説明

ナビゲーション装置、その方法及びプログラム

【課題】進路変更を予測した道路に関してのみ通路状況を表示することにより、ドライバーにとって必要な情報を適切なタイミングで表示することが可能となり、良好な視認性を確保して、安全性、快適性及び信頼性が向上したナビゲーション装置、その方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】進路予測部25が、車両の進路変更を予測したとき、この予測した進路に関してのみ、通路表示部28が有効通路と非有効通路とを区別して表示するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リルート機能を有するナビゲーション技術に係り、特に、車両の挙動に基づき車両が向かおうとする道路を予測し、予測した道路が行き止まりかどうかを検討してドライバーにとって不適切な通路への進入を確実に防止するナビゲーション装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション技術の進展は著しく、様々な機能が付与されている。中でも、誘導路から外れた際に動作するリルート機能は、利用頻度が高い。具体的には、ナビゲーション装置が探索した経路が渋滞となって、抜け道を走ろうとしたドライバーは、それまで走行していた経路を外れる。この時、リルート機能が動作することで、経路を外れた自車位置から目的地までの新たな経路を再探索することが可能となる。
【0003】
ところで、ナビゲーション装置は所定の時間間隔で自車位置を確認しているので、車両が経路を外れたことを検知するタイミングは、経路を外れた直後とは限らず、経路を外れてから数秒後ということもある。この場合、リルート機能が動作を開始するタイミングも、経路を逸脱してから数秒後になり、再探索された経路が表示されるまでに、若干の時間がかかることになる。経路の再探索中は、経路が全く案内されておらず、ドライバーは道に迷い易い状態となる。
【0004】
しかも、ナビゲーション装置に従って走行していたドライバーが、経路を逸れてから先の道路に関して、熟知していることは少なく、ドライバーは自身の経験を頼りに、抜け道であろうと推測して狭い道路や住宅街への道路に進入していくことが多い。その結果、通り抜けができずに、結局は、元の場所に戻らざるを得ないといった事態に陥る可能性があった。
【0005】
このような事態を回避するために、通り抜け不能な通路への車両の進入を防ぐことが重要である。そこで、進行しようとする通路が行き止まりであるか否かを、ドライバーに提示するナビゲーション技術が提案されている。具体的には、行き止まりを示すノードに関するノードデータを記憶する技術(特許文献1)や、推奨経路と交差する道路について道路が行き止まりであるか否かを判定し、行き止まりの道路と、通常の道路について両者を異なる態様で表示する技術(特許文献2)などが知られている。
【0006】
なお、ここでは、通り抜けが可能な通路を有効通路と呼び、通り抜けが不可能な通路である非有効通路と呼ぶことにする。非有効通路としては、単に行き止まりとなっている道路だけではなく、行き止まりとなる地点を有することから袋小路の入口である道路も包含される。
【0007】
上記の従来技術では、誘導路から車両が逸れた際、進行方向に存在する道路について、行き止まりなのかどうかといった、ドライバーにとって不適切な通路をドライバーに提示するが、このような提示は、非有効通路に車両が進入する以前に表示画面に表示されるのでなければ意味がない。
【0008】
すなわち、図7に示すように、非有効通路の入口に行き止まりマークXをドライバーに提示するようにした場合、行き止まりマークXの表示タイミングは、車両が実際に非有効通路にさしかかるよりも前である。
【0009】
したがって、ナビゲーション装置の表示画面上に道路地図が表示されたとき、地図上に非有効通路が存在するならば、地図の表示と同時に非有効通路を表示する必要がある。そこで、車両が走行するに従ってスクロールしていく表示画面において、非有効通路を表示画面に即座に表示できるように、車両が走行している道路の前方リンクの接続状態について、表示画面範囲の外側まで調べるといった技術(特許文献3)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−128844号公報
【特許文献2】特開2005−274908号公報
【特許文献3】特開平10−260054公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、地図表示と同時に非有効通路を表示することは、その非有効通路を選択しようとしたドライバーにとっては有益であるが、誘導案内されている経路を外れる意志が無いドライバーの観点に立てば、非有効通路の表示は無用であって、表示画面を見ても煩わしさを感じるだけである。
【0012】
通常、非有効通路を示す行き止まりマークなどの表示は、ドライバーの注意を喚起する必要から、視覚的に強調された態様になっているので、一方通行や袋小路となる道路が多い住宅街など非有効通路の表示が多い地図の範囲では、誘導案内中の経路の表示よりも目立ってしまい、ドライバーに混乱を与えかねない。そこで、ドライバーに不利益を与える通路を提示するにしても、ドライバーが必要とする情報だけを適切なタイミングで表示して、表示画面の視認性を高めて、安全性や操作性の向上を図ることが求められていた。
【0013】
本発明は、上述した状況を鑑みて提案されたものであり、その目的は、進路を変えようとしている車両の挙動から、その車両が向かおうとしている道路について予測して、進路変更を予測した道路に関してのみ通路状況を表示することにより、ドライバーにとって必要な情報を適切なタイミングで表示することが可能となり、良好な視認性を確保して、安全性、快適性及び信頼性が向上したナビゲーション装置、その方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係るナビゲーション装置は、車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、前記車両の進行方向に存在する道路について通り抜けが可能な有効通路なのか、通り抜けが不可能な非有効通路なのかを判定する通路判定手段と、前記有効通路と前記非有効通路とを区別して通路を表示する通路表示手段、を有するナビゲーション装置において、前記車両が進路を変えようとする際に現れる変化を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記車両の進路を予測する進路予測手段を備え、前記通路表示手段は、前記進路予測手段が予測した進路に関して前記有効通路と前記非有効通路とを区別して表示するように構成したことを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明に係るナビゲーション方法は、車両の現在位置を取得する現在位置取得ステップと、地図情報を記憶する地図情報記憶ステップと、前記車両の進行方向に存在する道路について通り抜けが可能な有効通路なのか、通り抜けが不可能な非有効通路なのかを判定する通路判定ステップと、前記有効通路と前記非有効通路とを区別して道路を表示する通路表示ステップ、を含むナビゲーション方法において、前記車両が進路を変えようとする際に現れる変化を検知する検知ステップと、検知ステップの検知結果に基づいて前記車両の進路変更を予測する進路予測ステップを含み、前記通路表示ステップでは、前記進路予測ステップにて予測した進路に関して前記有効通路と前記非有効通路とを区別して表示したことを特徴としている。
【0016】
請求項7の発明に係るナビゲーションプログラムは、コンピュータを利用することにより、車両の現在位置を取得する現在位置取得機能と、地図情報を記憶する地図情報記憶機能と、前記車両の進行方向に存在する道路について通り抜けが可能な有効通路なのか、通り抜けが不可能な非有効通路なのかを判定する通路判定機能と、前記有効通路と前記非有効通路とを区別して通路を表示する通路表示機能、をコンピュータに実現させるナビゲーションプログラムにおいて、前記車両が進路を変えようとする際に現れる変化を検知する検知機能と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記車両の進路を予測する進路予測機能、をコンピュータに実現させ、前記通路表示機能では、前記進路予測機能にて予測した進路に関して前記有効通路と前記非有効通路とを区別して表示することをコンピュータに実現させることを特徴とするものである。
【0017】
以上のような本発明においては、進路予測手段が車両の進路変更を予測したとき、この予測した進路に関してのみ、通路判定手段によって有効通路と非有効通路とかを判定し、通路表示手段にて両者を区別して表示する。ここで、通路の状況を表示するタイミングは、有効通路であるにせよ、非有効通路であるにせよ、車両が進路変更を行おうとする進路を予測した後である。
【0018】
つまり、従来技術のように、車両の挙動に関係なく、行き止まりの通路が表示画面上に表示され続けている訳ではない。したがって、ドライバーが進路変更を行おうとする変化を検知しない限り、進路変更先の通路状況は表示されることがなく、表示画面上には必要最低限の情報だけが表示されることになる。これにより、表示画面の視認性を高めることができ、快適な操縦性を得て、安全性がいっそう向上する。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記検知手段は、車両が進路を変えようとする際に現れる変化として、前記車両の車速、エンジン回転数、加速度、ステアリングの舵角、方向指示器の動作、ブレーキ及びアクセル開度、GPS信号に関する情報のうち、少なくとも1つを含む車両情報を検知するように構成したことを特徴とするものである。
【0020】
以上の請求項2の発明では、検知手段の検知した上記車両情報に基づいて、進路予測手段は車両の進路変更を的確に予測することが可能であり、進路予測手段の予測精度を高めることができる。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のナビゲーション装置において、前記進路予測手段の予測の当否を判定する予測判定手段を備え、前記予測判定手段が前記進路予測手段の予測が外れたと判定したとき、前記進路予測手段は、直ちに次の進路を予測するように構成したことを特徴とする。
【0022】
上記請求項3の発明では、予測判定手段にて進路変更予測手段の予測の当否を判定でき、予測判定手段により進路予測手段の予測が外れた場合に、進路予測手段は直ちに次の予測を始められるので、進路変更を迅速に予測できる。したがって、通路表示手段は、有効通路と非有効通路との区別を、常に進路変更以前に表示することが可能である。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、目的地を設定する目的地設定手段を備え、前記目的地設定手段にて目的地を設定するとき、前記通路判定手段は、前記車両の進行方向に存在する道路に関する判定として、前記有効通路と前記非有効通路に加えて、前記目的地へと到達しない非到達通路及び前記目的地への到達距離が前記目的地への最短距離と比べて所定の割合以上遠くなる迂回通路を判定するように構成し、前記通路表示手段は、前記有効通路、前記非有効通路、前記非到達通路及び前記迂回通路を区別して表示するように構成したことを特徴とする。
【0024】
以上のような請求項4の発明においては、目的地設定手段にて目的地を設定した場合、進路変更を予測した後の通路状況として、目的地への非到達通路と、遠回りとなる迂回通路を判定でき、通路表示手段にて各通路を区別して表示可能である。したがって、非到達通路及び迂回通路に向けてドライバーの注意を喚起することができ、ドライバーが不利益を被る通路への進入を回避することが可能である。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、目的地までの経路を探索する経路探索手段を備え、前記進路予測手段が前記経路上を走行する車両の進路変更を予測したとき、予測した道路が前記有効通路であれば、前記経路探索手段は、この有効通路を含めて前記目的地までの経路を再探索し、進路変更を予測した道路が前記非有効通路及び前記目的地へと到達しない非到達通路であれば、前記経路探索手段は、進路変更前の経路に戻す経路を探索するように構成したことを特徴としている。
【0026】
以上の請求項5の発明では、進路予測手段の予測した道路が有効通路であれば、経路探索手段は、この有効通路を含めて前記目的地までの経路を再探索するので、車両が実際に進路変更を行うよりも前に、車両が有効通路を選択した際の再探索経路の探索を開始しておくことができる。したがって、進路変更による有効通路への進入したタイミングで、遅滞なく再探索経路を提示可能である。これにより、経路を案内されない経路案内の空白時間は殆どなく、高品質のナビゲーション機能を発揮することができる。
【0027】
また、進路予測手段の予測した道路が非有効通路や非到達通路であれば、経路探索手段は、進路変更前の経路に戻す経路を探索するので、万が一、車両が非有効通路や非到達通路に進入してしまったとしても、元の経路に戻るための経路を即座にドライバーに提示可能であり、ドライバーに対して安心感を与えることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のナビゲーション装置、その方法及びプログラムによれば、進路を変えようとしている車両の挙動から、その車両が向かおうとしている道路について予測して、進路変更を予測した道路についてのみ通路状況を表示することにより、ドライバーにとって必要な情報を適切なタイミングで表示することが可能となり、表示画面の視認性が良好となって、安全性、快適性及び信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る代表的な実施形態の概要を示す構成図。
【図2】本実施形態による通路表示の説明図。
【図3】本実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】本実施形態による通路状況を示す説明図。
【図5】本実施形態による通路状況を示す説明図。
【図6】本発明に係る他の実施形態による通路状況を示す説明図。
【図7】従来のナビゲーション装置による通路状況を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態の一例について、図1〜図5を参照して具体的に説明する。図1は本実施形態の概要を示す構成図、図2は本実施形態による通路表示の説明図、図2は本実施形態の動作を説明するためのフローチャート、図4及び図5は本実施形態による通路状況を示す説明図である。
【0031】
(1)本実施形態の構成
本実施形態は、通り抜け可能な有効通路なのか、あるいは、それ以外の通路かを区別してドライバーに提示するナビゲーション装置であって、特に、ドライバーが進もうと考えた進路について装置側で予測し、予測した道路に関してのみ通路の状況を表示するようにした点に特徴がある。
【0032】
まず、本実施形態の概要について説明する。図1に示すように、車両に搭載されたナビゲーション装置には、装置全体の制御を司る制御部1、制御部1との間で情報のやりとりを行うRAM2、ROM3及び表示画面を有するディスプレイ4が設けられている。
【0033】
このうち、RAM2には、車両の挙動を検知する各種センサからの情報が取り入れられる。各種センサとしては、アクセル開度検知部5、ブレーキ検知部6、方向指示器の動作検知部7、ステアリングの舵角検知部8、加速度検知部9、車速パルス検知部10、GPS情報検知部11などがある。また、ROM3には、地図情報を始めとして、探索された経路の誘導手法や誘導条件といった情報が格納されている。
【0034】
制御部1には、ナビゲーション機能を成立させる基本的な構成部として、自車位置取得部20、出発地設定部21、目的地設定部22、経路探索部23、案内制御部24が設けられている。このうち、自車位置取得部20は、GPS情報やジャイロなどからの情報に基づいて車両の現在位置つまり自車位置を取得する部分である。
【0035】
出発地設定部21は前記自車位置を出発地に設定する部分であり、目的地設定部22はドライバーの入力操作により任意の目的地を設定する部分である。経路探索部23は、出発地から目的地までの経路を探索するようになっており、案内制御部24は、表示画面上での案内表示やスピーカーからの案内音声によって、経路探索部23にて探索された経路の案内制御を実施するようになっている。なお、経路探索部23は、本実施形態にて特徴的なリルート機能を実現する役割を果たす部分であるが、この点については後述する。
【0036】
また、制御部1には、本実施形態の特徴的な部分として、進路予測部25、予測判定部26、通路判定部27、通路表示部28が設けられている。このうち、進路予測部25は、前記検知部5〜11の検知結果をRAM2から取得して、車両の進路変更を予測する部分である。
【0037】
より詳しくは、進路予測部25は、RAM2から取得した検知部5〜11の検知結果に基づいて推定される車両の挙動と、経路探索部23にて探索された経路にて想定される車両の挙動とを比較して、車両が進路を変えようとする際に現れる変化を把握し、予め決められた予測条件を満たした場合に、進路変更対象となる道路を予測する部分である。
【0038】
なお、進路変更を予測する道路については1つだけ予測するではなく、車両の進行方向に存在する道路に対して複数予測するように設定可能であり、この時の予測設定数や、上記予測条件についてはドライバー自らが設定できるようにすることが望ましい。
【0039】
進路変更の予測例としては、具体的には次のようなケースがある。
(a)直進状態から右折を予測する場合
経路探索部23によって探索された経路が、前方の交差点を直進する経路であった場合、この経路に従う車両の挙動としては、車速の急速な低減がなく、ステアリングも変化しない状態にあり、この状態に基づく情報を、検知部5〜11が検知しているのであれば、進路予測部25が進路変更を予測することはない。
【0040】
ところが、探索経路から逸れて、ドライバーが前方の交差点を右折して直進中の経路を変えようとした場合、ドライバーは方向指示器を右に出し、車速を低減させてステアリングを右に切る。この時、アクセル開度検知部5はアクセルを離したことを、ブレーキ検知部6はブレーキが踏まれたことを、加速度検知部9はマイナス加速度を、車速パルス検知部10は車速の低減を、それぞれ検知し、これらの情報について、進路予測部25がRAM2から取得する。
【0041】
さらには、方向指示器の動作検知部7による方向指示器の右方向への動作の検知、さらには舵角検知部8による車両の進行方向に対して右方向への舵角の検知といった情報を、進路予測部25が取得したとする。ここで、進路予測部25は、車両の右折による進路変更の予測条件を満たしたことになり、上記情報に基づいて進路変更の予測を開始し、車両が前記交差点を直進するのではなく、右折するであろうと予測する。
【0042】
(b)左折すべき状態から直進を予測する場合
また、経路探索部23によって探索される経路が、前方の交差点を左折する経路であった場合、この経路に従う車両の挙動としては、車速の低減と、ステアリングを左に切ることが想定される。
【0043】
この時、ドライバーが左折するように案内された経路を無視して、前方の交差点を直進しようとすると、アクセル開度検知部5はアクセル開度の維持又は増大を、ブレーキ検知部6はブレーキ検知無しを、加速度検知部9は加速度の維持又は増大を、車速パルス検知部10は車速の維持又は増大を、それぞれ検知することになる。
【0044】
これに加えて、方向指示器の動作検知部7による方向指示器の動作検知無し、さらには舵角検知部8による舵角の変化無しといった情報を、進路予測部25が取得した場合、車両の直進による進路変更の予測条件を満たしたことになる。したがって、進路予測部25は進路変更の予測を開始し、これらの情報に基づいて、車両が前記交差点を左折するのではなく、直進するであろうと予測する。
【0045】
予測判定部26は、上記のような進路予測部25の予測が当たったか、外れたかという判定を行う部分である。予測判定部26は、自車位置取得部20の取得した自車位置が、進路予測部25の予測した道路上に存在するかどうかによって、即座に進路予測部25の予測の当否を判定するようになっている。
【0046】
通路判定部27は、ROM3に格納された地図情報に基づき、進路予測部25が予測した進路について、次の4つのタイプの通路のどれに当てはまるのかを判定する部分である。なお、道路が行き止まりか否かの判定は、行き止まりを示すノードに関するノードデータに基づいて行っている。
【0047】
図2に4つのタイプの通路を示す。すなわち、
[1]有効通路…通り抜けが可能な通路であって、探索経路の抜け道A1、A2。
[2]非有効通路…通り抜けが不可能な通路であって、行き止まり道路B1や袋小路となった住宅街への入口となる道路B2。
[3]非到達通路…目的地へたどりつけない通路C。
[4]迂回通路…遠回りで目的地へ着く通路D。このうち、車両が進むべき通路として適切な通路は有効通路のみであって、他の3つの通路は不適切と考えられる。
【0048】
また、前述したように、進路予測部25にて進路変更対象となる道路を予測する場合に、進路変更を予測する道路については複数予測するように設定されている。このため、予測判定部26にて進路予測部25の予測が外れたと判定したとき、進路予測部25は、直ちに次の進路変更対象となる道路について、予測を開始し、通路判定部27は予測された通路についての判定を実施するようになっている。
【0049】
通路表示部28は、進路予測部25が予測した進路に関して、通路判定部27の判定結果を区別した上で表示するようになっている。すなわち、通路表示部28は、進路予測部25の予測した進路が有効通路であれば、適切な通路であるとして、地図上の当該通路入口付近に、OK表示の点滅などの態様を含む有効通路表示を実施する。
【0050】
また、通路表示部28は、進路予測部25の予測した進路が他の3つのタイプの通路(非有効通路、非到達通路、迂回通路)であれば、ドライバーにとって不適切な通路であるとして、地図上の当該通路入口付近に、NG表示の点滅などの態様を含む通路NG表示を実施する。
【0051】
なお、通路の表示態様は、ドライバーが認識し易い態様であることが望ましく、「有効通路」、「非有効通路」、「非到達通路」、「迂回通路」といった文字による表示を加えても良いし、通路のタイプごとに、有効通路を青、非有効通路を赤、非到達通路を白、迂回通路を黄色といったように色分けを行ってもよい。
【0052】
ところで、経路探索部23は、次のようなリルート機能を実現するように構成されている。すなわち、進路予測部25が経路上を走行する車両の進路変更を予測したとき、通路判定部27の判定結果が有効通路であれば、この有効通路を含めて目的地までの経路を再探索し、通路判定部27の判定結果が非有効通路あるいは非到達通路であれば、進路変更前の経路に戻す経路を探索するようになっている。
【0053】
(2)本実施形態の動作
続いて、本実施形態における進路変更先の通路表示について、図3のフローチャートを用いて説明する。すなわち、経路探索部23の探索した経路を、案内制御部24が案内しているとき(S101)、各検知部5〜11が検知対象となる車両情報を検知している(S102)。
【0054】
そして、進路予測部25が各検知部5〜11の検知結果をRAM2から取得し、取得した情報に基づいて予測される車両の挙動と、探索経路を進む時の車両の挙動とを比較して、車両の進路変更が予測条件を満たした場合(S103)、進路予測部25は車両の進路変更についての予測を開始する(S104)。続いて、通路判定部27が予測した進路に関して通路状況の判定を行い(S105)、進路として適切かどうかを確認する(S106)。
【0055】
そして、通路判定部27において、進路予測部25にて予測した進路は不適切である、つまり通路として非有効通路、非到達通路及び迂回通路のいずれかであるといった判定がなされれば(S106のNo)、通路表示部28は、非有効通路、非到達通路あるいは迂回通路として、通路NG表示を実施する(S107)。その後、予め設定された数の分だけ、進路変更の対象となる道路に関して、進路変更の予測を開始するようにS104まで戻る。
【0056】
一方、通路判定部27において、進路予測部25にて予測した進路は、適切である、つまり通路として有効通路であるといった判定であれば(S106のYes)、通路表示部28は有効通路表示を実施する(S108)。その後、予測した進路をドライバーが選択したかどうか、つまり進路予測部25による予測の当否を予測判定部26にて確認する(S109)。
【0057】
そして、進路予測部25の予測した進路に車両が進めば、予測判定部26は予測が当たったと判定して(S108のYes)、進路変更先の通路表示処理が終了する。また、予め設定された数の道路の全てに関して、進路予測部25の予測した進路へと車両が進まなければ、予測判定部26は、進路予測部25の予測が外れたと判定する(S108のNo)。そのため、各検知部5〜11による車両情報の検知ステップ(S102)まで戻る。
【0058】
(3)本実施形態の作用効果
以上の本実施形態の作用効果は次の通りである。すなわち、車速、加速度、方向指示器の動作などの車両情報を、検知部5〜11にて検知し、これらの情報に一元的、総合的に把握することにより、進路予測部25は進路変更を高精度で予測することができ、その道が有効な通路であるか、あるいは、通り抜けできないなどの不適切な通路かということを、通路判定部27にて別の道に逸れる前よりも、先行して判断することができる。
【0059】
そして、通路判定部27にて判定された通路状況に応じて、経路探索部23によりリルート機能を開始する。ここで、経路探索部23は、通路判定部27の判定結果が有効通路であれば、この有効通路を含めて目的地までの経路を再探索する。したがって、進路変更を実施して有効通路へ進入した時点で、即座に再探索経路を提示可能である。その結果、経路を案内されない経路案内の空白時間が生じることがなく、高品質のナビゲーション機能を発揮することができる。
【0060】
また、通路判定部27の判定結果が非有効通路あるいは非到達通路であれば、進路変更前の経路に戻す経路を探索する。万が一、車両が非有効通路や非到達通路に進入してしまっても、元の経路に戻るための経路を即座にドライバーに提示することができる。これにより、ドライバーは安心して走行を続けることが可能である。
【0061】
さらに、本実施形態では、進路予測部25の予測した通路の状況を、通路表示部28によって明確に区別して表示するので、ドライバーが不適切な通路を選択する心配が無い。しかも、通路の状況としては、通り抜けの可否だけではなく、目的地への非到達通路や、ドライバーが意図しない遠回りとなる迂回通路についても、表示するので、非到達通路及び迂回通路に向けてドライバーの注意を喚起することができる。
【0062】
その上、通路状況の表示タイミングは、車両の進路変更を予測した後であって、従来技術のように行き止まりの通路が表示画面上に表示され続けていない。つまり、ドライバーが進路変更を行おうとしなければ、進路変更先の通路状況も表示されることがない。
【0063】
例えば、図4に示すように、車両が前方の交差点を左折すると予測した時、予測進路が行き止まり道路B3であれば、通路表示部28は、この左折の行き止まり道路B3に関してのみ表示し、仮に交差点を右折した場合に行き止まり道路が存在したとしても、それが表示することはない。
【0064】
また、図5に示すように、車両が前方の交差点を右折することを予測した場合に、予測した進路を含む目的地までの経路(太い点線にて図示)上に、行き止まり道路B4や袋小路の入口道路B5が存在すれば、この右折した先の通路に関してのみ通路状況を表示し、前記左折時の行き止まり道路B3を表示することはない。
【0065】
また、行き止まり道路B4や袋小路の入口道路B5の表示タイミングは、両者を同時に表示しても良いが、行き止まり道路B4は、その道路を含むT字路に車両が達する以前であれば、袋小路の入口道路B5を含むT字路を車両が通過した後に表示するようにしても良い。
【0066】
このように、ディスプレイ4の表示画面上にドライバーにとって無駄な情報を表示することなく、常にドライバーが必要とする情報だけを表示することができる。その結果、ディスプレイ4の表示画面の視認性は良好となり、快適性を得て、安全性をいっそう高めることが可能である。
【0067】
(4)他の実施形態
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、例えば進路予測部25にて進路変更を予測する道路について設定する場合、道路の数を固定して決めるのではなく、自車位置を起点として所定の範囲内に存在する道路を、進路変更対象としても構わない。また、通路表示部28における通路状況の表示態様として、行き止まり道路B1と、袋小路の入口道路B2とでは、前者を優先して表示したり、強調して表示したりすることもできる。
【0068】
さらには、図6に示すように、行き止まりマークX2や袋小路マークX3の表示態様を異なるようにしてもよい。また、迂回通路を表示する際、正規の所要時間よりも何分遅れるか、何km遠くなったかといった情報を表示するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ドライバーの意志を反映した車両挙動の変化を、車両が進路を変えようとする際に現れる変化として捉えているが、これに限らず、ドライバーの意志に関係なく車両の挙動が変化した場合、すなわち渋滞が起きた場合も、車両が進路を変えようとする際に現れる変化として把握することもできる。
【0070】
ナビゲーション装置が車速などから渋滞の発生を検知した場合、たとえ、渋滞を検知した時点では、ドライバーの意志に基づいた車両挙動の変化が無くとも、ドライバーの行動を先行して読み取り、ドライバーが車両の進路を変更する可能性が高いと予測して、誘導経路以外の通路を表示するようにしてもよい。
【0071】
例えば、ナビゲーション装置の案内通りに車両が走行している状態で、700m先を右折するといった誘導案内があり、右折ポイントの500m手前から右折車線が渋滞しているといった状況を想定する。このように状況下で、方向指示器の動作検知部7は右折方向の方向指示器を検知し続けており、車速パルス検知部10は停車もしくは時速10km未満の速度で車両が進んでいることを検知したとする。
【0072】
以上のような場合には、経路探索部23が前記右折ポイントの手前の道路を再探索するリルート探索を実施する。そして、通路表示部28は、経路探索部23がリルート探索した経路について、当初の誘導経路へ繋がっている道路については有効通路として表示し、行き止まりの道路については非有効通路として表示し、別の経路に繋がる道路については非到達通路として表示する。
【0073】
なお、経路探索部23によるリルート探索の開始タイミングは、車速パルス検知部10により渋滞状況を検知した時点でもよいが、進路予測部25が車両の進路変更を予測した時点であってもよい。進路予測部25が車両の進路変更を予測した時点とは、誘導経路上を走行する車両において、想定される左折/右折のポイントと異なる位置、あるいは直進の経路上で、方向指示器を出した場合などである。
【0074】
前段に述べた例で言えば、方向指示器の動作検知部7が右折方向の方向指示器を出すことを止めたことを検知した場合に、進路予測部25は、ドライバーは右に曲がる意志が無いと予測する。このような進路予測部25による車両の進路変更予測をトリガーとすることで、経路探索部23は、誘導経路を離脱するよりも早くリルート探索を開始することができる。これにより、余裕を持ってリルート探索した経路を表示することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1…制御部
2…RAM
3…ROM
4…ディスプレイ
5…アクセル開度検知部
6…ブレーキ検知部
7…方向指示器の動作検知部
8…舵角検知部
9…加速度検知部
10…車速パルス検知部
11…GPS情報検知部
20…現在位置検出部
21…出発地設定部
22…目的地設定部
23…経路探索部
24…案内制御部
25…進路予測部
26…予測判定部
27…通路判定部
28…通路表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、前記車両の進行方向に存在する道路について通り抜けが可能な有効通路なのか、通り抜けが不可能な非有効通路なのかを判定する通路判定手段と、前記有効通路と前記非有効通路とを区別して通路を表示する通路表示手段、を有するナビゲーション装置において、
前記車両が進路を変えようとする際に現れる変化を検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて前記車両の進路を予測する進路予測手段を備え、
前記通路表示手段は、前記進路予測手段が予測した進路に関して前記有効通路と前記非有効通路とを区別して表示するように構成したことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記検知手段は、車両が進路を変えようとする際に現れる変化として、前記車両の車速、エンジン回転数、加速度、ステアリングの舵角、方向指示器の動作、ブレーキ及びアクセル開度、GPS信号に関する情報のうち、少なくとも1つを含む車両情報を検知するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記進路予測手段の予測の当否を判定する予測判定手段を備え、
前記予測判定手段が前記進路予測手段の予測が外れたと判定したとき、前記進路予測手段は、直ちに次の進路を予測するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
目的地を設定する目的地設定手段を備え、
前記目的地設定手段にて目的地を設定するとき、前記通路判定手段は、前記車両の進行方向に存在する道路に関する判定として、前記有効通路と前記非有効通路に加えて、前記目的地へと到達しない非到達通路及び前記目的地への到達距離が前記目的地への最短距離と比べて所定の割合以上遠くなる迂回通路を判定するように構成し、
前記通路表示手段は、前記有効通路、前記非有効通路、前記非到達通路及び前記迂回通路を区別して表示するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
目的地までの経路を探索する経路探索手段を備え、
前記進路予測手段が前記経路上を走行する車両の進路変更を予測したとき、予測した道路が前記有効通路であれば、前記経路探索手段は、この有効通路を含めて前記目的地までの経路を再探索し、進路変更を予測した道路が前記非有効通路及び前記目的地へと到達しない非到達通路であれば、前記経路探索手段は、進路変更前の経路に戻す経路を探索するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
車両の現在位置を取得する現在位置取得ステップと、地図情報を記憶する地図情報記憶ステップと、前記車両の進行方向に存在する道路について通り抜けが可能な有効通路なのか、通り抜けが不可能な非有効通路なのかを判定する通路判定ステップと、前記有効通路と前記非有効通路とを区別して道路を表示する通路表示ステップ、を含むナビゲーション方法において、
前記車両が進路を変えようとする際に現れる変化を検知する検知ステップと、
検知ステップの検知結果に基づいて前記車両の進路変更を予測する進路予測ステップを含み、
前記通路表示ステップでは、前記進路予測ステップにて予測した進路に関して前記有効通路と前記非有効通路とを区別して表示したことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項7】
コンピュータを利用することにより、車両の現在位置を取得する現在位置取得機能と、地図情報を記憶する地図情報記憶機能と、前記車両の進行方向に存在する道路について通り抜けが可能な有効通路なのか、通り抜けが不可能な非有効通路なのかを判定する通路判定機能と、前記有効通路と前記非有効通路とを区別して通路を表示する通路表示機能、をコンピュータに実現させるナビゲーションプログラムにおいて、
前記車両が進路を変えようとする際に現れる変化を検知する検知機能と、
前記検知手段の検知結果に基づいて前記車両の進路を予測する進路予測機能、をコンピュータに実現させ、
前記通路表示機能では、前記進路予測機能にて予測した進路に関して前記有効通路と前記非有効通路とを区別して表示することをコンピュータに実現させることを特徴とするナビゲーションプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−43437(P2011−43437A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192410(P2009−192410)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】