説明

ドレッシング装置

【課題】研磨面に凹凸があっても、これを容易且つ確実に平坦化させて、効率的に研磨面の再生を行うことができるようにする。
【解決手段】被研磨材の被研磨面に相対摺動して該被研磨面を平坦且つ鏡面状に研磨する研磨テーブル10の研磨面16aをドレッシングするドレッサ36を有するドレッシング装置であって、研磨面16aとドレッサ36とを互いに摺接させて該研磨面16aをドレッシングしている時に研磨面16aとドレッサ36との間に作用する摩擦負荷を直接または間接に検知するセンサ44a,44bと、該センサ44a,44bの出力に応じてドレッシング進行状況を判定する判定手段46,48を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面状に研磨するポリッシング装置に付設して、研磨に使用される研磨テーブルの研磨面をドレッシングするドレッシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。特に線幅が0.5μm以下の光リソグラフィの場合、焦点深度が浅くなるためステッパーの結像面の平坦度を必要とする。このような半導体ウエハの表面を平坦化する1手段として、化学機械研磨(CMP)を行うポリッシング装置が知られている。
【0003】
従来、この種のポリッシング装置は、図43に示すように、上面に研磨布(研磨パッド)100を貼付して研磨面を構成する研磨テーブル102と、ポリッシング対象物である半導体ウエハ等の基板Wを被研磨面を研磨テーブル102に向けて保持するトップリング104とを有し、これらをそれぞれ自転させながらトップリング104により基板Wを一定の圧力で研磨テーブル102の研磨面に押付け、ノズル106より砥液を供給しつつ基板Wの被研磨面を平坦且つ鏡面に研磨している。砥液は、例えばアルカリ溶液にシリカ等の微粒子からなる砥粒を懸濁したものを用い、アルカリによる化学的研磨作用と、砥粒による機械的研磨作用との複合作用である化学的・機械的研磨によって基板Wを研磨する。
【0004】
研磨を行って劣化した研磨布100の表面を再生するために、研磨テーブル102の側方にドレッシング装置108を付設し、このドレッシング装置108のドレッシング面を研磨テーブル102の研磨面に押付けつつ、これらを自転させることで、研磨面に付着した砥液や切削屑を除去するとともに、研磨面の平坦化及び目立て(ドレッシング)を行うようにしている。このドレッシング装置108としては、砥液や研削屑の除去に重点を置く場合には、主にナイロンブラシでドレッシング面を構成したものが使用され、また研磨面を削って平坦化することに重点を置く場合には、主にダイヤモンドドレッサが用いられる。ここで、ドレッシング後の研磨面の均一性は、その後のポリッシング対象物のポリッシング精度に大きく影響を与える。
【0005】
しかしながら、上記のようなポリッシング装置においては、以下のような問題点があった。第1は、自転する研磨テーブル(ターンテーブル)で研磨を行う場合、回転中心では変位がないので、中心を外れたところで研磨を行うようになっている。従って、研磨テーブル102の大きさは、基板Wの直径の少なくとも2倍以上の直径を有するように設定されており、このため、ポリッシング装置が大型化して大きな床面積を占有するとともに、設備コストも大きくなる。この欠点は、基板Wの大型化の傾向に伴って一層顕著になる。
【0006】
第2の問題点は、ウレタンのような弾性を有する素材からなる研磨布100による研磨に伴うものである。一般に、半導体ウエハW上には、種々の寸法や段差を持つパターンが、通常、異なる素材から形成されている。このような段差面を、弾性を有する研磨布100により平坦化しようとすると、パターンの凸部と共に凹部も研磨されるので多くの研磨量と時間を要することとなり、稼動コストが上昇するとともに段差が解消されないので高い平坦度を得られない。さらに、ミクロな凹凸が集中する部分では研磨速度が速くなり、逆にマクロな凹凸が存在する部分では研磨速度が遅くなり、これにより被研磨面に大きなうねりが生じてしまう。
【0007】
さらに、第3の問題点としてコスト及び環境の問題がある。すなわち、平坦度の面内均一性の高い研磨を行うためには、研磨布100上に潤沢に砥液を供給する必要があるが、供給された砥液は実際の加工に寄与せずに排出されてしまう割合も高い。このため、砥液は高価であるので、稼動コストの低下を抑制してしまう。また、上述の砥液は、例えばシリカ等の砥粒を多量に含み、場合によって酸やアルカリを含むスラリー状であるため、環境維持のために廃液処理が必要であり、それも稼動コストの低下を抑制する因子となる。
【0008】
第1の問題点に対しては、研磨テーブル102が円軌道を描く循環並進運動(スクロール運動)を行うポリッシング装置の採用が考えられる。この場合は、研磨面の各点が同じ運動を行うので、研磨テーブル102の大きさは、ポリッシング対象物である基板に研磨テーブル102の公転半径の2倍を加えた径でよいので、装置の小型化、占有床面積の減少によるコスト低下を図ることができる。
【0009】
また、第2、第3の問題点に対しては、砥石を用いて研磨する方法が考えられる。これは、例えばシリカ等の砥粒をバインダを用いて結合させて平板状に加工した砥石を用いて、これを研磨テーブル上に貼設し、トップリング104に保持された半導体ウエハWを押圧、摺動することにより研磨を行うものである。これにより、砥石とウエハの摺動に伴い、バインダが崩壊あるいは溶解して砥粒を生成しつつ研磨が行われる。
【0010】
このような研磨方法によれば、砥石は研磨布と比較して硬質であるために弾性変形せず、半導体ウエハW上の凹凸のうちの凸部のみが研磨され、上述した加工後の基板表面上のうねりが生じるという問題点が解消される。また、砥粒を多量に含むスラリー状の砥液を用いないため、排出物質の処理量が大幅に減少し、稼動コストを低下させるとともに、環境の維持も容易であるという利点がある。また、研磨液として砥粒を含む砥液を使用しないので、砥液供給のための設備が不要となるという利点もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、円軌道を描く循環並進運動(スクロール運動)を行う研磨テーブルに砥石を固着し、この砥石で基板の研磨を行うと、砥石表面の研磨面には、基板と常に接触する中心側部分と、基板と全く接触しない周辺部分と、基板と接触したりしなかったりする中間部分が生じる。この結果、図9(a)に示すように、研磨面としての砥石の表面に窪みが生じてしまう。つまり、研磨面の中心部Aの摩耗量が大きく、外周部Cはほとんど摩耗せず、中間部Bは斜めに摩耗する。この状態でポリッシングを続けても基板を平坦化することができないので、砥石の研磨面のドレッシングが必要となる。
【0012】
このような場合に、従来と同様に研磨面より小さい径のドレッシング面やリング状のドレッシング面を持つ工具を用いてドレッシングを行うと、凹凸のある砥石の研磨面を部分的にドレッシングするので、全面に渡って平坦化することがかなり困難である。このような事情は、スクロール運動を行う研磨テーブルに貼付された研磨布の表面(研磨面)をドレッシングする時も同様である。
【0013】
また、研磨工具としての砥石や研磨布を長持ちさせるためには、必要以上のドレッシングを行わないことが必要である。このようなドレッシングの終点の判断は、例えば、ドレッシング時間を経験的に得られた平均的な時間に管理することによって行われていた。しかし、適正なドレッシング時間は、研磨工具の使用回数、ドレッシングの回数等によって変化するため、上記の方法では必ずしも適切なドレッシング量を得ることができず、過不足が生じてしまう。
【0014】
更に、ドレッシング装置のドレッシング面は、例えばスポンジやブラシ、ダイヤモンド電着プレート等の単一のドレッサ素材(洗浄具)で一般に構成され、複数のドレッサ素材を組み合わせて配置することが困難であるばかりでなく、研磨布の洗浄は、ドレッシングと別々に行われるものであり、その機能はドレッシングに代わるものではなかった。
【0015】
また、待機中のドレッサ素材は、乾燥防止のためドレッサ洗浄槽内で純水等に浸けられていたが、ドレッサ素材自体の洗浄は一般に行われていなかった。このため、ドレッサ素材に付着した異物や剥がれ落ちそうなドレッサ素材が研磨面に付着してポリッシング対象物の被研磨面を傷つけ、研磨性能を損なうことがあった。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、研磨面に凹凸があっても、これを容易且つ確実に平坦化させて、効率的に研磨面の再生を行うことができるドレッシング装置を提供することを目的とする。
また、省スペースの長所を持つスクロール運動を行う研磨テーブルを、少ない設置面積のドレッサで確実にドレッシングして該研磨テーブルの単位設置面積当たりの処理能力を向上させるようにしたドレッシング装置を提供することを目的とする。
【0017】
更に、複数のドレッサ素材の容易な選択を可能とし、且つ任意に組み合わせた異種のドレッサ素材を同時に使用することでドレッサ能力を向上させることができるようにしたドレッシング装置を提供することを目的とする。
また、ドレッサ素材をドレッサ洗浄槽内で洗浄することで、ドレッサ素材に付着した異物や、剥がれ落ちかかっているドレッサ素材の研磨面への付着を防止できるようにしたドレッシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のドレッシング装置は、被研磨材の被研磨面に相対摺動して該被研磨面を平坦且つ鏡面状に研磨する研磨テーブルの研磨面をドレッシングするドレッサを有するドレッシング装置であって、前記研磨面と前記ドレッサとを互いに摺接させて該研磨面をドレッシングしている時に前記研磨面と前記ドレッサとの間に作用する摩擦負荷を直接または間接に検知するセンサと、該センサの出力に応じてドレッシング進行状況を判定する判定手段を有する。
【0019】
凹凸を有する研磨面がドレッシングの進行に伴って平坦化すると、研磨面とドレッシング面との間の摩擦力が変化し、ドレッサの支持軸や研磨テーブルの駆動軸を回転させるモータの電流やトルクが変動するので、これらの内の一つの変動を検知することで、研磨面のドレッシング進行状況を適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のドレッシング装置によれば、研磨面の全範囲を同時にドレッシングすることができ、これにより、研磨テーブルの研磨面をその全面に渡ってより効率的に且つ均一に再生することができる。
【0021】
また、長尺状で横移動可能なドレッサと、このドレッサの形状に合ったドレッサ洗浄槽を使用することで、省スペースの長所を持つスクロール運動を行う研磨テーブルを、少ない設置面積のドレッサで確実にドレッシングして該研磨テーブルの単位設置面積当たりの処理能力を向上させることができる。
【0022】
更に、複数のドレッサ素材の容易な選択を可能とし、且つ任意に組み合わせた異種のドレッサ素材を同時に使用することで、ドレッサ能力を向上させ、また、ドレッサ素材をドレッサ洗浄槽内で洗浄することで、ドレッサ素材に付着した異物や、剥がれ落ちかかっているドレッサ素材の研磨面への付着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図6は、本発明の実施の形態のドレッシング装置を備えたポリッシング装置を示すものである。このポリッシング装置は、図1に示すように、全体が長方形をなす床Fの一端側に研磨部2が配置され、他端側には、基板収納用カセット4a,4bを載置するロード・アンロードユニット4が設けられている。研磨部2とロード・アンロードユニット4との間には、2台の搬送ロボット6a,6bを有する搬送部6と洗浄機8a,8b及び反転機8cが配置されている。
【0025】
研磨部2には、研磨テーブル10と、この研磨テーブル10を挟む位置にトップリング装置12及びドレッシング装置14とが設けられ、研磨テーブル10の側方に、搬送ロボット6bと基板Wの授受を仲介するプッシャ15が設置されている。なお、図2に示すように、研磨テーブル10の近傍のトップリング装置12及びドレッシング装置14の待機位置には、それぞれトップリング洗浄槽50及びドレッサ洗浄槽52が設けられている。
【0026】
研磨テーブル10の上面には、研磨工具としての薄板円板状の砥石16が貼付され、この砥石16の表面に平坦な研磨面16aが形成されている。研磨テーブル10の下方には、モータ18が配置され、このモータ18の駆動軸20の上端には、図3に示すように、該駆動軸20の軸心Oと偏心量“e”だけ偏心した位置に軸心Oを有する駆動ピン20aが設けられている。一方、研磨テーブル10の裏面中央には内部に軸受22を介して駆動ピン20aを収容する凹部10aが形成されている。研磨テーブル10は、図示しない支持機構によって駆動ピン20aまわりの自転を規制するように支持されている。
【0027】
これにより、モータ18の駆動に伴う駆動軸20の回転によって、駆動ピン20aが偏心量“e”を半径とした円軌道を描き、研磨テーブル10は、自転することなく、偏心量“e”を半径とした公転運動である循環並進運動(スクロール運動)を行うようになっている。研磨面16aの直径dは、ポリッシング対象物である基板Wの直径dに偏心量“e”の2倍(スクロール直径)を加えた値より大きく(d≧d+2e)設定されており、基板Wの全面を一度にポリッシングできるようになっている。例えば、基板Wの直径dを200mm、偏心量“e”を10mmとしたとき、研磨面16aの直径dは240mmに設定されている。
【0028】
砥石16は、所定のバインダの中に砥粒が分散して結合して構成され、研磨の進行に伴ってバインダから砥粒が遊離して生成されるようになっている。研磨面16aで発生する摩擦熱を除去し、研磨屑を除去し、さらに砥粒の遊離を促進するために、所定の研磨液を供給する供給装置が設けられている。研磨テーブル16と基板Wの相対移動が比較的小さいので、例えば、砥石側に内部流路を設けて研磨液を供給するようにしている。
【0029】
トップリング装置12には、トップリングカバー24の内部のトップリングヘッドから垂下するトップリングシャフト26の下端に略円盤状のトップリング28が取付けられ、基板Wを吸着保持しつつ該基板Wを研磨面16aに向けて所定の力で押付けるようになっている。トップリングカバー24の内部には、図示しないモータ、揺動アーム及び上下動シリンダが配置され、揺動アームの基端は上下方向に延びる回転自在な支柱30の上端に連結されているとともに、この揺動アームの自由端にトップリングシャフト26が上下動及び回転自在に支承されている。これによって、支柱30の回転によって揺動アームがトップリングカバー24と共に水平方向に揺動し、モータの駆動及び上下動シリンダの作動に伴って、トップリングシャフト26とトップリング28が一体となって回転及び上下動するようになっている。
【0030】
ドレッシング装置14もほぼ同様に、ドレッシングカバー32の内部に設けられたドレッシングヘッドの先端にドレッサシャフト34が設けられ、このドレッサシャフト34の下端にドレッサ36が取付けられている。ドレッシングヘッドの内部には、モータ38(図4参照)、図示しない揺動アーム及び上下動シリンダが配置され、揺動アームの基端は上下方向に延びる回転自在な支柱40の上端に連結されているとともに、この揺動アームの自由端にドレッサシャフト34が上下動及び回転自在に支承されている。これによって、支柱40の回転によって揺動アームが揺動し、モータ38の駆動及び上下動シリンダの作動に伴って、ドレッサシャフト34とドレッサ36が一体となって回転及び上下動するようになっている。
【0031】
ドレッサ36は、図5に示すように、全体として下方に拡がる円板状で、その下面には、図6(a)に示すように、平坦なドレッシング面36aを有している。このドレッシング面36aは、研磨面16aの運動範囲の全領域を覆う大きさに設定されている。つまり、前述のように、研磨面16aの直径dを240mm、偏心量eを10mmとしたとき、ドレッシング面36aの直径dは、研磨面16aの直径dに偏心量“e”の2倍を加えた値より大きな(d≧d+2e=260mm)、この例では、例えば270mmに設定されている。
【0032】
ドレッシング面36aには、研磨面をコンディショニング可能な物質の一つであるダイヤモンド粒子が、例えば電着によって、そのほぼ全面に渡って均一に付着されている。なお、図6(b)に示すように、ダイヤモンド粒子が格子状のパターンを描くように電着等で付着させてもよい。また、図7(a)に示すように、片面にダイヤモンド砥粒を接着させたダイヤモンドシート42を用意し、このダイヤモンドシート42を図7(b)に示すように、台座に取付けてもよい。
【0033】
このようにダイヤモンドシート42を使用することにより、研磨面の形状や寸法に対する柔軟性が高く、しかも摩耗した時に台座ごと交換することなく、ダイヤモンドシート42を貼り替えることで済ますことができるという利点がある。更に、ダイヤモンド粒子の代わりに他の粒状物を使用したり、セラミックス等の陶製材を付着させてもよく、また、図8に示すように、ドレッシング面をブラシによって形成してもよい。
【0034】
この実施の形態においては、ドレッシングの進行状況を簡単な構成で判定するための判定手段が設けられている。すなわち、図4に示すように、研磨テーブル10の駆動軸20を回転駆動するモータ18及びドレッサ36を取付けたドレッサシャフト34をそれぞれ回転駆動するモータ38に、モータ電流検出器44a,44bがそれぞれ設けられ、これらの信号は、信号処理装置46に入力されるようになっている。信号処理装置46は、ポリッシング装置の全体の稼動状態を制御する制御装置48に接続されている。なお、電流によるトルクの検出は、研磨テーブル10またはドレッサ36のいずれか一方のみでも可能である。
【0035】
次に、このような構成のポリッシング装置の動作を説明する。ポリッシング動作は、まず、モータ18を駆動して研磨テーブル10を循環並進円運動(スクロール運動)させ、次に、トップリング28で基板Wを吸着保持して回転させながら下降し、研磨テーブル10の研磨面16aに向けて押圧して基板Wを研磨する。必要な研磨液は、砥石16の内部の研磨液流路から供給される。研磨に伴い、バインダが崩壊または溶解して砥粒が自生する。
【0036】
所定時間の研磨を行った後の砥石16の減厚状況は、図9(a)に示すようになる。すなわち、研磨面16aの中心部Aがより研磨に使用されるため摩耗量が大きく、外周部Cは摩耗が少なく、中間部Bは断面が斜めに摩耗する。ここで、ドレッシング装置14をそのドレッサシャフト34の軸心が研磨テーブル10の駆動軸20の軸心Oとほぼ一致するように揺動させる。そして、ドレッサ36を下降させて、モータ18の駆動に伴って円軌跡を描く循環並進運動をしている研磨テーブル10の研磨面16aに向けて押圧し、同時に、モータ38によりドレッサ36を回転させる。これにより、研磨面16aをドレッサ36のドレッシング面36aでドレッシングして、図9(b)に示すように、研磨面16aを平坦化させる。
【0037】
この時、砥石16の研磨面16aの全領域が平坦なドレッシング面36aで一体に覆われているので、研磨面16aとドレッシング面36aが部分的に接触してドレッシングのムラが生じることが防止されて、研磨面16aが全面に渡ってより均一に再生され、且つ平坦化される。
【0038】
信号処理装置46はドレッサ36を回転駆動するモータ38の電流をモータ電流検出器44bによって検出し、電流値から雑音等を除去すると共に、所定の信号処理を行うことにより研磨面16aが平坦化された時点を決定してポリッシング装置の制御装置に終点信号を送り、制御装置48はドレッシングを終了すべく装置を停止する。
【0039】
ドレッシングの終点は、以下のようにして検知される。すなわち、ドレッシング中のドレッシング面36aと研磨テーブル10の研磨面16aとの摩擦力は、研磨テーブル10への抵抗トルクとして作用する。研磨テーブル10を回転させる手段が電気モータの場合、トルクの変化は電気モータの電流の変化として間接的に測定することができる。従って、電流値を測定することにより、ドレッシング中におけるドレッシング状況の変化を検知することができると考えられる。
【0040】
図10は、発明者等の実機でのテスト結果を示すもので、ドレッサ36を回転駆動するモータ38を流れる電流をモータ電流検出器44bによって検出したグラフであり、横軸はドレッシング時間を表し、縦軸はモータの電流値を表している。これにより、ドレッシング初期における負荷が大きく、徐々に減少して一定値で飽和することが分かる。これは、ドレッシングが進行すると研磨面16aの凹凸が除去され、ドレッサ36と研磨テーブル10の間の摩擦係数が低下するためと考えられる。従って、図10の「○」の時点を検知する適宜のパラメータを採用すればよい。これには、例えば、電流値のグラフの勾配や、ドレッシング初期との電流差ΔI、あるいは電流値自体等が挙げられる。
【0041】
また、このような判定手段は、ドレッサの寿命、すなわち、交換時期を判定するために用いることもできる。図11は、その方法を説明するためのもので、摩耗のないドレッサでドレッシングした時のグラフAと、摩耗の進んだドレッサでドレッシングした時のグラフBを比較すると、全体としての負荷自体がグラフBの場合がグラフAより小さいこと、及び電流差ΔI(ドレッシング開始時とドレッシング終了時のモータ電流値Iの差)の値もグラフBの場合(ΔI)がグラフAの場合(ΔI)よりも小さいことが分かる。従って、電流差ΔIが一定の基準値より小さくなった場合を終点としても、また、図11(b)に示すように、ドレッシング初期の電流値自体の差ΔImが所定値以上になったときを終点としてもよい。
【0042】
なお、この例では、ドレッサ36を回転駆動するモータ38の電流値をもとに、ドレッシングの終了時を判定してドレッシングを終了するようにしているが、ドレッサシャフト34から負荷されるドレッサ36の研磨面16aに対する押付け荷重や、研磨テーブル10の回転数等のドレッシング条件の設定を変更して、ドレッシング工程を段階的に制御するようにしてもよい。
【0043】
以上の実施の形態では、ドレッサ36を回転駆動するモータ38の電流値を検出する場合を説明したが、研磨テーブル10の駆動軸20を駆動するモータ18の電流を用いてもよい。この場合、図4に示すようにテーブル側のモータ18に接続されたモータ電流検出器44aの信号を信号処理装置46によって処理すればよい。
【0044】
また、ドレッシングの進行に伴って、ドレッシング中におけるドレッシング面または研磨面近傍の振動状態が変化する。例えば、図12(a)は、ドレッシング開始直後における周波数スペクトルを測定したグラフであり、図12(b)は、研磨面が平坦化したドレッシング終了後の周波数スペクトルを測定したグラフである。そこで、所定位置に振動検出器を設置し、振動状態の変化を検知して研磨面のドレッシング進行状況を判定するようにしてもよい。ここでは、例えば、所定の波形(周波数スペクトル)に落ち着いた時をドレッシング終了時と判断する。更に、適当な箇所にCCDカメラを配置し、ポリッシング後の研磨面を検知し、これに基づいてドレッシング条件を決める、あるいはドレッシング後にドレッシングの状況を確認するように用いてもよい。
【0045】
ドレッシングを終えたドレッサ36は、支柱40の回転により揺動して待機位置に戻り、下降してドレッサ洗浄槽52において自動洗浄を受ける。図13は、そのような自動洗浄槽の例を示すもので、これは内側の比較的浅い主洗浄槽54の周囲に、主洗浄槽54から流出した洗浄液を受ける受液槽56が設けられて構成されている。主洗浄槽54は、ドレッサ36の外径より大きい径を有し、縁部54aが上に広がるようなテーパをもって形成されており、洗浄液が下方内側から上方外側へスムースに流れるようになっている。さらに、主洗浄槽54に縁部から純水等の洗浄液を供給する洗浄液供給ノズル58と、受液槽56から洗浄液を排出する排水口60が設けられている。主洗浄槽54は、例えば、深さ12mm、容積600cm、縁部54aのテーパ角度が水平に対して50度程度に設定されている。なお、洗浄液供給ノズル58の代わりに、洗浄液供給口を主洗浄槽54の底部に設けてもよい。
【0046】
この自動洗浄槽では、主洗浄槽54に予め洗浄液を満たしておき、ドレッサ36を所定の速度以上で下降させて、図13(a)及び(b)に示すように、主洗浄槽54にドレッサ36のドレッシング面36aを浸漬させる。これにより、ドレッサ36の浸漬する容積分だけの洗浄液が排除されて、洗浄液の大きな流れが形成され、ドレッシング面36aが効率的に洗浄される。さらに、洗浄液供給ノズル58より洗浄液を供給して継続的にドレッシング面36aの洗浄を行う。ここで、ドレッサ36を回転させてもよく、静止状態でもよい。汚れた洗浄液は縁部54aより溢れて受液槽56に流れ、さらに排水口60より排出される。これにより、主洗浄槽54内の洗浄液が常時置換されるので、バクテリアの発生等による汚染も無く、また、研磨屑の堆積も防止される。
【0047】
これらの図に示すように、ドレッサ36の下降位置を調整してドレッサ36の上面が浸漬しないようにし、ドレッサ36の上面の汚染を防ぐのが好ましい。この場合、ドレッサ36の水没容積:主洗浄槽54の内容積の比は、1:1.5〜2.5に設定され、より望ましくは、1:1.5〜2.0に設定される。洗浄液の供給は、ドレッサ36が待機位置に無い場合でも継続して行い、主洗浄槽54内の洗浄液を置換することが、汚染を防止するために好ましい。この場合、例えば、流量を洗浄の場合と同一で行っても減少させて行ってもよい。
【0048】
図14及び図15に示すのは、自動洗浄槽の他の例であり、ここでは主洗浄槽54のみを図示している。図14の例においては、主洗浄槽54の底部に超音波振動子62を取付けており、ドレッサ36を洗浄液中に浸漬させた状態で主洗浄槽54に振動を付与することにより、洗浄効果を高めることができる。超音波振動の条件は、例えば、振動子(洗浄槽底面)とドレッシング面36aとの距離を10〜50mmとし、振動子の発振周波数を28kHz程度、出力を300〜600Wとし、60〜120secほど行えばよい。超音波振動は洗浄液を供給しながら行っても、供給を止めた状態で行ってもよいが、振動停止後は洗浄液を供給して主洗浄槽54内を置換する。
【0049】
図15の例においては、主洗浄槽54の内側底部にブラシ64を取付けている。これにより、ドレッサ36を所定高さに下降させてから低速度で回転させ、洗浄液を供給しつつドレッシング面36aをブラシ64に擦り付けて洗浄するもので、これによって洗浄効果を向上させることができる。もちろん、図14の超音波振動と併用してもよい。
【0050】
主洗浄槽54或いはその周辺の所定箇所にキャビジェットノズルを設けてもよい。これは、例えば、二重ノズルから高圧水と低圧水を供給し、その速度差によってキャビテーションを発生させて洗浄効果を高めるもので、ドレッサ36が浸漬した状態ではなく、ドレッシング面36aが自動洗浄槽の上方の所定距離にある状態で行う。好ましくは、キャビジェットノズル先端とドレッシング面36aとの距離を5〜15mmとし、洗浄液の噴出圧力を294〜980N/cm(30〜100kgf/cm)とし、洗浄液流量を0.5〜1.5l/secとして行う。なお、上述した構成の洗浄槽やキャビジェットノズルにより、トップリング28を洗浄してもよい。
【0051】
図16は、ドレッシング装置14の他の例を模式的に示す図であり、これは、研磨テーブル10の研磨面16aに平行な軸の廻りを回転するローラ70を有しており、このローラ70の周囲にドレッシング面72aが形成されてドレッサ72が構成されている。ローラ70及びそれに形成されたドレッシング面72aの軸方向の長さlは、研磨テーブル10が運動するスクロール直径より大きく設定されている。すなわち、この長さlは、研磨面16aの直径dに偏心量“e”の2倍を加えた値より大きな値(l≧d+2e)に設定されている。
【0052】
ローラ70を支持するシャフト74には、これを昇降し且つ研磨面に押圧するための流体圧シリンダ76、ローラ70を回転させるためのモータ78、研磨面に沿って水平移動させるためのアクチュエータ(図示略)等が接続されている。このような構成の全体が、図示しないドレッシングアームに保持されており、研磨テーブル10上と待機位置の間を揺動可能になっている。なお、この例ではローラ70を2つ配置しているが、1つでも、3つ以上でもよい。
【0053】
このような構成のドレッシング装置14によってドレッシングを行う場合には、ドレッシング装置14を待機位置から研磨テーブル10上に移動させる。そして、シリンダ76によりローラ70を下降させ、さらに所定圧力でドレッシング面72aを研磨テーブル10の研磨面に押圧した状態で研磨面に沿ってローラ70をシャフト74に直交する方向に移動しながらドレッシングを行う。この例においても、研磨面に凹凸がある状態でも、その全体にわたってドレッシング面が接触して、研磨面を平坦化しつつドレッシングを効率的に行うことができる。
【0054】
図17乃至図23は、ドレッシング装置14の更に他の例を示すもので、図17に示すように、このドレッシング装置14は、研磨面200aを有する研磨テーブル200と、この研磨面200aのドレッシングを行うドレッサ202と、このドレッサ202を自由端側に保持したドレッサアーム204と、このドレッサアーム204を揺動及び上下動させるドレッサ駆動機構部206と、洗浄液を貯蔵してドレッサ202を洗浄するドレッサ洗浄槽208と、研磨テーブル200の両側に配置されてドレッサ202の脱落を防止する一対のガイドテーブル210とから主に構成されている。
【0055】
図18及び図19は、研磨テーブル200を詳細に示すもので、同図に示すように、中空シャフトをもつモータ750の上部フランジ751、内部が中空になったシャフト752が順にボルトによって締結されている。シャフト752の上部にはベアリング753によりセットリング754が支持されている。このセットリング754の上面にテーブル759が締結され、その上部に研磨テーブル200がボルト790により締結されている。研磨テーブル200は、全体を例えば砥石で構成してもよいし、研磨テーブル200を例えばステンレス等の耐食性に優れた金属で構成し、その上面に研磨布(研磨パッド)を貼り付けて使用してもよい。また、砥石や研磨布を利用する場合、研磨テーブル200の上面は、平坦でも良いし、凹凸をつけても良い。これらは、被研磨物である基板Wの種類により選択される。研磨テーブル200の外径は、基板Wの直径+2“e”以上に設定されていて、研磨テーブル200がスクロール運動(並進円運動)をしても基板Wが研磨テーブル200からはみ出さない大きさになっている。
【0056】
前記セットリング754には、周方向に3つ以上の支持部758が形成され、テーブル759が支持されている。つまり、この支持部758の上面とテーブル759の下面の対応する位置には、周方向に等間隔に複数の凹所760,761が形成され、これらの凹所760,761にはベアリング762,763がそれぞれ装着されている。ベアリング762,763には、図18および図19に示すように、“e”だけずれた2つの軸体764,765を持つ支持部材766が各軸体の端部を挿入して支持され、モータ750を回転することにより研磨テーブル200が半径“e”の円に沿って並進運動(公転運動)可能となっている。
【0057】
また、フランジ751がモータ750とシャフト752との間で同様に“e”だけ偏心している。偏心による負荷のバランスを取るためバランサ767がシャフト752に取付けられている。
【0058】
研磨テーブル200上への研磨液の供給は、モータ750とシャフト752の内部を通り、テーブル759の中央に設けられた貫通孔757に継ぎ手791を介して行われる。供給された研磨液は一旦研磨テーブル200とテーブル759の間で形成される空間756に溜められ、研磨テーブル200に設けられた複数の貫通孔768を経由して、直接基板Wに接触するように供給される。貫通孔768はプロセスの種類により数や位置が適宜選択される。研磨布を研磨テーブル200に貼り付けて使用する場合は、研磨布にも貫通孔768の位置に対応した位置に貫通孔が設けられる。研磨テーブル200の全体を砥石で製作する場合は、研磨テーブルの上面に、格子状、スパイラル状、あるいは放射状等の溝を設け、この溝に貫通孔768を連通させるようにしても良い。
【0059】
また、供給される研磨砥液は純水や薬液やスラリー等のうち最適なものが選定され、必要に応じて一種類以上の研磨砥液が同時に、または交互に、または順番に供給されるように制御される。
研磨中の研磨砥液から並進運動を行う機構を保護するために、テーブル200にフリンガー769が取付けられていて、樋770とラビリンス機構を形成している。
【0060】
上述の構成において、モータ750の作動によって研磨テーブル200が非回転運動である並進円運動(スクロール運動)し、トップリングに取付けられた基板Wは研磨テーブル200の研磨面上に押付けられる。
【0061】
貫通孔757、空間756、貫通孔768を介して研磨面に供給された研磨液により研磨が行われる。研磨テーブル200上の研磨面200aと基板Wの間には、半径“e”の微小な相対並進円運動(スクロール運動)が生じて、研磨面全体において等しい相対速度を生じる。従って、基板Wの被研磨面はその全面において均一な研磨がなされる。なお、被研磨面と研磨面の位置関係が同じであると、研磨面の局部的な差異による影響を受けるので、これを避けるためにトップリングを徐々に自転させて、研磨面の同じ場所のみで研磨されるのを防止している。
【0062】
ここで、ドレッサ202は、長尺状に形成され、その長さlは、研磨面200aの直径dに前記偏心量“e”の2倍(スクロール直径)を加えたテーブルの運動範囲より大きな値に設定され(l>d+2e)、その幅は、ドレッサ条件の許す限り小さく設定されている。即ち、ウエハ径と比べると、l>ウエハ径d+4eとなっている。これによって、例えば円形ドレッサに比べて幅方向で大きくスペースを節約できるようになっている。同様に、ドレッサ洗浄槽208も、ドレッサ202の形状に合った長尺状のものを使用することで、設置スペースを節約できるようになっている。また、研磨テーブルが自転を伴わないスクロール運動を行うので、ドレッサも自転しない構造のものである。テーブルのスクロール運動と、ドレッサの横方向の等速度スライドにより、研磨面上各点でのテーブルとドレッサの相対速度を等しくしている。
【0063】
この例のドレッシング装置14は、ドレッサ202の昇降にシリンダを、押付け量制御にシリンダとストッパを用いたストローク式を、ドレッサ202の水平移動に揺動とリンク機構をそれぞれ使用し、またドレッサ202の下面に軟質の弾性体からなるドレッサ素材(洗浄具)212を貼着して、この下面をドレッシング面212aとしている。
【0064】
すなわち、図20乃至図23に示すように、ベース214に固定された直動ガイド216を案内として上下動する昇降シャフト218と、この昇降シャフト218の周囲を囲繞する中空構造の揺動軸220が備えられ、この揺動軸220にドレッサアーム204が連結されている。一方、ベース214には、昇降シリンダ222が固定され、このシリンダ222のピストンロッドの上端に昇降シャフト218に固着した昇降ベース224が連結されている。また、この昇降シリンダ222のピストンロッドは下方に貫通して延び、このシリンダロッドにストッパ226が、例えばねじ等を介して位置調節自在に取付けられている。
【0065】
これによって、昇降シリンダ222の作動に伴って、昇降シャフト218、揺動軸220及びドレッサアーム204が一体となって昇降し、シリンダロッドに取付けたストッパ226が昇降シリンダ222のシリンダ下端面に当接することで、この上昇が規制されるようになっている。ドレッサの上昇位置を固定することによって、常に一定の圧力でドレッシングをすることができる。
【0066】
ここで、ストッパ226の位置は、このストッパ226で上昇を規制された状態でドレッサ202が横方向に移動することで、このドレッサ素材212で研磨面200aを押圧しドレッシング面212aでドレッシングする位置に設定されており、ガイドテーブル210は、その上面がこの研磨面200aがなす平面と同一平面となるように配置されている。
【0067】
昇降シャフト218の上端には駆動プーリ228が固着され、この駆動プーリ228とドレッサアーム204の自由端側に回転自在に配置したドレッサ支持シャフト230の上端に固着した従動プーリ232との間にベルト234が掛け渡されている。昇降シャフト218と揺動軸220との間には軸受231が介装されている。また、ドレッサ支持シャフト230は、下方に延出し、この下端にドレッサ202が連結されている。一方、昇降ベース224には、揺動シリンダ236が固着され、この揺動シリンダ236のピストンロッドは、揺動軸220にこの軸方向に対して直角方向に張り出して設けたリンクアーム238の先端にボールジョイント240を介して連結されている。
【0068】
これによって、昇降シリンダ222の作動に伴い昇降ベース224を介して揺動シリンダ236も一体に昇降し、この揺動シリンダ236の作動に伴って揺動軸220が回転してドレッサアーム204が揺動し、プーリ228,232とベルト234からなる、いわゆる平行運動機構を介して、このドレッサアーム204の揺動に伴ってドレッサ202が一定速度で一方向に平行移動するようになっている。
【0069】
この例において、ドレッサ洗浄槽208は、ドレッサ素材212の乾燥防止機能を果たすためのもので、図22に示すように、ドレッサ洗浄槽208には給液を行うチューブ242が取付けられており、常時給水を行って清浄度が保たれている。待機状態のドレッサ202は下降しており、液体を満たしたドレッサ洗浄槽208にドレッサ素材212を浸すことで、ドレッサ素材212の乾燥を防いでいる。
【0070】
次に、ドレッサ202がドレッサ洗浄槽208を出て研磨テーブル200の研磨面200aをドレッシングし、再びドレッサ洗浄槽208に戻るまでの1連の動作を説明する。
【0071】
ドレッサ洗浄槽208内ではドレッサ202は下降位置にあり、昇降シリンダ222により、ドレッサ洗浄槽208からドレッサ202を上昇させる。上昇位置はストッパ226で決定される。
【0072】
この状態で、揺動シリンダ236を作動させ揺動軸220を回転させてドレッサアーム204を研磨テーブル200の研磨面200a側へ揺動させる。すると、駆動プーリ228、従動プーリ232及びベルト234が平行運動を行うリンク機構を形成しているので、揺動軸220の回転に伴ってドレッサアーム204が揺動しても、ドレッサ202は向きを変えることがない平行運動を行う。
【0073】
これにより、ドレッサ202は研磨テーブル200の研磨面200aに乗り上げるようにして該研磨面200aに乗り移り、研磨面200aにドレッサ素材212を押付けながらドレッシング面212aでドレッシングする。ドレッサ202の中心は研磨面200aの中心を通り、且つドレッサ202の長さlは、テーブルの運転範囲、すなわちスクロール運動する研磨面200aの軌跡が描く円の直径よりも大きいのでその軌跡に全研磨面を捉えてドレッシングを行う。
【0074】
そして、ドレッサ202は、スクロール運動をしている研磨面200a上をドレッシングしながら、ストロークエンドである研磨面200aの端に達した時に停止し、伸縮の方向を切り替えて反対方向へ移動しながら再びドレッシングを行う。揺動シリンダ236には、図21に示すように、伸縮のストロークエンドを検出するシリンダセンサ244が取付けられており、動作切り替えのタイミング検知と動作監視をしている。
【0075】
ここで、ガイドテーブル210は、研磨テーブル200の周囲を囲繞する如く研磨テーブル200の公転運動の外周に沿い、ドレッサ202の揺動範囲に沿うような形状に構成されている。即ち、ガイドテーブル210はその内側が研磨テーブル200のスクロール中心から半径(d+2e)/2以上の円又は円弧状に形成されている。
また、ガイドテーブル210をその上面が研磨面200aがなす平面と同一平面となるように配置することで、ドレッサ202が研磨テーブル200から外れた時に、ドレッサ素材212の下端がその弾性分だけ下方に脱落することを防止することができる。これによって、ドレッサ202が研磨テーブル200に乗り上げようとした際に、この段差を研磨テーブル200とドレッサ素材212が吸収できない場合に、例えば研磨布が貼着された研磨テーブル200にあっては、この研磨布を剥がしてしまったり、最悪の場合はドレッサ202が研磨テーブル200の側面が衝突して装置が破損することが防止される。
【0076】
以上、設定された回数のドレッシングを行い、ドレッサ洗浄槽208に戻ってドレッシング動作を終了する。
この例にあっては、ドレッサ素材212の研磨面200aへの押圧の制御に押付け量制御式を用いており、ドレッサ202の高さを一定にするため、昇降シリンダ222にストッパ226を取付けている。
【0077】
ここで、研磨テーブル200の厚みはドレッシングの度に少しずつ摩耗していく。この変化に追従させるため、図23に示すように、ステッピングモータ246と、該ステッピングモータ246にカップリング247を介して連結されて、ステッピングモータ246の駆動に伴って回転するねじ248と、昇降ベース224に固着した前記ねじ248に螺合するナット250とを組合わせた昇降機構252と、研磨面200aの上方に配置した非接触の距離測定センサ254を備えている。これにより、距離測定センサ254で研磨面200aとドレッサ202の高さを測定し、その差から現在の押付け量を検知して、設定された押付け量になるように、それらの差をステッピングモータ246のパルス数に変換して、必要なパルス数だけ駆動してドレッサ202の位置を補正するようにしている。ドレッシングの度にこの動作を行えば、常に同じ押付け量を保つことができ、ドレッシング処理の信頼性を上げることができる。
【0078】
図24は、ドレッシング装置14の更に他の例を示すもので、これは、ドレッサ素材212の研磨面200aへの押圧の制御に押付け力制御式を用いたものである。すなわち、ドレッサ202の昇降機構に昇降シリンダ222を用いて、この昇降シリンダ222の推力Fと機構の重量Wtの差(Wt−F)が、ドレッサ202の研磨面200aに対する目標の押付け力になるように、例えば電空レギュレータなどで駆動供給圧を制御するようにしたものである。
【0079】
図25乃至図27は、ドレッシング装置14の更に他の例を示すもので、これは、前述の例と同様にドレッサ202の押圧の制御に押付け力制御式を採用するとともに、上面に研磨布258を貼着しこの上面を研磨面200aとした研磨テーブル200の側方に、これと同じ種類の研磨布262を上面に貼着したガイドテーブル264を研磨テーブル200の周囲を囲繞する如く配置したものである。テーブルに固定砥粒(砥石)を装置した場合は、ガイドテーブル264にも同じ種類の固定砥粒(砥石)を設ける。
【0080】
これにより、ドレッサ202が研磨テーブル200から外れた時に、推力機構の余ったストローク分だけドレッサ202が研磨テーブル200から脱落するのを防止するとともに、移動しながらドレッシングされている研磨テーブル200の研磨面200aのドレッサ素材212と接触している面積が変化し、研磨面200aにかかるドレッシング圧力が変わって均一なドレッシングが行えなくなることを防止することができる。
【0081】
つまり、ドレッサ202が研磨テーブル200から脱落した後、再び研磨テーブル200にドレッサ202が乗り上げようとする際、この段差を研磨布258とドレッサ素材212が吸収できない場合には、研磨布258を剥がしてしまうか、最悪の場合はドレッサ202が研磨テーブル200の側面に衝突して装置が破損してしまう。
【0082】
また、押圧の制御を押付け力で行うと、移動しながらドレッシングされている研磨面200aのドレッサ素材212と接触している面積が変化し、ドレッシング圧力を変えてしまうので、均一なドレッシングを行えない。特に、研磨面200aの中心部と両端部では、ドレッサ素材212と接触する面積が大きく異なって、この弊害が顕著になる。
【0083】
そこで、この例のドレッシング装置14は、上面に研磨布258を貼着した研磨テーブル200の側方に、これと同じ種類の研磨布262を上面に貼着したガイドテーブル264を研磨テーブル200の周囲を囲繞する如く配置して、且つ研磨布258,262が同じ高さになるようにして、これらの問題を解決したものである。
【0084】
これにより、ドレッサ202は、その高さの変化を行わずに、研磨布258の上面の研磨面200a全体をドレッシングすることが可能になる。また、ドレッサ素材212との接触面積変化も、このガイドテーブル264の上面に貼着した研磨布262で補正することができる。
【0085】
また、研磨布258,262の摩耗速度が同じになるように、各研磨布258,262に供給する液体を種類、流量ともに同じにできるようなリンスノズル266を具備している。ガイドテーブル264は2ヶ所に分かれているので、リンスノズル266も最低2個必要になる。例えば、これらの供給バルブと流量計をまとめて1つとし、そこから複数のリンスノズル266に分岐させるなどとしても良い。
【0086】
図27はガイドテーブル264の高さ調整機構を示す図である。これは、上下に互いに逆ねじとなるねじ部を設けたボルト270と、ガイドテーブル264及び床面272にそれぞれ固定した前記ボルト270の各ねじ部に螺合するナット274,276とを備え、ボルト270を一方に回転することで、ガイドテーブル264が上昇し、他方に回転することで下降するようにしたものである。
【0087】
摩耗速度、その他の条件を揃えるために研磨布258,262の交換は、左右ガイドテーブル264と研磨テーブル200で同時に行う。つまり、新品の研磨布は全て同じ厚さなので、高さ調整機構を用いて各ガイドテーブル264と研磨テーブル200の距離を同じにしてから、各ガイドテーブル264と研磨テーブル200に同じ種類の研磨布258,262を貼ることで、研磨布258,262の高さを揃えることができる。
【0088】
図28はガイドテーブル264の自動高さ調整機構を示す図である。これは、左右のガイドテーブル264を別々のベース278に取付け、この各ベース278をステッピングモータ280、該ステッピングモータ280の駆動で回転する送りねじ282及び前記ベース278に固着した該送りねじ282に螺合するナット284で昇降させるようにしたものである。
【0089】
ここで、ガイドテーブル264と研磨テーブル200の高さを、左右のガイドテーブル264と研磨テーブル200の上方に配置した接触または非接触の距離測定センサ286を用いて測定して、高さのずれを測定する。そして、この測定されたずれを、ステッピングモータ280のパルス数に換算し必要なパルス数だけステッピングモータ280を駆動して、左右のガイドテーブル264と研磨テーブル200間のずれが0になるよう調整する。
【0090】
なお、図29に示すように、ドレッサアーム204に1個の距離測定センサ286を取付け、ドレッサアーム204が水平移動する際に左右のガイドテーブル264と研磨テーブル200の高さとしてセンサ286から研磨面までの距離を測定して、その測定結果に基づいてガイドテーブル264の移動量を決めるようにしても良い。
【0091】
図30及び図31は、ドレッシング装置14の更に他の例を示すもので、これは、ドレッサ202の脱落を防ぎ、且つ研磨テーブル200の研磨面200a内を効率良くドレッシングするために、研磨面外領域294の動作を極力少なくするようにしたものである。すなわち、この例では、揺動軸220にセンサドグ296を設け、ドレッサ202が研磨面外領域294に到達した時に該センサドグ296が位置する位置にセンサ298a,298bを設けたものである。
【0092】
これにより、ドレッサ202が研磨面外領域294に到達したことをセンサ298a,298bで検知して、例えばシリンダの動作を切り替えることで、ドレッシング範囲を最小にできる。ここで、ドレッサアーム204の駆動に、例えばステッピングモータを用いるならば、そのパルス数で最小ドレッシング範囲を制御するなどしてもよい。
【0093】
図32乃至図34は、ドレッサ202の他の例を示すもので、これは、中央に位置する長尺状の基本ドレッサ300の両側に同じく長尺状の側部ドレッサ302を取付けてドレッサ202を構成したものである。つまり、ドレッサ支持シャフト230の下端に連結された台座304の下面に、複数種類のドレッシング素材を取付けたものである。例えば硬質のドレッサ素材306を取付けた基本ドレッサ300を取付け、この基本ドレッサ300の左右両側面に、例えば軟質のドレッサ素材等の要求されるドレッサ素材308を取付けた別の側部ドレッサ302を追加して、各々のドレッサ素材306,308の持つ特徴を生かして効果的なドレッシングを行うようにしたものである。
【0094】
つまり、硬質のドレッサ素材306を使用する研磨布には、硬質のドレッサ素材306を取付けた基本ドレッサ300だけでもよいが、左右に軟質のドレッサ素材308を取付けた側部ドレッサ302を追加すると、ドレッシングされる前の異物とドレッシング後の異物の除去が同時にできる。このダイヤモンド等の硬質のドレッサ素材306を用いる研磨布に、ナイロンブラシ等の軟質のドレッサ素材308でドレッシングしても、表面の清浄度を良くするほかに影響を与えることがないため、このような使用方法が可能である。
【0095】
なお、この例では、側部ドレッサ302の側面にピン(図示せず)を、基本ドレッサ300の該ピンに対応する位置に凹部(図示せず)をそれぞれ設け、この凹部内にピンを嵌合させて位置決めを行いつつ、ボルト310により連結することで、メンテナンス性を向上させている。
【0096】
図35は、ドレッサ202の更に他の例を示すもので、これは、研磨面に接触してドレッシングするドレッシング素材と、研磨面をドレッシング兼洗浄するドレッシング兼洗浄機構とを、1つのドレッサとして組み合わせたものである。つまり、基本ドレッサ300の一方の側面に側部ドレッサ302を、他方の側面に基本ドレッサ300と同じ長さを持つ所定のピッチで複数のノズル312を備えた非接触洗浄機構である超音波洗浄器314を取付けたものである。超音波洗浄器314はその発振する超音波を研磨面にこびり付いた異物に伝えて振動させることで、その異物の除去を行うものである。このように、超音波洗浄器314を具備することにより、研磨面をドレッシングをしながら超音波洗浄を行うことができ、研磨面の清浄度を高める効果がある。
【0097】
また、これら硬質のドレッサ素材306、軟質のドレッサ素材308及び超音波洗浄器314を自由に組み合わせることで、最適なドレッシング条件を作りだすことが可能である。
【0098】
なお、ドレッシング兼洗浄機構の他の態様として、前記の例におけるノズル付き超音波洗浄器314の代わりに、図36に示すように、振動子316と研磨面200aとの間に液体318を満たし、振動子316の振動を液体318を介して研磨面200aに伝え該研磨面200aの異物を振動させて除去する振動子洗浄器320を備えてもよい。図37に示すように、低圧水322の中に高圧水324を吐出させることでキャビテーション326を発生させ、その破壊によるショックウエーブ328で研磨面200aの洗浄を行うようにした洗浄器330を備えるようにしても良い。これら接触式ドレッシング素材、ドレッシング兼洗浄機構を合わせてドレッシング部材とする。
【0099】
図38は、洗浄用品回転タイプの他のドレッサ洗浄槽208を示すもので、これは、例えばナイロンブラシ等の洗浄用品332をモータ等で回転させ、その洗浄用品332を、例えば図32乃至図34に示すドレッサ202にあっては、このドレッサ素材306,308の下面全体に擦り付けて、該ドレッサ素材306,308を洗浄するようにしたものである。なお、ブラシの回転機構には防水構造を持たせるなどしても良い。このドレッサ洗浄槽208は、上下に互いに逆ねじとなるねじ部を設けたボルト334と、ドレッサ洗浄槽208及び床面272にそれぞれ固定した前記ボルト334の各ねじ部に螺合するナット336,338とからなる高さ調整機構340により、ドレッサ洗浄槽208、ひいては洗浄用品332の高さが調整可能で、ドレッサ素材に対する押付け量をドレッサ洗浄槽側で調整できるようになっている。
【0100】
また、このドレッサ洗浄槽208には、ドレッサ洗浄槽208の洗浄用品332に向けてリンスを供給してこの洗浄効果を高めるとともに、ドレッサ洗浄槽208内に液体を満たすための単数または複数のリンスノズル342が備えられている。更に、ドレッサ洗浄槽208内に液体を満たす時に閉める排水バルブ344を有する下側排水口346と、バルブを有さないか、或いは有していても常時開の状態にしてドレッサ洗浄槽208内に満たした液体をオーバーフローさせる上側排水口348の2つの排水口が備えられている。
【0101】
これによって、ドレッサ素材306,308を洗浄する時は、排水口346,348からドレッサ洗浄槽208内の液体を排水することで、ドレッサ素材306,308に対する異物の再付着を防止し、接触洗浄を行わない時は、排水バルブ344を閉めてドレッサ洗浄槽208内の液体にドレッサ素材306,308を浸けてこの乾燥を防止できるようになっている。
【0102】
図39は、ドレッサ洗浄槽208の他の例を示すもので、これは、図38に示す例における回転タイプの洗浄用品332の代わりに、例えばナイロンブラシ等を植毛した平板状の洗浄用品350をドレッサ洗浄槽208内に配置し、例えば図32乃至図34に示すドレッサ202にあっては、これを横移動させて、ドレッサ素材306,308の下面全体を洗浄用品350に擦り付けることで、該ドレッサ素材306,308を洗浄するようにしたものである。
これらの2種類のドレッサ洗浄槽は、ドレッサ素材が完全に浸かる高さまで液体を満たすことができる。
【0103】
また、図36に示す振動子316を有する振動子洗浄器320を備えたドレッサ202にあっては、図40に示すように、その振動子316を発振させることで、同じ液体352に浸かっているドレッサ202のドレッサ素材306,308の洗浄を行うことができる。この場合は、ドレッサ自身の超音波振動子の振動を用いてドレッサを洗浄する。しかし、図14に示すように、ドレッサ洗浄槽に超音波振動子を設けて、その力でドレッサを洗浄してもよい。
【0104】
図41及び図42は、図17乃至図23に示すドレッシング装置14を備えたポリッシング装置の平面図である。
このポリッシング装置は多数の半導体ウエハをストックするウエハカセット401を載置するロードアンロードステージ402を4つ備えている。ロードアンロードステージ402は昇降可能な機構を有していても良い。ロードアンロードステージ402上の各ウエハカセット401に到達可能となるように、走行機構403の上に2つのハンドを有した搬送ロボット404が配置されている。
【0105】
搬送ロボット404の走行機構403を対称軸に、ウエハカセット401とは反対側に2台の洗浄機405,406が配置されている。各洗浄機405,406は搬送ロボット404のハンドが到達可能な位置に配置されている。また2台の洗浄機405,406の間で、搬送ロボット404が到達可能な位置に、4つの半導体ウエハの載置台407,408,409,410を備えたウエハステーション450が配置されている。前記洗浄機405,406は、ウエハを高速回転させて乾燥させるスピンドライ機能を有しており、これによりウエハの2段洗浄及び3段洗浄にモジュール交換することなく対応することができる。
【0106】
前記洗浄機405,406と載置台407,408,409,410が配置されている領域Bと前記ウエハカセット401と搬送ロボット404が配置されている領域Aのクリーン度を分けるために隔壁414が配置され、互いの領域の間で半導体ウエハを搬送するための隔壁の開口部にシャッター411が設けられている。洗浄機405と3つの載置台407,409,410に到達可能な位置に2つのハンドを有した搬送ロボット420が配置されており、洗浄機406と3つの載置台408,409,410に到達可能な位置に2つのハンドを有した搬送ロボット421が配置されている。
【0107】
前記載置台407は、搬送ロボット404と搬送ロボット420との間で半導体ウエハを互いに受渡すために使用され、載置台408は、搬送ロボット404と搬送ロボット421との間で半導体ウエハを受渡すために使用される。載置台409は、搬送ロボット421から搬送ロボット420へ半導体ウエハを搬送するために使用され、載置台410は、搬送ロボット420から搬送ロボット421へ半導体ウエハを搬送するために使用される。
【0108】
前記洗浄機405と隣接するように搬送ロボット420のハンドが到達可能な位置に洗浄機422が配置されている。また、洗浄機406と隣接するように搬送ロボット421のハンドが到達可能な位置に洗浄機423が配置されている。
【0109】
前記洗浄機405,406,422,423とウエハステーション450の載置台407,408,409,410と搬送ロボット420,421は全て領域Bの中に配置されていて、領域A内の気圧よりも低い気圧に調整されている。前記洗浄機422,423は、両面洗浄可能な洗浄機である。
【0110】
このポリッシング装置は、各機器を囲むようにハウジング446を有しており、前記ハウジング446内は隔壁414、隔壁415、隔壁416、隔壁424、および隔壁447により複数の部屋(領域A、領域Bを含む)に区画されている。
【0111】
隔壁424によって領域Bと区分されたポリッシング室が形成され、ポリッシング室は更に隔壁447によって2つの領域CとDに区分されている。そして、2つの領域C,Dには、回転運動を行う研磨テーブル434と、図18及び図19に詳細に示すスクロール運動を行う研磨テーブル200のそれぞれ2つの研磨テーブルと、1枚の半導体ウエハを保持し且つ半導体ウエハを前記研磨テーブル434,200に対して押し付けながら研磨するための1つのトップリング432、研磨テーブル434に研磨砥液を供給するための砥液ノズル440と、研磨テーブル434のドレッシングを行うためのドレッサ438、更には、図19乃至図23に詳細に示す研磨テーブル200のドレッシングを行うドレッシング装置14が配置されている。
【0112】
図42はトップリング432と研磨テーブル434,200との関係を示す図である。図42に示すように、トップリング432は回転可能なトップリング駆動軸491によってトップリングヘッド431から吊下されている。トップリングヘッド431は位置決め可能な揺動軸492によって支持されており、トップリング432は研磨テーブル434,200にアクセス可能になっている。また、ドレッサ438は回転可能なドレッサ駆動軸493によってドレッサヘッド494から吊下されている。ドレッサヘッド494は位置決め可能な揺動軸495によって支持されており、ドレッサ438は待機位置と研磨テーブル434上のドレッサ位置との間を移動可能になっている。即ち、研磨テーブル434、ドレッサ438は、共に自転するタイプのものである。
【0113】
ドレッシング装置14には、スクロール運動する研磨テーブル200の表面に沿って平行移動することで該研磨テーブル200の研磨面をドレッシングする長尺状に延びるドレッサ202と、このドレッサ202を洗浄するドレッサ洗浄槽208が備えられている。
【0114】
図41に示すように、隔壁424によって領域Bとは区切られた領域Cの中にあって、搬送ロボット420のハンドが到達可能な位置に半導体ウエハを反転させる反転機428が、搬送ロボット421のハンドが到達可能な位置に半導体ウエハを反転させる反転機428’がそれぞれ配置されている。
【0115】
前記反転機428及び428’とトップリング432の下方に、洗浄室(領域B)とポリッシング室(領域C,D)の間でウエハを搬送するロータリトランスポータ427が配置されている。ロータリトランスポータ427には、ウエハを載せるステージが4ヶ所等配に設けてあり、同時に複数のウエハが搭載可能になっている。反転機428及び428’に搬送されたウエハは、ロータリトランスポータ427のステージの中心と、反転機428または428’でチャックされたウエハの中心の位相が合った時に、ロータリトランスポータ427の下方に設置されたリフタ429または429’が昇降することで、ロータリトランスポータ427上に搬送される。ロータリトランスポータ427のステージ上に載せられたウエハは、ロータリトランスポータ427の位置を90°変えることで、一方のトップリング432の下方へ搬送される。トップリング432は予めロータリトランスポータ427の位置に揺動している。トップリング432の中心が前記ロータリトランスポータ427に搭載されたウエハの中心と位相が合ったとき、それらの下方に配置されたプッシャ430または430’が昇降することで、ウエハはロータリトランスポータ427から一方のトップリング432へ移送される。
【0116】
前記トップリング432に移送されたウエハは、トップリングの真空吸着機構により吸着され、ウエハは研磨テーブル434まで吸着されたまま搬送される。そして、ウエハは研磨テーブル434上に取り付けられた研磨布又は砥石等からなる研磨面で研磨される。トップリング432がそれぞれに到達可能な位置に、前述したスクロール運動を行う第2の研磨テーブル200が配置されている。これにより、ウエハは第1の研磨テーブル434で研磨が終了した後、第2の研磨テーブル200で研磨できるようになっている。しかしながら、半導体ウエハに付けられた膜種によっては、第2の研磨テーブル200で研磨された後、第1の研磨テーブル434で処理されることもある。この場合、第2の研磨テーブル200の研磨面が小径であることから、研磨布に比べて値段の高い砥石を張り付け、粗削りをした後に、大径の第1の研磨テーブルに寿命が砥石に比べて短い研磨布を貼り付けて仕上げ研磨をすることで、ランニングコストを低減することが可能である。このように、第1の研磨テーブルを研磨布、第2の研磨テーブルを砥石とすることにより、安価な研磨テーブルを供給できる。というのは、砥石の価格は研磨布より高く、径にほぼ比例して高くなる。また、砥石より研磨布の方が寿命が短いので、仕上げ研磨のように軽荷重で行った方が寿命が延びる。また、径が大きいと接触頻度が分散でき、寿命が延びる。よって、メンテナンス周期が延び、生産性が向上する。
【0117】
この場合、第1の研磨テーブル434でウエハを研磨した後に、第2の研磨テーブル200にトップリング432が移動する前に、トップリング432が研磨テーブル434から離間した位置で、研磨テーブル434に隣接して設置された洗浄液ノズル440によりトップリング432に保持されたウエハに向けて洗浄液が噴射される。これにより、第2の研磨テーブル200へ移動する前にウエハが一旦リンスされるので、複数の研磨テーブル相互間の汚染が防止できる。
【0118】
次に、図41に示すポリッシング装置で基板のポリッシングを行う場合の基板の流れの一例として、2カセットパラレル処理について説明する。
すなわち、一方の基板は、ウエハカセット401→搬送ロボット404→ウエハステーションの置き台407→搬送ロボット420→反転機428→ロータリトランスポータ427のロード用の置き台→トップリング432→研磨テーブル434→トップリング432→ロータリトランスポータ427のアンロード用の置き台→反転機428→搬送ロボット420→洗浄機422→搬送ロボット420→洗浄機405→搬送ロボット404→ウエハカセット401に至る経路を経る。
【0119】
また、他方のウエハは、ウエハカセット401→搬送ロボット404→ウエハステーションの置き台408→搬送ロボット421→反転機428’→ロータリトランスポータ427のロード用の置き台→トップリング432→研磨テーブル434→トップリング432→ロータリトランスポータ427のアンロード用の置き台→反転機428’→搬送ロボット421→洗浄機423→搬送ロボット421→洗浄機406→搬送ロボット404→ウエハカセット401に至る経路を経る。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施の形態のドレッシング装置を備えたポリッシング装置の全体の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態のポリッシング装置の要部を示す斜視図である。
【図3】図2の研磨テーブルの平面図である。
【図4】図1のポリッシング装置において研磨面をドレッシングしている状態の断面図である。
【図5】図1のポリッシング装置において研磨面をドレッシングしている状態の斜視図である。
【図6】異なる形状のドレッサを示す斜視図である。
【図7】他の例のドレッサを示す斜視図である。
【図8】さらに他の例のドレッサを示す斜視図である。
【図9】(a)は、ポリッシングに使用された砥石を示す断面図で、(b)は、ドレッシング後の砥石の状態を示す断面図である。
【図10】ドレッシング中におけるモータの電流値の変動を示すグラフである。
【図11】摩耗の異なるドレッサを使用してドレッシングした時のモータの電流値の変動を示すグラフである。
【図12】ドレッシング開始直後とドレッシング終了時における周波数スペクトルを示すグラフである。
【図13】ドレッサ洗浄槽の1つの例を示す(a)斜視図、(b)断面図である。
【図14】ドレッサ洗浄槽の他の例を示す断面図である。
【図15】ドレッサ洗浄槽のさらに他の例を示す断面図である。
【図16】ドレッシング装置の他の例を示す斜視図である。
【図17】ドレッシング装置の更に他の例を示す斜視図である。
【図18】図17に使用されている研磨テーブルの縦断面図である。
【図19】(a)は図18のP−P線断面図であり、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図20】図17の平面図である。
【図21】図20の一部を切断して示す正面図である。
【図22】同じく、一部を切断して示す左側面図である。
【図23】同じく、ドレッサが研磨テーブル上に位置する時の状態を示す側面図である。
【図24】ドレッシング装置の更に他の例を示す側面図である。
【図25】ドレッシング装置の更に他の例を示す平面図である。
【図26】同じく、図25のY−Y線断面図である。
【図27】同じく、ガイドテーブルの高さ調整機構を示す図である。
【図28】ガイドテーブルの高さ調整機構の他の例を示す図である。
【図29】ガイドテーブルの高さ調整機構の更に他の例を示す図である。
【図30】ドレッシング装置の更に他の例を示す平面図である。
【図31】同じく、正面図である。
【図32】ドレッサの他の例を示す分解斜視図である。
【図33】同じく、基本ドレッサの両側に側部ドレッサを取付けた状態を示す斜視図である。
【図34】同じく、正面図である。
【図35】ドレッサの他の例を示す正面図である。
【図36】ドレッサの更に他の例を示す正面図である。
【図37】ドレッサに使用されるキャビテーションを利用した洗浄器の説明に付する図である。
【図38】ドレッサ洗浄槽の他の例を示す断面図である。
【図39】ドレッサ洗浄槽の更に他の例を示す断面図である。
【図40】図36に示すドレッサの洗浄例を示す図である。
【図41】図17乃至図23に示すドレッサ装置を備えたポリッシング装置の全体構成を刃示す平面図である。
【図42】図41におけるトップリングと研磨テーブルとの関係を示す図である。
【図43】従来のポリッシング装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
10 研磨テーブル
12 トップリング装置
14 ドレッシング装置
16 砥石
16a 研磨面
18,38 モータ
20 駆動軸
20a 駆動ピン
28 トップリング
36 ドレッサ
36a ドレッシング面
42 ダイヤモンドシート
4a,44b モータ電流検出器
46 信号処理装置
48 制御装置
50 トップリング洗浄槽
52 ドレッサ洗浄槽
54 主洗浄槽
56 受液槽
58 洗浄液供給ノズル
62 超音波振動子
64 ブラシ
70 ローラ
72 ドレッサ
72a ドレッシング面
74 シャフト
200 研磨テーブル
200a 研磨面
202 ドレッサ
204 ドレッサアーム
206 ドレッサ駆動機構部
208 ドレッサ洗浄槽
210 ガイドテーブル
212 ドレッサ素材
212a ドレッシング面
218 昇降シャフト
220 揺動軸
222 昇降シリンダ
226 ストッパ
228 駆動プーリ
230 ドレッサ支持シャフト
232 従動プーリ
234 ベルト
236 揺動シリンダ
238 リンクアーム
240 ボールジョイント
246,280 ステッピングモータ
252 昇降機構
254,286 距離測定センサ
258,262 研磨布
264 ガイドテーブル
266 リンスノズル
294 研磨面外領域
296 センサドグ
298a,298b センサ
300 基本ドレッサ
302 側部ドレッサ
306,308 ドレッサ素材
312 ノズル
314 超音波洗浄器
316 振動子
320 振動子洗浄器
322 低圧水
324 高圧水
326 キャビテーション
328 ショックウエーブ
330 洗浄器
332,350 洗浄用品
340 高さ調整機構
342 リンスノズル
427 ロータリトランスポータ
432 トップリング
434 研磨テーブル
438 ドレッサ
450 ウエハステーション
494 ドレッサヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨材の被研磨面に相対摺動して該被研磨面を平坦且つ鏡面状に研磨する研磨テーブルの研磨面をドレッシングするドレッサを有するドレッシング装置であって、
前記研磨面と前記ドレッサとを互いに摺接させて該研磨面をドレッシングしている時に前記研磨面と前記ドレッサとの間に作用する摩擦負荷を直接または間接に検知するセンサと、
該センサの出力に応じてドレッシング進行状況を判定する判定手段を有することを特徴とするドレッシング装置。
【請求項2】
前記ドレッサを駆動するモータを備え、前記センサは、前記ドレッサを駆動する前記モータを流れる電流を検出するモータ電流検出器であることを特徴とする請求項1記載のドレッシング装置。
【請求項3】
前記研磨テーブルを駆動するモータを備え、前記センサは、前記研磨テーブルを駆動する前記モータを流れる電流を検出するモータ電流検出器であることを特徴とする請求項1記載のドレッシング装置。
【請求項4】
前記センサは、前記研磨面近傍の振動状態の変化を検知する振動検出器であることを特徴とする請求項1記載のドレッシング装置。
【請求項5】
前記判定手段によって、ドレッシングの終点を判断することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のドレッシング装置。
【請求項6】
前記判定手段によって、前記ドレッサの交換時期を判断することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のドレッシング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2006−272549(P2006−272549A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199764(P2006−199764)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【分割の表示】特願2000−107011(P2000−107011)の分割
【原出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】