ナノカーボンの製造方法、ナノカーボン製造用多孔質複合金属酸化物及びナノカーボンの製造装置
【課題】大量・低コスト・高品質のナノカーボンを製造する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】触媒支援化学的気相成長法を用い、400〜1000℃に加熱した触媒活性化ゾーン21aとナノカーボン合成ゾーン21bと冷却ゾーン21cを有する電気炉21内に設置した反応管としてのスクリューコンベア22に、多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを触媒の供給用ホッパー25から連続的に供給し、合成されたナノカーボンを連続的に排出ホッパー26から取り出す。本発明によれば、大量・低コスト・高品質のナノカーボンの製造方法及び製造装置が得られる。さらに、ナノカーボン合成ゾーンにて生成される水素ガスを燃料電池28bによる発電に有効利用することでエネルギーを回収することができるため、より低コストでナノカーボンを製造できるようになる。
【解決手段】触媒支援化学的気相成長法を用い、400〜1000℃に加熱した触媒活性化ゾーン21aとナノカーボン合成ゾーン21bと冷却ゾーン21cを有する電気炉21内に設置した反応管としてのスクリューコンベア22に、多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを触媒の供給用ホッパー25から連続的に供給し、合成されたナノカーボンを連続的に排出ホッパー26から取り出す。本発明によれば、大量・低コスト・高品質のナノカーボンの製造方法及び製造装置が得られる。さらに、ナノカーボン合成ゾーンにて生成される水素ガスを燃料電池28bによる発電に有効利用することでエネルギーを回収することができるため、より低コストでナノカーボンを製造できるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく、大量・低コスト・高品質のナノカーボンを連続的に製造する方法、この連続的ナノカーボンの製造のための多孔質複合金属酸化物、及び、連続的なナノカーボンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボンには、カーボンブラック、ナノカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カップスタックチューブ、カーボンナノホーン等が含まれる。これらのナノカーボンは、化学的安定性、高い電子伝導性、高い電子放出能、高い弾性率等の種々の優れた物性を有している。ナノカーボンは、前述のような物性を利用して、電界放出型電子放出素子、走査型プローブ顕微鏡用のプローブ、触媒、構造強化材料、電池の電極、センサー材料など各種応用の可能性が期待されている。
【0003】
これらのナノカーボンの製造方法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学的気相成長法などが知られている。カーボンナノチューブの量産方法の一つとしては、流動触媒法が知られている。流動触媒法は、触媒微粒子を分散させたベンゼンやトルエンなど原料炭化水素を水素と共に約1000℃に加熱した反応器に送り、反応させてMWCNTを得る方法である。一方、カーボンブラックは、充填材、顔料等に用いられており、原料炭化水素を300〜1800℃の高温で数msの瞬時に炭素化して、直径7〜500nmの黒色の微粒子とすることにより製造される。その製造方法としては、ファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、サーマル法、ランプ法等が用いられている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、「カーボンナノチューブの製造方法および製造装置」の発明に関し、操作が簡便な化学蒸着法(CVD法)を用い、固体触媒と炭素含有化合物を500〜1200℃で効率良く接触させるために、加熱炉内に設置した反応管を回転させて固体触媒を撹拌し、固体触媒と炭素含有化合物を均一に接触できる装置や、反応管を傾斜させて回転することにより固体触媒と原料炭素含有化合物を連続的に供給し、生成したカーボンナノチューブを連続して抜き出す装置を用いることで、さらに効率よくカーボンナノチューブが製造できるようにした例が示されている。
【0005】
下記特許文献1に示されているカーボンナノチューブを製造する装置80は、例えば、図12に示したように、水平あるいは水平に対してわずかに傾斜した軸の周りに回転する筒状の反応管81を加熱炉82で所定の温度に維持し、反応管81の前又は後に、スクリューポンプ83で固体触媒を導入する供給口84と、炭素含有化合物を導入する供給口85と、カーボンナノチューブが付着した固体触媒を抜き出す製品取り出し口86と、排気口87とを備えている。このカーボンナノチューブを製造する装置80によれば、反応管81内に連続的に固体触媒と炭素含有化合物を供給することが可能になり、反応管81を回転させることで固体触媒が撹拌されて効率よく生産でき、しかもカーボンナノチューブが連続的に大量生産できる装置となる。
【0006】
そして、下記特許文献1には、固体触媒は固体担体表面に触媒金属を担持したものであればどのようなものでも良いとされ、固体担体としては、有機物でも無機物でも良いが、耐熱性の観点から無機物が好ましいこと、無機の固体担体としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合物、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどを用いることができること、中でも触媒金属が均一に担持できる無機多孔体が好ましいこと、無機多孔体の中でも細孔径や骨格組成が均一であるという点でゼオライトが好ましいこと等が示されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、「カーボンナノチューブの連続製方法および製造装置」の発明に関し、操作が簡便な化学蒸着法(CVD法)を用い、炭素含有化合物と搬送装置に保持した固体触媒を加熱炉内に連続的に供給し、加熱炉内の500〜940℃に加熱された温度帯域にて搬送装置に保持した固体触媒と炭素含有化合物を接触させてカーボンナノチューブを生成し、加熱炉内を通過して出てきた搬送装置に保持されたカーボンナノチューブを連続的に回収するようにしたものが示されている。
【0008】
下記特許文献2に示されているカーボンナノチューブを製造する装置90は、例えば図13に示したように、搬送装置91として無端ベルト型ベルトコンベヤーを設け、固体触媒加熱炉92の前または後に炭素含有化合物を導入する供給口93と排気口94を設け、雰囲気ガスの流入を防止する機能として不活性ガスカーテン95を設けることで加熱炉92内への雰囲気ガス流入を防止できるようにし、また、加熱炉92の前に固体触媒を導入する供給口96を設け、予め容器97に固体触媒を保持して、加熱炉92に搬送している。これにより、搬送装置91に保持した固体触媒に炭素含有化合物を供給することが可能となっている。そして、搬送装置91は、例えば、昇温域92a、反応域92b、冷却域92cの3つのそれぞれ独立に制御できる速度域を設け、加熱炉92の温度帯域も、昇温域92a、反応域92b、冷却域92cでそれぞれ独立に制御できるようにしている。
【0009】
下記特許文献2に示されている発明で用いられている固体触媒は、固体担体表面に触媒金属を担持したものであれば特に制限はなく、固体担体としては有機物でも無機物でも良いが、耐熱性の観点から無機物が好ましいこと、無機の固体担体としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合物、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどを用いることができること、中でも触媒金属が均一に担持できる無機多孔体が好ましいこと、無機多孔体の中でも細孔径や骨格組成が均一であるという点でゼオライトが好ましいことが示されている。
【0010】
なお、ゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有した結晶性無機酸化物であり、分子サイズとは、一般的には、0.2から2nm程度の範囲を意味し、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。
【0011】
また、下記特許文献3には、「多層カーボンナノチューブの大量生産方法」の発明に関し、担持された金属触媒の、予め還元されておらず、かつ担持されていない前駆体を、前記触媒のその場での生産と前記ナノチューブの生産とを可能にする条件下でその場で還元し、さらに、得られたナノチューブを回収することからなる炭化水素の接触分解からの多層カーボンナノチューブの選択的大量生産方法の発明が開示されている。そして、ここで使用されている担持されていない前駆体としては、CoxMg(1−x)O固溶体が使用され、炭化水素としてはキャリヤーガスで稀釈されたアセチレンガスが使用されている。
【0012】
また、下記特許文献4には、「気相成長法炭素繊維製造用触媒および炭素繊維の製造方法」の発明に関し、気相成長法による炭素繊維製造用触媒として、少なくとも水溶性8族金属化合物と、有機化合物とを含む混合物を焼成してなる、8族金属酸化物を含有する気相成長法炭素繊維製造用触媒であって、8族金属酸化物における非晶質8族金属酸化物が10重量%以上で、且つ全金属酸化物における結晶質金属酸化物が85重量%以下であるものを用いた例が示されている。
【0013】
この場合、8族金属化合物と、8族以外の金属化合物とのモル比は、金属換算の合計量に対して、8族金属が10モル%以上あればよく、中でも15モル%以上、特に20モル%以上であることが好ましく、その上限は50モル%以下、中でも40モル%以下であることが好ましいとされている。なお、下記特許文献4に開示されている発明における「炭素繊維」とは、カーボンナノファイバー(カーボンナノチューブ)と称される、直径が1μm以下の炭素繊維を意味している。
【0014】
一方、水素ガスは基礎化学品の製造に用いられる基本的な原料であるとともに一次エネルギーの重要な一形態である。現在、工業用水素ガスの大半はナフサや天然ガス等の炭素質原料からの水蒸気改質法もしくは部分酸化法により製造されている。例えば、水蒸気改質法は、ナフサ級軽質油、天然ガス(メタン)、石油精製オフガス(メタン、プロパン、ブタン)等の比較的軽量の炭化水素原料を5〜20気圧、700〜850℃の高温下で触媒上において水蒸気と反応させて、一酸化炭素、二酸化炭素及び水素の混合物である合成ガスを発生させるものである。また、部分酸化法は、炭化水素を酸素もしくは空気及び水蒸気と共に、常圧〜50気圧、1300℃程度で反応させて水素と一酸化炭素等の混合物である合成ガスを発生させるものである。
【0015】
近年、炭化水素原料を高温下で触媒と接触させることによって、ナノカーボンと共に水素ガスを得る方法が開発された。例えば、下記特許文献5には、「水素の製造方法の使用」の発明に関し、ガソリンスタンドにおいて、供給される炭化水素含有供給ガスを改質装置内で触媒と接触させることによって水素ガスとナノカーボンを製造し、得られた水素ガスを貯蔵して消費者に出荷分配する方法が示されている。ここでは、炭化水素原料としてハイタン(例えば、天然ガス又はメタン)を用い、触媒としてVIII族の遷移元素、好ましくはFe、Ni、Co、Moから選択される少なくとも1種と、アルカリ土類金属酸化物、ケイ素、酸化ケイ素から選択される少なくとも1種とを含む複合触媒が用いられている。
【0016】
下記特許文献5に示されている発明では、SiO2を含有するCo、Ni及びFeの触媒、又はNi、Fe及びNi/Feを含有する水酸化物若しくは酸化物の粉末は、水、アルコール、アセトン又は任意の他の適切な溶剤に分散した金属水酸化物の「上」にSiO2を沈殿させることにより得られる。SiO2は、塩基(例えば、NH3/H2O)を加えてテトラオキシシラン(TEOS)を分解することにより、水酸化物上に直接に沈積する。さらなる形状では、半化学量論的なSiO2‐Ni(OH)2、SiO2‐Fe(OH)3又はSiO2‐Ni/Fe水酸化物が、塩基を加えたときの直接的な、同時の沈殿により一工程で得られる。その場合でも、注目すべきは、複合触媒の主成分がVIII族の遷移金属であり、それは50mol%を超える割合で、好ましくは80mol%を超える割合で、さらに好ましくは90mol%を超える割合で少なくとも存在する。
【0017】
この触媒は、使用前に還元性雰囲気に曝されて遷移金属成分のみが金属に還元されている。この複合触媒は、最初に予熱区間に導かれ、加熱区間で500〜1000℃の操作温度に加熱されて供給ガスが水素ガスとナノカーボンに分解され、次いで冷却区間で冷却される。得られたガス中には水素ガスだけでなく、未分解の炭化水素ガスが含まれているため、必要に応じてPSAプラント等によって水素ガスが分離され、使用に供されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003−252613号公報
【特許文献2】特開2003−238125号公報
【特許文献3】特開2003−206117号公報
【特許文献4】特開2006−181477号公報
【特許文献5】特表2009−513466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記特許文献1及び2に示されている発明によれば、一応、カーボンナノチューブを連続的に多量に製造することができるが、固体触媒は予め固体担体に触媒金属を担持させたものを用いている。このような触媒金属を予め固体担体に担持させたものでは、固体触媒の製造後の時間経過と共に触媒金属が変質するため、物性が安定したカーボンナノチューブを製造し難く、しかも収量が安定しないという課題がある。加えて、固体触媒は触媒金属の担持量が多くなると触媒活性が向上するが、多量の金属を均等に担持させることは困難であり、しかも、触媒金属同士が重なると触媒活性が低下していくため、触媒金属の担持量は約10質量%程度が普通であり、多くても約20質量%程度しか担持させることができず、収量を上げることが困難である。
【0020】
また、上記特許文献3に示されている発明によれば、触媒として、担持された金属触媒の、予め還元されておらず、かつ担持されていない前駆体とアセチレンガスを用いて、金属触媒の還元と多層カーボンナノチューブの形成とを同時に行っているため、担持されていない前駆体に対して気相中での予備還元又は水素の添加を必要とせず、しかも、低温で、多層カーボンナノチューブを選択的に大量に生産することができるという効果を奏するとされている。
【0021】
しかしながら、上記特許文献3には、炭化水素原料としてアセチレンを用いた例しか示されていないばかりか、触媒として、硝酸マグネシウム六水和物(10mmol)と硝酸コバルト六水和物(6mmol)とクエン酸(10mmol)を用いて窒素流下で700℃で5時間焼成して作製したCo0.4Mg0.6O固溶体を用いた例しか示されておらず、しかも、触媒の作製に際して焼成を空気中で行うと触媒活性が生じないことが示されている。さらに、上記特許文献3には、他の炭化水素原料や他の組成の触媒を用いることができるかどうかについては何も明らかにされておらず、また、多層カーボンナノチューブを大量に生産するための具体的な製造装置の構成は何も示されていない。
【0022】
また、上記特許文献4に示されている発明によれば、触媒として、8族金属酸化物における非晶質8族金属酸化物が10重量%以上で、且つ全金属酸化物における結晶質金属酸化物が85重量%以下であるものを用いた例が示されており、8族金属化合物と、8族以外の金属化合物とのモル比は、金属換算の合計量に対して、8族金属が50モル%以下、中でも40モル%以下であることが好ましいとされている。この触媒は、予め還元雰囲気下で活性化した後、あるいは還元性ガスと共に炭素繊維原料ガスと接触させて使用するものである。しかしながら、上記特許文献4には、炭素繊維を生産するための具体的な製造装置の構成は何も示されていない。
【0023】
上記特許文献5に示されている発明では、触媒は、予熱区間、加熱区間、冷却区間と順次移送され、最初に予熱区間に導かれ、次に加熱区間で500〜1000℃の操作温度に加熱されて供給ガスが水素ガスとナノカーボンに分解されるようになっており、連続的に大量にナノカーボンを製造できると共に、水素ガスを消費者に供給できるようになされている。しかしながら、上記特許文献5に示されている発明で使用されている複合触媒は、使用前に還元性雰囲気に曝されて遷移金属成分のみが金属に還元されているため、上記特許文献1及び2に示されている発明と同様の課題が存在する。また、上記特許文献5に示されている複合触媒の形態はSiO2の場合には高価なTEOSにより生成したSiO2微粒子により触媒粒子を分離しているので製造コストが高くなる。さらに、合成したナノカーボンと複合触媒を分離するためフッ化水素などの危険な薬品を使用しなければならないという課題も存在する。
【0024】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、効率よく、大量・低コスト・高品質のナノカーボンを連続的に製造する方法、この連続的ナノカーボンの製造のための多孔質複合金属酸化物、及び、連続的なナノカーボンの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の上記目的は以下の構成により達成し得る。すなわち、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法は、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを連続的に供給し、触媒活性化ゾーンにおいて、炭化水素ガス又は別途供給される還元性ガスにより多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を得、ナノカーボン合成ゾーンにおいて炭化水素ガスと活性触媒体と接触させてナノカーボンを連続的に合成し、得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体を冷却ゾーンを経て反応管内より取り出すことを特徴とする。
【0026】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法では、活性化された触媒を得る前の材料として多孔質複合金属酸化物を用いている。この多孔質複合金属酸化物は、従来例の触媒のように担体の表面に触媒となる物質が担持されたものではなく、均質な化合物である。しかも、多孔質複合金属酸化物は化学的に安定な化合物であるため、製造後に保存しておいても劣化し難い。
【0027】
そして本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法では、この多孔質複合金属酸化物に対して、触媒活性化ゾーンにおいて、炭化水素ガス又は別途供給される還元性ガスによって多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を得て、ナノカーボン合成ゾーンにおいて炭化水素ガスと活性触媒体と接触させている。このような構成を採用すると、触媒活性化ゾーンにおいて得られた多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体は、触媒活性が良好な状態で直ちにナノカーボン合成ゾーンにおいて炭化水素ガスと接触するため、高効率でナノカーボンと活性触媒体との複合体を合成することができるようになる。なお、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法で得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体からは、従来例の場合と同様にして、容易にナノカーボンを分離することができる。
【0028】
しかも、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法では、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを連続的に供給して、ナノカーボンを生成させているから、ナノカーボン合成ゾーンにおいて非常に高純度の水素ガスを得ることができ、この水素ガスを有効利用することによって、低コスト化を達成することができる。加えて、触媒活性化ゾーンでは、ナノカーボン合成ゾーンよりも低温とすることができるので触媒活性化ゾーンでナノカーボンが副成し難く、しかも、ナノカーボン合成ゾーンで集中的にナノカーボンを生成させることができるので、高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0029】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記多孔質複合金属酸化物として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、から構成された多孔質複合金属酸化物であり、前記第2種の金属の酸化物の含有割合は前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲のものを使用することが好ましい。
【0030】
本発明で使用している多孔質複合金属酸化物中の第1種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによっては還元され難いが、第2種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによって容易に還元されて金属になり易く、しかも還元された第2種の金属はナノカーボン生成用触媒として周知のものである。そのため、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、第1種の金属の酸化物によって多孔性を維持しながら、還元された第2種の金属超微粒子が孤立存在する状態となるので、触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となる。
【0031】
この場合、前記多孔質複合金属酸化物として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の水溶性化合物と、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の水溶性化合物と、酒石酸、システイン、アルギニン、グリシン、アラニン、ロイシンから1つ以上の融点が200℃から300℃の有機化合物と、水と、を混合し、400℃〜700℃で空気中焼成して作製したものを用いることができる。
【0032】
本発明で使用している多孔質複合金属酸化物は、第1種の金属の水溶性化合物と、第2種の金属の水溶性化合物と、融点が200℃から300℃の有機化合物と、水とを混合して400℃〜700℃で空気中焼成して作製したものであるから、有機化合物は第1種の金属の水溶性化合物と第2種の金属の水溶性化合物を含んだ状態で燃焼してガス化して発泡化するため、容易に多孔性の複合金属酸化物を得ることができるようになる。なお、有機化合物の融点が200℃未満では発泡する前に蒸発してしまって良好な多孔性が得られず、また、融点が300℃を越えるものでは焼成後にカーボンが残るので好ましくない。さらに、焼成温度が400℃以下では有機化合物原料のカーボン成分が残り、700℃以上では酸化物の結晶粒の粗大化が発生する。さらに好ましくは500℃〜700℃である。
【0033】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記多孔質複合金属酸化物として、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものを用いることが好ましい。
【0034】
本発明で使用している多孔質複合金属酸化物として、上述の物性を備えているものを使用すると、取り扱いが容易であると共に、容易に高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。なお、10nm以下の粒径の多孔質複合金属酸化物を安定的に製造することは困難であり、また、200nm以上の粒径では大きいサイズのナノカーボンが合成されるために好ましくない。さらに好ましい多孔質複合金属酸化物の粒径は20nm〜80nmである。同様の理由により、BET比表面積は10〜50m2/gが好ましい。
【0035】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記炭化水素ガスがメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、イソプレン、n−ブタンから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0036】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、原料の炭化水素ガスとして幅広い材料を用いることができるため、設計の幅が広くなる。
【0037】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記炭化水素ガスは、前記冷却ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーンへ供給することが好ましい。また、前記炭化水素ガスと一緒に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを追加することが好ましい。
【0038】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、炭化水素ガスを冷却ゾーンからナノカーボン合成ゾーンへ供給するようにすると、冷却ゾーンで活性触媒及び生成したナノカーボンから熱を回収して炭化水素ガスを予熱することができるため熱効率が向上すると共に、ナノカーボン合成ゾーンでは活性触媒体と接触すると急速には反応が進行するので、副反応が生成し難く、高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。また、適正な温度に制御されたナノカーボン合成ゾーンで反応を終了するようにプロセスの管理を行うと冷却ゾーンではナノカーボンが合成されず、触媒活性化ゾーンでは高純度の水素の雰囲気となって多孔質複合金属酸化物から触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となる。さらに、炭化水素ガスと一緒に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを追加することによって、アモルファス状態のカーボンの形成の抑制に働き、かつ触媒活性の長寿命化の効果がある。
【0039】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記触媒活性化ゾーン及びナノカーボン合成ゾーンを500〜1000℃に加熱し、前記反応管内の圧力が0.1〜10kPa範囲となるようにすることが好ましい。
【0040】
触媒活性化ゾーンの温度範囲は多孔質複合金属酸化物の一部が金属化される温度以上ナノカーボン合成ゾーンの温度以下が好ましい。ナノカーボン合成ゾーンの温度は炭化水素が熱分解する温度以上で触媒上で優先的にナノカーボンが合成される最高温度以下である。反応管内の圧力を上述のように限定すると、より副反応が生成し難く、高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0041】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記別途供給される還元性ガスを、水素ガス、アンモニアガスもしくは前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて生成される水素ガスとすることが好ましい。
【0042】
触媒活性化ゾーンに供給される還元性ガスを水素ガス、アンモニアガスもしくは前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて生成される水素ガスとすると、触媒活性化ゾーンでは多孔質複合金属酸化物から触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となるので、より高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0043】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンのガス成分を分析し、前記炭化水素ガスの流量を制御することによって前記触媒活性化ゾーンでの水素ガス濃度を80%以上にすることが好ましい。
【0044】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法において、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンのガス成分を分析することによって、適正な炭化水素ガスの流量を制御することによってナノカーボン合成ゾーンで反応を終了するようにプロセスの管理を行うと冷却ゾーンではナノカーボンが合成されず、触媒活性化ゾーンでは高純度の水素の雰囲気となって多孔質複合金属酸化物から触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となる。触媒活性化ゾーンでは炭化水素濃度が低く水素濃度が高いほど副成するナノカーボン量が減少するので、より高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。なお、ガス成分の分析は炭化水素ガスと水素ガスと水蒸気に対して行うことが好ましい。
【0045】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体の嵩密度を0.05〜0.5g/cm3となるようにすることが好ましい。
【0046】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、多孔質複合金属酸化物の嵩密度や合成時における撹拌条件に依存するが、0.05g/cm3以下では合成中に飛散して収率が悪く、0.5g/cm3以上では合成の均一性に欠ける。得られるナノカーボンと活性触媒体との複合体の嵩密度を上述の数値範囲内とすることにより、より高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0047】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記反応管をスクリューコンベア、ロータリーキルン又は管状体内に配置されたベルトコンベアからなるものとし、前記多孔質複合金属酸化物を前記触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンの順に移動させながら連続的に前記ナノカーボンと活性触媒体との複合体を製造することが好ましい。
【0048】
スクリューコンベア、ロータリーキルン又は管状体内に配置されたベルトコンベアを用いれば、多孔質複合金属酸化物を順次触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンの順に撹拌移動させながら所定の反応ガスと接触させることができるので、連続的に前記ナノカーボンと活性触媒体との複合体を製造することができるようになる。
【0049】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記ナノカーボンは、カーボンブラック、ナノファイバー、多層ナノチューブ、カップスタックチューブとすることができる。
【0050】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記ナノカーボン合成ゾーンにおいてにて生成される水素ガスを燃料電池、タービン、エンジンから選択される少なくとも一つに供給して発電に使用することが好ましい。
【0051】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、ナノカーボン合成ゾーンにおいて非常に高純度の水素ガスを得ることができ、この水素ガスを発電に使用することによって、よりナノカーボンと活性触媒体との複合体の製造に際して低コスト化を達成することができるようになる。
【0052】
さらに、本発明の多孔質複合金属酸化物は、上記いずれかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法に使用するための多孔質複合金属酸化物であって、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、から構成された多孔質複合金属酸化物であり、前記第2種の金属の酸化物の含有割合は、前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲であることを特徴とする。
【0053】
本発明の多孔質複合金属酸化物中の第1種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによっては還元され難いが、第2種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによって容易に還元されて金属になり易く、しかも還元された第2種の金属はナノカーボン生成用触媒として周知のものである。そのため、本発明の多孔質複合金属酸化物によれば、第1種の金属の酸化物によって多孔性を維持しながら、その表面に還元された第2種の金属が存在する状態となるので、触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒を得ることができる。
【0054】
本発明の本発明の多孔質複合金属酸化物においては、前記多孔質複合金属酸化物は、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものであることが好ましい。
【0055】
本発明の多孔質複合金属酸化物として、上述の物性を備えているものを使用すると、取り扱いが容易であると共に、容易に高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができる多孔質複合金属酸化物となる。
【0056】
さらに、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置は、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンのそれぞれについて個別に温度制御し得る炉と、前記炉内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンに亘って設置された反応管と、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンへ連続的に多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段と、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンを経て前記反応管の外部まで前記多孔質複合金属酸化物粒子を移送する手段と、前記反応管内の前記冷却ゾーン側に配置された炭化水素ガス又は炭化水素ガスと還元性ガスとの混合ガスを供給する手段と、前記触媒活性化ゾーンの前記多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段側に配置されたガスの回収手段と、を備えることを特徴とする。
【0057】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、さらに、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンの前記ナノカーボン合成ゾーン側に還元性ガスを供給する手段が形成されていることが好ましい。
【0058】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、前記反応管はスクリューコンベア又はロータリーキルンであることが好ましい。
【0059】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、前記反応管の内部にはベルトコンベアが配置されているものとすることもできる。
【0060】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、前記ガスの回収手段は、燃料電池、発電機が接続されたタービン及び発電機が接続されたエンジンから選択される少なくとも一つに接続されているものとしてもよい。
【0061】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置によれば、容易に上記本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法を実施することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1〜19及び比較例1〜12で使用したナノカーボン製造装置の概略図である。
【図2】図1の反応管内の温度変化を表したグラフである。
【図3】実施例20で使用したスクリューコンベア方式のナノカーボン製造装置の概略図である。
【図4】実施例20で得られた多孔質複合金属酸化物のFE−SEMにより観察された画像である。
【図5】実施例21で使用したロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式のナノカーボン製造装置の概略図である。
【図6】実施例21で得られた多孔質複合金属酸化物のFE−SEMにより観察された画像である。
【図7】実施例21で得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体のFE−SEMにより観察された画像である。
【図8】図7の倍率を変えた画像である。
【図9】実施例21で分離されたカップスタックナノカーボンの透過型電子顕微鏡により観察された画像である。
【図10】実施例22で使用したベルトコンベア方式のナノカーボン製造装置の概略図である。
【図11】実施例23のナノカーボン製造装置のブロック図である。
【図12】従来のカーボンナノチューブを製造する装置の概略図である。
【図13】別の従来のカーボンナノチューブを製造する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、各種実施例及び比較例を用いて本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法、多孔質複合金属酸化物及び触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0064】
[実施例1〜19及び比較例1〜12]
[多孔質複合金属酸化物の製造]
第1種の金属の水溶性化合物として硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、第2種の金属の水溶性化合物として硝酸ニッケル、硝酸第二鉄、硝酸コバルト、モリブデン酸アンモニウムを用い、これらの化合物の混合割合を実施例1〜19及び比較例1〜12に対応して種々変更し、また、有機化合物として25質量%のL−アラニンと19質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合で混合し、マグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、700℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を得た。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体を実施例1〜19及び比較例1〜12に対応するナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物にした。得られた多孔質複合金属酸化物の組成を表1に纏めて示した。
【0065】
[ナノカーボンの製造]
まず、図1に示したナノカーボンの製造装置を用いて、実施例1〜19及び比較例1〜12のそれぞれに対応する多孔質複合金属酸化物のナノカーボンの生成効率を確認した。このナノカーボンの製造装置10は、電気炉11内に反応管12としてのφ40mmの石英ガラスチューブが配置されており、この反応管12内にφ35mmのステンレス製の回転ドラム容器13が配置されている。電気炉11はプログラム温度制御装置14によって所定の温度に制御され、また、回転ドラム容器13aはモーター13bによって所定の回転速度で回転させられるようになっている。
【0066】
ここでは、ステンレス製の回転ドラム容器13a内に実施例1〜19及び比較例1〜12のそれぞれに対応する組成の多孔質複合金属酸化物の粉体16を0.2g挿入し、モーター13bにより回転ドラム容器13aを2rpmの回転速度で回転させ、多孔質複合金属酸化物の粉体16を撹拌した。そして、触媒活性化ゾーンとナノカーボン合成ゾーンと冷却ゾーンの温度履歴を再現するため、プログラム温度制御装置14によって、図2に示すように、反応管12内の温度を時間的に変化させ、触媒活性化ゾーンに対応する時間帯では200℃〜700℃まで30分かけて昇温し、ナノカーボン合成ゾーンに対応する時間帯では700℃±10℃の温度範囲で30分間維持し、冷却ゾーンに対応する時間帯では700℃〜300℃まで10分かけて降温した。
【0067】
そして、触媒活性化ゾーンに対応する時間帯では、還元性のガス(窒素−5%水素)18を加湿器19を通して流し、多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を生成した。次いで、700℃±10℃に到達したら、還元性のガス18に換えて炭化水素ガス17であるプロパンガスを流した。なお、還元性のガス18及び炭化水素ガス17は反応管12内の圧力を圧力計15で測定しながら、圧力が約1kPaとなるように流量を調節した。このとき、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に水素ガスが生成される。30分間ナノカーボンを合成した後、冷却ゾーンに対応する時間帯では炭化水素ガスから窒素−5%水素混合ガスに切り替えた。
【0068】
そして、回転ドラム容器13aの温度が200℃以下になったら、回転ドラム容器13a内の試料を大気中に取出し、実施例1〜19及び比較例1〜12に対応するそれぞれの活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体の合計質量を測定した。このようにして測定された「(ナノカーボン複合体の質量)/(複合金属酸化物の質量)」を多孔質複合金属酸化物の組成と共に表1にまとめて示した。なお、表1の「(ナノカーボン複合体の質量)/(複合金属酸化物の質量)」は、(ナノカーボン複合体の質量)=(活性触媒体の質量+ナノカーボンの質量)であるので、実質的にナノカーボンの合成レート(収量)に対応する数値を表している。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示した結果から、以下のことが分かる。すなわち、比較例1〜4及び実施例1〜5、比較例5〜8及び実施例6〜10、比較例9〜12及び実施例11〜15のいずれの場合においても、第2種の金属の酸化物の含有割合が増加するにしたがってナノカーボンの収量は増加しており、特に第2種の金属の酸化物の含有割合が50質量%以上の場合には、第2種の金属の酸化物の含有割合が40質量%以下の場合よりも大幅にナノカーボンの収率が増加している。ただし、第2種の金属の酸化物の含有割合が80質量%を越えると僅かにナノカーボンの収量は減少している。そして、このような傾向は、第2種の金属がニッケルの場合であっても鉄の場合であっても、さらには第1種の金属がマグネシウムの場合であってもカルシウムの場合であっても、同様の傾向を示している。
【0071】
また、第2種の金属がニッケル及び鉄である実施例16の複合金属酸化物、同じくニッケル及びコバルトである実施例17の複合金属酸化物、同じくニッケル及びモリブデンである実施例18の複合金属酸化物、更には、第2種の金属がニッケルであり、第1種の金属が酸化ストロンチウム(SrO)である実施例19の複合金属酸化物も、第2種の金属の含有割合が60質量%以上であることから、ナノカーボンの収量は15以上と大きくなっている。
【0072】
このうち、第1種の金属の酸化物である酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化ストロンチウム(SrO)は、700℃では水素ガス等の還元性ガスによっては還元されないことから、酸化物のままで存在していることは明らかである。また、第2種の金属の酸化物である酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)、酸化コバルト(CoO)及び三酸化モリブデン(MoO3)は700℃では水素ガス等の還元性ガスによって容易に還元されてそれぞれ対応する金属として存在していることは明らかである。
【0073】
したがって、周知のナノカーボン製造用触媒の組成をも考慮すると、第1種の金属としては、ナノカーボン製造用触媒の担体として慣用的に使用されているマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つを使用することができ、また、第2種の金属としては、ナノカーボン製造用金属触媒として慣用的に使用されているマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つを使用することができることが分かる。なお、第1種の金属及び第2種の金属とも、多孔質複合金属酸化物の製造を容易にするためにはそれぞれ水溶性塩であればよい。
【0074】
例えば、第1種の金属の水溶性塩としては、例えば、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム等を使用することができる。また、第2種の金属の水溶性塩としては、塩化マンガン、硝酸第二鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸銅、7モリブデン酸6アンモニウム、タングステン酸アンモニウム等を使用し得る。
【0075】
また、ここでは有機化合物としてL−アラニンを用いた例を示したが、この有機化合物は焼成の際に消失して複合金属酸化物の多孔性化に寄与する物質であるので、類似の物性の有機化合物、例えば酒石酸、システイン、アルギニン、グリシン、アラニン、ロイシンから選択される1つ以上であり、融点が200℃から300℃のものを使用し得る。有機化合物の融点が200℃未満では良好な多孔性を有する複合金属酸化物が得られず、また、融点が300℃を越えるものでは焼成後に複合金属酸化物中にカーボンが残留するので好ましくない。
【0076】
また、炭化水素ガスとしては、ここではプロパンを使用した例を示したが、プロパンだけでなく、ナノカーボン製造用原料をして普通に使用されているメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、イソプレン、n−ブタン等を使用することができる。プロパン以外の炭化水素ガスを使用する場合には、それぞれの炭化水素の熱分解温度に合わせて、触媒活性化ゾーン及びナノカーボン合成ゾーンの温度を500〜1000℃内において適宜に選択し、また、炭化水素ガスが活性触媒体周辺でナノカーボンと水素ガスとに転換される反応をスムースに進行させるため、反応管内の圧力を0.1〜10kPa範囲に制御すればよい。
【0077】
なお、多孔質複合金属酸化物は、400℃から700℃で空気中焼成することにより作製することが好ましい。焼成温度が400℃以下では複合金属酸化物中に原料のカーボン成分が残り、700℃以上では複合金属酸化物の結晶粒の粗大化が発生する。さらに好ましい焼成温度は500℃〜700℃である。また、多孔質複合金属酸化物は、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gであることが好ましい。10nm以下の粒径を有する多孔質複合金属酸化物を安定的に製造することは困難であり、また200nm以上の粒径を有する多孔質複合金属酸化物では大きいサイズのナノカーボンが合成される。さらに好ましい多孔質複合金属酸化物の粒径は20nm〜80nmである。同様の理由により、BET比表面積は10〜50m2/gであることがさらに好ましい。
【0078】
なお、ナノカーボンの大量合成を考えると、合成レート(ナノカーボン複合体/複合金属酸化物)は5以上が好ましい。上述の従来技術に開示されている方法では、触媒金属と触媒担持体から構成される触媒粒子全体に対して触媒金属の割合は40%以下が好ましいとされている。それに対して、表1に示したように、本発明によれば、複合金属酸化物に対して50〜95質量%の第2種の金属の酸化物の含有範囲において、合成レート(ナノカーボン複合体/複合金属酸化物)の5以上が達成されている。
【0079】
なお、上述のようにナノカーボンの大量合成を実現することができた理由は、次のとおりであると推定される。
(1)用いた触媒が第1種の金属の水溶性化合物、第2種の金属の水溶性化合物、有機化合物及び水の混合物を空気中焼成することにより作製した多孔質複合金属酸化物であること。
(2)触媒活性化ゾーンにおいて、多孔質複合金属酸化物の内、第2種の金属の酸化物が還元されて金属化することによって、触媒金属超微粒子が生成した活性触媒体が生成されること。
(3)生成した活性触媒体がナノカーボン合成ゾーンに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスと接触することにより、触媒金属超微粒子を先頭にしてナノカーボンが活性触媒体周辺に成長すること。
このように、触媒金属超微粒子を先頭にしてナノカーボンが活性触媒体周辺に成長することにより、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3のナノカーボンと活性触媒体の複合体が製造される。これによって、ナノカーボンが合成中に飛散することがなく、安全衛生を確保した状態で、ナノカーボンの大量製造が可能となった。
【0080】
[実施例20]
実施例20としては、触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置として、スクリューコンベア方式を採用した。この実施例20で使用したスクリューコンベア方式のナノカーボン製造装置を図3に示した。このスクリューコンベア方式のナノカーボン製造装置20は、電気炉21内にスクリューコンベア22が配置されている。スクリューコンベア22はモーター23によって所定の一定速度で回転されている。電気炉21は、スクリューコンベア22の長さ方向に亘って、それぞれ触媒活性化ゾーン21a、ナノカーボン合成ゾーン21b及び冷却ゾーン21cごとに個別に所定の温度となるように、温度制御装置24によって制御されている。
【0081】
また、スクリューコンベア22の入口端22aには、多孔質複合金属酸化物からなる触媒の供給用ホッパー25が配置されており、出口端22bにはナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出ホッパー26が配置されている。そして、スクリューコンベア22の出口端22bには、炭化水素ガスの供給配管27a、還元性ガスの供給配管27b及び水蒸気もしくは加湿還元性ガスの供給配管27dが接続され、同じく入口端22aに接続された触媒の供給用ホッパー25には排ガス配管27cが接続されこの排ガス配管27cは、水素回収システム28aを経て、水素ガスを燃料とする周知の燃料電池システム28bに接続されている。なお、ここでは各種バルブの図示は省略されている(以下、他の実施例においても同じ)。さらに、スクリューコンベア22内の温度、ガス濃度及び圧力を測定するために、適宜各種センシング手段29が設けられている。なお、通常、温度及びガス濃度は触媒活性化ゾーン21a、ナノカーボン合成ゾーン21b及び冷却ゾーン21cにおいて測定され、圧力は冷却ゾーン21cにおいて測定される。
【0082】
[多孔質複合金属酸化物の製造]
実施例20では、触媒として用いる多孔質複合金属酸化物を次のようにして作製した。まず、第1種の金属の水溶性化合物として6質量%のカルシウム硝酸塩と、第2種の金属の水溶性化合物として44質量%の鉄硝酸塩と、有機化合物として25質量%のアラニンと、19質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合で混合し、マグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、空気雰囲気中で750℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を得た。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体をナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物として用いた。このようにして作製された実施例20で使用した多孔質複合金属酸化物の電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察された画像を図4に示す。
【0083】
[製造準備処理工程]
実施例20のナノカーボン製造装置20において、温度制御装置24により、電気炉21のナノカーボン合成ゾーン21bの温度が750℃±5℃になるように温度制御した。この時、スクリューコンベア22の内部を不活性ガスの窒素ガスで1%以下の酸素濃度なるまで置換した。
【0084】
[多孔質複合金属酸化物の供給]
上述のようにして作製された多孔質複合金属酸化物の粉体を、触媒の供給用ホッパー25からスクリューコンベア22の入口端22aに50g/hrの定量・定速度で供給した。この時、還元性ガスの供給配管27bより還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスをスクリューコンベア22の出口端22bからスクリューコンベア22に供給した。これにより、少なくとも触媒活性化ゾーン21aで多孔質複合金属酸化物であるFeO−CaO多孔体のFeOの一部が金属化した活性触媒体が生成される。
【0085】
[ナノカーボンの合成]
次いで、多孔質複合金属酸化物の粉体がスクリューコンベア22の出口端22b付近に来たことを確認して、還元性ガスの供給配管27bより流していた還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスを炭化水素ガスの供給配管27aに切り替えて炭化水素ガスであるメタンガスを流した。また、メタンガスが活性触媒体周辺で反応がスムースに進行させるようにするため、スクリューコンベア22内の圧力は0.1〜10kPaの範囲に設定した。このとき、水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管27dからメタンガス中に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを添加してもよい。
【0086】
これにより、触媒活性化ゾーン21aで生成した活性触媒体は、スクリューコンベア22により、運動しながらナノカーボン合成ゾーン21bに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスであるメタンガスと接触することにより、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に水素ガスが生成される。ナノカーボンと活性触媒体の複合体のナノカーボン合成ゾーン21bでの滞留時間は30分に設定されている。
【0087】
このナノカーボン合成中に、触媒活性化ゾーン21a、ナノカーボン合成ゾーン21b及び冷却ゾーン21cのメタン、水素及び水蒸気の濃度を分析し、炭化水素ガスとしてのメタンガスの流量を制御することにより、触媒活性化ゾーン21aでの水素ガス濃度が80%以上となるように制御した。これによって、触媒活性化ゾーン21aでは、ナノカーボン合成時に生成される水素ガスにより多孔質複合金属酸化物であるFeO−CaO多孔体のFeOの一部が金属化した活性触媒体が連続的に生成される。
【0088】
[ナノカーボンおよび水素ガスの排出]
活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体は、スクリューコンベア22により、運動しながら冷却ゾーン21cを経由して排出ホッパー26に蓄積される。一方、生成した水素ガスや水蒸気は水素回収システム28aに導かれ、ここで水素が分離されて、さらに燃料電池システム28bにて有効利用される。
【0089】
この実施例20により作製されたナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出速度は600g/hrであった。合成したナノカーボンを透過電子顕微鏡で構造観察した結果、多層平行型のナノチューブであった。
【0090】
[実施例21]
実施例21としては、触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置として、ロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式を採用した。この実施例21で使用したナノカーボン製造装置を図5を用いて説明する。このロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式を採用したナノカーボン製造装置30は、電気炉31内にロータリーキルン32が配置されている。ロータリーキルン32は図示省略したモーターによって所定の一定速度で回転されている。電気炉31は、ロータリーキルン32の長さ方向に亘って、それぞれ触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cごとに個別に所定の温度となるように、温度制御装置34によって制御されている。
【0091】
ロータリーキルン32の入口端32aには、粉塵回収ホッパー32cが設けられており、出口端32bにはナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出ホッパー36が配置されている。また、ロータリーキルン32の入口端32aから触媒活性化ゾーン31aに亘って、スクリューコンベア33が配置されている。このスクリューコンベア33の入口端33aには、多孔質複合金属酸化物からなる触媒の供給用ホッパー35が配置されており、出口端33bはロータリーキルン32内に開放されている。
【0092】
そして、ロータリーキルン32の出口端32bには、炭化水素ガスの供給配管37a及び不活性ガスの供給配管37b(なお、ここでは炭化水素ガスの供給配管37aに不活性ガス供給配管37bが接続されているものを示した。)及び水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管37fが接続され、同じく入口端32aに接続された粉塵回収ホッパー32cには排ガス配管37cが接続されている。また、スクリューコンベア33の出口端33bには還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dが接続され、入口端33aに配置された触媒の供給用ホッパー35には排ガス配管37eが接続されている。そして、これらの排ガス配管37c及び37eは、共に水素回収システム38aを経て、水素ガスを燃料とする周知の燃料電池システム38bに接続されている。さらに、ロータリーキルン32内の温度、ガス濃度及び圧力を測定するために、適宜各種センシング手段39が設けられている。
【0093】
なお、ロータリーキルン32の直径は150mmであり、触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cのそれぞれの長さは250mm、200mm、250mmであり、ロータリーキルン32中のナノカーボンと活性触媒体の複合体の占める保有率を10%、合成量0.2kg/hrとなるようにロータリーキルン32及びスクリューコンベア33の運転条件を選定した。
【0094】
[多孔質複合金属酸化物の製造]
実施例21では、触媒として用いる多孔質複合金属酸化物を次のようにして作製した。まず、第1種の金属の水溶性化合物として8質量%のマグネシウム硝酸塩と、第2種の金属の水溶性化合物として42質量%のニッケル硝酸塩と、有機化合物として55質量%のグリシンと、19質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合で混合し、マグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、空気雰囲気中で670℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を得た。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体を実施例21のナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物として用いた。このようにして得られた多孔質複合金属酸化物のFE−SEMにより観察された画像を図6に示した。
【0095】
[製造準備処理工程]
実施例21のナノカーボン製造装置30において、温度制御装置34により、電気炉31のナノカーボン合成ゾーン31bの温度が670℃±5℃になるように温度制御した。この時、ロータリーキルン32の内部及びスクリューコンベア33の内部を、不活性ガスの供給配管37b及び還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dから不活性ガスの窒素ガスを供給することにより、1%以下の酸素濃度なるまで置換した。
【0096】
[多孔質複合金属酸化物の供給]
上述のようにして作製された多孔質複合金属酸化物の粉体を、触媒の供給用ホッパー35からスクリューコンベア33の入口端33aに12g/hrの定量・定速度で供給した。この時、還元性ガスの供給配管37bより還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスを還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dを経てスクリューコンベア33の出口端33bからスクリューコンベア33に供給した。これにより、少なくとも触媒活性化ゾーン31aで多孔質複合金属酸化物であるNiO−MgO多孔体のNiOの一部が金属化した活性触媒体が生成される。
【0097】
[ナノカーボンの合成]
次いで、多孔質複合金属酸化物の粉体がスクリューコンベア33の出口端33b付近に来たことを確認して、不活性ガスの供給配管37bから供給されていた不活性ガスに換えて炭化水素ガスの供給配管37aから炭化水素ガスであるブタンガスを110L/hrの割合で活性触媒体の供給方向に対向するように流した。また、ブタンガスの活性触媒体周辺で反応がスムースに進行させるようにするため、ロータリーキルン32内の圧力は0.1〜10kPaの範囲に設定した。このとき、水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管37fからブタンガス中に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを添加してもよい。
【0098】
これにより、触媒活性化ゾーン31aで生成した活性触媒体は、ロータリーキルン32により、運動しながらナノカーボン合成ゾーン31bに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスであるブタンガスと接触することにより、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に540L/hrの割合で水素ガスが生成される。ナノカーボンと活性触媒体の複合体のナノカーボン合成ゾーン31bでの滞留時間は30分に設定されている。
【0099】
このナノカーボン合成中に、触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cのメタン、水素及び水蒸気の濃度を分析し、炭化水素ガスとしてのメタンガスの流量を制御することにより、触媒活性化ゾーン31aでの水素ガス濃度が80%以上となるように制御した。これによって、触媒活性化ゾーン31aでは、ナノカーボン合成時に生成される水素ガスにより多孔質複合金属酸化物であるFeO−CaO多孔体のFeOの一部が金属化した活性触媒体が連続的に生成される。
【0100】
[ナノカーボンおよび水素ガスの排出]
活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体は、ロータリーキルン32により、運動しながら冷却ゾーン31cを経由して排出ホッパー36に蓄積される。一方、生成した水素ガスや水蒸気は水素回収システム38aに導かれ、ここで水素が分離されて、さらに燃料電池システム38bにて有効利用される。このようにして得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体の倍率を変えたFE−SEMにより観察された画像を図7及び図8に示した。
【0101】
この実施例21により作製されたナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出速度は0.25kg/hrであった。1日24時間、15日の連続運転をした結果、89kgの複合体が得られた。合成したナノカーボンを透過電子顕微鏡で構造観察した結果、図9に示すように、カップスタック型のナノチューブであった。
【0102】
[実施例22]
実施例22としては、触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置として、ベルトコンベア方式を採用した。この実施例22で使用したナノカーボン製造装置を図10を用いて説明する。このベルトコンベア方式を採用したナノカーボン製造装置40は、電気炉41内に配置された反応管42内にベルトコンベア43が配置されている。ベルトコンベア43は図示省略したモーターによって所定の一定速度で駆動されている。電気炉41は、反応管42の長さ方向に亘って、それぞれ触媒活性化ゾーン41a、ナノカーボン合成ゾーン41b及び冷却ゾーン41cごとに個別に所定の温度となるように、温度制御装置44によって制御されている。
【0103】
反応管42の入口端42a側のベルトコンベア43上には触媒供給用ホッパー45が設けられており、出口端42b側には、ブラシ43aとともに、ナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出ホッパー46が配置されている。そして、ベルトコンベア43の出口端42bには、炭化水素ガスの供給配管47a、還元性ガス又は不活性ガスの供給配管47b及び水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管47dが接続され、同じく入口端42aに接続された触媒供給用ホッパー45には排ガス配管47cが接続されている。そして、これらの排ガス配管47cは、水素回収システム48aを経て、水素ガスを燃料とする周知の燃料電池システム48bに接続されている。さらに、ベルトコンベア43内の温度、ガス濃度及び圧力を測定するために、適宜各種センシング手段59が設けられている。
【0104】
[多孔質複合金属酸化物の製造]
第1種の金属の水溶性化合物として6質量%のマグネシウム硝酸塩と、第2種の金属の水溶性化合物として48質量%のコバルト硝酸塩と、有機化合物として25質量%のロイシンと、15質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合でマグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、750℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を作製した。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体をナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物にした。
【0105】
[製造準備処理工程]
そして、温度制御装置44により、電気炉41のナノカーボン合成ゾーン41bの温度が750℃±5℃になるように温度制御した。この時、反応管42の内部を、還元性ガス又は不活性ガスの供給配管47bから不活性ガスの窒素ガスを供給することにより、1%以下の酸素濃度なるまで置換した。
【0106】
[多孔質複合金属酸化物の供給]
上述の多孔質複合金属酸化物の粉体を、触媒の供給用ホッパー45から反応管42の入口端42a側のベルトコンベア43上に50g/hrの定量・定速度で供給した。この時、還元性ガス又は不活性ガスの供給配管47bより還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスを供給した。これにより、少なくとも触媒活性化ゾーン41aで多孔質複合金属酸化物であるCoO−MgO多孔体のCoOの一部が金属化した活性触媒体が生成される。
【0107】
[ナノカーボンの合成]
次いで、多孔質複合金属酸化物の粉体が反応管42の出口端42b側付近に来たことを確認して、不活性ガスの供給配管47bから供給されていた不活性ガスに換えて炭化水素ガスの供給配管47aから炭化水素ガスであるメタンガスを活性触媒体の供給方向に対向するように流した。また、メタンガスの活性触媒体周辺で反応がスムースに進行させるようにするため、反応管42内の圧力は0.1〜10kPaの範囲に設定した。このとき、水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管47dからメタンガス中に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを添加してもよい。
【0108】
これにより、触媒活性化ゾーン41aで生成した活性触媒体は、ベルトコンベア43により、運動しながらナノカーボン合成ゾーン41bに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスであるメタンガスと接触することにより、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に水素ガスが生成される。ナノカーボンと活性触媒体の複合体のナノカーボン合成ゾーン41bでの滞留時間は30分に設定されている。
【0109】
このナノカーボン合成中に、触媒活性化ゾーン41a、ナノカーボン合成ゾーン41b及び冷却ゾーン41cのメタン、水素及び水蒸気の濃度を分析し、炭化水素ガスとしてのメタンガスの流量を制御することにより、触媒活性化ゾーン41aでの水素ガス濃度が80%以上となるように制御した。これによって、触媒活性化ゾーン41aでは、ナノカーボン合成時に生成される水素ガスにより多孔質複合金属酸化物であるCoO−MgO多孔体のCoOの一部が金属化した活性触媒体が連続的に生成される。
【0110】
[ナノカーボンおよび水素ガスの排出]
活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体は、ベルトコンベア43により、運動しながら冷却ゾーン41cを経由して反応管42の出口端42b側まで移動し、ブラシ43aでベルトコンベア43から掻き落とされて、排出ホッパー46に蓄積される。一方、生成した水素ガスや水蒸気は水素回収システム48aに導かれ、ここで水素が分離されて、さらに燃料電池システム48bにて有効利用される。
【0111】
この実施例22により作製されたナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出速度は600g/hrであった。合成したナノカーボンを透過電子顕微鏡で構造観察した結果、多層並行型のナノチューブであった。
【0112】
[実施例23]
実施例20〜22に示した触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置20、30及び40では、生成した水素ガスを燃料電池で使用して電力として回収することによりエネルギーを回収し、低コストにナノカーボンを製造できるようにした例を示した。しかしながら、ナノカーボンを大量生産するには、多量の水素ガスだけでなく、多量の未反応の炭化水素及び廃熱が回収される。そこで、実施例23では、図11を用いて、このような生成した水素ガス、未反応の炭化水素及び廃熱をも利用することによりさらに低コストにナノカーボンを製造できるようにした触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置50について説明する。
【0113】
実施例23の触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置50は、ナノカーボン生成部51と、生成した水素ガス、未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70とを備えている。ナノカーボン生成部51は、ナノカーボンを合成する反応路52、多孔質複合金属酸化物を合成及び供給するための多孔質複合金属酸化物システム53、還元性ガス及び水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給システム54、不活性ガス及び炭化水素ガス供給システム55、生成したナノカーボンと活性触媒体との複合体を回収するためのナノカーボン回収システム56、ナノカーボンと活性触媒体との複合体からナノカーボンを分離するナノカーボンの高品質化システム57、分離されたナノカーボンを貯蔵するためのナノカーボン貯蔵システム58及び反応路52内の温度、ガス濃度及び圧力を検知するための各種センシング手段59及びこれらの各手段の動作を制御するための制御システム60とを備えている。なお、ナノカーボン生成部51の各構成は、実施例20〜22に示した触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置20、30及び40の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0114】
また、ナノカーボン生成部51は、さらに、水素ガス・副成ガス等を切り替えて利用部70に送りための水素ガス・副成ガス切換部61を備えている。この水素ガス・副成ガス切換部61から未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70に供給された高濃度の水素を含むガスは、例えばPSA等の水素ガス回収システム62aを経ることによって水素ガスが分離され、バグフィルター等のフィルターシステム62bによって固形分が除去され、その一部が例えばパラジウム等を利用した水素精製システム62cによって高純度化水素化され、残りの一部はそのままマイクロガスタービンシステム63に供給され発電に供給され、得られた電力は電力変換システム63aによって交流電力63b化されて各種の装置の電力として使用される。
【0115】
また、高純度化水素化された水素ガスは燃料電池システム64の燃料極に供給され、この燃料電池システム64で発生された電力は電力変換システム64aによって交流電力64b化されて各種の装置の電力として使用され、また、燃料電池システム64で発生した熱は、廃熱回収システム64cによって水と熱交換することによって回収され、廃熱回収システム64cにより得られた温水ないし水蒸気はは貯湯槽64dに貯蔵されて、温水ないし水蒸気64eの形で各種用途に使用される。なお、燃料電池システム64には空気極に酸素を供給するための空気供給システム64fも設けられている。
【0116】
また、水素ガス・副成ガス切換部61から供給された未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70に供給された炭化水素ガスを含む成分は、排ガス回収システム65で炭化水素ガスが濃縮された後、排ガス燃焼システム65aで燃焼され、この時発生した熱が、ナノカーボン生成部51に供給されて、例えば多孔質複合金属酸化物焼成用の予備加熱システム66等として使用される。なお、制御システム60は未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70の各種手段の制御にも使用される。このようにして、実施例23の触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置50によれば、生成した水素ガス、未反応の炭化水素及び廃熱をも利用することによりさらに低コストにナノカーボンを製造できるようになる。
【符号の説明】
【0117】
10、20、30、40…ナノカーボンの製造装置 11…電気炉 12…反応管 13a…回転ドラム容器 13b…モーター 14…プログラム温度制御装置 15…圧力計 16…多孔質複合金属酸化物の粉体 21、31、41…電気炉 21a,31a、41a…触媒活性化ゾーン 21b、31b、41b…ナノカーボン合成ゾーン 21c、31c、41c…冷却ゾーン 24、34、44…温度制御装置 29、39、49…各種センシング手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく、大量・低コスト・高品質のナノカーボンを連続的に製造する方法、この連続的ナノカーボンの製造のための多孔質複合金属酸化物、及び、連続的なナノカーボンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボンには、カーボンブラック、ナノカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カップスタックチューブ、カーボンナノホーン等が含まれる。これらのナノカーボンは、化学的安定性、高い電子伝導性、高い電子放出能、高い弾性率等の種々の優れた物性を有している。ナノカーボンは、前述のような物性を利用して、電界放出型電子放出素子、走査型プローブ顕微鏡用のプローブ、触媒、構造強化材料、電池の電極、センサー材料など各種応用の可能性が期待されている。
【0003】
これらのナノカーボンの製造方法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学的気相成長法などが知られている。カーボンナノチューブの量産方法の一つとしては、流動触媒法が知られている。流動触媒法は、触媒微粒子を分散させたベンゼンやトルエンなど原料炭化水素を水素と共に約1000℃に加熱した反応器に送り、反応させてMWCNTを得る方法である。一方、カーボンブラックは、充填材、顔料等に用いられており、原料炭化水素を300〜1800℃の高温で数msの瞬時に炭素化して、直径7〜500nmの黒色の微粒子とすることにより製造される。その製造方法としては、ファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、サーマル法、ランプ法等が用いられている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、「カーボンナノチューブの製造方法および製造装置」の発明に関し、操作が簡便な化学蒸着法(CVD法)を用い、固体触媒と炭素含有化合物を500〜1200℃で効率良く接触させるために、加熱炉内に設置した反応管を回転させて固体触媒を撹拌し、固体触媒と炭素含有化合物を均一に接触できる装置や、反応管を傾斜させて回転することにより固体触媒と原料炭素含有化合物を連続的に供給し、生成したカーボンナノチューブを連続して抜き出す装置を用いることで、さらに効率よくカーボンナノチューブが製造できるようにした例が示されている。
【0005】
下記特許文献1に示されているカーボンナノチューブを製造する装置80は、例えば、図12に示したように、水平あるいは水平に対してわずかに傾斜した軸の周りに回転する筒状の反応管81を加熱炉82で所定の温度に維持し、反応管81の前又は後に、スクリューポンプ83で固体触媒を導入する供給口84と、炭素含有化合物を導入する供給口85と、カーボンナノチューブが付着した固体触媒を抜き出す製品取り出し口86と、排気口87とを備えている。このカーボンナノチューブを製造する装置80によれば、反応管81内に連続的に固体触媒と炭素含有化合物を供給することが可能になり、反応管81を回転させることで固体触媒が撹拌されて効率よく生産でき、しかもカーボンナノチューブが連続的に大量生産できる装置となる。
【0006】
そして、下記特許文献1には、固体触媒は固体担体表面に触媒金属を担持したものであればどのようなものでも良いとされ、固体担体としては、有機物でも無機物でも良いが、耐熱性の観点から無機物が好ましいこと、無機の固体担体としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合物、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどを用いることができること、中でも触媒金属が均一に担持できる無機多孔体が好ましいこと、無機多孔体の中でも細孔径や骨格組成が均一であるという点でゼオライトが好ましいこと等が示されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、「カーボンナノチューブの連続製方法および製造装置」の発明に関し、操作が簡便な化学蒸着法(CVD法)を用い、炭素含有化合物と搬送装置に保持した固体触媒を加熱炉内に連続的に供給し、加熱炉内の500〜940℃に加熱された温度帯域にて搬送装置に保持した固体触媒と炭素含有化合物を接触させてカーボンナノチューブを生成し、加熱炉内を通過して出てきた搬送装置に保持されたカーボンナノチューブを連続的に回収するようにしたものが示されている。
【0008】
下記特許文献2に示されているカーボンナノチューブを製造する装置90は、例えば図13に示したように、搬送装置91として無端ベルト型ベルトコンベヤーを設け、固体触媒加熱炉92の前または後に炭素含有化合物を導入する供給口93と排気口94を設け、雰囲気ガスの流入を防止する機能として不活性ガスカーテン95を設けることで加熱炉92内への雰囲気ガス流入を防止できるようにし、また、加熱炉92の前に固体触媒を導入する供給口96を設け、予め容器97に固体触媒を保持して、加熱炉92に搬送している。これにより、搬送装置91に保持した固体触媒に炭素含有化合物を供給することが可能となっている。そして、搬送装置91は、例えば、昇温域92a、反応域92b、冷却域92cの3つのそれぞれ独立に制御できる速度域を設け、加熱炉92の温度帯域も、昇温域92a、反応域92b、冷却域92cでそれぞれ独立に制御できるようにしている。
【0009】
下記特許文献2に示されている発明で用いられている固体触媒は、固体担体表面に触媒金属を担持したものであれば特に制限はなく、固体担体としては有機物でも無機物でも良いが、耐熱性の観点から無機物が好ましいこと、無機の固体担体としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合物、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどを用いることができること、中でも触媒金属が均一に担持できる無機多孔体が好ましいこと、無機多孔体の中でも細孔径や骨格組成が均一であるという点でゼオライトが好ましいことが示されている。
【0010】
なお、ゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有した結晶性無機酸化物であり、分子サイズとは、一般的には、0.2から2nm程度の範囲を意味し、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。
【0011】
また、下記特許文献3には、「多層カーボンナノチューブの大量生産方法」の発明に関し、担持された金属触媒の、予め還元されておらず、かつ担持されていない前駆体を、前記触媒のその場での生産と前記ナノチューブの生産とを可能にする条件下でその場で還元し、さらに、得られたナノチューブを回収することからなる炭化水素の接触分解からの多層カーボンナノチューブの選択的大量生産方法の発明が開示されている。そして、ここで使用されている担持されていない前駆体としては、CoxMg(1−x)O固溶体が使用され、炭化水素としてはキャリヤーガスで稀釈されたアセチレンガスが使用されている。
【0012】
また、下記特許文献4には、「気相成長法炭素繊維製造用触媒および炭素繊維の製造方法」の発明に関し、気相成長法による炭素繊維製造用触媒として、少なくとも水溶性8族金属化合物と、有機化合物とを含む混合物を焼成してなる、8族金属酸化物を含有する気相成長法炭素繊維製造用触媒であって、8族金属酸化物における非晶質8族金属酸化物が10重量%以上で、且つ全金属酸化物における結晶質金属酸化物が85重量%以下であるものを用いた例が示されている。
【0013】
この場合、8族金属化合物と、8族以外の金属化合物とのモル比は、金属換算の合計量に対して、8族金属が10モル%以上あればよく、中でも15モル%以上、特に20モル%以上であることが好ましく、その上限は50モル%以下、中でも40モル%以下であることが好ましいとされている。なお、下記特許文献4に開示されている発明における「炭素繊維」とは、カーボンナノファイバー(カーボンナノチューブ)と称される、直径が1μm以下の炭素繊維を意味している。
【0014】
一方、水素ガスは基礎化学品の製造に用いられる基本的な原料であるとともに一次エネルギーの重要な一形態である。現在、工業用水素ガスの大半はナフサや天然ガス等の炭素質原料からの水蒸気改質法もしくは部分酸化法により製造されている。例えば、水蒸気改質法は、ナフサ級軽質油、天然ガス(メタン)、石油精製オフガス(メタン、プロパン、ブタン)等の比較的軽量の炭化水素原料を5〜20気圧、700〜850℃の高温下で触媒上において水蒸気と反応させて、一酸化炭素、二酸化炭素及び水素の混合物である合成ガスを発生させるものである。また、部分酸化法は、炭化水素を酸素もしくは空気及び水蒸気と共に、常圧〜50気圧、1300℃程度で反応させて水素と一酸化炭素等の混合物である合成ガスを発生させるものである。
【0015】
近年、炭化水素原料を高温下で触媒と接触させることによって、ナノカーボンと共に水素ガスを得る方法が開発された。例えば、下記特許文献5には、「水素の製造方法の使用」の発明に関し、ガソリンスタンドにおいて、供給される炭化水素含有供給ガスを改質装置内で触媒と接触させることによって水素ガスとナノカーボンを製造し、得られた水素ガスを貯蔵して消費者に出荷分配する方法が示されている。ここでは、炭化水素原料としてハイタン(例えば、天然ガス又はメタン)を用い、触媒としてVIII族の遷移元素、好ましくはFe、Ni、Co、Moから選択される少なくとも1種と、アルカリ土類金属酸化物、ケイ素、酸化ケイ素から選択される少なくとも1種とを含む複合触媒が用いられている。
【0016】
下記特許文献5に示されている発明では、SiO2を含有するCo、Ni及びFeの触媒、又はNi、Fe及びNi/Feを含有する水酸化物若しくは酸化物の粉末は、水、アルコール、アセトン又は任意の他の適切な溶剤に分散した金属水酸化物の「上」にSiO2を沈殿させることにより得られる。SiO2は、塩基(例えば、NH3/H2O)を加えてテトラオキシシラン(TEOS)を分解することにより、水酸化物上に直接に沈積する。さらなる形状では、半化学量論的なSiO2‐Ni(OH)2、SiO2‐Fe(OH)3又はSiO2‐Ni/Fe水酸化物が、塩基を加えたときの直接的な、同時の沈殿により一工程で得られる。その場合でも、注目すべきは、複合触媒の主成分がVIII族の遷移金属であり、それは50mol%を超える割合で、好ましくは80mol%を超える割合で、さらに好ましくは90mol%を超える割合で少なくとも存在する。
【0017】
この触媒は、使用前に還元性雰囲気に曝されて遷移金属成分のみが金属に還元されている。この複合触媒は、最初に予熱区間に導かれ、加熱区間で500〜1000℃の操作温度に加熱されて供給ガスが水素ガスとナノカーボンに分解され、次いで冷却区間で冷却される。得られたガス中には水素ガスだけでなく、未分解の炭化水素ガスが含まれているため、必要に応じてPSAプラント等によって水素ガスが分離され、使用に供されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003−252613号公報
【特許文献2】特開2003−238125号公報
【特許文献3】特開2003−206117号公報
【特許文献4】特開2006−181477号公報
【特許文献5】特表2009−513466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記特許文献1及び2に示されている発明によれば、一応、カーボンナノチューブを連続的に多量に製造することができるが、固体触媒は予め固体担体に触媒金属を担持させたものを用いている。このような触媒金属を予め固体担体に担持させたものでは、固体触媒の製造後の時間経過と共に触媒金属が変質するため、物性が安定したカーボンナノチューブを製造し難く、しかも収量が安定しないという課題がある。加えて、固体触媒は触媒金属の担持量が多くなると触媒活性が向上するが、多量の金属を均等に担持させることは困難であり、しかも、触媒金属同士が重なると触媒活性が低下していくため、触媒金属の担持量は約10質量%程度が普通であり、多くても約20質量%程度しか担持させることができず、収量を上げることが困難である。
【0020】
また、上記特許文献3に示されている発明によれば、触媒として、担持された金属触媒の、予め還元されておらず、かつ担持されていない前駆体とアセチレンガスを用いて、金属触媒の還元と多層カーボンナノチューブの形成とを同時に行っているため、担持されていない前駆体に対して気相中での予備還元又は水素の添加を必要とせず、しかも、低温で、多層カーボンナノチューブを選択的に大量に生産することができるという効果を奏するとされている。
【0021】
しかしながら、上記特許文献3には、炭化水素原料としてアセチレンを用いた例しか示されていないばかりか、触媒として、硝酸マグネシウム六水和物(10mmol)と硝酸コバルト六水和物(6mmol)とクエン酸(10mmol)を用いて窒素流下で700℃で5時間焼成して作製したCo0.4Mg0.6O固溶体を用いた例しか示されておらず、しかも、触媒の作製に際して焼成を空気中で行うと触媒活性が生じないことが示されている。さらに、上記特許文献3には、他の炭化水素原料や他の組成の触媒を用いることができるかどうかについては何も明らかにされておらず、また、多層カーボンナノチューブを大量に生産するための具体的な製造装置の構成は何も示されていない。
【0022】
また、上記特許文献4に示されている発明によれば、触媒として、8族金属酸化物における非晶質8族金属酸化物が10重量%以上で、且つ全金属酸化物における結晶質金属酸化物が85重量%以下であるものを用いた例が示されており、8族金属化合物と、8族以外の金属化合物とのモル比は、金属換算の合計量に対して、8族金属が50モル%以下、中でも40モル%以下であることが好ましいとされている。この触媒は、予め還元雰囲気下で活性化した後、あるいは還元性ガスと共に炭素繊維原料ガスと接触させて使用するものである。しかしながら、上記特許文献4には、炭素繊維を生産するための具体的な製造装置の構成は何も示されていない。
【0023】
上記特許文献5に示されている発明では、触媒は、予熱区間、加熱区間、冷却区間と順次移送され、最初に予熱区間に導かれ、次に加熱区間で500〜1000℃の操作温度に加熱されて供給ガスが水素ガスとナノカーボンに分解されるようになっており、連続的に大量にナノカーボンを製造できると共に、水素ガスを消費者に供給できるようになされている。しかしながら、上記特許文献5に示されている発明で使用されている複合触媒は、使用前に還元性雰囲気に曝されて遷移金属成分のみが金属に還元されているため、上記特許文献1及び2に示されている発明と同様の課題が存在する。また、上記特許文献5に示されている複合触媒の形態はSiO2の場合には高価なTEOSにより生成したSiO2微粒子により触媒粒子を分離しているので製造コストが高くなる。さらに、合成したナノカーボンと複合触媒を分離するためフッ化水素などの危険な薬品を使用しなければならないという課題も存在する。
【0024】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、効率よく、大量・低コスト・高品質のナノカーボンを連続的に製造する方法、この連続的ナノカーボンの製造のための多孔質複合金属酸化物、及び、連続的なナノカーボンの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の上記目的は以下の構成により達成し得る。すなわち、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法は、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを連続的に供給し、触媒活性化ゾーンにおいて、炭化水素ガス又は別途供給される還元性ガスにより多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を得、ナノカーボン合成ゾーンにおいて炭化水素ガスと活性触媒体と接触させてナノカーボンを連続的に合成し、得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体を冷却ゾーンを経て反応管内より取り出すことを特徴とする。
【0026】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法では、活性化された触媒を得る前の材料として多孔質複合金属酸化物を用いている。この多孔質複合金属酸化物は、従来例の触媒のように担体の表面に触媒となる物質が担持されたものではなく、均質な化合物である。しかも、多孔質複合金属酸化物は化学的に安定な化合物であるため、製造後に保存しておいても劣化し難い。
【0027】
そして本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法では、この多孔質複合金属酸化物に対して、触媒活性化ゾーンにおいて、炭化水素ガス又は別途供給される還元性ガスによって多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を得て、ナノカーボン合成ゾーンにおいて炭化水素ガスと活性触媒体と接触させている。このような構成を採用すると、触媒活性化ゾーンにおいて得られた多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体は、触媒活性が良好な状態で直ちにナノカーボン合成ゾーンにおいて炭化水素ガスと接触するため、高効率でナノカーボンと活性触媒体との複合体を合成することができるようになる。なお、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法で得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体からは、従来例の場合と同様にして、容易にナノカーボンを分離することができる。
【0028】
しかも、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法では、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを連続的に供給して、ナノカーボンを生成させているから、ナノカーボン合成ゾーンにおいて非常に高純度の水素ガスを得ることができ、この水素ガスを有効利用することによって、低コスト化を達成することができる。加えて、触媒活性化ゾーンでは、ナノカーボン合成ゾーンよりも低温とすることができるので触媒活性化ゾーンでナノカーボンが副成し難く、しかも、ナノカーボン合成ゾーンで集中的にナノカーボンを生成させることができるので、高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0029】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記多孔質複合金属酸化物として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、から構成された多孔質複合金属酸化物であり、前記第2種の金属の酸化物の含有割合は前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲のものを使用することが好ましい。
【0030】
本発明で使用している多孔質複合金属酸化物中の第1種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによっては還元され難いが、第2種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによって容易に還元されて金属になり易く、しかも還元された第2種の金属はナノカーボン生成用触媒として周知のものである。そのため、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、第1種の金属の酸化物によって多孔性を維持しながら、還元された第2種の金属超微粒子が孤立存在する状態となるので、触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となる。
【0031】
この場合、前記多孔質複合金属酸化物として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の水溶性化合物と、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の水溶性化合物と、酒石酸、システイン、アルギニン、グリシン、アラニン、ロイシンから1つ以上の融点が200℃から300℃の有機化合物と、水と、を混合し、400℃〜700℃で空気中焼成して作製したものを用いることができる。
【0032】
本発明で使用している多孔質複合金属酸化物は、第1種の金属の水溶性化合物と、第2種の金属の水溶性化合物と、融点が200℃から300℃の有機化合物と、水とを混合して400℃〜700℃で空気中焼成して作製したものであるから、有機化合物は第1種の金属の水溶性化合物と第2種の金属の水溶性化合物を含んだ状態で燃焼してガス化して発泡化するため、容易に多孔性の複合金属酸化物を得ることができるようになる。なお、有機化合物の融点が200℃未満では発泡する前に蒸発してしまって良好な多孔性が得られず、また、融点が300℃を越えるものでは焼成後にカーボンが残るので好ましくない。さらに、焼成温度が400℃以下では有機化合物原料のカーボン成分が残り、700℃以上では酸化物の結晶粒の粗大化が発生する。さらに好ましくは500℃〜700℃である。
【0033】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記多孔質複合金属酸化物として、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものを用いることが好ましい。
【0034】
本発明で使用している多孔質複合金属酸化物として、上述の物性を備えているものを使用すると、取り扱いが容易であると共に、容易に高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。なお、10nm以下の粒径の多孔質複合金属酸化物を安定的に製造することは困難であり、また、200nm以上の粒径では大きいサイズのナノカーボンが合成されるために好ましくない。さらに好ましい多孔質複合金属酸化物の粒径は20nm〜80nmである。同様の理由により、BET比表面積は10〜50m2/gが好ましい。
【0035】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記炭化水素ガスがメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、イソプレン、n−ブタンから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0036】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、原料の炭化水素ガスとして幅広い材料を用いることができるため、設計の幅が広くなる。
【0037】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記炭化水素ガスは、前記冷却ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーンへ供給することが好ましい。また、前記炭化水素ガスと一緒に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを追加することが好ましい。
【0038】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、炭化水素ガスを冷却ゾーンからナノカーボン合成ゾーンへ供給するようにすると、冷却ゾーンで活性触媒及び生成したナノカーボンから熱を回収して炭化水素ガスを予熱することができるため熱効率が向上すると共に、ナノカーボン合成ゾーンでは活性触媒体と接触すると急速には反応が進行するので、副反応が生成し難く、高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。また、適正な温度に制御されたナノカーボン合成ゾーンで反応を終了するようにプロセスの管理を行うと冷却ゾーンではナノカーボンが合成されず、触媒活性化ゾーンでは高純度の水素の雰囲気となって多孔質複合金属酸化物から触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となる。さらに、炭化水素ガスと一緒に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを追加することによって、アモルファス状態のカーボンの形成の抑制に働き、かつ触媒活性の長寿命化の効果がある。
【0039】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記触媒活性化ゾーン及びナノカーボン合成ゾーンを500〜1000℃に加熱し、前記反応管内の圧力が0.1〜10kPa範囲となるようにすることが好ましい。
【0040】
触媒活性化ゾーンの温度範囲は多孔質複合金属酸化物の一部が金属化される温度以上ナノカーボン合成ゾーンの温度以下が好ましい。ナノカーボン合成ゾーンの温度は炭化水素が熱分解する温度以上で触媒上で優先的にナノカーボンが合成される最高温度以下である。反応管内の圧力を上述のように限定すると、より副反応が生成し難く、高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0041】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記別途供給される還元性ガスを、水素ガス、アンモニアガスもしくは前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて生成される水素ガスとすることが好ましい。
【0042】
触媒活性化ゾーンに供給される還元性ガスを水素ガス、アンモニアガスもしくは前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて生成される水素ガスとすると、触媒活性化ゾーンでは多孔質複合金属酸化物から触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となるので、より高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0043】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンのガス成分を分析し、前記炭化水素ガスの流量を制御することによって前記触媒活性化ゾーンでの水素ガス濃度を80%以上にすることが好ましい。
【0044】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法において、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンのガス成分を分析することによって、適正な炭化水素ガスの流量を制御することによってナノカーボン合成ゾーンで反応を終了するようにプロセスの管理を行うと冷却ゾーンではナノカーボンが合成されず、触媒活性化ゾーンでは高純度の水素の雰囲気となって多孔質複合金属酸化物から触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒となる。触媒活性化ゾーンでは炭化水素濃度が低く水素濃度が高いほど副成するナノカーボン量が減少するので、より高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。なお、ガス成分の分析は炭化水素ガスと水素ガスと水蒸気に対して行うことが好ましい。
【0045】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体の嵩密度を0.05〜0.5g/cm3となるようにすることが好ましい。
【0046】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、多孔質複合金属酸化物の嵩密度や合成時における撹拌条件に依存するが、0.05g/cm3以下では合成中に飛散して収率が悪く、0.5g/cm3以上では合成の均一性に欠ける。得られるナノカーボンと活性触媒体との複合体の嵩密度を上述の数値範囲内とすることにより、より高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができるようになる。
【0047】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記反応管をスクリューコンベア、ロータリーキルン又は管状体内に配置されたベルトコンベアからなるものとし、前記多孔質複合金属酸化物を前記触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンの順に移動させながら連続的に前記ナノカーボンと活性触媒体との複合体を製造することが好ましい。
【0048】
スクリューコンベア、ロータリーキルン又は管状体内に配置されたベルトコンベアを用いれば、多孔質複合金属酸化物を順次触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンの順に撹拌移動させながら所定の反応ガスと接触させることができるので、連続的に前記ナノカーボンと活性触媒体との複合体を製造することができるようになる。
【0049】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記ナノカーボンは、カーボンブラック、ナノファイバー、多層ナノチューブ、カップスタックチューブとすることができる。
【0050】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法においては、前記ナノカーボン合成ゾーンにおいてにて生成される水素ガスを燃料電池、タービン、エンジンから選択される少なくとも一つに供給して発電に使用することが好ましい。
【0051】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法によれば、ナノカーボン合成ゾーンにおいて非常に高純度の水素ガスを得ることができ、この水素ガスを発電に使用することによって、よりナノカーボンと活性触媒体との複合体の製造に際して低コスト化を達成することができるようになる。
【0052】
さらに、本発明の多孔質複合金属酸化物は、上記いずれかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法に使用するための多孔質複合金属酸化物であって、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、から構成された多孔質複合金属酸化物であり、前記第2種の金属の酸化物の含有割合は、前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲であることを特徴とする。
【0053】
本発明の多孔質複合金属酸化物中の第1種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによっては還元され難いが、第2種の金属の酸化物は炭化水素ガスや還元性ガスによって容易に還元されて金属になり易く、しかも還元された第2種の金属はナノカーボン生成用触媒として周知のものである。そのため、本発明の多孔質複合金属酸化物によれば、第1種の金属の酸化物によって多孔性を維持しながら、その表面に還元された第2種の金属が存在する状態となるので、触媒活性が良好なナノカーボン製造用触媒を得ることができる。
【0054】
本発明の本発明の多孔質複合金属酸化物においては、前記多孔質複合金属酸化物は、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものであることが好ましい。
【0055】
本発明の多孔質複合金属酸化物として、上述の物性を備えているものを使用すると、取り扱いが容易であると共に、容易に高品質のナノカーボンと活性触媒体との複合体を連続的に製造することができる多孔質複合金属酸化物となる。
【0056】
さらに、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置は、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンのそれぞれについて個別に温度制御し得る炉と、前記炉内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンに亘って設置された反応管と、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンへ連続的に多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段と、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンを経て前記反応管の外部まで前記多孔質複合金属酸化物粒子を移送する手段と、前記反応管内の前記冷却ゾーン側に配置された炭化水素ガス又は炭化水素ガスと還元性ガスとの混合ガスを供給する手段と、前記触媒活性化ゾーンの前記多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段側に配置されたガスの回収手段と、を備えることを特徴とする。
【0057】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、さらに、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンの前記ナノカーボン合成ゾーン側に還元性ガスを供給する手段が形成されていることが好ましい。
【0058】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、前記反応管はスクリューコンベア又はロータリーキルンであることが好ましい。
【0059】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、前記反応管の内部にはベルトコンベアが配置されているものとすることもできる。
【0060】
また、本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置においては、前記ガスの回収手段は、燃料電池、発電機が接続されたタービン及び発電機が接続されたエンジンから選択される少なくとも一つに接続されているものとしてもよい。
【0061】
本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置によれば、容易に上記本発明の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法を実施することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1〜19及び比較例1〜12で使用したナノカーボン製造装置の概略図である。
【図2】図1の反応管内の温度変化を表したグラフである。
【図3】実施例20で使用したスクリューコンベア方式のナノカーボン製造装置の概略図である。
【図4】実施例20で得られた多孔質複合金属酸化物のFE−SEMにより観察された画像である。
【図5】実施例21で使用したロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式のナノカーボン製造装置の概略図である。
【図6】実施例21で得られた多孔質複合金属酸化物のFE−SEMにより観察された画像である。
【図7】実施例21で得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体のFE−SEMにより観察された画像である。
【図8】図7の倍率を変えた画像である。
【図9】実施例21で分離されたカップスタックナノカーボンの透過型電子顕微鏡により観察された画像である。
【図10】実施例22で使用したベルトコンベア方式のナノカーボン製造装置の概略図である。
【図11】実施例23のナノカーボン製造装置のブロック図である。
【図12】従来のカーボンナノチューブを製造する装置の概略図である。
【図13】別の従来のカーボンナノチューブを製造する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、各種実施例及び比較例を用いて本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法、多孔質複合金属酸化物及び触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0064】
[実施例1〜19及び比較例1〜12]
[多孔質複合金属酸化物の製造]
第1種の金属の水溶性化合物として硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、第2種の金属の水溶性化合物として硝酸ニッケル、硝酸第二鉄、硝酸コバルト、モリブデン酸アンモニウムを用い、これらの化合物の混合割合を実施例1〜19及び比較例1〜12に対応して種々変更し、また、有機化合物として25質量%のL−アラニンと19質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合で混合し、マグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、700℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を得た。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体を実施例1〜19及び比較例1〜12に対応するナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物にした。得られた多孔質複合金属酸化物の組成を表1に纏めて示した。
【0065】
[ナノカーボンの製造]
まず、図1に示したナノカーボンの製造装置を用いて、実施例1〜19及び比較例1〜12のそれぞれに対応する多孔質複合金属酸化物のナノカーボンの生成効率を確認した。このナノカーボンの製造装置10は、電気炉11内に反応管12としてのφ40mmの石英ガラスチューブが配置されており、この反応管12内にφ35mmのステンレス製の回転ドラム容器13が配置されている。電気炉11はプログラム温度制御装置14によって所定の温度に制御され、また、回転ドラム容器13aはモーター13bによって所定の回転速度で回転させられるようになっている。
【0066】
ここでは、ステンレス製の回転ドラム容器13a内に実施例1〜19及び比較例1〜12のそれぞれに対応する組成の多孔質複合金属酸化物の粉体16を0.2g挿入し、モーター13bにより回転ドラム容器13aを2rpmの回転速度で回転させ、多孔質複合金属酸化物の粉体16を撹拌した。そして、触媒活性化ゾーンとナノカーボン合成ゾーンと冷却ゾーンの温度履歴を再現するため、プログラム温度制御装置14によって、図2に示すように、反応管12内の温度を時間的に変化させ、触媒活性化ゾーンに対応する時間帯では200℃〜700℃まで30分かけて昇温し、ナノカーボン合成ゾーンに対応する時間帯では700℃±10℃の温度範囲で30分間維持し、冷却ゾーンに対応する時間帯では700℃〜300℃まで10分かけて降温した。
【0067】
そして、触媒活性化ゾーンに対応する時間帯では、還元性のガス(窒素−5%水素)18を加湿器19を通して流し、多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を生成した。次いで、700℃±10℃に到達したら、還元性のガス18に換えて炭化水素ガス17であるプロパンガスを流した。なお、還元性のガス18及び炭化水素ガス17は反応管12内の圧力を圧力計15で測定しながら、圧力が約1kPaとなるように流量を調節した。このとき、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に水素ガスが生成される。30分間ナノカーボンを合成した後、冷却ゾーンに対応する時間帯では炭化水素ガスから窒素−5%水素混合ガスに切り替えた。
【0068】
そして、回転ドラム容器13aの温度が200℃以下になったら、回転ドラム容器13a内の試料を大気中に取出し、実施例1〜19及び比較例1〜12に対応するそれぞれの活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体の合計質量を測定した。このようにして測定された「(ナノカーボン複合体の質量)/(複合金属酸化物の質量)」を多孔質複合金属酸化物の組成と共に表1にまとめて示した。なお、表1の「(ナノカーボン複合体の質量)/(複合金属酸化物の質量)」は、(ナノカーボン複合体の質量)=(活性触媒体の質量+ナノカーボンの質量)であるので、実質的にナノカーボンの合成レート(収量)に対応する数値を表している。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示した結果から、以下のことが分かる。すなわち、比較例1〜4及び実施例1〜5、比較例5〜8及び実施例6〜10、比較例9〜12及び実施例11〜15のいずれの場合においても、第2種の金属の酸化物の含有割合が増加するにしたがってナノカーボンの収量は増加しており、特に第2種の金属の酸化物の含有割合が50質量%以上の場合には、第2種の金属の酸化物の含有割合が40質量%以下の場合よりも大幅にナノカーボンの収率が増加している。ただし、第2種の金属の酸化物の含有割合が80質量%を越えると僅かにナノカーボンの収量は減少している。そして、このような傾向は、第2種の金属がニッケルの場合であっても鉄の場合であっても、さらには第1種の金属がマグネシウムの場合であってもカルシウムの場合であっても、同様の傾向を示している。
【0071】
また、第2種の金属がニッケル及び鉄である実施例16の複合金属酸化物、同じくニッケル及びコバルトである実施例17の複合金属酸化物、同じくニッケル及びモリブデンである実施例18の複合金属酸化物、更には、第2種の金属がニッケルであり、第1種の金属が酸化ストロンチウム(SrO)である実施例19の複合金属酸化物も、第2種の金属の含有割合が60質量%以上であることから、ナノカーボンの収量は15以上と大きくなっている。
【0072】
このうち、第1種の金属の酸化物である酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化ストロンチウム(SrO)は、700℃では水素ガス等の還元性ガスによっては還元されないことから、酸化物のままで存在していることは明らかである。また、第2種の金属の酸化物である酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)、酸化コバルト(CoO)及び三酸化モリブデン(MoO3)は700℃では水素ガス等の還元性ガスによって容易に還元されてそれぞれ対応する金属として存在していることは明らかである。
【0073】
したがって、周知のナノカーボン製造用触媒の組成をも考慮すると、第1種の金属としては、ナノカーボン製造用触媒の担体として慣用的に使用されているマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つを使用することができ、また、第2種の金属としては、ナノカーボン製造用金属触媒として慣用的に使用されているマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つを使用することができることが分かる。なお、第1種の金属及び第2種の金属とも、多孔質複合金属酸化物の製造を容易にするためにはそれぞれ水溶性塩であればよい。
【0074】
例えば、第1種の金属の水溶性塩としては、例えば、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム等を使用することができる。また、第2種の金属の水溶性塩としては、塩化マンガン、硝酸第二鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸銅、7モリブデン酸6アンモニウム、タングステン酸アンモニウム等を使用し得る。
【0075】
また、ここでは有機化合物としてL−アラニンを用いた例を示したが、この有機化合物は焼成の際に消失して複合金属酸化物の多孔性化に寄与する物質であるので、類似の物性の有機化合物、例えば酒石酸、システイン、アルギニン、グリシン、アラニン、ロイシンから選択される1つ以上であり、融点が200℃から300℃のものを使用し得る。有機化合物の融点が200℃未満では良好な多孔性を有する複合金属酸化物が得られず、また、融点が300℃を越えるものでは焼成後に複合金属酸化物中にカーボンが残留するので好ましくない。
【0076】
また、炭化水素ガスとしては、ここではプロパンを使用した例を示したが、プロパンだけでなく、ナノカーボン製造用原料をして普通に使用されているメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、イソプレン、n−ブタン等を使用することができる。プロパン以外の炭化水素ガスを使用する場合には、それぞれの炭化水素の熱分解温度に合わせて、触媒活性化ゾーン及びナノカーボン合成ゾーンの温度を500〜1000℃内において適宜に選択し、また、炭化水素ガスが活性触媒体周辺でナノカーボンと水素ガスとに転換される反応をスムースに進行させるため、反応管内の圧力を0.1〜10kPa範囲に制御すればよい。
【0077】
なお、多孔質複合金属酸化物は、400℃から700℃で空気中焼成することにより作製することが好ましい。焼成温度が400℃以下では複合金属酸化物中に原料のカーボン成分が残り、700℃以上では複合金属酸化物の結晶粒の粗大化が発生する。さらに好ましい焼成温度は500℃〜700℃である。また、多孔質複合金属酸化物は、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gであることが好ましい。10nm以下の粒径を有する多孔質複合金属酸化物を安定的に製造することは困難であり、また200nm以上の粒径を有する多孔質複合金属酸化物では大きいサイズのナノカーボンが合成される。さらに好ましい多孔質複合金属酸化物の粒径は20nm〜80nmである。同様の理由により、BET比表面積は10〜50m2/gであることがさらに好ましい。
【0078】
なお、ナノカーボンの大量合成を考えると、合成レート(ナノカーボン複合体/複合金属酸化物)は5以上が好ましい。上述の従来技術に開示されている方法では、触媒金属と触媒担持体から構成される触媒粒子全体に対して触媒金属の割合は40%以下が好ましいとされている。それに対して、表1に示したように、本発明によれば、複合金属酸化物に対して50〜95質量%の第2種の金属の酸化物の含有範囲において、合成レート(ナノカーボン複合体/複合金属酸化物)の5以上が達成されている。
【0079】
なお、上述のようにナノカーボンの大量合成を実現することができた理由は、次のとおりであると推定される。
(1)用いた触媒が第1種の金属の水溶性化合物、第2種の金属の水溶性化合物、有機化合物及び水の混合物を空気中焼成することにより作製した多孔質複合金属酸化物であること。
(2)触媒活性化ゾーンにおいて、多孔質複合金属酸化物の内、第2種の金属の酸化物が還元されて金属化することによって、触媒金属超微粒子が生成した活性触媒体が生成されること。
(3)生成した活性触媒体がナノカーボン合成ゾーンに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスと接触することにより、触媒金属超微粒子を先頭にしてナノカーボンが活性触媒体周辺に成長すること。
このように、触媒金属超微粒子を先頭にしてナノカーボンが活性触媒体周辺に成長することにより、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3のナノカーボンと活性触媒体の複合体が製造される。これによって、ナノカーボンが合成中に飛散することがなく、安全衛生を確保した状態で、ナノカーボンの大量製造が可能となった。
【0080】
[実施例20]
実施例20としては、触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置として、スクリューコンベア方式を採用した。この実施例20で使用したスクリューコンベア方式のナノカーボン製造装置を図3に示した。このスクリューコンベア方式のナノカーボン製造装置20は、電気炉21内にスクリューコンベア22が配置されている。スクリューコンベア22はモーター23によって所定の一定速度で回転されている。電気炉21は、スクリューコンベア22の長さ方向に亘って、それぞれ触媒活性化ゾーン21a、ナノカーボン合成ゾーン21b及び冷却ゾーン21cごとに個別に所定の温度となるように、温度制御装置24によって制御されている。
【0081】
また、スクリューコンベア22の入口端22aには、多孔質複合金属酸化物からなる触媒の供給用ホッパー25が配置されており、出口端22bにはナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出ホッパー26が配置されている。そして、スクリューコンベア22の出口端22bには、炭化水素ガスの供給配管27a、還元性ガスの供給配管27b及び水蒸気もしくは加湿還元性ガスの供給配管27dが接続され、同じく入口端22aに接続された触媒の供給用ホッパー25には排ガス配管27cが接続されこの排ガス配管27cは、水素回収システム28aを経て、水素ガスを燃料とする周知の燃料電池システム28bに接続されている。なお、ここでは各種バルブの図示は省略されている(以下、他の実施例においても同じ)。さらに、スクリューコンベア22内の温度、ガス濃度及び圧力を測定するために、適宜各種センシング手段29が設けられている。なお、通常、温度及びガス濃度は触媒活性化ゾーン21a、ナノカーボン合成ゾーン21b及び冷却ゾーン21cにおいて測定され、圧力は冷却ゾーン21cにおいて測定される。
【0082】
[多孔質複合金属酸化物の製造]
実施例20では、触媒として用いる多孔質複合金属酸化物を次のようにして作製した。まず、第1種の金属の水溶性化合物として6質量%のカルシウム硝酸塩と、第2種の金属の水溶性化合物として44質量%の鉄硝酸塩と、有機化合物として25質量%のアラニンと、19質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合で混合し、マグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、空気雰囲気中で750℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を得た。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体をナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物として用いた。このようにして作製された実施例20で使用した多孔質複合金属酸化物の電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察された画像を図4に示す。
【0083】
[製造準備処理工程]
実施例20のナノカーボン製造装置20において、温度制御装置24により、電気炉21のナノカーボン合成ゾーン21bの温度が750℃±5℃になるように温度制御した。この時、スクリューコンベア22の内部を不活性ガスの窒素ガスで1%以下の酸素濃度なるまで置換した。
【0084】
[多孔質複合金属酸化物の供給]
上述のようにして作製された多孔質複合金属酸化物の粉体を、触媒の供給用ホッパー25からスクリューコンベア22の入口端22aに50g/hrの定量・定速度で供給した。この時、還元性ガスの供給配管27bより還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスをスクリューコンベア22の出口端22bからスクリューコンベア22に供給した。これにより、少なくとも触媒活性化ゾーン21aで多孔質複合金属酸化物であるFeO−CaO多孔体のFeOの一部が金属化した活性触媒体が生成される。
【0085】
[ナノカーボンの合成]
次いで、多孔質複合金属酸化物の粉体がスクリューコンベア22の出口端22b付近に来たことを確認して、還元性ガスの供給配管27bより流していた還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスを炭化水素ガスの供給配管27aに切り替えて炭化水素ガスであるメタンガスを流した。また、メタンガスが活性触媒体周辺で反応がスムースに進行させるようにするため、スクリューコンベア22内の圧力は0.1〜10kPaの範囲に設定した。このとき、水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管27dからメタンガス中に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを添加してもよい。
【0086】
これにより、触媒活性化ゾーン21aで生成した活性触媒体は、スクリューコンベア22により、運動しながらナノカーボン合成ゾーン21bに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスであるメタンガスと接触することにより、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に水素ガスが生成される。ナノカーボンと活性触媒体の複合体のナノカーボン合成ゾーン21bでの滞留時間は30分に設定されている。
【0087】
このナノカーボン合成中に、触媒活性化ゾーン21a、ナノカーボン合成ゾーン21b及び冷却ゾーン21cのメタン、水素及び水蒸気の濃度を分析し、炭化水素ガスとしてのメタンガスの流量を制御することにより、触媒活性化ゾーン21aでの水素ガス濃度が80%以上となるように制御した。これによって、触媒活性化ゾーン21aでは、ナノカーボン合成時に生成される水素ガスにより多孔質複合金属酸化物であるFeO−CaO多孔体のFeOの一部が金属化した活性触媒体が連続的に生成される。
【0088】
[ナノカーボンおよび水素ガスの排出]
活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体は、スクリューコンベア22により、運動しながら冷却ゾーン21cを経由して排出ホッパー26に蓄積される。一方、生成した水素ガスや水蒸気は水素回収システム28aに導かれ、ここで水素が分離されて、さらに燃料電池システム28bにて有効利用される。
【0089】
この実施例20により作製されたナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出速度は600g/hrであった。合成したナノカーボンを透過電子顕微鏡で構造観察した結果、多層平行型のナノチューブであった。
【0090】
[実施例21]
実施例21としては、触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置として、ロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式を採用した。この実施例21で使用したナノカーボン製造装置を図5を用いて説明する。このロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式を採用したナノカーボン製造装置30は、電気炉31内にロータリーキルン32が配置されている。ロータリーキルン32は図示省略したモーターによって所定の一定速度で回転されている。電気炉31は、ロータリーキルン32の長さ方向に亘って、それぞれ触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cごとに個別に所定の温度となるように、温度制御装置34によって制御されている。
【0091】
ロータリーキルン32の入口端32aには、粉塵回収ホッパー32cが設けられており、出口端32bにはナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出ホッパー36が配置されている。また、ロータリーキルン32の入口端32aから触媒活性化ゾーン31aに亘って、スクリューコンベア33が配置されている。このスクリューコンベア33の入口端33aには、多孔質複合金属酸化物からなる触媒の供給用ホッパー35が配置されており、出口端33bはロータリーキルン32内に開放されている。
【0092】
そして、ロータリーキルン32の出口端32bには、炭化水素ガスの供給配管37a及び不活性ガスの供給配管37b(なお、ここでは炭化水素ガスの供給配管37aに不活性ガス供給配管37bが接続されているものを示した。)及び水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管37fが接続され、同じく入口端32aに接続された粉塵回収ホッパー32cには排ガス配管37cが接続されている。また、スクリューコンベア33の出口端33bには還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dが接続され、入口端33aに配置された触媒の供給用ホッパー35には排ガス配管37eが接続されている。そして、これらの排ガス配管37c及び37eは、共に水素回収システム38aを経て、水素ガスを燃料とする周知の燃料電池システム38bに接続されている。さらに、ロータリーキルン32内の温度、ガス濃度及び圧力を測定するために、適宜各種センシング手段39が設けられている。
【0093】
なお、ロータリーキルン32の直径は150mmであり、触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cのそれぞれの長さは250mm、200mm、250mmであり、ロータリーキルン32中のナノカーボンと活性触媒体の複合体の占める保有率を10%、合成量0.2kg/hrとなるようにロータリーキルン32及びスクリューコンベア33の運転条件を選定した。
【0094】
[多孔質複合金属酸化物の製造]
実施例21では、触媒として用いる多孔質複合金属酸化物を次のようにして作製した。まず、第1種の金属の水溶性化合物として8質量%のマグネシウム硝酸塩と、第2種の金属の水溶性化合物として42質量%のニッケル硝酸塩と、有機化合物として55質量%のグリシンと、19質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合で混合し、マグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、空気雰囲気中で670℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を得た。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体を実施例21のナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物として用いた。このようにして得られた多孔質複合金属酸化物のFE−SEMにより観察された画像を図6に示した。
【0095】
[製造準備処理工程]
実施例21のナノカーボン製造装置30において、温度制御装置34により、電気炉31のナノカーボン合成ゾーン31bの温度が670℃±5℃になるように温度制御した。この時、ロータリーキルン32の内部及びスクリューコンベア33の内部を、不活性ガスの供給配管37b及び還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dから不活性ガスの窒素ガスを供給することにより、1%以下の酸素濃度なるまで置換した。
【0096】
[多孔質複合金属酸化物の供給]
上述のようにして作製された多孔質複合金属酸化物の粉体を、触媒の供給用ホッパー35からスクリューコンベア33の入口端33aに12g/hrの定量・定速度で供給した。この時、還元性ガスの供給配管37bより還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスを還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dを経てスクリューコンベア33の出口端33bからスクリューコンベア33に供給した。これにより、少なくとも触媒活性化ゾーン31aで多孔質複合金属酸化物であるNiO−MgO多孔体のNiOの一部が金属化した活性触媒体が生成される。
【0097】
[ナノカーボンの合成]
次いで、多孔質複合金属酸化物の粉体がスクリューコンベア33の出口端33b付近に来たことを確認して、不活性ガスの供給配管37bから供給されていた不活性ガスに換えて炭化水素ガスの供給配管37aから炭化水素ガスであるブタンガスを110L/hrの割合で活性触媒体の供給方向に対向するように流した。また、ブタンガスの活性触媒体周辺で反応がスムースに進行させるようにするため、ロータリーキルン32内の圧力は0.1〜10kPaの範囲に設定した。このとき、水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管37fからブタンガス中に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを添加してもよい。
【0098】
これにより、触媒活性化ゾーン31aで生成した活性触媒体は、ロータリーキルン32により、運動しながらナノカーボン合成ゾーン31bに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスであるブタンガスと接触することにより、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に540L/hrの割合で水素ガスが生成される。ナノカーボンと活性触媒体の複合体のナノカーボン合成ゾーン31bでの滞留時間は30分に設定されている。
【0099】
このナノカーボン合成中に、触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cのメタン、水素及び水蒸気の濃度を分析し、炭化水素ガスとしてのメタンガスの流量を制御することにより、触媒活性化ゾーン31aでの水素ガス濃度が80%以上となるように制御した。これによって、触媒活性化ゾーン31aでは、ナノカーボン合成時に生成される水素ガスにより多孔質複合金属酸化物であるFeO−CaO多孔体のFeOの一部が金属化した活性触媒体が連続的に生成される。
【0100】
[ナノカーボンおよび水素ガスの排出]
活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体は、ロータリーキルン32により、運動しながら冷却ゾーン31cを経由して排出ホッパー36に蓄積される。一方、生成した水素ガスや水蒸気は水素回収システム38aに導かれ、ここで水素が分離されて、さらに燃料電池システム38bにて有効利用される。このようにして得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体の倍率を変えたFE−SEMにより観察された画像を図7及び図8に示した。
【0101】
この実施例21により作製されたナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出速度は0.25kg/hrであった。1日24時間、15日の連続運転をした結果、89kgの複合体が得られた。合成したナノカーボンを透過電子顕微鏡で構造観察した結果、図9に示すように、カップスタック型のナノチューブであった。
【0102】
[実施例22]
実施例22としては、触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置として、ベルトコンベア方式を採用した。この実施例22で使用したナノカーボン製造装置を図10を用いて説明する。このベルトコンベア方式を採用したナノカーボン製造装置40は、電気炉41内に配置された反応管42内にベルトコンベア43が配置されている。ベルトコンベア43は図示省略したモーターによって所定の一定速度で駆動されている。電気炉41は、反応管42の長さ方向に亘って、それぞれ触媒活性化ゾーン41a、ナノカーボン合成ゾーン41b及び冷却ゾーン41cごとに個別に所定の温度となるように、温度制御装置44によって制御されている。
【0103】
反応管42の入口端42a側のベルトコンベア43上には触媒供給用ホッパー45が設けられており、出口端42b側には、ブラシ43aとともに、ナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出ホッパー46が配置されている。そして、ベルトコンベア43の出口端42bには、炭化水素ガスの供給配管47a、還元性ガス又は不活性ガスの供給配管47b及び水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管47dが接続され、同じく入口端42aに接続された触媒供給用ホッパー45には排ガス配管47cが接続されている。そして、これらの排ガス配管47cは、水素回収システム48aを経て、水素ガスを燃料とする周知の燃料電池システム48bに接続されている。さらに、ベルトコンベア43内の温度、ガス濃度及び圧力を測定するために、適宜各種センシング手段59が設けられている。
【0104】
[多孔質複合金属酸化物の製造]
第1種の金属の水溶性化合物として6質量%のマグネシウム硝酸塩と、第2種の金属の水溶性化合物として48質量%のコバルト硝酸塩と、有機化合物として25質量%のロイシンと、15質量%のイオン交換水の組成物100gとなる割合でマグネットスターラーで撹拌した。この組成物をステンレス製容器に移し、750℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を作製した。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体をナノカーボン製造用の多孔質複合金属酸化物にした。
【0105】
[製造準備処理工程]
そして、温度制御装置44により、電気炉41のナノカーボン合成ゾーン41bの温度が750℃±5℃になるように温度制御した。この時、反応管42の内部を、還元性ガス又は不活性ガスの供給配管47bから不活性ガスの窒素ガスを供給することにより、1%以下の酸素濃度なるまで置換した。
【0106】
[多孔質複合金属酸化物の供給]
上述の多孔質複合金属酸化物の粉体を、触媒の供給用ホッパー45から反応管42の入口端42a側のベルトコンベア43上に50g/hrの定量・定速度で供給した。この時、還元性ガス又は不活性ガスの供給配管47bより還元性ガスである窒素−5%水素混合ガスを供給した。これにより、少なくとも触媒活性化ゾーン41aで多孔質複合金属酸化物であるCoO−MgO多孔体のCoOの一部が金属化した活性触媒体が生成される。
【0107】
[ナノカーボンの合成]
次いで、多孔質複合金属酸化物の粉体が反応管42の出口端42b側付近に来たことを確認して、不活性ガスの供給配管47bから供給されていた不活性ガスに換えて炭化水素ガスの供給配管47aから炭化水素ガスであるメタンガスを活性触媒体の供給方向に対向するように流した。また、メタンガスの活性触媒体周辺で反応がスムースに進行させるようにするため、反応管42内の圧力は0.1〜10kPaの範囲に設定した。このとき、水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給配管47dからメタンガス中に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを添加してもよい。
【0108】
これにより、触媒活性化ゾーン41aで生成した活性触媒体は、ベルトコンベア43により、運動しながらナノカーボン合成ゾーン41bに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスであるメタンガスと接触することにより、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に水素ガスが生成される。ナノカーボンと活性触媒体の複合体のナノカーボン合成ゾーン41bでの滞留時間は30分に設定されている。
【0109】
このナノカーボン合成中に、触媒活性化ゾーン41a、ナノカーボン合成ゾーン41b及び冷却ゾーン41cのメタン、水素及び水蒸気の濃度を分析し、炭化水素ガスとしてのメタンガスの流量を制御することにより、触媒活性化ゾーン41aでの水素ガス濃度が80%以上となるように制御した。これによって、触媒活性化ゾーン41aでは、ナノカーボン合成時に生成される水素ガスにより多孔質複合金属酸化物であるCoO−MgO多孔体のCoOの一部が金属化した活性触媒体が連続的に生成される。
【0110】
[ナノカーボンおよび水素ガスの排出]
活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体は、ベルトコンベア43により、運動しながら冷却ゾーン41cを経由して反応管42の出口端42b側まで移動し、ブラシ43aでベルトコンベア43から掻き落とされて、排出ホッパー46に蓄積される。一方、生成した水素ガスや水蒸気は水素回収システム48aに導かれ、ここで水素が分離されて、さらに燃料電池システム48bにて有効利用される。
【0111】
この実施例22により作製されたナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出速度は600g/hrであった。合成したナノカーボンを透過電子顕微鏡で構造観察した結果、多層並行型のナノチューブであった。
【0112】
[実施例23]
実施例20〜22に示した触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置20、30及び40では、生成した水素ガスを燃料電池で使用して電力として回収することによりエネルギーを回収し、低コストにナノカーボンを製造できるようにした例を示した。しかしながら、ナノカーボンを大量生産するには、多量の水素ガスだけでなく、多量の未反応の炭化水素及び廃熱が回収される。そこで、実施例23では、図11を用いて、このような生成した水素ガス、未反応の炭化水素及び廃熱をも利用することによりさらに低コストにナノカーボンを製造できるようにした触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置50について説明する。
【0113】
実施例23の触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置50は、ナノカーボン生成部51と、生成した水素ガス、未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70とを備えている。ナノカーボン生成部51は、ナノカーボンを合成する反応路52、多孔質複合金属酸化物を合成及び供給するための多孔質複合金属酸化物システム53、還元性ガス及び水蒸気もしくは加湿還元性ガス供給システム54、不活性ガス及び炭化水素ガス供給システム55、生成したナノカーボンと活性触媒体との複合体を回収するためのナノカーボン回収システム56、ナノカーボンと活性触媒体との複合体からナノカーボンを分離するナノカーボンの高品質化システム57、分離されたナノカーボンを貯蔵するためのナノカーボン貯蔵システム58及び反応路52内の温度、ガス濃度及び圧力を検知するための各種センシング手段59及びこれらの各手段の動作を制御するための制御システム60とを備えている。なお、ナノカーボン生成部51の各構成は、実施例20〜22に示した触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置20、30及び40の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0114】
また、ナノカーボン生成部51は、さらに、水素ガス・副成ガス等を切り替えて利用部70に送りための水素ガス・副成ガス切換部61を備えている。この水素ガス・副成ガス切換部61から未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70に供給された高濃度の水素を含むガスは、例えばPSA等の水素ガス回収システム62aを経ることによって水素ガスが分離され、バグフィルター等のフィルターシステム62bによって固形分が除去され、その一部が例えばパラジウム等を利用した水素精製システム62cによって高純度化水素化され、残りの一部はそのままマイクロガスタービンシステム63に供給され発電に供給され、得られた電力は電力変換システム63aによって交流電力63b化されて各種の装置の電力として使用される。
【0115】
また、高純度化水素化された水素ガスは燃料電池システム64の燃料極に供給され、この燃料電池システム64で発生された電力は電力変換システム64aによって交流電力64b化されて各種の装置の電力として使用され、また、燃料電池システム64で発生した熱は、廃熱回収システム64cによって水と熱交換することによって回収され、廃熱回収システム64cにより得られた温水ないし水蒸気はは貯湯槽64dに貯蔵されて、温水ないし水蒸気64eの形で各種用途に使用される。なお、燃料電池システム64には空気極に酸素を供給するための空気供給システム64fも設けられている。
【0116】
また、水素ガス・副成ガス切換部61から供給された未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70に供給された炭化水素ガスを含む成分は、排ガス回収システム65で炭化水素ガスが濃縮された後、排ガス燃焼システム65aで燃焼され、この時発生した熱が、ナノカーボン生成部51に供給されて、例えば多孔質複合金属酸化物焼成用の予備加熱システム66等として使用される。なお、制御システム60は未反応の炭化水素及び廃熱等の利用部70の各種手段の制御にも使用される。このようにして、実施例23の触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置50によれば、生成した水素ガス、未反応の炭化水素及び廃熱をも利用することによりさらに低コストにナノカーボンを製造できるようになる。
【符号の説明】
【0117】
10、20、30、40…ナノカーボンの製造装置 11…電気炉 12…反応管 13a…回転ドラム容器 13b…モーター 14…プログラム温度制御装置 15…圧力計 16…多孔質複合金属酸化物の粉体 21、31、41…電気炉 21a,31a、41a…触媒活性化ゾーン 21b、31b、41b…ナノカーボン合成ゾーン 21c、31c、41c…冷却ゾーン 24、34、44…温度制御装置 29、39、49…各種センシング手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法において、
触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを連続的に供給し、前記触媒活性化ゾーンにおいて、前記炭化水素ガス又は別途供給される還元性ガスにより前記多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を得、前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて前記炭化水素ガスと前記活性触媒体と接触させてナノカーボンを連続的に合成し、得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体を前記冷却ゾーンを経て前記反応管内より取り出すことを特徴とする触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項2】
前記多孔質複合金属酸化物として、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、
マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、
から構成された多孔質複合金属酸化物であり、
前記第2種の金属の酸化物の含有割合は前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲のものを使用したことを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項3】
前記多孔質複合金属酸化物として、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の水溶性化合物と、
マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の水溶性化合物と、
酒石酸、システイン、アルギニン、グリシン、アラニン、ロイシンから1つ以上の融点が200℃から300℃の有機化合物と、
水と、
を混合し、400℃〜700℃で空気中焼成して作製したものを用いることを特徴とする請求項2に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項4】
前記多孔質複合金属酸化物として、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものを用いたことを請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項5】
前記炭化水素ガスがメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、イソプレン、n−ブタンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項6】
前記炭化水素ガスは、前記冷却ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーンへ供給すること、及び、前記炭化水素ガスと一緒に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを追加することを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項7】
前記触媒活性化ゾーン及びナノカーボン合成ゾーンを500〜1000℃に加熱し、前記反応管内の圧力が0.1〜10kPa範囲となるようにすることを特徴とする求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項8】
前記別途供給される還元性ガスを、水素ガス、アンモニアガスもしくは前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて生成される水素ガスとしたこと特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項9】
前記反応管内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンのガス成分を分析し、前記炭化水素ガスの流量を制御することによって前記触媒活性化ゾーンでの水素ガス濃度を80%以上にすることを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項10】
前記得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体の嵩密度を0.05〜0.5g/cm3となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項11】
前記反応管をスクリューコンベア、ロータリーキルン又は管状体内に配置されたベルトコンベアからなるものとし、前記多孔質複合金属酸化物を前記触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンの順に移動させながら連続的に前記ナノカーボンと活性触媒体との複合体を製造することを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項12】
前記ナノカーボンは、カーボンブラック、ナノファイバー、多層ナノチューブ、カップスタックチューブであることを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項13】
前記ナノカーボン合成ゾーンにおいてにて生成される水素ガスを燃料電池、タービン、エンジンから選択される少なくとも一つに供給して発電に使用することを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法に使用するための多孔質複合金属酸化物であって、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、
マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、
から構成された多孔質複合金属酸化物であり、
前記第2種の金属の酸化物の含有割合は、前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲であることを特徴とする多孔質複合金属酸化物。
【請求項15】
前記多孔質複合金属酸化物は、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものであることを特徴とする請求項14に記載の多孔質複合金属酸化物
【請求項16】
触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置において、
触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンのそれぞれについて個別に温度制御し得る炉と、
前記炉内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンに亘って設置された反応管と、
前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンへ連続的に多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段と、
前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンを経て前記反応管の外部まで前記多孔質複合金属酸化物粒子を移送する手段と、
前記反応管内の前記冷却ゾーン側に配置された炭化水素ガス又は炭化水素ガスと還元性ガスとの混合ガスを供給する手段と、
前記触媒活性化ゾーンの前記多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段側に配置されたガスの回収手段と、
を備えることを特徴とする触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項17】
さらに、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンの前記ナノカーボン合成ゾーン側に還元性ガスを供給する手段が形成されていることを特徴とする請求項16に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項18】
前記反応管はスクリューコンベア又はロータリーキルンであることを特徴とする請求項16に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項19】
前記反応管の内部にはベルトコンベアが配置されていることを特徴とする請求項16に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項20】
前記ガスの回収手段は、燃料電池、発電機が接続されたタービン及び発電機が接続されたエンジンから選択される少なくとも一つに接続されていることを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項1】
触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法において、
触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に多孔質複合金属酸化物と炭化水素ガスを連続的に供給し、前記触媒活性化ゾーンにおいて、前記炭化水素ガス又は別途供給される還元性ガスにより前記多孔質複合金属酸化物の一部が金属化した活性触媒体を得、前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて前記炭化水素ガスと前記活性触媒体と接触させてナノカーボンを連続的に合成し、得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体を前記冷却ゾーンを経て前記反応管内より取り出すことを特徴とする触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項2】
前記多孔質複合金属酸化物として、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、
マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、
から構成された多孔質複合金属酸化物であり、
前記第2種の金属の酸化物の含有割合は前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲のものを使用したことを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項3】
前記多孔質複合金属酸化物として、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の水溶性化合物と、
マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の水溶性化合物と、
酒石酸、システイン、アルギニン、グリシン、アラニン、ロイシンから1つ以上の融点が200℃から300℃の有機化合物と、
水と、
を混合し、400℃〜700℃で空気中焼成して作製したものを用いることを特徴とする請求項2に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項4】
前記多孔質複合金属酸化物として、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものを用いたことを請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項5】
前記炭化水素ガスがメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、イソプレン、n−ブタンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項6】
前記炭化水素ガスは、前記冷却ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーンへ供給すること、及び、前記炭化水素ガスと一緒に水蒸気もしくは加湿還元性ガスを追加することを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項7】
前記触媒活性化ゾーン及びナノカーボン合成ゾーンを500〜1000℃に加熱し、前記反応管内の圧力が0.1〜10kPa範囲となるようにすることを特徴とする求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項8】
前記別途供給される還元性ガスを、水素ガス、アンモニアガスもしくは前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて生成される水素ガスとしたこと特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項9】
前記反応管内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンのガス成分を分析し、前記炭化水素ガスの流量を制御することによって前記触媒活性化ゾーンでの水素ガス濃度を80%以上にすることを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項10】
前記得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体の嵩密度を0.05〜0.5g/cm3となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項11】
前記反応管をスクリューコンベア、ロータリーキルン又は管状体内に配置されたベルトコンベアからなるものとし、前記多孔質複合金属酸化物を前記触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンの順に移動させながら連続的に前記ナノカーボンと活性触媒体との複合体を製造することを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項12】
前記ナノカーボンは、カーボンブラック、ナノファイバー、多層ナノチューブ、カップスタックチューブであることを特徴とする請求項1に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項13】
前記ナノカーボン合成ゾーンにおいてにて生成される水素ガスを燃料電池、タービン、エンジンから選択される少なくとも一つに供給して発電に使用することを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造方法に使用するための多孔質複合金属酸化物であって、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも1つの第1種の金属の酸化物と、
マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、タングステンから選択される少なくとも1つの第2種の金属の酸化物と、
から構成された多孔質複合金属酸化物であり、
前記第2種の金属の酸化物の含有割合は、前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して50〜95質量%の範囲であることを特徴とする多孔質複合金属酸化物。
【請求項15】
前記多孔質複合金属酸化物は、10〜200nmの粒径の粒子の多孔質焼結体であり、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3、BET比表面積が5〜100m2/gのものであることを特徴とする請求項14に記載の多孔質複合金属酸化物
【請求項16】
触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置において、
触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンのそれぞれについて個別に温度制御し得る炉と、
前記炉内の前記触媒活性化ゾーン、前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンに亘って設置された反応管と、
前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンへ連続的に多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段と、
前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンから前記ナノカーボン合成ゾーン及び前記冷却ゾーンを経て前記反応管の外部まで前記多孔質複合金属酸化物粒子を移送する手段と、
前記反応管内の前記冷却ゾーン側に配置された炭化水素ガス又は炭化水素ガスと還元性ガスとの混合ガスを供給する手段と、
前記触媒活性化ゾーンの前記多孔質複合金属酸化物粒子を供給する手段側に配置されたガスの回収手段と、
を備えることを特徴とする触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項17】
さらに、前記反応管内の前記触媒活性化ゾーンの前記ナノカーボン合成ゾーン側に還元性ガスを供給する手段が形成されていることを特徴とする請求項16に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項18】
前記反応管はスクリューコンベア又はロータリーキルンであることを特徴とする請求項16に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項19】
前記反応管の内部にはベルトコンベアが配置されていることを特徴とする請求項16に記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【請求項20】
前記ガスの回収手段は、燃料電池、発電機が接続されたタービン及び発電機が接続されたエンジンから選択される少なくとも一つに接続されていることを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−241104(P2011−241104A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112629(P2010−112629)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
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