説明

ナノ粒子パターニングプロセス

金属パターン(250)を作成する方法において、基板(110)上にフォトレジスト(130)の層を形成し、フォトレジストにパターンを形成し、フォトレジスト及びパターン上に金属ナノ粒子(190)の層を形成し、フォトレジスト及びフォトレジストの上層の金属ナノ粒子を除去し、残りのナノ粒子を焼結して金属パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、基板上に導体のパターンを形成することに関し、特に、基板上にパターン状に金属ナノ粒子を塗布及び焼結することによって当該基板上に導体を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一つの横方向の寸法が1〜1000マイクロメートルの導体を備えた、広い面積の電気回路を印刷することが必要な場合が少なくない。このような回路印刷を実現するための一つのプロセスとしては、真空蒸着によるものがある。しかしながら、この方法は、コストが高い処理であり、通常、バッチ処理にしか適していない。
【0003】
電気回路を作成するもう一つの方法では、金属ナノ粒子を用いてパターンをインクジェット印刷し導体を形成する。このプロセスについては、エス・モールサ(S. Molesa)らの“High-quality inkjet-printed multilevel interconnects and inductive components on plastic for ultra-low-cost RFID applications”、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)に記載されている。この技術に関する問題は、基板に依存しており、100マイクロメートルよりも小さい横方向の寸法を得ることが難しく、バルク加熱により粒子をアニーリングしなければならず、このために、基板の変形が生じることがあるということなどがある。インクジェット成膜のもう一つの問題としては、適切な量の材料を積層するには、多くの場合、複数の工程(パス)を必要とすることであり、このために、スループット(処理量:throughput)が少ない。
【0004】
このバルク加熱問題を解決しようとする、以下の二つの文献に示された試みにおいては、高出力レーザを用いてナノ粒子をアニーリングすることを含む。エヌ・アール・ビエリ(N. R. Bieri)らの“Microstructuring by printing and laser curing of nanoparticle solutions”、アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、第82巻、第20号、2003年5月19日、3529〜3531ページ、及びジェイ・チュン(J. Chung)らの“Conductor microstructures by laser curing of printed gold nanoparticle ink”、 Applied Physics Letters、第84巻、第5号、2004年2月2日、801〜803ページ。
【0005】
リソグラフィックパターニング技術が、フラットパネル用の薄膜トランジスタ(TFT)アレイを含む、超小型電子素子の従来の製造において用いられている。微細加工に応用される従来のフォトレジストリソグラフィック技術によれば、寸法が約100nm以下になるよう、基板上に、構造を画定しかつ材料の領域を形成できるということが分かっている。
【0006】
印刷モデルに基づいて、リソグラフィックプロセスによって、コーティング(例えば、インク)に対して、又は何らかのその他の処理に対して、受容性又は反発性(非受容性)のいずれかである領域のパターンが形成される。従来のフォトリソグラフィでは、必要とされる基本的なステップの数は少なく、用いられる材料及びその他の要素に応じて変化させたものがある。一般的な手順は、以下の通りである。
(i)ポジ型又はネガ型のフォトレジストのウェットコーティング(例えば、スピンコーティングによる)。
(ii)フォトレジストのプレベーキング。
(iii)光マスクアライナを用いてオーバーレイマスクを介して何らかの形態の電磁気放射で露光してパターンを形成。
(iv)例えば、ポストベーキングによる、マスクパターンの硬化。
(v)液体を用いて未硬化部分を除去しパターンを形成。
【0007】
その後に行われるコーティング又は表面の処理に続いて、さらに、保護フォトレジストパターン自体を除去することができる。
【0008】
ステップ(i)〜(v)は、例えば、クリーンルーム環境のような、空気中で行うことができ、一般に、別々の装置を用いて行われる。また、例えば、コーティング成膜等、一つ又は複数のステップを真空中で行うことができる。これらの各ステップで実行されるプロセスが全く異なる性質であるために、何らかのタイプの自動化された、連続的な製造システム又は装置において、ステップ(i)〜(v)を組み合わせることは容易に実現可能なことではないであろう。
【0009】
より良好な寸法解像度を実現し、より低コストを実現し、かつ、例えば、先に形成された層と相互作用するようなエッチング剤などの化学物質の使用を排除するために、上述のステップ(i)〜(v)に挙げたような、従来の方法を改良するために、かなりの労力が費やされてきている。
【0010】
マイクロリソグラフィ技術の分野における当業者によく知られているように、従来のフォトレジスト材料は、施された総露光量、放射時間の積分値に応じて、「相反則」に従う。従来のフォトレジストは、一般に、光子エネルギが特に高い、スペクトルの紫外線(UV)部分の光で露光される。半導体部品の微細加工に用いられるフォトレジストの具体例は、米国特許第6,787,283号明細書(アオアイ(Aoai)ら)に挙げられている。
【0011】
上述した従来のプロセスに対する更なる利点が、電子ビーム(e-beam)及びX線のリソグラフィによって得られる。具体的には、それらリソグラフィによれば、化学処理を部分的に削減することができ、かつ、X線リソグラフィでは依然としてマスクを用いることが必要とされるものの、電子ビームを用いてレジストに直接、マスク無しでパターンを書き込むことができる。有機材料に結合の切断(bond breaking)を生じさせるのに十分な高エネルギ照射によって、コーティングされたレジストに、鎖の切断(scission)、即ち、解重合(depolymerization)を発生させ、これを、画像領域において、非照射領域は除去しない溶媒によって除去することを可能とする。電子ビームは、直接パターン書き込み装置として用いられた場合に、単一ビーム露光の連続制限(serial limitation)のため、長時間の走査が必要で処理量が少ないという欠点があり、従って、少量生産に限られる。電子ビームは、サブミクロンの高解像度特性を有するので、主に、従来のプロセス用のマスクを作成するために微細加工業において用いられる。
【0012】
金属パターニングのためのもう一つの改良は、リフトオフプロセスであり、これについては、当該技術分野においてよく知られている。このプロセスによれば、複雑になってしまうものの、エッチング剤の必要がなくなる。このプロセスにおいて、パターニングされたレジスト層は、張り出し部分(オーバーハング)を備えて形成される。続いて、このパターニングされた材料に、パターニングされる所望の材料の蒸着又はスパッタリングが施される。蒸着又はスパッタリングプロセスが概ね平行に行われるとすれば、オーバーハングによって、レジストのエッジ領域が影になる。この影になった領域が、成膜された材料の破断箇所となる。
【0013】
レジスト溶媒を供給することで、レジストは除去され、その上層に成膜された材料を除去することが可能となる。破断箇所によって、材料が分離され、溶媒が、レジストの中に入ってレジストを溶解することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6787283号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
オーバーハングを形成する複雑さをなくし、平行に行われる成膜プロセスを必要とせず、かつ真空システムを必要としないプロセスが求められている。
【0016】
照射領域におけるレジストに対して、レジストの結合の切断を生じさせ、揮発させ、材料排出させるのに十分なエネルギをもつ400nm未満の波長において、レジストを高エネルギレーザで直接アブレーション(direct ablation)することで、溶媒現像ステップを不要とし、更なる改良が得られる。しかしながら、直接UVアブレーションのためのレーザシステムはかなり高価で、パルス(pulse)であり、維持が難しく、その単一ビーム制限のために、処理量が少ない欠点がある。大面積エキシマレーザによれば、その不備が解消されるが、その場合は、パターンを形成するのにマスクを必要とする。
【0017】
従って、より安価で汎用性の高いクラスの放射指向制御されるレーザ(laser directed radiation)、具体的には、固体IR(赤外線)ダイオードレーザを用いることを可能にする、直接書き込み又はマスクレスリソグラフィの方法が求められている。IRダイオードレーザは、コスト、入手容易性、信頼性、及び寿命において利点があり、通信産業(communications industry)、例えば、CD及びDVDの書き込み装置(ライタ)及び再生装置(プレーヤ)のような、様々な電子機器、及びデジタルカラープリンタ、レーザサーマルプレートライタ、イメージセッタ、及びプルーファ等のグラフィックス及びリプログラフィックス技術において広く用いられている。また、個々のレーザを連結して、最高でほぼ100個又はそれ以上の別々に変調されたレーザのアレイとし、単一ビームの装置と比較して処理能力を劇的に向上させることができる。代替的に、いくつかのレーザ光源から単一バーレーザ中に、光を組み合わせることもでき、この単一バーレーザは、個々に制御されたビームの200個から最高で1000個の個別アドレス指定可能なチャネルのセグメント化された光ゲート変調器を備える。ビーム寸法は、その供給する光の波長によってのみ制限され、空間光変調器によって画定されたアレイ方向において2マイクロメートル程度の小さなスポットを発生させることができる。そのような性能を備えた市販のレーザシステムの具体例としては、コダック社製のニューセッタ(Kodak Newsetter)及びクレオ社製のトレンドセッタプレート−ライタ−プルーファ(Creo Trendsetter plate-writer-proofer)がある。従って、2マイクロメートルの特徴解像度(feature resolution)がそのようなダイオードレーザアレイシステムによって可能であり、これは、LCD及びOLEDディスプレイに用いられる薄膜トランジスタアレイ基板(backplane)及びカラーフィルタアレイには十分すぎるほどである。これらのIRレーザ、及び可視スペクトルにおいて動作するYAGレーザでは、有機結合を切断してレジストの直接アブレーションを行うには、光子エネルギが不十分である。
【0018】
コストを削減し、可撓性支持基板及びロールツーロール方式の連続生産に適合するものとするために、ウェットケミカルエッチングの必要が限られた、微細構造を作成するためのマスクレスリソグラフィック方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明及びその目的及び利点は、以下に記載の好適な実施の形態についての詳細な説明においてより明らかになるであろう。本発明は、微細構造素子、特に、超小型電子回路及び薄膜トランジスタ及びカラーフィルタアレイの改良された製造プロセスに関し、以下を含む。
1.基板上にレジスト材料の第1の層を塗布する。
2.画像(イメージワイズ:image wise)で露光し、さらに、必要に応じて現像することによって、レジスト材料にパターンを作成する。
3.レジスト材料に対して非親和性の溶剤中のナノ粒子層を塗布する。
4.ナノ粒子に対して非親和性の溶剤によりレジスト材料を除去する。
5.ナノ粒子を熱変換してナノ粒子を焼結する。
【0020】
更なる実施の形態では、レジストに光をあて、画像放射源の主波長(predominant wavelength)を強く吸収する変換物質を加熱し、よって、放射源は、400nmよりも大きい波長で、好ましくは、750〜1100nmの間の波長の遠赤外域で発光するレーザである。このようにしてパターンが生成される。本発明の実施の形態では、真空中で、又は蒸着源から、レジスト層を付着形成することを可能にするものもある。
【0021】
従って、マスクレスとでき、かつ、より安価でより汎用性の高いクラスのレーザ、固体IRダイオードレーザの使用を含む方法を提供することによって、微細構造及び超小型電子素子を作成する現在の方法での欠点が、本発明の各要素によって解消される。また、標準的なフォトリソグラフィプロセスとの適合性が得られ、エッチング剤を不要にすることによってその他の層との相互作用が少なくなり、かつ高アスペクト比のラインを得ることができる。
【0022】
本明細書は、本発明の主題を個々に指摘し明確に記載する特許請求の範囲により締めくくられているが、本発明は、添付の図面とともに以下の説明からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】基板上の薄いレジスト層を示す断面側面図である。
【図2】薄いレジスト層がパターニングされた後の図1の断面側面図である。
【図3】金属ナノ粒子が均一に塗布された図2の断面側面図である。
【図4】薄いレジスト層及びその上層のナノ粒子が除去された後の図3を示す断面側面図である。
【図5】金属ナノ粒子を焼結した後の図4を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、特に、本発明による方法の一部をなす各要素、又はより直接、当該方法と連携する各要素を対象とする。本発明は、当該方法の一部をなす個々の要素、又は当該方法と連携する各要素を対象とする。なお、具体的に図示又は記載されていない各要素については、当業者によく知られている様々な形態をとりうるということは言うまでもない。
【0025】
金属のパターニングが、あらゆる電子デバイスにとって非常に重要なプロセスである。配線相互接続は、幅狭であって、良好な導電性、良好なエッジプロフィール、均一で、低い不良品率を有し、かつその他の層との相互作用をほとんど伴わずに処理可能でなければならない。
【0026】
図1を参照すると、スピンコーティング、スプレーコーティング、ホッパーコーティング、マイヤロッドコーティング、グラビアコーティング、オフセット印刷、フレキソグラフィ、インクジェットコーティング、ディップコーティング、超臨界CO、気相堆積、及びプラズマ真空堆積を含むがこれらに限定されない、微細加工産業において慣用されているいくつかの方法のうちのいずれかによって基板110に薄いレジスト130の層が塗布されている。
【0027】
基板110は、ガラス、シリコンウェーハ、ステンレス鋼等の金属、印刷回路基板等を含む、薄いレジスト材料130の支持体として用いられるものであれば、どのような材料であってもよい。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド等を含む、可撓性支持体を用いてもよい。代替的に、基板110は、最終的なデバイスの何らかの予備的な下部構造であってもよく、これは、例えば、LCD又はOLEDディスプレイの薄膜トランジスタアレイ基板(backplane)の様々な層として、機能層、アライメントのための位置合わせマークを含んでもよい。
【0028】
薄いレジスト130の材料の選択は、パターニングの方法(メカニズム)に依存する。パターニングがフォトリソグラフィによって行われる場合であれば、標準的なフォトレジストを用いることが可能である。フォトレジストは、露光された領域でレジストが除去されるポジ型のフォトレジストであってもよいし、その反対のことが起こるネガ型のフォトレジストであってもよい。
【0029】
一つの好適な実施の形態において、薄いレジスト層130は、例えば、ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)製のマイクロポジットS1800レジスト(Microposit S1800 resist)のようなフォトレジストである。このフォトレジストは、ポジ型のフォトレジストである。
【0030】
フォトレジストは、レジストの感応波長において、情報(intelligence)光学パターンに露出される。このパターンは、従来のリソグラフィと同様に、2次元の露光であることが可能である。この場合、光源が、マスクを介して画像化(投影)され、フォトレジストを露光する。
【0031】
もう一つの場合では、パターンは、点状(pointwise)露光であってもよい。この具体例としては、ドラム印刷又は適切な波長のレーザを備えたX−Yステージが挙げられる。このレーザは、レーザに流す電流によって直接、変調されてもよいし、例えば、音響光学変調器のような、空間光変調器によって変調されてもよい。
【0032】
パターンは、適切な現像液によって現像される。マイクロポジット(Microposit (登録商標))レジストの場合は、弱塩基(mild base)によって露光領域が除去され、非露光領域にフォトレジストを残す。結果として、図2に示すパターン形成されたレジスト160が得られる。
【0033】
もう一つの好適な実施の形態では、画像様加熱源によってレジスト材料を熱誘起アブレーション除去(thermally induced ablative removal)することによって、薄いレジスト層130に情報パターンが形成される。画像(imagewise)の加熱は、好ましくは、変調されたレーザビーム又はそのようなビームのアレイによって与えられる。そのようなレーザパターニング装置の概略図を図1に示す。
【0034】
この好適な実施の形態において、レーザシステムは、本願に引用して援用する米国特許出願公開第2005/0266172号明細書(ケイ(Kay)ら)に記載されているように、808nm(+/−10nm)の非干渉性赤外線ダイオードレーザバーを備え、該レーザバーのビームは、ビームの幅全体にわたって5マイクロメートル間隔で空間光変調器によって変調された256個の別々のアドレス指定可能なチャネルに分割されている。高速走査方向におけるビーム強度分布は、1/e2径の値が3.6マイクロメートルのガウス分布(Gaussian)である。高速走査方向におけるピーク間(peak to peak)距離は、本発明の各具体例に対し、変調方式によって5マイクロメートルに制限され、任意の画像描画(image rendition)において1画素に相当する、最大約5マイクロメートルの膜平面において最小アブレーションスポットとなる。ビームは、サンプルを保持する二軸可動ステージによってサンプル全体にわたって走査された。高速走査軸可動ステージが1.0〜0.1メートル毎秒の間の速度で移動して、露光が行われた。このレーザシステムで達成可能な出力(power available)は、0.22〜11J/cmの総露光範囲に対応して、1チャネル当たり11〜55ミリワットの間であったが、本発明に有用な出力及び露光はこれらの範囲に限定されない。低速走査軸可動ステージは、次の高速走査動作に備えてサンプルを所定の距離だけ増加させる。この手順は、所望の領域全体が露光されるまで続く。
【0035】
基板は、吸引(vacuum)によってステージに保持されるが、当業者であれば、例えば、クランプ、加圧、接着剤によって、必要に応じて、基板等を加熱し、基板をステージに固定するための、アブレーションパターンに対して基板を正確に配置及び位置合わせするための手段を含む、数々のその他の手段があるということが分かるであろう。この位置合わせのための固定具の一つの具体例が、同一譲受人による米国特許出願第6,695,029号明細書(フィリップス(Phillips)ら)に開示されており、その開示を本願に引用して援用する。0.4〜11J/cmの総露出範囲に対して、1チャネル当たり11〜55ミリワットの間の出力(power available)で転移(transfer)がなされるのが好適である。可動ステージは、透明基板110に対して作業する際に、基板の向きを、レジスト側の面がレーザ源の方を向くように、あるいは離れた方となるように、いずれの向きに向けても支持することができる。アブレーション飛散物(デブリ)は、カバーシート上、あるいは好ましくは、レーザヘッドに取り付けられた真空収集装置中のいずれに集めるようにしてもよい。パターン情報は、1画素に5×5マイクロメートルのパターン寸法が割り当てられた、テストパターン又はTIF画像を処理することが可能なCPU及びRIPによって与えられる。
【0036】
任意の赤外又は可視YAGレーザシステムを本発明のレジスト層130に用いることができ、上述のレーザシステムに限定されない。レーザアレイは、コダック社製のアプルーバルデジタルプルーフィングシステム(Approval Digital Proofing System)のように、ディスクリートダイオードのアセンブリであってもよく、コダック社製のニューセッタ(Kodak Newsetter)又はクレオ社製のトレンドセッタプレート−ライタ−プルーファ(Creo Trendsetter Plate- Writer-Proofer)のように、セグメント化された光変調器を備えたバーレーザ(バー状のレーザ)であってもよい。基板110の搬送装置としては、硬質基板用の平台であってもよく、相対運動は、レーザアレイ又は支持ステージのいずれを動かして行われても良い。また、可撓性支持体を用いるドラムシステムを検討してもよく、基板110の移動ウェブに対し適度近接して取り付けられたレーザアレイを検討してもよい。各装置自体及び機能又は情報を適切な速度で送出するCPUの実用上の制限を除いて、アドレス指定可能なチャネル数又はアレイを構成するレーザ数に制限はない。複数のヘッドを同時に用いるようにしてもよい。
【0037】
薄いレジスト130の平面上におけるレーザ出力の変調により、所望のアブレーションパターンとすることは、当該技術分野において知られている任意の手段、例えば、本発明に係るレーザシステムにおいて実施されるようなオン/オフモードのバイナリ露出(2値露出)、又はパルス幅変調によって実現することができるであろう。唯一必要とされるのは、オンモードにおける出力が、選択された走査速度でアブレーションを行わせるのに十分なものであるということである。
【0038】
画像(imagewise:イメージワイズ)放射は、薄いレジスト層130に対して、例えば、キセノンフラッシュのような、任意の非レーザ源からマスクを介して、又は任意のその他の放射源から、光の吸収波長において十分高い強度で施され、変換物質を加熱し、熱誘起アブレーションを行わせる。
【0039】
[変換物質を加熱する光]
IRレーザの光源では結合を切断できない波長で発光することから、アブレーション閾値を超えるのに必要な熱を得るために、本発明の薄いレジスト層130は、光熱変換物質によって、入射光(radiation)の一部を吸収する。よって、各層は、例えば、染料、顔料、炭素、又は金属のような、放射光(radiation)吸収(以下、放射吸収)材料を備える。好適な発熱物質は、700〜1100nmの近赤外域で、好ましくは、800〜840nmの放射光を吸収する。さらに、YAGレーザに用いる400〜700nmの可視スペクトルを吸収する染料もまた、本発明において有用であろう。
【0040】
本発明における好適なIR吸収染料は、同一譲受人に譲渡された米国特許第4,973,572号明細書(デボア(DeBoer))及び米国特許第5,578,416号明細書(トゥット(Tutt))に列挙され、また“Infrared Absorbing Dyes”(マサル・マツオカ(Masaru Matsuoka)編、プレナムプレス社(Plenum Press)、1990年)に記載されている。本発明に有用な染料タイプには、シアニン、スクアリリウム(Squaryliums)、クロコニウム(Croconiums)、ピリリウム(Pyryliums)、キノン、フタロシアニン及びその金属錯体、ナフタロシアニン(Naphthalocyanines)及びその金属錯体、アゾ染料、及び分子間電荷移動錯体が含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、薄いレジスト層130に対し、本発明の放射吸収発色団が、カーボンブラック、金属ナノ粒子、又はカーボンナノチューブを含みうる吸収剤について、その個々の特性に応じ、単分子染料又は顔料粒子として、適用可能であるということが分かるであろう。薄いレジスト層130における本発明に有用なその他の放射吸収剤としては、例えば、クロム、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ジルコニウムのような、金属又は無機材料、例えば、NiCr、MoCr、WTi等のような合金、例えば、アルミニウム酸化物又はクロム酸化物等のような酸素欠乏金属酸化物、又は反射防止特性を有することによって放射光を吸収する材料の層状積層体がある。主な基準は、放射吸収物質が、画像放射光の所定の波長で、薄いレジスト層130から材料をアブレーションさせるのに十分高い吸収度(extinction)でレーザ光を吸収するということである。この転移効率は、レーザフルエンス、スポットサイズ、ビームオーバーラップ及びその他の要素に依存することがよく知られている。一般に、基板−レジスト積層体10−12において与えられるような放射吸収材料の光学濃度は、少なくとも0.1(光の20%が吸収される)であるべきである。
【0041】
本発明の放射光吸収剤は、薄いレジスト層130の中に、薄いレジスト層130の有機バインダに溶けた単分子種として、又は層130の層内で独立した層として、又はバインダ層が介在した複数の層として存在しうる。当該技術分野において知られている様々な方法、例えば、以下の方法には限定されないが、スピンコーティング、スプレーコーティング、ホッパーコーティング、グラビア、オフセット印刷、フレキソグラフィ、インクジェット成膜、超臨界CO等を含む方法によって、本発明の放射吸収物質は、上記バインダ材料を含んでも含まない溶剤から、薄いレジスト層130に対して与えることが可能である。その他の提供方法としては、真空蒸着又は気相堆積が含まれる。
【0042】
[バインダ]
本発明の目的のために、薄いレジスト層130のバインダは、少なくとも高分子バインダ、又は低分子(モノマー)ガラス、又はその混合物で構成され、好ましくは、追加のガス生成物質を含んでもよい。高分子バインダは、アブレーションパターンの効率及び清浄度を高めるために、全体として又は部分的に、400℃よりも低い温度で熱不安定な、又は解重合しやすいポリマーで構成されることがさらに好適である。
【0043】
「アブレーション除去(ablative removal)」という用語は、薄いレジスト材料130の熱誘起された塊放出(mass ejection)であると広義に解され、レジストの成分の少なくとも一部が気体状態に変化する。気体状態に変化する材料は、レジスト材料自体でも、薄いレジスト層130の他の成分材料でもよく、アブレーション放出の推進剤(propellant)として機能する。また、アブレーション除去には、フラグメンテーション(断片化)又は粒子放出が含まれ、このとき、ドナー材料の少なくとも何らかの部分が、実際には、気体状態に変化しない場合もあるが、ドナーの何らかの加熱成分を蒸気状に変化させることで、実質的に断片化と推進が実行される。従って、レジスト層は、できるだけ、熱的に不安定な材料で構成されていることが好ましい。
【0044】
このために、好適な種類のポリマーバインダは、モノマーCH=CXYから得られたポリマーと定義することが可能であり、ここで、X及びYは、独立して、電気的陰性基又は共鳴安定化基であり、さらに、X及びYは、次の、ハロゲン(XがYと等しくない場合)、−CN、−(C=O)OR、−(C=O)R、−(C=O)NR2のうちのいずれかの基と特定され、ここで、Rは、独立して、H、任意のアルキル、シクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、−(OCH2CH2)CH3、−(OCH(CH3)CH2)CH3、又は任意の置換されたアルキル基又はアルコキシド基であってその少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン、シリコン、又はチタン原子で置換されている。また、上述したポリマーの混合物が薄いレジスト層130の中に含まれてもよい。
【0045】
この定義に該当するポリマーのうち、特に有用なものは、アルキルシアノアクリレートポリマーであり、ここで、Xは、−CNであり、Yは、(C=O)ORであり、R基は、メチル、エチル、又はそのコポリマーである。このようなポリマーは、以下の米国特許第5,468,591号明細書(ピアス(Pearce)ら)、米国特許第5,858,607号明細書(バーバリ(Burberry)ら)、及び米国特許第6,165,671号明細書(ワイドナー(Weidner)ら)に示すように、効率的にアブレーションされる樹脂として有用なものとして知られている。また、シアノアクリレートも、ヘルバート(Helbert)らの“Radiation Degradation of α-Substituted Acrylate Polymers and Copolymers”、アプライド・ポリマー・サイエンス(Applied Polymer Science)、第21巻、1977年、797〜807ページに、電子ビームレジストとして有用なものとして挙げられており、ホーガン(Hogan)らの“Laser Photoablation of Spin-on-Glass and Poly(Ethyl Cyanoacrylate) Photoresist”、アプライド・サーフェイス・サイエンス(Applied Surface Science)、第36巻(1989年)、343〜349ページに、高エネルギUV放射用のフォトアブレーションレジストとして挙げられている。
【0046】
シアノアクリレートポリマーの物理的特性を調整し、特に、基板110に対する改善された接着性を得るようにする必要がある場合もあることが予期される。このような改良は、それを電子ビームレジストとして用いる場合になされ、例えば、シアノアクリレートエステルのアルキル基を改良して、例えば、米国特許第5,359,101号明細書(ウッズ(Woods)ら)にて考慮されているように、3−トリメチルシリルプロピル 2−シアノアクリレートを生成することが含まれる。このようなポリマー特性を改良するための慣用されている方法としては、欧州特許第0343603号明細書、米国特許第4,686,168号明細書(フジイ(Fujii)ら)、及び特開平7−056341号公報にあるように、様々なビニルモノマーとの共重合により接着性を高め、分子量安定性を高めることが含まれる。有用な組成としては、シアノアクリレートと、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート及びフルオロメタクリレートとのコポリマー、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、スチレン、a−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、メタクリルアミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル、及びそれらの混合物が含まれる。さらに、薄いレジスト130の最初のアブレーションパターニングの後に、エッチング耐性(etch resistance)を向上させるために、例えば、シンナメート(cinnamate)基のような、放射架橋性基を含むコモノマーを含むようにしてもよいであろう。
【0047】
シアノアクリレートポリマーは、様々な溶剤中に溶けた場合に、分子量不安定性(molecular weight instability)を示すことが知られており(ウッズ(Woods)らの“Vapour deposition of poly(alkyl-2-cyanacrylate) resist coatings: a new electron-beam/deep-ultra-violet photoresist technology”、ポリマー(Polymer)、1989年、第30巻、1091〜1098ページ)、これは、より高分子量から、より低分子量へと平衡化(equilibrate)からである。本発明において実施されるような多くの場合に、有用な程度の重合が、ほぼ常に保たれ、通常、10,000(重量平均)未満にまで低下することはなく、一般に、溶液中で、約30,000となる。このような挙動は、現像ステップを制御するために、明確に定かつばらつきのない溶液挙動に依存する電子ビーム又はX線リソグラフィにとって、特に問題となる。但し、本発明の目的のために、実用的なアブレーション閾値エネルギが得られるのであれば、好ましい分子量は指定されない。当該技術分野の当業者であれば、アブレーション効率は、低分子量が好ましいことが多いが、例えば、接着性のようなその他の物理的及び化学的な特性については、より高い分子量が好ましいであろうということと、用いられる材料及びプロセスの要求によって兼ね合いをとらなければならないということが分かるであろう。
【0048】
薄いレジスト層130のバインダを構成するその他の熱的に不安定で、かつその他の点で有用なポリマーとしては、ニトロセルロース、(メチルビニルエーテル無水マレイン酸及びスチレン無水マレイン酸を含む)無水マレイン酸のコポリマー、α−置換脂肪族ポリカーボネート、ポリケトン、ポリアルケンスルホン、α−メチルスチレン、及びシリコーン、及びこれらと、一般構造式CH=CXY(式中、X及びYは、独立して、電気的陰性基及び共鳴安定化基)のポリマーとの混合物が含まれる。
【0049】
薄いレジスト層130の高分子バインダは、単独又はすでに挙げたポリマーとの組み合わせで、リソグラフィックプロセスにおいてレジスト特性をもたらすものとして知られているポリマー、例えば、シプレイジーライン(Shipley G-Line)又はS1800シリーズ(マサチューセッツ州マルボロのローム・アンド・ハース社製)を含んでもよく、例えば、ポリメタクリレート及びアクリレート、ポリスチレン及びブタジエンとのコポリマー、アクリレート及びメタクリレート、アクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル及び酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルエステル、ポリウレタン、ポリビニルアセチル及びブチラル(butyral)、エポキシド、ポリイミド、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂等が含まれる。
【0050】
また、例えば、熱分解[2.2]パラシクロファン(商標名、Parylen(パリレン)、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide)製)から得られたポリp−キシレン、ジビニルシロキサンビス(ベンゾシクロブテン)(Cyclotene(シクロテン)樹脂、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical))から得られた樹脂、及び、ポリアルケン及びポリフルオロアルカンのような、グロー放電プラズマ重合によって形成された樹脂のように、真空堆積プロセスにおいて形成されたポリマー樹脂は、レジスト層130の有用なバインダと考えることもできる。そのような真空堆積された樹脂は、例えば、染料及び金属のような、放射吸収材料と共蒸着してもよいし、レジスト層130の層内で別層に塗布されてもよいであろう。
【0051】
ポリマー(polymeric)材料に加えて、レジスト層130用の有用なバインダ成分としては、モノマー(monomeric)ガラスが含まれ、これは、米国特許第5,891,602号明細書(ノイマン(Neuman))に、ガラス転移温度が25℃よりも高く、当該レジスト層に非晶質ガラスを形成可能なガラス状態の非ポリマー有機材料として規定され、当該明細書に主張され特定された材料を含む。さらに有用なモノマー及びオリゴマーガラスが、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第11/240,964号明細書に記載されており、例えば、水素添加(hydrogenated)及び部分水素添加ロジンエステル、及び類似のロジンエステルのような、先に挙げた米国特許第6,165,671号明細書に記載の樹脂を含む。市販の材料としては、例えば、ステイベライトエステル10(Staybellite Ester 10)(ヘラクレス社(Hercules))のような、水素添加ウッドロジンのグリセリンエステル、例えば、フォラル85(Foral 85)(ヘラクレス社)のような、水素添加ロジンのグリセリンエステル、例えば、ペンタリン344(Pentalyn 344)(ヘラクレス社)のような、修飾(modified)ロジンのペンタエリトリトールエステルが含まれる。また、層130の非晶質有機固体は、例えば、ポリエステルトーン260(polyester tone 260)のような、分子量が約4000よりも小さいオリゴマー樹脂であってもよい。モノマーガラスは、不要な共有結合を加えることなく有機バルクを加え、数々の一般的な樹脂よりもアブレーションによって揮発させられやすい化学種の代表である。
【0052】
また、薄いレジスト層130は、アブレーション領域における高温の影響下にあるときにガスを放出することが可能なモノマー又はオリゴマー材料で部分的に構成されてもよく、従って、当該アブレーションパターンからの材料の塊放出を援助する。そのような材料としては、例えば、3−アミノテトラゾールのような、テトラゾール及びトリアゾール及びそれらのアミノ誘導体、自動車のエアバッグの噴射剤として用いられているアジ化ナトリウム、アゾ−ビス−イソブチリルニトリルのようなアゾ化合物、アジド−オキセタンポリマー、“ポリ−バモ(poly-bamo)”(1,1’−(メチレンビス(オキシ))ビス(2,2−ジニトロプロパン))のようなオリゴマー等が含まれる。
【0053】
薄いレジスト成分130の各層は、いずれも、すでに開示された各材料に加えて、塗布助剤として必要であって表面特性の改質のために用いられる界面活性剤、各処理ステップ期間中の物理的一体性に必要な、硬化剤、接着促進剤等を含んでもよい。また、画像放射光以外の波長を吸収する可視染料を薄いレジスト130の各層のいずれかに加えてプロセスの視覚化を図ってもよい。
【0054】
薄いレジスト層130は、0.1〜10マイクロメートルの厚さとでき、好ましくは、0.25〜1.5マイクロメートルの間である。
【0055】
熱誘起画像アブレーションパターン形成直後に、少量の残留有機材料がアブレーション領域の下部に残っていることがある。この残留材料は、残留樹脂又はその他の有機熱分解生成物である場合があり、薄いレジスト層130に対して施される最終工程の前に除去しなければならない場合がある。この材料は、酸素プラズマを含む、従来のリソグラフィにおいて用いられる残留除去(de-scumming)工程を真空中又は大気圧下のいずれかで任意の回数行うことによって容易に除去することが可能である。そのような工程は、一般に、非アブレーション領域において著しい量のレジストを除去しないように短時間かつ低出力で行われるが、対象のアブレーション領域を清浄化するのに十分な時間及び出力で行われる。さらに、酸素クリーニングステップによって、薄いレジスト130に、より急勾配の壁面断面を得ることもできる。
【0056】
先の二つの好適な実施の形態のいずれにおいても、図2に示すように、基板110上にはパターニングされたレジスト層160が得られる。
【0057】
続いて、ナノ粒子の溶液が、このパターン形成されたレジスト及び基板に塗布されて、均一なコーティングが施される。このコーティングは、基板110が露出したレジストの開口部及びパターニングされたレジスト160を両方とも覆うことになる。これは、図3に、ナノ粒子190を図示した状態で示されている。
【0058】
ナノ粒子は、コーティング液を塗布するための方法であればどのような方法によって塗布してもよい。具体例の方法には、ホッパーコーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、又はフレキソグラフィが含まれる。これらは代表的な方法であって、本発明は、これらの塗布方法に限定されないということは言うまでもない。
【0059】
ナノ粒子は、ナノ粒子を形成可能で溶媒中に分散可能であればどのような金属又は半金属であってもよい。ナノ粒子の溶媒選択の主な基準は、パターン形成されたレジストが、そのナノ粒子の溶媒に溶けないということである。
【0060】
ナノ粒子を形成するのに用いることができる金属の具体例としては、銀、金、及びニッケルがあるが、これらに限定されない。また、ナノ粒子は、二種類以上の金属の混合物を用いて形成でき、例えば、合金として、又は、一つの金属がコアで、もう一つの金属がその外側を取り囲むコアシェル粒子として形成してもよい。
【0061】
ナノ粒子は、十分に小さいので各粒子の融解温度は低くなっている。純粋な材料よりも数百度低い融解温度である場合が多い。良好な導電性を得るため、典型的に必要とされることは、ナノ粒子を加熱することのみであり、加熱によって焼結及び融解が生じ、これに伴って導電性が高まる。
【0062】
ナノ粒子は、一般に、有機シェルによって安定化され、これによって、溶媒への分散が可能となり、また自然になされる焼結に対する安定性(stabilization to spontaneous sintering)を得ることができる。有機コーティングは、最適な熱安定性、低温焼結性、所望の溶媒分散性が得られるように選択される。加熱されると、有機コーティングは、一般に、放出される(コーティングが解除される)。このように粒子の放出融解(release melting)及び焼結が生じ、それによって粒子間が密着し、その結果、導電性が高まる。
【0063】
好適な実施の形態としては、ドデシルアミンのシェルがシクロヘキサン中に分散されて形成された銀ナノ粒子がある。ドデシルアミンは、銀ナノ粒子に適度に結合し、シクロヘキサン中における安定した分散が可能となる。用いられるレジストは、シクロヘキサン中に可溶性でないものが選ばれる。
【0064】
次の工程において、図4に示すように、レジストは溶媒により除去される。このレジスト用の溶媒は、ナノ粒子の溶媒ではないように選ばれる。この溶媒がナノ粒子の溶媒である場合には、ナノ粒子は、全領域で除去されることになる。
【0065】
レジストの一般的な溶媒としては、アセトンがある。ナノ粒子は、この場合、アセトンにおいて可溶性でないはずである。ドデシル基は、一般に、ナノ粒子にアルカンに対する可溶性を与えるが、例えば、アセトンのようなケトンに対しては可溶性を与えない有機コーティングの一例である。
【0066】
ナノ粒子は、多孔質で凝集強度(cohesive strength)が低いので、溶媒は、ナノ粒子層を通り抜けてレジストの溶解度を高めることができる。ナノ粒子は凝集力が小さく、純粋な金属のコーティングとは異なり間隙を架橋する傾向はなく、むしろきれいに「断裂(tear)」し、良好なエッジ精細度(edge definition)を可能とする。レジストを含まない領域は可溶化されず、表面接着力によって、ナノ粒子は、良好なコーティングとして保たれる。後に残されるのは、基板上のパターニングされたナノ粒子220である。
【0067】
最終工程において、ナノ粒子を加熱することで、融解又は焼結が生じ、ナノ粒子を合体させ、それによって、導電性が高められる。加熱は、温度を焼結温度よりも高い温度に上げる手段であればどのような手段によって行ってもよい。具体的な方法としては、オーブン加熱、ホットプレート、放射ヒータ、熱伝導、熱風、マイクロ波、又は光熱が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
図5において、金属パターン250が、基板110上にパターンを形成する。このパターンは、基板110上の回路用の所望の配線である。
【0069】
[Ag(0)ナノ粒子分散体の調製例]
撹拌ロッドと、冷水コンデンサと、2リットルのシクロヘキサン/44gのフェニルヒドラジン/100ミリリットルのトルエンが入った追加用漏斗と、を備えた22リットルの3つ口丸底反応フラスコに、8リットルのシクロヘキサン/68gの酢酸銀/740gのドデシルアミンを加えた。すべての酢酸銀が溶液中に溶解した後、追加用漏斗の中の化学物質を反応フラスコに滴下して加えた。この混合物は、室温まで冷却される前に、6O℃にて1時間撹拌した。その後、2リットルのアセトンを加えた。この分散液は、45℃にて真空蒸発により濃縮した。その結果得られた濃縮反応混合物に、メタノールとアセトンとの等量混合物(50/50 methanol/acetone)を101g加えて、銀ナノ粒子を沈澱させ、48.81gの生成物を得た。Ag(0)ナノ粒子分散体は、銀ナノ粒子をシクロヘキサンに溶解させて10重量%溶液を得ることによって作成された。
【0070】
[実施例1]
アセトニトリルとシクロペンタノンとの50/50(等量混合物)の中に、7.5重量%のポリ(メチル−コ−エチル)シアノアクリレート、1.0重量%のIR染料(1)、0.05%のフルオロカーボン界面活性剤FC−431(スリーエム社(3M Corp))を含むサーマルレジスト溶液を、1000rpmでガラス基板にスピンコーティングした。この溶液に対して、本願に引用して援用する米国特許出願公開第2005/0266172号明細書(ケイら)に記載されているように、808nm(+/−10nm)の非干渉性赤外線ダイオードレーザバーのレーザシステムであって、そのビームが、ビーム幅全体にわたって5マイクロメートル間隔で空間光変調器によって変調された256個の別々のアドレス指定可能なチャネルに分割されているレーザシステムを用いたレーザアブレーションが施された。高速走査方向におけるビーム強度分布は、1/e2径の値が3.6マイクロメートルのガウス分布である。高速走査方向におけるピーク間距離は、本発明の各具体例において、変調方式によって5マイクロメートルに制限され、任意の画像描画において1画素に相当する最大で約5マイクロメートルの膜平面において最小アブレーションスポットとなった。ビームは、サンプルを保持する二軸可動ステージによってサンプル全体にわたって走査された。露光は、高速走査軸可動ステージが1.0〜0.1メートル毎秒の間の速度で移動して行われた。レーザシステムIIにおいて得られる出力は、0.22〜11J/cmの総露出範囲に対応して、1チャネル当たり11〜55ミリワットであったが、本発明に有用な出力及び露光はこれらの範囲に限定されない。低速走査軸可動ステージは、次の高速走査動作に備えてサンプルを所定の距離だけ増加させる。この手順は、所望の領域全体を露出するまで続く。
【0071】
銀ナノ粒子の溶液は、パターニングされた基板上に1000RPMでスピンコーティングされた。さらに、このコーティングされた基板は、ブランソニック12(Bransonic 12)超音波浴(コネチカット州シェルトンのブランソン・インスツルメンツ社(Branson Instruments))のアセトン浴に配され、溶液及び基板は15秒間超音波処理され、その結果、サーマルレジストは全て溶解し、上層のナノ粒子は全てはがれ落ちた。ガラス上のナノ粒子は、影響を受けず、残った。
【0072】
さらに、基板は、ホットプレート上で10分間175℃に加熱され、銀ナノ粒子は焼結され、外観的には、赤茶色から金属光沢に変わった。
【0073】
作成された各パターンは、導電性が高く、4マイクロメートルの間隙を実現することができた。
【0074】
[実施例2]
ガラス基板に、フォトレジスト(S1805フォトレジスト, Rohm and Haas, Marlborough, マサチューセッツ州)がスピンコーティングされた。また、ガルバノメータと、露光のためX位置及びY位置をそれぞれ定めるメカニカルステージと、を備えた音響光学変調器によって変調され、351.1nmで動作するアルゴン(Ar)イオンレーザからのUVパターンの光で露光された。露光は、約20mJ/cmの10マイクロメートルスポットであって、ドエル時間(dwell time)が9マイクロ秒であった。フォトレジストは、MF319現像液(マサチューセッツ州マルボロのローム・アンド・ハース社製)を用いた1分間の従来方法で現像され、ガラス基板上にフォトレジストパターンが得られた。
【0075】
銀ナノ粒子の溶液は、パターニングンされた基板上に1000RPMでスピンコーティングされた。さらに、このコーティングされた基板は、ブランソニック12超音波浴(コネチカット州シェルトンのブランソン・インスツルメンツ社)のアセトン浴に配され、溶液及び基板は15秒間超音波処理され、その結果、フォトレジストは全て溶解し、上層のナノ粒子は、全てはがれ落ちた。ガラス上のナノ粒子は、影響を受けず、残った。
【0076】
さらに、基板は、ホットプレート上で10分間175℃に加熱され、その結果、銀ナノ粒子は焼結され、外観的には、赤茶色から金属光沢に変わった。作成された各パターンは、導電性が高く、10マイクロメートルのラインは良好な解像度となった。
【符号の説明】
【0077】
110 基板、130 薄いレジスト、160 パターニングされたレジスト、190 ナノ粒子、220 パターン形成されたナノ粒子、250 金属パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パターンを作成する方法であって、
基板上にフォトレジストの層を成膜し、
前記フォトレジストにパターンを形成し、
前記フォトレジスト及びパターン上に金属ナノ粒子の層を成膜し、
前記フォトレジスト及び前記フォトレジスト上の上層の金属ナノ粒子を除去し、
残りの前記ナノ粒子を焼結して金属パターンを形成することを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子が銀である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子が金である方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がスピンコーティングによって行われる方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がスプレーコーティングによって行われる方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がインクジェット印刷によって行われる方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がグラビア印刷によって行われる方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がオフセット印刷によって行われる方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がナイフコーティングによって行われる方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がフレキソグラフィによって行われる方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子の成膜がホッパーコーティングによって行われる方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記パターンが、マスクを介して前記フォトレジスト上に投影された紫外線又は可視光によって形成され、その後に現像が行われる方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、紫外線レーザ又は可視レーザが、前記フォトレジスト上に走査及び変調され、その後に現像が行われる方法。
【請求項14】
金属パターンを作成する方法であって、
基板上にサーマルレジストの層を成膜し、
前記サーマルレジストにパターンを形成し、
前記サーマルレジスト及びパターン上に金属ナノ粒子の層を成膜し、
前記サーマルレジスト及び前記サーマルレジスト上の上層の金属ナノ粒子を除去し、
残りの前記ナノ粒子を焼結して金属パターンを形成することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−539252(P2009−539252A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513174(P2009−513174)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/012099
【国際公開番号】WO2007/142809
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】