説明

ナビゲーション装置およびプログラム

【課題】 ナビゲーション装置の画像表示の輝度および音声出力の音量を、乗員の特性および車室内の物理的環境に基づいて設定できるようにする。
【解決手段】 記憶媒体に記録された乗員の視力、性別、および年齢の個人特性データを取得し(ステップ120)、車室内の明るさデータを取得し(ステップ130)、車室内の音響ノイズ量データを取得し(ステップ140)、取得した明るさデータが示す明度がより高いほどより大きくなる基準輝度に、取得した個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の輝度で画像表示が行われるよう設定し、また、取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の音量で音声出力が行われるよう設定する(ステップ150)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画像の輝度等、または出力音量の設定を行うためのナビゲーション装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードや磁気記憶媒体等から乗員の視力、聴力、年齢、性別等の特性データを読み出し、この読み出した特性データに基づいて、乗員の視覚能力および聴覚能力を特定し、その視覚能力に応じたコントラスト、明るさ、色温度の画像表示設定をナビゲーション装置に対して行い、また、その聴覚能力に応じた音量の音声出力設定をナビゲーション装置に対して行うことで、ナビゲーション装置の画像表示の見易さや音声出力の聞き易さを向上させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−110546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、画像の見易さや音声の聞き易さは、乗員の特性のみならず車室内の物理的環境によっても影響を受ける。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、ナビゲーション装置の画像表示の輝度、コントラストまたは色温度等の見易さ指標を、乗員の特性および車室内の物理的環境に基づいて設定できるようにすることを第1の目的とする。また、ナビゲーション装置の音声出力の音量を、乗員の特性および車室内の物理的環境に基づいて設定できるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、記憶媒体に記録された乗員の視力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段と、車室内の明るさデータを取得する明るさ取得手段と、前記明るさ取得手段が取得した明るさデータが示す明度がより高いほどより大きくなる基準見易さ指標に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の見易さ指標で画像表示が行われるよう設定する画像表示設定手段と、を備えたナビゲーション装置である。
【0006】
なお、見易さ指標とは、輝度、コントラスト、色温度、またはこれら輝度等のデフォルト値からの変化値等、その値が上がるとより表示される画像がはっきりするような映像特性をいう。また、個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にある場合としては、視力が低い場合、年齢が高い場合等がある。
【0007】
このようになっているので、ナビゲーション装置は、車室内の明度がより高いほどより大きくなる基準見易さ指標に、乗員の視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の見易さ指標で画像表示が行われるよう設定することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、記憶媒体に記録された乗員の聴力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段と、車室内の音響ノイズ量データを取得する音響ノイズ量取得手段と、前記音響ノイズ量取得手段が取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で音声出力が行われるよう設定する音量設定手段と、を備えたナビゲーション装置である。
【0009】
なお、個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にある場合としては、聴力が異常である場合、年齢が高い場合等がある。また、音響ノイズ量とは、ナビゲーション装置がスピーカ等に出力される音声以外の車室内の音量をいう。
【0010】
このようになっているので、ナビゲーション装置は、車室内の音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、乗員の聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の音量で音声出力が行われるよう設定することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のナビゲーション装置において、前記個人特性取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の聴力データを取得し、前記音量設定手段は、前記音響ノイズ量取得手段が取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した各周波数帯域の聴力データが示す聴力がより低いほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、当該周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定することを特徴とする。
【0012】
このようになっていることで、ナビゲーション装置は、同じ人でも対象とする周波数帯域毎に聴力が異なるような場合に対応した柔軟な音声出力設定を行うことができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のナビゲーション装置において、前記音響ノイズ量取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の音響ノイズ量データを取得し、前記音量設定手段は、前記音響ノイズ量取得手段が取得したある周波数帯域の音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる当該周波数帯域についての基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、その周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定することを特徴とする。
【0014】
このようになっていることで、ナビゲーション装置は、同じ車室内の同じ時であっても対象とする周波数帯域毎に音響ノイズ量が変化するような場合に対応した柔軟な音声出力設定を行うことができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2に記載のナビゲーション装置において、前記個人特性取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の聴力データを取得し、前記音響ノイズ量取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の音響ノイズ量データを取得し、前記音量設定手段は、前記音響ノイズ量取得手段が取得したある周波数帯域の音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる当該周波数帯域についての基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した当該周波数帯域の聴力データが示す聴力がより低いほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、当該周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定することを特徴とする。
【0016】
このようになっていることで、ナビゲーション装置は、同じ人でも対象とする周波数帯域毎に聴力が異なるような場合、および同じ車室内の同じ時であっても対象とする周波数帯域毎に音響ノイズ量が変化するような場合に対応した柔軟な音声出力設定を行うことができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、記憶媒体に記録された乗員の視力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段、車室内の明るさデータを取得する明るさ取得手段、および前記明るさ取得手段が取得した明るさデータが示す明度がより高いほどより大きくなる基準見易さ指標に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の見易さ指標で画像表示が行われるよう設定する画像表示設定手段として、コンピュータを機能させるプログラムである。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、記憶媒体に記録された乗員の聴力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段、車室内の音響ノイズ量データを取得する音響ノイズ量取得手段、および前記音響ノイズ量取得手段が取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、その周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定する音量設定手段として、コンピュータを機能させるプログラムである。
【0019】
このように、プログラムとしても本発明を捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。本実施形態の車両用ナビゲーション装置1は、車両用ナビゲーション装置1の通常の機能に加え、車室内の外光による明度、車室内の音響ノイズ量、ならびに乗員の視覚能力および聴覚能力を示す個人特性データに基づいて、画面表示の輝度、および音声出力の音量を設定するようになっている。
【0021】
この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、スピーカ14、カード読み取り機15、RAM16、ROM17、外部記憶媒体18、マイク19、明るさセンサ20、およびCPU21を有している。
【0022】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置や向きを特定するための情報をCPU21に出力する。
【0023】
操作スイッチ群12は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置13の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号をCPU21に出力する。
【0024】
画像表示装置13は、CPU21から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0025】
カード読み取り機15は、ICカード、メモリカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア等のカード型記憶媒体の挿入を検出すると、検出信号をCPU21に出力するようになっている。またカード読み取り機15は、CPU21からの制御に基づいて、挿入されたカード型記憶媒体に記録されたデータを読み出してCPU21に出力するようになっている。
【0026】
外部記憶媒体18は、HDD等の不揮発性の記憶媒体であり、CPU21が読み出して実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0027】
地図データは、道路片(リンク)および交差点(ノード)の位置、種別、交差点と道路片との接続関係情報等を含む道路データ、および施設データを有している。施設データは、施設毎のエントリを複数有しており、各エントリは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0028】
マイク19は、車室内に搭載され、車室内の音響をデータとしてCPU21に出力する。
【0029】
明るさセンサ20は、画像表示装置13の画像表示面に、画像表示装置13に対して外向きに埋め込まれることで、画像表示装置13の画像表示面における外光(すなわち画像表示装置13自身を起源とする光以外の光)の明るさを検出し、その検出データをCPU21に出力する。
【0030】
CPU(コンピュータに相当する)21は、ROM17および外部記憶媒体18から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはカード読み取り機15に挿入された記憶媒体、RAM16、ROM17、および外部記憶媒体18から情報を読み出し、RAM16および外部記憶媒体18に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、スピーカ14、カード読み取り機15、マイク19、および明るさセンサ20と信号の授受を行う。
【0031】
CPU21がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、案内経路探索処理、経路案内処理等がある。
【0032】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
【0033】
案内経路探索処理は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な案内経路を算出する処理である。
【0034】
経路案内処理は、外部記憶媒体18から地図データを読み出し、算出された案内経路、目的施設、経由施設および現在位置等をこの地図データの示す地図上に重ねた画像を、画像表示装置13に出力し、案内交差点の手前に自車両が到達した等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声信号をスピーカ14に出力する処理である。
【0035】
なお、このようなCPU21の処理において画像表示装置13に表示する画像の表示輝度は、CPU21が変化させることができる。具体的には、RAM16中に、表示輝度を設定するための輝度変数が確保され、CPU21は、画像信号を画像表示装置13に出力するとき、各画素の輝度に対してこの輝度変数の値をオフセット(または乗算)した値を出力するようになっている。そしてCPU21は、必要に応じてこの輝度変数の値を変更することができる。このようになっていることで、輝度変数の値が変化すると、画像表示装置13における表示画像全体の輝度が変化する。
【0036】
また、このようなCPU21の処理において、スピーカ14に出力する音声信号の音量は、CPU21が周波数帯域毎に変化させることができる。具体的には、RAM16中に、高周波数帯域(高音域)用の音量変数、中周波数帯域(中音域)用の音量変数、および低周波数帯域(低音域)用の音量変数が確保され、CPU21は、音声信号をスピーカ14に出力するとき、これら各周波数帯域の信号強度に対して対応する帯域用の音量変数を乗算(またはオフセット)した値を出力するようになっている。そしてCPU21は、必要に応じてこれら音量変数の値を変更することができる。このようになっていることで、各音量変数の値が変化すると、スピーカ14における当該周波数帯全体の出力音量が変化する。
【0037】
次に、図2に、これら輝度変数および音量変数を変化させるためにCPU21が実行するプログラム100(特許請求の範囲のプログラムに相当する)を示す。CPU21は、車両のイグニッションがオンとなることで起動した後、このプログラム100の実行を開始し、まずステップ110で、個人特性データカードのカード読み取り機15への挿入を、カード読み取り機15からの検出信号に基づいて検出するまで待つ。個人特性データカードとは、ドライバー等の乗員の健康診断データとして、乗員の年齢、性別、視力、高、中、低の周波数帯域毎の聴力のデータを有するカード型記憶媒体である。
【0038】
検出すると、続いてステップ120で、挿入された個人特性データカードから、当該年齢、性別、視力、聴力のデータを読み取る。
【0039】
続いてステップ130で、明るさセンサ20から、画像表示装置13の表示画面の明るさデータを取得する。
【0040】
続いてステップ140で、マイク19から、スピーカ14から音が出力されていない場合における、車室内の音響データを取得する。ここで、取得した音響データを周波数解析することで、高周波数帯域、中周波数帯域、低周波数帯域のそれぞれの音量データすなわち音響の強度のデータを算出する。
【0041】
続いてステップ150で、ステップ120で取得した個人特性データ、およびステップ130で取得した明るさデータに基づいて、輝度変数を設定する。また、ステップ120で取得した個人特性データ、およびステップ140で取得した各周波数帯域における車室内の音量データに基づいて、各音量変数を設定する。
【0042】
続いてステップ160で、所定時間(例えば10分)が経過するまで待ち、経過すると再びステップ130を実行する。これにより、所定時間間隔で、車室内の明るさデータおよび音量データが更新され、それに伴い輝度変数および音量変数が更新される。
【0043】
ここで、ステップ150の処理について詳しく説明する。ステップ150においては、図3に示すサブルーチン200、および図4に示すサブルーチン300を、この順に1回実行するようになっている。なお、サブルーチン200およびサブルーチン300は、プログラム100の一部である。
【0044】
CPU21は、まずサブルーチン200のステップ210において、視力データを基に倍率Aを定める。この倍率Aは、1以上の値であり、視力が高くなるほどその値が低くなるように定められている。具体的な一例は、視力データの示す視力が1.0以上の場合、倍率Aは1.0となり、視力が1.0未満0.7以上の場合、倍率Aは1.1となり、視力が0.7未満の場合、倍率Aは1.2となる。なお、視力データは、その視力データの対象となる者が眼鏡等を使用する場合は、眼鏡等を使用した場合の視力データを用いる。
【0045】
続いてステップ220で、年齢データを基に倍率Bを定める。この倍率Bは、1以上の値であり、年齢が高くなるほどその値が高くなるように定められている。具体的な一例は、年齢データの示す年齢が40才以下の場合、倍率Bは1.0となり、年齢が41才以上〜50才以下の場合、倍率Bは1.03となり、年齢が51才以上の場合、倍率Bは1.05となる。
【0046】
続いてステップ230で、性別データを基に倍率Cを定める。この倍率Cは、1以上の値である。具体的な一例は、性別データの示す性別が男性の場合、倍率Cは1.0となり、性別データの示す性別が女性の場合、倍率Cは1.05となる。
【0047】
続いてステップ240で、明るさデータに基づいて基準値Dを求める。図5に、明るさデータと基準値Dとの関係の一例を示す。このグラフにおいては、横軸の明るさデータはルクス表示となっており、縦軸の表示輝度はcd/m表示となっている。このグラフにおいて、実線31が、各明るさデータに対する基準値Dの輝度を示している。例えば、画像表示装置13の表示画面の外光による明るさが100ルクスの場合、基準値Dは50cd/mであり、明るさが300ルクスの場合、基準値Dは150cd/mであり、明るさが500ルクスの場合、基準値Dは250cd/mである。このように、基準値Dの輝度は、明るさデータが明るい値を示すほど高くなるように定められている。
【0048】
続いてステップ250では、上記のように定めた基準値Dに倍率A、倍率B、および倍率Cを乗算した結果の値を、オフセット用の輝度変数として設定する。このようにして倍率A、倍率B、および倍率Cが乗算された後の輝度変数の明るさデータに対する依存性は、図5の点線32のようになる。
【0049】
続いてステップ260では、上記のように定めた倍率A、倍率B、および倍率Cを、基準の文字高さに乗算した結果の値を、画像表示装置13に表示させる文字の高さとしてRAM16に設定する。このようにすることで、CPU21は、文字を表示させる際には、そのRAM16中の設定を参照することで、その文字の表示高さを決定することができる。図6に、表示文字「A」が拡大される様子の一例を図示する。拡大される前の文字が実線で示した基準文字41であり、拡大後の文字が点線で示した文字42である。このように、高さの増大に伴って文字幅も増大されるようになっている。
【0050】
ステップ260の後、サブルーチン200の実行は終了し、CPU21は続いて図4のサブルーチン300の実行を開始し、まずステップ310で、周波数帯域別の聴力データを基に高周波数帯域用の倍率E1、中周波数帯域用の倍率E2、低周波数帯域用の倍率E3を定める。これら倍率E1〜E3は、1以上の値であり、それぞれの周波数帯域毎に聴覚能力が劣るほど高い値となる。
【0051】
具体的な一例は、聴力データが、高周波数帯域が正常である旨を示していれば倍率E1は1.0となり、異常である旨を示していれば倍率E1は1.2となる。また、聴力データが、中周波数帯域が正常である旨を示していれば倍率E2は1.0となり、異常である旨を示していれば倍率E2は1.2となる。また、聴力データが、低周波数帯域が正常である旨を示していれば倍率E3は1.0となり、異常である旨を示していれば倍率E3は1.2となる。
【0052】
続いてステップ320で、年齢データを元に倍率Fを定める。この倍率Fは、1以上の値であり、年齢が高くなるほどその値が高くなるように定められている。具体的な一例は、年齢データの示す年齢が40才以下の場合、倍率Fは1.0となり、年齢が41才以上〜50才以下の場合、倍率Fは1.03となり、年齢が51才以上の場合、倍率Fは1.05となる。
【0053】
続いてステップ330で、性別データを元に倍率Gを定める。この倍率Gは、1以上の値である。具体的な一例は、性別データの示す性別が男性の場合、倍率Gは1.0となり、性別データの示す性別が女性の場合、倍率Gは1.05となる。
【0054】
続いてステップ340で、音響データから算出した各周波数帯域毎の音量データを元に高周波数帯域用の倍率H1、中周波数帯域用の倍率H2、低周波数帯域用の倍率H3を定める。これら倍率H1〜H3は、1以上の値であり、それぞれの周波数帯域毎に音量データが高いほど高い値となる。
【0055】
具体的な一例は、高周波数帯域音量データの示す音量が所定の高周波数帯域用の基準値未満であれば、倍率H1は1.0となり、その基準値以上であれ倍率H1は1.1となる。また、中周波数帯域音量データの示す音量が所定の中周波数帯域用の基準値未満であれば、倍率H2は1.0となり、その基準値以上であれ倍率H2は1.1となる。また、低周波数帯域音量データの示す音量が所定の低周波数帯域用の基準値未満であれば、倍率H3は1.0となり、その基準値以上であれ倍率H3は1.1となる。
【0056】
続いてステップ350では、上記のように定めた倍率E1〜E3、倍率F、倍率G、および倍率H1〜H3に基づいた値を、各音量変数として設定する。
【0057】
具体的には、高周波数帯域用の音量変数は、倍率E1×倍率F×倍率G×倍率H1の結果の値に設定し、中周波数帯域用の音量変数は、倍率E2×倍率F×倍率G×倍率H2の結果の値に設定し、低周波数帯域用の音量変数は、倍率E3×倍率F×倍率G×倍率H3の結果の値に設定する。ステップ350の後、サブルーチン300の実行が終了する。
【0058】
以上のようなプログラム100をCPU21が実行することで、車両用ナビゲーション装置1は、記録された乗員の視力、性別、および年齢の個人特性データを取得し(ステップ120参照)、車室内の明るさデータを取得し(ステップ130参照)、車室内の音響ノイズ量データを取得し(ステップ140参照)、取得した明るさデータが示す明度がより高いほどより大きくなる基準輝度(すなわち基準値D)に、取得した個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数(すなわち倍率A×倍率B×倍率C)を乗じた結果の輝度で画像表示が行われるよう設定し、また、取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量(すなわち原音の音量×倍率H)に、取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数(すなわち倍率E×倍率F×倍率G)を乗じた結果の音量で音声出力が行われるよう設定する(ステップ150参照)。
【0059】
このようになっているので、車両用ナビゲーション装置1は、車室内の明度がより高いほどより大きくなる基準輝度に、乗員の視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の輝度で画像表示が行われるよう設定し、また、車室内の音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、乗員の聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の音量で音声出力が行われるよう設定することができる。
【0060】
また、車両用ナビゲーション装置1は、取得した高、中、または低の周波数帯域の音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる当該周波数帯域毎の基準音量に、取得した当該周波数帯域の聴力データが示す聴力がより低いほどより大きくなる当該周波数帯域毎の係数を乗じた結果の音量で、その周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定する。
【0061】
このようになっていることで、車両用ナビゲーション装置1は、同じ人でも対象とする周波数帯域毎に聴力が異なるような場合、および同じ車室内の同じ時であっても対象とする周波数帯域毎に音響ノイズ量が変化するような場合に対応した柔軟な音声出力設定を行うことができる。
【0062】
また、車両用ナビゲーション装置1は、基準文字高さに、取得した個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数(すなわち倍率A×倍率B×倍率C)を乗じた結果の文字高さで画像表示が行われるよう設定する(ステップ260参照)。ここで、この表示する文字高さも、取得した明るさデータが示す明度がより高いほどより大きくなるような明度依存性を有していてもよい。
【0063】
なお、上記の実施形態において、CPU21がプログラム100のステップ120を実行することで、個人特性取得手段として機能する。また、CPU21がプログラム100のステップ130を実行することで、明るさ取得手段として機能する。また、CPU21がプログラム100のステップ140を実行することで、音響ノイズ量取得手段として機能する。また、CPU21がプログラム100のステップ150を実行することで、画像表示設定手段として機能する。
【0064】
なお、カード読み取り機15は、カード型の記憶媒体以外の記憶媒体(例えばUSBメモリ、メモリスティック等)内の個人特性情報を読み取ることができるようになっていてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態においては、見易さ指標の一具体例として、輝度が用いられているが、これはコントラストや色温度であってもよいし、これらの任意の組み合わせであってもよい。
【0066】
また、上記の実施形態においては、CPU21は、各ピクセル毎に輝度変数をオフセットさせた画像信号を画像表示装置13に出力しているが、かならずしもこのようになっておらずともよく、例えば画像表示装置13に出力する各ピクセルの輝度はすべて一律に輝度変数の示す値となるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成図である。
【図2】CPU21の実行するプログラム100のフローチャートである。
【図3】プログラム100のサブルーチン200のフローチャートである。
【図4】プログラム100のサブルーチン300のフローチャートである。
【図5】明るさデータと表示輝度との関係を示すグラフである。
【図6】文字の補正の一例を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1…車両用ナビゲーション装置、11…位置検出器、12…操作スイッチ群、
13…画像表示装置、14…スピーカ、15…カード読み取り機、16…RAM、
17…ROM、18…外部記憶媒体、19…マイク、20…明るさセンサ、
21…CPU、31…基準輝度を示す線、32…補正後の輝度を示す点線、
41…基準文字、42…高さ補正後の文字、100…プログラム、
200、300…サブルーチン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体に記録された乗員の視力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段と、
車室内の明るさデータを取得する明るさ取得手段と、
前記明るさ取得手段が取得した明るさデータが示す明度がより高いほどより大きくなる基準見易さ指標に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の見易さ指標で画像表示が行われるよう設定する画像表示設定手段と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
記憶媒体に記録された乗員の聴力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段と、
車室内の音響ノイズ量データを取得する音響ノイズ量取得手段と、
前記音響ノイズ量取得手段が取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で音声出力が行われるよう設定する音量設定手段と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項3】
前記個人特性取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の聴力データを取得し、
前記音量設定手段は、前記音響ノイズ量取得手段が取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した各周波数帯域の聴力データが示す聴力がより低いほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、当該周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記音響ノイズ量取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の音響ノイズ量データを取得し、
前記音量設定手段は、前記音響ノイズ量取得手段が取得したある周波数帯域の音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる当該周波数帯域についての基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、その周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記個人特性取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の聴力データを取得し、
前記音響ノイズ量取得手段は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎の音響ノイズ量データを取得し、
前記音量設定手段は、前記音響ノイズ量取得手段が取得したある周波数帯域の音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる当該周波数帯域についての基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した当該周波数帯域の聴力データが示す聴力がより低いほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、当該周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
記憶媒体に記録された乗員の視力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段、
車室内の明るさデータを取得する明るさ取得手段、および
前記明るさ取得手段が取得した明るさデータが示す明度がより高いほどより大きくなる基準見易さ指標に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す視覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果の見易さ指標で画像表示が行われるよう設定する画像表示設定手段として、コンピュータを機能させるプログラム。
【請求項7】
記憶媒体に記録された乗員の聴力、性別、および年齢のうち少なくとも1つの個人特性データを取得する個人特性取得手段、
車室内の音響ノイズ量データを取得する音響ノイズ量取得手段、および
前記音響ノイズ量取得手段が取得した音響ノイズ量データが示す音響ノイズ量がより多いほどより大きくなる基準音量に、前記個人特性取得手段が取得した個人特性データが示す聴覚能力が劣る傾向にあるほどより大きくなる係数を乗じた結果に基づく音量で、その周波数帯域についての音声出力が行われるよう設定する音量設定手段として、コンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−148541(P2006−148541A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335921(P2004−335921)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】