説明

ナビゲーション装置

【課題】案内経路の前方に放送受信ができないリンクが存在する場合に、音楽記録が途切れることがないように経路を再探索するようにする。
【解決手段】経路探索に用いられる道路データにおけるリンクデータは、各リンク毎にそのリンクで受信可能な放送局のデータをリンクの属性情報に含み、ナビゲーション装置1は、放送を受信する放送受信部(ラジオ放送受信部11)と、前記受信した放送の音楽コンテンツを記録するハードディスク部14と、を備え、経路案内中に前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツを前記ハードディスク部14に記録する際、ナビ制御部20は、前記道路データを参照し、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ放送やデジタル放送に対応したテレビジョン放送受信機能、AM放送やFM放送に対応したラジオ放送受信機能などを併せ持った車載用のナビゲーション装置に関するものであり、特に、ナビゲーション機能による経路案内中に音楽放送を受信してハードディスク部に記録している際に、案内経路の前方に放送受信ができないリンクが存在する場合には音楽記録が途切れることがないように案内経路をリルートするようにしたナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近ではナビゲーション装置、音楽プレーヤー、DVDプレーヤー、アナログ放送やデジタル放送に対応したテレビジョン受信機など各種の電子装置が小型化され、携帯可能な装置として、あるいは車載用の装置として提供されている。特に車載用の装置としては、上記の各種機能を複合して備えた電子装置も提供されている。
【0003】
車載用のナビゲーション装置は、例えば、下記の特許文献1(特開2003−130669号公報)に開示されているように、所要のリンクコストを設定した地図データを用い、各リンクに設定されたリンクコストに基づいて、出発地から目的地までのリンクコストの累計が最少になる経路を探索して案内するものである。
【0004】
ラジオ放送を受信し、音楽コンテンツの楽曲部分を記録するようにしたデジタル再生装置は、例えば、下記の特許文献2(特表2005−518560号公報)に開示されている。このデジタル再生装置は、受信されるラジオ放送コンテンツの中から再生することができる音楽部分を自動で選り分けて格納するように構成されたものである。
【0005】
すなわち、このデジタル再生装置は、チューナで放送信号を音響出力部に出力すると共に、DSPに印加すると、DSPは前記放送信号をデジタルデータに変換して音楽抽出部に印加し、音楽抽出部は音楽抽出アルゴリズムによって前記デジタルデータ中から音楽データのみを抽出し、マイクロプロセッサは抽出した前記音楽データの始めと終わりを認識して音楽データ格納部の臨時領域に臨時格納しておき、現在出力する音楽を格納する命令が入力されると、前記音楽データ格納部の臨時領域から確定領域に移転して格納し、その格納状態を確定して維持するようにされたものである。
【0006】
また、車載用のナビゲーション装置においては、アナログ放送やデジタル放送に対応したテレビジョン放送受信機能やAM放送やFM放送に対応したラジオ放送受信機能を併せ持った装置が数多く提供されている。
【0007】
このようなナビゲーション装置では、ハードディスク部に経路探索、地図表示のための地図データが記憶される。最近ではハードディスク部の記憶容量が飛躍的に増大したことから、地図データを記憶したハードディスク部の一部を用いて受信した放送の音楽データなどのコンテンツを記憶できるようにしたナビゲーション装置も提案されている。
【0008】
上記のようなナビゲーション装置においては、ナビゲーション機能による経路案内中に音楽放送を受信してハードディスク部に記録することが可能である。利用者が所望の音楽放送を受信しながら、その音楽コンテンツを記録している場合、記録が途中で途切れることは好ましくない。経路案内中であれば記録途中で目的地に到着してしまうこともあり、その場合、記録を途中で中断するか、車両を停車してその音楽放送が終了するまで待つことが必要になる。
【0009】
このような不都合を解消するナビゲーション装置の発明が、例えば、下記の特許文献3(特開2007−24794号公報)に開示されている。このナビゲーション装置は、最適経路の探索において、コンテンツ情報の記録や出力を優先して目的地への到着時刻を制御するようにしたものである。すなわち、ナビゲーション装置は、コンテンツデータの再生や記録に要する時間から指定到着時刻を算出するAV制御部を備えている。そして、ナビゲーション制御部が前記指定到着時刻、もしくはその少し前に目的地に到着するルートを適切な走行予定経路として選択する。さらに、交通状態の変化に対応して適宜経路の再設定を行なうことでコンテンツの再生終了や記録終了にあわせて目的地に到着するように経路案内するようにしたものである。
【特許文献1】特開2003−130669号公報
【特許文献2】特表2005−518560号公報
【特許文献3】特開2007−24794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、放送受信機能を持った車載用ナビゲーション装置を利用する場合は、車両が短時間で長距離を移動するものであるから、受信中の放送局の受信エリアから外れてしまい聴取中の放送を継続して受信できなくなる場合がある。
【0011】
上記特許文献3に開示されたナビゲーション装置においては、記録を完了するまでの時間を算出してその記録完了の直前に目的地に到着するように到着時刻を設定し、当該到着時刻を満足する経路を探索するものではあるが、経路がすべて記録中の放送局の受信可能エリア内を走行するものである場合は問題ないが、経路の途中に放送を受信できないエリアが存在する場合には、記録が途切れるという問題点が生じる。
【0012】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、経路探索のための地図情報の各リンクの属性情報に当該リンク上で受信可能な放送局エリア情報を付加し、所望の音楽放送を受信しながら、その音楽コンテンツを記録している場合、案内経路の前方に当該放送の受信が不可能なエリアが存在する場合、当該放送の受信が可能であるリンクのみを用いて経路を再探索するようになせば上記の問題点を解消し得ることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、ナビゲーション機能による経路案内中に音楽放送を受信してハードディスク部に記録している際に、案内経路の前方に放送受信ができないリンクが存在する場合に、音楽記録が途切れることがないように経路を再探索するようにしたナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
現在位置を検出する現在位置検出部と、道路をノードとノード間を接続するリンクで表現した道路データを記憶する地図記憶部と、前記道路データに基づいて経路探索を行うナビ制御部と、ナビ制御部が経路探索した案内経路に基づいて経路案内するナビゲーション装置であって、経路案内中に前記ナビゲーション装置が放送受信機能を用いて音楽コンテンツを受信し、記録することができるナビゲーション装置において、
前記リンクデータは、各リンク毎にそのリンクで受信可能な放送局のデータをリンクの属性情報に含み、
前記ナビゲーション装置は、放送を受信する放送受信部と、前記受信した放送の音楽コンテンツを記録するハードディスク部と、を備え、経路案内中に前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツを前記ハードディスク部に記録する際、前記ナビ制御部は、前記道路データを参照し、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索することを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、 前記ナビゲーション装置は音楽情報解析部を備え、該音楽情報解析部は、前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツの特徴部分を抽出し、当該音楽コンテンツの収録時間を検出し、前記ナビ制御部は、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、当該リンクまでの移動時間を算出し、前記音楽情報解析部が解析した記録中の音楽コンテンツの収録時間を比較し、前記収録時間が前記移動時間よりも長い場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索することを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は音楽情報送受信部を備え、該音楽情報送受信部は、前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツの特徴部分を抽出してサーバに送信し、前記サーバから当該音楽コンテンツの収録時間を含む音楽情報を受信し、
前記ナビ制御部は、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、当該リンクまでの移動時間を算出し、前記記録中の音楽コンテンツの収録時間を比較し、前記収録時間が前記移動時間よりも長い場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索することを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項にかかるナビゲーション装置において、前記ナビ制御部が、経路を再探索した結果、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いた経路を探索できなかった場合、その旨を警告することを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項5にかかる発明は、請求項2または請求項3にかかるナビゲーション装置において、前記音楽情報送受信部または音楽情報解析部が、前記サーバから音楽コンテンツの収録時間を含む音楽情報を受信できなかった場合、または、音楽コンテンツの収録時間を検出できなかった場合、その旨を警告することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1にかかる発明においては、経路探索に用いられる道路データにおけるリンクデータは、各リンク毎にそのリンクで受信可能な放送局のデータをリンクの属性情報に含み、ナビゲーション装置は、放送を受信する放送受信部と、前記受信した放送の音楽コンテンツを記録するハードディスク部と、を備え、経路案内中に前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツを前記ハードディスク部に記録する際、ナビ制御部は、前記道路データを参照し、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索する。
【0020】
かかる構成によれば、ナビゲーション機能による経路案内中に音楽放送を受信してハードディスク部に記録している際に、経路前方に当該放送を受信できないリンクが存在していても、経路をリルートするから音楽の記録を中断することなく継続することができるようになる。
【0021】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は音楽情報解析部を備え、該音楽情報解析部は、前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツの特徴部分を抽出し、当該音楽コンテンツの収録時間を検出し、前記ナビ制御部は、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、当該リンクまでの移動時間を算出し、前記音楽情報解析部が解析した記録中の音楽コンテンツの収録時間を比較し、前記収録時間が前記移動時間よりも長い場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索することを特徴とする
かかる構成によれば、ナビゲーション機能による経路案内中に音楽放送を受信してハードディスク部に記録している際に、経路前方に当該放送を受信できないリンクが存在していても、記録中の音楽の記録(演奏)が終了する前に、そのリンクに車両が到達する場合、経路をリルートするから音楽の記録を中断することなく継続することができるようになる。また、経路前方のリンクの全てについて受信可能な放送局を調べることなくリルート処理ができるので、ナビ制御を効率よく行うことができるようになる。
【0022】
請求項3にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は音楽情報送受信部を備え、該音楽情報送受信部は、放送受信部で受信中の音楽コンテンツの特徴部分を抽出してサーバに送信し、前記サーバから当該音楽コンテンツの収録時間を含む音楽情報を受信し、ナビ制御部は、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、当該リンクまでの移動時間を算出し、前記記録中の音楽コンテンツの収録時間を比較し、収録時間が移動時間よりも長い場合、受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索する。
【0023】
かかる構成によれば、ナビゲーション機能による経路案内中に音楽放送を受信してハードディスク部に記録している際に、経路前方に当該放送を受信できないリンクが存在していても、記録中の音楽の記録(演奏)が終了する前に、そのリンクに車両が到達する場合、経路をリルートするから音楽の記録を中断することなく継続することができるようになる。また、経路前方のリンクの全てについて受信可能な放送局を調べることなくリルート処理ができるので、ナビ制御を効率よく行うことができるようになる。
【0024】
請求項4にかかる発明においては、請求項1ないし請求項3の何れか1項にかかるナビゲーション装置において、ナビ制御部が、経路を再探索した結果、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いた経路を探索できなかった場合、その旨を警告する。
【0025】
かかる構成によれば、ナビゲーション装置の利用者は音楽の記録が中断することを知ることができ、記録をキャンセルすることもできるようになる。
【0026】
請求項5にかかる発明においては、請求項2または請求項3にかかるナビゲーション装置において、音楽情報送受信部が前記サーバから音楽コンテンツの収録時間を含む音楽情報を受信できなかった場合、または、前記音楽情報解析部が音楽コンテンツの収録時間を検出できなかった場合、その旨を警告する。
【0027】
かかる構成によれば、ナビゲーション装置の利用者は記録中の音楽の曲名が判別できないことを知ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のナビゲーション装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0029】
図1は本発明の実施例にかかるナビゲーション装置の詳細な構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、自動車等の車両のダッシュボード上に載置されることにより車載用として使用されるだけでなく、車両から取外されユーザが携帯し使用できるタイプのものであってもよい。また、このナビゲーション装置1は、AM放送やFM放送に対応したラジオ放送受信機能などを併せ持ったナビゲーション装置である。
【0030】
ナビゲーション装置1は、図1に示すように、制御手段10、ラジオ放送受信部11、RAM12、地図記憶部13、ハードディスク部14、音楽情報送受信部15、表示部16、操作部17、スピーカ18、アンテナ19、ナビ制御部20、現在位置検出部21などを備えて構成されている。
【0031】
制御手段10は、CPU、ROMおよびRAM12からなるプロセッサで構成され、ROMに記録された制御プログラムに従ってナビゲーション装置1の各部の動作を制御するものである。ラジオ放送受信部11は、アンテナ19を介して放送局からの放送電波を受信する。ナビ制御部20は経路探索および経路案内などのナビゲーション機能の制御を司る。ラジオ放送の受信とナビゲーション機能の実行は操作部17の操作により行われる。
【0032】
ナビゲーション機能の実行中にラジオ放送の受信を行うこともできるが、その場合、表示部16は、操作部17による操作、または、自動切換えにより何れかの機能で用いられる表示画面が表示される。例えば、ナビゲーション機能にかかわる画面としては、経路探索条件の設定画面や地図画像および案内経路の画像が表示される。ラジオ放送受信時の画像としては、放送局を選局するための選局画面や、音量調整や音響効果の設定画面などが表示される。
【0033】
現在位置検出部21は、例えばGPS受信機等で構成され、地球上空を周回している複数のGPS衛星からの時刻情報を含む電波を受信し、それをもとに現在位置情報を算出するものである。
【0034】
さらに、現在位置検出部21は距離センサや方位センサを使用するようにしてもよい。この場合、車両の走行距離と走行方位とをそれぞれ検出し、これらの値を基準位置に対して積算することによって現在位置を求める。この現在位置検出方法は、GPS受信と組み合わせることで、GPS電波を受信できないトンネル内や、誤差が生じやすい高層ビル街において効果を発揮する。
【0035】
地図記憶部13は、各道路の交差点や分岐点などの結節点をノードとし、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路ノードデータ(ノードデータ)と道路リンクデータ(リンクデータ)を含む道路データを記憶する。道路ノードデータには、道路ノードの番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称などが含まれる。また、道路リンクデータには起点および終点となる道路ノードの番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータにはさらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所などのデータが付与される。道路種別は、高速道路や有料道路の別および国道や都道府県道などの別を含む情報である。
【0036】
地図記憶部13は、さらに海岸線、湖沼、河川形状などの水系データ、行政境界データ、施設の位置、形状、名称を含む施設データからなる背景データを記憶している。
【0037】
また、地図記憶部13には、道路データや背景データの他、地図画像を見やすく表示するためにベクター形式で記憶された地図画像データを含んでいてもよい。
【0038】
これらの道路データと背景データおよび地図画像データは、ナビゲーション装置1を使用する際に、図示しない表示制御手段によってナビゲーション装置1の現在位置を含む所定範囲の地図が地図記憶部13から抽出され、現在位置を示す現在位置マークや案内経路の画像が重ね合わされて表示部16に表示される。また、ナビ制御部20は、経路案内中に現在位置が交差点や分岐点など案内を要する地点に到達すると、右折、左折、直進などの案内をスピーカ18から音声出力する。
【0039】
ナビ制御部20は、ユーザによって出発地や目的地が指定されると、地図記憶部13に記憶されている道路データを参照し、出発地から目的地に至る最適経路を探索し、案内経路データを作成するものである。この最適経路の探索は、現在位置またはユーザによって指定された出発地に対応する道路ノードからユーザによって指定された目的地に対応する道路ノードまでに至るリンクとノードをダイクストラ法などの各種の手法によって探索し、リンク長(リンクコスト)や所要時間などを累積し、総リンク長または総所要時間などが最短となる経路を案内経路とし、当該経路に属する道路ノードやリンクを案内経路データとして提供するものである。
【0040】
表示部16は図示しない表示制御手段により、地図上で現在位置を表示する際や、経路案内を行っている際、さらにユーザが所定の位置と縮尺を指定した場合などに、所定範囲の道路データや背景データ、地図画像データを選択し、現在位置を示すアイコン(現在位置マーク:自車位置マーク)や走行道路の軌跡や案内経路などを示す画像、さらには種々の案内解説などの画像を重ね合わせて合成し、表示部16に表示できるデータを作成する。
【0041】
地図データの各リンクデータは前述したように属性情報を持つ。本実施例のナビゲーション装置においては、属性情報に更に、各リンク上で受信可能な放送局(送信局)のデータが記憶されている。従って、ラジオ放送受信中の放送局と案内経路上のリンクの属性データに記憶されている放送局とを比較すると、案内経路上で受信中の放送を継続受信できるか否かを判別することができる。
【0042】
図2は、リンクに付加される属性情報の一例を示す図である。図2に示すように各リンクには、受信可能な放送局の情報が属性情報として記憶されている。例えば、リンクL00では放送局A0、B0・・の放送電波の受信が可能であり、リンクL0Nでは放送局A1、B1・・の放送電波の受信が可能である。これにより車両がどのリンクに到達した時にどの放送局の放送電波の受信が可能かを判別することができる。従って、リンクの属性情報に記録されていない放送局の放送電波は当該リンクでは受信できないことがわかる。
【0043】
このようなリンクデータに従って、経路案内中の経路の前方のリンクの属性情報を判別して、経路前方に受信中の放送局の受信ができないリンクが存在する場合、受信可能なリンクを抽出して経路を再探索して案内経路を変更すれば、ナビゲーション装置において受信中の放送を中断することなく、移動を続けることができる。経路の再探索処理は一般にリルートと呼ばれる処理である。
【0044】
ラジオ放送受信部11はアンテナ19を介して放送電波を受信する。受信している放送のコンテンツが音楽である場合、RAM12に一時記録する。RAM12に一時記録した音楽コンテンツは記憶部であるハードディスク部14に記録(録音)することができる。
【0045】
また、音楽情報送受信部15は、記録中の音楽コンテンツの楽曲を特定するためのデータ(楽曲の先頭やサビの部分)を検出して図示しない情報サーバに送る。サーバは送られた音楽データを解析して楽曲を特定し、その楽曲の曲名や収録時間を算出してナビゲーション装置に送信する。楽曲の解析は、例えば、上記の特許文献2に開示されている技術を適用することができる。楽曲が特定できない場合サーバはエラー情報をナビゲーション装置に送信する。
【0046】
音楽情報送受信部15はサーバから楽曲の曲名や収録時間などの情報を受信すると、RAM12に一時記録した音楽コンテンツのデータに曲名や収録時間の情報を対応付けてハードディスク部14に記録する。ハードディスク部14に記録された音楽コンテンツのデータは必要により読み出して再生することができる。
【0047】
ナビゲーション装置1において、経路案内中にラジオ放送受信部11で音楽放送を受信し、音楽コンテンツをハードディスク部14に記録する場合、前述したように音楽コンテンツのデータをRAM12に一時記録するとともにサーバに音楽情報を送信して曲名と収録時間の情報を受信する。
【0048】
ナビ制御部20は、現在位置検出部21により検出した現在位置に基づいて、案内中の経路の前方のリンクの属性情報を調べる。経路前方に音楽放送を受信中の放送局の放送を受信できないエリアが含まれるか否かを判別する。もしも経路の前方に受信中の放送局の電波を受信できないリンクがある場合、ナビ制御部20は現在位置から目的地までの経路をリルートする。
【0049】
ナビ制御部20はリルートするにあたって、受信中の放送局の電波を受信することのできるリンクを抽出して経路を探索すればよい。これにより音楽放送の受信、記録を中断することなく目的地までの経路を走行することができるようになる。
【0050】
なお、ナビ制御部20は車両の走行速度からある時間内に移動する距離が判別できるから、サーバから受信した収録時間に基づいて、当該収録時間内に車両が移動する距離を推定することができる。従って、この移動距離の間に入る案内経路のリンクの属性情報を調べ、その範囲内に受信中の放送局の放送電波を受信できないリンクが存在しなければリルート処理をせず、その範囲内に受信中の放送局の放送電波を受信できないリンクが存在した場合にリルート処理をすればよい。
【0051】
この処理は以下の手順で行うこともできる。すなわち、経路の前方のリンクに受信中の放送局の電波を受信できないリンクが存在するか否かを判別する。前方のリンクに受信中の放送局の電波を受信できないリンクが存在したら、そのリンクまでの移動所要時間を算出する。次いで、この移動所要時間が受信中の楽曲の収録時間を超過するか否かを判別し、移動所要時間が受信中の楽曲の収録時間を超過する場合リルート処理を行う。
【0052】
図3は、本発明の実施例にかかるナビゲーション装置1における処理手順を示すフローチャートである。ナビゲーション装置1においてナビ制御部20はステップS101で経路探索を行い、指定された目的地までの経路を探索し、経路案内を実行中であるものとする。また、ラジオ放送受信部11は所望の放送局の音楽コンテンツを含む放送を受信しているものとする。
【0053】
ステップS102の処理で操作部17の操作により音楽放送に含まれる音楽コンテンツの記録開始の指示がなされると、音楽情報送受信部15はステップS103の処理で音楽部分のデータを切り出し、ステップS104の処理でRAM12に一時記録する。次に、音楽情報送受信部15は、音楽の先頭部分または特徴部分を抽出し、図示しないサーバに送信する(ステップS105)。
【0054】
図4は、音楽コンテンツの解析処理を行うサーバ(図示せず)の処理手順を示すフローチャートである。サーバはナビゲーション装置1から音楽の先頭部分または特徴部分のデータを受信すると、ステップS201の処理でデータを解析して音楽(楽曲)の曲名、収録時間(演奏時間)を特定する。次いでサーバは、ステップS202の処理で音楽を特定できたか否かを判別し、特定できなかったらナビゲーション装置1にエラー情報を送信する(ステップS204)。音楽が特定できたら、ステップS203の処理に進み、解析により得られた音楽の曲名、収録時間をナビゲーション装置1に送信して処理を終了する。
【0055】
再び図3に示すフローチャートに戻ると、ステップS106の処理で、音楽情報送受信部15がサーバから音楽の曲名、収録時間を受信すると、RAM12に記録している音楽コンテンツのデータにその曲名、収録時間のデータを対応付けて記録する(ステップS107)。そしてステップS108の処理で表示部16に曲名を表示する。
【0056】
ナビ制御部20は、現在位置検出部21が検出した現在位置に基づいて、ステップS109の処理で経路の前方のリンクの属性情報を調べ、前方に音楽放送受信中の放送局の放送電波を受信できないリンクがあるか否かを判別する。受信できないリンクがなければ、ステップS111の処理に進み、音楽情報送受信部15は記録中の音楽が終了したか否かを判別する。受信できないリンクが経路前方に存在すると判別すると、ナビ制御部20はステップS110の処理で経路の再探索(リルート)を行う。
【0057】
リルートにあたっては、受信中の放送局の放送電波を受信可能な属性情報を持つリンクのみを用いる。これにより受信中の放送(音楽)を中断することなく目的地に向かって走行することができるようになる。図示していないが、リルートにより新たな経路が探索できなければ、受信が中断する旨警告を表示する。
【0058】
ステップS111の判別処理において、記録中の音楽が終了していないことを判別したらステップS109の経路前方のリンクの属性情報の判別処理に戻り、記録中の音楽が終了したものと判別した場合、音楽情報送受信部15は、RAM12に一時記録した音楽コンテンツのデータと、該データに対応付けて記録された曲名、収録時間などのデータをハードディスク部14に記録する(ステップS112)。ステップS113の処理では記録終了指示の有無を判別する。ステップS113の処理で記録終了指示を検出したら処理を終了し、記録終了指示を検出しなければステップS103の音楽部分の切り出し処理に戻る。
【0059】
図3のステップS109、S110におけるリンク属性判別、リルート処理は、経路前方のリンクの全てを判別するようにしているが、記録中の音楽が終了するまでの間に車両が走行すると予測される範囲について判別するように構成してもよい。図5は、このような処理手順を示すフローチャートである。なお、図5の手順は、図3のステップS109、S110に相当する処理部分のみを示しており、図3のステップS108とステップS111の間に入る処理である。
【0060】
図5において、ナビ制御部20は、現在位置検出部21が検出した現在位置に基づいて、ステップS301の処理で経路の前方のリンクの属性情報を順に調べ、前方に音楽放送受信中の放送局の放送電波を受信できないリンクがあるか否かを判別する。受信できないリンクがなければ、この処理手順の部分における処理は終了であり、図3のステップS111の処理に移る。
【0061】
経路の前方に音楽放送受信中の放送局の放送電波を受信できないリンクがあると判別されると、ステップS302の処理でナビ制御部20はそのリンクまでの移動時間を算出する。移動時間の算出は車両の移動速度とそのリンクまでの距離に基づいて算出することができる。車両の移動速度は、現在位置の変化の履歴とその間に進んだ距離から算出することができる。あるいは、車両に備えられた車速センサ(図示せず)の検出速度を用いてもよい。
【0062】
リンクまでの移動時間が算出されると、ステップS303の処理において、ナビ制御部20は記録中の音楽の収録時間とリンクまでの移動時間を比較し、収録時間が移動時間よりも大(長い)か否かを判別する。収録時間が移動時間より長い場合、収録途中で車両がそのリンクに到達するから、受信中の放送局の放送電波を受信できなくなる。従って、この場合、ナビ制御部20はステップS304の処理に進み、リルートを行う。
【0063】
収録時間が移動時間より短ければ、車両がそのリンクに到達するまでの間に記録中の音楽の放送は終了するものであるから、この処理手順の部分における処理は終了であり、図3のステップS111の処理に移る。このような処理によれば、経路前方のリンクの全てについて受信可能な放送局を調べることなくリルート処理ができるので、ナビ制御を効率よく行うことができるようになる。
【0064】
なお、上記の実施例においては、音楽情報送受信部15が記録中の音楽コンテンツの楽曲を特定するためのデータ(楽曲の先頭やサビの部分)を検出し、情報サーバ(図示セズ)に送り、サーバにおいて音楽データを解析して楽曲を特定し、その楽曲の曲名や収録時間を解析してナビゲーション装置1に送信する例を説明したが、ナビゲーション装置1にサーバの機能を設け、ナビゲーション装置において、曲名や収録時間を解析するように構成することもできる。この場合、図1の音楽情報送受信部15を音楽情報解析部に置き換え、音楽情報解析部が記録中の音楽コンテンツの楽曲を特定するためのデータ(楽曲の先頭やサビの部分)を検出し、それに基づいて曲名や収録時間を解析するように構成すればよい。
【0065】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかるナビゲーション装置1によれば、ラジオ放送を受信して音楽を記録している際に、経路前方に当該放送局の放送を受信できないリンクが存在していても、経路をリルートするから音楽の記録を中断することなく継続することができるようになる。
【0066】
なお、上記実施例の説明はラジオ放送を例に説明したが、アナログあるいは地上波デジタルテレビジョン放送を受信して音楽コンテンツを記録する場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置のブロック構成図を示す。
【図2】リンク属性情報の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】音楽コンテンツの解析処理を行うサーバの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】リルート処理の他の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1: ナビゲーション装置
10: 制御手段
11: ラジオ放送受信部
12: RAM
13: 地図記憶部
14: ハードディスク部
15: 音楽情報送受信部
16: 表示部
17: 操作部
18: スピーカ
19: アンテナ
20: ナビ制御部
21: 現在位置検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を検出する現在位置検出部と、道路をノードとノード間を接続するリンクで表現した道路データを記憶する地図記憶部と、前記道路データに基づいて経路探索を行うナビ制御部と、ナビ制御部が経路探索した案内経路に基づいて経路案内するナビゲーション装置であって、経路案内中に前記ナビゲーション装置が放送受信機能を用いて音楽コンテンツを受信し、記録することができるナビゲーション装置において、
前記リンクデータは、各リンク毎にそのリンクで受信可能な放送局のデータをリンクの属性情報に含み、
前記ナビゲーション装置は、放送を受信する放送受信部と、前記受信した放送の音楽コンテンツを記録するハードディスク部と、を備え、経路案内中に前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツを前記ハードディスク部に記録する際、前記ナビ制御部は、前記道路データを参照し、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記ナビゲーション装置は音楽情報解析部を備え、該音楽情報解析部は、前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツの特徴部分を抽出し、当該音楽コンテンツの収録時間を検出し、
前記ナビ制御部は、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、当該リンクまでの移動時間を算出し、前記音楽情報解析部が解析した記録中の音楽コンテンツの収録時間を比較し、前記収録時間が前記移動時間よりも長い場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記ナビゲーション装置は音楽情報送受信部を備え、該音楽情報送受信部は、前記放送受信部で受信中の音楽コンテンツの特徴部分を抽出してサーバに送信し、前記サーバから当該音楽コンテンツの収録時間を含む音楽情報を受信し、
前記ナビ制御部は、案内中の経路の前方のリンクに前記受信中の放送を受信できないリンクが存在する場合、当該リンクまでの移動時間を算出し、前記記録中の音楽コンテンツの収録時間を比較し、前記収録時間が前記移動時間よりも長い場合、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いて経路を再探索することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記ナビ制御部が、経路を再探索した結果、前記受信中の放送を受信できるリンクを用いた経路を探索できなかった場合、その旨を警告することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記音楽情報送受信部が、前記サーバから音楽コンテンツの収録時間を含む音楽情報を受信できなかった場合、または、前記音楽情報解析部が音楽コンテンツの収録時間を検出できなかった場合、その旨を警告することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−109468(P2009−109468A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285044(P2007−285044)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】