、スライドドアを車体に対して略直角にかつ十分に離間させて保持する必要がある。また、車体搬送中にスライドドアに組み付けられたローラーブラケットが車体に干渉しないように、スライドドアを車体に対して十分に離間、開放させた状態で位置決め保持する必要がある。
【0007】
しかしながら、上記従来の各技術では、スライドドアを車体に対して十分に離間させて保持できないため、スライドドアを車体に対して略直角に位置固定してもローラーブラケットを組み付けられないという不具合がある。また、搬送中も車体に対してスライドドアを略直角に保持することとなるため、搬送ライン両側に十分なスペースを要するという不具合がある。
【0008】
本発明は上記従来技術の不具合を解消するためのものであり、スライドドアを車体に対して各種作業に適した状態で位置決め保持可能とし、かつ搬送ライン周辺の作業スペースの縮小を図ることができるドア治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、
車体(例えば実施形態の車体W)に取り付けられる車体側ベース部(例えば実施形態の車体側ベース部2)と、
車体にスライドドア(例えば実施形態のスライドドアD)を取り付けるためのスライドドア側ベース部(例えば実施形態のスライドドア側ベース部3)と、
前記車体側ベース部とスライドドア側ベース部とを接続し、リンク動作により前記スライドドア側ベース部が所定の回転中心点に対して回動するように設定された、複数のアーム(例えば実施形態の各リンク部材8,9,27,28)、ピボット部材(例えば実施形態のピボット部材13)及びヒンジ部材(例えば実施形態のヒンジ部材37)からなるリンク機構部(例えば実施形態のリンク機構部4)と、を有し、
前記アームは、第一アーム(例えば実施形態の第一リンク部材8)、第二アーム(例えば実施形態の第二リンク部材9)、第三アーム(例えば実施形態の第三リンク部材27)及び第四アーム(例えば実施形態の第四リンク部材28)から構成され、
前記第一アーム及び第二アームの一端は、前記車体側ベース部のブラケット(例えば実施形態のブラケット12)に回動軸を異にして回転自在に接続され、
前記第一アーム及び第二アームの他端は、前記ピボット部材の一側に回動軸を異にして回転自在に接続され、
前記第三アーム及び第四アームの一端は、前記ピボット部材の他側に回動軸を異にして回転自在に接続され、
前記第三アーム及び第四アームの他端は、前記ヒンジ部材に回転軸を異にして回転自在に接続され、
前記スライドドア側ベース部は、前記ヒンジ部材に連結軸(例えば実施形態のボルト46)を介して回転自在に支持されることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、
前記車体側ベース部、第一アーム、第二アーム及びピボット部材は、第一係止部材(例えば実施形態の第一係止バー18)により収納状態と展開状態とに保持され、
前記ピボット部材、第三アーム、第四アーム及びヒンジ部材は、第二係止部材(例えば実施形態の第二係止バー31)により収納状態と展開状態とに保持されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、
前記ヒンジ部材とスライドドア側ベース部とは、前記第三係止部材(例えば実施形態の第三係止バー49)により作業位置と搬送位置とに保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リンク機構部によりスライドドアを各種作業に適した状態に配置すると共に、この状態で各係止部材によりスライドドアを位置決め保持することができる。また、スライドドア側ベース部と共にスライドドアを回動させることで、搬送ライン両側の作業スペースの縮小を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるドア治具の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】塗装ラインにおいて上記ドア治具を取り付けた状態を示す平面図であり、(a)はドア治具が保持するスライドドアを車体側面と略平行にした状態を、(b)は前記スライドドアを開方向に回動させた状態をそれぞれ示す。
【図4】車体組立ラインにおいて上記スライドドアにローラーブラケットを取り付ける状態を示す平面図であり、(a)は前記スライドドアを車体側面から離間させると共に略垂直にした状態を、(b)は前記スライドドアを閉方向に回動させた状態をそれぞれ示す。
【図5】図4(a)をA方向から見た鳥瞰図である。
【図6】図4(a)をB方向から見た鳥瞰図である。
【図7】図1の状態のドア治具を車体及びスライドドアに取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、説明都合上、図中適所に示す矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方を、矢印INは車両左右内方をそれぞれ示すものとする。
【0013】
図1,2,7に示すドア治具1は、車両の製造ラインにてサイドドアたるスライドドアDを車体Wに保持可能とするもので、スライドドアDを車体側部開口からやや浮かせて車体側面Sと略平行にして保持する収納状態(図3(a)参照)と、この状態からスライドドアDをヒンジ開閉式ドアと同様に前端側を中心に開方向に所定角度だけ回動させて保持する内板塗装状態(図3(b)参照)と、この状態からスライドドアDを車体Wからさらに離間かつ回動させると共に車体側面Sと略直角にして保持するブラケット取り付け状態(図4(a)参照)と、この状態からスライドドアDを閉方向に回動させて車体側面Sと略平行にして保持するドア搬送状態(図4(b)参照)と、に態様を変化させる。なお、本実施形態では車体後部右側を例に示すが、車体前部及び左側にも同様に適用可能である。
【0014】
ドア治具1は、車体Wに当該治具1を取り付けるための車体側ベース部2と、スライドドアDを当該治具1に取り付けるためのスライドドア側ベース部3と、前記車体側ベース部2及びスライドドア側ベース部3間に介設されるリンク機構部4とを備える。
【0015】
図5,6を併せて参照し、車体側ベース部2の一側には、車体WのセンターピラーPに形成されたネジ孔に車室内側から対向する開孔5と、センターピラーPのインナーパネルP1に開設された開口P2に室内側から係合する略コ字形の係合部6と、センターピラーPの車室内側に形成された開孔に挿入されるピン部7と、を有する車体側取り付け部STが構成される。
【0016】
また、車体側ベース部2の他側には、その上下端に断面コ字状のブラケット12がそれぞれ配設され、これら各ブラケット12に、それぞれ一対の平行な第一リンク部材8及び第二リンク部材9の一端がボルト10及びナット11により揺動可能に軸支される。
【0017】
各リンク部材8,9の他端は、ピボット部材13の第一ブラケット14にボルト15及びナット16により揺動可能に軸支される。
上下一対の第一リンク部材8は、連結ロッド17により互いに連結される。各リンク部材8,9には、後述する第一係止バー18の係止ピン19を挿通するためのピン孔20a,20bがそれぞれ開設される。
【0018】
ピボット部材13は断面コ字状であり、平面視が長方形状でかつその一部に前方に突出した凸部14aを有する第一ブラケット14を連結ロッド21の両端に互いに平行に溶着する。第一ブラケット14上には、断面コ字状で平面視が略三角旗他状の第二ブラケット22が配設される。第二ブラケット22は、その開放部が第一ブラケット14の開放部と逆向きとなるように配置される。各ブラケット14,22は、互いに平行をなして上下に重なって溶着される。
【0019】
第一ブラケット14には、第一係止バー18の軸部23を挿通するための開孔24が形成され、凸部14aには、第一係止バー18の係止ピン19を挿通するピン孔25が形成される。
第一係止バー18は、前記軸部23と、この軸部23から平行に延出された上下の係止ピン19と、軸部23下端の抜け止めリング26とを有する。
【0020】
ピボット部材13の第二ブラケット22の平面視三角旗部分22aには、第三リンク部材27及び第四リンク部材28の一端がそれぞれボルト29及びナット30により揺動可能に軸支される。
第二ブラケット22の平面視三角旗部分22aには、第二係止バー31の軸部32を挿通する開孔33と、第二係止バー31の係止ピン34を挿通するピン孔35とが形成される。
【0021】
第二係止バー31は、軸部32と、この軸部32から平行に延出された上下の係止ピン34と、軸部32下端の抜け止めリング68とを有する。
第三リンク部材27及び第四リンク部材28には、第二係止バー31の係止ピン34を挿通するピン孔64,36がそれぞれ開設される。
【0022】
上下一対の第三リンク部材27及び第四リンク部材28の他端には、ヒンジ部材37がボルト40及びナット41により揺動可能に軸支される。ボルト40及びナット41は、ヒンジ部材37の第二プレート38及び第三プレート39間に設けられる。
【0023】
ヒンジ部材37は、その第三プレート39が連結バー42の両端に互いに平行に溶着される。第三プレート39の一側には起立プレート43が溶着され、この起立プレート43に第二プレート38及び第一プレート44が溶着される。各プレート38,39,44は互いに平行に設けられる。
【0024】
第一プレート44及び第二プレート38間には、スライドドア側ベース部3の第二プレート45が挿入されて、ボルト46及びナット47により揺動可能に軸支される。第二プレート45の上方には、スライドドア側ベース部3の第一プレート48が配置され、これら各プレート45,48間に、ヒンジ部材37の第一プレート44が挿入される。
【0025】
スライドドア側ベース部3の第一プレート48には、開孔53及びピン孔54が開設される。開孔53には第三係止バー49の軸部50が挿通され、この軸部50がヒンジ部材37の第一プレート44及び第二プレート38、並びにスライドドア側ベース部3の第二プレート45を貫通する。
【0026】
第三係止バー49は、軸部50と、この軸部50から平行に延出された上下の係止ピン51と、軸部50下端の抜け止めリング52とを有する。前記ピン孔54には係止ピン51が係合する。
ピン孔54に挿通された係止ピン51は、さらにヒンジ部材37の第一プレート44に開設されたピン孔67、スライドドア側ベース部3の第二プレート45に開設されたピン孔65、及びヒンジ部材37の第二プレート38に開設されたピン孔66に挿通される。
ヒンジ部材37の第一プレート44及び第二プレート38には、第三係止バー49の係止ピン51を挿通するピン孔55が形成される。
【0027】
スライドドア側ベース部3の第一プレート48及び第二プレート45は、支持ロッド56の上下に互いに平行に溶着される。支持ロッド56の上側には、スライドドアDの内板Daに形成された開孔及びネジ孔に対応するピン体57及び開孔62と、スライドドアDの内板Daに形成されたドアホールDbに係合する円弧部材58が配設された第一支持プレート59とが設けられる。
支持ロッド56の下側には、スライドドアDの内板Daに形成された開孔に対応する開孔60が形成された第二支持プレート61が設けられる。
【0028】
図2,3(a)に示すドア治具1の収納状態では、第一リンク部材8及び第二リンク部材9は車体側ベース部2の枠体63側に折り畳まれ、ブラケット12とピボット部材13の第一ブラケット14との間に収納された状態となる。このとき、ブラケット12とピボット部材13とは略平行な状態となる。そして、第一係止バー18の係止ピン19は、第一リンク部材8のピン孔20aに挿通されることで、当該収納状態を保持する。
【0029】
また、上記格納状態では、第三リンク部材27及び第四リンク部材28も折り畳まれ、ピボット部材13の第二ブラケット22とヒンジ部材37の第二プレート38及び第三プレート39との間に収納された状態となる。このとき、第二係止バー31の係止ピン34は、第四リンク部材28のピン孔36に挿通されることで、当該収納状態を保持する。また、スライドドア側ベース部3の第一支持プレート59及び第二支持プレート61は、車体側ベース部2の枠体63に平行となるように収納される。
【0030】
上記ドア治具1を用いて塗装ラインにおいてスライドドアDを車体Wに取り付ける場合、まず、図2,3(a),7に示す如く前記収納状態にあるドア治具1において、車体WのセンターピラーPに形成された開口P2及び開孔(不図示)に係合部6及びピン部7をそれぞれ係合させることで、車体Wに対してドア治具1を位置決めする。
【0031】
次いで、車体WのセンターピラーPに形成されたネジ孔(不図示)にドア治具1の開孔5を介してボルト(不図示)を螺着することで、ドア治具1を車体Wに取り付ける。
次いで、第二係止バー31の上部を把持して上方に持ち上げ、係止ピン34と第四リンク部材28のピン孔36との係合を解除し、前記格納状態から第三リンク部材27及び第四リンク部材28を起立させる。
【0032】
すると、リンク機構部4の作用により、スライドドア側ベース部3が、その前端側を中心とするように開方向に所定角度だけ回動する(図3(b)参照)。
この状態で、係止ピン34を第三リンク部材27のピン孔64に係合して位置決めすることで、ドア治具1がスライドドア側ベース部3を所定角度だけ回動させた内板塗装状態となる。
【0033】
前記内板塗装状態において、スライドドア側ベース部3のピン体57及び円弧部材58にスライドドアDの内板Daに形成された開孔とドアホールDbとを係合させることで、スライドドア側ベース部3の開孔62,60とスライドドアDの内板Daのネジ孔とが同芯となり、この状態で開孔62,60側からそれぞれボルトを締結することで、スライドドアDがスライドドア側ベース部3に取り付けられる。
【0034】
次に、車体Wの外板を塗装するときは、第二係止バー31の上部を把持して上方に持ち上げ、係止ピン34と第三リンク部材27のピン孔64との係合を解除し、第三リンク部材27及び第四リンク部材28を折り畳む。
【0035】
この状態で、係止ピン34を第四リンク部材28のピン孔36に係合させて位置決めすることで、ドア治具1がスライドドアDを車体側部開口からやや浮かせて車体側面Sと略平行にして保持した前記収納状態となる。
この状態で、車体Wと共にスライドドアDの外板を塗装することにより、車体WとスライドドアDとの間の色差の発生が抑えられる。
【0036】
次に、車体Wの内板W1及びスライドドアDの内板Daを塗装するときは、ドア治具1を前記内板塗装状態とし、車体Wの内板W1及びスライドドアDの内板Daの塗装を行う。
【0037】
次に、車体組み立てラインにおいて、スライドドアDにローラーブラケットBRを取り付けるときは、前記内板塗装状態にあるドア治具1において、第一係止バー18の上部を把持して上方に持ち上げ、係止ピン19と第一リンク部材8のピン孔20aとの係合を解除し、前記内板塗装状態から第一リンク部材8及び第二リンク部材9を起立させる。
【0038】
すると、リンク機構部4の作用により、ピボット部材13が、車体Wから離間しつつ前端側を中心とするように所定角度だけ回動する。その結果、スライドドア側ベース部3が、スライドドア側ベース部3が、車体Wから離間しつつ前端側を中心とするように開方向にさらに回動し、車体側面Sに対して略直角に配置される(図4(a)参照)。
【0039】
この状態で、係止ピン19を第二リンク部材9のピン孔20bに係合して位置決めすることで、ドア治具1がスライドドア側ベース部3を車体Wから離間させると共に車体側面Sと略直角に回動させたブラケット取り付け状態となる。
【0040】
そして、前記ブラケット取り付け状態において、スライドドアDにローラーブラケットBRを取り付けた後、車体Wが次工程に搬送される。このとき、スライドドアDと搬送ラインの周囲の装置あるいは作業者との干渉を避けるため、スライドドアDを閉方向に回動させて車体側面Sと略平行にする。
【0041】
すなわち、前記ブラケット取り付け状態にあるドア治具1において、第三係止バー49の上部を把持して上方に持ち上げ、係止ピン51とヒンジ部材37の各ピン孔67,66及びスライドドア側ベース部3の第二プレート45のピン孔65との係合を解除し、前記ブラケット取り付け状態からスライドドア側ベース部3を図中時計方向に回動させる。このときのスライドドア側ベース部3の回動軸は、第一プレート44及び第二プレート38間に第二プレート45を軸支するボルト46となる。
【0042】
そして、第一プレート44及び第二プレート38の各ピン孔55とスライドドア側ベース部3の第一プレート48のピン孔54とを同芯とした状態で、第三係止バー49の係止ピン51を各ピン孔55,54に挿通して位置決めすることで、ドア治具1がスライドドア側ベース部3を車体側面Sと略平行に回動させたドア搬送状態となる。
【0043】
この状態で、スライドドアDがローラーブラケットBR及び車体Wの干渉を避ける程度に車体Wから離間すると共に、スライドドアDが車体側面Sと略平行となることで、車体Wを次工程に搬送する際のスライドドアDと搬送ライン周囲の装置あるいは作業者との干渉が避けられるのである。
【0044】
なお、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 ドア治具
2 車体側ベース部
3 スライドドア側ベース部
4 リンク機構部
8 第一リンク部材(第一アーム)
9 第二リンク部材(第二アーム)
12 ブラケット
13 ピボット部材
18 第一係止バー(第一係止部材)
27 第三リンク部材(第三アーム)
28 第四リンク部材(第四アーム)
31 第二係止バー(第二係止部材)
37 ヒンジ部材
46 ボルト(連結軸)
49 第三係止バー(第三係止部材)
W 車体
D スライドドア



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられる車体側ベース部と、
車体にスライドドアを取り付けるためのスライドドア側ベース部と、
前記車体側ベース部とスライドドア側ベース部とを接続し、リンク動作により前記スライドドア側ベース部が所定の回転中心点に対して回動するように設定された、複数のアーム、ピボット部材及びヒンジ部材からなるリンク機構部と、を有し、
前記アームは、第一アーム、第二アーム、第三アーム及び第四アームから構成され、
前記第一アーム及び第二アームの一端は、前記車体側ベース部のブラケットに回動軸を異にして回転自在に接続され、
前記第一アーム及び第二アームの他端は、前記ピボット部材の一側に回動軸を異にして回転自在に接続され、
前記第三アーム及び第四アームの一端は、前記ピボット部材の他側に回動軸を異にして回転自在に接続され、
前記第三アーム及び第四アームの他端は、前記ヒンジ部材に回転軸を異にして回転自在に接続され、
前記スライドドア側ベース部は、前記ヒンジ部材に連結軸を介して回転自在に支持されることを特徴とするドア治具。
【請求項2】
前記車体側ベース部、第一アーム、第二アーム及びピボット部材は、第一係止部材により収納状態と展開状態とに保持され、
前記ピボット部材、第三アーム、第四アーム及びヒンジ部材は、第二係止部材により収納状態と展開状態とに保持されることを特徴とする請求項1に記載のドア治具。
【請求項3】
前記ヒンジ部材とスライドドア側ベース部とは、前記第三係止部材により作業位置と搬送位置とに保持されることを特徴とする請求項1又は2に記載のドア治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148698(P2012−148698A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9690(P2011−9690)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】